研究環境基盤部会 国語に関する学術研究の推進に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年10月24日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.議題

  1. 人間文化研究機構国立国語研究所の組織・業務に関する調査・検証について
  2. その他

4.出席者

委員

樺山主査、飯野委員、上野委員、尾崎委員、砂川委員

文部科学省

倉持研究振興局長、澤川学術機関課長、小山研究調整官

オブザーバー

金田人間文化研究機構長

5.議事録

【樺山主査】

それでは、予定の時間を回りましたので始めさせていただきます。

本日は、国語に関する学術研究の推進に関する作業部会でございますが、ご出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は、前回第2回の合同会議におきまして、人間文化研究機構が取りまとめた国立国語研究所に関する報告書のヒアリング及び意見交換を踏まえまして、人間文化研究機構国立国語研究所の組織・業務に関する調査・検証について意見交換・議論を行いたいと考えております。

なお、本日の審議に関連いたしまして、尾﨑委員より質問・意見の提出がございました。人間文化研究機構の報告書に関係いたしますことから、本日も前回第2回に引き続きまして、人間文化研究機構から金田機構長、影山国語研所長及び鈴木国語研管理部長にご出席いただいております。どうもありがとうございます。

それでは、配付資料の確認を事務局からお願い申し上げます。

【藤田学術機関課課長補佐】

それでは、配付資料を確認させていただきます。議事次第をごらんください。配付資料といたしまして、資料1から4でございます。参考資料が1と2ということで、1が人間文化研究機構の報告書、青色の冊子でございます。参考資料2が前回ヒアリングの際のパワーポイント資料でございます。それから机上配付といたしまして、グレーのファイルに5点ほど国語研の要覧等をとじてございます。不足等ありましたら、事務局までお申し出いただければと思います。

以上でございます。

【樺山主査】資料等欠落がありましたら、お申し出くださいませ。

それでは、早速議事に入りたいと存じます。

まずは事務局から資料2の説明をお願い申し上げます。

【澤川学術機関課長】

失礼いたします。それでは、資料2のほうについて説明させていただきます。いろいろと資料相前後いたしますが、その前提として、資料1のほうを改めてごらんいただきたいと思います。資料1につきましては、第1回の合同会議の際に、当作業部会の検討の観点ということでご説明させていただいたものと全く同じものでございます。資料2の説明の前に改めて資料1について簡単にご説明させていただきます。

まず、この作業部会の検討の観点ということでございますが、独法改革法附則第15条ということで、国は検討を行うということで、それを踏まえた検討でございます。まず、論点が4つほどございますが、1つ目の論点は、まずは今年の7月に人間文化研究機構のほうで調査・検証ということでおまとめいだたきました。お手元、水色の冊子でお配りしているものでございますが、これについて改めまして、当作業部会としてご検討、ご検証いただくといことが必要ではないかということでございます。この点につきましては、前回第2回におきましてヒアリングを実施いたしましたので、その結果について、後ほど資料2にまとめてございますので、ご説明させていただきたいと思います。

あと、この作業部会の検討の観点ということでございますが、この作業部会の前身に当たりますのが、平成20年7月にまとめられました学術分科会の下に国語に関する小委員会が設けられておりまして、そこでまとめられた報告でございます。平成20年7月に「国語に関する学術研究の推進について」という報告が取りまとめられております。中身については逐一ご説明いたしませんが、水色の冊子の25ページ以下に資料という形で国語に関する委員会の報告が取りまとめられておりますので、ご参照いただければと思います。

その最後のところで、新しい大学共同利用機関をつくるに当たっての組織整備の基本的な考え方というものが示されております。これにつきましては、この下の小さい字で書いてございますが、組織整備の基本的な考え方ということで、1が基本方針、2が研究領域、3が主要事業、4が組織・運営についてという形で、これにつきまして、30ページ以下、30ページ、31ページに書いてございます。これを踏まえた形で今の人間文化研究機構のもとにございます国立国語研究所がしっかりと組織が整備され、運営されているかという観点をご検討いただきたいというふうに思っております。

また、この国立国語研移管に当たりまして、国会の審議で附則第14条というものがつけ加えられております。ここでは、「日本語に関する調査研究」ということについてもしっかり対応すべきということで、これを踏まえて、新しい国語研のもとにおいて日本語教育に関する組織が整備されておりますので、これも学術分科会の報告と付加して、あわせてご検討いただければと思っております。附則第14条につきましては、以前参考資料でお配りさせていただいておりますが、水色の冊子の1ページのところに附則の第14条と第15条が引用してございますので、それぞれ適宜ご参照いただければと思っております。

あわせて、作業部会でございますが、最後、結論に当たる議論といたしましては、今の新国立国語研究所が大学共同利用機関足り得ているかどうかということをご検討いただくことが必要ではないかなと思っております。これにつきましては、2と同じでございますが、平成20年7月の学術分科会の報告におきまして、この括弧のところに書いてございますが、「国語に関する学術研究を推進するための中核的研究機関としての機能を持った大学共同利用機関を設置することが必要」というふうな形で提言してございますので、こういった文言を踏まえて、今の国語研が真に大学共同利用機関足り得ているかということについてご議論いただければというふうに思っております。

あと検討の観点、最後のところはまとめということと、あと今後のあり方についてということで、1、2、3につきましては、これまで2年間を振り返るという形での検討でございますが、今後、国語研としてこういうことにもっと力を入れてほしいとか、こういうふうにやってほしいという作業部会としての意見なり要望というものをここに盛り込めたらなというふうに思っている次第でございます。そういうことで、まとめの次のところに、(今後の期待含む)という形でございますので、委員の皆様方からのいろいろなご提言等あれば、またここに盛り込んでいきたいなというふうに思っております。

以上が参考1の引き続きの繰り返しの説明という形になります。

それで、資料2のほうをごらんいただきたいと思います。資料2につきましては、先ほど申し上げました検討の観点の1、2、3、4、それぞれについて、これまでの議論を踏まえまして、事務局のほうで整理・補足させていただいたものでございます。

まず、論点1のところでございます。この資料につきましては、二重の枠囲いで囲っておりますのが資料1からそのまま抜粋しているものでございます。以下のところが今回新たにつけ加えさせていただいたということでございます。

1番目、人間文化研究機構の調査・検証。今年7月の検証についてという論点でございますが、第2回にヒアリングを実施させていただきましたので、その際のご意見をここに簡単に取りまとめてございます。まずは人間文化研究機構国語研の調査研究等の取り組みそのものについてでございますが、この2年間の取り組みについては、各委員の方から、基本的にこれまでの努力なり成果を評価するという意見を多くいただいたというふうに思っております。こういう形で評価する意見が大勢を占めたということで、まずは総括的にまとめさせていただいております。

あわせて、評価するという意見とともに、今後の国語研のあり方という形で以下のような発言がございましたので、順不同ということで整理させていただいております。

まず1点目が、データベースなどの成果の発信。2点目が若手研究者が成果発信できる仕組み。3点目が研究者コミュニティの組織化。4点目が海外の図書資料の収集。5点目が人材育成ということで総研大の活用。6点目が東日本大震災を踏まえまして、社会貢献に寄与する研究プロジェクト。7点目が現在あります日本語教育・情報センターについて、研究系とすべきと、そういう論点。最後になりますが、この国語研全体の名称について、「日本語研究所」とするようなことの検討についてというような意見があったかというふうに思っております。こういう形で第2回に行われましたヒアリングについて、簡単に事務局のほうでまとめさせていただきました。

1枚おめくりいただきまして、2番のところでございます。学術分科会、平成20年7月の分科会報告におきます提言事項でございます。「新しい大学共同利用機関の組織整備の基本的な考え方」ということと、附則第14条を踏まえた論点ということでございます。報告書のほうは1、2、3、4ということで基本方針、研究領域、主要事業、組織・運営と、4つの事項について記載してございますので、それぞれこの記載事項に沿った形で、人間文化研究機構の検証の中から、水色の冊子のところからこれに該当すると思われる箇所をここに引用してございます。この資料の分量の関係で全部引用しているわけではございませんので、ある程度事務局のほうで簡略化という形でさせていただいておりますが、学術分科会報告平成20年7月に提言した事項に沿う形で、今の国語研の現状がどうなっているのかと、そういう観点からまとめさせていただいたものでございます。これは、今回おまとめいただく報告書そのものになるということではなしに、あくまでもこれから議論していただく際の素材というのでしょうか、議論のもととなるデータということで掲げさせていただいております。

まず、2番の論点の1つ目、「基本方針」でございます。枠が2つございます。1点目が新国語研が2つの点に重点を置いているということで、国際連携と社会貢献、この2点に重点を置いているということ。これが3ページのところに該当の箇所がございまして、これを引用しております。2つ目の論点でございますが、枠のところの一番下にございますが、「日本語研究の世界的拠点となることを目指している」ということで、いろいろとございますが、文法・音声・意味・語彙から、言語動態、地理的方言、言語変化、そして諸外国語との比較対照、あと外国人に対する日本語研究などさまざまな研究をやっておりまして、日本語研究の世界的拠点となることを目指しているということでございます。

2つ目の小さい論点、「研究領域」についてということでございます。まず、ここの枠囲いを見ていただきますと、今の新国語研には4つの研究系及び3つのセンターが設置されているということで、研究系には、理論・構造研究系以下4つの研究系が、また、センターとしては研究情報資料センター等々のセンターが置かれているということで、1枚おめくりいただきまして、次のページのところでございますが、これら4つの研究系と3つのセンターの有機的連携によっていろいろな活動を推進しているということでございます。

あと、共同研究プロジェクト、具体的なところにつきましては2行目のところにございます、研究所全体の総合的テーマ「世界諸言語から見た日本語の総合的研究」のもと共同研究を推進しているということ。

次の枠囲いでございますが、新たな研究分野ということで、ここにございます「文法や音韻の理論的研究」とか、「古典語等の歴史的研究」等々研究分野を広げて、こういう「基幹型」15件等々の研究を実施しているということでございます。

次のところ、有機的連携とございますが、この4研究系、3センターの有機的連携ということで、1つの例として、日本語教育研究・情報センターの共同研究プロジェクトの「日本語学習者用基本動詞用法ハンドブック」の作成において、こういう有機的な連携が行われているという説明でございます。

このページ、一番下のところでございますが、日本語教育研究につきましては、新国語研に「日本語教育研究・情報センター」というものも旧独法から受け継いで、新たに発展させる形で設置したという旨の記述がございます。

1枚おめくりいただきまして、次のページのところでございます。3の「主要事業」というところで、最初の白丸、資料・情報の収集ということでは、海外の図書資料等の収集にも力を入れているということ。

次の白丸、情報発信のところでございますが、情報発信を研究情報資料センターに一元化したと。あとウェブサイトも全面的につくり変えたという記述がございました。

3つ目の白丸、刊行物のところでございますが、刊行物につきましては即応性を重視して、ウェブサイト上での発信を基本としているということ等々の記述がございます。

次の黒ポツでございますが、国民の言語生活に関する調査研究ということでございます。いろいろされておりますが、1つの例として、これまで旧国語研において継続的に実施されました岡崎市における敬語の調査ということで、こういうものを引き継ぎ、さらに旧国語研時代のものを完成させて、新プロジェクトという形で「敬語と敬語意識の半世紀」、こういう研究プロジェクトを推進して、その成果を活用しているという旨の記述がございます。

あと、コーパスにつきましては、最後のところでございますが、第二期中期目標計画期間中に日本語を素材とした100億語規模の超大規模コーパスを構築するという記述が8ページのところにございました。

次のページでございますが、日本語教育に関する調査研究のところでは、下のところにございますが、新しく基幹型共同研究プロジェクトというものを立ち上げまして、「多文化共生社会における日本語の教育研究」というものを実施、推進しているという記述がございました。

2つ目の黒ポツ、新たな領域における調査研究のところでは、1つの例として、ユネスコが認定しております消滅危機の言語ということで、この共同研究プロジェクトは「消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究」を実施していると、そういう記述がございました。

3つ目のところ、白丸の国際交流のところでございますが、新国語研、今の国語研におきまして、オックスフォード大学、マックスプランク進化人類学研究所等と連携しているということや、国際シンポジウムとか、海外の研究者、研究機関とのネットワーク構築に努めているという記述がございました。

また、白丸、研究成果の還元のところでございますが、国際シンポジウム、フォーラムでありますとか、若手研究者向けの「NINJALチュートリアル」とか、児童・生徒向けの各種行事を実施しているという記述がございました。

一番最後のところ、白丸の政策への貢献のところでございますが、省庁からの委託事業の実施、審議会等への参画等々、主体性を持ちながら政策にも貢献しているという旨の記述がございました。

1枚おめくりいただきまして、「組織・運営」のあり方についてというところでございます。1つ目、研究教育体制ということで、他の大学共同利用機関と同様に研究者コミュニティの意見を広く受け入れるということから、外部研究者が過半数を占める運営会議というものを設置して、これを踏まえた運営というものを心がけている、実施しているということでございます。

あと、研究体制の国際化というところでございますが、外国人研究者を専任、客員、共同研究者としてそれぞれお迎えいたしまして、研究体制の国際化を図っているという記述がございました。

最後でございますが、若手研究者育成ということで、これまで実施してきておりました一橋大学との連携大学院というものに引き続き協力するということと、あと、若手研究者向け講習会ということで、ここにございます「NINJALチュートリアル」という新たな仕組みを構築して実施しているという記述がございましたということでございます。これが論点2点目の新しい国語研の組織整備についてというところでございます。

あと論点3点目でございますが、今の国語研が大学共同利用機関足り得ているか、学術研究を推進するための中核的研究機関足り得ているかという論点でございます。これにつきましては、水色の人間文化研究機構の検証の16ページに「まとめ」という記述がございまして、ここにおきまして機構としての考え方が簡潔にまとめられておりますので、それを大体引用するような形で整理させていただいております。

まず、1つ目の枠囲いを見ていただきますと、新国語研の活動はということで、旧国語研のデータベース等の業務を適正かつ発展的に承継するということと、新しいテーマ「世界諸言語から見た日本語の総合的研究」、そういう大きなテーマに研究所全体として取り組んでいるということ。あわせて、旧国語研では行われてこなかった、例えば日本語の理論・構造研究等々の分野を新たに含んで活発な共同研究が行われるようになったということで、この新国語研は現代日本語研究を中核として、歴史研究を含む言語研究領域を包括する役割を果たしているという認識についての記述がございました。

2つ目の枠囲いでございますが、「また」というところで、日本教育研究分野につきましてもということで、従来の研究内容を承継するとともに、ここにありますコーパスなど幅広い学問領域と連携を保つことが当該分野の一層の発展に寄与するということ。

3つ目の枠囲いになりますが、こういったもろもろのことは、全国の大学の研究者による共同研究を推進するだけでなく、例えば、コーパスなど大規模な調査研究を行う中核的機関としての役割を担うでありますとか、海外の日本語研究者に対しても研究の方向性等を示し得る学術研究機関としての役割を果たしているということで、国内外の日本語研究者に開かれた協業の場を提供しているというふうな認識を示してございます。

4つ目の枠囲いでございますが、大学共同利用機関法人人間文化研究機構のもとに設置されているということで、そこの傘下という利点を生かして、文化の研究としての観点から我が国の国語をとらえる研究を推進するなど、学際的な研究も積極的に実施しているというところでございます。

おめくりいただきまして、これが結論でございますが、最後のところになりますが、今の新国語研は、大学共同利用機関として、国際研究拠点として、日本語を世界諸言語の中に位置づけて、日本語以外の言語研究や関連する分野との共同研究を推進する業務を十分に実施していると評価できるということで、大学共同利用機関としての実質を備えているのではないかというふうな結論が取りまとめられたというところでございます。

以上、長くなりましたが、第2回のヒアリングの際の委員の皆様からいただいた意見と次の論点、2つ目の論点、3つ目の論点について、人間文化研究機構がおまとめいただきました報告書から関連と思われる部分を抜粋いたしまして、これからの議論の参考というふうにして、事務局のほうで整理して素材の提供をさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

【樺山主査】

ありがとうございました。お聞きのとおりでございまして、1回目及び、特に第2回目までありました議論を中心としておまとめいただきまして、かつ、機構から提出されております報告書の中身もしんしゃくしながら、以上のような差し当たりのまとめをつくっていただいたということでございます。あくまで差し当たりでございますので、この後、1回、もしくは2回、できれば2回で、さまざまなご意見をいただきまして、最終的な報告に持っていきたい、こんなふうに考えております。

そこで、本来、議論に入るべきところですが、これに先立ちまして、本作業部会の今後の審議及び報告書の取りまとめに際して参考にしていただきたいということで、尾﨑委員から、資料3のとおり、質問とご意見等をご提出いただいております。前回の会議の後でございますが、資料3をごらんいただければと思います。お手元にありますでしょうか。

資料3は、(A)質問と(B)私見に分かれております。(A)の質問につきましては、具体的な確認でございまして、人間文化研究機構にご回答いただくことになりますが、質問数が多数であること、日時が迫っておりましたということから本日は間に合いませんでしたので、取りまとめ次第、速やかに各委員にお送りいただくということにさせていただきます。これはお送りいただくわけですね。

【澤川学術機関課長】

はい。

【樺山主査】

追って、できるだけ早く各委員にお送りいただけるということでございますので、そちらをごらんいただければと思います。

それから、(B)でございますが、(B)の私見については、提出者であります尾﨑委員から、この文章に基づきましてご説明いただきたいと存じますが、全体の時間が限られておりますので、できれば5分程度でもってお願い申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

【尾﨑専門委員】

ありがとうございました。資料4ページの(B)のところで私の個人的な意見を書かせていただきましたけれども、個人的であると同時に、日本語教育の実践及び研究にかかわっている国内・海外の関係者の気持ちを代弁したいという、かなり大それた気持ちもあって、このような資料を提出させていただきました。

まず、1)番、「国語に関する学術研究の推進について」報告という平成20年(2008年)7月7日に出された報告書についてでありますけれども、この報告書は国語に関する学術研究について、大学共同利用機関の中でどうあるべきかという基本的な理念、考え方、それを組織としてどう位置づけて人を配置するかという、そのことに収れんした審議であったと思います。このような研究所ができるということは、私はすばらしいことだと思いますし、現に新しい研究所でわずか2年の間に大変立派なお仕事をしてくださったということは、人間文化研究機構の検証の報告書、あるいは国語研の要覧等からも十分にわかることで、私としては大変ありがたいことであったというふうに考えております。

もう1点は、旧国語研が廃止・移管というときに移管の中身が、国語研究を中心に検討されていたんだけれども、日本語教育については十分な検証・評価がなされていたのかという疑問がずっと残っておりました。国語研究所については、例えば1970年代の終わりに、既に日本語教員が必要になるという社会状況の見通しから、日本語教員の育成にかかわる研修事業というのを30年以上前にやりました。そこで勉強した人たちが、今、日本語教育の世界で国内・海外で活躍しているという事実があります。

さらに、1980年代に中国残留孤児の方々を日本が受け入れて教育をする。そこでの日本語教育というのは、留学生に対する日本語教育とは大きく異なる条件があって、残留孤児の方々、あるいはインドシナ難民の方々に対する日本語教育を行う上でどうしても必要な基礎的調査研究というのを国語研が中心になって引っ張ってくれたという事実があります。そのような調査研究に基づいて、日本語教育の内容であるとか方法について、私たちは多くのことを学んだ。さらに、80年代に国立国語研究所は、海外の、特に英語教育で何が行われているかという最新の情報を日本に持ってきて、日本語教育の文脈の中でどう扱うかという研究もしました。

それから、1980年代というのは日本が経済的に非常に発展して、日本語教育の重要性が認識されてきた時期でしたので、中曽根内閣で留学生10万人計画というものが打ち出された。そうしますと、10万人を達成するために必要な教員の養成であるとか、試験制度であるとか、さまざまなことを決めていかなければいけない。これは政策面でどうしてもやらなければいけないことでしたから、日本語能力試験であるとか、大学における、あるいは大学院における日本語教員養成の中身について検討しなければいけない。それから日本語教員として必要な資質能力をはかるための日本語教育能力検定試験。こういったことが80年代にかなり日本語教育の制度として固められた。そのときの基盤となる情報を提供していたのが国立国語研究所であった。これも事実だと思います。

80年代に日本の景気がどんどんよくなったんですけれども、実は人手が足りないということで、80年代に海外から移民を受け入れるかどうかというような議論がマスコミでも行われていました。90年代に入って、実際に日系の方たち、主に南米から多くの方が日本にやってくるようになりました。それから国際結婚という形で多くの方が日本に移り住むということが1990年代に顕著になったわけですけれども、このような日系の方とか、国際結婚の方は、日本語について基礎的な学習をするという機会がないまま日本に根をおろしてきています。こういった方々に対する日本語教育を大学の教員がやるということは現実には考えられません。実際には、地域、身近に暮らしている一般の日本人の方たちがボランティアとして、ブラジルの方とか、国際結婚の方とか、あるいは技能研修生とか、さまざまな地域に暮らす外国人の日本語教育を一般市民がサポートして20年たっているわけです。

このような日本語教育に対して、大学の日本語教員は残念ながらあまり大きな貢献はできなかった。そこをやってきたのは国立国語研究所の日本語教育基盤情報センターだったわけです。センターはボランティアの方たちの研修であるとか、教材開発であるとか、ネットワークづくりであるとか、そういったことをずっと積み重ねてこれまでやってきた。こういった仕事、30年以上の仕事を通して、膨大なデータが蓄積されていて、それの分析も、実はまだまだやるべきことが残っていただろうと私には思われるわけですけれども、現状としては、旧国語研が廃止ということで新たな研究所ができた。ですから、かつて国研が30年以上蓄積してきた日本語教育にかかわるデータ、人的リソース、国内・海外で行ってきた調査等を一体どこが引き継ぐのか。そのことをずっと日本語教育の関係者は心配して事の推移を見つめてきたということであります。

今回このような形で、新しい国語研究所のお仕事についていろいろ意見を言わせていただけるということは、私は非常にありがたく思っておりますし、国語研が日本語教育についてもさまざまな工夫をしてくださっているということは私も理解ができております。結論的には、今回の4つの論点のうちの一番最後、「まとめ」、今後に対する期待というところで幾つか書かせていただきましたので、資料を後ほどお目通しいただければありがたいと思います。

最後に1点、言語研究と言語教育、あるいは日本語研究と日本語教育を比べたときに、どちらかというと、日本語教育のほうがもうちょっと生々しい、現に目の前に困っている人がいますから、困っているのは日本人も困っているんですね。日本語が十分じゃないから苦労しているのは外国人だけじゃない。周りにいる日本人も困っている。こういったことについてどうしたらいいかということは、これは政策的な事柄ではありますけれども、きちっとした政策を進める上での基盤研究、これはどこかでやっていただかなければいけない。ところが、政策というと、どうしても政府がこういう研究をしろというようなことになりがちだと思います。もともと昭和23年の国立国語研究所ができたときの法案の最初のほうには、国は金を出すけれども、研究には口を出さないというような趣旨のことが書かれていたと思うんです。本来、研究とはそうあるべきものだと思うのですけれども、研究をするということが、今現に起きている社会の抱えている課題とか、この先、必ず来るであろう課題に対して研究者としてどう取り組むか。このことはぜひ、どのような形態の研究所であれ考えていかなければいけないことなのではないか。私自身はそのような気持ちでこの文章を書かせていただきました。長くなりまして、申しわけありません。

以上です。ありがとうございました。

【樺山主査】

ありがとうございました。

それでは、各委員からいろいろご議論があるべきところでございますが、それに先立ちまして、まず、ただいま尾﨑委員からご説明いただいたことにつき、人間文化研究機構から何かご発言ございますでしょうか。

【金田人間文化研究機構長】

尾﨑委員のほうから日本語教育の現状や生々しい必要性の点につきましてお話をいただきまして、大変ありがとうございます。

その生々しい現状というのは、おそらくご指摘のとおりであるのだろうとは思いますけれども、ご指摘の中にもございましたように、具体的には政策をどのようにするのかということが一番大きなわけでございまして、例えば、平成20年の研究環境基盤部会での結論も尾﨑先生がおつくりくださったペーパーの中に、4ページの上のほうに引用してございますけれども、その引用でも、日本語教育に係る基準の開発や云々というところは別途検討を行うことが望ましいという形で位置づけられているわけですし、政策的に極めて重要なことであろうというふうには理解いたします。

そのことと、今度、人間文化研究機構で国立国語研究所の機能を整備するようにという研究環境基盤部会の結論によりまして、我々のほうでその準備を進めて現在に至っているわけですけれども、そこでの基本的なスタンスの問題に大きな制約がございます。基本的に大学共同利用機関法人として推進をするためには、日本語研究及び日本語教育の研究というのが、これは重要なことでございますので、それは推進する体制をつくっているつもりでございます。私はそういう理解をしておりまして、新しい国語研の4つの研究系、そして3つのセンターが相互にリンクしながらやっていくというスタイルをつくっているんですが、これは非常に重要なことだと思っておりまして、大学共同利用機関の大きな役割は、研究を推進することと、その情報を的確に発信することでございます。その情報を的確に発信するためには、研究の各部門で推進されているさまざまな情報を、その個別の狭い観点に限定されずに広く発信するということが必要でございますので、そういう意味で4研究系の方々も協力して、新しいセンターで発信するという形をとっておりますので、私は、現在のところ、これが完璧な理想とは申しませんけれども、それに比較的近い形での体制をつくっていただいているという理解をしております。

もちろん、大学共同利用機関の組織は永久不変のものではございませんので、必要に応じて、研究者コミュニティのご意見もきちっと踏まえながら、あるいは世界の研究レベルをにらみながら、どういうことが必要なのかということに対応した研究体制が必要でございますので、不断に見直しをする必要がございますけれども、今のところは、私はそういう意味では、理想とは申しませんけれども、それに近い形がとれているのではないかというぐあいに理解をしております。

なお、私自身も実は常に戸惑っていることがございまして、つまり、これは行政の枠と言えばそれまでですけれども、外国人の英語教育という観点からは、これは主として外務省が主導的に進めるということになっております。つまり、具体的には国際交流基金でありますとか、そういうところが非常に熱心にやっております。そこのところとの協力も、部分的に必要な限りでは協力はしておりますけれども、体制はなかなか難しいところがございます。文化庁が設定される委託研究も既に新国語研でお引き受けして、それに対する成果を出し、報告を熱心にやらせていただいておりますけれども、それらは政策的には役に立っているのではないかとは思いますけれども、そういった教育にかかわる部分の現場の生々しいことというのは我々も当惑することも多いわけでございますけれども、それらも含めて、研究所のデータとしては研究し、発信するということは必要になるだろうというふうに理解をしております。そういうことで、ただいまいろいろとご指摘いただきましたところを、改めて私も問題の所在について思うところがございましたので、一言、余分なことですけれども、発言させていただきました。

【樺山主査】

ありがとうございました。

それでは、影山所長、何かこれにつけ加えてご発言ございますでしょうか。

【影山国立国語研究所長】

尾﨑委員には、新しい研究所について隅々まで見ていただいて、評価いただきまして、ありがとうございます。特に1970年代、80年代という昔の懐かしいお話をいただきまして、ああそうだったなということで私も思い出しております。そのころは私自身、英語教師でございましたけれども、日本語教師養成講座なんて駆り出されまして、日英比較なんていう講義をした覚えがあります。ただ、まず1つ指摘しておきたいのは、報告書の第1ページにございますように、今回の検証の委員会は、独立行政法人整備合理化計画に伴う法律、それの施行に際しての附則でございます。ですから、1ページ目の冒頭の段落に書いてございますように、新国語研といいますのは現在の大学共同利用機関としての国語研、旧国語研とここで書かれて統一していますのは、この報告書では、63年間すべての過去の研究所を指すのではなくて、独立行政法人の中のあの時代、4年、5年のことだけを指してございます。ですから、1970年、80年代、非常に私自身も楽しかった。あのことは残念ながら今回の検証事項には含まれないと私どもは承知して報告書をつくりました。

それを踏まえた上で、先ほど学術機関課課長からも前回のまとめを出していただきましたけれども、改めまして、私のほうから旧国語研、つまり、独法との比較において新国語研がどういうふうに新しくなったか。新規性というものを4つにまとめて復習させていただきたいと思います。といいますのは、前回ご欠席の方もおられましたので、改めまして、先ほどの澤川課長からの報告とダブる部分がございますけれども。

まず1番は、研究内容の新規性。つまり、独法時代にやっていなかった事柄を始めたということです。これはまず第1に、危機言語、危機方言に関する調査研究。それから諸外国語との比較研究、対照研究。外国人から見た日本語教育の研究。この際、これが最も重要でございますけれども、真に学際的な日本語教育研究を目指しています。そのほか、国語研の看板の1つであります現代日本語コーパス、これを超大規模コーパスに向けて現在始めました。それから歴史にも注意を払うということで、古典語・古代語コーパスに着手し始めました。それから独法のときになかった理論・構造的研究、言語学的研究も開始しました。それが言語研究内容の新規性、すべて研究所の要覧及び前回のブルーの報告書に盛り込まれていることでございます。

2番は研究方法の新規性。これが何よりも、独法では調査研究と呼んでおりましたけれども、大学共同利用機関として、専門的な用語としての共同研究。すなわちこれは大学間の大規模共同研究を指しています。大学間の大規模な共同研究を、国内だけでなくて国際的にも展開するという、この方法が新しいところでございます。

内部組織につきましては、独法のとき、あるいはそれ以前、よく私は承知していませんが、大学で言いますと、昔いろいろ問題になった縦割り方式、いわゆるタコつぼ方式、これは廃止しまして、研究系とセンターの連携体制と。あくまで研究所全体が一体であると、そういうことを明確に打ち出しております。これによって研究所全体が一体で、これが全国の大学研究者と手をつなぎ、さらに世界の研究者と手をつなぐということで全国的、国際的な研究協力体制、これが研究を進めていく方法論の新規性でございます。

3番目は社会貢献の新規性。独法のときにもさまざまなことをされてこられましたけれども、つけ加えまして、成果をより早く、迅速に、そして世界じゅうに行き渡るような発信体制、すなわち電子化によってウェブで発信する。頻繁な更新を行う、アップデートを行うということを実現いたしました。そして、催し物といたしましては、対象、聴衆ですね。一般市民なのか、生徒なのか、専門家なのか、対象に応じたさまざまな各種のイベントを企画し、年に数回ずつ実施しております。

4番目としましては、先ほどの話にもございましたけれども、若手研究者育成についての新規性。これは国語研独自で考えたもので、ほかの大学共同利用機関にもまだ見当たらないようでございますけれども、チュートリアルという制度を設けました。全国の院生を中心に受講生を公募いたしまして、もちろん受講料はなしで、我がほうの主導的な教授が国語研ならではの、普通の大学では学べないような内容を講義すると。これにつきましては、これまでのところ、危機方言、音韻論、コーパス等のチュートリアルを実施してきましたけれども、前回ご紹介いたしましたように、来年4月に正式な教授が2名着任されますので、来年度は日本語教育のチュートリアル、これがある意味では尾﨑委員のおっしゃった教師養成講座、ぴったり同じではございませんけれども、趣旨としては、大学院生、これから教師になろうとする人たちに対する講義、そういうものを準備してございます。

以上が研究内容の新規性、研究方法の新規性、社会貢献の新規性、そして若手研究者育成に対する新規性ということでご説明いたしました。

それを踏まえまして、今ご説明、特に質問の(B)という項目にございます、私、先ほどから繰り返していますように、日本語教育に対する重要性、十分に所員全員が認識しております。そのために、この日本語教育研究・情報センター専任の所員だけでなくて、兼任制度ということで研究系からも、あるいは外部の公募型の共同研究という形でも日本語教育にかかわるもの、それは書き言葉だけではなくて、話し言葉も含めて、さまざまな共同研究を実施して、研究所全体として、一体として取り組んでいます。

その観点からしますと、ここの質問書にございますようなところ、もう少しご理解いただきたいということがございます。質問書の、先ほど朗読されたかどうかわかりませんが、(B)のところの下のほうに、新国語研が「外国人に対する日本語教育に関する科学的な調査及び研究並びにこれに基づく資料の作成及びその公表」ということが附則第14条で盛り込まれていますが、実はこれ、外国人に対する教育だけではございません。その前に、「国語及び国民の言語生活」というのがございます。省略しないですべて朗読いたしますと、「国語及び国民の言語生活並びに外国人に対する日本語教育」、これに関するものを行えということでございます。

そうすると、私たちの立場はここで見えてきていると思いますけれども、この報告書でも、国語に関する研究と一言でまとめていますのは、今申しました3つです。「国語及び国民の言語生活並びに外国人に対する日本語教育」、このセットを、長いものをコンパクトに「国語に関する研究」と称しているだけでございます。すべて教育もここに含まれてございます。そして、研究の実施体制、運営体制も、先ほど申しましたように全研究所的に、全所的な体制で取り組んでいます。

私としましては、(A)のご意見をちらっと見ましたら、(A)の最初で、日本語教育と日本語教育研究とは別物ではないかというご意見も賜っておりますように感じましたけれども、もしそうでしたら、私どもの研究所の姿勢とは異なるというふうに説明させていただきたいと思います。言葉というのは非常に複雑なもので、文法もアクセントも意味も教育も、子供も赤ちゃんの習得もすべて一体のものが言語でございます。それをある部分だけ切り離して、ここの組織でやりましょう。それは言語の全体像を見失う、適切な方法論とは言えません。私たちは、習得も含めて、理論的・構造的研究、方言研究、コーパス構築、言語資源も含めて、すべてをお互いに、言語というものそのものが複雑に絡み合っておりますから、私たちの脳の中で絡み合っておりますから、ある部分だけをセクションとして、組織として分けるということはしない。独法ではそうしたかもしれませんが、それはしないというのが私たちの新規性でございます。とりあえず、ご説明は以上です。

【樺山主査】

ありがとうございます。

今、尾﨑委員からいただきました文書のうち、特に後半部分、私見部分を中心としてご説明いただき、それについての機構及び研究所からのご意見もいただきました。これを中心として、これから議論をさせていただきますが、もちろんこれだけではございません。前回、前々回に議論いたしましたことも含めまして、さまざまな論点があるかと存じますので、いろいろと皆さんのご意見をいただきたいと存じます。何分にも時間が限られておりますので、恐縮ですが、なるべくご意見につきましては、簡潔にご説明いただくことができればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

【影山国立国語研究所長】

議長、済みません、一言だけ重要なことを申します。今、私が申しましたこと、一体性というようなことは個人の考え方ではございませんで、運営会議の中で、発足当初、運営会議委員2名、客員教授1名、日本語教育にかかわる承継職員5名でしたか、6名、すべてを含めた日本語教育研究のあり方と、国語研のあり方というワーキンググループをつくりまして、3回にわたって議論していただいたもの、これはまだ公表されていなくて、内部資料にとどまっているようでございますけれども、そういったところでコミュニケーションを含め総合的に研究しないといけないという方向が出ていました。それをかいつまんでご説明したものです。

以上です。

【樺山主査】

それでは、現在の日本語教育の問題及びそれを含めまして、全体にかかわるご議論をいただければと思いますが、どなたからでもと申し上げたいのですが、飯野委員が今回ご出席いただきまして、ご多忙のところ、中座されると伺っておりますので、もしございましたら、可能でしたら、先にご発言いただけますでしょうか。

【飯野専門委員】

もうちょっと考えさせてください。申しわけございません。

【樺山主査】

何時までおいでに。

【飯野専門委員】

あと15分ぐらいまで。申しわけありません。あるいはこの次に意見を申し上げさせていただきます。

【樺山主査】

それでは、どなたからでも結構でございますが、なるべく多様な論点から、また多様な方々からご意見をいただきたいと思いますので、その旨ご理解くださいませ。いかがでしょうか。

もしございませんでしたら、ゆっくりと間に考えていただくことにしまして、今お答えがございましたので、これに対するご意見を尾﨑委員から、恐縮ですが、簡潔にいただきまして、その後、飯野委員にお願い申し上げますので、その旨ご理解ください。

【尾﨑専門委員】

ありがとうございます。先ほど機構長のほうから日本語教育は外務省が管轄だというようなお話があって、一部外務省が主に海外における日本語教育ということで、ただ、外務省は調査研究機関ではありませんので、海外の日本語教育を盛んにするための政策を考えるということだと思います。一方で、日本国内の日本語教育については、大学に関しては文科省が所管なさっていて、地域の日本語教育と私たちが呼んでいるような在住の方に対する日本語教育は主として文化庁が所管されているということで、日本語教育については、2つないし3つのところがかかわっているわけです。そこら辺のそれぞれやっていることを、日本語教育にかかわる教育者、研究者として、お互いに情報をしっかり伝え合って、お互いに学び合うというようなことを日本語教育学会、あるいは似たような研究者グループがやっているというのが現状でございますので、1点追加させていただきたいと思います。

それから、所長のお話には大変感動しました。言語ってそういうものだというのは、私も全くそのとおりだと思います。そういうふうに考えましたときに、言語の研究というのが、人間と切り離して、言葉そのものの研究の対象にもなり得ますし、一方では、人と人を結ぶ言葉、その場合に言語習得というようなことが、頭の中で何かを理解して、何かを覚えて、覚えたことを思い出すというような認知心理的な心理学的なアプローチの習得もありますし、一方では、社会的な環境によって言語習得の成果は随分変わってきます。そういった社会との環境のかかわり方であるとか、あるいは外国人の日本語に対して日本人がどう評価するかとか、非常に複合的な研究をしていかないと、実は日本語教育そのものが科学的にもきちっとしたものにはなり得ない。そのような問題意識を持っておりますので、今の所長のお話、しかも、それが国語研の中の日本語教育にかかわる先生方の統一見解であるということを伺いましたので、非常に私はうれしく思っています。ぜひそのような考え方がより具体的に、プロジェクトのテーマの設定であるとか、あるいは組織のありようについてご検討いただけたらというのが私の希望ということです。

それで、国語研の要覧の初めを見ると、どうしても言語の理論とか体系に関する研究、それが人間の研究につながっているという書きぶりであったかと思います。チョムスキーの研究も突き詰めていけば人間の研究だというふうに考えていいかと私は理解しておりますけれども、同じようにもうちょっとコミュニケーション、社会と言葉というような観点から、ぜひ研究を進めていただけたらありがたいというのが私の希望であります。

以上です。

【樺山主査】

ありがとうございます。機構及び研究所の皆さんも含めてご自由にご発言いただきたいと存じますけれども、いかがでしょうか。

それでは、くどいようですけれども、飯野先生、もし可能でしたら。

【飯野専門委員】

私、尾﨑先生のご質問、まだ勉強不足のままでございますけれども、先ほど所長がおっしゃいました言葉の研究、それから言葉の教育というものが一体化したものであるというか、全体として見るものであるという、その考えは、数年前の分科会、作業部会で話し合った結論でございましたので、私どももそれを推進していこうという姿勢だったと記憶しております。その上で、将来どういうふうに発展していくのか。どういうふうにこの研究所が、この研究、あるいは教育というものが進んでいくのかというときに、尾﨑先生がおっしゃっていらっしゃいます日本語教育の世界的な研究拠点になるための方策とか、もう少し高い部分といいますか、広い部分ということを考えていくべきなのかなという気はいたします。それが何であるか、どうすべきであるかというのは、今すぐには思いつきませんけれども、そこを目指すことが非常に大事であろうと。これはその前の作業部会でも話し合われていたことでございます。

【樺山主査】

飯野先生におかれましては、これに先立つ前身の作業部会で座長をお務めになったと伺っておりますけれども、それ以来、国語研といたしましてもいろいろな努力をされて、結果としてここまでたどり着いたということでございますので、これをもとにして、今後、私たちもいろいろまだ期待すべきこと、お願い申し上げたいことがたくさんあると。この部会はそこも含めて考えていきたいと、そういう部会でございますので、よろしくお願い申し上げます。

【飯野専門委員】

こちらこそよろしくお願いいたします。

【樺山主査】それでは、どうぞ。この日本語教育の論点以外も含めまして、ご議論ありましたら、遠慮なくご発言ください。上野先生、いかがでしょうか。

【上野専門委員】

過去の事実経過に関して、一言お話ししたいと思います。ご存じかとは思いますけれども。「国語に関する学術研究の推進について」という報告、これに実は私はかかわりました。そもそもその前に移管の話が出たときに、人間文化研究機構でそのための打ち合わせというのがありまして、その段階から私は委員として参加しておりました。それで、最初の会議に出たときに、当時のたしか石井さんでしたね、機構長が、基本的に旧国語研究所を発展的に継承するけれども、日本語教育は機構の組織になじまないという発言をされました。特にそれに対して意見も出ない形で、ずっとそのまま最後の「国語に関する学術研究の推進について」という形までまとまったものです。したがって、先ほどお話にありましたように、日本語教育に関しては、「別途、検討を行うことが望ましい」という形でこれが成立したという経緯があります。たしかその後に附帯決議がなされたというふうに記憶しております。それを受けた後のことは、先ほど所長からおっしゃったような形で、国語研究所のほうでそれを踏まえて、現在の体制につくり上げたという経緯であると理解いたしております。そのことを、まず事実報告として、私が把握している形でお話し申し上げました。

【樺山主査】

ありがとうございます。今の上野委員のご発言の件ですが、そのように理解してよろしいでしょうか。これは機構長でも、所長でも。

【金田人間文化研究機構長】

大学共同利用機関としての使命は、今上野先生のほうからご紹介いただきました趣旨の流れの中にございますので、そのような経緯があったのだろうということは十分理解できます。

【樺山主査】

どうぞ。

【影山国立国語研究所長】

多少補足いたします。先ほどの飯野先生からのご指摘ありました、これは尾﨑委員が書かれていることですけれども、研究所が世界の研究拠点となるんだというところに日本語教育研究に関しても世界の研究拠点、これは当然のことでございますが、研究所の要覧等でうたっています日本語に関する研究というのは、くどいようですが、教育も含めた意味でございます。教育も含めた意味で世界的なものになるということで、ただ、日本語教育センターのほうは、基本部分と比べますと、半年法律の関係で準備がおくれましたから、まだまだ不十分なことがございます。その点で、日本語教育学会はじめ、さまざまな方々にご協力いただいて、ここが中心になるんだというふうにサポートしていただければ非常にありがたいと思います。

【樺山主査】

ありがとうございます。この論点及びその他の点につきまして、まだご発言があろうかと思いますが、いかがでしょうか。

【東倉国立情報学研究所副所長】

私は国語分科会のほうの委員に属しておりまして、きょうは手違いで間違って出席したというような格好になっておりますが、発言させていただきたいと思います。

私は、国立情報学研究所で大学共同利用機関の情報システム研究機構の傘下でありまして、国立何とか研究所と大学利用機関ということで人間文化機構の国語研究所とは同じような構造の組織に属しておりますが、私どもの研究所として非常に大きな柱の1つとして、国語研究所とその柱が一致しておりますのは、国際連携ということで国際的な拠点になる。世界から見ても情報学の拠点として恥ずかしくない拠点になっていこうということで、それを目指しておりますが、その点、世界から見たということで、国語研究所でも共同利用機関になってから、外国人の研究員を教授、准教授としてお迎えになり、それから客員も含めて国際性が増した体制をとっているということで、それは承知しておりますが、世界から見た評価という点で、我々は国際アドバイザリーボードというようなことを組織しておりまして、世界約20カ国の我々とほとんど同じ立場の国の研究機関の研究所長レベルをアドバイザーとしまして、2年に1回会議を持っておりまして、それは世界から見た研究所の評価、あるいはその評価に基づいて研究所を運営していくということについても非常に役に立っておりまして、その分、非常にシリアスな意見を闘わすわけですけれども、国語研究所では、国際アドバイザリーボードに類するようなことを今やっていらっしゃるかということをちょっと伺いたいと思います。

【樺山主査】

スケジュールを間違えておいでになったという大変ラッキーなことでおいでいただきまして、ありがとうございます。オブザーバーということでご発言をいただきました。今、ご質問でございますので、これにつきましては、機構もくしは研究所からお答えいただければと思いますが、いかがでしょうか。

【影山国立国語研究所長】

非常にためになる重要なご指摘、サジェスチョンをいただきまして、ありがとうございます。国際アドバイザリーボードというのは、研究所の組織としては残念ながらまだ設けておりません。国内の中に運営会議がございまして、その中の委員1名だけが外国在住という形になってございます。ただ、去年から本格的に始動しまして、国際シンポジウム、とりあえず今のところ、去年、今年と音声・アクセントに関するものが主体ですけれども、それを開催するに当たっては、世界中から公募、発表を募集しますので、国際アドバイザリーボードをそのシンポジウム限定で設けています。これはその方面、アクセント、音韻論の関係の世界をリードする研究者に委員に入ってもらっていただいております。これをもう少し広げまして、そしてまた、報告書にもございましたように、ドイツのマックスプランクと連携をしている。それは向こうの所長と私との関係で非常に綿密にやっておりますし、オックスフォード大学のほうもオックスフォード大学の日本語研究のセンター長と密接にやっておりますが、それをアドバイザリーボードという形でしてはどうかということで、将来的にぜひ検討させていただきたいと思います。

【樺山主査】

大変重要なことかと思いますので、今後でしょうけれども、ぜひともこちらのほうにも注力していただきまして、文字どおり日本語の国際的な評価、あるいは日本語の国際的な地位、プレゼンスの向上というようなことに向けて積極的に取り組んでいただければと、私もそういうふうに考えております。今のご発言に応じまして、そのとおりかと存じます。

ほかにいかがでしょうか。砂川委員。

【砂川専門委員】

私もちょっと国際化ということに関して意見を申し上げさせていただきたいのですけれども、私自身機構に移ってからの国語研の活動にいろいろな形で参加させていただいていまして、独法化以来と比べて、はるかに機構が国際的になってきているということを身をもって感じております。

それから、系とセンターの連携ということに関しても非常にスムーズにいろいろな事柄が進んでいるということを見ておりますし、私も研究のメンバー、国語研の外部の人間ではありますが、共同研究という形で日本語教育研究・情報センターと、プラシャントさんは対照系でしたっけ、そして私は外部からの人間という形で基本動詞用法マニュアルの研究などもかかわらせていただきまして、非常に柔軟に、必要に応じていろいろな研究ができる。公募型の研究も外部から応募できる。その時代時代の必要に応じた研究ができるということは、非常に強く感じております。それが日本語教育のほうに、まだ2年間で始まったばかりですので、世界的な規模という形ではまだ広がりを見せていないように思うのですが、昨年国際シンポジウムなども開いております。

ちょっと心配なのは、日本語教育のミッションがあまりに大きくて、世界的に見てみますと、今では日本語のスタンダードをつくっていかなきゃいけないということが、これはヨーロッパでもアメリカでも広がっておりまして、日本でもスタンダードをつくらなきゃいけない。世界と連携してそういうふうな仕事もしなければいけない。それから地域の日本語教育というような非常に生々しい問題も抱えていて、政策に提言できるような何らかの基礎的な調査等も行わなければならないというような形で考えますと、日本語教育のミッションがあまりに大きいという気がいたします。現在の体制の中でそれだけの大きなミッションを抱えて、どうやってこれから国語研究所が日本語教育の分野を支えていけるのかということが、期待もいたしますし、1つの危惧として感じているところでもあります。

【樺山主査】

ミッションが極めて大きいということは、大きいからやめておけというご趣旨ではありませんね。

【砂川専門委員】

いや、違います。

【樺山主査】

極めて大変だぞという、そういうご指摘かと思いますので、これにつきまして、いかがでしょうか。所長からお話しいただけますか。

【影山国立国語研究所長】

よく存じのように、人数も非常に限られています。研究所全体でも30人しかいません。普通の大学の学部の半分しかいません。その中の日本語教育、併任を含めましても10人少しという体制でございますから、これから具体的にするにしましては、砂川委員のご助言もいただきながら、仕事の切り分けといいますか、我々がほんとうにすべき事柄を煮詰めていく。そしてまた、外部でやるべきことは外部のほうに、役割分担ということをはっきりさせないといけないかと思います。

それが1点と、もう一つは、国際的なことにつきましては、アメリカはアメリカで日本語教師協会みたいなのがある。ヨーロッパ、フランスにもブルガリアにもいろいろなところにある。そういったところも研究者コミュニティと広い意味でとらえましたら、そういうところから、個人的には今まで外来研究者で来られているんですけれども、もう少し体制として共同できるような、国際的連携がとれるような体制が可能かどうか検討してみたいと思います。

【樺山主査】

ありがとうございます。ほかの委員の方々、何かご発言ございませんでしょうか。

【尾﨑専門委員】

今、日本語教育のミッションが大き過ぎてというのは、私も全く同じで、国語研にそれを全部期待するなんていうことは、そもそもむちゃなことだと思っています。日本語教育にかかわっている人間がそれなりに、大学にも、いろいろなところにいますので、こういった日本語教育にかかわっている研究者が力を合わせてということなのですけれども、どうしても大学で仕事をしていますと、校務もあるし、教務もあるし、学生の論文指導等々の仕事があって、その中で研究をするというと、どうしても地域のことであるとか、そういったことについて、必要な研究になかなか取り組み切れないという悩みを抱えています。そこら辺のことで国語研がある意味リーダーシップをとってくださって研究テーマの設定等をお考えいただいて、共同研究ということだと非常にありがたいなというのが率直な気持ちです。

それから、世界の日本語教育に関しては、既にグローバルネットワークというものがあって国際大会というのも開いておりますので、国語研と私たち日本語教育の世界的なネットワークが一緒になって仕事を進めるというようなことは十分可能性があると思っています。

それからもう1点、先ほど上野先生から経緯のお話があって、私もそのように耳にはしておりました。石井米雄、当時のセンター長がおっしゃった真意が実はよくわからなくて、日本語教育は大学共同利用機関になじまないというご趣旨だったかと思います。そこでの日本語教育というのがどういうふうに受けとられていたのかなということは感じますけれども、きょう所長のお話を伺っていて、そういうことはもういいのであって、今現に国語研としては日本語と日本語教育、両方仕事として受けとめて何とかやろうとしてくだっているということがわかりましたので、あとは期待をしたいなと、そのように思っています。

【樺山主査】

機構長、どうぞ。

【金田人間文化研究機構長】

私の前任の石井米雄機構長のご発言の趣旨は、要するに日本語教育の教育の現場といいますか、教育そのものは大学共同利用機関の使命としてはそぐわないという、そういうご発言の趣旨だったというふうに理解をしております。したがいまして、日本語教育研究は当然ミッションの中に入るわけでございますけれども、教育そのものにタッチするといいますか、それを行うというか、それは大学であるとか、それぞれの地域のさまざまな組織でおやりいただくというふうな意味での教育はそぐわないということだろうと思いますし、我々が独立行政法人でありました旧国立国語研究所の人的リソースとか、ミッションの一部を承継するという形になりましたときの閣議決定も日本語教育を外して、現場の教育を外しているというのは事実でございまして、それは日本語教育にかかわる研究情報を発信する、研究して研究情報を発信するということは我々のミッションだというふうに心得ておりますけれども、現場の教育に当たるということは考えていないというのが実情です。

【樺山主査】

ただいまの機構長のご説明で私も適切かと思いますので、まだ文言等々につきましては、いろいろと修正等が必要かと思いますけれども、基本的にはそのような理解で今後も進めていければと思っております。それでよろしいのではないかと思います。

ほかにございませんでしょうか。

一言、先ほどの続きを私から申し上げますけれども、日本語、とりわけ日本語教育の国際化という点でございますが、私も外国で仕事をいたしておりますと、各所から日本語、あるいは日本文学も含めて、言語にかかわる教育研究に当たっての不都合、あるいは便宜の少なさということについて、さまざまに不平不満を聞かされます。今、私たちは日本語が大国だとは思っておりませんが、かつて大国だと思っていたころ、バブル時代でもありましょうけれども、そのころに、これだけ大きくなった日本の国がどうして外国における日本語及び日本文学、言語についての研究及び教育について、これだけ不熱心なのかということを繰り返し言われたことがございます。実際には、諸外国でありますので、地方とは申しませんけれども、少なくともナショナルセンター、あるいはそれに近いところで行われている教育に当たって、経済的、財政的にも、あるいは資料的にも大変困窮状態にあるということで、それに対して基本的な、あるいは根本的な援助、あるいは支援を日本政府、あるいは日本の学会が行うべきだということを幾度も幾度も聞かされました。私もほんとうに現実に現場を拝見いたしますと、極めて劣悪な状態にありながら、でもこれを何とかかんとか現場の熱心な日本ファンの方々、研究者の方々が埋めておいでになるというのが少なくとも10年から20年ぐらい前の現状だったと思います。

それに比べますと、とにかく先ほどご説明がありましたとおり、この10年間ぐらいの間に関係者の方々は随分いろいろにご努力、ご苦労なさったこともあって、随分といろいろ外国におきましても、日本からのさまざまな形の支援があると。書物も含めて、随分と供給されているなということを痛感しておりますので、こうした方向でもって今後、こちらの方向では努力する必要があるなと。とりわけ、ご承知のとおり、中国がいわゆる孔子学院という、これは現場の中国語教育でありますけれども、単にそれだけではなくて、孔子学院は、文字どおり中国の言語及び文字の研究及び教育にも積極的にかかわる外国にある在外の機関だというふうに当事者の方々は大変強く強調されます。それが現実にできるかどうかは別にいたしましても、実際にそうした努力の方向というのがあれだけ大国になった中国でもかなり強く痛感され、強調されているということに強い関心を持ったことがございました。そんなことから、今回、この国語研において日本語教育、あるいは外国語との連携といったような側面から新しい試みが豊かに行われることを大変強く期待したいと思っております。

何分にも、先ほどお話がありましたとおり、30名という甚だ小さい所帯であるというお話でありましたけれども、私たちがこれを2倍にしろと言っても始まる話では多分ないんですが、しかし、持っているミッションが極めて大きいということは繰り返し繰り返し言い続ける必要があるなと。したがって、今回私たちのこの報告書でも何らかの形で、金をくれというさもしい言い方はなかなかしたくないのですけれども、しかし、事実は、極めて現実はまだまだ不足の状態にありますし、またこれに対する要請が極めて高いということをぜひとも何らかの形で書き込みたいと。どんなふうに書けるかは事務局でご工夫いただければと思いますが、そこのところを特に強調したいなというふうに考えております。

【金田人間文化研究機構長】

予算と人的リソースの件につきましては、今現在の国家財政の厳しい中で、大学も含めまして、高等教育機関に対する予算も削減されざるを得ないという状況におかれておりますし、我々人間文化研究機構全体としてもそのとおりなんですが、国立国語研究所のプロジェクトについては、学術機関課のほうは大いにご理解を示していただきまして、少なくとも減少を何とか食いとめるよう努力をしていただいておりますので、一言お礼を申し上げておきたいと思います。

【樺山主査】

まず最初に、機関課にお礼を申し上げると同時に、期待を申し上げる。そこから始めなければいけないのでした。そのとおりでした。ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 何かほかにございませんでしょうか。多少時間は残っておりますけれども、きょうはいろいろな議論で……。どうぞ。

【尾﨑専門委員】

今の主査のお話を伺いながら、それから砂川委員のミッションの大きさ、それから機構長の財政的な厳しい状況、もろもろ考えていくと、やらなきゃいけないことがこんなにあるけれども、どうやったらできるんだろうな。そこら辺のことをこの委員会の報告の中に多少なり入れ込もうというお話が伺えたかと思います。1つには、ミッションが非常に大きくて、ある部分は生々しいといいますか、現に起きていることをどう解決していくかという、ある意味社会を変えていくようなフロントでの仕事ということもありますので、政策の立案にかかわる調査研究、場合によったら提言をするというような使命を帯びた組織、機関というのをやはり考えていただかないと、この問題は大学共同利用機関という枠組みの中だけではなかなかなし得ないことではないかな、そんなようなことを感じておりました。

以上です。

【樺山主査】

ありがとうございます。

それでは、多少時間が早めで残っておりますけれども、随分とご議論いただきました。

それでは、どうぞ。

【澤川学術機関課長】

済みません、もしよろしければ、今、国際的なというところでご議論をいただいて、非常に参考になるいろいろなご提言をいただいているわけですが、もう一つ、済みません、資料2のほうでは、国内外の中核的機関というようなキーワードが幾つかあろうかと思います。大学共同利用機関となったのは、国際的な顔になるという側面もございますが、国内外の日本語及び日本語教育研究のコミュニティの取りまとめというのでしょうか、そこをリードするというと語弊があるかもしれませんが、そういう存在としての大学共同利用機関ということだと思いますので、もしよろしければ可能な範囲で、国内の研究者コミュニティとの連携とか、そういう意味で、国内というところに視点を転じていただきまして、ご議論を賜れればと思っております。それは、尾﨑先生の資料3の6)のまとめのところの(3)というのでしょうか、下から2行目のところで「国内外の日本語教育研究者コミュニティとの連携」と。日本語教育はもとより、日本語研究者のコミュニティとの連携という観点もあろうかと思いますので、ぜひ大学共同利用機関の中核的な業務である研究者コミュニティとの連携ということで、国内という観点からご議論いただければ、取りまとめの際に非常に有益なものになるかと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

【樺山主査】

国内外ありますが、とりわけ国内、差し当たり国内の研究者集団、あるいは研究者との連携をいかに図っていくかということ、これについては、国研としては大変大きなミッションを帯びているのではないかと思いますが、これについて、まずは国研から現在考えておいでになること、あるいはこんなことができたらいいなという遠い展望も含めてございましたら、まずご説明いただけますか。

【影山国立国語研究所長】

必ずしも国内、国外と切り分けることができませんけれども、まず第1に共同研究者ですね。共同研究者のほとんどの方は国内の国公私立大学、そして一部の方は日本語教育機関、そのほか国際交流基金等の関連したところと、総勢500人弱ございます。その中の国立・公立大学は約30%、非常に大まかな数字ですけれども、三、四十%ということで出ております。私どもとしては、研究所は国立大学法人法にのっとっていますけれども、私立にも分け隔てなく協力していただくという姿勢をとっています。ご承知と思いますけれども、大学共同利用機関としての共同研究というのは、個人同士の共同ではございませんで、機関と機関の関係でございますから、共同研究者になる場合の委託も依頼も国立国語研究所長名で、先方の学長ないし学部長へ正式な委嘱状を渡して、教授会で認められれば応じていただくという、そういう体制です。それが今のところ非常に活発に動いていまして──失礼しました、もっと多いですね。先ほど約500名のうち、半分強が国立・公立大学です。もちろん民博等の研究所、博物館もございます。大学共同利用機関、私立大学が3分の1程度。その他公的機関、外国機関、その他が4分の1ぐらいになっています。ということで、国内のほうとしましては、もちろんそれに加えまして、所内でつくっております外部評価委員、それから運営会議委員が、それぞれの学会を代表する方々に出ていただいていますので、個別の学会、特定の学会と利害関係を結ぶということはもちろんありませんけれども、幅広く研究者コミュニティ、学者集団の意見を伺うという体制にしております。

共同研究のほうは、そういう体制ならもっと増やせばどうかというご意見もあるかもしれませんが、私たち第二期中期計画の中では、増やすだけではなくて、すばらしい成果を上げたところを限定的に充実させていく。逆に小規模のものは比較的短い期間、第二期中期計画の途中でも成果をまとめるというふうなことで柔軟に対応しています。ですから、この500人が1,000人になればいいという、そういうものでもございませんので、あくまで質ということですね。人数ではなくて、協力してくださる方々の学問的な背景、それをベースに考えていきたいと思っています。ちなみに、こういうのは公にいかがでしょうかという感想を求めるわけにはいきませんので、私や所内の者、客員の先生方を通じて非公式な形で、インフォーマルな形で、現在の姿は以前と比べてどうでしょうかということは、感想はいただいております。細かいことは、きょうこの場で申し上げるような内容ではございませんけれども、どなたも異口同音におっしゃっているのは、研究所の内部の活動が非常に外からアクセスしやすくなった、見やすくなった、ガラス張りになった、私も参加してみようという気になったと、そういうことを伺っております。ですから、学術機関課課長のご質問にございましたけれども、今のところはそのようにご返事いたしたいと思います。

【樺山主査】

ありがとうございます。この件、この問題につきまして、何かご意見等ございませんでしょうか。

国語、あるいは国文学等々だけではなくて、現在、学術会議を含めて、さまざまな機関で研究者コミュニティのあり方ということについて、大変いろいろな議論が必要だという議論が巻き起こっております。単に組織、機構がどうであるかということだけではなくて、コミュニティとして、当然コミュニティでありますから、参加人員が、参加する人間がどこからどんな形で参加するか。あるいはコミュニティは当然一種の倫理を含めた、モラルを含めたさまざまな問題を伴っておりますが、そうした事柄を含めて、研究者コミュニティの組織のあり方、あるいはそれに対する国、その他大学等の組織のかかわり方といった事柄が重要な問題であるということが近年大変強調されるようになりました。その意味ではぜひとも、国語の問題でありますので、国語研究者の方々の学問的なコミュニティの形成とそれの充実のためには、確かに国語研究所は大変大きなミッションを、役割を帯びていると思われますので、ぜひともそこの辺については感受性を磨いていただきたいなというふうに思います。

それで、1点伺うのですが、門外漢から伺います。国語研究は、もちろんさかのぼれば、はるか昔からあり、本居宣長までという話に必ずなりますけれども、近年、戦後というふうに仮にとって、あるいは国研ができて以来というふうに考えてもよろしいのですが、その間でもって研究の関心のあり方、あるいは研究組織のあり方という面で見まして、この10年、15年という間に大きな変化がどこにあったのかということを簡単にご説明いただけないかなという感じがいたしております。と申し上げますのは、今回、新国語研とここで言っておりますが、と旧国語研、その旧という場合には、独法になってから5年ですか。

【鈴木国立国語研究所管理部長】

8年。

【樺山主査】

8年ですか。独法になってから8年の、でも、それよりもはるかに長い旧国語研の前の国語研があったわけで、3段階ありました。その3段階の第1段階が極めて長かったわけですが、それと現在、旧国語研、新国語研という3段階の間にどんな展開があって、現在どういう地点に来ているかということを少し勉強させていただきたいなと思って、ここでご説明いただくのはとても大変かと思いますが、どんなふうに考えたらいいかということだけ、ちょっとヒントをいただけますでしょうか。

【影山国立国語研究所長】

お答えします。独立行政法人だったときも含めて、国の直轄だったとき、すべて基本的には直轄ということでミッションオリエンテッドというふうに理解して、基本的にはですね。所員の方々は、もちろん個別に研究されていたわけですけれども、大学共同利用機関法人になって、それじゃなくて、普通の大学の教授、准教授と同じような立場になったということ。仕事の内容に関しましては、独法以前、幅広く言語、国語の研究をされておりました。当時は非常に現代でも残る名著といいますか、残されています。ただ、その名著も、残念ながら個人名、せっかくそれに長時間費やされた個人の学者の名前じゃなくて、国立国語研究所という名前になっている。その部分が現在は普通の大学と同じように、だれそれ著というふうになりました。研究内容も独法以前は非常に幅広く行っていました。語彙の研究中心、方言の研究が中心でございますけれども、中には言語対照、外国語との比較も含めまして、非常にいい仕事をされていました。独法になる少し前ぐらいから、かなり日本語教育にシフトしていった、重点が置かれてきたように感じています。ですから、大学共同利用機関になりましては、日本語教育も含めて、その前の昔の国語研に戻って、しかも研究内容、現代的なものにアップデートする。研究方法も大学共同利用機関にふさわしいものに、国際性、残念ながら63年間、国際性という点では非常に乏しかったと思います。共同利用機関になって初めて外国の人が知ったという場合も非常に多いです。ということで、研究の領域につきまして、独法以前をさらに拡充しているというのが現在の姿、研究手法と研究の展開の仕方は以前になかったものを大幅に盛り込んでいるという形でございます。

【樺山主査】

ありがとうございます。それでは、ほぼ予定しておりました時間になりましたので……、失礼しました、どうぞ。

【上野専門委員】

時間がなければ、別に結構ですが。

【樺山主査】

それでは、上野委員のご発言までとさせていただきます。

【上野専門委員】

先ほどの研究者コミュニティで共同研究者が500人を超えているということで、その活動はほんとうによくやっていると思います。

それで、1つだけ提案ですが、共同研究者の流動性をもっと考えてほしいと思います。入っている人はいいんです。そのプロジェクトが続く限りは、特別なことがない限り多分続くのではないかと思うのですが、一方で、そこに入っていなくても、こういういい研究をしている人がいる、外から見ていて、こういう人が入ったらいいんじゃないかと思うことがあるんですね。一方ではあまり増やすわけにはいかないという問題もありますね、さっきもおっしゃったように。そのあたりの流動性をどうやったらいいのか、私も具体的な提案がないのでちょっと弱いんですけれども、何かそういうことを考えていただくと、もっとよくなるのではないかと感じておりましたので、この機会に発言させていただきました。

【樺山主査】

何かこの問題についてお考えのことはございますでしょうか。

【影山国立国語研究所長】

発足当初組み立てたものですから、知名度の高い人とか、立派な業績を残されている方をメーンに、プロジェクトが30ぐらいありますけれども、やっていると。ただ、発足から半年ごとに共同研究者の見直しといいますか、追加があればどんどん言ってくれと。もちろんご本人が勤務が変わったからやめたいという方もたまにはおられますけれども、どちらかといいますと、新しく加えるという方向で進んでいます。そして、大学勤務の人だけじゃなくて、大学院生はこれまで共同研究者としてはなれないという機構のほうの規則がございますけれども、研究協力者と、特に我々大学院の連携を持っていませんから、個別の協力研究、リーダーを中心とした指導でもって育てていくということで、あるいは発表会ごと、私のところもやっているんですが、発表会ごとに公募、こういう発表会をいついつするから、大学院生、希望する人は応募してくれと。そういう人たちには当日の交通費ぐらいは、学生ですから補助してあげるというふうな、いろいろなことを考えて進めております。

【樺山主査】

わかりました。ありがとうございます。

それでは、ほぼ予定しておりました時間になりましたものですから、本日の審議はここまでとさせていただきたいと存じます。

さて、今後の進め方についてでございますが、できれば次回は作業部会としての報告書の取りまとめに向けての審議に入りたいと思います。1回でそれが終わるとはとても思っておりませんけれども、そういうことができればと思っております。本日までの意見交換、議論等を踏まえまして、事務局におかれまして、報告書の案をまずは作成していただき、それをたたき台として、ここでご議論いただくことができればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

本日の議題は以上でございますが、事務局から連絡事項があれば、また、ぎりぎりで倉持局長がおいでになりましたので、まずは倉持局長から一言お願いします。

【倉持研究振興局長】

済みません、遅参いたしまして。また、私自身は、申しわけございません、きょうのご議論に参加できませんでしたので、きっちり報告を受けまして、事務局としての責任を果たしたいと思います。大変失礼いたしました。ありがとうございました。

【樺山主査】

それでは、今後の事柄を含めまして、事務局からご報告いただけますでしょうか。

【藤田学術機関課課長補佐】

それでは、今後の予定でございますけれども、資料4をごらんいただきたいと思います。現在日程調整中でございますけれども、次回11月を目途に現在日程調整をさせていただいております。追って事務局よりご連絡をさせていただきます。

次々回以降につきましては、次回の審議状況、あるいは国語研究等に関する小委員会の進捗状況を踏まえて開催することになると思います。そちらもあわせて日程調整をさせていただいておりますので、お忙しいところ恐縮ですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

また、本日の資料につきましては、机上に残しておいていただければ、事務局より郵送させていただきます。

事務局からは以上でございます。

【樺山主査】

本日も前回に引き続きまして、人間文化研究機構の金田機構長、影山所長、鈴木管理部長にご出席いただきまして、ありがとうございました。

それでは、これにて本日の国語に関する学術研究の推進に関する作業部会を、これをもちまして閉会とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局学術機関課機構調整・共同利用係

小暮、藤野
電話番号:03-5253-4111(内線4299)、03-6734-4085(直通)