第5期研究費部会(第9回) 議事録

1.日時

平成21年10月13日(火曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

東海大学校友会館 「東海・三保・霞の間」

3.出席者

委員

 中西部会長代理、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、深見委員、三宅委員、家委員、井上(一)委員、金田委員、鈴村委員、谷口委員、水野委員

文部科学省

 倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、山脇振興企画課長、松川総括研究官、山口学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)日本学術会議提言について

 資料3「提言 我が国の未来を創る基礎研究の支援充実を目指して(平成20年8月1日 日本学術会議科学者委員会学術体制分科会)」について、谷口委員より説明があり、その後意見交換を行った。

【小林委員】
 ここでは科研費の総額の数字が出ているが、我が国における人的あるいは予算的な規模を示す基礎研究への投資が下がっているということが把握できる客観的な指標はあるか。

【谷口委員】
 そもそも基礎研究とは何かという定義が、日本学術会議、文部科学省等でも行われていると思うが、難しいところがある。OECDのフラスカティーマニュアルにのっとると、基礎研究の定義は、自由な発想に基づくものを含めて、知りたいという知的好奇心のみに基づいた研究である。ただ、私どものように医学部にいると、ワクチンを開発したい、がんを治したいといった発想に基づいた基礎的な研究もある。このような、応用したい、そのために知りたいということも学術研究の中で非常に重要な位置を占める分野だと思うが、これはOECDのマニュアルに基づくと応用研究になる。一方で、開発研究というのは既存のものを、例えば1あるものを10にしたり、100にしたり、あるいはさらに大きく発展させるという側面がある。これが重要でないとは言わないが、OECDのマニュアルでは定義をはっきりさせているにもかかわらず、日本の中で基礎研究というと、自由な発想に基づく純粋な基礎研究やテーマ設定型の基礎研究などいろいろ言われていて、どこまでを基礎研究として入れていいのかなかなか難しい点がある。
 科研費は、フラスカティーマニュアルに即して言うと、基礎研究と応用研究を包含したものであり、だからこそ科研費には重要性や重みがあると理解している。

【中西部会長代理】
 この提言の中に、基礎研究が能動的研究に当たるというような表現があるが、非常に良い言葉だと思う。基礎研究の重要性については、委員会全体では比較的考え方が一致していて、議論を挟む余地はあまりないような気もする。ここではデータを添付し、主に予算に着目されて書かれている。特に予算を使わなくてもできることがあるのかもしれない面があるものの、やはり予算がないとうまく進まない面が多々あると思う。
 施策としてつくり上げるためには、応用研究と基礎研究のバランスとが重要だということがかなり書かれているので、これから予算の増加があまり見込めないのであれば、可能かどうかはわからないが、どちらかを削ってどちらかに移すなど、具体策を少し練っておくとこの提言が生きてくると思う。

【谷口委員】
 私どもは、総合科学技術会議や文部科学省、あるいは科学技術・学術審議会に問題提起をしたということで、病人に例えると、かなり大手術が必要であるが応急措置を講じないと瀕死の状態になってしまう、それでは困るのでまずはそれを防ぐために、という意味合いで提言をしたつもりである。批判はいろいろあるかもしれないが、それをきっかけに、これではいけないという議論が活発になれば良いということなので、広く喚起を促すことが重要であることから具体的な要求といった内容を避けたところもある。学術会議にはもちろん資源配分を決定する権限はないが、科学者コミュニティーとして発信できる唯一の存在として学術会議がある。その重みをしっかり受けとめて、訴える力のある学術会議でなくてはいけないと思う。引き続き努力をしていきたい。

(2)科学研究費補助金の在り方について

 事務局より、資料4「科学研究費補助金の現状について」及び資料5「科学研究費補助金の必要な規模について」の説明を行い、意見交換を行った。

【井上(一)委員】
 例えばアメリカでは、NIHやNASAなど、日本の科研費に対応するのはNSFだと思うが、そういうところが国家的事業という観点を持ちながら、基盤的研究費をグラントという形で配分している。日本はそこが非常に弱いのではないかと思う。例えば、私どもの宇宙の分野で言うと、NASAが競争的資金として最終的に衛星をつくるところまでの資金を投入していて、NSFと同額の競争的資金を配分している。科研費に限らず、もう少し広く基盤を考えたほうが、これからのことを考えるときには柔軟な考え方ができるのではないかと思う。

【中西部会長代理】
 アメリカでは、DOEやNIHがほとんどの競争的資金を抱えていて、NSFの予算額は十数%程度と少ないが言われるようにNSFの予算は日本の科研費に相当すると思う。先ほどの学術会議の提言は文部科学省と総合科学技術会議へ向けた提言となっているが、日本でも、厚生労働省など他の省庁もかなりの研究予算を持っている。文部科学省の中で、科研費としてどういうことができるかということを考えることは重要だが、他の省庁についてはどのように考えていくのか。ここでは科研費のあり方や規模について議論しているので、他の省庁まで巻き込むことは難しいとは思う。

【山口学術研究助成課長】
 科学技術基本計画の中では、科研費を含めた競争的資金という形で記述されている。これから先、基本計画そのものを議論する中では、そういう形で議論の対象になっていくと思うが、この研究費部会では、やはり主に科研費について議論していただくのではないかと思い、科研費を中心に資料を用意している。

【中西部会長代理】
 今、井上委員が言われたことはもっともであるが、まず科研費について、ここの部会の中では考えるということで議論していただければと思う。

【鈴村委員】
 資料の中で、科研費による成果展開事例の具体的な例示は、ほぼ全て自然科学のものである。自然科学と比較して、人文学・社会科学の場合には圧倒的に研究費の規模が小さいこともあって、成果の姿が目立たないことも背景の一つではないかと思う。とはいえ、日本の学術の代表的な成果としては、研究費の規模は小なりといえども、人文学・社会科学の成果にも的確な目配りがなされるべきではないか。日本の学術の全範囲を代表する日本学術会議の立場からいえば、この点は気になるところである。
 また、科研費の推移に関する調査結果は国立大学に限られた数字になっているが、圧倒的に数が多い私立大学に対する科研費の配分についても比較可能な調査結果を示さないと、偏りをふくむことになるのではないか。

【山口学術研究助成課長】
 基本計画が、国民にきちんと説明できる形で、できる限り目に見える形でまとめられれば良いのではないかということで、資料4の5ページを作成している。その際も、1つには科研費の成果がきちんと書けるもの、人文社会の部分でもわかりやすいものということで選んでいるが、ほかにも、例えば情報処理に関して言うと、著作権法の技術は、研究がないと進まないという意見が学術分科会等でも出ている。あるいは、法学の面でも、おそらく環境の問題や消費者行政の問題など、いろいろな面で社会に大きく役立っているところはあるのではないかと思う。そういう面で、こういう形で人文社会についてもできる限り拾っていければと思っているが、今回は時間的に限られていたので、科研費の中で拾えるものでわかりやすいものを図にさせていただいた。

【鈴村委員】
 ここでいう基礎研究は、本来は人文学・社会科学にも妥当する考え方である。社会に関する科学であることから、往々にして人文学・社会科学は社会への応用科学と理解されがちだが、人文学・社会科学も科学である以上、そこには当然のことながら基礎科学があることを忘れるべきではないと思う。

【中西部会長代理】
 先ほどの提言にもあるように、基礎研究全体は目に見えにくいものもあって、それをきちんと基盤的経費で育てていくべきである。もちろん出口が見えたものも大切ではあるが、全体像として人文社会も含めた基礎研究がどのように社会に貢献してきたかをきちんと目に見えるようにまとめないと、もっと額を増やしてほしいといったときに一般の人に納得してもらいにくい面もあるのではないかと思う。もちろん、提言の中にもいろいろな分野の融合をということが書いてあり、それはこれからの方向だとも思われるので、そちらにも気を配ったデータが出せる可能性があるのではないか。
 2番目であるが、国立大学以外の科研費の受給状況のデータはあるか。

【山口学術研究助成課長】
 これまでの実績として、国立大学や私立大学、独法あるいは民間企業など、それぞれの配分状況のデータはあるので、次回、用意させていただきたい。資料5の2ページ、3ページのグラフは、科研費全体をとらえて、それに応募できる研究者という形で全部を一括しているので、その観点での区分はないが、今までの実績としてどのように動いてきかというデータは用意できると思う。

【家委員】
 資料5の4ページについて、科研費の獲得実績の順位として、私立大学をここに含めると、10位ぐらいに早慶など有力な私立大学が入ってくると思うが、どうして国立大学だけに限定したのか。特に意図がないのであれば、私立大学も含めたほうが余計な憶測を呼ばないと思う。

【山下企画室長】
 このグラフは、本日の参考資料3の16ページと17ページにある、国立大学法人等の競争的資金の配分と米国連邦政府配分の上位100大学のデータを用いて試算を行っている。その結果として国立大学の上位何校というとらえ方になっている。ここに私立大学等を含めて試算をし直すことは可能なので、次回、用意したいと思う。

【家委員】
 結果は変わらないと思うが、私立大学を排除しているような印象を持たれると資料としても良くないと思う。
 井上先生が指摘された他省庁の競争的資金という問題であるが、資料5の1ページ目に競争的資金の年次変化のグラフがある。注にあるように、2005年度に急に黄色い部分が増えている。これは予算が若干増えたということもあると思うが、急激にこれだけ増えたわけではなく、それまで競争的資金とは言っていなかった主に他省庁の研究費が、競争的資金という看板を掲げたという部分がかなりあるのではないかと思う。それによって、希望的観測としては競争的資金の審査体制が科研費までとは行かなくても、それに準ずるぐらいオープンなものになっていただきたいと思っているが、必ずしもそうではないものでも競争的資金と称しているものがあるのではないかと思う。

【中西部会長代理】
 ここでは他省庁のことまではあまり議論できないと思うが、今、言われたことの裏を返せば、科研費は競争的資金として非常にフェアに配分されてきたと皆が思っていることにもなると思うので、この選抜方法、評価方法が他省庁にも広がれば良いということではないかと思う。

【深見委員】
 科研費を考える上で、資料5の4ページのように、これだけ幾つかの大学に集中しているという事実は随分指摘されている問題だと思うが、やはり層を厚くするという意味から考えれば、幾つかの大学ではなく、極端な集中を避けて多くの大学に配分する方法を考えていかなければいけないと思う。どうしてこういう集中が起こるかというと、基盤研究でも小さいものから大きいものまであって、それ以上のいろいろな予算も幾つかある中で、普通に競争していくと大きな予算を幾つかの大学が獲得することになる。その結果としてこういう予算配分の偏りが起こってくると理解している。
 これからの科研費の問題を考える上では、大きなものと小さなものという規模をもう少し考えていかなければいけない。私は生物系であるが、目的を持ったものではなく、基盤的な自由な発想に基づくものを考えると、予算の配分として、基盤研究の年間100万円、200万円といった小さな規模のものではとてもやっていけない現状がある。億単位は要らないが、やはりそれなりの研究ができる500万円から二、三千万円という中規模のものを考えていくことが、これからの基礎研究を伸ばす上で一番重要なことではないか。文部科学省の予算というのは、基盤研究などで言うと、ほんとうにフェアできちんとやっていると思うが、審査方法も中規模のものをベースにしてきちんとオープンにしていく。そして、e-radなどにより他省庁との垣根も徐々になくなってくるので、そういうものを活用して省庁間の垣根をなるべく低くしつつ、透明な競争的資金の在り方をきちんと考えていくことが重要ではないかと思う。

【中西部会長代理】
 今の最初のご発言は、資料5の4ページのところで、小さな規模を件数当たりにするとどうなるのかということもあわせて考慮する必要がある、ということを含んでいるのではないかと思う。また科研費は、基盤的経費が徐々に少なくなっていく中で、重要さが増しているということでもある。

【三宅委員】
 資料4の最初で、55歳から64歳の採択率が落ちているという話について感じたことだが、人間を相手にした研究、特に人間の発達や、人間の知識自体がどのように増えていくのかという学習のプロセスの研究、あるいは人間が社会の中で新しく出てきた技術をどう取り込んでいくのかという種類の研究は、どうしても時間がかかってしまう。それらの研究テーマが研究者コミュニティの中で意識され始めた時に先導して取り掛かった若手が、初回は新鮮味のあるテーマとしてある程度の規模の研究資金を得られたとしても、その後いろいろな人たちがいろいろな形で研究して新しいコミュニティが出来上がり始め、ある程度のムーブメントが起き、同じテーマで何度も繰り返し長い時間をかけてやっていく価値がでてきたところで、似たようなテーマの延長では大型の科研費が取りにくいという現状がある。先ほどから、科研費の審査は一定の基準を満たしてフェアだという話はあると思うが、時間のかかる人間や社会の変化を若いころからずっと追ってきた50代半ばから60代半ばの研究者が、より新規性のあるテーマと比較して今までと全く同じことをやるのであればもう必要ないのではないかという判断をされる可能性があるのではないか。本当はもっと基礎的にやらなければいけないことについて、無理をして新しいところとの融合を進めてみるというようなことがあるとすれば、もったいない話であろうし、この年代の人たちが世界と伍して進めていけるはずの研究が、コーディネーションのために忙しくなって手が薄くなるというようなことが起きているのかもしれない。やはりどういうスパンで、どういうタイプの研究をサポートしていけば良いのかということも、規模の話とは別に独立して考えていかなければ、日本の人文社会の研究が科研費を獲得して世界的に強くなっていくということが起きないのではないか。

【中西部会長代理】
 50代、60代の人に対する考え方、それから人文社会は時間がかかって、非常に目に見えにくいというものをどのようにビジブルにするかということもあわせて重要な問題だと思う。科研費は軸を一つにして、基盤研究を中心にするということは大体コンセンサスが得られてきている。一つの評価方法で、例えば若い人や50代、60代の人へ配慮するということが、実際に審査を行う側にきちんと伝わることも大切だと思う。

【金田委員】
 人文社会は目に見えにくいもので、長期的に研究が必要となるという指摘をいただいて、まさにそのとおりでありがたいと思う。ただ、そういうところも科研費が非常に重要な役割を果たしているが、長期的な研究もプロジェクト的な研究も全部科研費に担わせるということ自体が難しいのではないか。運営費交付金が減っているので、組織的に継続すべき基礎的な部分の問題が大きくなっている。それを科研費でどう考えるかという発想になるのは少しおかしい。組織そのもののきちんとした継続的な維持と、科研費の役割を両輪のように考えないで、片一方だけに考え方を寄せると問題が大きくなるのではないかと思う。

【中西部会長代理】
 科研費だけではなく基盤的経費もあわせて考えていく。おそらく、デュアルサポートという言葉は、運営費交付金が1%ずつ減っていくので、それを補うために出てきた言葉ではないかと思われるが、最初からきちんと両方を考えて設計すべきだということである。

【水野委員】
 今の金田先生のご発言と基本的には同じことであるが、やはりきめ細かく考えなければならないと思う。文科系の場合には、例えばしっかりした図書館があって、そこにアクセスができれば相当程度のことはできるので、むしろ運営や新しい書類を書いて科研費をもらうよりも時間をもらえるほうがうれしいという専門もたくさんある。一方で、どうしても経費を使って現場へ行って発掘しないとわからない考古学のような領域もある。また、理科系の場合、一定以下の金額では実験機具を動かす電気代だけで終わってしまって、本当の実験をするだけのお金がないこともある。それから、ライフサイエンスの分野では、文科系の図書館に当たるような基本的なインフラがないために、それを競争的資金で、危うく維持しているというようなことも聞く。
 安定的に資金を確保しなければいけない領域と、プラスアルファの研究が必要なのでその部分だけ競争的資金でという領域の区別がつかないまま、運営費交付金が減っている中で、すべてが科研費のほうへ流れ込んできていている。その中には、本来は運営費交付金がカバーするべき内容もあるだろう。本当はそういうところをきめ細かく設計して、必要なところに必要なものを安定的にサポートするということを考えていかなければいけない。枠の決まった競争的資金内部での選択だけにピアレビューを用いるのではなく、そのような制度設計と運営にも科学者の専門的な判断が働くような改革は出来ないものだろうか。科研費と運営費交付金によるデュアルサポートはまさに必要ではあるが、その2つの分け方だけではややきめが粗い気がする。

【中西部会長代理】
 デュアルサポートの分け方が粗いということ。安定的に要るものをきちんと確保するということ。あるいは、図書館やいろいろな基盤、人的なことも含めて、学術会議の提言にもあるように、必ずしも研究者だけではなく、サポートする環境がきちんと整うべきだということだと思う。

【谷口委員】
 競争的資金というと確かに聞こえはいいし、重要な側面であることは否めないが、結果的に特定の大学に研究費が集中しているというのは大変悩ましい問題だと思う。アメリカのNIHでは、先ほど井上先生の話にあったように、いろいろな工夫を凝らして、特定の大学だけに行かないようになっている、などという話も聞く。政策的な側面があるかどうかは分からないし、あまり政策的な側面を出すと、また新たな問題を提起することになってしまうので、その辺は難しいところである。ただ、このままいくと、一見、短期的には特定の大学だけが発展するとも見えるが、長期的に見ると特定の大学の存立そのものも危なくなる。自分で自分の首を締めかねないような状況が生み出されるのではないかと心配している。それから、総論的なことであるが、文部科学省の方々に教えていただきたい。科研費の各論を議論すれば問題点もあるが、民主党が政権をとって、霞が関の改革だと言っている。これは正直言って、研究者側としては拍手を送らないでもない。しかし、下手に改革をされると大変困るところもあると思う。昨今、官僚が何とかというような言葉がしきりにひとり走りしているが、一人一人の官僚の方々が一生懸命努力して頑張っているのを、十把一からげに何とかというのはいかがなものかと大変強い懸念を持っている。一方で、見方をかえれば、今まで総合科学技術会議があり、族議員がいたかどうかは分からないが、研究費の配分がそこで重点化されて一方的に決まってしまい、各省庁が縦割りに研究費の申請を行って必死に研究費を確保する、という状況もあったのではないか。そういう状況において、ある意味では今がチャンスととらえられなくもない。今の政権がどういう方向にかじを切るかによって、かなり在り方も異なってくると思うが、総合科学技術会議はこれからどうなるのか。あるいは、文部科学省の科研費はどういう状況になるのか、差し支えない範囲でお知らせいただくと、当面、何を議論して何をしなければいけないかということがわかってくるのではないかという気がする。

【倉持大臣官房審議官】
 大変重要な指摘をいただいた。民主党政権になって、政府の見解は大臣、政務官、副大臣が出されるので、事実関係を説明したいと思う。谷口先生の指摘のとおり、民主党は、マニフェスト等で研究力の強化について、運営費交付金の問題もインデックス等で触れて、その辺の強化を言っている。政権になって3週間強が経過しているが、この間、補正予算や来年度予算要求の見直しなど、休日返上で作業を行っている中で、大臣、副大臣、政務官といろいろ意見交換をしている状況である。
 ただ、残念ながら、マニフェストをどう実現するか、そのための財源をどうつくるかが今のところ議論の主体であって、体系的な政策をどうするかというところにはまだ来ていない。例えば、総合科学技術会議について、国家科学技術戦略本部にするというような構想もあるが、それが具体的に動いているわけではないので、この時点でこういう方向に動いているという状況にはないと思う。しかし、そういうことを掲げているし、いずれにしても科学技術や人づくりの重要性については政策の基本に置いているので、補正予算と来年度要求の議論を超えながら、徐々にやっていくことになると思う。
 やや誤解があるのは、各省はそれぞれの省の設置目的に応じて政策意図があって、技術開発等を進めている。その点、文部科学省は科学の振興そのものが根本にあるので、広範な分野をどのように盛り立てていくか、世界を見ながらどうするかということが議論できるが、各省はそれぞれの、鉱工業なら鉱工業、農業なら農業といった角度で、現下の政策課題にどのようにこたえるか。そこから来る技術課題をどう片づけるかというところで、科学技術に関する政策を打ち出している。そこら辺の連携については、まさに総合科学技術会議が連携施策その他もやって、それぞれねらいが異なるところでも、連携することによって効果を上げようということでやってきた。
 それについては、おそらくこれからいろいろな議論になると思うが、内閣府に置かれている機能の設定の仕方によって、より踏み込んだ施策展開ができるのか、あるいは現状のように各省の上に位置づけられて、それをリードするような形で各省を束ねる役として、新しい総合科学技術会議の体制ができるのか、大きく変わってくることになると思う。いずれにしても、我々は我々のミッションの中から、こういうことが大事だということを発信していく必要があると思うので、引き続きこういうところでの議論を集約しながら施策につなげていく努力をしていきたい。
 従って、端的に言えば、谷口先生からお問い合わせのあった件については、まだ具体的にこうなっていると言えるところまでは来ていない。ただ、科学技術や人づくりが重要であるということをいろいろなところでうたっているので、それに向けて、我々としては理解が深まるように努力していきたいという状況である。

【谷口委員】
 競争的資金と言われると、途端に今までそんなことを言っていなかった各省庁が、いろいろなものを急に競争的資金と言い出した、という経緯もあると思う。総合科学技術会議の評価専門調査会の委員を務めていたときに、ちょうどその時期だったので目の当たりにしていたが、他省庁の競争的資金にはかなり問題も抱えたものもあったように記憶している。せっかく政権がかわったので、科学の根幹は文部科学省が担うといって、競争的資金と称している予算を文部科学省に移す、なども考えられるのではないか。いずれにせよ、文部科学省こそが科学の将来を担うという位置付けでやってくれることを期待したい。

【中西部会長代理】
 少しつけ加えると、総合科学技術会議に基本政策専門調査会ができ、第4期基本計画に向けての議論を始めている。そこに菅代表代行と津村政務官が来られた。総合科学技術会議をどうしていくのかはやりながらでないとわからないということであったが、今までと違うことは、津村政務官が最後までいた。一人一人の話を聞いて判断していこうということであるが、まだ先が読めない。

【佐藤委員】
 我々の立ち位置がどこにあるのかがはっきりしないと議論しにくいのは確かである。ただ、研究費部会は、科研費の在り方を真ん中に据えて、それをまず追求をして、それに伴っていろいろ配慮すべきことについて打ち出していくというやり方をしてきたので、プラクティカルなことではあるが、我々は科研費の議論をまじめにするしか今のところやりようがないのではないかと思う。
 それにしても、アウトプットは昔からアピールする方法が難しいので、各論でこんなものがあるというものをずっと出してきているが、外国の事例などを見ても、アウトプットについて客観的な研究のようなものはないのだろうか。あまり発展はしていないが、教育経済学や文化経済学というものも一応はある。研究費のあり方についての研究が世界のどこを見ても全くないというのは不思議に思うが、何か気がついたら教えていただきたい。

【中西部会長代理】
 どのように基礎研究が役立ってきたかというアウトプットのことだと思う。厳しい財政状況の中でも科研費は少しずつ伸びているので、伸びる前と後でどのように全体像が変わったか、外国での示し方でもあればということだと思うが、非常に難しいと思う。

【鈴村委員】
 先ほどの説明のなかで、文部科学省は科学の振興のためにあると言われたが、この会議は科学技術・学術審議会であり、学術分科会である。同じ審議会の別の分科会には、学術の基本問題検討委員会もある。科学は学術の重要なパートであるが、各々の科の学である科学を総合した包括的なコンセプトとして、学術は基本的な位置付けを受ける必要があるのではないか。実際、私などは科学研究費ではなく学術研究費と言ってほしいとすら考えている。言葉の問題などと矮小化せずに、日本のサイエンス・ポリシーのなかでの人文学・社会科学の位置付けにも関わる重要な問題として、慎重に考えていただきたいと思う。

【中西部会長代理】
 すべての学問の基礎を扱うということで、学術を扱うということを再確認させていただければと思う。

【井上(一)委員】
 問題意識として思うのは、世界のトップレベルをねらっていくというときに、サイエンスの目的をしっかり持つことと同時に、新しいことをやれる道具立てをつくっていくことが非常に重要である。ただ、目的をはっきりさせないと道具立てをつくっていけないので、なかなかそういう部分がうまく動かない。おそらく、人文社会でも同じような面があると思うが、そういうときにある程度の枠組みをはっきりさせて、先ほどNIHとかNASAとか申し上げたように、その中にそういうものが入っているという形がつくれると、新しい勝負ができるのではないか。例えば、文部科学省の中でも研究振興局だ何だと言っていないで、学術という意味で広くとらえて、ある種の新しい工夫をできないか。

【中西部会長代理】
 学術を基盤にして一本化できないか、目的をはっきりして、枠組みをきちんともう一度つくり直すことも大切ではないかというご発言である。
 ただ、私見を述べさせていただくと、研究者自身も研究費ありきの研究をしているという面は否めないと思う。こういう研究をしたいからということで申請しているはずであるが、採択されると慌しく研究費が交付されて、1年以内に使わなくてはいけない、あるいは何年間かで使う。研究というのは、ほんとうはお金の要らない時期と要る時期があると思うので、要らない間は小規模にして、必要になったときにもらえるようにする。研究自体を認めて、研究費は個人に行くのではなく基金などに行く。極端な話かもしれないが、こういう機器を使いたいとか、人を雇いたいというときにそれに沿って予算執行ができるようにする。そうすると、10年や20年という長いスパンの研究ができるのではないか。ただ、これは評価が非常に大変だと思う。
 総合科学技術会議に基礎研究強化に向けた長期方策検討ワーキングというものがある。基礎研究をどのように育てるかを議論しているが、そこでは、若い人と研究機関のマッチングファンドを考えている。国家公務員試験のように例えることができるが、これからテニュアをもらうのにふさわしい人を認定して、その人をお金つきで採用したいという研究機関に雇ってもらう。受け入れた研究機関はテニュアトラックも考える。つまり、人を信用して、研究をきちんとサポートするというような改革もあるのではないかという気がする。

【鈴木委員】
 確かに科研費を増やすときに、採択率30%を目標にすれば幾ら必要になるかという数字は出てくる。それから、アウトプットをいかにして表に出すかという議論が出てくるが、インプットである審査も同時に議論しなければいけない。これから規模が大きくなって総枠が大きくなると、大型のものがもっと増えるかもしれない、中型のものも増えるかもしれない。そのときに、ほんとうに今のような審査で良いのか。例えば、新学術領域研究や特別推進研究の審査は、最終的に1テーマあたり15分か20分のプレゼンテーションと20分の質疑応答で、合計30分、40分で決まる。数億円という規模の研究がわずか数十分で決まるというのは、少し恐ろしい感じがする。やはりそれなりの金額のものは、専門家を集めて相当慎重にとことん議論すべきである。
 もう一つ、日本にはないが、良いものに対しては審査の過程でどんどん意見を交換して、その課題を育てるということがあっても良い。基盤研究A、Sぐらいまでは今のままで良いと思うが、それ以上の高額のものに関しては、例えば半年、あるいは1年をかけて、多様な審査方法できちんと審査をすることが本来望ましい。それが良いアウトプットを出す努力の一つだと思う。必ずしも今のまま予算を増やすのではなく、インプット、アウトプットに関していろいろな改革を加えながら増額を目指すという姿勢が大事ではないか。

【中西部会長代理】
 インプットももう少し考えていったほうが良いのではないかということである。

【谷口委員】
 科研費を充実させてほしいというのは研究者コミュニティーの一致した考えだと思う。それをもう少しうまくアピールして、将来、科研費が我が国の中心的な位置づけとしてさらに発展していく基盤となるようなことをしっかりとしながら、ここしばらくは増額と言いながらごくわずかずつしか増えていないので、これを2倍にすれば良いのか1.5倍が良いのかはよくわからないが、基礎科学を強化するべきだとか、いろいろな委員会の提言を背景にして、新しい政権に科研費の増額がいかに重要であるかということをきっちり訴えていくことが重要である。
 論文の引用回数などを見ても、やはり科研費によるものは貢献が非常に大きいというデータもある。同時に、他を批判するわけではないが、科研費の審査というのは、競争的資金の中では一番公平にされているところがあると思う。そういうものをしっかりアピールして、予算を伸ばしていくことが重要なのではないかと思うし、総合科学技術会議のワーキングの提言なども含めて、そういう流れになりつつあるという気もする。
 ただ一方で、将来、科研費をNIHのように、科学技術の大半は科研費が担うということになることが果たして我が国に適切かどうかということも、少し議論、検討をしておいたほうが良い気がする。つまり、研究費を増やせば増やすほど、それなりの義務が生じて、政治的な干渉などが入る可能性もある。それだけの投資をしているのだから、これだけの数値目標を設定しろというようなことになると、本末転倒になる可能性もなくはないので、科研費を学術研究費として大きく膨らませるという中に潜んでいる問題点として、そういうことも認識しておく必要がある。

【中西部会長代理】
 科研費をもっと増やすうまいアピールの仕方が基本であるが、科研費の役割が拡がり過ぎることに対する問題点もきちんと考えたほうが良いということである。科研費の対象は基礎研究、つまり派手なものではなくても、日々の努力や発想の積み重ねを基本とする研究でもあるので、アピールの仕方は非常に難しいところがあると思うが、うまくアピールして、これだからもっと増やしてほしいということを考えていければと思う。
 これも私見であるが、今、科研費は年度を越えて使えるようになっているが、基金化という方法をもっと活用できればもう少し自由に使用できるのではないかという希望もある。これだけ研究者にサポートされている科研費なので、より良くするためにこういう形にしたいとか、こういう点を注意すべきだというようなことはあるか。
 それから、アピールの仕方も比較的受け身な気がする。最近、一般の人に向けたシンポジウムが増えているような気がするが、受け身ではなくもっと能動的に、社会還元ということを研究者は常に考えていくべきだと思う。

【鈴村委員】
 先ほど鈴木先生が指摘されたインプットの審査の重要性は、まことに的確なご指摘だと思う。それだけに、これだけ競争的資金が増え、審査の仕組みの重要性が強調されているときに、競争的資金の審査の仕組みそのものが研究を阻害しているというあからさまな批判が、重要大学の責任ある研究者によって表明されていることは、いささか気がかりである。審査疲れという現象が審査を受ける側にも審査の責任を負う側にも顕著になりつつあることは事実だが、それに対する正しい応答は、日本の研究助成制度の健全な機能を持続的に発揮できるように、審査制度の適切な設計と実装に経験と叡智を傾けることであるべきであって、審査制度に対する呪詛であってはならないと思う。

【中西部会長代理】
 審査の仕組み自身を、良いところは守りつつきちんと議論して価値をアピールしていく。今の仕組みは、科研費は比較的フェアにできているが、研究者自身がコミットして初めて成り立つような審査だということを、きちんとアピールしていこうということである。今まで科研費は、大型のものは文部科学省で審査していたが、最近、JSPSに移ったこともあるので、仕組みをきちんと議論してアピールしていければと思う。

【佐藤委員】
 参考までだが、私が日本学術振興会にいたときに日本学術振興会の国際評価を行った。そのときの結論の一番大きなことは、要するに、審査の方式としていろいろこまかな問題はあってもピアレビューにまさる方法はないということである。それが今の科研費の審査の一番基本になっている考え方だと思うので、そこをきちんと押さえておけば良いのではないかという気がする。

【深見委員】
 競争することが悪いことではないということは、皆さんよくわかっているが、ここ何年か競争という名のもとに、いろいろな事務作業が増えたということもやはり事実だと思う。応募にかかる時間や、評価に関する資料をつくる時間など、いろいろなことが本当に多くなったということも事実であって、そのために、私たち大学人は本来の研究や教育に割ける時間が減っていると思う。それだから競争的なことをやめたらいいと言っているわけではなく、先ほどから審査の仕方も問題になっているが、基本的に一番良いことは、研究の期間を少し長めに設定して継続的な安定的な研究資金があげられることなので、今の科研費全体の規模が小さ過ぎるのだと思う。あまり細かい、小さいものをいろいろとつくるのではなく、5年ぐらいをめどにもう少し中規模のものをきちんと設計していくことが研究の安定性や、応募などにかかる仕事量の減少からも必要だと思う。
 それから、一番言いたいことは一極集中のことである。大きな予算にすればするほど、普通に競争すれば必ず大きな大学が勝つ。市場経済と同じで、大きなところは大きく膨らむようにできている。やはり中規模の予算を増やせば、地方の中核大学にそういう資金が回るようになると思う。社会の現象と同じで大学も地方の疲弊が起こっていると思うが、地方の活性化が日本の科学でも重要である。一極集中でずっと維持するのではなく、地方から良い仕事を出すことが日本の科学の活発化にすごく重要なのだと思う。そういう意味で、中規模の予算をきちんと地方にも分けて、地方からももっと良い仕事を出して、全体として日本の科学が進展する。そういう予算づくり、審査づくりをしていくべきだと強く感じている。

【中西部会長代理】
 地方という言葉があるが、地方、中央ということではなく、この研究の拠点がここにある、それがたまたま東京にあるとか、他県にあるなど、そのような形になっていくべきかと思われる。予算の規模の意見も出たが、科研費について考える場でもあるので、実際の科研費の額についてはどうか。30%ずつ採択率があるとすると、1,000億円ぐらい増やさなければいけないとか、OECDに比べて日本はかなり少ないとか、当然、額について増やしてほしいという議論も出ると思うが、何か意見はあるか。

【小林委員】
 今、深見先生が言われたことに、私も基本的に賛成である。現在の科研費、基盤研究(C)の規模は小さ過ぎると思う。いろいろな問題が関係していて、期間を3年から5年に伸ばしたこともあって、単純に言えば1年当たりの金額が下がっているという問題を含んでいる。それを回復するのも一つの視点であるが、もう少し広く考えれば、個々の科研費の規模を全体的に大きくして、基盤的経費の肩がわり的な性格はなるべく担わなくてもよいようにするというのが理想ではないか。それを実現するためには、基盤的経費がきちんと充実していなければ成り立たないので、そこはセットで考えるべき課題ではないかと思う。とりあえず基盤研究(C)の規模を一定程度大きくすることが緊急の課題ではないかという気がする。

【中西部会長代理】
 基盤研究(C)の額が少な過ぎるのではないかということである。これはもらっている人数が非常に多く、特に若い人を中心に非常に重要な研究費となっていると思う。

【山口学術研究助成課長】
 一つだけご意見承りたいのは、資料5の関係でこれからの投資額の問題である。この先、第4期基本計画の議論へ入っていくときに、おそらく期間中の所要額の話になっていくのではないかということで、資料5を用意させていただいた。全体的に、どのくらいの規模が必要になるのかという議論がこれから出てくるのではないか、これに関していろいろな観点で、このようにとらえるとこのぐらいの規模になるという資料を幾つか用意させていただいたので、これについてご意見を少しいただければ事務局としては大変ありがたい。

【金田委員】
 参考資料1の4ページによると、研究者1人当たりの研究費は主要国中で第3位というデータが示されていて、一方、OECDの順位では比率が非常に低いということも示されている。それから、同じ参考資料1の2ページの伸び率も非常に低いと示されているが、相互関係が理解できないところがあるので簡単に教えていただきたい。

【山下企画室長】
 参考資料1の2ページについては、主要国の科学技術関係予算ということで、おそらく基礎研究と応用開発研究などをひっくるめた科学技術関係予算の伸びが、2000年度と比較して2007年度はどうなっているかというデータだと思う。その中で、日本については伸びてはいるものの、その伸びがその他主要国に比べれば少し低い。それから、4ページのところは、主要国における研究者1人当たりの研究費ということで、研究者と定義されているものに対する、年間の研究費がどういう状況になっているのか。その中で、日本は赤丸のFTEというフルタイム換算ではこの程度の金額になっているということを、下の欄のデータにより分析している資料である。

【家委員】
 日本学術会議で、先ほどから出ているフラスカティーマニュアルに関連したことであるが、このあたりの研究活動のデータについて少し勉強している。
 今の4ページの日本の統計の場合、研究という活動を極めて広くとらえていて、研究者の数は日本に80万人いることになっている。これは、企業で開発等を行っている方も含まれている数字である。それから、ここの研究費は、私の誤解がなければ、人件費等もすべて含まれていて、研究開発関係のすべてのお金を単純に先ほど言った研究者人口で割ったものである。これは各国で統計のとり方が非常にまちまちで、こういうものの比較は非常に危険だと声を大にして言っているところである。細かく言うといろいろあるがそういうことであって、我々が今、議論しているのは学術研究の実態を反映したものではないと言っていいと思う。

【中西部会長代理】
 全体像について、採択率が30%ということは、同じ確率であれば3年待てば、殆どの人がもらえるということになるのだろうか。

【家委員】
 資料5の4ページ目、諸外国に比べて、大学のセカンドグループに配分が必ずしも行き渡っていないという資料は非常に良いデータで、これで所要額を算出するというのは一つの方法だと思う。こういうこともやっていただければ良いと思うのは、先ほど件数という話が出ていたが、採択件数によるランキングでやるとどうなるか。もう一つ、トップ5ぐらいで研究費が多いのは、特別推進研究や特定領域研究など、大型のものを獲得している比率が高いからだと思う。これを基盤研究(A、B、C)、若手研究(A、B)ぐらいに限定してランキングをつくるとどういうことになるか、トライしていただくと良いのではないかと思う。

【中西部会長代理】
 4ページの図がもう少し詳細にわかればということであるが、これはかなり皆にインパクトを与える図かと思う。

【家委員】
 これは東大でノーマライズしているので、東大の値をどう算定するかによって結果が随分違ってくる。

【山口学術研究助成課長】
 追加で少し説明したいと思うが、今回配布している資料5の2ページは、基本的に採択率30%は必要ということを総合科学技術会議が一度まとめているのと、間接経費30%を措置するべきだということが今までの閣議決定等でもあるので、それを最低限満たすためにはどのぐらい要るかということを試算したものである。
 それから、資料5の4ページは、前回の資料で、アメリカ等に比べて東大に集中しているということであったので、アメリカの配り方にするためにはどのぐらいの太さが要るのか、余裕が要るのかということで試算している。従って、これはアメリカの連邦政府からの資金配分のカーブに沿った配り方をしている。これから調べてみたいと思うが、件数が同じように出てくるか。場合によっては出てこないかもしれないので、その際は資金配分のカーブに沿ってということになるかもしれないが、少し基礎データを調べてみたいと思う。

【中西部会長代理】
 これも非常にインパクトのある試算になるかと思われる。

【鈴木委員】
 インパクトはあるが、これは非情なグラフでもある。前に大学で働いていたとき、何とか東大に追いつけと言われていたが、教員の数が3分の1しかいないのに追いつけるわけがない。アメリカがこうだからといっても、どのぐらいの教員がいるかという構成人数のデータもないと教員にとっては非常に大変なグラフである。教員の数が半分しかいないのに勝てなんてまず無理である。24時間しかないのに、200%勝つなんてそんなことできるわけがない。構成員の数も加味してアメリカと比べないと、必ずしもこれだけでは議論できないと思う。

【中西部会長代理】
 それに関係するものとして資料4の4ページのところに、国立大学における研究費等の状況が書かれている。教員1人当たりの研究費が非常に減っているということや、大学院生1人当たりにかけられる教育研究経費がどれくらいかというデータもあるので、参考にしていただければとも思う。

【谷口委員】
 資料5の5ページに、科研費の所要額6,675億円と書かれていて、基本的には大変すばらしいと思う。このレベルに達するかどうかはともかくとして、倍増などいろいろ議論はあると思うが、科研費をこれくらいにするとどういう効果があるか、そういうアピールの仕方もあるのではないかと思う。そうすることによって、大学がこうなるとか、若い人がもっと伸びるとか、ノーベル賞受賞者が増えるとか、いろいろなアピールの仕方が検討できるのではないか。

【中西部会長代理】
 2000年から2009年にかけても科研費の額は増えてきてはいるので、全体的にどのように有効に使われて、有効な成果が出てきたかという実績もアピールすると、一般の人など、これなら倍にしようという気がわいてくるのではないかと思う。今、言われたことは非常に大切なことだと思う。

(3)その他

 事務局から、次回の研究費部会は10月23日(金曜日)10時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

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研究振興局長学術研究助成課

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