第6期研究費部会(第7回) 議事録

1.日時

平成24年6月14日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省16階特別会議室

3.議題

  1. 審議のまとめ(その2)素案について
  2. その他

4.出席者

委員

平野部会長、深見部会長代理、甲斐委員、鎌田委員、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、田代委員、北岡委員、金田委員、小安委員、鈴村委員、谷口委員、野崎委員、家委員

文部科学省

吉田研究振興局長、渡邊学術研究助成課長、岸本学術研究助成課企画室長、他関係官

5.議事録

(1)審議のまとめ(その2)素案について

事務局より、資料2-1「審議のまとめ(その2)素案」、資料2-2「大学改革実行プラン(抜粋)」、資料2-3「科研費の基金化の効果等に関する検証(概要)」、資料2-4「新学術領域研究公募研究の設定について」及び資料2-5「新学術領域研究と他の研究種目との重複制限について」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
皆さん、こんにちは。本日は大変お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。次回に取りまとめをしていきたいと考えておりますので、それに向けて御議論いただきたいと思っております。
全体を通じまして、資料の説明をしていただきました。これまで主に、はじめに1の大学等における研究力強化のための支援、2の基金化の拡大については、時間をかけながら御意見をいただいてきております。今日は、この点において修正すべき、あるいは加えるべき点があれば御意見をいただきながら、特に提案も出されております、新学術領域研究とその他の研究種目等との重複等について議論をし、まとめにもっていきたいと考えております。
4番目の学術定期刊行物の改善については前々回より学振でもよく議論して提案をいただいている内容でして、特に問題はないのではないかという、という御意見でした。時間も制約されておりますので、なるべく絞りながら進みたいと思いますが、まず1、2については、少し御意見があればいただきながら進んでいき、3を深く議論していきたいと考えております。
まず1番目の大学等における研究力強化のための支援、この案文の中で特に気になり、修正が必要だと思われる委員の方はぜひ御意見をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【深見部会長代理】
2ページの真ん中、一方から始まる段落の2行目で、上位層の研究機関に研究費が集中する傾向があると書いてあります。分析として述べたことはよろしいと思うのですが、それと3ページ、このような状況を打破しという段落の4行目、研究力の強化が期待できる大学等に対する新たな支援策が必要であるというところが、一見、矛盾した印象を受けます。
補助資料を先ほど説明していただきましたけれども、そういった補助資料があれば矛盾とは感じないのですけれども、研究力の強化が期待できる大学という表現をしますと、また上位層の研究機関への配分なのかという印象がありまして、ここは、先ほどリサーチ・ユニバーシティという表現が出てきましたけれども、要するにリサーチ・ユニバーシティの層を厚くするために期待できる大学への支援であるという、矛盾しない印象を持つ表現にしていただけたらよろしいかと思います。

【平野部会長】
ありがとうございます。ここは言い回しを含めて御心配をされていると思います。その内容も含めて皆さん理解されるだろうと思いますので、まとめのときには、文章だけでなくて図面とか何か参考が、この中に入ってくるのですよね。あるいは後ろに添付資料でつけていただきたいと思います。

【岸本企画室長】
これまで本部会で配付させていただいた資料や、今回も大学改革実行プランの抜粋や基金化の成果の検証に係る資料等をお配りしておりますけれども、そういったものを後ろに添付する予定でございます。

【平野部会長】
今、深見委員が心配されているようなところが誤解を生じないように、うまく入れ込むのがいいです。注意していきましょう。

【小安委員】
各委員からの意見の中を見ると、おそらくこの部会の委員の先生方は、かなりメジャーな大学の先生が多いのではないかと思います。やはりこの論調が、研究力の高いところには厚くと読めるというところが、表現が難しいとは思いますが、反発も出てくる可能性があると思います。文科省全体として大学の研究に対して、どういう姿勢で取り組むかということに非常に密接に関連していると思うのですが、せっかく局長がおられるので、ここは何らか御説明いただいたほうがよいのではないでしょうか。ここでずっと議論していれば意味は分かるのですけれども、誤解を生むのではないでしょうか。

【平野部会長】
ここは大変重要なところだと思います。誤解が生じないように、大学改革タスクフォースから出ているところも含めて、書き込もうとされているところだと思いますが、局長、コメントをよろしくお願いします。

【吉田研究振興局長】
なかなか難しい答えになってくるのでございますけれども、正に研究成果として非常に高い成果を出しているところから、ずっと順番があるわけでございますが、資料にもありましたが、諸外国との比較においては、トップ層からその次の層にかけての下落の傾きが非常に大きい部分がございまして、そうすると、やはり全体として日本の大学の研究力を強化していくためには、トップ層に対する支援も大事なのでございますけれども、その次の層に位置するような大学にもう少し光を当てて、そこに対する強化を図っていく必要があるのではないだろうかということでございます。
そういった意味では、単純に科研費の審査などで研究内容だけを見てみますと、トップの大学の方が、研究者の層などにおいてどうしても有利になってしまうわけでございますけれども、次の研究を生み出す、人材も含めてでありますけれども、それを担っていくような大学群を特に強化をしていく、そのために、これまでの科研費のデータなどはもちろん活用しますけれども、科研費とはまた別の枠組みで、そこに資金を導入していったらどうかということでございます。
まだこれから具体の制度設計をしていかなければなりませんが、国立大学の場合ですと、運営費交付金の一般経費の部分と特別経費の部分がございます。その特別経費と、私どもで考えているものとのすみ分けをどうするのか。また科研費の世界に戻してみましても、間接経費とのかかわりをどう整理をしていくのか。また私学との関係ではどういったものがいいのか。それから先ほど、エビデンスとは言いましたけれども、支援のターゲットをある程度絞り込んでいく際に、論文数など、どういった指標をもって絞り込みを行っていくのが正しいのか。もう一つ、今度はここに資金を投入する際に、使途について、基本的には学長のリーダーシップを最大限サポートするような形で、余り細かく条件をつけようとは思ってはいないのですが、ただやはり研究力を強化するということになってきますと、先ほど申し上げました指標との関連も出てくるわけで、こういうものに使われることを想定しているという1つの基準、考え方は示さなくてはいけないだろうと思っております。まだまだ制度設計の途中でございますけれども、趣旨としては、高位の大学だけではなくて、もう少し厚みのあるリサーチ・ユニバーシティ、この言葉自体も、文科省としては多分初めて使うのだろうと思いますけれども、そこの層を厚くしたいということでございます。

【谷口委員】
研究費部会の取りまとめとして、どういうスタンスでまとめをするのがいいのかというのが重要なのかという気がします。つまり、「デュアル・サポート」として運営費交付金のこと等を述べておりますから、必ずしも科研費のことだけを議論しているわけではありませんが、一方で3ページの文言を読みますと、これがまとめとして外に出ていったときに、文部科学省がこういう支援策を実際にやろうとしているのか、やるとすればどういう形で実施するのかというところが、おそらく皆さんの大きな関心になるので、非常に慎重かつ適切に文言を考えたほうがいいのではないかという気がします。
そういう観点から行きますと、私は前回、欠席しましたので、議事録を見ていたのですが、リサーチ・ユニバーシティというキーワードを含めた議論が、研究費部会という文脈の中でされた形跡がないような気がするのです。問題そのものは非常に重要な問題で、これからの日本の大学の在り方を考えたときに必須の課題とも言えますが、本部会でどこまでとらえて、どういう文言でまとめていくかというのが、1つの課題かという気がいたします。
あえて議論のために申しますと、研究助成という文脈からいたしますと、学術研究の助成対象は、何も大学だけではないわけです。具体名を出しますが、例えば理化学研究所などにもサポートはされているわけで、そういう意味から考えますと、研究費部会としてうまい取りまとめが必要であると思います。

【家委員】
ここの文章は私も非常に大事な文言と思っていまして、私は最初に読んだときに、先ほど局長に御説明いただいたような趣旨で一応読んだつもりでいるのですが、リサーチ・ユニバーシティ群としてどのぐらいの数をイメージするかによって、ここの読み方が随分変わってくると思うのです。今日の資料の大学改革実行プランの資料2-2がありましたけれども、そこで大学の機能の再構築などというのが書いてあって、幾つかの大学の機能別の、1つの大学でいろいろな機能を兼ねることももちろんあるのだろうと思うのですけれども、一般的にリサーチ・ユニバーシティという言葉を聞いたときに、人によってはトップ30とか、そのぐらいのことを考えるかという気がします。
いわゆる地方大学の場合には、ここでいう、例えばマル3のCenter of Communityとか、そういうほうに行くのかというイメージも持っていますが、多分ここの趣旨としては、リサーチ・ユニバーシティ群というのをもう少し広くとらえて、研究力の強化が期待できる、つまり少し応援してあげるともっと強くなるところを支援しましょうという趣旨だろうと思うのです。そういう理解だと思うのですけれども、これを初めて読んだ一般の方にすっと受け入れられるかどうかは、皆さんと同じように心配を共有しているところであります。

【鈴木委員】
論文数が減っているとか、海外に出る人が少ないとか、種々の最近の現象、傾向、課題がここに書かれています。そのためにはデュアル・サポートの導入とか、研究力の強化がうたわれていますが、これらの現象、傾向、課題の原因はどこにあるということに関しては、なにも議論されていないのではないでしょうか。
例えば資料2-2の大学改革実行プランの2ページ目を見ても、課題と背景の項は全て現象だけです。研究者数の低下、教員の配置の固定化、共著論文数の低下等々。しかしこの現象が一体何に由来しているか、どこに根源があるのかという議論はどこにもないです。ここに挙げられた課題、問題点を考えるときに最も注目しなければならないことは、法人化に対する評価です。これまで、誰もやっていないのです。法人化によって大学がどのように変わったのか、何がよくなり、何がまずくなったのか、洗い出す必要があります。単にカンフル剤を打ったところで立ち直れません。カンフル剤や栄養剤的なプログラムが次から次と出てきても、本当にこれで大学を救えるか、疑問です。
法人化によって先生方の雑用が増え過ぎて、先生がオフィスにいない。オフィスにいなければ、教育や研究は手薄になります。それを見ている学生は、ああ、将来こんな教員になりたくないと感じて大学を去っていく。このような悪循環は、一時期叫ばれましたが今では声が上がらずあきらめ同然なのでしょうか。これらの原因をきちんと見極めた上で対応策をとらないと本当に復活するか疑問です。この部会が担当するのかどうか定かではありませんが、法人化の評価は十分に時間をかけて行うべきです。そうでないと、現在の課題、傾向の改善は難しいと思います。

【平野部会長】
ありがとうございます。鈴村委員、お願いします。

【鈴村委員】
私もリサーチ・ユニバーシティという表現が、こういう文書に登場したのは、多分初めてではないかと思うのですけれども、ただ、それの位置づけに関して踏み込んだ議論は、少なくとも書かれていないのです。今の資料2-1と資料2-2を突き合わせて見てみますと、資料2-2では冒頭で大学の機能が書かれていて、これもアンディファインドなままですけれども、ともかくここでの視点は大学のトータルな機能に注目するところから出発はしているのですが、資料2-2では研究力という概念に議論が集中していくのです。もし大学の機能を重視するのならば、それでは大学のトータルな姿の中で、研究力の強化が期待できる大学以外は一体どうなるのだということは、やはり位置づけはきちんと考えておかないと、この文章の位置づけが非常に危険なことになりかねないということを、私は懸念いたします。
ここでいう大学の機能を、もし私自身の理解が間違ってなければ、研究力が特に現状でも強いあるいは強化が期待できる大学というカテゴリーに入らないにしても、やはり機能があるから大学を名乗っているわけですから、それをどうやって下支えして、大学が全体としての機能を発揮できるようにする中での特に研究力の強化というリンケージができていない限り、下手をすると非常に危険な状況を生んでしまう懸念を感じているということが1点目です。
2点目ですけれども、国際比較ということが言われていて、日本の研究力強化へ傾斜的なパブリックファンドの注入が必要だというシナリオになっていくと思うのですが、例えば私にとって見やすい英米の大学を例にとって考えると、ここで多分、この表現をそのまま持っていけば、研究力に当たるものが強い大学は多くの場合には自助努力で多くの研究費を確保している事実は歴然としてあると思うのです。ケンブリッジ、オックスフォードはそうですし、ハーバード、スタンフォード、イエール、そういう研究大学というところでは、自分のところで開発した技術を企業に提供することによって得たファンドを研究費にフィードバックしてそれをシェアする仕組みで、大学自体の研究力を強化することに使っています。そういう側面は、トータルで見たときの制度が違うということを一部反映しつつでしょうけれども、残念ながら日本のこの中には全然入っていないわけです。
端的に言うと、パブリックファンドの配分の仕方を変えることによって、研究力の強化ができるところだけに計上していくというシナリオはやはり欧米を例に引いたときに、例として不適切ではないかという気さえしてならないわけです。ですから、全体として申しますと、やはり大学の機能の中に、研究力の強化をやればこそ、全体として大学が正に必要とする機能を提供することになるのだという、大きな絵をかかないと、説得力がなかなか生まれてこないのではないかという懸念を、私はぬぐえないということになるかと思います。
以上です。

【鎌田委員】
2点あるのですが、1点目は最初に深見委員が御指摘になったところなのですけれども、私は逆に本文で読んでいくと、上位大学があって、少してこ入れをすれば研究力の強化が期待できる大学というグループがあって、この後者に何らかの手当てをするという構想だろうと、今までの議論の経過も踏まえて理解するのですけれども、むしろ2-2の2枚目にある課題解決の方向性の中に、研究力の進展が期待できる大学に対してサポートしていくときのエビデンスの例が、指標例として科研費の獲得状況が最初に書かれているのです。そうすると、科研費をたくさん取っているところが一部に集中していて、あとはすっと急降下するのだと言われているのとあわせて読むと、トップ大学をもっともっと支援するつもりなのだという読み方もできてしまいそうなので、もう少しそこのところは、直接法で全体としての意図をわかりやすく書いたほうが、初めて読む人にも誤解がないのではないかという気がします。
もう一点は、谷口委員が御指摘になった点で、鈴村委員の御指摘にも関連するのだと思うのですけれども、デュアル・サポートのうち、とりわけ基盤的経費の部分が極めて重要なのに、そこの伸びが著しく停滞している。その結果、競争的資金を使っても十分な成果が上がらないような状況に近づきつつある。したがって競争的資金の効果を上げるためにも、本来の筋から行くと少しずれているところがあるのかもしれないけれども、研究的資金の枠内で、研究的資金がもっと効果を上げるような、基盤整備に近い部分の手当てをしなければいけない状況にある。こういう認識が前提にある。それと、所管の問題もあって、研究費部会の中で、こういう問題にある程度アプローチしなければいけない。そういう客観情勢を前提にしたご提案で、ある意味で現状の中ではやむを得ない要素を持っている。研究的資金の効率的使用を考えると、最善の方法かどうかについては御議論の余地があるかもしれないけれども、現実的にはそういった方向での検討の必要性があることは一応理解しているつもりでございます。

【平野部会長】
皆さん方の御意見は、それぞれ私も大変重要なポイントだと思いますので、特にここの部分は、今、議論になっている、このような状況を打破しという、これはタスクフォースのでの議論をここに背景として入れ込んでいますので、皆さんが大変心配をされるそもそもの議論がタスクフォースの中であったはずなのですが。この背景を、もう少しここは長くなってもいいので丁寧に、今、鎌田委員もおっしゃったようなことも含めて、丁寧にここで背景を説明しながら、この委員会としての重要な研究費の在り方の方向を提言することになりますので、補足したほうがいいのではないかと、私も判断いたします。
そこの部分について、今、鈴村委員もおっしゃったように、自助努力も含めてということだとか、それはどう書いていいのかというのは少し難しいのですが、もう一つあるのは、やはりデュアル・サポートのところにも含められるように、基盤的な経費だけを強く言っても、これまたもとへ戻ってしまうこともありますが、しかしながら、研究環境を強化するためにも、やはりその前のページにありますが、きちっと基盤的な経費の支援を委員会としても言うべきではないかと私は思っております。その点を踏まえた、少しここの書き込みをしていくということでいかがでしょうか。
これは非常に重要なところですので、皆さん方にすぐ事務局ともまた相談した上で案文を送って、懸念されるところができるだけ少なくなるように、この委員会のかたがたの御意見を聞いて対応させていただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

【北岡委員】
この2-2の資料の、大学の研究力強化の促進の、一番右のところにある、力のある研究拠点への集中投資と、多様な研究の支援の中の項目の2点が、いわゆる重点支援と科研費の充実なのです。これは本来、デュアル・サポートが入ってほしいのだけれども、それを入れられない財政、配る側の論理があるわけです。上の重点支援をどこから引き出すかというと、いわゆる運営費交付金1%のオーバーヘッドから、大学改革強化推進計画として措置されているわけで、それをリサーチ・ユニバーシティの層が薄いので、倍増するというのは、6月5日の平野大臣のコメントの中に入っているのです。教育ポイントの改革の中の。倍増するためのお金としては、運営費交付金のオーバーヘッドでやるという形のイメージがあるので、そうするとこの研究費部会としては、谷口委員がおっしゃったように、科研費の充実をやはりもう少しまじめに提言する必要があるでしょうか。今までBとか基盤C、萌芽的研究、若手研究Bで30%を達成したわけですけれども、そこの層を厚くする方向に行くのか、あるいは35%にするのか、あるいは科研費の中の上位の科研費をある程度、最低量に抑えながらも、基盤的なところの措置を、科研費の充実の中でやっていくのかというのがやはりないと、一体どこで、いわゆる基盤的研究を下支えする経費をどこから引き出すかという議論が抜けているので、ここに書かれていないということは、かなり重点支援と、あるいは、もうこのイメージだと科研費の充実の方向でしか、なかなか基盤的な経費の措置を要求するようなロジックにならないのではないか。ここにそれを書いていないので、そこからまず、配分する側としては、こういう方向でやはりやっていくということなので、その辺、さっき言われたように基盤的な研究をどうやって保持するかというのは、科研費の研究部会で、科研費の充実でしかないかという、その辺が難しいといいますか。

【鈴木委員】
もし、デュアル・サポートが進まない状況を、この部会で何かできるかを議論するならば、一つの提案ですが、間接経費の使い方を定義し直したらどうでしょうか。間接経費の一部を、基盤的装置の維持・管理経費に使用できるようにするとか、間接経費の役割を自由裁量にしてはどうかとか、という案もあると思います。

【平野部会長】
今、鈴木委員が発言された内容は、どこかでこの議論に近いような議論がこの前もあったのですが、私は混乱しているかもしれません。ここだけの話ではなくて、外部での話のときに出たことかもしれませんが、事務局、どうだったでしょうか。私は記憶からすると、別な委員会か、別なルートから聞いたのかもしれないので、私が間違えて言ってはいけないのですが。

【渡邊学術研究助成課長】
この部会でということではなかったのではないかと思います。

【平野部会長】
ごめんなさい。どうも。

【渡邊学術研究助成課長】
1つは、今みたいな御意見は、いろいろな外部では、そういうメリハリをもった配分に関する御意見がございます。ただ、私どもでは、ある意味、基盤的経費が減っているという現実はそのままとらえて、それで大学の現状としては、それをある意味、間接経費で補っているという実態があり、ただし間接経費は使途を限定されているので、結局、現場の大学では何らかの基盤経費の削減に伴う穴があくということになっている。ですから、基盤的経費を増やすのが筋であるということで、増えればいいのですけれども、なかなかそこはそう簡単に行かないところもある。今回の、デュアル・サポートに加えというのは、ある意味、間接経費の使い方も含めて、現状をそのままにしつつプラスアルファで、こういった中堅層向けの基盤を強化するような支援が、現実的にまずは考えられるのではないかということです。
当然、根本的には、基盤経費を拡充していく、戻していくというのが必要だという認識はあるのですけれども、そこの正論だけで戦っていてもなかなかというところがあり、一方で世界の研究力が、中国をはじめとして向上してきている。そこで何らかの対応ということで言えば、こういった第三の策も考えられるのではないかという認識でございます。

【平野部会長】
ありがとうございます。私が先走った思いを言ってしまって。
それでは、野崎委員。

【野崎委員】
よくわかっていない立場からの質問になって恐縮ですが、鈴木委員がおっしゃった、大学が瀕死の状態であるということは、基盤的経費がどんどん減っているためである。けれども、運営費交付金に関しては如何ともしがたいので、研究費部会で何とかそれを違う名目でサポートしようとしているという理解でよろしいのでしょうか。

【渡邊学術研究助成課長】
そこまでストレートに割り切っているわけではないのですけれども、ここで基盤的経費の重要性を述べ、それをやはりきちんと拡充していくべきだという意見を述べるということは、今日も御意見で出ていたので、それはそれで必要かと思うのですけれども、我々の研究の世界に関して、基盤的経費が増えるということを願って、その施策に頼るというのでは、心もとないというか、もう少し違う現実的な方法も、あわせてやはり考えないといけないのではないかということかと思います。あきらめているわけでもないし、縦割りというわけでもございません。

【田代委員】
このリサーチ・ユニバーシティの議論はまだ余り審議されていないと思いますが、こういう問題があるということは分かるのですけれども、「研究力の強化が期待できる大学」というのは読み取り方によっては、研究力がすごいところへどんどんとお金がいくというように読めるという問題があります。先ほどの御説明では、そうではなくて中間の大学にもっと支援したいということでしたが、この資料2-2に出ている、研究費の獲得状況の10位、20位、30位ぐらいまで対象にするというイメージでは、あなたの大学は10位です、20位です、30位です、ですからこれをしますということを宣言するのかというと、そのようなやり方もすごく問題になってくるのではないかと思います。私としては、審議のまとめとしては、次への課題とするのも一案か、という乱暴な意見を言わせていただきました。

【谷口委員】
問題のとらえ方は非常に重要な視点だと思うのです。俗に東大のひとり勝ちとか言われておりますが、東大にいる立場から申しますと、それは東大にとっても大きな危機であるというとらえ方で、学内でも議論をしております。これは日本全体の危機であるのだというのは、共通の認識だと思うのです。だから何らかの措置を講じなければいけない、栄養剤と言われましたが、確かに栄養剤的だけれども、根本的な議論をしながらも栄養剤をしっかりとやるということをせざるを得ないかという側面もあるのですが、いきなり誤解を招くような文言になってしまうと、いろいろなところからの誤解を招きかねないということなので、審議はどこでやるかということを明確に出す、何が問題なのかということを出して、それに対する解決策が必要であるとか、その後でまた積み重ねていくという在り方もあろうかという気はするのです。いきなりここで、リサーチ・ユニバーシティと出てきてしまうと、将来行きつくところはそうかもしれませんが、そこは、皆さんが少し懸念をされるところではないかと思いますけれども。

【平野部会長】
分かりました。

【小林委員】
質問ですけれども、先ほど局長は制度設計の途中だとおっしゃいましたが、来年度の概算要求に何らかの形で出てくるというお考えですか。

【吉田研究振興局長】
はい、これはそのように考えております。まだ概算要求の基準もスケジュールもまだよくわかっていない段階ですが、25年度の概算要求を目指して制度設計をしたいと思っています。

【平野部会長】
ある意味、大学改革タスクフォースの決定はそれぐらい重いと考えていかざるを得ないというので、背景部分の記述は、書き方をどうするか、あるいは危機感をどう入れるかという書き方を先ほど議論がありますように、少し誤解のないようにしなければいけませんが、ダイレクトにこの言葉を使うかどうかは別にして、少しここは修正をしましょう。

【鈴村委員】
制度をいじるということなのですが、科研費の基本的な性格についての理解を、指導をつくり直すというイメージを与えてしまうと、非常に固定的な問題になると思うのです。先ほどから使っておられる比喩的な話で言うと、カンフル剤だ、栄養剤だというのですが、これは栄養剤で決して体質がよくなると思っているわけではなくて、ともかく気のせいかもしれないけれども元気が出るというのが、大体栄養剤なのです。だから、もしそういうイメージであるとしたら、制度を抜本的にとか、そういう構え方は多分するべきではない。しかし、放っておけない現状になることはよくわかっているわけですから、そういう認識を書くことは、むしろあるべきだと思うし、さっきの表現でいうと、大学の機能について、その中への位置づけという書き方も、やはり必要だろうと思うのですけれども、今、なすべき措置としてということで、経過的な措置というニュアンスを何とかにじませるような書き方程度にしておかないと、これは一度つくった制度が固定性を持つと、これでどんどん進んでしまうというほうが、私としては大学全体を見るとかなり心配だというつもりであります。

【平野部会長】
ありがとうございます。今の御指摘のところは非常に難しいのですが、唐突というわけではなくて、実はずっとタスクフォースの議論は進んできていたところですので、何らかの形で背景の中に書き込んで、研究費部会として、より前に向いていけるところがあったらくみ取っていかなければいけないだろうというのが、この出てきている背景でありますので、うまくいくかどうか、タスクフォースの中での背景を踏まえて、ここにきちっと入れておいて、問題点といいますか、危機的な部分はここに記述するというように努力をしていただきましょう。それで皆さんにまた御意見をメールでお聞きすることにします。
これは大変重要な問題であったものですから、実は私が予定していた時間からすると、もうほとんど終わりになってきており、できればもう一度緊急に委員会を開かなければいけないかと心配するぐらいでありますが、2番目、基金化の拡大、これもメリット、デメリットを含めて、御議論いただいてきましたが、この点についてはいかがでしょうか。
委員の方から、研究現場における事務的な手続をなるべく柔軟に、基金化の利点をうまく研究者が生かせるように説明をし、硬直的な事務とならないようにしていただきたいとの御意見が事前に出ていたところですので、これは事務的に努めていただくこととして、提言の内容として、この2のところはいかがでしょうか。

【谷口委員】
全体のトーンは先ほど御説明いただいたとおりで、基金化はいいことである。全く問題がない。さらにむしろ徹底をしないと、かえって混乱が生じるので、それを早く促進すべきあるという、そういうトーンだと思うのです。それがそうならいいのですが、本部会の本来のミッションは、少数意見でも重要な意見があるかどうか、あるとすれば、それをどうとらえて、基金化をよりよくするためにどうすればいいかということを議論するというのが、我々部会としては本来の在り方だと思うのです。そういうものがあるかないかということを確認したかったのですが、先ほどの御説明ですと、全てオーケーという感じだったと思うのですが、それでよろしいのでしょうか。

【平野部会長】
多分、今の現場の使途と基金の部分と両方あるところは、運用等々の心配が出ていますので、課長、御説明よろしいでしょうか。

【渡邊学術研究助成課長】
いろいろな御意見も資料に載せておりますけれども、まとめてみますと、ぜひそういう全面基金化ということでよいと思っております。
このまとめの中にも少し書いていますけれども、できるだけ早期に全て基金化すべきという御意見は6割ぐらいで、あと3割ぐらいの方が、検証した上で判断すべきであると、少し慎重な御意見のようにも思えるわけですが、よくよく見てみますと、例えば基金化するのに予算がかかるが、早期に全部、基金化すべきかという質問に対しては、予算がそちらに取られてしまって本来の研究費配分が減るのであればそれでも基金化すべきとは思わないといった御意見、あるいは採択率が下がっても基金化すべきとは思わないといった御意見がありました。また、24年度の一部基金化によって基金と補助金が混在する、それでもメリットがあるだろうということで、それに踏み切ったわけですが、そこまでしてやるのではなくて、やはり全面基金化で一歩一歩進むべきであり一部基金化でまたやるのだったら少し首をかしげるという意見でした。したがって全体としては、全面基金化ということであれば、それに対する異論はほぼなかったと認識しております。

【平野部会長】
課長が回答されたところは、この文章ではまとめていただいていますから1行になっていますが、重要なところだと思いますので、少し長くなっても、その懸念の背景を1行入れると、わかりやすくなるのではないでしょうか。ぜひ、そう改善をしてもらいたいと思います。
私、部会長で言うのはおかしいのですが、前も気になっていまして、5ページ目の2段目のパラグラフですが、効果・メリットの程度については、1割~3割のプラス効果があるとした回答が72%。これはデータがそうなっているのですが、一般的に見ると、なぜ1~3割なのかとの印象があります。ですから、何らかの効果があったという回答が72%という形なら、書いていいのではないでしょうか。ごまかすという意味ではないですが。かえって難しい言い方でしょうし、細かいところを言って申し訳ないのですが。データは後に添付するわけですから、詳細はそちらを見ていただいたほうがいいのではないかと思います。
では、3番目の項目について、ここで意見を聞いてまとめをしたいと思います。ここはずっと議論をいただいておりました新学術領域研究の改善というところでして、1つは資料の2-4に基づいて、事務局から提案を出していただいておりますが、御意見いかがでしょうか。何か加えたり、修正をしてもらいたいという御意見はありますでしょうか。

【深見部会長代理】
まず質問なのですけれども、10件又は10%を上回ることという基準の意味がよくわからないのですが、要するに規模とかがあるから、こういう形で件数か予算規模の10%のどちらかでいくという書き方をしているという理解でよろしいでしょうか。

【渡邊学術研究助成課長】
基本的にそうでございます。資料2-4を見ていただければと思うのですけれども、人文・社会、理工、生物、複合の分野によって違うのですが、人文・社会系ですと、そもそも採択目安を2件から9件に設定しているということなので、10件設定している領域がありません。そういったときに、研究費の領域の規模が小さいところもありますので、その際は、10件ではなくてせめて全体の領域研究費の10%ぐらいは公募研究に割くというように適用してはどうかということです。
また、理工系、生物系、複合系ですと、平均的には10数件、あるいは20件ぐらい採択枠をとっていますけれども、領域によっては、例えば理工系で採択目安件数1件というところや、生物系で6件、複合系でも4件ということで、必ずしも金額としてそう少なくない、年間で億単位の領域なのだけれども、例えば2件とか3件というのは、少な過ぎるのではないか。10%でも、もしかすると少ないとなれば、10件ぐらいはとるべきではないか。そういった、件数又は領域の予算額のどちらかの基準を適用するという考え方でどうかということです。

【小林委員】
多少細かいことですけれども、資料2-4の2ページ目の3つ目のポツの、分野の平均的採択実績を参考にすることというのは、何となく横並びを助長するようなので、なくてもいいのではないかという気がいたします。

【平野部会長】
今の点について、ほかの委員の方、御意見はどうでしょうか。
ここまで言わないでいいのではないかということですが、よろしいでしょうか。
では、そこは取り外していただくことにいたします。
そのほかいかがでしょうか。

【佐藤委員】
私は理解が間違っているかもしれませんけれども、この研究ネットワークの強化ということも関連して、今まで随分議論をしてきたような気がしているのですが、このまとめでは、その視点は出てこないのですけれども、それは別のところでやればいいという考えなのか、直接、この新学術領域とは関係のない話という整理をしたのかどうか。どう考えたらいいでしょうか。

【渡邊学術研究助成課長】
ネットワークの強化のところは、特にいい成果が出たものを、それをさらに成果を引き継ぐ、進展させるという観点が必要ではないかということで、御議論をいただいたかと思います。
その結論は素案の8ページに、(継続支援)という括弧でまとめさせていただいております。そういったいいネットワークを継続させる仕組みとして、何らかの継続支援策ですとか研究期間終了の前年度で申請を認めるかということも御検討いただいたのですけれども、結論といたしましては、9ページにありますように、そういった特別な仕組みはむしろ要らないのではないかという御意見であったかと思います。そうではなくて、逆に領域を5年やってみて、それを適切に入れかえて、さらに違う形で実施するというのは、当然あってよい。前の領域でこういう成果が出ましたというのは、きちんと評価する仕組みを入れるべきではないかということで、8ページの下に書いてありますように、前の成果があったときは、それを応募書類の中へきちんと書いていただく。今、書く欄がないので、そういったことをやった上で、評価すべきではないかというようにまとめているところでございます。

【平野部会長】
よろしいでしょうか。この点については議論をしておいていただきます。深化、発展をさせる項目については、いいネットワークを保持できるようにする。しかし、村的な組織で固定しないようにしようというのが基本的な背景にありますので、今、課長が説明をしてくれたようなところに入っていると思っております。

【谷口委員】
公募研究の重複制限の問題ですけれども、従来から重複制限は、確かに意味がないとは申しませんけれども、我が国の国際競争力を強くするという観点から考えますと、正に新学術領域のような革新的な学術研究の発展を促すためには、いろいろな異分野の人がそれほど互いの重複の制限なしに自由に参画できるというシステムこそが、明日の新しい学術を生むという視点で、非常に重要ではないかと思うのです。
私が申し上げているのは、誰がどういう研究費を直接とってもいいということを必ずしも申し上げているわけではなくて、よりよい仕組みがないかということです。例えば、特別推進研究をとっている研究者と新学術領域の研究者とが実際シンポジウム等の場で交わるチャンスは非常に少ないのです。特推の人は、特推のグループでグループとして、そのグループの研究をやっている。ほかのグループとの交わりのチャンスが少ない。そうすると、特推の代表者が新学術に応募していいかというと、それはなかなか難しい。
しかしながら、現実問題としては、何がいい案かはいろいろ議論があるところですが、旅費、出張費ぐらいは申請をしてもそのグループに入って活動してもいいとか、何らかの縦割りではなくて横糸のつながりのような仕組みを何とか考えたほうが、より効果的な研究の推進、人材育成といったようなことにつながるのではないかと思います。今回、ここに載せていいかどうかはいろいろ議論があろうかと思いますが。

【平野部会長】
今の谷口委員がおっしゃられることは大変重要なところだということで、研究費部会でも議論をしてきているところであります。特推と、それから新学術領域の研究者、代表者間あるいは分担者の間での重複制限については、このまとめではページ11のところ、資料の2-5に事務局からこれまでの意見を踏まえて提案が出ているところだと思っております。今、谷口委員がおっしゃったのは、ここにも入ってくると思いますが、いかがでしょうか。今までのとおりではなくて、緩和する、当然、相互にやったほうがいいということが背景にある、という内容です。

【深見部会長代理】
谷口先生の御質問でもあるのですけれども、これは重複を緩和するというところまで、踏み込んでいるのか。それとも、例えば今でも班友とか、何と言うのですか、新学術領域の中でも、研究代表者としては入らないけれども、名前を連携研究者といった形で入れるというシステムを目指すというのか、どちらをイメージされているのでしょうか。

【谷口委員】
名前だけ借りてその人が入っていますというのでは、今までもあったような気がするのです。私がイメージしているのは、もう少し積極的な参画。特推で支援を受けているけれども、何とか領域でも自分は分野が近いので、ぜひ合同シンポジウムや班会議に参加をしたい。あるいはお互いにしてほしい。それによって、お互いに新しい研究体制ができあがるということなどもあってもいいのではないか。それが特推というと、何とか教室の部屋があって、1億円もらって、ずっとクローズでやるという感じになってしまうと、その教室の学生や研究者の人たちの交流もおのずと妨げられるということがあり、今は横のつながりが非常に弱いと私は思っております。ですから、そこを解消するような共同研究や横の連携を強くするような仕組みをもう少し積極的に考えてもいいのではないかと思います。

【平野部会長】
ありがとうございます。今の点について、さらに。はい、どうぞ。

【鈴木委員】
谷口委員の研究分野と我々の分野はずいぶん様子が違います。我々の研究分野ではそのようなことは日常茶飯事に起こっていて、当然のことと思っています。そのため、特に枠を設ける必要性があるのかどうか疑問で、それぞれの分野で自由にやられたらよいと思いますが。

【平野部会長】
いちいち確認する必要がないのではないかという御発言でしょうか。

【小安委員】
10ページの一番上のところに、ここでずっと議論してきたことを踏まえて公募研究の2件までというところがありますが、前回の懇談会でこれぐらいのところでいいというのが、コンセンサスになりつつあったと思います。これでいいということは、一言意見を言っておいたほうがいいと思ったので、発言をいたしました。

【平野部会長】
分かりました。議論をして、今、小安委員が指摘いただいたところは、この方向でいいのではないかということであります。これはよろしいですね。そのほか、家委員。

【家委員】
その結論でバランスもとれたところだと思うのですけれども、本質的なところではないのですが、8ページのところにいろいろなアンケートの回答としてまとめてあるのですが、マル2のところに公募研究の重複制限緩和を求める意見の理由の中に、「安定した研究継続の支援の必要性から」と書いてありますけれども、これは理由としては品がないのでやめたほうがよろしいかと思います。

【平野部会長】
そうでしょうね。分かりました。ここは外しましょう。

【小安委員】
それ以降の基盤研究Sのところも、これが今までの内容だったと思います。それから、特別推進に関しても、やはり代表者はかなり専念していただいたほうが大事だと思っていますが、分担者に関しては、少し重複制限を緩和するということでよいと思います。先ほど谷口先生がおっしゃったように、いろいろなところとのつながりをもっと自由にできるという点からは、非常によろしいのではないかと思います。

【平野部会長】
分野によって状況は異なるようですが、基本的な線として重複制限の緩和を許したらいかがであろうかというのが意見でした。

【渡邊学術研究助成課長】
補足して説明しますと、資料2-5の2枚目の特推関係との重複のところですけれども、まず特推の分担者と代表者というのは、お金が配分されるので、重複というのはいろいろと制限がある。そのほかに連携研究者あるいは研究協力者という概念もありまして、そこは重複制限がありませんので、新学術領域研究、に班友とか連携班友とかいうことで入っていただくのは、今も問題がないということです。
資料2-5の2ページで挙げさせていただいているのは、特推の分担者は新学術の代表者にはなれないあるいは公募研究も出せないということに今なっております。谷口先生のお話ももしかすると関係があるのかと思うのですが、特推の分担者というとかなり若い方が、正にその研究室の教授が代表者になっているという方も見受けられて、そういった方がほかの新学術の公募の代表者になれないという制限をしている。そういったのは、谷口先生がおっしゃられたような狭い世界にわざわざ閉じ込めているということもあろうということで、こういったところは過度の制約ということになるのではないかという、事務局からの提案でございます。

【甲斐委員】
谷口先生の意見はよくわかりますが、班会議に行ったり、みんなと議論することだけが必要であれば、確かに新学術領域の分担者になる必要はないと思います。総括班として連携研究者に参加していただけるように旅費だけ出せばいいということだけになってしまうので、むしろ特推の方が研究分担者としてお金をもらって働けるというふうにすると、計画研究の中この特推の分担者の人が入るから、このチームは強いというような書き方にされちゃうと、審査がつらいのです。また、この特推の分担者が例えば3人ぐらい入っているような10人ぐらいのチームを組んだら、ものすごく強そうに見えてしまうのです。そういう隠れみののように使われてしまうので、議論に必要であるだけならば、それは連携でもいいと思うのです。旅費が出せる制度にしてしまえばいいわけです。
先ほどの分担者で若い方を縛ってしまう教授がいないわけではないので、そういう方が表に出て、新学術領域と一緒に働くというのは、すごく現実には、それで十分また、領域の活性化になると思うので、特推はやはりそこに専念していただくというつもりで、なるべくみんなで多くしようということをしているときに幾つも、例えば2件まででと分担するというと、また議論が複雑になってしまうかと思います。

【平野部会長】
分かりました。今の事務局の提案の資料2-5を見ていただきますと、甲斐委員が今おっしゃったあたり、若い研究者の人材育成の促進ということにも関連があるとしたら、太字で書いてくださっているようなところを基本的な考えの1つに入れることができる。そういうふうに理解をしております。
そのほかはいかがでしょうか。今、事務局が提案してくださった重複制限に関する事項について、この中に書き込んでいくということでよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
端折りぎみで申しわけないのですが、4番目の研究成果公開促進費「学術定期刊行物」の改善については、これまで提案してくださって、余り問題はなかったと私は理解しておりますが、修正ありますでしょうか。

【鈴村委員】
確認だけなのですが、12ページ、学術定期刊行物から国際情報発信力強化に向け、いわばカテゴリーを拡大すると、これは理解します。気になるのはマル3のところで、「事業期間を5年間とし」、その後なのですが、「国際情報発信強化に向けた目標達成に向けて妥当」ということとか、「これまでとは異なる新たな取組」であるかを評価するとなっているのですが、前にも確認しましたけれども、やはり継続してソリッドな雑誌を維持していくというのは、国際的な責任にも関わるというところがありますので、その助成がこれで外れるようなことになっては、やはりこれは本末転倒だと私には思えるのです。これまでとは異なる新たな取組ということになると継続性が少なくて、表現上は排除されてしまいます。そういう意図ではないはずなのですけれども、表現上そういう誤解の余地を除いておいていただけないでしょうか。

【平野部会長】
分かりました。重要な点だと思います。

【甲斐委員】
ここに書いてある、例えば学会が出したりしているような学会誌を国際化にして応援するという趣旨で、従来のものだと思うですけれども、1つ視点を加えていただきたいなと思うことがありまして、それは電子化という問題なのですが、実は今、国際的な大手の出版社は雑誌が売れないので、オープンアクセスに対して課金するという制度になってきています。普通のジャーナルが例えば10万円ぐらいでパブリッシュした後払う経費だったのに、すぐにオープンアクセスするのだったら、プラス20万とか30万とか取るようなシステムが結構出てきているのです。そういうときに、ただし、このグラントをとっている人はいいですよ、ただですよというというのが出ます。NSFとかNIHとか、それからドイツのグラントとかイギリスのグラントが出るのです。そこにJSPSとかはありません。だから、日本人がすぐにオープンアクセスにしたいなと思うと、自分で二、三十万払わなくてはならず、科研費で負担するわけですけれども、ちょっと苦しいなというのがあります。何人か通ってしまうと、半年ぐらい待とうということになってしまいます。でも、すぐにオープンアクセスにした人の論文は、サイテーションが増えるわけです。やはりすぐに電子的にとれれば、引用されるので、国際競争力の向上への貢献という点からも重要なことだと思うのです。
研究成果公開促進費の概念の中にはそういう議論は全く入ってないので、結構多額のお金になってしまうと思いますので、ここから奪うという議論は多分無理だと思うのです。そういうことを新たに考えていただく機会を設けていただけませんでしょうか。
研究成果公開促進費というのは、学会が出しているような雑誌を国際的にさせて、その国際誌をオープンアクセスできるようにという方向性でしょう。そうではなくて、個々の研究者がいろいろなジャーナルに投稿するときにオープンアクセスにすぐしてもらいたい場合には、自身がもらっている科研費で助成できます。ただ、交付額が少額だと、今までパブリッシュしたお金よりはるかに高いわけです。プラス二、三十万払わなきゃいけない。それが、ちょっとつらいのと、半年待てばいいわけですよ。今までと同じように載せていく。NIHやNSFは別の経費を出しているのです。ジャーナルにお金をあげて、ここをとった人はいいですよというのがあるんですけれども、そこの欄にJSPS、JST、MEXTは入ってないのです。それで、日本の研究者は二、三十万がもったいないなと思うと、オープンアクセスで遅れをとるわけです。
今回の提案は日本の学会を助けるという議論があっても個々の研究者の研究を助けようという考え方の議論はされてないと思いますが、それはできるのかという質問です。

【平野部会長】
どうぞ。

【小安委員】
今おっしゃったように、要するに対象が違うので、そういう議論は出てこないわけです。もう一つ、なぜNSFやNIHがオープンアクセスを非常に強くサポートしているかというと、彼らは自国民に対して、自国の税金の成果を直ちに公開せよという意識が非常に強いのですが、これは随分いろいろと別のところで議論しました。結局、NSFやNIHにしても論文を一般人でも読めるので。英語圏であれば全然問題なく読めるのです。我々が同じことをやれば、皆さんがお読みになるかというと、なかなかそういうことはないということを考えると、どこまでメリットがあるかということももう少し調査しないと、おそらくわからないのではないかと思います。

【甲斐委員】
調査をしてほしい。気持ちは分かるのですがサイエンティストの間では、そのスピードは結構重要なのです。

【小安委員】
ドイツなんかはむしろ研究者の間で速やかに情報が行き渡るようにという議論があります。だけど、そこまでなかなか現状では議論は進んでない。

【甲斐委員】
そうです。だけど、指標の中にサイテーションに関するものが出てくるのです。たかだかある会社の指標でありどの程度の意義があるのかと思っており指標とすることに反対していますけれども、でも必ず、そういう指標が出てきますよね。

【平野部会長】
分かりました。内容はみなさんよくおわかりだろうと思います。国際競争力から見ても、非常に重要なところだと思いますので、これは文部科学省の研究振興局のお仕事だと思います。ここは研究費部会ですから、ここでやるのか、どこの委員会がいいのか、わかりませんが、状況調査を含めて御検討をお願いします。

【吉田研究振興局長】
はい。今のお話は学術情報基盤作業部会の方で、オープンアクセスの関係で、先ほど甲斐委員がおっしゃったような状況のことも含めて議論がございましたので、一応、そこは確認の上、今後の本部会の議論にも反映させていただきます。

【平野部会長】
そうですね、ぜひ。重要なことですから。
それから、その前に鈴村委員から指摘された点について、事務局いかがでしょうか。

【岸本企画室長】
今回、枠組み自体が結構大きく変わるわけですけれども、この5年という事業期間はある程度、中長期的に取組の成果を見なくてはいけないということで、今までと比べますとむしろ長くなるような形での改善を考えておりますが、それが分かるような形で追記したいと思います。

【平野部会長】
どうぞ。

【鈴村委員】
私自身の考え方でいきますと、5年の区切りがあって、ただしちゃんと適格性が確保されたら継続されればそれで全然構わないと私は思っています。ただ、お考えのような方向で、5年をもっと延ばしてということに、もしほかのメリットがあれば、それはそれで、私は結構だと思います。
要は、5年どまりですよということにしてしまうと、その継続性の上で、多分問題になるような、そういう大事な資産になるような雑誌があるはずだと、それをどうやって助成するかということに配慮してほしいというところがポイントでした。

【小安委員】
いろいろな意見を書くという意味で言えば、多分、継続性も非常に大事なのだけれども、それが現在何となく既得権になって、特定の雑誌だけが補助されているようなところがあったというのは、1つの問題点のとらえ方だったと思うのです。ですから、継続性は非常に大事なのだけれども、やはり常に新しい視点を持って改善をしていくようなことが必要であるという書きぶりにすると、今、鈴村委員がおっしゃったことも取り込まれるのではないかと感じました。

【平野部会長】
では、そのように誤解を生まないような書きぶりにします。ありがとうございます。
あとは、今日いただいた御意見を整理して、このまとめ(その2)の素案の修正版を事務局から皆さん方にお送りさせていただきます。できれば、次回に整理をし、この委員会のまとめとして出したい。こう考えております。御意見をぜひ事務局に寄せていただきたいと思います。
最後に、資料3でありますが、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点に関わる基本論点について、総会の場で審議がされておりますが、事務局から資料に基づいて簡潔にポイントの御説明をよろしくお願いします。
ありがとうございます。今、室長が説明をしてくれたようなところが、私どもこの部会においては関係するところかなと思うところでございます。既にそういう観点からも、この部会においては、新学術領域の在り方、あるいは分野間を含めた連携、あるいはチームをつくる必要があるのではないかということも含めて、この中には入っておりますが、加えてここであったら、どうぞ。

【小安委員】
おっしゃるように、そういう議論をずっとしてきまして、大事だということは言ってきたのですが、それが政策誘導的なメカニズムで起こると言われると、私はかなり違和感を覚えます。科研費の枠組みに関しては、こういう表現は避けていただきたいと思いますので、それだけは部会長が何とかしてください。

【平野部会長】
分かりました。もともとご理解をいただいているように、この科研費というのは基本的にボトムアップの部分であります。これなくしては動けません。そういう点で、トップダウン型の部分にこれはかなり一部言葉としても入っていることは事実ではありますので、部会長が意見をもし求められる機会があったら、私は科研費のそもそもの基本であります頭出しのところをきちんと説明をいたします。ただ、対応としては、そういう新学術領域の中に、分野間の連携がとれるような対応は心得ておるというふうに発言をいたします。そのほかよろしいですか。時間をとっていただきまして、ありがとうございました。それでは、事務局から、何かありましたら、どうぞ。

【岡本企画室長補佐】
最後に参考資料を簡単に紹介させていただきたいと思います。4点ございますけれども、まず参考資料1は、大学改革実行プランの全体版でございますので、後ほどご覧いただければと思っております。2点目が参考資料の2でございますけれども、科研費の配分結果について、公表した資料がございます。この資料は、4月に交付内定を行った種目について配分結果を取りまとめたものでございますので、この後、2回目には大型の種目を入れたもの、そして年明けには全体版ということで、年3回公表しているものでございますので、こちらも後ほどご覧いただければと思います。3点目が科研費ハンドブックで、研究者の方々のために作成しているものでございます。これは毎年作成しているものでございますけれども、毎年内容の変更をしておりまして、今年は複数の科研費を合算して設備の共同購入が可能になりましたので、その部分の記述を新たに加えていること。また、研究成果を発表した場合にアクナレッジメントに科研費ということをぜひ記入してほしいという記述を強く書いているところでございます。
このハンドブックの一番最後、裏表紙をご覧いただきたいと思います。右上に科研費というロゴをつけておりますが、この関連で1枚、机上配付させていただいた資料がございます。科研費というロゴタイプを今回つくりまして、例えば成果を発表する際に活用していただきますとか、設備などにシールを張っていただくなど、実際、大学の現場で科研費は使われておりますので、広報の一環ということになるかとは思いますけれども、こういうものをつくりました。ぜひ先生方もお使いいただければと思っております。
なお、このロゴタイプについては、まもなく科研費の交付決定を行いますけれども、科研費のハンドブックとこのロゴタイプをシールにしたものを研究機関の方々にお配りさせていただく予定ですので、活用いただければと思っております。
以上が参考資料についての御説明でございました。
次回の研究費部会についてでございます。次回、7月25日の水曜日10時からでございます。同じこの建物でございますが、3階の特別会議室で予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。改めて開催通知をお送りさせていただきます。
また本日の配付資料でございますが、机上にそのままお残しいただければ、事務局より郵送させていただきます。
以上でございます。

【平野部会長】
どうもありがとうございました。
新聞等でも出ておりますが、私は退任した人間でありますけれども、参考資料1あたりは、これは大変重い、大きな課題が中に入っております。ぜひ別な立場で御検討いただければと思います。今日は少し延びて申し訳ありませんでした。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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