第5期研究費部会(第15回) 議事録

1.日時

平成22年4月27日(火曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

如水会館 オリオンホール

3.出席者

委員

 有川部会長、小林委員、佐藤委員、中西委員、深見委員、家委員、井上(一)委員、岡田委員、甲斐委員、金田委員、鈴村委員、水野委員、宮坂委員

文部科学省

 磯田研究振興局長、山口学術研究助成課長、ほか関係官

4.議事録

(1)科学研究費補助金の在り方について

 事務局より、資料2「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(報告)(素案)について説明を行った後、審議を行った。

【有川部会長】
 資料2の「(報告)(素案)」について、幾つかの区分に分けて議論していただいた後、最後に全体を議論していただきたいと思う。
 まず、素案の1ページから7ページにかけては、昨年7月の「これまでの審議のまとめ」の公表以降に起こったさまざまな状況の変化、あるいは本部会におけるこれまでの検討の経緯など、今回の報告の背景になるような事柄について触れてられている。この辺のまとめについて、まずご意見があれば伺いたいと思う。その上で、8ページから12ページの若手研究者の支援のあり方、3つ目として、基盤研究のことについてという主に3つの段階でご審議をいただければと思う。
 最初に、1ページから7ページについて、意見などはあるか。
 事業仕分け作業が昨日と、昨年11月に2回行なわれているので、そういったことに対することも記述されている。それから、もう一つは、21年度の補正予算の最先端研究開発支援、あるいはそれをモディファイしたときの最先端・次世代研究開発支援プログラムについても言及されている。これは若手向けのプログラムになっているので、そういう点では、科研費の区分でいうと、若手研究(S)に対応しており、ライフ・イノベーションやグリーン・イノベーションに分野は限定されており、期間も限定されているが、そうしたものが始まっているという背景も記述されている。

【小林委員】
 今回の事業仕分けのことについては後ほど追加加筆されると思うが、科学研究費補助金の文部科学省から日本学術振興会への移管の問題についてここで何か確認というか、意向を議論しておく必要があるのではないか。

【山口学術研究助成課長】
 事業仕分けの件については、この資料には盛り込めていないが、まとめる段階では、「これまでの審議のまとめ」以降の動きの一つとして、事業仕分けの第2弾についても盛り込むことになるのだろうと思っている。
 文部科学省から日本学術振興会への研究種目の移管の問題だが、やはり外から見て、なぜこうなっているかよくわからないというところについては、やはり一定の記述をしないといけないのではないか。ただ、文部科学省からJSPSに移管するだけであるが、形としては、独立行政法人の予算がかなり増える形になってしまうので、少し検討した上で、またお諮りをさせていただきたいと思う。

【有川部会長】
 ある種の理念があって今日まで来ていると思うが、その辺を明確に表現することも必要ではないか。定着してきたものが移管されているというようにも見える。

【岡田委員】
 どなたかがお話しになると思っていたが、500億円で300件という最先端・次世代研究開発支援プログラムがあるが、これは科研費とは全く違い、予算枠も違うので、それは完全にインデペンデントなものとして扱ってよいと思う。ただ、これは、グリーン・イノベーションとかライフ・イノベーションという範囲が限られているので、その中で非常に有力な研究者、特に女性研究者はそれほど多くないと思うが、その中の有力な人がかなりそちらに行ってしまうと思われる。また、このプログラムは専念義務があると思うので、研究が4年間続くとすると、これからしばらくの間の、例えば研究終了後に科研費の若手研究に応募してくるときの影響をどのように見積もるか考えておく必要があると思う。

【山口学術研究助成課長】
 ご指摘のとおり、この最先端・次世代研究開発支援プログラムについては、公募が始まって、これから動いていくという状況であり、おそらく研究課題が決まっていくのが11月、12月ぐらいになるではないかと思っている。非常に大きなものであるので、基本的に専念義務がかかっている。研究課題が決定するのが年末の時点であることを考えると、他の研究課題をやめるにしても調整の期間が必要であるので、年度内にほかの部分について調整をしていただき、新年度から専念していただくという仕組みになっていくと思う。
 ただ、かなりの課題数、かなりの額が採択されるので、科研費の若手研究のみならず、年齢からいくと、基盤研究のほうからも一定部分が動いていく可能性がある。それについては、以前甲斐先生からも、こういうプログラムは非常に科研費に影響があるということについて、少なくとも部会として書くべきだというご指示もあったので、4ページに、影響が非常に大きいものと考えられるということを記述させていただいている。実際上、岡田先生のご指摘のように、動き出したときの影響は非常に大きいだろうと思っている。

【岡田委員】
 最先端・次世代研究開発支援プログラムに採択されなかった方が例えば科研費の若手研究に採択されることになると、見た目は同じかもしれないが、コミュニティーから見たときには、採択数が広がるなどかなりのアンバランスが予想されるので、その期間、例えばそれにかかわっている分野の予算を従来と同じようにするかどうかといったこともテクニカルな問題として考えておく必要があると思う。

【有川部会長】
 大事なご指摘かと思うが、これは一定の期間だけであるし、件数が決まっていて、専念義務があり、金額もかなり大きいので、若手研究を中心に、大きいものをやっていた人が全部そこに引き抜かれていくことが考えられる。その分だけ、若手研究あるいは基盤研究等の競争が少し緩和されるという面はあると思うが、件数としては、約300件というのは大体見えていると思う。
 それから、金額については、最先端・次世代研究開発支援プログラムのほうが大きいが、採択される300人がどのくらい科研費を持っているか、ある程度の金額は見積もることはできると思う。その分だけ、若手研究などが少し恵まれることになると思う。

【磯田研究振興局長】
 この500億円の最先端・次世代研究開発支援プログラムについては、総合科学技術会議が方針を示され、その方針に基づき、日本学術振興会で審査をしていただく。現在、日本学術振興会で公募を行いつつ準備を進めているところである。
 実際には、総合科学技術会議から示されている考え方に沿って審査がなされることになるが、2億円というお金を配分するにふさわしい研究テーマがどれだけ上がってくるか実務的には大きな関心を持っている。日本学術振興会の先生方は既にご案内で、本委員会の方々もご案内だが、この2億円規模に相当する基盤研究(S)、特別推進研究において若手の研究者がこれを突破されているというのは極めて少数、女性も少数である。
 その点は、このプログラムを形成する過程において、文部科学省からも、あるいは関係の団体からも話があったが、基本的には、アファーマティブ・アクションとして思い切ってやってみてはどうかというお話であった。この採択件数約300件というのは1つの目安にはなっているが、これから日本学術振興会において、総合科学技術会議から示された方針に基づいて審査がなされるので、この影響は実際に審査をしてみないとまだまだわからないところがあるのではないかと思っている。
 例えば、アファーマティブ・アクションというところに視点を置けば、より多くの方々が申請すべきではないかという現場の学長の意見や、一方では、基盤研究(S)、特別推進研究相当の国費を使うという観点から、申請件数は限定的であるべきではないかという議論がある。日本学術振興会においては、説明会等を経ながら準備を行なっていただいているが、何件の申請が来るか非常に流動的と理解しており、我々としては、このプログラムの進捗状況は、適時適切に日本学術振興会と相談をしながら考え、本部会にもご相談させていただきたいと思っている。

【甲斐委員】
 質問だが、これはあくまでも総合科学技術会議が決めた方針に基づいて日本学術振興会は審査をしなければならないということになっているが、研究費部会は多分、その方針に何も言えないのではないかと思うがどうか。例えば、若手の応募してきたテーマが、大変いい研究だが、2億円は必要ないということを日本学術振興会の審査員がばっさり切ることはできるのかというのがすごく気になる。

【磯田研究振興局長】
 研究については、研究の妥当性や学術としての水準の高さと、その必要な費用、いかに国費を有効に活用するかという観点があるので、当然、一般的な学術研究と比較して審査が行われるものであると思っている。また、そういう日本学術振興会の審査体制の水準の高さを信頼していただき、総合科学技術会議が日本学術振興会に審査を委託されたものと理解している。

【甲斐委員】
 そうすると、充足率に関して、総合科学技術会議は特に何も言っていないということでよいか。つまり、上げてきた審査に対して、研究費の8割、9割ぐらいをあげないのをおかしいとは思わないと判断してよいか。例えば、内容は非常にいいけれども、必要な研究費は5割ぐらいというふうに査定した方が多かったら、採択予定が300人と目していたところが500人ぐらいになってしまうことも考えられる。そういう審査の仕方を日本学術振興会が行い、第1段審査が終わった段階でそういう意見が出てきたときに、審査については総合科学技術会議が日本学術振興会に預けたので何も言わないとなるのか。我々はここで、そういう審査をしてもいいというエールを送ってはいけないのか。

【磯田研究振興局長】
 この500億円のプログラムの前にスタートした1,000億円のプログラムにおいても、当初は2,700億円ということで、イメージとしては1課題当たり1研究者に90億円の資金を投入するという前提でプログラムがスタートしたが、政権交代後の総合科学技術会議の再度の検討により、一課題当たりの金額の上限を50億円に圧縮した経緯がある。
 現在は、平成22年度予算で100億円を担保できたので、30課題について、さらに加速すべきポイントがあるかどうか検討されていると聞いている。先行30課題の経緯を踏まえ、総合科学技術会議は、いかに国費を有効かつ戦略的に使うか、非常に柔軟かつ機動的に検討されていると思うので、機械的な、例えば充足率設定というようなものを私どもの議論の中でこれまで聞いたことはない。あくまで総合科学技術会議から示されている方針、考え方、それに沿って審査をしていただくということではないかと思っている。
 それから、本部会の立場であるが、これについては、実は以前から有川部会長に相談しており、この500億円のプログラムの議論が進展する際に、その議論を踏まえた上で、文部科学省としていろいろ提案をしてきた。総合科学技術会議がつくられた方針を変えることはないかと思うが、細部にわたり、本部会としての経験から合理的なアドバイスをすることはあり得るのではないかと思う。

【甲斐委員】
 大変いいお答えをいただいたと思う。最初のプログラム発足の是非はともかくとして、もう拒否できないと思う。科研費を圧迫するといった将来的な重大な影響を私たちは大変憂慮しているので、もう来てしまったもので、かなりの足かせがついているが、その中でもなるべく今後に禍根を残さないような、いい審査、いい採択をぜひしてほしいということを、この研究費部会から日本学術振興会に方針とし提案してもいいのではないかと思う。

【有川部会長】
 この素案の中では、最先端・次世代研究開発支援プログラムについても言及されているし、例えば若手研究との関係などについても言及されているので、ある程度の表明はしていることになると思う。
 全体として、我々は自由発想研究、科研費について主に議論しているが、生まれてきた経緯はともかく、こうしたプログラムの資金が確保できていることについて、教育者あるいはコミュニティーにとってはポジティブな面がかなりあるのではないかと思う。基盤的経費を充実させ、我々が議論している科研費等を充実させて、しっかりそうしたことに対応できる素地をつくっておくことが極めて大事なのではないかと思う。
 次は、先ほど申し上げたように若手研究のことについて議論したいと思う。8ページから12ページについて書かれているが、8ページから11ページについては、科研費における若手研究者支援の現状及びこの部会におけるこれまでの審議の概要について記述がまとめられている。そして、12ページにおいて、特に検討していただきたい点ということでリストがあるが、11ページまでをまず議論していただき、それを踏まえて、12ページにまとめられている「特に検討していただきたい点」について、時間を割いて議論していただこうと思う。

【家委員】
 少し事実関係を確認させていただきたいが、若手研究(A)を移行する場合に優遇措置について、1つの案として、私学や高専に対する調整枠に類似したものが考えられるが、現在は、私学・高専調整枠は、基盤研究(C)に対してだけ講じているという理解でよろしいか。

【渡辺日本学術振興会研究事業部長】
 現在、私学・高専調整枠は基盤研究(C)だけであり、方法としては、ボーダーラインの付近で1件上げるかどうか、そういうような形である。

【家委員】
 そうすると、基盤研究(C)は応募件数が3万件弱だと思うが、採択率が20数%であるので、採択対象が七、八千件というところだと思う。そのうち、2億で100数十件とすると、2%弱ぐらいをその調整枠で救っていると思ってよいか。

【渡辺日本学術振興会研究事業部長】
 細目あるいは分科単位で1個ぐらい調整枠で救っているという感じである。

【家委員】
 仮に、若手研究の移行に伴い、基盤研究(B)に、若手研究者の優遇措置をとった場合に、パーセンテージとしてどのぐらいのものを考えるか。基盤研究(C)と同じであるとすると、各分科細目ごとに優遇措置を講じることが実際的かと思うが、基盤研究は全体の採択数が少ないので、各分科細目に例えば1つの枠を与えてしまうと、それだけで結構なパーセンテージになるという心配がある。

【山下企画室長】
 その点に関しては、お手元の第5期の資料集の、1月21日に開催した第13回の資料2の5ページに、若手研究(A)のあり方についてということで、第1案として、私立学校・高等専門学校調整枠のような優遇措置を設けるという試算があるが、「内容」という四角囲みの中ほどに、必要となる調整額ということで、仮に、各小委員会ごとに1件程度取り上げるとすれば、基盤研究(B)については、新規課題の平均配分額が840万円掛ける15小委員会で1億2,600万円、それから、2として、68分科ごとに1件づつ取り上げれば、約5億7,000万円という試算をしている。さらに細目ということになれば、金額的にはもっと大きくなる。

【有川部会長】
 具体的な方向については12ページで議論していただくので、そこに至るまでの経緯、まとめ等についてご質問があればお願いしたい。
 12ページに特にご検討いただきたい点が6点まとめてあるので、そこについて議論をしていただきたいと思う。若手研究(A)の見直しの方向についてであるが、この若手研究(A)については、基盤研究の中に位置づけていくのかどうか、また、その場合に優遇措置を講じるのかどうか、講じた場合には、その内容や期間などをどうするのかについて検討を進めたい。それから、若手研究(A)の見直しの時期についてであるが、昨年、昨日の事業仕分けのことなどもあり、若手研究者の間で不安感が広がっているという状況がある。そういうことを踏まえ、若手研究(A)を基盤研究に位置づけるとしても、平成23年度から直ちに実施するのか、あるいはある程度の周知期間を設けるのかどうか、そういった点について検討したいと思う。
 さらに、今度は若手研究(B)の見直しの方向であるが、若手研究(B)については、若手研究者支援の重要な研究種目として、他の研究種目より高い採択率の確保あるいは予算の充実を図るべきとの方向性などについてご意見をいただければと思う。

【深見委員】
 若手研究の重要性ということで大きく変わろうとしているが、12ページに書いてある方向性、特に私は若手研究(S)については募集停止ということ、若手研究(B)は残すということについては方針としてとてもいいことだと思う。
 若手研究(A)については、本当に基盤研究の中に吸収することがいいのか悪いのか迷いが少しあったが、現在は、基本的に基盤研究の中に位置づけるということに対して、これが多分いいだろうと考えている。
 そのときに、若手研究から基盤研究への移行に当たっては、基盤研究(B)のように基盤研究が魅力的であれば自然に移行すると思う。回数制限とか年齢制限は関係なく、基盤研究が魅力的であれば、移行措置は自然と行くべきであって、それが本来の流れであるということを考えれば、基盤研究を充実していけば自然にそうなるが、難しい面があるからそれができないが、基本的にはそういう方向で行くことが原則であるという立場でかんがみれば、若手研究(A)を基盤の中に位置づけていくということに対して、方向性としては間違っていないだろうと考えている。
 確かに、すぐにというわけにはいかないだろうと思うが、決める以上は、あまり何年も先ということではなく、基盤研究の中に若手研究(A)を位置付けていくことは、若手研究(A)の人もそれなりのメリットがたくさんあるということを、システムをきちっとつくった上で提示していけば、そういうような方向に進めるのではないかと考えている。

【有川部会長】
 この辺は日本学術振興会からのヒアリングのときに出していただいたデータにも基づいていて、若手研究(A)に採択されている研究者は力をお持ちであるということがいろいろなデータから読み取れたのではないかと思う。そういったことも踏まえた格好になっていると思う。

【鈴村委員】
 特定のカテゴリーの研究者に対する優遇措置を継続すべきかという問題について、私は万一にも優遇措置を残すのであれば、時限的な経過措置であることを明示すべきだと思う。何年後には特別な優遇措置を設けない制度に到達するという展望を持つことが重要であって、さもないと経過的といえども優遇措置は永続化してしまうと思う。

【有川部会長】
 ここでは、12ページの2つ目の丸で、期限を設けてはどうかということになっているが、多分、これは優遇措置を何年か講じると、もう優遇措置をとる必要がないという状況が生まれてくるだろうと思う。その時期にやめればいいと思うし、もし、続くのであれば、一定の期間を設けておいて、それをしばらく延長するといったやり方があると私自身は感じている。
 これも日本学術振興会からの報告などを聞いて、現行の若手研究(B)などでしっかり力をつけて、そこへ来ているということであるので、やはり力は十分持っておられるだろうと思うので、調整の必要がなくなってくるという状況が二、三年内に来ると期待してもいいのではないかと思う。

【鈴村委員】
 優遇措置の開始以前に、xx年間の時限措置であるということへのコミットメントを明示して、サンセット条項も明記してスタートするのと、当面は優遇措置を設けてスタートして、必要なくなったらやめましょうというのでは、まったく違う考え方だと思う。後者のやり方では、先に行って考え直したときに、さらなる経過措置として制度の延長が行われることは、ほとんど必然的であると思う。優遇あるいは保護という制度は、常にそういう性格を持っている。若くて経験が浅いとか、蓄積された研究成果がまだ数が少ないなどの理由で、若手に対して不利な競争環境になるということになれば、審査する側の見識を問うべき問題だと思う。

【有川部会長】
 最初は、何年間かの経過措置ということで、期間はきちんと明示することになると思うが、その方法で進めて、優遇措置によって採択される件数がかなり多いという状況があれば、当然、期間を延ばすというようなことになるだろうし、その時点で、優遇措置によって採択されるものがほとんどなくなってきているという状況があれば、それは役目を果たしたことになるのではないかということを申し上げたつもりである。
 鈴村先生の提案は、何年間の間は優遇措置を導入するということを事前に公表しておいて、さらに延長することについても、あらかじめ書いておくべきだということでよいか。

【鈴村委員】
 私が提案させていただいているのは、xx年間の経過的な優遇措置を設けるのであれば、その措置の集結時点をあらかじめ明示して、研究者側にも大学側にも、その制度を前提とする対応措置にコミットする姿勢を用意していただく必要があるのではないかということである。

【有川部会長】
 それでは、次に基盤研究に関連したところに入りたいと思う。まず、最後の19ページに、「特に検討していただきたい点」ということでまとめられているが、13ページから18ページにかけての基盤研究の現状、本部会におけるこれまでの審議の概要について、ご意見などがあれば伺いたいと思う。

【家委員】
 今の若手研究からの移行の問題もそうであるが、まず、いろいろなことを議論するときに、基盤研究(A・B・C)の研究費の申請上限額を拡大するのか、それとも今の予算状況ではそれが採択率を圧迫することになるので申請上限額を拡大するのは難しいとするのかをまず決めないといけないと思う。例えば若手研究から基盤研究(C)に移行するにしても、そこのインセンティブがあるかどうかによって大分違ってくると思う。
 もちろん全体予算が大幅に伸びれば、採択率も上昇させ、研究費の規模を拡大するということになるが、どちらを優先するかといえば、やはり現状では採択率だと思う。というのは、やはり応募者の中に非常な閉塞感があって、いろいろな研究種目がなくなったり、若手研究も中止するという状況だが、少なくとも、採択率は何とか上げる努力をしているというメッセージが伝わることが大事だと思っており、まずそこの確認をしてから、その先の制度設計があるのではないかという気がするがどうか。

【有川部会長】
 非常に大事なことであるが、15ページから16ページにかけて、案が3つ書いてあるが、その中に、金額や期間等についても触れられている。例えば案の3案は、大中小として、今の基盤研究(A・B・C)という言い方をしないというものもこの中には入っている。
 事業仕分け等で言われたことなども考慮に入れて、もう少しほかのことと関連づけながら、議論しなければいけない時期もあると思うが、一方で、今、我々は基盤研究(A・B・C)という研究種目名でやっているが、基盤研究(S)と特別推進研究もあるので、そこをつないでいくことを考えると、(A・B・C)というような言い方は残しておいたほうが考えやすいと思う。
 そういう意味では、大きな案として、例えば15ページの案1的なものを考えて、金額を増やすことも考えられる。研究期間については、「2年間ないし4年間」を「3年間ないし5年間」と変えた経緯があるが、特に基盤研究(C)については、先ほどのまとめの中にもあったと思うが、2年間で十分やれるものもあるということである。そのようなことなども含め、1案をベースにして考えてみたらどうかと感じている。少し具体的なことを言ったが、議論を少し活発にするために申し上げた。
 全体の採択率を上げるということ、それから、もう一つは、これまでの議論あるいは報告の中でもあったが、基盤研究(C)に対する期待というか、特に人社系は基盤研究(C)について非常に重要だと思っている。また、基盤研究(C)の金額が増えるというよりも、とにかく最低限度採択率が確保されていることが大事だという趣旨の話ではなかったかと思う。それから、3年間ではなくて、2年間でいいという考え方もあるということから、「3年間ないし5年間」を「2年間ないし5年間」というように、2年間もあってもいいかと思う。
 それで、採択率を上げるということから考えると、そして、予算が伸びないということを鑑みると、金額の上限等を適当なところに抑えておくということ必要があると思う。例えば1案では、基盤研究(C)については1,000万円まで、基盤研究(B)については3,000万円までとなっているが、採択率のことを考えて低目に設定することもあるかと思う。そうすれば家先生がおっしゃったことにも対応できるかと思う。

【水野委員】
 人社系、文科系の非常に多くの場合にはほんとうにわずかな金額で、学会旅費とか本代がいただければ、それで何とか研究ができるというところがある。従来は、基盤的経費で、職員旅費とか、あるいは一定の図書費が配分されていたが、基盤的な経費が毎年削られていく中で、今の大学の状況でそういう余裕がなくなってしまっている。
 その部分は金額はわずかでも良いので、やはり基盤研究(C)を頼りにせざるを得ない。しかし基盤研究(C)の金額を1,000万円に上限を上げることについては、私は賛成である。理科系の場合、500万円の上限では最低限の研究ができない若い人がたくさんいると伺っている。実質的な研究をするにはどうしても1,000万円が必要で、500万円では機械の電気代にしかならないというような愚痴も聞いているので、1,000万円に上限を上げることは賛成である。けれども、人文系の場合は1,000万円は要らない場合が多いだろうと思う。
 しかし、上限の金額を一律に上げると、もらえればそれだけ間接経費も増えるし、書庫に本も増えるし、いくらでも使えるので、高い金額を申請する傾向がでるだろう。それでも、人社系の場合には、金額をもっと下げて応募した場合には、当選確率がはるかに高くなるというような制度設計を行なうことが可能ならば、申請金額を低くするインセンティブもでてきて、幅広く若い人たちに研究の支援をすることができるだろうと思う。
 そして、ほんとうに若い、最初のスターターの学者たちというのは、実力をはかるにしても、まだ十分な業績を示していないので、審査をするのも難しい。そういう方々が、金額がわずかでもその時期に採択されれば、そこからたくさんの芽が出ると思うが、ある程度金額を高くしてしまうと、わずかな人しか採択されることができなくなり、これから伸びてくる人たちに芽が出るだけの水をまんべんなくまくことができないことを危惧する。
 上限は一律にしておいて、審査の段階でメリハリを付けること、つまり日本学術振興会の審査委員が、「これはそんなに要らないだろう」と判断して金額を切るのでは、実際には申請の金額を調整することは難しいと思うが、はるかに当選確率が高くなるということになれば、人文社会系であれば、ほんとうに必要な低い金額でたくさんの人を採択することができるので、そこに応募が流れて来ると思う。

【有川部会長】
 そういうことをある程度考えたつもりではいるが、金額を低くすると採択率が上がるというのは、個人レベルで行なうのは難しいと思う。団体で申請するということであれば別であるが、そういうわけにいかない。インプリメントすると、1件当たりの額を少なくしておいて、そこに予算をしっかりつけておけば、今おっしゃったようなことはできるだろうと思う。つまり、具体的に言いうと、基盤研究(C)の予算枠を広げ、上限を低目に抑えておくと、当然採択率は上がることになると思う。例えばそういうやり方をしていけば、おっしゃられたことはかなり実現できると思う。チームをつくって申請する新学術領域研究であれば考えられると思うが、個人研究であるので、それ以外の方法を行なうことは難しいと思う。

【山口学術研究助成課長】
 今の意見を確認させていただきたいが、例えば基盤研究(C)を1,000万円までという枠にしておいて、例えば1,000万円で応募する場合よりも、200万円で5件、同じように採択できるので、小額の課題を採択する確率が高くなるように何とかできないかということでよいか。要するに、1,000万1件分イコール200万5件分というような採択の仕組みができないかということで、それは分野に限定するわけではなく、額として小規模なものと大きいものの採択率を変えるということでよいか。

【水野委員】
 人文社会系はおそらくそういうニーズが非常に高いだろうという気がしているが、例外的に多額の費用がかかる研究もあるので、分野に限定しなければならないというところまでは考えていない。

【宮坂委員】
 前にも申し上げたことがあるが、人文系と、生物、医学を含めた理系とはお金を使う額のけたが全然違ってきている。例えば私たちの分野であれば、500万円とか1,000万円というのは、図書費も入れないし、学会の費用も入れないし、ほとんど消耗品と一部備品で簡単に使えてしまう。基盤研究(C)の上限が1,000万円というところまで来たときに、人文系と理系とを全く同じベースで考えるというのは多分無理だろうと思うが、今まで一度もこの議論は出ていないので、そろそろそこを考えないといけないと思う。
 人文系で研究費を使おうとすると、何かの調査を委託して、アンケート調査を大々的にやるとか、何とかしてお金を使う方法を考えると思うが、我々理系、医学とか生物学系から見ると、異質な社会である。だから、そこは何とかしなければならない時期にさしかかっているように思う。

【有川部会長】
 審査は各系委員会で行なっているので、それぞれの委員会でそういった分野ごとの特性はある程度吸収されているのではないかと思うが、今、ここでは、例えば基盤研究(C)の上限を抑えておいて、その上には基盤研究(B)があるので、お金が必要な人は小額の研究種目ではなくて大きい研究種目に申請すればいいと思う。だから、そういった方法をうまく使って対応することが考えられると思う。

【宮坂委員】
 しかし、上に行けば行くほど競争率は激しくなるので、それだけのことで、私が話したようなことが解決できるとはとても思わない。

【有川部会長】
 学問の分野というのは非常に微妙なところがあって、理工系、人社系とただパッと2つに分けられるかというとそうでもないと思う。両方にまたがっている場合や、研究の展開の仕方によって、あるときには人社系的なやり方をとる場合がある。特に理論系であれば大きな装置は要らないが、実際にそれに基づいて大きな実験をするということになれば、途端に大きなお金が必要になったりする。そのようなことをうまく吸収できるような仕掛けにしておかなければいけないという面もあると思う。
 それから、さきほども言ったが、特別推進研究とか新学術領域研究、基盤研究(S)も含めて、さまざまな研究種目があるので、大がかりなものはそのような研究種目で対応するということになっているのではないかと思う。

【宮坂委員】
 私が申し上げているのは、研究全体が大がかりというよりは、例えば1つの実験をやるにしても、例えば1枚のマイクロRNAをどうのこうのする、あるいはDNAのエクスプレッションを見るといったときに、1枚のプレート自体が例えば50万円や100万円するように研究の単価がまるで違ってきている。その人たちは特別推進研究に行けるかというと、そういうレベルではない。要するに、研究の水準、やるテクノロジーそのものがどんどん進んできて、1つの実験を行うのに一定の金額がかかってしまう。昔はそのような実験をしなくてもよかったが、テクノロジーが進歩してくると、実験にかかる費用がまるで違う。
 そこを理解していただかないと、その人たちは基盤研究(B)に行けとか、特別推進研究に行けと言われてもそれは行けないと思う。

【深見委員】
 生物系としては、例えば基盤研究(C)ぐらいのお金をいただくとすると、多くの人がもらっていると思うが、例えば充足率が8割ぐらいであるので実際は400万円を3年間、そうすると、1年当たりが160万円、170万円にしかならない。生物系としては、170万円では1年間何も行なうことができない状況である。
 そういう状況で、若手研究(B)か基盤研究(C)へ移行しろと言っても、移行できないし、基盤研究(B)の上限が2,000万円としても、充足率等を考えると1600万円で、年間に500万円前後、600万円ぐらいということにとなると、若手研究(A)から移行しなさいといくら言っても、それは移行できないと思う。やはりそういうことについてある程度きちんと対策をしていかない限り、若手研究からの移行というのは絶対あり得ないということが問題だと思う。
 先ほど家先生から、採択率を上げるということが重要で、規模は抑えてもいいのではないかというお話もあったが、やはり規模も、今ここできちんと上げない限り、やっていくのはいろいろな面で非常に難しいと思う。そういう状況にあるということを見通した次の対策をとっていくべきだと強く思っている。
 分野間の違いが非常にあるのは私もわかっているので、人文系と理工系を分けることについては、現時点ではそれがいいか悪いかというのは判断できないが、理工系、生物系においては、このシステムではとても研究を実施できない状況になっているということを強く申し上げたいと思う。
 予算の枠が決まっている以上、採択率が重視なのか、規模が重視なのか、それは当然議論になってくると思う。もちろん予算がきちんと上がってくれれば、だれも何も言わないし、ほんとうにみんなハッピーだと思うが、そこができない現状で、規模においても、採択率もということは難しいと思う。そうした場合には、やはりみなが望んでいるのは、基盤研究のある程度充実ということを強く打ち出すことであると思う。研究費部会でも言っているし、研究者の多くが望んでいるのは基盤研究の充実であるので、文科省全体の予算の枠から基盤研究へ動かす、といったことをもっと強くやっていくことが重要なのではないかと思う。特定領域研究が廃止されて新学術領域研究もできたが、新学術領域研究の予算よりはこちらのほうが優先であるということについても考えてもいいのではないかと思う。

【家委員】
 今、分野によっていろいろと条件が違うのはよくわかるし、おっしゃっていることはよくわかるが、科研費の制度としてそれをやることがほんとうにいいかどうかについてはかなり疑問がある。
 まず、先ほど人社系であれば、少額でもいいからできるだけたくさん採択件数を確保してはどうかという意見があったが、物事はツーステップあって、まず、今の科研費の予算配分の方法は、ある程度、応募件数と応募総額に合わせた分野別の配分をしているので、そこから変えるのかどうかということが非常に制度として問題である。
 それから、確かに生物系であれば、基盤研究(C)では何も研究ができないというのはそうなのかもしれないが、では、なぜ基盤研究(C)に応募されるのか。基盤研究(C)で何にも研究ができないのであれば、基盤研究(B・A)に応募されると思う。現実には、競争率が高いということがあると思うが、今の方式でいうと、例えば基盤研究(B)にたくさんの方が応募されれば、それが全部同じ採択率になるとは思わないが、それなりに予算の配分が行くというフレキシビリティーは、制度としてあるはずである。それは研究者、応募側のストラテジーの話であるので、ほんとうに基盤研究(C)では何にも研究ができないと思えば、基盤研究(B)に応募されればいいと思う。そうすれば、基盤研究(B)の生物系の予算がそれだけ増えるわけである。

【宮坂委員】
 コミュニティーやソサエティー、集団としてのストラテジーはとれるが、個人はそれよりも、何としてでも科研費をとりたいので、多くの人たちが基盤研究(B)に行かないで基盤研究(C)に行くのは当たり前の話である。だから、本来はソサエティーとしてそういうタクティックスをやる、ストラテジーをやらなければいけないというのはわかるが、それは別の議論である。

【家委員】
 いや、ストラテジーと言っているのではなくて、基盤研究(C)の額では何も研究ができないとおっしゃるのであれば、それは基盤研究(B)の額で申請すべきだと私は思う。

【宮坂委員】
 何もできないと言うと語弊がある。先ほどのお話だと、人文系はそんなに研究費がなくても足りるとおっしゃっているわけだが、私たちはそれだけあっても全然困らない、「むしろ使いますよ」と申し上げているわけである。

【家委員】
 研究費があって困らないのはみんな同じだと思う。規模も、額も、採択率も大事だという主張を外に向かって行なうことは私ももちろんやるべきだと思うが、今、予算があまり伸びないという見通しの中でアベイラブルな予算をどうすれば最も有効に使えるかというときに、今の状況で基盤研究(C)の上限を拡大するということには疑問がある。

【鈴村委員】
 先ほど水野委員がおっしゃったことは、人文・社会系の研究のニーズに寄り添って言えば、1,000万円という上限があれば1,000万円で応募するように誘因付けられるだろうが、科研費の効率的な使用のためには、むしろもっと小さな研究費がもっと多くの研究者に充当される方が、ずっと適切ではないかということだった。このご意見には根拠があると私も考えている。ただ、本当に研究のニーズに対応する上限以下の申請を人文・社会系の研究者がするようになると、科研費予算総額を各分野の申請総額比で配分するという方式のもとでは、効率性を考えて限度以下の申請をすれば、分野全体として配分額が減少することになる。科研費の効率的な使用のための自制が、分野全体の配分額の減少に帰着するのでは、問題だと言わざるをえない。効率性と衡平性をバランスよく考慮するためには、各分野の研究費のニーズの特性を反映する科研費総額の分野配分の仕方の方を、新たに考慮する必要があるのではないか。せっかくの貴重な公的な研究助成であるから、プロクルステスのベッドのような現状から抜け出る伸縮的な工夫こそ必要である。

【家委員】
 誤解があれば補足させていただきたいが、私は応募額の上限を分野ごとに変えるということは、制度としていろいろな問題が生ずるのではないかと言っているわけで、分野別の事情への対応は、むしろ分野間の予算の配分のところで検討すべきだと思う。今は、伝統的な、いわゆる藤岡方式で機械的にやっているが、そこに手をつけるしかないのではないかという気がしている。

【鈴村委員】
 そこは誤解せずに私も理解しているつもりである。

【甲斐委員】
 今、2つのことを話していると思うが、将来的な研究費の総額はほんとうに大事なことで、議論しなければいけないと思うが、19ページに触れるが、きょうの検討いただきたい点の中の1に、「応募総額の見直しは、増額が見込めない場合には採択率の低下を招くことが想定されるので、応募総額の見直しについては引き続き慎重に検討していくこととしてはどうか」という提案が事務局からあるように、基盤研究の応募総額の見直しは予算上難しいと思う。となると、私は案1には賛成だが、とりあえず基盤研究(C)の応募総額を1,000万円にというのは、議論しても結論を出すのは多分無理であり、引き続き検討課題となってしまうと思う。
 将来的には基盤研究(C)の上限は1,000万円にしてほしいというのは、理系ではそう思う。若手研究(B)からの移行を考えるとそうであるが、どんどん物価が高くなって、研究が拡大して、増額増額と言ってきているが、それはある特定の分野のことであって、人文社会分野はそうではないと思う。
 そうであれば、この慎重な検討を続けていく過程で、基盤研究(D)をつくってもいいのではないかと思う。あるいは、基盤研究(C)1、2などが考えられる。基盤研究(D)の上限を500万円のまま、あるいはもっと少ないほうがよろしいと皆さんがおっしゃるのであれば、400万円でも300万円でも上限を決めて、そちら側に人文社会系の人は多くの応募件数があって、理系の人はむしろ基盤研究(C)のほうにいきなり応募件数があるというので構わないと思う。ただ、若手研究(B)から移行する相手はなければいけないので、いきなり基盤研究(B)に移行するのは難しいというのは正直なところだと思う。だから、将来的には基盤研究(D)を創設するとういうことも考えたほうがいいと思う。
 近々の話題であるが、19ページの2のほうに研究期間のことが触れられているが、これは大事で、現在、若手研究(B)と基盤研究(C)の総額が500万円で同じであるが、若手研究(B)の研究期間が2年間から4年間、基盤研究(C)が3年間から5年間ということで、若手研究(B)から基盤研究(C)に移ろうという人が確実に研究費の年額が落ちることになる。理系の年額がたくさん必要な500万円を2年間でもらっていた人が、基盤研究(C)に移ると500万円を3年間でもらわなければいけなくなり、研究費の年額が確実に落ちることになる。そこで、「移行したくない」と、ディスカレッジになってしまう。これはすぐにも修正しなければいけないので、増額できなくても基盤研究(C)は少なくとも研究期間を2年間から5年間に上げるのには賛成である。
 ただし、基盤研究全体の研究期間が3年間から5年間だったのを、2年間から5年間にするのはどうかと思う。というのは、基盤研究(B)や基盤研究(A)は3年間のままでも、基盤研究(C)とのディスクレパンシーは起きない。1年当たりの研究費の額が、基盤研究(B)からは3年間にしておいても、基盤研究(C)と逆転することはあり得ないので、少し長く研究期間を設定したほうが科研費の安定性という長期的なことを考えて3年間から5年間にしたポリシーには合っていると思うので、とりあえず基盤研究(C)だけを2年間から5年間にするというのが現実的であると思う。

【有川部会長】
 特に検討していただきたい点である基盤研究の研究費の規模と研究期間についてであるが、研究期間については、2年間というのを考えたそもそものきっかけというのは、基盤研究(C)に対することだったと思う。そういう意味では、基盤研究(C)については2年間というのを入れておくということでいいのかもしれない。

【井上(一)委員】
 私は実は第2案がいいのではないかと思う者である。研究者のどれぐらいの割合が科研費をもらっているかという意味で採択率を定義するとして、1案で上限を上げてしまうと、採択率が下がることになるのではないかと危惧している。
 2案は、採択率が変わることはないと思うが、その場合に、新規が入りにくくなったり、初年度が少し動かしにくくなったりすると思う。これについては、今も話があったが、基盤研究(A・B・C)が一律である必要はないのではないかと思う。例えば17ページにあるが、基盤研究(C)においては90%は3年間で新規応募されており、基盤研究(C)は2年間と3年間、基盤研究(B)は3年間から4年間か3年間か5年間かというような考え方もあると思う。基盤研究(A)は大きい設備を用意していくという部分が多いなら、初年度の予算枠の考え方を少し変えるとか、何かそういうような方向で柔軟なことは考えられるのではないかと思う。

【中西部会長代理】
 いろいろ議論をお伺いして私が思うことは、やはり科研費の制度というのはシンプルな形が一番いいと思っている。わかりやすい形で、多様性もあり採択率も高いといろいろ考えていくと、やはり基盤研究(A・B・C)の額にきちっとした限度があるということがいろいろなことを呼んでいると思う。研究期間は2年間がいいとか、5年間がいいという議論があったが、今おっしゃったように、もっと細かく分けるべきだと思う。
 私は、その上で理想論では3案だと思う。どういうところの、幾らするということを全部取っ払って、理想的には欲しい分だけ、必要な年数だけを応募するというのは理想論だと思うが、ただ、これで現実にはうまくいかないので、どこに軟着陸するかというと、2案は少し複雑であるので1案になるのではないかと思う。
 ただ、理想論というのはいつも考えるべきだと思っていて、研究期間も2年間、5年間とするのではなく、例えば5年以内とか、もう少しフレキシビリティーを持てるようにして、できれば10年間、20年間は制度が変わらないような落ちついた制度を考えていくべきだと思う。ただ、理想論はいつも考えておくべきではないかと思う。
 1つだけ弊害というか、(A・B・C)に分けてカテゴライズすると、理系の傾向としては、(A)の研究のほうが(B)より上だとか、(C)をもらう人よりも(A)の研究のほうが断然上だというような、金額によって研究を差別するような傾向があると思う。理系の中でも、お金を使わない研究というのもあるので、文系だけではなく、非常に多様性があるということを加味して、金額もフレキシブルに考えるような、将来的にはもっと柔軟なことを考えていただきたいと思う。

【金田委員】
 今のご意見には賛成で、私は、細かいところは別として、第1案のほうで考えるというシンプルな方向でいいと思う。
 それで、先ほども議論があった基盤研究(C)の上限を1,000万円に上げざるを得ないという状況に対応してそういう必要があればそうすればいいと思う。
 一方で、1,000万円は必ずしも必要がないという分野の方に対するきちんとした配慮をしないといけないという点で、先ほど基盤研究(C)-1と基盤研究(C)-2に分けてもいいではないかという意見があったが、私はそういう方法を採用するならば、採択率を十分考慮してやっているというメッセージも多少送ることができると思う。また、今までの基盤研究(C)の場合、上限が500万円であるので、上限のほうに張りついて申請が出ていたかもしれないが、とりあえず最初の年度は基盤研究(C)-1と基盤研究(C)-2を金額で半分にしてやるとか、やってみないとわからないところがあると思う。そこで、応募がどこにどれだけ出てくるかを見た上で、2年分以降の配分を考えればいいと思う。そういった形で、実態のニーズがどこにあるのかということも少し探るようにして、基盤研究(C)を有効に、かつ、広く運用できるような形にすれば、第1案のほうに近い形のほうがいいのではないかと思う。

【有川部会長】
 先ほど、基盤研究(C)などが対象になると思うが、研究期間については、現在は2年間から5年間となっているが、5年以下でいいのではないかと思う。つまり、1年もあっていいのではないかというような話もあった。そうすると、これは生命科学系でも、1年間で500万円あればやっていけると思う。毎年応募しなければいけないが、金額が固定されて、研究期間が柔軟であれば、その期間内で自分で調整ができるという面があると思う。
 それから、金田先生がおっしゃった基盤研究(C)を2つに分ける、小文字の(c)をつくるという感じになるのかもしれないが、そういうことと研究期間で調整するということがあると思う。複雑にしすぎると良くないので、もともとは3案のようなものがあって、それだと大まか過ぎるので、昔から区分があったではないかと思う。今度は各分野とか、あるいは方法論とか、そういったものに応じて分けたほうがいいのではないかというところまできてしまうが、説明がしにくくなるので、なるべくシンプルにしておくということが1つ大事なことだと思う。
 それから、10年ぐらいは変わらないような制度にという意見もあるが、一方で、事業仕分けの役割もそうであるが、最近いろいろ言われていることなどからすると、絶えず見直しておかなければいけないというところがあると思うので、これは毎年見直さなければいけないと思う。特に最近は仕方がないのではないか。
 しかし、見直す部分がある一方で、科研費の理念の一番大事なところだと思うが、自由な発想に基づく研究を支援するというところが一番大事で、ここは10年や20年で変わってもらっては困るところだと思う。それをいかにうまく効率的に実現して、社会にきちんと還元できるようにするかということなどを考えながら、絶えず見直しをしておく必要があると思う。

【佐藤委員】
 この素案は今までの議論を極めて的確に反映されているし、今日、いろいろなご意見があったので、おそらくエラボレートされていい案になっていくと思う。
 この報告書が出るタイミングが予算要求の前であるので、何らかの形で予算に働きかけていくとすれば、科研費は今の枠で工夫をすれば足りるという間違ったメッセージにならないように、ぜひとも科研費は足りないということを強調していただき、その上でできる工夫という、そういうコンテクストで書いていただきたいということを希望したいと思う。

【有川部会長】
 当然、予算額は十分ではないが、平成22年度についても、当初の認められた概算要求額からは下がっているが、科研費についての一つの目標であった2,000億は達成できているわけである。ほかの予算が非常に厳しい中でそういったことが達成できたということに関しての気持ちは何らかの形で表現しつつも、それでは十分ではなく、大学等の基盤的経費等が厳しい状況にあって、大学でそれにかわる研究資金としてますます大事になっているので、充実した予算要求をしていくということは当然だと思う。
 金田先生の小文字の(c)をつくるとか、特に基盤研究(C)については、研究期間を2年間にするということがあるが、これは1年間も入れておいてもいいのかもしれない。金額の上限については、19ページのまとめ方からすると、もう少し時間をかけて検討したらどうかと思う。それから、きょうの冒頭でも申し上げたつもりであるが、今、非常に動きのあるときであるので、もう少し見きわめた上で、少し恒久性のあることを検討していくのはどうかと思う。
 それで、今日いただいた意見をもとにして、それを反映させ、昨日の事業仕分けのことなども事務局で反映していただきたいと思う。ただ、この我々の研究費部会は議論が進んでいくと、大もとの議論に関係するということの繰り返しになるところがあるので、その辺はご理解いただいた上でご審議いただければと思う。

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は5月27日(木曜日)午前10時30分から開催予定である旨、連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課