第5期研究費部会(第12回) 議事録

1.日時

平成21年12月3日(木曜日) 13時00分~14時45分

2.場所

文部科学省第2講堂

3.出席者

委員

 有川部会長、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、田代委員、三宅委員、家委員、井上(一)委員、金田委員、鈴村委員

文部科学省

 磯田研究振興局長、松川総括研究官、山口学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

(発表者)
 独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター 佐藤主任研究員

4.議事録

(1)日本学術振興会からのヒアリングについて

 日本学術振興会学術システム研究センター佐藤主任研究員より、資料3「今後の科学研究費補助金の在り方について(平成21年12月3日 独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター)」に沿って説明があり、その後質疑応答を行った。

【有川部会長】
 これから議論、質疑応答に入るが、予算的なことなど若干現行では難しいことも含まれていると感じられるので、最初に事務局から発言があればお願いしたい。

【山口学術研究助成課長】
 私どもから3点ほど少し気になるところについて申し上げたい。
 1つは、今回のご発表、ご検討の中で、単年度で研究費を幾ら受給できるかということが研究者の応募状況を左右する大きなキーになっているということがあった。例えば、若手研究(B)の場合、研究期間が2~4年で、おそらくは2年が多いであろうし、基盤研究(C)については3~5年で、3年が大半であろうということで、単年度ベースの応募額、応募可能額が議論の中心になっていたと思うが、若手研究(B)の応募総額は平成14年度の創設以来、基盤研究(C)の応募総額と合わされてきたところなので、単年度当たりの金額だけではなく、研究種目の在り方の問題も含めてご検討いただきたい。
 それから、現在我々が置かれている財政状況について少し申し上げると、ご承知のように非常に厳しい状況である。来年度の概算要求では30億円の増を認められたが、基盤研究の採択率の減が大きく見込まれるので、今回はその増額分を全部基盤研究(A)と(C)に充当することにした。その結果、若手研究(S)と新学術領域研究(研究課題提案型)の新規募集を停止するという非常に厳しい選択を迫られたところである。今の試算では、それによって基盤研究(C)の来年度の新規採択率は、20%にいけるかどうかというような状況である。ただし、これはあくまでも概算要求の段階であってこれから政府予算案を作っていく段階になる訳だが、一方で事業仕分け等もある。科研費の先端研究、あるいは若手研究者育成も事業仕分けの対象になっていて、特に若手は他の制度と合わせての判断ではあるが予算の縮減というような形で、極めて厳しい状況にある。
 一言で言えば、これから先、科研費の大幅な増はなかなか難しいと思っている。そういうことを前提として、例えば予算の増がないということで考えると、応募額の上限を上げる、例えば2倍にするということは、おそらく多くは応募上限額近くで応募されることになるので、結果的にパイが広がらない中で総額が上がるということになり、結局、採択率が低下するということを意味する。現在の基盤研究(C)の採択率は20%程度であるが、例えばその応募上限額を2倍にした場合、荒っぽい議論をすれば採択率が半分になってしまうことも想定される。基盤研究(C)と基盤研究(B)について、21年度と同水準の採択率を維持しつつ、応募の上限額を引き上げると一体幾らかかるのかということを少し試算してみたところ、二百数十億円ぐらいは予算の増額がないとできないという状況である。それはかなり厳しい数字ではないかと思っている。
 それからもう一つ、応募総額を変えるということについて、例えば基盤研究(C)の応募総額500万円を1,000万円まで引き上げた場合、基盤研究(C)の応募者数が増えることが予想される。また、これまで基盤研究(B)で応募していた人が基盤研究(C)に入ってくることも意味するので、これまで基盤研究(C)に応募していた人から言えば、今まで競争相手ではなかった人が新たに戦いの相手として出てくるということになる。つまり、競争の質が変わってしまうということが結果的に起きてしまうのではないかと思われる。同じことは基盤研究(B)と(A)との間でも起こる。今まで基盤研究(B)で競い合ってきた人よりも大きなものを応募していた人が基盤研究(B)の中で競い合うという形になってくるので、そういう意味で応募者数の増だけでなく、競争の中身自体も変わってくるということも踏まえてご審議いただければと思う。

【有川部会長】
 佐藤先生からのご報告に加えて、山口課長から主に財政面での問題点などをご指摘いただいた。それでは、これから質疑応答に入りたいと思うが、今ご説明いただいた内容以外のことでもお気づきの点があればご発言いただきたい。

【三宅委員】
 若手研究と基盤研究との間で、総額と年数についての比較を主に取り上げていただいたが、周りの若手の人たちを見ていて、若手研究から基盤研究に行くときにもう一つのハードルがあると思う。若手研究は1人で研究を行うことになっているが、基盤研究では基盤研究(C)であっても複数人で研究を行うことになる。基盤研究は若手研究に比べて研究期間が長く、単年度あたりの金額も少ない。しかも今まで1人で行っていた研究を3人ぐらいで集まって行うことになると、1人分の取り分がますます少なくなる上、コーディネーションもしなければならないというハードルがある気がする。そこについてはどのように検証されているか。

【有川部会長】
 確かに、基盤研究(C)などでは複数人で研究が行えるが、その辺の1件当たりのメンバー数の資料やデータなどはあるか。

【佐藤主任研究員】
 特に資料などは持っていないが、基盤研究は1人又は比較的少人数で行う研究となっていて、基盤研究に移ったからといって必ず複数名でやらなければいけないということではないので、その点についてはあまり考慮していない。

【鈴村委員】
 今回、年齢別の応募率や採択率という非常に見やすい資料をいただいたが、人文・社会系や理工系、生物系など、研究分野別にどのような特性があるのかという資料を何かお持ちではないか。大雑把でもどのような傾向があるかということを紹介していただけるとありがたい。

【佐藤主任研究員】
 若手研究(B)や(A)については分野での差はあまりないと思われるが、例えば若手研究(S)のようなものでは、比較的生物系や理工系が多いということはあるかもしれない。

【鈴村委員】
 全ての分野をまとめて検証するということも確かに1つだが、例えば人文系の場合は比較的年齢の上限に近い方の応募が多いとか、そのような特性もあると思う。当然、応募書類は分野に分かれているのでデータはとれると思うが、そういう形ではまとめていないか。

【佐藤主任研究員】
 それぞれの分野についてのデータは持っているが、今回はそこまでの検証はしていない。

【家委員】
 データの見方を教えていただきたいが、表2や表6に年齢別の応募・採択状況があって、ここに応募資格者数というデータがある。これはおそらく研究者番号を持っている人数だと思うが、一度研究者番号を取得すると一生同じ番号を使うことになるので、研究職から離れた人も除外していないと思っていいか。40歳を過ぎると応募が減るということが不思議だが、40歳あたりで少し人生の方向転換をして、科研費に応募しない職に移られた方も、この応募資格者数の中に入っているのではないかという気がする。
 表2や表6では応募資格者数が大体6千人から7千人と書いてある。17ページの表5では、大学の本務教員は大体新年度当たり4千人台、そのほかは国立研究所などの人だと思うが、つまり30代で研究者、ポスドクなどを経験し、その後常勤的なポストをとられなかった方が別の道に進まれた場合でも、この数からは除外されていないということでよいか。

【有川部会長】
 実際には研究職から離れる人もいる。40歳であれば若手研究(S)などは他の種目と重複して応募できるため、応募者がばらけてしまっているということも考えられないか。

【家委員】
 科研費に応募する資格は研究者番号を持っているかどうかなので、その応募するインセンティブがある人たちがどのぐらいいるかということが、この統計では出てこないのではないかという気がする。

【有川部会長】
 もらった研究者番号を返すというようなことはない。一旦中断していた人がまた再開するということも出てくるだろうから、考え方が難しいところがあるように思う。

【石田企画室長補佐】
 データのとり方であるが、表2でいうと平成21年度のある段階で研究者番号を保有している方の年齢別による統計であって、あくまでこの時点で応募資格を持っている方が集計されている。このため、例えば大学に一度勤務した後、明らかに応募できないような機関に移られている方はこの数字には入っていない。少し補足すると、大学等にお勤めの先生方が科研費に応募できない機関に移られた場合には、一旦研究者番号の表から消える扱いになっている。

【家委員】
 実際にそれができているか。

【石田企画室長補佐】
 できている。例えば再度大学に戻られるような場合には、かつて取得された研究者番号を科研費制度で再び使えるという扱いにしている。

【家委員】
 そうすると、40歳を境にして母数は減っていないが、やはり応募者が減っているということか。

【有川部会長】
 この応募率というのは1つの目安だと思う。応募した人の中でどれだけ採択されるかということを考えていかなければいけないが、1つは競争が厳しいから応募しないということで応募率が低くなっているということはあると思う。

【家委員】
 3ページの若手研究に関するところで、平成22年度から最終年度前年度応募を認めることにしたとあって、若手研究から若手研究の場合でもそのような方向を考えることが提言されているが、前年度応募がどのぐらい効果があるのかということが1つ問題になってくると思う。最終年度前年度応募は、現在のところは比較的大きな研究種目で長期間にわたるものしか行っていないので母数が少なく、あまり統計的に意味のあることは言えないと思うが、前年度応募とそうでないものとで採択率がどの程度違うかということ。つまり、レフリー側のマインドの問題で、前年度応募であればまだあと1年あるから採択しなくてもいいのではないかというような心理が働くものかどうかというようなところはあるか。
 もう一つ、特に若手研究で回数を2回に制限した場合には、前年度応募で採択されるとその分年数的には損をすることになる。それがインセンティブになるのかどうかということは、いろいろ考えるべきことがあるのではないかと思う。

【有川部会長】
 例えば、基盤研究(C)では3年の研究期間の課題が非常に多くなってしまっているということで、年度ごとに受け取れる金額を考慮して応募総額をもう少し上げてはどうかということが1つの方向として指摘されているが、同じ研究者が3年間研究した後、また3年間研究を行うということもあるのではないかと思う。そう考えると、若手研究の取得回数を2回、3回と調べていただいたが、基盤研究(C)などではどのぐらい連続して採択されているだろうか。おそらく1回採択された人は成果が上がって応募でも迫力が出てくるので、再度採択されることが多いと思う。実質的には応募総額を増額しても、結局5年刻みで同じようなことになるのではないかとも考えられるがどうか。

【佐藤主任研究員】
 研究者としてはできるだけ長期間の研究が十分保証された上で、例えば5年間研究できるのが望ましい状況だと考えていると思うが、現実問題として90%以上の方が3年で応募されているということは、やはり基盤研究(C)の総額が少ないということになるのではないかと思う。したがって、結局、3年間で500万円を確保して、リスクを覚悟で次にもう1回3年間で応募するということで、現在は6年間で1,000万円という形になる。それをできるだけ良い形にして、先ほど金額を上げるのは大変難しいという話であったが、できれば基盤研究(C)の上限を少し上げるような形にして、4年間あるいは5年間で応募される方が増えるという状況が望ましいのではないかと考えている。

【有川部会長】
 今回は若手研究からの移行を考えているが、移行するということは、若手研究で確保している予算を移行先に移しても構わないということか。つまり、若手研究で何回か研究していた方が基盤研究(C)あるいは(B)などに移るとすると、その分、若手研究でサポートする必要はないので、若手研究で確保していた予算を基盤研究(C)や(B)などに振りかえるというようなことも考えられると思うが、そういうことはどうか。

【山口学術研究助成課長】
 夏までのご議論では、回数制限を入れたことも含めて、特定の方だけがずっと若手研究に採択されるということはいかがなものかということもあって、なるべく基盤研究に移っていただく。その結果、空いた分についてはまた別の若手の人がその機会を使うというようなことであったと思う。そういう意味で言うと、今回、若手研究(A)が、基盤研究(A)の中に位置づけられるということになると、若手研究(A)の予算も基盤研究に移っていくことになるが、それ以外に、若手研究に応募していた人が基盤研究へ移るということによって、予算も移るということは基本的にはないと思っている。

【田代委員】
 表4で基盤研究(C)の応募は3年間が全体の91%で、これは異常な数字である。日本学術振興会では5年間ぐらい安定して研究できた方が良いと研究者が考えているとお考えのようだが、実は研究者側から言わせると、2年間でいいという人が相当いると思う。基盤研究では2年間がなくなって3年間になってしまったために、2年間でいいと思っていた人も仕方なく3年間で応募している。90%まで増えているというのは、2年間で応募しようと思っていたのが3年間に変わってしまったので、一番短い期間で応募しているということがある。そこのところを考えると、若手研究(B)が2年から4年なので、基盤研究を3年から5年と、3年に延ばしてしまったことが基盤研究へシフトするのに難しい状況をつくっているのではないか。実際に基盤研究に応募しようとしている人たちは、3年間ではなく2年間のほうを求めている人が多いのではないか。なぜ2年間から3年間に上げなければいけなかったのかということについて教えていただけたらと思う。

【佐藤主任研究員】
 その件に関しては、16ページの表4をごらんいただくと、基盤研究(S)から若手研究(B)までの年数ごとの応募状況が出されている。先ほどから議論になっているのは基盤研究(C)で、3年が91%ということである。ところが、研究費の額が上がっていくと、基盤研究(B)では3年間の応募は76%、(A)では51%と下がっている。
 同じことは若手研究(B)と(A)の比較でもある。若手研究(B)でも2年の方が63%と多くて、3年の方は30%である。ところが、若手研究(A)になると2年は18%で、3年が59%、4年が22%に増えるので、この表だけから判断すると2年間を求めている方が3年間で応募しているということよりも、やはり金額が十分あれば期間を長くとって研究したいと考えているように見られると思う。

【佐藤委員】
 若手研究(S)は、今回募集停止となっているので、きょうの分析には直接影響しないとは思うが、何かリアクションとして心得るべきことがあれば教えていただきたい。

【佐藤主任研究員】
 若手研究(S)は平成19年度からスタートして研究期間が5年間の研究種目なので、今年が中間評価を行う年となっている。もう少し様子を見なければ、これがどうだったかということを検討するのは少し難しいと考えている。

【家委員】
 先ほどの研究期間の議論にも関係するが、平成22年度の応募状況の統計は既に出ているか。つまり、若手研究の回数を2回までと制限したことによって、短い2年間という応募よりも3年間や4年間の応募が増える傾向があるのではないかと思うが、そういう傾向は出ているか。

【佐藤主任研究員】
 つい先ごろ22年度の応募状況の仮集計結果を見たが、研究期間が長くなった影響が少し出たというだけで、そのほかについてはあまり変わっていないと感じている。

【小林委員】
 3年目に研究費をもらっている方がいることによって応募者数が減り気味の傾向が出ていると思う。

【家委員】
 新規で研究期間を長く設定した応募の割合が増える傾向はないか。

【佐藤主任研究員】
 まだそこまでの検証はしていない。

【有川部会長】
 若手研究(A)を基盤研究の中に位置づける際に、基盤研究(C)で行われているようなある種の枠をつくって優遇すること、要するに、若手研究で回数制限をしているので、基盤研究(C)や(B)などに移行を進めることになるが、その際に、例えば若手を何%ぐらいは確保する、あるいは同じような評価であったら若手を優先するというような優遇措置を設けることについて、何か意見などはあるか。

【金田委員】
 2ページのところに、若手研究(B)から基盤研究(C)や(B)に移行しても採択率から言えば大きな変化はないと書いてあった上で、その際には基盤研究(C)などの総額を増やす必要があるという指摘がある。
 先ほどの課長の話では、その時に予算の枠を動かすつもりはないということだったが、若手研究に2回という回数制限をかけたことによって応募件数の変化が起こるので、予算の絶対額を動かさないということは若手研究の採択率を上げることにならないか。それから、予算は移さないということだったが、若手研究から基盤研究に移行した分くらいの予算を動かすことによって採択率にもそれほど大きな差が出てこないという可能性もあるのではないか。

【山口学術研究助成課長】
 ご説明に不十分なところがあったかと思うので補足させていただくと、今非常に厳しい財政状況下であることは間違いないが、若手研究の回数制限を入れることによって若手研究から基盤研究へ移っていくための枠を広げていかなければならないということについては、私どももそれは必要で、要求していかなければならないと思っている。
 先ほど私が申し上げたのは、総額を例えば500万円から1,000万円にするという議論があったが、枠全体が広がらない中で応募総額だけを例えば2倍にするということは、結局、パイがそれほど大きくならない中で額が膨らむということで、結果的に採択率の減少を導くことになるのではないかということである。移行に伴って基盤研究の充実、拡充を図っていくべきであるということについては、それがたとえ難しいことだとしても、私どもももっとやっていかねばならないだろう、その方向は間違っていないだろうと思っている。

【金田委員】
 今課長が言われているのは、採択される個々の課題の額を総額と言っているということだと思うが、私が聞きたかったのは若手研究(B)なら若手研究(B)全体の枠の話で、それを動かすということはあり得ると思う。

【山口学術研究助成課長】
 客観的にはかなり難しい状況ではあるが、増加、拡充の方向で努力しなければならないし、やっていきたいと思う。

【有川部会長】
 区分ごとの公平性を保つということで、若干の移動は当然考えられるのではないか。

【山口学術研究助成課長】
 難しいことだが、予算の拡充には努めていかねばならないと思っている。ただ、やはりそれは非常に厳しい状況なので、応募総額を500万円から1,000万円にするということによって何が起こるかということを申し上げたということである。

【有川部会長】
 応募総額を500万円から1,000万円にすることによって、単純に全体が増えてしまうと、先ほど言われたように300億円弱の増額が必要になってしまうが、現下ではそういったことを実現することはなかなか難しいということがある。一方で、実際には採択率が下がるかもしれないが、500万円を1,000万円にしておいて、経済状況がよくなったら、それが適当な率まで回復することを期待するというやり方は考えても良いのかもしれない。

【山口学術研究助成課長】
 選択肢の中では当然あると思うが、そのときに採択率の減少をもたらす可能性があるということと、競争の中身がかなり変わってしまうということについてもぜひ検討していただければと思う。

【有川部会長】
 それから、検証の報告ではなるべく長い期間で研究をしたいという言い方だったと思うが、先ほど田代先生が言われたように、このテーマは3年で、このテーマは2年で行うといったことも基盤研究(C)などでは十分あるのではないかと思う。積み上げてきて大きな方向をつかんだ上で長期の5年間で行うということは当然考えられるが、最初は比較的トピックス的なことをやって、3年間ぐらい取り組めば十分だというような研究者も相当いるのではないかと思う。その辺はどのように考えているか。

【佐藤主任研究員】
 その辺については検証していないのでわからないが、ただ、1つは実際に出てくる数字が、基盤研究(C)の場合、3年から5年という期間があるにも関わらず3年という研究期間が突出している。この原因が何なのかということは、これからもう少し深く検証していく必要があると思う。

【鈴村委員】
 先ほど部会長より、若手研究の2回という回数制限のために基盤研究のプールに入った人に何か優先枠をつくるべきかどうかというお尋ねがあったと思うが、私は優先枠はつくらないほうがいいと思う。特に2回採択された人たちは、むしろ従来の仕組みによってある程度まもられたところで成果を積み上げてきているので、大きいプールの中で平等に競争していただくということは、制度の在り方として適切ではないかと思う。

【佐藤主任研究員】
 今の件について補足させていただきたい。表2をごらんいただくと、例えば基盤研究(A)や(B)にどれだけ若い人がチャレンジしているかということであるが、若手研究に出せる年齢であるにも関わらず基盤研究(A)にチャレンジして、30%から40%という採択率になっている。自信があって基盤研究の中でやっていけるという人は、基盤研究に応募しても十分戦っていけるというのが現状だと思う。

【有川部会長】
 つまり、2回ぐらいやっていれば、特別な優先枠などつくらなくても十分戦えるということだろう。

【磯田研究振興局長】
 基盤研究(C)の金額を上げるということの影響だが、1つは、今まで平均300万円で応募されていたのが、例えば平均800万円になるとすると、理工系の方は800万円に伸ばして応募されると思うが、人文系の方々はそれほど必要としないので200万円から300万円になるのではないか。そうすると、資金を分科細目別に配分する際の考え方が応募件数と応募金額との加重平均、按分平均なので、応募総額を上げるということは今後理工系に有利に、人文社会系に不利に配分額を変更するということにもなり得る。今回ではなくて構わないので、そこについてもご議論いただければと思う。

【有川部会長】
 当然、そういうことは起こり得ると思う。その辺は何らかの検証はあるか。

【佐藤主任研究員】
 今回、私たちがいただいた検証の1つの題目が、若手研究から基盤研究へどのようにスムーズに移行させるかということで、若手の方からすると基盤研究(C)は魅力的でないため、私たちは仮に1,000万円としたが、若手研究(B)から見て基盤研究(C)に移ったほうが良い、そのほうが十分得だし採択もされるというように、格差があまりないような形にしていただけるのが一番良いのではないかということである。

【有川部会長】
 基盤研究(C)ではなくて(B)に行くという手も当然ある。

【井上(一)委員】
 基本的には、予算が一定である場合に、1つの課題を大きく、あるいは長くしたら採択率は下がる。その分だけ、ある年度で言うと競争率は高い。平均すると同じことになるのかもしれないが、若手に対しては、とにかく手を動かしてみる機会を与えるという意味で、少し短くても採択率を上げて、基盤研究に移っていくに従ってだんだん厳しくなるということはあっても良いのではないかと思う。

【有川部会長】
 確かにそういう面はあると思う。

【田代委員】
 基本的なところをお尋ねしたいが、若手研究は1人で研究することが原則で、基盤研究は1人あるいは複数で行うこととなっている。若手研究は1人でやらなければいけないという条件が課せられている中での金額のチョイスだったが、基盤研究で複数でも構わないということになってきた場合に、そこの変化はどのように考えれば良いか。

【有川部会長】
 基盤研究も基本的には個人でやる研究で、少数の複数人でやっても構わないということになっている。それから若手枠でも、若手研究(S)であればチームでやることはできる。

【三宅委員】
 今、田代先生から聞いていただいたことは最初に伺ったつもりでいたが、基本的には基盤研究も1人で応募できるからというお答えで、そのように認識しているのだなと感じたが、やはり、ある部局に所属をして科研費に応募するときに、大学によってかもしれないが社会的な要因がいろいろ影響することもあると思う。若手研究は1人でやるものという認識である一方、基盤研究(C)に応募するのであれば何人かでチームになってコーディネーションもやるということが、学部としてあるいは大学として要請されるということが現場の中にはある。そのとき、若手研究が何回も応募できるのであれば、若手のうちは自分で頑張って研究したほうが1人の取り分が多いという感覚が研究者の中にはかなりあると思う。

【有川部会長】
 若手研究で2回ぐらい研究したら基盤研究に行っても十分力はある。基盤研究では1人で研究することもできるし、何人かのチームで研究することもできるということになっている。そういうことで良いのではないかと思う。
 研究期間について全般的なことだが、3年~5年に限定せず、例えば最短の1年や2年も含めてしまうというようなことはどうか。

【家委員】
 研究期間が短いのはあまり賛成ではない。特に1年というのは実質的な研究期間が半年以下、数カ月ということになってしまい、ほとんど資金取りだけということになってしまう。研究者のモラルとしてあまりよろしくないのではないかと思う。
 それから、先ほど佐藤先生が言われた、若手にとって若手研究から基盤研究(C)に移行するメリットがないということは確かにある。ただ、少し後ろ向きなのかもしれないのが、逆に言うと今の限られた予算の中では、若手研究(B)の総額を現在の500万円から少し減らしてでも採択率を上げるという方向も考えてもいいのではないかという気もしないでもない。減らすという方向は元気が出ないのであまりやりたくはないが。

【有川部会長】
 一定の資源の中で採択率を増やすということだとポジティブな感じがする。特に若手研究ではそういう考え方も当然あると思う。

【家委員】
 採択率は50%ぐらいでもいいのではないかという気がする。

【有川部会長】
 研究費の総額の上限の関係で考えるのだが、例えば、実験をするための装置が必要な人であれば、初年度にそれを確保して研究するということなども当然考えられる。その辺をもう少し柔軟にすることは現行でもある程度できると思うが、そういったことに関する問題点などはどう考えるか。実際に自分たちで研究するときのことを考えると、少しやりにくいときがある。初年度に比較的大きな仕掛けが必要であっても、それを応募書類に書いてしまうと全体の計画のバランスが悪くなって、採択されにくいのではないかと思ったりもする。そういうことを考えながら応募したことがあるが、実際に審査をされてそのようなことに対する感想などはないか。

【井上(一)委員】
 10ページの研究種目の研究費の上限額の設定方法というところで、研究期間に応じて上限額を変える、逆に言うと年度当たりの平均の研究費はある一定の上限額になっているという考え方はわかりやすい気がする。そうすると年度ごとの採択されている件数は一定になって、大きいものを長くやると次に採択されるまでの待ち時間が長くなってしまうが、それぐらいで動く分野もあるだろうし、待ち時間が短い分野もあると思う。先ほどの分野ごとのアンバランスが生ずるのではないかという点も、このような考え方であれば同じであると思う。

【有川部会長】
 3年間だと採択されやすいが、5年間だと採択されにくい。ただ、しっかりした5年間の研究計画を頑張って立てて採択されれば、5年間しっかり研究を行える。実際には、3年間を繰り返して6年間という手もあるし、5年間しっかり確保された中で安心して研究を行うという手もある。ただし、その場合には実績のある人でないとなかなか採択されないということになるのではないか。そういったことでバランスをとって、どちらかというと短い期間のほうが採択される可能性が高くなるということであろう。

【小林委員】
 研究期間の上限を上げたとき、一見、追加の財源が必要になると思われるが、例えば年度当たりの金額を一定にして考えると、新規採択率は下がるとしても継続も含めればコミュニティ全体で研究費を受けている人の数は変わらないことになる。上限を上げることがそのまま財源を要求することになるわけではないので、そこはどちらの考え方をとるかということではないかと思う。

【鈴村委員】
 今までの「若手研究(スタートアップ)」という名称を「研究活動スタート支援」へ変えるということだが、スタートアップというのは必ずしも若い人だけの話ではなく、研究分野がかなりドラスティックに変わる人が、全然違う分野での業績を背景にして機械的にこの人は業績がある人だからといって採択されるのはむしろアンフェアであるので、そこはスタートアップとしての支援をつくって実績をつくっていただいたほうが制度としてははるかに良いと思う。この委員会で、そういう議論をしたと思うが、ここに書かれている研究活動スタート支援には、その趣旨も含まれているか。

【佐藤主任研究員】
 その点については考慮に入れている。それから、今言われたように実際にスタートアップに応募される方の年齢層は非常に広いものがある。

【鈴村委員】
 ここに「初めて科研費を申請する若手を支援するものであり」とわざわざ書かれているので、少し懸念した。

【山口学術研究助成課長】
 追加でご説明すると、参考資料として本年7月16日のこれまでの審議のまとめを配布しているが、その15ページのところでスタートアップの議論を紹介している。ここにあるように、若手研究スタートアップと言いながら年齢による応募要件も定められていないし、外国から帰ってきた方あるいは産前産後の休暇、育休から復帰した方など、いろいろな方が入っているので、若手研究スタートアップという名称は実態にそぐわないということで、名称を「研究活動スタート支援」として、若手ではないという形で位置づけをし直したほうがいいのではないかという議論であった。

【有川部会長】
 15ページの中ほどにあるように「研究活動スタート支援」という名称にしたらどうかということを前に議論していた。ここで触れられていることは、年が若いということではなく、研究活動を開始、あるいは再開する人たちを支援するということだと思う。

【家委員】
 それに関連して、先ほど研究期間があまり短いのはどうも感心しないということを申し上げたが、10ページのところに書いてあるように、スタートアップに関しては即に成果を求めるようなものではないので、1年にすることによって採択率を上げるという考え方もあり得るのではないかという気はする。

【有川部会長】
 これは若い人だけではないということであって、若い人も応募することはでき、研究期間は2年、あるいは1年でもいい。そしてその次に若手研究や基盤研究などに応募をしていく。そのようなものが用意されていることが重要だと考えればいいのではないか。

【小林委員】
 若手研究スタートアップは、スタートする時期が半年遅れているので、1年というのは、実際には半年しかない。そこは気をつけたほうが良い。

【鈴木委員】
 若手研究(B)、(A)、基盤研究(C)、(B)、(A)と順番に行くことが前提であるように言われるが、本当にその順番に行くことがいいのかどうかは私にはわからない。別に順番でなく、最初からどの種目に応募しても構わないはずである。若手に関しては40歳まで優遇しているのに基盤研究にスムーズに移行させるということは、さらに優遇することになる。そこまで優遇する必要があるかどうかは疑問である。基盤研究(A)、(B)、(C)というのは、順番に年齢ごとに上がっていく、あるいは研究が進んだから上がっていくというのではなく、基盤研究(C)はこういうものを応援する、基盤研究(B)あるいは(A)はこういうものを応援するということをはっきりさせて、年齢に関係なく、自分がこういうことを研究したいというものがどの種目に合いそうかということで、そこにアプライすれば良い。順番に階段を上るということを考えるよりも(S)、(A)、(B)、(C)それぞれにいろいろな年齢の人がアプライすればいいのではないかという気がする。

【有川部会長】
 前回まとめる段階でそのような議論も少しあったと思う。そのようなある種のランク付けをしているのではなく、種目ごとの内容によってどれが適切かということは大事な視点だと思う。
 本日いただいた検討結果などももとにしながら、23年度の概算要求や公募要領の作成等に向けた提言をしていくということになるので、次回以降少し深い議論ができればと思う。

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は12月15日(火曜日)10時30分から開催予定である旨、連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課