研究環境基盤部会 学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会(第81回) 議事録

1.日時

令和元年5月23日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15F特別会議室

3.議題

  1. 学術研究の大型プロジェクトについて(機関からの発表等)
  2. その他

4.出席者

委員

小林主査、松岡主査代理、城石委員、鈴木委員、田村委員、東嶋委員、中野委員、樋口委員、山本委員、吉田委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、吉居学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官、小林学術機関課課長補佐

5.議事録

【小林主査】  ただいまから第81回科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会第10期の2回目を開催いたします。委員の先生におかれましては、御多忙中出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、大型プロジェクトの在り方について議論を頂くこととします。まず、事務局より委員の出欠、配付資料、傍聴登録の確認をお願いします。
【小林学術機関課課長補佐】  本日ですが、岡部寿男委員、竹山春子委員、八田英二委員、原田尚美委員が御欠席となっております。
 また、傍聴登録ですが、55名の登録を頂いているところでございます。
 続きまして、配付資料の確認及び机上資料の扱いについて御説明させていただきます。
 配付資料ですが、配付資料は資料のナンバー1からナンバー5までと、参考資料1及び2の合計7種類を付けているところでございます。
 また、机上資料といたしましては、フラットファイルという形にまとめさせていただいております。もし不足等ございましたら事務局までお申し出ください。
 また、委員の先生方のみでございますけれども、机上に学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップの策定の冊子及び大規模学術フロンティア促進事業の年次計画、また、学術研究の大型プロジェクトの推進方策の改善の方向性、この3種類について別途配付させていただいております。この3点につきましては説明いたしませんが、お持ち帰りいただきまして、お時間のあるときにご覧いただければと思います。
【小林主査】  ありがとうございます。前回の作業部会で、皆さんから活発な意見を頂きました。国際連携、費用分担が重要であるとか、あるいは進捗評価において、委員以外の専門家の意見も聞いたらどうかという、それのために今日、3つの資料を御用意いただいておりますが、これ、実は既にこれまでにやっていることでありますので、委員の皆様には、今までのフロンティア促進の評価の仕方、あるいはロードマップ、大型プロジェクトの策定の仕方等々、お読みいただければと思います。委員以外の専門の方はアドバイザーという形で、その都度、進捗評価のときにお呼びしております。たしか、中野委員には何度もアドバイザーとして御協力を頂いてきたところだと思います。
 さて、本日は、次期ロードマップの策定方針の検討や進捗管理の徹底など、大型プロジェクトの在り方に関する議論を深めていただくために、現在実施中の大型プロジェクトについて、実施機関及び大型研究施設計画の国際動向について、文部科学省科学官から御発表いただきます。本日、御報告3件ございます。
 まず、東京大学宇宙線研究所、梶田所長より、スーパーカミオカンデによるニュートリノ研究の推進及び大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画について、その次に、情報・システム研究機構国立情報学研究所、喜連川所長より、新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備について、最後に、文部科学省科学官の高エネルギー加速器研究機構の三原教授より、Group of Senior Officialsについて、それぞれ20分程度で御発表いただき、御発表の都度、10分程度の意見交換をお願いできればと思います。
 早速ですが、まず、東京大学宇宙線研究所より発表をお願いいたします。
【梶田宇宙線研究所長】  東京大学宇宙線研究所の梶田です。宇宙線関連分野の状況ということで、スーパーカミオカンデとKAGRA、それから、ハイパーカミオカンデも用意しているんですが、入れてしまってもよろしいでしょうか。
【小林主査】  はい。
【梶田宇宙線研究所長】  よろしいですか。では、そこら辺について報告させていただきます。座って話させていただきます。
 それでは、報告の概要としましては、ニュートリノ研究、重力波研究、それから、最後1ページだけですけれども、宇宙線研全体について、このようなことでまとめるようにということでありました当該分野における国内外コミュニティーの状況、プロジェクトの実施機関又は実施者としてのマネジメント状況、国際協力等の連携方策、共同利用研究体制の実態などということで報告いたします。
 まず、ニュートリノ研究ですけれども、現在、ニュートリノ研究、大きく分けて3つに分けることができるかなと。1つは、ニュートリノ振動です。残された大きい課題というのが、ニュートリノに3つの質量状態があるんですが、その3番目の質量状態が一番重いのか、あるいは一番軽いのか、それから、ニュートリノのCPというものが破れているのか。これは宇宙の物質の起源と関わりがあり、非常に重要な課題だと考えられています。
 これらについて、今後行われるであろう研究について、ここにまとめまして、中国、インド、米国、日本のHyper-Kということで、このようなものが進むであろうということをまずまとめました。
 それから、2重ベータ崩壊、これも非常に重要な課題なんですけれども、宇宙線研究所とは関係ありませんので飛ばします。日本では、KamLAND-Zenが頑張っています。
 それから、ニュートリノを使って宇宙を調べるという観点では、スーパーカミオカンデが昨年改造を行い、今後、超新星爆発で宇宙の歴史を探ろうということを、超新星爆発のニュートリノを捉えることで宇宙のことを探ることを始める。それから、超高エネルギー宇宙ニュートリノで宇宙線の起源とか宇宙の高エネルギー現象を調べることもありますが、これについても、アメリカがホストをしているIceCubeなどです。ということで、私はニュートリノ振動とSuper-Kについて報告することといたします。
 スーパーカミオカンデですけれども、5万トンの容積の測定器で、その中の2万2,000トンの有効体積を持ったものです。割とエネルギーの低いニュートリノを探る装置としては、現在でも世界で一番大きい装置となっております。
 この装置、既に1996年に稼働を始めましたけれども、今までの研究の主な成果をまとめておりますが、98年に大気ニュートリノ振動の発見、2001年には太陽ニュートリノ振動の発見について、SNOというカナダの測定器がありましたけれども、そこに貢献する形で参加しております。それから、2011年には第3のニュートリノ振動を、これはJ-PARCで作ったニュートリノをスーパーカミオカンデで観測することで発見しています。このように、20年以上にわたりまして、いろいろな発見をしてきて、今は、先ほど申しましたように、超新星爆発の宇宙史を探るという新たなフェーズに入るところです。
 それで、マネジメントの状況なんですけれども、ここにまとめさせていただきました。ホスト機関が東大宇宙線研で、特に宇宙線研の研究者の多くは神岡に常駐しています。ここにある施設が、そこの施設と測定器の運営に責任を持つ形です。あと、もちろんスーパーカミオカンデの国際コラボレーションがありますが、そこのストラクチャーが右下に書いてあります。ここにExecutive Committeeというのがありますけれども、これがSKの運営を担う。それから、その反対側にCountry Boardというのがありますが、これが各国の分担などを議論する。
 それから、もう一つ下に書いてある、これはまた宇宙線研に戻りますけれども、神岡地区(ニュートリノと重力波)に、本年から国際共同利用、共同研究拠点の予算で外国人対応のURA1名を配置しております。
 運営体制につきまして、これは実験サイドの運営に対して、もう少し細かく示したものです。
 まず、Executive Committeeというのは、SKの実験代表者、それから、日本グループから2名、アメリカグループから2名、他国グループから2名、それから、SKに関係あるT2K実験の代表者から構成されています。このコミッティーはSK実験の運用、共同研究、予算に関する全ての議題について議論し、その議論の結果をCollaboration Council、最後に出てきます、そこに提案する。
 それから、Collaboration Meetingというのがありますけれども、これは年2回開催して、全ての共同研究者が参加でき、実験装置の状況、データ解析等について議論する場となっています。
 最後はCollaboration Councilですが、これは参加機関のスタッフメンバーで、具体的に何をするかというと、SKの運営ということで、実験に重要な課題、実験装置の設定、論文の発表、データの公開、共同研究者の変更について議論し、ここは決定するという役目があります。
 それから、Country Boardというのがあるんですけれども、各国から代表者を出して、特にこれはSK実験のための物品の供与や予算の国際協力について議論し、それをExecutive Committeeに提言する役割を持っております。
 続きまして、次世代のHyper-Kについて、マネジメント状況について話していきたいと思います。
 まず、Hyper-Kについて、東大とKEKがホスト機関としてやる。東大はHyper-Kの測定器を、そして、KEKはJ-PARC加速器、前置検出器を担当という役割分担となっています。それから、東大内に、次世代ニュートリノ科学連携研究機構というものを立ち上げ、現在、いわゆる部局としては4部局から36名が参加し、ここのメンバーがHyper-Kの建設に責任を持つこととなっております。
 それから、Hyper-Kの国際諮問委員会、その下に空洞・水槽分科会というものを設置しまして、現在のHyper-Kの準備状況などにアドバイスを頂いております。例えば、次回は6月3日に空洞・水槽分科会、6月25、26日に諮問委員会を開催して、状況についてアドバイスを頂くことにしております。
 次に、Hyper-Kamiokande experiment Financial Forumを立ち上げました。ここでは、各国の予算状況などについて情報と意見交換を行うこととしており、次回が6月末となっております。
 最後、ともかくKEKと東大がホスト機関となってやっていくということなので、特にKEKの素核研所長と宇宙線研所長では適宜情報交換をしております。
 続きまして、Hyper-Kの国際協力等の連携方策、共同利用研究体制の実態ですが、まず、Hyper-Kは国際協力で建設から行うということで国際間で合意して、推進しております。これに関して、先ほどのページにもありましたけれども、Hyper-Kのexperiment Financial Forumを通して、各国の予算機関や研究所などと連携して、国際協力の推進を図る。
 ただし、予算機関や研究所などがここに参加していますけれども、飽くまでもボトムアップの国際協力として、そのベースにあるのは参加研究者の意見という、そういう立場は崩さないでやっております。
 それから、Hyper-Kへの各国の参加を更に大きくすることを目指して、今、日本側の中心的な研究者がいろいろな国に行って、セミナーや議論を行っています。それから、Hyper-Kに関連して、Super-Kの共同研究者が近年増加しているんですが、これはHyper-Kへの参加を見越して、技術や解析を習得しておきたいという思わくがあると思われます。
 神岡施設の共同利用ですけれども、Super-Kを中心に、その他の地下利用実験、例えば、観測を終了したXMASSなどが行われているという形となっています。Super-Kの共同利用は、主に各研究者の研究内容、例えば、あるトピックスに関するデータ解析とか測定器改良など、そういうものに従って行われております。
 次のページ、11ページですけれども、次世代ニュートリノ科学連携研究機構の創設ということで、少し詳しく書かせていただきました。ともかくHyper-Kは大きい装置ですので、これをきちんと建設するために、ホストとして、より国際的に可視化された強力な研究拠点を新たに形成したと。参加機関の強み・特色を生かすということで、宇宙線研、特に共同利用・共同研究拠点としてやる。それから、Kavli IPMU、宇宙線研もですけれども、高い研究水準と卓越した国際的な競争力を有する開かれた研究システム。それから、大型プロジェクト等の推進、これは理学部、宇宙線研関係者。それから、地下関係ということで、地震研究所などということです。かつ、運営体制としては、協議会と運営委員会というものを設けて、開かれた形で議論をしていくことにしています。
 最後、一番大切なんですけれども、Hyper-Kの建設プロジェクトには、参加機関の研究者がホスト機関のメンバーとして責任を持って参加するという立場となっております。
 12ページの絵は多少複雑なんですけれども、東京大学と高エネルギー加速器研究機構とハイパーカミオカンデの共同研究グループが、どういう立場で建設をやっていくかということが書かれています。ポイントは、ハイパーカミオカンデの共同研究グループも建設に参加するんですけれども、それはやはり参加という形で、東京大学と高エネルギー加速器研究機構が建設については責任を持つ体制でやっていくというものです。
 続きまして、残りの時間で重力波に移ります。まず、国内外の状況ですけれども、米国LIGOは2015年から観測を開始、ヨーロッパのVirgoは2017年から観測を開始。既に2018年までに、連星ブラックホール合体10例、連星中性子星合体1例を観測し、また、2017年のノーベル物理学賞がLIGOの3名の方に贈られております。
 現在、LIGOとVirgoは感度を上げて、この4月から新たな観測運転中です。これはObservation3、「O3」と言っていて、来年3月末までは少なくともやる予定です。KAGRAは、今年中のObservation3、O3への参加を目指し、干渉計の試験を今実施しているところです。
 それに加えて、インドがLIGOの機器類をそっくり使って、新たな干渉計を組み立て、2025年頃観測に参加したい意向である。
 それから、その先、更に将来ですが、欧米のコミュニティーは、次世代の重力波測定器のデザインを本格化し、更に公式なプランニング、これは米国のDecadal Survey、ヨーロッパはクエスチョンのままになっちゃいましたけれども、そういうものに載せていきたい意向である。
 最後は、地上のレーザー干渉計とはちょっと違いますけれども、宇宙空間でのレーザー干渉計を欧州では2034年頃に打ち上げ予定であります。ただ、感度のある波長帯が全く違いますので、地上のレーザー干渉計とは相補的になると考えています。
 それで、KAGRAですけれども、KAGRAは目的としては、重力波を観測することによって、コンパクト連星合体などの天体現象を解明していきたい、そして、重力波天文学の国際的な研究拠点を構築していきたいというものです。具体的な装置ですけれども、一辺3キロメートルのL字型の大型レーザー干渉計を地下に設置し、かつ、特徴としては、そのうちの一番重要な鏡4枚を20ケルビンという極低温に冷やして観測する。現在、国内外で200人以上が集まる国際観測拠点となっています。国内外と言いましたけれども、国外は主に東アジア諸国、あと、イタリア等が少し入っているような感じです。
 これがKAGRAの全体のスケジュールですが、2010年に最先端研究基盤事業でこのプロジェクトが認められ、何回かの試験運転を行った後に、現在は干渉計の設置が完了して、そこにきちんとレーザービームを通して、いろんな光のCavityがあるんですが、それをロックして、そしていろんなノイズを落としていくという。今、まだノイズを落としていく段階までは行っていませんけれども、いろいろな機器をロックする、今、そういうことをやるという段階で、今年中の観測運転を目指しています。
 マネジメントの状況なんですけれども、ホスト機関は、東大宇宙線研、KEK、国立天文台で、それぞれに役割分担を持っています。現場で建設を主導するため、宇宙線研と天文台は研究者の多くが神岡に常駐しています。KEKの方は非常に頻繁に神岡に出張するという形で参加しております。
 プロジェクトの推進体制としては、建設とサイエンスに大きく分け、建設はホスト機関が大きな責任を持つというものです。右下の絵なんですが、左が建設で、ここはもうホスト機関がしっかりとやるという。一方で右側はサイエンスで、そちらは国際協力でやる、そういう形です。
 先ほど言いましたけれども、外国人対応のURAを今、ニュートリノと重力波で1名雇用しています。それから、重力波、どうしても国際的なプロジェクト間の協力が大切なものですから、毎年、国際諮問委員会を開催して、プロジェクトの進め方のアドバイスを頂いております。
 運営体制をまとめましたが、Executive Officeというのがあって、これはKAGRAの代表者が議長として、KAGRAを共同建設する3機関や協力する研究機関の代表者で構成されています。今後は海外機関の代表者も含める予定で、この秋からそうする予定でいます。
 このExecutive Officeは、プロジェクトの運用、予算等に関する重要な案件について議論し、決定します。決定事項について、コラボレーションに報告する。
 その下に、System Engineering Officeというのがありますが、これはプロジェクトマネジャーを議長として、レーザー干渉計の建設と運転における知識と経験を持つ者で構成され、KAGRAの建設やインフラ整備の状況を把握して、リスクマネジメントにより必要と判断した対応を実行し、言わば建設の執務を全て担うところとなっています。
 それから、コラボレーションサイドとして、KAGRA Collaboration Congressというのがあって、これは参加機関から推薦されたメンバーで構成され、選挙により、この中のボードメンバーが決まり、それが議論を主導するとなっています。年3回の顔を合わせるコラボレーション・ミーティングを開催し、KAGRAのサイエンスに関わる重要な案件について議論し、最終的には投票により決定するとしております。
 国際協力の連携方策等ですが、まず、歴史的には、建設予算が認められた2010年には、ほぼ日本国内の研究者のみから成るグループでしたが、翌年くらいから、アジア諸国を中心に国際研究を目指してきて、だんだん大きくなっています。特に現在、サイエンスの議論を行う部分、KAGRA Scientific Congressのボードですが、国内外半々程度の比率で運営しています。
 なお、現状のKAGRAの感度を向上させるための新たな装置などについては、予算を含め、国際協力で推進する予定で合意されています。
 共同研究者の数ですけれども、年々増加して、今年について言うと、自分の研究時間の30%以上をKAGRAのために使うとして、KAGRAの論文の共著者リストに名前が載る予定の人数が200人程度になる予定です。
 最後、KAGRA関係の共同利用研究は、今までは各装置開発研究、設置作業が中心でありましたが、今後はデータ解析と新たな装置の開発研究になる見込みです。
 最後、宇宙線研究所関係についてまとめさせていただきました。宇宙線研究所としましては、特に宇宙線コミュニティーとの連携を重視しています。年に2回の日本物理学会での宇宙線分野の全体会での宇宙線研究所報告と議論、それから、毎年のように行われている宇宙線分野の将来計画のミーティングなどでの意見交換、情報交換を重要だと思ってやっております。
 それから、宇宙線研の将来計画検討委員会や外部評価委員会などの外部の目を通したマネジメント体制、国際協力推進などの評価を行っています。ちなみに、この2つの委員会は、セクレタリー等を除いては、全部外部の人になってもらっています。
 それから、先ほど述べましたけれども、URA2名を雇用して、外国からの共同利用研究者への対応をしています。1名が神岡地区、1名が柏地区です。
 それから、最後に、各研究グループにおいて独自に持っている国際ピアレビュー委員会などは、各グループ独自ですけれども、活用しております。
 最後のこの表は、宇宙線研究所の共同利用件数の過去10年の推移ですが、最後、今年度からは国際共同利用が始まっております。
 以上です。
【小林主査】  ありがとうございました。それでは、10分と限られていますから、どなたからでも質疑をお願いできればと思いますが、私から3点ほどお伺いしたいと思います。
 まず1点は、Hyper-Kが将来稼働した際は、Super-Kはそこで稼働をやめて、そのスタッフは全部Hyper-Kに移るということなのか、それとも、Super-KはSuper-Kで続けて、そしてHyper-KはHyper-Kで並列的にやるのかというのが1点目です。じゃ、1つずつ。
【梶田宇宙線研究所長】  この点につきましては、Hyper-Kが稼働した段階で、宇宙線研究所としては、Super-Kの稼働は止めるつもりでおります。ただ、これ、分野全体としては恐らく、Super-Kのインフラストラクチャーは重要なので、昔のカミオカンデを東北大学が使ってKamLANDをやっているように、何らかの新たな研究をどこかの組織がやってもらえれば一番いいんじゃないかと。これは個人的ですけれども、思っております。
【小林主査】  ありがとうございます。2番目と3番目はKAGRAについてですので併せてお尋ねしたいんですが、KAGRAの場合、宇宙線研とKEKと天文台と3つの組織で運営することの、いわゆる難しさ、いろいろな課題がもしあるとしたら、どういうところで、それをどういうふうに今対応されているのかということ。
 それから、LIGO、Virgoとの関係になります。これはもちろん、2点でやるより3点でやった方がより観測できるのはそのとおりだと思うんですが、同時に競争相手にもなり得るところなので、今、その関係でどういう方向で、特にLIGOとの関係は協力しつつ、しかし、どういうところで競っていくのか、これを併せてお尋ねできればと思います。
【梶田宇宙線研究所長】  分かりました。では、まず、国内3機関の関係ですけれども、おっしゃるとおり、日々の推進に当たっては、いろいろと意見が出たりしますけれども、これはともかく3機関で協力してやっていくと決めているので、いろいろと問題が出たら、なるべく早くその問題に対処することを中核として、ともかく現場の建設ミーティングは毎週行いますし、Executive Office Meetingも2週間に一遍行っていて、何かしら問題が出ているようであれば、それを本当に早く吸い上げて対処する体制でやっています。ともかく頑張って、いろいろと対処するしかないという感じです。
 それから、LIGOやVirgoとの関係なんですけれども、恐らく感覚としては、やはりサイエンスは一緒にやっていかないと出ないので、サイエンスは一緒にやる。だけれども、各プロジェクトそれぞれが機器類については特徴を持っているので、その特徴は各プロジェクトが伸ばしていく。特にKAGRAの場合は、一番重要な4枚の鏡を20ケルビンまで冷やして運用するとしていますが、これが特徴であり、恐らくこの技術が次世代の重力波のレーザー干渉計で使われることもありますので、我々はそこら辺の特徴を最大限に伸ばしていくという戦略でやっております。
【小林主査】  ありがとうございます。ほかの方。
 それでは、松岡委員、それから中野委員。
【松岡主査代理】  御説明、どうもありがとうございました。Super-KについてもKAGRAについても、これまで何回かお話を伺っているので重ねての質問になっていたら申し訳ないんですけれども、運営体制について少し教えていただければと思います。
 7ページ目に、Executive Committeeが全ての議題について議論し、その議論の結果をCollaboration Councilに提案すると御説明いただきました。このExecutive CommitteeとCollaboration Councilの役割の違いをもうちょっと教えていただければと思います。Executive Committeeの方は、名前からすると、もうちょっと大所高所から言うとかそういうことなのかなと思ったんですけれども、もうちょっと教えていただければ有り難いです。
【梶田宇宙線研究所長】  Executive Committeeというのは、ここにあるメンバー構成からして分かるように、いろいろな代表者レベルの人が集まって、実質的な議論をしています。Collaboration Councilというのは、参加機関のスタッフメンバー全員です。したがって、ここでは実質的ないろいろなことについて、例えば、こういうことをやりましょうという提案をここで議論していたらもう進まないので、基本的にはいろいろなことを進める上での提案をExecutive Committeeで作った上でここに報告して、意見があれば聞いて修正しますけれども、決定をして、それをみんなで実行していく、そういう役割分担になっています。
【松岡主査代理】  ありがとうございます。
 重ねてもう一つ。一方、KAGRAの方は、17ページ目にとてもよく似た感じで説明いただいていますけれども、ここではExecutive Officeというものは、ここで議論し、決定するとなっていて、ちょっと役割分担が変わっている。そこの事情を教えてください。
【梶田宇宙線研究所長】  独立なコラボレーションなので、必ずしも調整をしていないので分からないんですけれども、感覚としては、KAGRAの全員が集まる全体ミーティングは年に3回です。建設段階ですと、年に3回のCollaboration Meetingまで決定をペンディングしておいたのでは仕事が進まないことが多いので、もうそこはある意味、皆さんに我慢していただいて、トップディシジョンで進めてしまうという感じで実際やっています。
【松岡主査代理】  実態に即してということで理解しました。ありがとうございます。
【小林主査】  では、中野委員から。
【中野委員】  まず、KAGRAのO3観測に対して質問なんですけれども、参加ということなんですが、参加のインパクトはどの程度か。既に先行で走っているところがあるのに、ちょっと入れてもらうという感じなのか、それとも、非常に期待されていて、これが入らないと、O3そのものの目的を果たせないぐらいインパクトが大きいのかというところをお伺いします。
【梶田宇宙線研究所長】  正直なところ、KAGRAは今、一生懸命、ともかく、まず干渉計を動かすところをやっているところです。動かして初めてその後に、いろんなノイズを落として、あるレベルまで行ったら、ともかく参加してしまうという、そういうことで、少なくともO3について言いますと、KAGRAが入ったことによって劇的な改善はそれほど期待できないです。ただし、ある意味、重要性はあって、これで4個のレーザー干渉計、アメリカに2台ありまして、動くんですが、何らかの形でサイエンスに恐らく出していくには、今後、3つの干渉計が動いている必要があります。大体1つの干渉計が、運転していますと言って実際運転している割合は七、八十%なんです。そうすると、3つあって3つ動いている確率は半分にも満たない。4つで3つ動いているというのは割と高いので、そういう意味でエフェクティブにはランタイムを稼ぐような、そういうことには貢献できるかと思っています。
【中野委員】  ありがとうございます。それに関連してなんですが、そういうふうに重力波天文学の目的自体が当初の重力波を観測することから、どの重力波源方向にあるかというマルチメッセンジャーの一番初めのところをつかむところに変わってきているんですけれども、それは観測だけじゃなくて、いろいろなところのデータを組み合わせて、できるだけ早く、それもいろいろな人のところに即座に伝えていかないといけない。それは全く違う役割というか、体制になると思うんですけれども、そこでのリーダーシップというか、イニシアチブはKAGRAはどの程度取られているのか、取ろうとされているのかということについて聞きたいです。
【梶田宇宙線研究所長】  これについて言うと、マルチメッセンジャーとして、例えば、コミュニティーにどのぐらい早く情報を流せるかは、残念ながら、これについて言うと、やっぱり今まで観測をやっているグループが強いです。やっぱりソフトウエアの準備も強いし、バグもないし、かつ、どういう場合にどういう対処をしたらいいかという、いろんなノウハウが蓄積されていて、それについて言うと、やはりLIGOが圧倒的に強いです。
【中野委員】  そこを強化するために、情報分野の専門家を雇用して、全く違うやり方でとか……。
【梶田宇宙線研究所長】  そういう簡単な話ではなくて、結局、LIGOというのは1,000人から成るデータ解析専門部隊がいたんです。厳しくなり過ぎたというので離脱者が相当出たんですが、ともかくそういう人たちがずっとそれをやってきていて、日本は独自のこともやるけれども、そこに参加するという両方の面で現実的にはいかざるを得ないかな。多分今、データ解析、100人程度しかいないので、KAGRAの場合。
【中野委員】  分かりました。もう一つだけいいですか。
【小林主査】  コンパクトにお願いします。
【中野委員】  マネジメントの1点だけ。KAGRAについてもSuper-Kについても、コラボレーションのExecutive OfficeとかExecutive Committeeが予算を決めると書かれていて、それ、ちょっと違和感があるんです。予算を決めるのは所長であったり機構長であったりで……。
【梶田宇宙線研究所長】  予算というのは、予算の使い方です。
【中野委員】  常に、こういうプロジェクトって予算が足りないと思うんですよね。予算をもっと出して欲しいという現場の声と、このプロジェクトだけに全部使っちゃほかが困るから駄目だというせめぎ合いがあるんですが、そこはどういうふうに意思決定がされるのか。複数の機関が、それもあるときに、どの機関がどれぐらい出すべきかを提言するということは……。
【梶田宇宙線研究所長】  基本的には、宇宙線研究所が代表機関として、例えば、KAGRAについて言うと、概算要求をして予算を頂いていますので、その予算の範囲内でマネジメントをしていくということで、それをどういうふうに使っていくかというところを実験側が、これでともかくやってくれと言って、後に延ばすものは後に延ばしてくれみたいな、そういうことを常にやりとりしています。
【中野委員】  ある意味、梶田所長がこれでやれと言ったら、現場ははいと言う。
【梶田宇宙線研究所長】  だって、ないんですから。
【小林主査】  それでは、田村委員で最後ということで。
【田村委員】  Hyper-Kに関してですけれども、DUNEとの競争と、あと協力関係もあるのかどうかという状況を聞きたいんです。その1つの意図は、聞きたい理由は、やはりどちらも物すごく大きなプロジェクトで、それぞれ特徴があるにしても、それをやはり人類のサイエンスの進歩のためには2か所でそれぞれで頑張って競争してやる必要性はどういうふうにお考えかをお聞かせください。
【梶田宇宙線研究所長】  DUNEとの関係ですけれども、まず、協力は何があるかなんですけれども、ニュートリノのビームを作るところ、これが大変なので、多分、現場関係は、私、宇宙線研なので、これは高エネ加速器研究機構の方ですけれども、細かいことは分かりませんけれども、ビームを作る方はある程度の協力関係があるはずだと思っています。
 DUNEとのサイエンスの関係なんですが、まず、よくDUNEとは競争関係にあると言われるんですけれども、それはCP非保存について言うと競争関係です。ところが、ハイパーカミオカンデは太陽ニュートリノもやりますし、大気ニュートリノもやるし、陽子崩壊もやるし、超新星ニュートリノもということで、かなりマルチパーパスな測定器となっていて、そこら辺は、正直なところ、DUNEとは大分違うものだと思います。そういうことで、どちらだけあればいいのかというのはなかなか難しいんですが。
 かつ、CP非保存と、私、最初に言ったけれども、質量の階層関係の決定なんですけれども、これについて言うと、どちらかと言えば、DUNEは質量の階層の決定にたけていて、CPはHyper-Kの方がちょっと上です。ということで、そこら辺も相補的です。かつ、テクノロジーも全然違うので、我々は水を使うし、向こうは液体アルゴンということで、そこら辺も、2つあることによって、系統誤差の評価など、ちゃんとやっているかという相互チェックには多分役に立つんじゃないかと思っています。
【小林主査】  ありがとうございました。まだ質問のある委員の方もいらっしゃると思いますが、時間が過ぎておりますので、宇宙線研についてはここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。
【梶田宇宙線研究所長】  ありがとうございました。
【小林主査】  それでは、引き続いて、情報・システム研究機構国立情報学研究所より発表をお願いいたします。
【喜連川国立情報学研究所長】  本日は、お時間、大変ありがとうございます。私どもが進めております学術情報ネットワーク(SINET)の整備状況について御報告をさせていただければと思っています。
 まず、今日の社会において何に一番不便を感じるかと考えますと、多分、ネットワークに接続されないというのが一番アノーイングなファクターになろうかと思います。そういう意味で、SINETは研究者、つまり、アカデミアのためのネットワークのサービスをしているとお考えいただきたく存じます。そのときに、今、通常の御家庭のネットワークというのは100メガビット/秒でございまして、FTTHといいまして、御家庭に光が入っております。SINETが御提供しますのは、それの1,000倍の速さでございまして、100ギガビット/秒。では、これは誰のためですかと言いますと、今日お越しいただいております梶田先生のような、いわゆるビッグサイエンス、ぶっ飛んだ研究をされるサイエンスをサポートするためです。例えば、ここにございますように、Spring-8やカミオカンデや、あるいは、こういうスーパーコンピューターのような日本にある大型研究、そして、海外にありますようなLHCやITER、そして、最近ではデータサイエンスということで、クラウド環境に接続する大学間の組織間の連携をする、産学、あるいは教育に、いろんなところに提供先が広がってきているのが現状でございます。
 このようなSINETといいますのは一朝一夕にできるものではございませんで、過去、営々として、このネットワークを構築しておりまして、現在のはSINET5と呼ばれているものでございます。この5というものの前に、SINET4というものでございましたが、実はこれはネットワークのサービスをキャリアさんから購入して大学に提供するモデルでした。SINET5は何が違うかといいますと、ダークファイバーという光を運ぶ線を借り、伝送装置を買い、サーバーを買い、局舎を買い、その上にルーターを買いという、ありとあらゆるコンポーネントを我々が手作りで作っていくということであります。
 何でそんなことをするかといいますと、ハイエンドな100ギガビット/秒というのはメニューには載っていないわけでございまして、売っていないものをしようがないので作る。これは、梶田先生から、今縷縷(るる)御説明がありましたように、カミオカンデというのは、ある意味で浜松ホトニクスの光電子増倍管というのをそのために作っておられ、我々ITもこういう自前で作る時代に入ってきているということです。今のサイエンスは、やはりITといかにタイトにバインドしていくかが勝負になっておりまして、天文でも、天文の望遠鏡だけではなくて、そのバックヤードのITシステムが今のディスカバリーに物すごく大きく貢献する、そんな時代になりましたので、ドメインの先生方とITがもっとタイトにくっついていく、そんな時代の感覚の中で、このSINET5というものを、これが今、900機関以上が、北海道の端っこから沖縄まで全部100ギガで結ばれているという構図になっている次第でございます。
 これは、どうしてこういうことにモチベートされてきたかといいますのは、私どもだけではなくて、実はマスタープランを申請した当時、日本は最初に40ギガビットというかなり広帯域に持っていったんですけれども、その後、ちょっと油断をしているうちに、アメリカも欧州も中国もほとんどが100ギガビット/秒に移ってきた。非常にビハインドしてしまった経緯がございます。これは現状を示しておりますが、アメリカはかなり強い100ギガビットのネットワーク、中国は内陸がまだ弱いですけれども、海沿いはほとんどパワフル、ヨーロッパも非常に強い、豪州もこの辺、強いということで、どこもここもかなりパワフルになってきている中で日本は遅れちゃいけないということが1つ。
 これは、コンチネントあるいはカントリーの中でございますが、今度は国際という面で見ますと、SINET4の場合は、対米回線がやや細いものが3本で、実はヨーロッパには直結ラインは持っていなかった状況があります。これではいけないだろうということで、対米回線を100ギガにいたしまして、同時に、ヨーロッパは10ギガを2本引くというのを初めてやりました。そうしますと、高エネルギー物理の先生方はもう熱狂的にお喜びいただきまして、あっという間にネットワークがぱんぱんになりましたものですから、ここを100ギガにするということをやったわけですけれども、実は海の下は安定しているんですけれども、陸の上は非常にアンステーブルです。そういう意味で、ヨーロッパを1本引くんですが、もう1本100ギガを引くということはもったいないものですから、大西洋を潜って、ぐるっと迂回路を使うことによって信頼性を上げるということで、今年の3月1日でございますけれども、このようなネットワークを開通させていただきました。それが、この現況感から申しますと、世界というのは全部このように100ギガになっておりますので、ようやく世界に伍(ご)するパワフルなネットワークを日本も導入することができているのが現況感でございます。
 ここに至るところでは、日本学術会議のマスタープランで御提案させていただくと同時に、当時、小林先生、副会長に、これは提言としてまとめなさいと御指導を本当に温かく頂きまして、今でも深く感謝申し上げる次第でございます。
 それを受けまして、当時、国大協の会長でありました京大総長の松本先生が、これを働き掛けていただきまして、国立大学も公立大学も私立大学もこれにエンドースするという形でメッセージを出していただきました。何よりも、この作業部会の中でこの施策というものはやっていくべきだと温かい御支援を頂いた次第です。文部科学省の中では、情報分野の委員会の中で、このビハインドを何とかしなくてはという議論は縷縷(るる)深まりました。
 今申し上げましたのは、ネットワークの土管層といいますか、一番底辺の層でございますけれども、ネットワークを使えるようにするという意味では、その上にいろいろなコンポーネントを乗せていく必要がございます。そういう意味では、狭義のSINETとパッケージとしての広義のSINETというところで、今回は全体像という意味では、広義のSINETというものをNIIは展開してまいりまして、現在、SINET5は16年から運用いたしまして、次のSINETは2022年に開始するということを計画している次第でございます。
 こういうものが世の中でどのように捉えられているかということでございますけれども、日本の研究者、約300万人の方がほぼ毎日、SINETを使っておられます。この中で、未だにどんどんユーザーが増えていっていることは少し面白い現象とも言えます。これはある意味で言いますと、科学技術がどんどんデータインテンシブになる。つまり、非常に広帯域のネットワークを使うような学問が継続的に増えていっていることを意味しているのではないかと思いますし、どうして日本中に接続するのかといいますと、これはSINETの活用事例集という、興味深い、面白いネットワークの利用をされている方々を御紹介したものですけれども、これは全国にあまねく広がっていることからも御理解いただけるのではないかと思います。
 ここに、そのネットワークをどうデザインするかということを、私どもではNIIの中に学術情報ネットワーク運営・連携本部というものを置きまして、各大学あるいは高エネ研や天文台や理化研等々、インテンシブに私どものネットワークを使う方々から構成されますネットワークの本部の中で縷縷(るる)議論しながら、常に皆様のお立場を忘れないようにシステムを作っていこうとしているところでございます。
 例えばということでございますけれども、これは高エネルギー物理のATLASのマップを描いておりますが、LHCから出てきたデータが一体グローバルにどういうふうに利用されているかといいますと、TierからTier2、Tier3と、こういう広大なネットワークの中で、正に世界で一丸となって、こういう物理の解明に進んでおられる。したがって、もうこういう中に入らざるを得ない。つまり、入らなければ、研究の中に参加できないわけです。そういう中での世界のネットワークの強さと伍(ご)するようなものを日本が提供するのは最低限必要になってくるという状況があるのを御理解いただければと思いまして、これは先ほどと同じような図ですけれども、それをこのような物理ネットワークが支えているということです。
 一方で、ネットワークを運用する側、つまり、IT側は独自のまたネットワークを連携運用しておりまして、これはGlobal NRENという、ヨーロッパや中国やアメリカやいろんなプレーヤーが集まって、年に一度インテンシブな協議を行います。こういう中では、学術ですので必ずしも予算的に十分でないとき、どっかが切れちゃうとき、最近は激甚な災害が起こるわけですけれども、そういうことが起こったときに、お互いにそこを補完することの連携も行っておりまして、学問分野とIT、インフラ屋、それぞれ別の空間で相互連携をしているのが現状だと御理解いただければと思います。
 さて、では、SINETが一体どこに利用されているのかと申し上げますと、やはり大きなサイエンス、ビッグサイエンスという意味では、梶田先生のスーパーカミオカンデを初めとしまして、Belle実験装置のような、高エネルギー物理の場合は、とにもかくにも膨大なネットワークをやりとりしなくてはいけないことから、これ、申し上げていいかどうか分かりませんけれども、こういうネットワークがなければ、もう研究が進まないようなサイエンスになっていることは多分正しいということではないかと思います。
 これは、高エネが一番大きいユーザーではありますけれども、最近では「京」コンピューターというような超高速のスーパーコンピューターが吐き出すデータもまた膨大になっておりまして、我が国は毎日地震があるわけですけれども、地震のセンサー網、ここにある粒々というのは地震のセンサー網でございますけれども、こういうものの集約、あるいはITER、あるいは、ここにございますようなVLBIのような天文、測地、はやぶさ、これは地震のためのリアルタイムのアラートというようなものもございます。これは東京大学病院の先生がアレンジされたものでございますけれども、福島の大震災があったときに、東京大学あるいは、いろいろな大学の先生が福島を訪れた。そのときに一番の問題は、そこのカルテがない。つまり、診る患者、診る患者が全て初診になる。患者に対してどういう診断をするかというのは物すごく丁寧な時間が必要になってしまいます。そういうことから、相互バックアップということで、現在、国立大学病院の多くがカルテを相互バックアップしておりまして、今回の広島や北海道の災害でも一切カルテが出てこないということは絶対ないようなことをしております。
 このためのネットワークのボリュームは実は圧倒的に大きくて、こういうことにも使える。そして、こうやって統合化されたところから臨床研究が進むということもなされておりますし、これも後ほど申し上げますけれども、お医者様方のカンファレンス等もこの上でなされる、あるいは遠隔講義もなされる。非常に多様な空間で利用されているということでございます。
 では、こういうネットワークは簡単に作れるのかというと、そうではございませんで、やはりITのエッジの研究をしながら、こういうものを実際に作っているということです。このネットワークは日本では初めて作りましたものですから、もちろん多くの論文を発表させていただくとともに、多くの識者の方から、これはかなり努力をしたねということで、文部科学省からも御評価を賜っているところでございますし、グローバルに見ましても、膨大なデータを動かすことを単一のラインでやることぐらいは誰でもできるだろうということから、マルチラインでインターコンチネントをどうやって運ぶかというようなことに関しても、100ギガビットを超えるような数百ビガギット、これは世界で一番を日本が、このSINETを利用しながら使う、あるいは、オンデマンドの技術をどんどん開発するということもやっております。
 さらには、今、100ギガですけれども、400ギガを今年中に入れますが、世界で最高は実は600ギガでございまして、これをキャリアさんと連携しながら初めて世界で実証する。こういうふうに、常にフロントを走りながら、ドメインのサイエンスの方々と御協力して、よりよいサービスを提供したいと考えている次第です。
 さて、SINETが今、現状として、今日の中間報告として、どういう状況になっているかをもう少し丁寧に御紹介いたしますと、先ほど、「京」のように、ここは100ギガでつなぐということで、神戸から東大の計算機センターまで、情報基盤センターですが、これは柏にございまして、そこへのトラフィックというのは、もはや100ギガに迫る量になっております。したがいまして、用意しますと、どんどんそれを使うユーザーが増えておりまして、先ほどの高エネルギー物理も数十ビガギッドというものをばんばん使うような、提供すればそれを全て使うという世界が広がっていることを御理解いただければと思います。
 もう一つは、低レイテンシーということが非常に重要でございまして、何か信号を送って、それが届く時間でございます。これは8Kというハイレゾリューションのイメージですけれども、こちら側が非圧縮といいましてリアルタイムに送っています。こちら側は圧縮を掛けまして、データ量を減らして送っています。もちろん減らして送ればいいじゃないかとお考えになられるかもしれないんですけれども、見ていただくと分かりますように、これ、わざとずらしているんじゃなくて、同じものがこういうふうに、数秒のディレイが出ているのが分かるかと思います。
 これを使って何をするのかといいますと、実はこれ、東大と京大でやっていますので、大きな大学でやっているように見えるんですけれども、そうではなくて、本来は都市部の病院と地方の病院でやります。病理というのは「1人病理」といいまして、病院の中に1人しかおられないように、もうどんどんおられなくなる。ちょっと寂しいといいますか、辛いお仕事なんですけれども、この中で病理のデータをやりとりしながら、議論しながら、これは癌(がん)か、癌(がん)でないかということの判断をするということでございまして、これはたまたま天野先生から、これ、お手元に入っておりませんけれども、こちら側が2Kで8Kです。8Kの何がいいかと言いますと、この画像を見ますと、一番細い手術の糸が見える。その糸がどれぐらいのテンションで張っているか、どういうふうに手技が動くかを見ることができる。2Kでは到底見えません。そういう意味で言いますと、2Kから8Kになったときのドメインというのは、実はコンシューマー、オリンピックのためではなくて、Mから始まる、メディカルから始まると言われています。
 どうして地方の病院に先生方がなかなか行かれないかということの最大の理由は、お医者様の中で、この患者をどういうふうに執刀すればいいかという、いわゆるカンファレンスをするわけですけれども、そこに参加できないんですね。ところが、この8Kで本当にビビッドに送りますと、しかも、数秒の遅れがあると、何を話しているのか、どんどんイライラしてくるわけですけれども、これをリアルタイムに8K画像を送ろうと思いますと、SINETがなくてはもう動かないことになってくるわけでございます。本年度は、東阪間に関しましては非常に重要だろうということで、400ギガにアップグレードすることも考えております。
 あるいは、もうちょっと違う例で言いますと、今、eスポーツというのを聞かれたことがあるかもしれませんが、ネットワークが本当に早いスピードで動く必要が。早いというのは、運ぶ量が多いんじゃなくて反応が早いという意味ですけれども、これは昨年、つくばで実は情報のオリンピック、化学とか物理とか数学とかいろいろありますけれども、情報のオリンピックの競技がなされました。このときは、クラウドとの接続が一瞬たりとも落ちてしまっては競技にならないということで、三重系のネットワークをNIIが提供する。こんなふうにいろいろな応用が展開されていることです。
 これは最近はやりのAIの例でございますけれども、これ、また医療になって恐縮でございますが、それぞれの病院ではなく、実は学会と連携するということをしました。先ほどの例ですと、例えば、病理学会のようなものですと、東大の病院の病理から各大学、ざーっと並ぶわけですけれども、そのデータが学会に来まして、匿名化されて、送るところも、それから、NIIのクラウドに来るところも、全部SINETで送る。御存じかどうか分かりませんが、病院に行かれますと、ここからここまでのCTスキャンというのを今、5秒で送ります。5秒で膨大なデータを。これを運ぶためには、ネットワークが強くなければ、もう全然動かない現状がございます。
 これもお手元には、イメージとして余りよろしくないものですから、食欲減退すると思いまして避けておりますけれども、これが入力画像、これが出力画像、ここにおかしいなというのが出ます。これは悪い例です。これは、いい例ですと反応しない。こういうグレーゾーンというのもありまして、むしろこれが重要だとなっています。
 さて、アルゴイズムがどう影響するかと書いてありますのが、ネットワークの種類です。ニューラルネットワークを変えても、実はパフォーマンスは1%ぐらいしか変わりません。それに対しまして、これはデータの量を変えたものです。横軸の量を変えますと、1%で10%から15%以上、性能がどんどん上がっていく。もちろんサチュレートしますと、なかなかここから上がらないわけですけれども、何が言いたいかといいますと、今のAIにとってデータは本当に不可欠でございまして、NIIのクラウドには2,000万枚以上のデータがもう既に来ておりますが、これはSINETがあるから日本が新たに勝てる新しい領域を作っているということでございます。
 さらに、こういうことをやる中で、ネットワークが不安定であると、皆様に非常に煩雑に感じられる環境が出てくるかと思いますけれども、東日本大震災、熊本、北海道、昨年は西日本豪雨がございますし、更に北海道厚真町の地震がございました。これらの全てのディザスターに対してSINETは一瞬たりとも切れておりません。これはダイナミックなリラウティングというものが瞬時になされるということのパワーでございまして、こういう技術も実は手作りの中で出てきているということで御理解いただければと思います。
 SINETは、先ほど言いましたように、土管となるネットワークの上にいろいろなファンクションを乗せることによって初めてユーザーが利用可能になりまして、それについて御紹介いたしますと、大学というのはマルチキャンパスでいろいろなところにつながっております。それを、あたかも自分のところの一面のキャンパスのネットワークに見せるような、そんなファンクションを持っておりまして、これを仮想大学と言いますけれども、一番ブランチが多かったのは実は理研さんでございまして、前はSINETはサポートしておりませんでしたので、その部分をSINET4ではできなかったということで、商用のネットワークをお使いになって、非常に高価でございましたが、SINET5ではそのファンクションを新たに開発したということで、圧倒的にコストが減って、帯域も箆(べら)棒に強くなるというような、こういうマネジメントのレイヤーもございます。
 それから、セキュアなネットワークを作るという意味では、VPNというのがあるんですが、SINET4はここまででした。SINET5はこういうところに来ているんですが、実はオンデマンドで作るというファンクションを入れまして、ネットワークを張るんですけれども、また、ぱっと切り離してしまうといいますか、使わなくなるという、そういうオンデマンドのVPNがあります。これはこの辺までありまして、そういう新しいネットワークのファンクションが新しいサービスを生み出しているということであります。これは、DDoSというようなセキュリティーのものでございますとか、大学がクラウド側にシフトしていっているわけですけれども、クラウドのサービスというものですとか、あるいは認証ですとか、いろいろございますが、お時間もありませんので、最後にこれだけ申し上げますと、今、機関リポジトリというものを各大学が過去作ってまいりました。このブルーのものは大学独自のものであります。それに対しまして、あるところからもう、大学としては固有のものを作る体力がないことから、NIIがJAIRO Cloudというホスティングサービスを行いましたところ、機関リポジトリのようなものは余り競争するものではないということで、東京大学も含め、大きな大学が今、全部こちら側にシフトしておりまして、マジョリティーは、4分の3はNIIのサービスを利用しているということになっています。
 実は、この基盤を作って、現在、内閣府が進めようとされておりますオープンサイエンスのデータを入れる基盤というもの、オープンサイエンスの中では、研究データのオープン化が推奨されているわけですけれども、これを我が方が基盤ソフトウエアを作ろうと、今開発を進めているということです。
 研究者の皆様に分かりやすい、このスライドも入れておらないので前を見ていただきたいんですけれども、『エルゼビア』や『Nature』に論文を出したときに、あなたの論文のエビデンスになるデータはどこにあるんですかということをリクエストする論文誌が凄く増えてきているんです。こういうものを一体、国家としてどういうふうにハンドリングするのかというのが喫緊の課題になっております。
 このための基盤ソフトウエアをNIIが作っておりまして、内閣府は2020年にカットオーバーすると。我々は今、それを懸命になって作っているところですけれども、これもグローバルにヨーロッパ、アメリカと連携しながら今作っているということでございます。また、これ、IoTのためのモバイルSINETというようなものも作ったり、ある種、機能強化部分というものを丁寧にフォローしているところでございますが、先ほどと同じスライドでございますが、実施体制ということで、ネットワークの部分はこの部分です。しかしながら、実はその下にいろいろな、ネットワークそのものだけではなくて、クラウドや、あるいはセキュリティーや、セキュリティーのポリシーというようなものとか、このほかにも、今、教育の部分を入れようとしておりますけれども、いろんな作業部会を作っておりまして、皆様の総意の中で、このネットワークの運用を常に見直しているということでございます。
 NIIでは、そのネットワークの本部を作っておりまして、この組織の中で丁寧な対応をさせていただいております。前回、進捗評価にお越しいただいたわけですけれども、おおむね順調に進捗していると御評価いただきました。一番の問題は、カミオカンデのように、目で見て分かるようなものは何一つなくて、ネットワークというのは、何となく、ふーっと動いているようにしか見えませんものですから、こういう可視化をしながら、皆さんに御理解を深めていっていただいたり、あるいはVRを使ったりというようなことで、サイエンスコミュニケーションとしても努力をしております。資金計画管理でございますけれども、2016年から大体このような動きをしていることを最後に御報告させていただきたいと思っております。日頃より多大なる御支援を頂戴しまして、誠にありがとうございます。これで発表を終わらせていただきたいと思います。
【小林主査】  どうもありがとうございました。SINETは情報学分野だけではなくて、全ての学問分野に対して貢献していただいているということで、必要不可欠な事業であることはもう言うまでもないと思いますが、私から2点ほど伺いたいんですが、正に必要不可欠なものだけに、マスタープラン、ロードマップを経てフロンティア促進事業という枠が果たしていいのかどうか。つまり、競争的資金から、場合によっては取れるときもあれば、取れないときというのはないことを願いますが、そういうことが起きると大変なことになるので、こういう、いわゆる基盤整備に係るものと、それをフロンティア促進事業でやることの実施機関としての何か問題をお感じになっていらっしゃるかどうかという、これが1点です。
 2点目としては、今度はやはりフロンティア促進事業としてどうしてもお聞きしなければいけないんですが、これはやはり研究ということになりますと、情報学における国際的な研究競争という中でSINET5が持っている意味は、もし何か、一、二例で、今までも説明はしていただきましたけれども、改めてお尋ねできればと思います。
 以上、2点です。
【喜連川国立情報学研究所長】  大変的確な御質問を頂きまして、ありがとうございます。私も実は情報研の所長になる前は、東大の単なる一研究者でございまして、この情報学研究所の所長になりまして初めて、SINETというものの予算繰りがどのようになっているのかなということを理解したわけでございますけれども、今、小林先生から御指摘いただきましたように、こういう予算のアロケーションというものが妥当なのかどうかという点では、我々のSINETはドメインごとのサイエンスといいますよりも、もう全サイエンスのある種、基盤になっているようなものをどのようにお取り扱いいただくのかというのは、是非この委員会でも御議論いただければありがたいと思いますし、所長になってから6年間ですけれども、常にそこの部分に対しては、ある意味で頭痛の種になってきたようなところでもございます。
 全体のポートフォリオから見たときに、先ほど申し上げましたように、カミオカンデを作ることも重要、SPring-8を維持することも重要、しかしながら、ネットワークがなくなってしまったら、実はその機器そのものを利用するための循環路といいますか、動脈を切ってしまうようなことにもなりますので、多分それは適切ではない。でも、今の立て付けとしては、先生がおっしゃられましたように、ドメインのサイエンスとSINETが微妙に闘うような構図になっているのは、やはり余り適切ではないのではないか。もう少しサイエンス全体の俯瞰(ふかん)した国家としての戦略を作っていくような場も必要なのではないかと思いまして、多分こちらの作業部会で高所大所から御議論を賜れれば大変有り難いと思います。
 それから、2番目の御質問に関しましては、先ほども一部、この中で御紹介させていただきましたように、こういうネットワークそのものはかなり国家機密になります。したがいまして、アメリカがどう作っているか、ヨーロッパがどう作っているかというのが外にディスクローズされることはほとんどありませんし、どういう運営経費を使いながらということもウルトラコンフィデンシャルでまず出てきません。そういう意味で言いますと、非常に地味なんですけれども、一番本質の核となるところが出ないところの難しさはございます。
 しかしながら、ITは現在、そのような状況になっておりまして、実は特許庁の方ともお話ししますと、特許すら出さない傾向、何がポイントかといいますと、特許にして発表して知財を取るという時代から、ほとんど重要なものはそもそもオープンにしないという、いわゆるオープンクローズ戦略のようなものが核になってきております。
 こんな中で、研究者をモチベートして、こういうものをやろうというようなことを、そういう人を集めながら先進的なものを維持するというのは、情報研としましてもなかなか難しいところでございますが、先ほど申し上げましたようなデザインの部分、スループットの部分、アプリケーションと連動した部分という意味では、いろいろと学会が発表させていただいているのが1つ。
 それから、もう一つ、ここは非常に難しいんですが、NIIのネットワーク屋ではない情報分野でこのネットワークを活用する、そういう情報学としての論文という意味では、もうある意味で言うと、腐るほど出ておりまして、最後の方で申し上げましたような、今、LTE網、つまりモバイル網を使っているわけですけれども、これに関しては圧倒的なファンがございまして、今、50プロジェクトぐらいがもう既にお申し込みをいただいて、進んでいます。これはSINETとの連携の中で初めて出てくるような学術分野になっております。
 それから、先ほどの医療のところで申し上げましたようなAIのマシンラーニングのところですけれども、この分野のデータの収集と注入し新しい領域になり論文が出つつあります。したがいまして、情報分野全体として見ますと、今日はそこまで御説明するお時間がなかったわけですけれども、情報以外の分野をお助けする、情報分野の中でも新しい学問分野をスティミュレートとしていることを御回答とさせていただけますと幸いに存じます。
【小林主査】  ありがとうございました。ほかの委員の方からいかがでしょうか。
 中野委員。
【中野委員】  SINETにはもちろん日頃からお世話になっているんですが、データの量が膨大になってきて、今度、データをストアするというところで大学は苦しんで、これ以上データをストアするのはもう無理ということになりつつあります。最後に、クラウドを使ったデータのストアのところを少しお話しされたんですが、今後の戦略というか、データのストアを大学が余り気にせずとも良くなるようにはなりませんか。
【喜連川国立情報学研究所長】  おっしゃっていることは非常によく分かります。この件に関しましては、最後の方に、実はオープンサイエンスにおける研究データ、つまり、リサーチデータをどうするかということで、現在、私も内閣府でその委員会の取りまとめをしながら、文部科学省あるいは学術会議も実は課題別委員会を山極先生にお立ち上げいただきまして、今、本当に議論しております。今、先生がおっしゃられた問題に対して、国家として方向感を出すレベルには実はまだ至っておりませんで、2020年に向けて、ちょうど整備しているレベルだと御理解いただければ。
 現在、我々がやっていることの立て付けはどうなっているかといいますと、データを管理する層のソフトウエアを作ります。よろしいでしょうか。では、そのデータを管理する器はどこにあるんですかということに関して、国家として1個用意するというのは、今、ちょっとしんどいものですから、例えば、国立大学で言いますと、情報基盤センターがあります。その基盤センターの持っているストレージのこの空間をちょっとずつ出していただくわけです。これは多分、今、現有のものですので、管理の方法を変えるというぐらいのところです。そのポーションに対して我々のソフトを入れますと、実はユニホームなデータのマネジメント層ができます。多分、京都大学も東京大学も高エネルギー物理の御研究をされている、ライフな部分の研究をされている、そういう横串のものがあったときに、東大だけが勝手に作る、京大だけが勝手に作るということをやっていると、またばらばらになって、データが何のことか、統一を取って整理できなくなります。高エネのように、オリジンから共通でやっておられるところは別なんですけれども、ライフあるいは物質材料のようなものはカオティックになって、そういう意味で横串のラインを作りましょうということを今やっています。
 では、その次、そんなことを言われても、このストーリーがどんどん大きくなったらどうするんですかという御質問がポイントなんですけれども、ここから先はもう喜連川の個人的な意見だと思っていただければありがたいんですが、今のような東大や京大や阪大というような個別の大学が個別のリソースを概算要求していくという構造を抜本的に変えることはなかなか難しいと思います。しかしながら、そのリクエストしたものの中の、これはある意味でタックスだと思うんですけれども、5%あるいは8%ぐらいを全部まとめて国家としてプロキュアすべきだと思っています。SINETがどうしてこんなに安くできているかといいますと、NIIが唯一のオペレーターとして全体を調達しているからなんです。
 つまり、ストレージそのものを、個別に購入していると非常に高くなるのです。国家として考える必要があります。エルゼビアの契約を国家でやるというのは似たようなことです。こういうものにどうシフトしていくかは、実は関係の政府の方々とこれから議論していきたいと思っています。
【中野委員】  その効率化を可視化していただけたら、みんな賛成すると思います。実際、例えば、大学で電気代を調べてみたら、お盆でも正月でもずっと電気代は高いままなんです。それは、ちまちましたコンピューターをいろんな研究室が持って、ストレージも持って1年中動かしているからなんですけれども、集中管理するだけでずっと安くなるんですが、今、喜連川先生がおっしゃったのは、もっとそれをドラスティックにやろうということなので。
【喜連川国立情報学研究所長】 
【小林主査】  ありがとうございます。非常に深い問題かつ重要な問題ですが、また別の機会にお尋ねして議論したいと思います。予定した時間を大幅に過ぎておりますので、今日はどうもありがとうございました。
【喜連川国立情報学研究所長】  本当にありがとうございました。
【小林主査】  それでは、続きまして、三原科学官より発表をよろしくお願いいたします。
【三原科学官】  科学官の三原です。最初に御紹介ありましたように、本業というか、本職は高エネルギー物理学研究機構とJ-PARCで素粒子物理の研究をしております。今日は、海外における大型研究施設等動向に関連しまして、GSO、Group of Senior Officialsというものに関する報告を行いたいと思います。
 皆さん、なかなかなじみのないもので、ふだん研究していて、こういうことを議論する機会はなかなかないとは思うんですけれども、大型の、特に国際的な研究施設をどのように活性化していくのかという議論をやっている場所がこのGroup of Senior Officialsというところです。
 目次としましては、大体このような内容で今日はお話ししていきたいと思いますけれども、まず、GSOってそもそも何なのかという成り立ちから始めて、どういう人たちが参加していて、何を目指そうとしているのか。それから、大事なキーワードとして、Global Research InfrastructureというものをGSOでは議論していますが、それは一体何なのかということと、それを認めていくのがGSOがやろうとしていることなんですけれども、その認める際の評価基準はどういうものなのか、最後に、今、GSOはどういうことをやっているのかということをお話しして、まとめに移りたいと思います。
 今日の発表で使う情報の全ては、ここに書いてあるURLにあるんですが、これ、非常に長いので、電子ファイルをお持ちでない方は、ここにある短めの、ヨーロピアンコミッションのページからどんどん辿(たど)っていくと、GSOというところに辿(たど)れます。ちょっと深いですが、最後に辿(たど)り着けますので、より詳しい情報を御希望の方はこちらをご覧ください。
 最初に、GSOの成り立ちについてですが、実は10年以上遡ります。2008年に行われました沖縄でのG8科学技術大臣会合で3つの議題が話し合われたんですけれども、1つが低炭素社会の実現と、2つ目がアフリカ等開発途上国との科学技術協力、3つ目は実はこのGSOに関することでして、研究開発リソースにおける協力をやっていきましょうと。特に研究開発リソースの国際共用を促進するために、各国の、特にここで議論しているような大規模研究施設、その相互利用や情報交換を促進するための方策について議論しましょうということで、この3つ目の議題がGSOに関連した議題でございました。
 ここでの議論に基づいて、各国の研究施設、この発表の中、GSOではResearch Infrastructureと呼んでいますけれども、それを評価し、共同研究の可能性を探る集まりとしてGSOが設立されました。設立すべきという議論が、この2008年の会合で行われましたが、その後、2年ちょいぐらいの時間が必要でして、実際のGSOの活動が始まったのは2011年からです。
 どういう人たちが参加しているかというと、現在、ここに書いてある国のシニアオフィシャルの方々です。日本語にすると、多分、実務担当者とかそういう名前だと思います。ファンディングエージェンシーで、実際に大型研究施設に対する実務を担当している方々が出席して議論をしている場所であります。
 特徴的なのは、それぞれ大きな研究施設を持っている国が入っていることに加えて、ヨーロピアンコミッションからも人が入っている点だと思います。それから、必ずしもシニアオフィシャルだけがこの会議に参加しているわけではなくて、例えば、研究所の所長クラスの人がメンバーとして入っており、実際には大学の教員や研究者も会合には出席していますし、そういう方々が研究者の目線で、研究者というのはResearch Infrastructureを使っている人たちですけれども、意見を述べることもやっておりますし、私も科学官として前回のミーティングから参加させていただいております。
 それと、前回のミーティングは、イタリアのメンバーのRossi教授が、彼はESFRIというヨーロッパの、長期にわたる、10年から20年にわたるResearch Infrastructureをどうしていくかというものを議論するESFRIという組織があるんですが、そこのチェアだったので、彼も参加して、ESFRIの立場の意見、報告等々もやっておられました。
 GSOというのは、では、一体何を目指しているのかというと、先ほどちょっと申しましたように、Global Research Infrastructureというものを認めていくためのフレームワーク、あるいは評価基準というものを策定しています。そして、これは時間がたつにつれて、そういう評価基準は見直していくべきという考えの下に定期的なアップデートをしようとしています。
 そうやって認めたGRIを、今度は利用促進のためのプロモーションすることもGSOが目指していることですし、あるいは、GRIの中には、いろいろイノベーションや、優れた研究成果が出てきているところが多くありますので、そういうところは一体どういうふうにして、そういう成功に結び付いているのかをGSOが分析して、外に公表していくこともやろうとしていますし、それと、データを共有しようという取組もやろうとしています。その他、国際化に関連するような事柄をGSOは取組として進めていこうとしているところです。
 各国にあるいろいろな大型の研究施設がGlobal Research Infrastructureとして認められるかどうかという評価基準を、このGSOが長らく議論してきたんですけれども、その評価基準というのは、ここに書いてあるように、1から14まであります。より詳しくは後ろの参考資料に書いてありますので、そちらを見てもらうといいんですが、この14個の評価基準をおおむね満たしていれば、それはGRIとして認めることができるだろうということで、GSOではこの評価基準が本当にそういう評価をするために適したものなのかどうかを長年議論し続けてきております。
 研究施設自体が、国際的な枠組みの中でちゃんと運営されているかどうかという点が多く評価基準の中に入ってきているんですが、特徴的なこととしては、国際協力をする限りは、例えば、ここに書いてあるように、パートナーの責任を定める。参加している国がどういう責任を持って、どれぐらいの予算を出して、どういうところに責任を持って進めるかということを、それは当然、研究プロジェクトとして明確化されてないとGRIとは認められないわけなんですけれども、そういう責任を明確化した限りは、いつプロジェクトが終わるのか、あるいは、どうやって終わらせるのかというのを、ちゃんとGRIはあらかじめ、これは初期段階で考えておかないと国際的な協力はできないよということで、こういうのもの評価基準に入れていたりします。
 それから、GRIとして考えられるものの中には、いわゆるナショナルラボラトリーというのも入っているんですが、ある国が自分の国の研究のためだけに造った研究機関というのも当然有り得るわけなんですけれども、そういう研究機関は、全ての研究内容とか全てのインフラを海外からの研究者に公開することはできないんですけれども、だからといって、それがGRIとして認められないわけではなくて、例えば、そういう研究機関であっても、提案されてくる研究内容によっては、研究施設のうちの一部を海外の研究者に公開することによって国際的な研究協力を実現していこうという、こういうのを「gEAパラダイム」と呼ぶそうですけれども、これに基づいて研究リソースをどこまで公開しているのかをちゃんと定めているかどうかも評価基準の1つとして定めています。
 もう一つ特徴的なのは、これは日本で研究していると、私なんかはなじみがなくて、なかなか議論に付いていけなかったんですけれども、社会経済的な、Socio-economicなインパクトをちゃんとモニターしているかどうかを評価基準の1つとして入れています。これはまだ、なかなか参加国の間で同意を得るのが難しいところなんですけれども、主にヨーロッパの人たちがこういうことの重要性について意見を述べていて、今のところ、これをモニターをしているということがGRIとして必要な要素であろうとして評価基準を定めているところであります。
 この評価基準ですが、ご覧になっていただければ分かるように、決してResearch Infrastructure間の競争を図るようなものではなくて、どこの大学、どこの研究機関が優れた研究をしているので、ここが1番、ここが2番とかという、そういうものを図るものではなくて、それぞれのResearch Infrastructureが国際的に評価され得るような研究機関、組織として、そういう体制をちゃんと保っているのかを判断するための指標として、この評価基準は定められています。ですので、決して参加国がたくさんいるから、ここのResearch InfrastructureはGRIですよとか、あるいは、もう論文がたくさん出ているとか、そこに来る研究者の数が多いからGRIとして認めるという方針で議論しているわけではなくて、研究機関や組織が国際的な研究を進める上で十分な運営体制を持っているか、組織としてそういう研究をサポートする体制ができているかを重要な基準としているところはGSOでの議論の特徴的なところであります。
 現状ですが、今のところ、ワークプランが設定されていまして、これは補足資料としてリンクを後ろの方に付けておきましたけれども、2017年10月から2019年の春なので、ちょうど今ですね、そこまでのワークプランを設定して、主にはどういうことをやってきたかというと、14個の評価基準を策定することを続けてまいりました。
 ただ、それを研究機関のことを見ずに、ひたすら議論していても、間違った方向に行くといけないので、それを策定しながら、例として、幾つかの研究機関を評価基準に当てはめることによってケーススタディーを行うことをやってきまして、ここに挙げてある5つの研究機関について、そういうケーススタディーを行いました。
 1つは、Underground Laboratoriesといって、これは素粒子の実験をしている人にはなじみの深い研究施設ですけれども、地下にある実験施設。後で少し説明しますけれども、こういう実験施設がGRIとして認められるかどうか。あるいは、これは私は全然知らなかったんですが、国際マウス表現型解析コンソーシアムという、これは研究施設というよりは、コンソーシアムです。幾つかの研究機関がデータを共有するようなコンソーシアムを作っているんですが、コンソーシアムがGRIとして認められるかどうかも議論していて、残り3つについても議論したところ、GSOの議論では、この2つに関しては十分GRIとして認められるような運営体制が行われているだろうと判断を下しております。
 特に、また最近は、この評価基準はGSOの中で議論してきたわけですけれども、世界中にあるたくさんの研究機関1つ1つケーススタディー、評価を全部GSOがやっていくわけにはいかないので、最近は、さっきの14個ある評価基準を外向けに公開して、それぞれの研究所に、自分でチェックしてみてくださいというようなことをやっています。
 ここに書いてある4つの研究機関、ELIXIRというのはコンソーシアムですけれども、こういうところが実際に、この14個の評価基準でもってセルフアセスメントをして、自分たちの組織がGRIとして適したものなのかどうかという判断もして、そのフィードバックをもらって、GSOでは更にクライテリアをアップデートしていくこともやっております。
 もういちど先ほどの5つのケーススタディーの例ですけれども、Underground Laboratoryと国際マウス表現型解析コンソーシアム、この辺がどういうタイプで運営されているかとか、今どういう状況にあるかとか、どれぐらいのパートナー、参加国がいるのかを調べていて、この2つについてはGRIとして認められる。残りの3つについては、GRIとして認めるためには、もう少し改善というか、組織を変えていく、GRIを目指すんだったら組織としてはこういうふうに変えていった方がいいだろうなというところが判断されたので、ここの3つについては、まだGRIと言うには、もう少し違ったアプローチが必要だという評価を下しています。
 GRIとして認められたUnderground Laboratoryについてもう少し詳しく述べますと、実は2つありまして、1つはイタリアのグラン・サッソにある研究所、地下の施設でして、もう一つは、カナダにあるSNOLAB、この2つに関してはGRIとして十分認められるような運営体制が敷かれて、国際的な研究を行っているという判断を下しています。
 もう一方の国際マウス表現型解析コンソーシアムの方ですが、私は完全に専門外でこれを説明することはなかなか難しいんですけれども、黒字で書いてきましたけれども、マウスを使って、個々の遺伝子がどんな働きをしているのかを明らかにする国際プロジェクトで、ここに書いてあるような研究機関が参加して、それぞれのところで研究をしているわけなんですけれども、研究の手法についてのプロトコルもちゃんと定めてあって、研究データを共有するという、そういうコンソーシアム自体がGRIとして認められるような運営体制を敷いているという判断をしております。
 GSOの現状で、先ほどもお示ししたところですが、この4つの研究機関にセルフアセスメントをやってみてくださいというのをお願いした例がここに書いてあります。これは、ELIXIRという、これはまた遺伝子解析のデータを共有するためのコンソーシアムなんですけれども、14個の項目に対して、ELIXIRという研究機関が独自にその答えを用意してきたのがここに書いてあります。この下に4つ、典型的なのを抜き出してきましたけれども、1番目の評価基準、4番目、7番目、8番目に対して、自分の研究機関がどういうふうにやっているのかをそれぞれ答えを持ってきて、こういうふうに公表していっている。これをGSOが見ることによって、この評価基準はGRIを認定するのに適したものなのかどうかをGSOでは議論をしております。
 GSOの現状ですが、前回の会議が2018年11月にオックスフォード大学で行われました。ここでほぼ、この評価基準の議論が一段落しました。今までは年間2回ほど開催を行ってきたそうですけれども、この後は年1回ぐらいの開催でも十分なんじゃないだろうかと考えているようです。
 私は前回の会合から出席させていただいて、そのときの議論を聞いていて理解したことを基に、今日の発表は行っています。次回は、もうすぐですが、6月にフランスのロスコフで会議をして、評価基準の確定をほぼファイナライズさせようとすることと、ソフトモニタリングというか、あとセルフアセスメント、そこからのフィードバックをもらって、評価基準を更に微調整する必要があるんだったら、それの取組をしていく。
 それと、プロモーションが大事な目的の1つになっていると最初言いましたけれども、それの一環として、G8の科学技術大臣会合でもってGSOでの議論を常に報告してきています。特に、この2つのGRIとして認められた研究施設に関しては、GSOからG7、G8科学技術大臣会合で支援を要求することを行う予定ですし、後、G7、G8からも、これらの計画の現状についての報告をするようにということを要求されていて、うまくそういうプロモーションを行っていこうという状況であります。
 最後にまとめです。GSOという集まりについて、今日は御報告いたしました。もともとは2008年の沖縄でのG8科学技術大臣会合で設立が議論されたものでして、2011年より実活動に入って、いろいろなことを議論してきましたけれども、最も重要なのは、このフレームワーククライテリアの策定を行っていて、これがほぼ最終段階にあるので、次は、それでもって認められたGRIをプロモーションしていったり、さらに、イノベーション創出がどういうふうに行われているのかを分析して、それを外向けに公開することで、より国際的な研究機関の研究能力の向上に役立てていきたいと思っているところです。
 今、最終段階にあることと、今後も定期的に会合を開いて、評価基準は見直しを行っていく予定ですし、次回は、先ほど言いましたように、6月に開催します。
 何度か申し上げましたけれども、決して、このGSOでやろうとしていることは、個々の研究機関のアウトプットを最大化して競争するというか、研究機関のランク付けを行うとかそういうことを目指しているものではなくて、飽くまで国際利用を促進することで、世界で優れた研究を実現しようというものであります。
 基本的にここで議論しているのは、国際協力による建設、運営というのが前提にあって、例えば、アメリカのNASAのような、これはかなりナショナルプロジェクトなんですけれども、こういうのを議論の対象にしているものではないことを最後にお伝えして、今日の発表をおしまいにしたいと思います。
【小林主査】  どうもありがとうございました。それでは、どなたからでも何か御質問あれば、どうぞ。よろしいでしょうか。
【城石委員】  ちょっと補足といいますか、実は私、11ページで、今、先生が紹介されましたInternational Mouse Phenotyping Consortium、これ、理化学研究所のバイオリソースセンターというのが参画しておりまして、そこのセンター長をしております。
 それで、実際にこういう、いわゆるResearch Infrastructureの国際的な連携がどういうふうに動いているかということなんですけれども、現場では、場合によっては、毎週のようにテレビカンファレンスとか、あるいは毎月、オフィシャルなカンファレンスを開いて情報交換をやっておりまして、そういう面での国際的な連携は非常にパイプが強いのが1つです。
 それから、正にResearch Infrastructureということで、論文を書くとかが直接的な目的じゃなくて、データのシェアリングが非常に活動の核になっているんですね。ですので、正にオープンサイエンスの、今よく言われておりますけれども、オープンサイエンスを本当に先頭に立ってやっていくという、そういうところが非常に強い構造になっています。
 それから、ちょっと質問なんですけれども、GSOでそういう評価基準を作ってサポートしようということだと思うんですけれども、具体的なサポートの中身に関してはよく分からなかったんですけれども、いろんなグローバルなResearch Infrastructureのところでの予算的なものは多分それぞれの国がやっているんだと思うんですけれども、そういうところに対してエンドースするような、そういうことはやられているんでしょうか。
【三原科学官】  まだ、直接的にフィードバックが行われている状況ではありません。ただし、参加している人たちが実務担当者たちですので、そこで、GSOでどういう評価が行われて、この研究施設はこの後、どういうふうに進んでいくのかということは、直接的に実務担当者にフィードバックされているのは1つ。
 もう一つは、最後に少しお話ししましたけれども、これはG7、G8会合が基になって始まった会合ですので、そこに対してフィードバックを行うことは、直接的に大臣にどういう研究施設がどういう体制でもって運営しているというフィードバックができていると考えております。
【小林主査】  ありがとうございました。ほかによろしければ、時間が過ぎておりますので。
 では、最後に1点だけ、鈴木委員。
【鈴木委員】  御説明ありがとうございました。凄く初歩的なことをお伺いしたいんですけれども、こちらの今御説明いただいたGSOに関する報告の中で、多分、評価基準が求められていて、その評価を、一定の評価を受けることによって、日本国の様々なプロジェクトが海外からのいわゆる予算、資源の投与を受けて、若しくはそれに対する研究の協力みたいなことを今後進める上で非常に重要で必要だということをお話しいただいたようなイメージでよろしいんですか。
【三原科学官】  GSO自体は、例えば、こういう評価基準を自分でまず見てくださいと。自分たちの研究施設や組織が、こういう評価基準に照らし合わせて見たときに、それにかなった運営ができていますか、どうですかということをまず見てくださいということをサジェスチョンしています。それぞれの研究機関、組織は、それを自分で振り返って見たときに、こういうのを満たしていれば、おおむね国際協力の下に研究が行われていると判断できるので、それを目指すならばそれを目指してやって欲しい。
 もちろんそうじゃなくて、自分のところの研究施設は、例えば、この一部、データについてはもう公開しないとか、そういう方針は当然あるわけですけれども、それはそれぞれの研究施設が決めていっていいことであって、飽くまでもGRIとして認められるためには、こういう要素が必要ですよというのをまだサジェスチョンしている段階です。それを強制的にやって評価を上げてくださいというようなことを言っているわけではないものです。
【鈴木委員】  ありがとうございました。
【小林主査】  それでは、三原科学官、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、その他の議題に行きたいと思いますが、前回の作業部会でも幾つか論点が挙がりましたが、大規模学術フロンティア促進事業の評価の仕組みの現状について事務局で整理をしていただきましたので、事務局から資料の説明をお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  それでは、時間も迫っておりますので、簡潔ではございますけれども、資料4、「大規模学術フロンティア促進事業の評価の仕組みの現状等」というタイトルで御説明をさせていただきます。
 まず冒頭、1枚目ですけれども、1枚目には、本ペーパーを作成した経緯や考え方といったものを記載しております。
 まず1ポツ目のところですけれども、御案内のとおり、本フロンティア促進事業につきましては、事前評価ないし進捗、中間、期末評価などを実施しておりまして、プロジェクトの選定や進捗管理の透明化を図っているところでございます。
 また、諸外国に目を転じてみましても、こういった大型プロジェクトについては、多額の投資といったものを要するため、国際的な協調によって大型プロジェクトを進めていく方向性といったものが強まっていると。また、前回の部会でですけれども、以下のような御意見を頂きました。大きく3点、御紹介させていただきます。
 まず1点目ですが、こうした進捗評価といったものは、実施機関としては絶好の点検の場ではないか。例えば、他の事業では毎年、国際的な評価委員会を開催し、財政状況、学術的な課題を含め、あらゆる面からチェック・公表している。こうしたものが国際標準ではないか。
 また、2点目としましては、例えば、各機関において国際評価委員会のようなものを作り、毎年自己評価を実施し、それを本作業部会に提出してもらうようなことがあっても良いのではないか。
 最後、3点目、科研費でも自己評価を実施しており、このフロンティア事業の金額規模に鑑みれば、例えば、実際、何年かに1回としても評価を出していただく。しかも、自己評価ではなくて、外部に委託して、作業部会には書面で提出していただく、こういったものも考えられるのではないかといったような御意見を頂きました。それ以外の御意見につきましては、参考資料1でまとめております。残りの頂いた意見につきましても、次回以降、本部会で御議論いただきたいと考えております。
 最後ですけれども、まずは事務局といたしましては、大規模学術フロンティア促進事業で支援しております各プロジェクトが、それぞれ運営においてどういった評価を行っているのか、また、フロンティア事業以外の他の事業、例としては、WPI、科研費のうち特推、あと共同利用・共同研究拠点、これらについてどういった評価の仕組みが行われているのかを別紙のとおり整理させていただきました。
 ページを1枚おめくりいただけますでしょうか。まずは、別紙1という形でございます。この別紙1は、大規模学術フロンティア促進事業の各プロジェクト、各実施機関において、どういった自己評価が実施されているのかを事務局でまとめております。「概要」の欄ですが、そこに結論も書いておりますけれども、この大規模学術フロンティア促進事業の各拠点におきましては、国際的な観点を取り入れた自己評価や外部有識者委員会による自己評価を全てにおいて実施しているところが分かりました。
 主な内容は以下のとおりということで、全体的になべて御説明させていただきますけれども、例えば、左上の日本語の歴史的典籍の事業でありますと、実施機関である国文学研究資料館の中に、日本語歴史的典籍ネットワーク委員会、これは大多数が外部委員、具体的には9名中8名でしたけれども、それを設置しておりまして、事業の実施体制や進捗状況などに関しまして、進捗評価ないしは中間評価といったものが実施されております。
 また、その下段ですけれども、国立天文台で実施しております「すばる」「ALMA」また「TMT」に関しましては、こちらも国際外部評価委員会を設置し、具体的には、ここは全員外部委員、13名でありまして、そのうち7名が外国人でございました、によって評価が実施されております。
 主な評価の観点としては、既存の観測装置の整理及び、逆に、インパクトが大きな観測装置の開発推進、スクラップ・アンド・ビルドのようなものも進めていくべきではないか、こういったものが評価の観点としては含まれておりました。
 また、下、核融合研でございますけれども、ここも同様に専門部会が設置されておりまして、16名全員外部委員でございました。うち4名が外国人として採用いたしまして、ここは約3年に一度の割合で実施がなされておりました。
 その下、高エネ研でございますけれども、ここもBファクトリー加速器国際評価委員会といったものを設置しておりまして、縷縷(るる)の評価をしていただいている、そういったところでございます。
 右の列も、説明は省略しますけれども、同様に、何かしらの外部委員会を設置し、外国人の方に入っていただいて自己評価といったものがなされている、そういったものが分かったところでございます。こちらが、フロンティア事業の各実施機関における評価の状況になります。
 また、ページをおめくりいただきまして、別紙2ですけれども、こちら以降はフロンティア事業以外の拠点事業において、どういった進捗評価がなされているのかをまとめております。例えば、別紙2のWPIにおきますと、評価方法の欄を説明させていただきますけれども、ここは外国人有識者を含む世界トップレベル研究拠点プログラム委員会、一番下のところに具体の名簿を張り付けておりますけれども、こういったものを開催いたしまして、そこで毎年度のフォローアップが実施されております。
 具体的に右下の図で御説明させていただきますと、例えば、進捗評価を行う際には、世界トップレベル研究拠点プログラム委員会の下に、PDとPD代理、また、作業部会といったものが設置されます。また、その作業部会の中には、拠点ごとにPOを1名主査といたしまして、専門家6名程度、うち半数が外国人ですけれども、そういったものを拠点ごとに作業部会を設置しまして、そこが採択拠点の方に訪れて、サイトビジットを行いながら報告書といったものを作成する。そして、この作業部会が、親委員会である世界トップレベル研究拠点プログラム委員会に報告をする。またあわせて、この委員会の方は、直接採択拠点に対しては、拠点長ないしホスト機関長に対してヒアリングを行っているといったような事例で進捗評価がなされているところです。審査の項目については、マル1からマル4といたしまして、ここもかなり国際的なところに踏み込んだような感じで審査がなされている。
 続きまして、ページをおめくりいただきまして、別紙3でございます。こちらは、共同利用・共同研究拠点の評価でございまして、こちらは評価方法といたしましては、中間評価という形で実施しております。直近は昨年度、2018年にやっております。
 具体的な評価のイメージ図、右下でございますが、ここも同様に、作業部会の下に各専門委員会といったものを設置しまして、ここが書面評価ないしヒアリング評価を実施していると。そして、各専門委員会が評価結果の案をまとめて、親部会に報告し、親部会から拠点に評価結果の決定がなされる、こういったスキームが取られております。
 また、最後のページ、別紙4でございますけれども、こちらは科研費の特別推進における評価でございます。こちらも具体的な評価方法といたしましては、中間評価ないし事後評価といったものがなされておりまして、中間評価のイメージですけれども、右下のところで、ここも審査・評価第一部会の下に各系の小委員会といったものが設置されます。具体的には、ここは3つに分かれておりまして、人文社会系、理工系、最後に生物系、この3区分から各系の小委員会といったものが設置されておりました。
 そして、この各系小委員会が各採択課題の現地調査ないしヒアリング評価などを行いながら評価書をまとめて、親である科学研究費委員会に報告すると。また、こちらにつきましては、オレンジの矢印ですけれども、個別具体の採択課題のところから、毎年実績報告書のようなものを、親委員会である日本学術振興会に報告書として提出している、こういったスキームで進捗評価がなされているといったところが分かりました。
 事務局からは以上です。
【小林主査】  ありがとうございました。本日議論するということではなくて、むしろ議論の頭出しということになります。これにつきましては、前回の部会で、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想の策定に向けたこれまでの議論と論点で示しているとおり、進捗評価について、各機関で自主的に実施している評価を本作業部会でどのように活用、反映することで、より適切な進捗評価を実施することができるのか、今後ともこの点については議論を進めていきたいと思っております。
 それでは最後に、今後のスケジュールについて事務局からお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  それでは最後に、今後のスケジュールといたしまして、資料5で御説明させていただきます。
 次回ですが、日程調整中でございますが、6月18日を予定しております。議題といたしましては、今回のような形で、学術研究の大型プロジェクトの在り方について機関からの発表を考えているところでございます。
 以上でございます。
【小林主査】  ほかに何か、事務局からありますでしょうか。
【小林学術機関課課長補佐】  時間ですが、6月18日の13時からでございます。補足します。
 以上です。
【小林主査】  あとは、資料は机上に残しておいていただければ、後日郵送させていただきます。
 それでは、これで本日の会議を終了させていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

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