第5期研究費部会(第7回) 議事録

1.日時

平成21年7月16日(木曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 有川部会長、小林委員、佐藤委員、田代委員、中西委員、深見委員、三宅委員、井上(明)委員、井上(一)委員、岡田委員、甲斐委員、金田委員、鈴村委員、谷口委員、水野委員、宮坂委員

文部科学省

 倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)科学研究費補助金の在り方について

 事務局より、資料2-1「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(これまでの審議のまとめ)(案)」、資料2-2「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(これまでの審議のまとめ)(案)【見え消し版】」及び資料3「若手研究における回数制限と経過措置について(検討メモ)」について説明を行った後、審議を行った。

【甲斐委員】
 前回、順番について意見があったと思う。科研費は基盤研究が大事なので、基盤研究を前に持ってきて若手研究を後にしたらどうか、という意見が今回の修正に反映されていないようだがその点について伺いたい。

【山口学術研究助成課長】
 前回そのような指摘をいただいて、そのときに説明したことは、この研究費部会での審議事項として、1ページの1から書いてあるような順番で審議を重ねてきたので、その順番に沿って整理をしたということである。
 それに対して、特段おかしいというような意見はいただかなかったと思うので、その形で用意しているが、基盤研究が第一だということであれば順番は変更可能である。

【甲斐委員】
 他の方の意見も伺いたいと思うが、科研費にとって常に基盤研究が一番大事だという姿勢をあらわすということ、基盤研究(C)を充実してほしいということが皆さんの一番の気持ちだと思うので、審議の順番はそうだとしても、基盤研究(C)のことを最初に訴えて、それから若手研究について触れるという意見を伺ったときに、なるほどと思った。もし皆様の意見を聞いた上で、まだそのような意見があるのであれば、私はそちらのほうが良いのではないかと思う。

【有川部会長】
 確かにそういう面はあるが、今回の当面講ずべき措置ということからすると、主として若手研究を扱っているので、具体的な提案をしているところを先にするという考え方は自然ではないかと思う。
 これは当面の措置ということで、今後、もう少し本格的に議論するので、そのときに、甲斐先生が言われたように、基盤研究、特に基盤研究(C)についてしっかり位置づけるというようなことができると思う。まとめとしては、具体的な措置などが先に来たほうが見る側からすると都合が良いと思う。次回は基盤研究を中心にまとめていくことにする。
 5ページの円グラフのすぐ下に、「最近、優秀な学生の中で」というところがあって、そこは良いと思うが、「研究者以外の道を選択する者が増え」という書き方がしてある。これは結構なことだが、言わずもがなでもあり、ポスドクや博士のキャリアパスなどいろいろなことが言われている状況もあるので、ここは削除しても良いのではないか。

【谷口委員】
 各論的なことだが、最初の「はじめに」のところに修正箇所がたくさん見えるが、この箇所についてお伺いしたい。まず科研費とは何かということから始まって、だから若手を支援するという流れがあるが、初めのところにある「我が国の大学等において行われる研究活動の基盤は、研究者の自由な発想に基づく研究にある」ということは確かであっても、自由な発想に基づく研究とともに多様性に富んだ研究を保障するということが重要ではないか。つまり、3行ぐらい後の新しいパラグラフに、科研費は、競争的資金の中でも研究者の自由な発想に基づく研究を支援する唯一の資金であるとあるが、これは誤解を招きかねないところがある。科研費以外にも自由な発想に基づく研究というのはたくさんあって、あるテーマが設定されても、研究者がそこに自由な発想で応募するシステムはあるので、例えば、研究者の自由な発想に基づいた幅広いすべての分野にわたる学術研究を支援する唯一の資金であるというような文言にしたほうが誤解を招かないのではないか。そういう形にすれば、競争的資金の中に自由な発想に基づく研究資金が他にあっても、これはもう少し多様性に富んだものを保障するという書きぶりになるのではないか。
 それに関連して、3ページ目に、「若手研究者支援の必要性等について」というところがある。前回も議論に出たように、若手研究者を科研費で支援することの意義は何かということを補完するためにも、「我が国が、将来にわたって・・・、優秀な若手研究者の確保と育成は、学術研究にとって大きな問題であると同時に、我が国全体にとっても重大な問題である。」というところに、例えば、政策的に重要な問題であるなどというようなことを書いてはどうか。つまり、若手を支援するという政策を実行するためには科研費でこういうシステムをつくることが必要だというのは、そういう国の政策に基づいて行っていることなので、そのような文言を入れたほうがわかりやすいのではないか。

【有川部会長】
 幾つかの点を指摘していただいた。「はじめに」の第1段落1行目に、自由な発想だけではなく、多様性をということであるが、自由な発想に基づく研究が多様性を醸成していくといったような議論だったと思う。
 それから、2つ目の科研費のところは確かに微妙な表現になっていて、少し修正したほうが良いかもしれないが、これは科研費の定義に相当するところで、科研費のハンドブックなどにも書いてある。研究者の自由な発想に基づく研究を支援するということがうたわれている唯一の競争的資金だという意味だと思う。

【甲斐委員】
 一番上には書いてないかもしれないが、いろいろな省庁が出している研究費でも、文言を読むと自由な発想ということが書いてあるものはあるような気がする。だから、「唯一の」と書くと、誤解を生む気がするので、先ほど谷口先生が言われたように、すべての学術分野に対して出すと言っている競争的資金は他にはないと思うので、自由な発想に基づいたすべての分野の学術研究を支援する唯一の資金である、としても良いのではないか。

【有川部会長】
 それでは、研究者の自由な発想に基づくすべての学術研究を支援する、この「唯一の」というところは少し問題があるかもしれないので、ここは「重要な資金である」というような感じでどうか。それから、多様性については、最初のパラグラフのところで多様性ということにも言及するということでどうか。具体的な修文についてはお任せいただければと思う。

【小林委員】
 8ページの最初の○で、最初の段落の終わりあたりに、「競争するだけの実力が身に付いていない者も存在する」と書いてあるが、図6のグラフを見て、特に若手に力がついていないというよりは、38歳以上の採択率が低いということであって、このように結論するのも少し言い過ぎのような気がするので、そこの表現はなくても良いのではないか。基盤研究の枠が少ないのが第一の原因なので、それは述べるとして、そこから、繰り返し受けていたことから移行が困難だというようにつなげても良いのではないか。

【鈴村委員】
 科研費全体の位置づけに関する文章が議論されているが、若手研究に関する書きぶりを改めて読んでみると、非常にざらざらした思いを持つ。5ページ目の下、囲みの最初の○に、「科研費における若手研究については、若手研究者が独立して一人で思う存分研究することを可能にする助成金」とある。そうすると、そのような助成金を受けなければ独立できない、一人で思う存分研究できないというイメージがあって、そこから救出するための制度だと読めるが、私はそうではないと思う。若手研究者のための特定の支援のあり方というのは、その下の「目的の第一は」以下のところで書いてあって、現状を前提として、それを改善するための措置としてこういうことを書くと大いに誤解を招く危険性がある。当然、皆さん、自分たちの研究分野を背景にして言われているので、コミュニケーションがなかなか難しいが、私が熟知している研究分野に関して言うと、若手研究者だから従属して研究しなければいけないということはないし、研究分野そのものの中での多様性が増していく中で、大学としての研究のエリアを多様化するという貢献を期待する以上は、むしろ思う存分研究してもらうことで、若手研究者が大学としてカバーする研究領域をできるだけ広範囲に及ぶようにしているので、これは非常にざらざらした印象を受ける。どのくらい伝達できるかわからないが、意見として申し上げておかなければいけないと思った。
 その下の「目的の第一」以下に既に若手研究者のことについて書いてあるが、ここも本当は気になる。「研究活動を開始したばかりの若手研究者は、科研費の審査において評価されるような実績や経験を有しているとは限らない」とある。そうすると、これは一体どのような資格に応じて、研究費を助成するのか。若いということだけで機械的に与えるととらえられかねない表現ではないか。その辺のところで、若手研究者の冒頭の2つのパラグラフはもう少し修文していただきたい。とりわけ最初の部分については言わずもがなではないかというのが私の意見である。

【有川部会長】
 5ページの若手研究者支援のあり方についての最初の○の最初のパラグラフはなくても良いのではないかという指摘である。確かに、「独立して一人で思う存分」というようなところは気になるところである。それから、「研究活動を開始したばかり」というところは良いと思うが、「審査において評価されるような実績や経験を有しているとは限らない」というところは、そういう者をどのように公平に評価しているかということにもつながってくるし、みんな同じなのであってみんなを支援しなければいけないというようなことにもつながると思う。後ろのほうは、少し修文したほうが良いと思うが、最初のほうはどうか。

【谷口委員】
 これは、この部会のまとめとして、いきなり各論で、若手の支援をこうして、若手研究(S)などをこうすれば日本の若手研究者は育つという感じの書きぶりで書くと、誤解を生みかねないと懸念する。やはり、政策があるということを明確に述べたほうがよいのではないか。若手がなぜ育っていないか、という背景にある大きな理由はかなり明確だということは、皆さんご存じだと思う。このように研究費をサポートすることはもちろん有効であるが、これだけでこの問題が解決するわけではないことは、皆さん認識されていると思う。あまりにも問題が大きいので、このようなことを政策的にしっかりやっていかないと荒地になってしまうという書きぶりがあって、だからこそ各論的なこととはいえ、若手の育成に関する政策が重要、という書きぶりが適切ではないかと感じる。

【有川部会長】
 これまで7回議論してきて、この段階で1つのまとめを出して報告する必要があると思っている。いろいろ具体的な提言もしているが、○などで書いてあることは、これまでいただいた意見を要約したもので、こういった議論の結果、四角で囲んだような措置や今後の対応などが出てきている。その根拠の発言をまとめたと思っていただきたい。

【井上(明)委員】
 考え方として、若手の関係で、図1から5まで、ポストドクターや大学教員の年齢別の構成の分布図などがあるが、今、大学院重点化がされて、ドクターの人数は絶対的に増えてきている。一方では、国として、産業界に通じる人材育成ということを文部科学省、経済産業省と連携して非常に活発に行っている。かなりの多様性のある人材がその政策で育成されているが、ここでは、研究者やドクターを終えても、研究者にならないとだめだというような感じがある。科研費をとるというだけではなく、産業界に行って活躍してまた戻ってくるというようなこともあるだろうし、この統計のとり方も、おそらく大学院重点化がされて数が増えていると思うので、少々ポストドクターが増えても、産業界にも行っているし大学にもきているというような、多様性のある人材育成が総合的に行われている中での科研費の位置づけやポストドクターの位置づけがわかる図があると印象が異なるのではないかと思う。

【佐藤委員】
 5ページの最初の○で、さきほど部会長から、これは削除してはどうかという提案があったが、今のような意見もあるし、優秀な研究者を確保したいというのが若手研究者養成の1つの重要な目標だと思うので、2行目の初めの、「研究者以外の道を選択する者が増え」という後に、「博士課程修了者が多様な形で社会に受け入れられるのは歓迎することではあるが、一方」というような形で今の意見も生かしてはどうか。

【有川部会長】
 ここは、もともとそういう趣旨のことだったと思う。今の5ページのところは、佐藤委員が言われたように修正することにしたい。

【井上(一)委員】
 図6の、採択件数が37歳から38歳で減っているという問題は、若手研究の採択率の設定の問題だと考えていたが、今回、そこのところはどのような方向へ持っていこうとしているのか。人数を絞っても、採択率が高ければ結局同じことが起こると思う。応募数が減るので少し縮むと思うが、そのような考え方をしようとしているのか。それとも、採択件数をフラットにするような設計をしようとしているのか。そこのところを伺いたい。

【山口学術研究助成課長】
 9ページの図6は、以前審議の場でデータとして示したところである。平成20年度まで37歳以下が若手研究の対象になっていたが、37歳までは基盤研究にも応募できるものの、かなりの部分の応募の対象が若手研究になっていて、38歳を境にして基盤研究へ移れない人がかなり出てくる。その要因として、一つには、基盤研究(A・B・C)の枠が非常に厳しいということがあるのだと思う。もう一つとしては、若手研究だけを継続してとり続けて最後に基盤研究へ乗り切れなくなってしまうというような行動パターンがあるのではないかということ、若手研究と基盤研究を総合的にリンクして考えることが今まで十分ではなかった面もあるのではないかということがあると思う。したがって、若手研究と基盤研究の関係を整理して、例えば最終年度前年度応募や回数制限といった話がこれまで出てきていると思う。
 若手研究あるいは基盤研究について採択率のアップを図るということは、今回の予算でも要求していきたいと思っているが、図6の議論としては、継続して若手研究をとり続けるという形で本当に良いのだろうかということがあったので、このようにグラフの形にして示させていただいている。

【井上(一)委員】
 若手研究の採択率は基盤の平均に比べて高かったというデータだったと思うが、その考え方は保持するということを言われたのか。考え方の問題というよりも、制度設計の問題だと思う。

【山口学術研究助成課長】
 基本的に、基盤研究も若手研究も重要なことで、今の状況は採択率が十分ではないと思っているので、採択率のアップは当然両方ともやっていかなければならないと思っているが、総合的に見た場合に、基盤研究の枠が非常に狭過ぎるということはあると思うので、基盤研究(A・B・C)、特に基盤研究(C)の拡充は重点的に取り組んでいかなければならないのではないかと思っている。その観点で、採択率のアップというのは当然の前提として、それは若手研究に限らず、若手研究も基盤研究も両方取り組んでいかなければならないと思う。

【井上(一)委員】
 私が理解してきた議論は、基盤研究を充実するために、若手研究の採択率を基盤研究へそろえていくというような考え方だと思っていたが、そうではないということか。

【有川部会長】
 それは当然、両方やっていかなければいけないと思う。一つには、若手研究を抑えるというよりも、基盤研究を上げるということがある。37歳と38歳でこれだけ研究者人口が違っているとはとても考えられないので、そういう意味で問題だと言うために使える図だと思う。

【水野委員】
 先ほどの鈴村先生の意見を受けての部会長のまとめとも重なるが、5ページの一番下のパラグラフの○について、最初の「一人で思う存分」ということは誤解を招くという鈴村先生の意見については、確かに、特に人文・社会系ではそういうことはないと思うので、配慮していただいても構わないと思う。ただ2番目のほうは、私のほうで事前に事務局へ意見を送って、それを受ける形で事務局において修文していただいたところがあって、私の思いを少し話させていただこうと思う。
 産業界にも受け入れられやすい、研究資金をたくさん獲得できるような研究と比べると、科研費はできるだけ公的な観点から、通常では弱者になってしまうような研究にも力を注がなくてはならないと考える。基盤研究では、産業界の支援を受けることができないような基礎的な研究であるが、日本の研究全体にとって重要な研究に重点的に注ぐということを考えなくてはならないだろう。若手もそういう意味では構造的な弱者である。つまり、競争的資金で既に実績や評価を受けられるようなものを持っていれば、そちらで勝てるが、まだ何もないような若い人たちを支援する必要がある。そもそもそういう若手をきちんと評価すること自体がかなり難しいことである。基盤的経費で幅広く支援するということが諸状況で難しくなってきたので、こういう競争的資金制度に流れ込んできているということは重々承知しているが、若い人たちを育てるという意味では、選ばずに幅広く支援するほうが効率的であったかもしれないと思うぐらいである。実績のない若手研究者にいろいろ支援をすることによって、将来芽が出る人や将来芽が出る研究を幅広く支援するということが、このような公的な資金による経済的な援助という意味では重要ではないかと考えて、そのような修文をお願いした。
 この領域では、むしろ競争的なところをもう少し抑える形で支援する必要があると思う。そして、先ほどの意見と結びつけると、若手支援はやはりずっと必要であり続ける領域の支援で、今回、実質的には基盤研究(C)が足りないという大問題の前でその財源というニュアンスでも挙がってきた側面もあるが、若手支援は若手支援で続けなければならないし、基盤研究はもちろん増やさなければならないというトーンで書くほうが良い。したがって、若手研究の中で唯一表に出して正当化できる理由は、繰り返しそれを受けている人がいるために、先ほどの公平に若い人たちに機会を与えるという若手支援の精神に反するような事態になっているということではないかと思う。

【有川部会長】
 先ほどの議論を私も少しフォローしたが、気になるところとして、「若手研究者は、科研費の審査において」となっているが、ここを「基盤研究の審査において」とすると良いのではないか。要するに、若手研究がなければ、今のシステムでは基盤研究ということになるが、いきなり基盤研究へ行ってもそこで評価される実績などがない場合がある。このため科研費と言ってしまっているのが問題なので、そこを「基盤研究の審査において」とすれば、水野先生が言われたようなことを全部反映できるのではないかと思う。
 それから、最初の鈴村先生から表現がざらざらしていると言われたところは、例えば「若手研究者の独立を促す研究を助成する」というようなことではどうか。もともとそういう面があったと思うが、人文・社会系は若手といっても最初から独立しているという考え方はある。一方で、チームで研究をやることがいかに大事かということも言われている。これは実験系ではチームでやらないととても1人ではできないし、理論系でも大きなチームをつくってやらないと対応できないというところはある。ただ、チームでやることと、マインドとして独立しているということとは異なる。独立した人がチームをつくってやるということを言っているのだと思う。

【田代委員】
 1ページの最初の「はじめに」のところについて、これは非常に重要なところなので少し申し上げておきたいが、段落や改行が多過ぎる感じがする。特に3つ目の改行のところ、「科学研究費補助金」とあって、その下に「研究者の自由な発想」、その下にもう一度、「研究者の自由な発想」と同じ言葉が2つ並ぶ。あまり並ぶのはよくないので、「こうした」や「この」などをつけてはどうか。また、この部分は主語がないので少し工夫していただく。あるいは、その上の「科学研究費補助金は」というところは競争的資金のことを言っているが、逆に、「このうち、競争的資金の中でも、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する重要な資金が科研費である」と変えてみてはどうか。前のほうの文章は、基盤的経費と競争的資金との2本立ての支援体制があって、そのうち科研費は競争的資金だと言いたいのだと思う。

【有川部会長】
 ここはもう少しスムーズな文章に修文させていただきたいと思う。

【谷口委員】
 5ページの赤字で書かれたところで「研究活動を開始したばかりの若手研究者は、科研費の審査において評価されるような実績や経験を有しているとは限らない」という文章について、この文章は削除したほうが良いのではないかという気がする。これは言わずもがなであるが、これがないといけないのか。つまり、よいスタートを切れるように支援することが大切であって、若手研究者が十分に力を蓄えていない段階でも支援すれば、十分将来の斬新な研究につながっていくということを言えばそれでいいことであって、力がないということを無理やりここで言うということには抵抗を覚える。

【有川部会長】
 これは水野先生の意見が反映されているが。

【水野委員】
 これを削っていただいても、私の趣旨は通じると思う。

【深見委員】
 8ページの一番下の最後の○に「前述したように、若手研究に繰り返し応募し、採択されている者が相当数存在しているが」という文章がある。これを読むと、繰り返し今まで受けてきたことが悪いかのような印象がある。実際は実力があって科研費をもらってきているのであって、繰り返しもらっていることは決して悪いことではないと思うし、次のページの、「他の者が支援を受けられないという事態は望ましいことではない」というとき、他の者というのは科研費をもらっていない人であって、もらっている人にとっては、成果がある人を差し置いてまで成果が出ていない人に配分するのかという印象がある。人がいろいろな解釈をするということを考えると、その後の「回数制限」からをそのまま入れることに関しては良いとしても、「前述したように」から「回数制限」の前までは省いたほうが、変な誤解を招くことを防ぐという意味では良いのではないか。

【有川部会長】
 その前に、できるだけ多くの若手研究者に対して機会を確保するということが書いてあるので、ここは削除しても、最初の表現の中に入っていると考えられる。
 それでは、若手研究者の個別の研究種目の改革について、各論の部分であるが、ここは先ほど資料3で説明があったように、案の1、案の2というのを示していただいている。回数制限を設けるが、これを22年度からにするか、23年度からにするか。22年度からの場合には、過渡期に対する十分な配慮をしている。23年度からの場合は周知の期間が1年間あるので経過措置等はない。まず資料3を検討して、それをもとに全体の議論をしていただいたほうが良いと思う。回数制限が主なことで、今言ったように、案の1でまとめたらどうかと思っているが、もう一つ、案の2というのも考えられる。これについて、意見をいただきたい。
 それでは、特に意見がないようなので、最後まで1回議論して、時間があればまた議論していただくことにするが、この段階では、回数制限については案の1ということでまとめることにしたいと思う。
 次に、3つ目の今後の基盤研究のあり方について、4番目の科研費による研究成果の公開のあり方について、5のその他、それから新たに追加された6の終わりにということについて意見があればお願いしたい。

【岡田委員】
 自由な発想に基づく研究が重要なことはもちろん言うまでもなく、この点については5のその他にもはっきり書かれていて非常に良いと思う。一方、国民や納税者への説明として、自由な発想でやった研究に対する評価、特に自己評価が非常に重要だと思う。これは権利と義務、あるいは責任と義務のような裏表の関係と言えるものであり、自己評価の必要性をその他のところに書くと良いのではないか。科研費の応募書類には、これまで受けてきた科研費について書く欄がある。しかしながら、そこには、自由な発想に基づいて研究提案をして認められたものが、何年か研究した後の評価としてどうだったのかということを自分できちんと判断して書くという意味では十分でない印象を持っている。
 若手研究の制度が変わって前年度応募が導入されることになったことに、私はもちろん賛成であるが、前年度応募は、本来の研究期間が終わる前に次の計画を応募することになる。現在の申請書にはそれまでの研究でやろうとしてきた内容についての経過と、その研究が終わる前に新たな研究提案を出すことについての説明を書くところがあり、その欄には、新たな発想が生まれたためというようなことを書くと思うが、既に進んでいる研究を中止して次のものに動くというときには、今までの研究はどう終えるのかという自己評価をきちんと書く欄が必要であって、新たな研究提案を採択するかどうかの選考をするときにも、この点をきちんと見るべきではないかと思う。この問題は、納税者に対する説明という点でも必要だと思うので、書いていただく必要があるのではないかと思う。

【有川部会長】
 4のところにそのようなことを書けばよいか。確かに科研費の応募では、これまでどのようなことをやってきたかという、自分の研究に対する自己評価、ポジティブな評価のほうが多いのだろうが、第一回目は別として、二回目以降については、自分の研究に対して、科研費があってこういうことができたというようなことを、あるいはやってきたがここはまだ十分ではなかったというようなことなども含めて、自己評価をしておくことが大事なポイントだと思う。

【井上(明)委員】
 今の指摘はもっともであるが、一部の科研費には、例えば基盤研究(S)などは中間評価や事後評価のコメントを書くようになっているのではないか。したがって、全く行っていないという文章ではなく、それもやりつつ、さらにというような書きぶりだと思う。

【有川部会長】
 納税者に対する説明責任という観点から、既に得られた科研費によって、どのような成果が上がったかということをきちんと自己評価して、それをどこかで表現する必要があるのではないかということである。非常に大事な指摘だと思う。4のあたりが良いのではないかと思うので、表現を工夫してみたいと思う。

【中西部会長代理】
 基本的には科研費で助成を受けた研究の成果に対しては、日本国民がだれでも読めるようなフリーのデータベースがあるべきだと思う。たとえ外国の雑誌に載せても、その結果をどこのだれでもただで読めるようなデータとして残しておく仕組みが必要である。アメリカではNIHと出版社とで随分いろいろな議論があったようであるが、結果を知ることは納税者の権利だと思う。これからの議論だと思うが、少し考えていただけたらと思う。

【有川部会長】
 23ページの下のほうであるが、オープンアクセスや機関リポジトリというようなところがある。NIHやほかの国でも、そういう方向へ誘導しているあるいは義務づけているところがある。これは研究環境基盤部会のもとにある学術情報基盤作業部会でも議論しているところであるが、基本的にはだれでもアクセスできるようにしておくことが大事だと思う。そこまで踏み込んで書いておくかどうかということだと思う。
 例えば、第3期の科学技術基本計画の中でも、そのようなことをすることが「期待される」とか、「望ましい」などという表現になっているが、その後、NIHのような動きもあるので、我が国においても、もう少し強く踏み込んだ表現にしておいたほうが良いのではないかと思う。これはかなり大変なことになると思うが、既に他の国において先行例はある。このことは研究成果の公表の場所やジャーナルというようなものを規制するということではなく、必ずアクセスできるところに置いておくということである。
 ここは少し時間をかけて議論したほうが良いと思うし、先ほどの作業部会との関係もあるので、23ページに書いてある程度で良いのではないか。

【鈴村委員】
 例えばジャーナルアーティクルなどの場合は、これを公開して自由にアクセス可能にするというのは比較的やりやすいと思うが、言われることの中には、例えば研究成果公開促進費の一部である学術図書などもある。こういうものの中には、非常に巨大な本で画像データがたくさん含まれていて印刷しても市場に置く場所がないようなものや、発行部数は助成を受けてもせいぜい数百部でそれだけ出れば多いほうというようなものも含まれていて、予算的には相当大きな部分を占めている。こういうものを公開して、無料でアクセスできるような形の具体的な姿としてはどういうことを念頭に置けば良いか、少しはっきり理解させていただければありがたいと思う。現状でも国会図書館などには必ず置くことになるので、その意味で公開制という制度はあると、あえて言えば言えるかもしれないが、もう少し広い意味でのアクセスをここでは書かれているような気がするので、その点について理解をさせていただきたい。

【有川部会長】
 ここで言っているのは、主に学術論文のことだと思うが、学術図書も一方で、デジタル化できるものはどんどんしていくというような動きもある。それから、画像や写真なども質的にも量的にも十分扱える時代にはなっている。

【中西部会長代理】
 私が申し上げたのは論文のことであるが、今、鈴村先生が言われたことに関連して、学術図書は出版助成の対象となるが、これで出版される本を安価で購入できるようなところまでサポートをしていただければ理想的である。一般の人がなるべくアクセスしやすいような、買えるような形にしていただければと思う。

【鈴村委員】
 今の安価でということだが、私が念頭に置いていたものは、助成を受けてやっと出版ができるというところまでは持っていけても、それでも定価5万円というようなもので、それをだれでもアクセスできるように、市場性を持つようにというのはやはり無理なものがカテゴリーとして出ていると考えていただいたほうが良いのではないかと思う。
 それから、ここに書かれていることの中で言うと、これは予算拡充を図るべきであるというような結論になっている。その理由として、1のところで、この支援で出版されている図書は非常に質が高いという指摘があると書いてあるが、これは何かの学術賞を受けたものが、これだけこの学術図書で出版したものの中に含まれているということで、相当長い期間にわたってピックアップされたものだったと思う。たしか鈴木委員が指摘していたが、これをもって、このような助成システム全体を本当に正当化できるのかという心配もあったと思う。だから、これを基礎にして予算の拡充を図るべきであるというところにどうして結びつけられるのか。なぜそういうことを言うかというと、予算は微増するとしても配分の問題になると思う。その中でいうと、データベースは研究者の自主性に委ねることを考える。学術定期刊行物は、機関リポジトリなどの新しい技術でやる。それから学術図書を増やすと書かれている。それだけのことがどうやって根拠づけられるかということについて、まだ十分納得できていないところがある。
 それから、それとのかかわりで言うと、雑誌の継続的な出版をサポートしていく理由は多分幾つかあって、必ずしも人文社会系だけではなく、自然科学系でもそのような声が強かった記憶がある。それだけに、よほど事情の激変があって、例えば、自然科学系の方々は機関リポジトリを使えれば要求を取り下げると言われているのかを確かめたい。

【有川部会長】
 データベースについては、23ページの下から2つ目のところに書いてあるが、昨今の計算資源のことなどを考えると、これがスタートした頃から比べて格段に進んできている。むしろこのくらいのレベルであれば個人でやっていける。ただ、例えば、生命科学系で統合データベースなどの極めて大規模で分散して集めるようなものをどうするかという大きな問題はあるが、ここで言っているようなことに関しては、今やろうと思えばやれる段階にあるのではないか。情報技術等の進展に伴って、重点が移っていくところはきちんと移さなければいけない。一方で、学術図書については、非常に評価が高いということがあるが、予算は減っている。それではまずいので拡充を図るべきであるということを言っているので、ある種の方向は出している。それから、オープンアクセスのことは、先ほど中西先生が言われたように、最近の情報科学技術の発展をきちんと見据えた形での表現になっていると思う。例えば、人文社会系にとって不都合であるとか、あるいは自然科学系でも学術定期刊行物に関してどうすべきだというようなことについては、今回は特に踏み込んでいないので、ここのところはあまり問題ないのではないかと思う。

【宮坂委員】
 学術定期刊行物について、以前の議論でも、特定の学会だけが継続して長い間、雑誌を刊行するために使っていて、それに対してオープンアクセスや機関リポジトリという話が出てきている。そこにはかなりのお金がかかっているので、紙ベースで特定のものだけを支援しなければいけないかどうかということは議論の分かれるところだと思う。
 そのときに、24ページの最初の○のところに「その一方で、電子媒体に対する不安から、紙などの旧媒体によるシステムをある程度維持すべきであるとの意見もあった」ということが出てきている。これを言ってしまうと少し問題で、それは電子媒体でだれもがアクセスできる、国民のだれもが見られるという形にするためには、やはり紙ベースでは見られない。この1番目の○の部分については、そういう意見があるのは事実であるが、あえてここに書かなければいけないことかどうかというのは疑問である。

【金田委員】
 私はどちらかというと、紙媒体を大事にすべきだということをこの部会で申し上げている。電子媒体で誰でも見ることができるという形が保証されているのは大切なことであるが、それですべてカバーできるものではない。それから、電子媒体の場合と紙媒体の従来のパターンとの、研究成果公開促進費の性格を考えるべきであるが、やはり成果には熟成度の違いとオープンにすべきものの質の違いというものがあって、例えばわかりやすく言うと、先ほど何万円の本ということを言われたが、何万円であっても出版すべきものや、いろいろ著作権の問題などがあって電子媒体にすぐには対応できないもの、あるいは処理に関して一定の熟成度がないと活字にできないものなど、いろいろな種類のものがあるので、これらは簡単にどちらかに誘導してしまうことはできないのではないかと申し上げた。

【宮坂委員】
 主として学術定期刊行物のことを言っている。熟成度と言われるが、熟成度が高くても低くても、どちらにしても活字になってみんなが見るので、紙だろうと電子媒体だろうと大して変わりはないと思う。

【有川部会長】
 今のような問題はあるが、その下にあるように、学術情報基盤作業部会で議論を深めていくつもりでいる。金田先生が言われたような意見もきちんと満たされるようなやり方があると思っている。印刷物へのこだわりを強く持っている先生は当然いるので、そこはきちんと両方とも可能なようにする。そのようなことがあるので、このような意見もあったと書いていても差し支えないと思う。
 それでは全体について意見を伺いたい。先ほど回数制限について、経過措置も含めて、案の1ということで特に異論はなかったが、資料3の四角の中の赤で波線が引いてあるところで、若手研究の応募年齢の範囲内でということにすると39歳までということになるが、そうすると、この経過措置が相当期間続いてしまうことになるので、その下に平成25年度公募までということがあるように、この経過措置の期間をきちんと明示しておくか、あるいは特に明示しなくても良いかという説明だったと思う。

【山口学術研究助成課長】
 基本的に今回の案については、一番手厚いのが資料3の案の1ではないかということでこの案をつくらせていただいているが、確かに経過措置の期間がかかるという面のデメリットはある。例えば、1回だけ受けた人がもう一回応募できるが、これもやはり39歳までは応募できるので、10年という単位でそのようなことが起こり得る。ただ、いずれその部分で線は引けるのではないかということで、この案文の中では、平成25年度の公募までということは入れていない。いろいろ考えて、若手研究(S)を除けば、39歳までの勝負ではないかということでこのような形にしているが、このやり方は案の2でも、あるいは年度を限定しても可能だと思うので、議論していただければと思う。

【小林委員】
 個人的にはどこかにリミットを設けたほうが良いと思う。公募要領などに平成22年度までに受けた人は応募できるということを書き続けることになるので、平成25年程度までということをあらかじめ言っておくほうが良い。

【有川部会長】
 若手研究を、もう一回は応募しても良いということを言って、応募年齢の範囲内ということにして制限をしたつもりであったが、よく考えると、そのような極端なケースも入ってしまい、これがあまり続くのもどうかということで、平成25年度公募までというような切り方をしたほうが良いのではないかという意見である。
 案の2のほうは、1年間周知期間を置いて、平成23年度からはそのようなことは考えないということなので、その間をとったような形で、例えば平成25年度までということを明示しておくということでどうか。

【金田委員】
 先ほど、部会長は案の1でまとめたと思うが、制度を改めるとすれば趣旨をできるだけ早く実施したほうが良いので、案の2のようなすっきりした形のほうが比較的早く移行できるのではないか。

【有川部会長】
 案の2の一番の弱点は、周知期間の1年間が空白期間になって、新ルールが1年間適用できないという問題である。改めるのは早いほうが良いということからすると、この1年間はもったいないと思う。

【甲斐委員】
 案の1と案の2はやはり大きな違いがあると思う。私は案の1で良いと思う。案の2では、1年間の周知期間中は継続期間で応募できない人がいて、そういう人たちにはもうチャンスはないと言っている。これは周知期間といいつつ周知期間ではなく、出た瞬間にあなたたちには応募する資格がないと言っていることなので公平性を欠くと思う。たまたま周知期間のときに終了した人たちだけが応募できることになるので、案の1のほうがずっと優しいと思う。

【有川部会長】
 案の1できちんと期限を切るということでよいか。

【深見委員】
 12ページの今後の方針の「バランスに留意しつつ」というところであるが、回数制限2回について若い人に聞いたところ、2年で応募しているというので2回ということに対して本当に良いかということはまだ疑問である。27歳でドクターを出て、2年ずつ2回受けると、31歳で終わってしまうので、これはかなり大きな変化ではないかという不安があるし、かなり大きなインパクトを与えると思う。だからといって、回数制限をもっと増やせということを言っているわけではなく、以前の議論の中に、基盤研究に若手に対する優遇措置を入れるかどうかというようなことがあったと思うので、例えば今後の方針として、バランスに留意しつつというようなことに加えて、基盤研究に何らかの優遇措置の仕方を検討するというようなことを入れてはどうか。要するに、今後の方針として、そのような可能性についても検討していくということを入れ込む必要がないかということである。

【有川部会長】
 12ページの今後の方針のところで、基盤研究(C)との関係について、バランスということが書いてあるが、以前、基盤研究の中に若手枠を設定するというような議論をしたことがある。そのようなことを少し書いておくかということがあると思う。若手は9ページの図6のような形で、37歳と38歳の間にギャップがあるので、今回、若手研究を2回までと制限することによって、このギャップをどう基盤研究(A・B・C)に取り込んでいくかということが重要である。今後、全体の基盤研究を中心にした議論をしていく必要がある。

【井上(一)委員】
 今回この若手研究の話は、まずそれだけが来年度に向けて動き出して、その結果、若手研究のトータルの予算が減って、その部分は基盤研究に回されると思ってよいのか。そうであるなら基盤研究の議論を一緒にしなければいけない。そこがよくわからない。

【山口学術研究助成課長】
 予算の方針はまだ決まっていないが、概算要求は8月31日までに決まって出ていく。今までの議論は、例えば、若手研究を削って基盤研究を充実させるというよりは、両方とも重要であるということであると理解しているので、いずれそれが実るかどうかは別として、若手研究は若手研究、基盤研究は基盤研究ということで、増額をお願いする方向で検討するのだと思う。特に若手研究について申し上げると、今回の当面の措置として明確に変わるのは、回数制限を入れる、あるいは前年度応募を入れるというような形での手直しの部分はあるが、例えば、若手研究(A)を廃止して、基盤研究(A)や(B)に統合するといった研究種目の統合のような話は引き続き検討するという形になっていて、研究種目自体の構造は変わらないので、基本的に予算の面では同じように増額を図っていくという方向で検討させていただきたいと思う。

【井上(一)委員】
 例えば表1に、これまで応募してきた方の中で複数回、2回以上の方が3分の1ほどいるが、単純に考えればその分は減るので、トータルの採択率は、同じ予算の中で配分するのでその分は増えるということか。

【有川部会長】
 回数制限をしても、まだ1回も採択されていない人が入ってくる。

【井上(一)委員】
 そこは変えないということであれば、図6は、単純に件数では言えないとしても、トータルの配分という意味では基本的にはあまり変わらないということか。

【有川部会長】
 そう考えて良いと思う。

【甲斐委員】
 若手研究(S)の15ページであるが、若手研究(A)や若手研究(B)の当面の措置を読むと、若手研究から速やかに基盤研究へシフトするということが常にうたわれているが、若手研究(S)に関しての当面の措置は「基盤研究や特別推進研究などに円滑に移行」と、ここに特別推進研究が入っている。これは削除したほうが良いのではないかと思う。その点線の上に、若手研究(S)をとった人は規模からいって、基盤研究(S)や特別推進研究となることが予想されるがと書いてあるが、それも良いことだとは思えない。つまり、若手研究(S)は、若手研究を継続してきて、そのまま特別推進研究へいくことを促すためにつくった制度ではなく、独立を促すためということで、あくまでも基盤研究が大事であると言ってきたのに、若手研究で育って若手研究(S)をとった人は特別推進研究にいくよう誘導するように読まれかねないと思う。上のほうのその次のパラグラフで若手研究支援という本来の目的からいえば、今後、基盤研究(A)などとのバランスについても検討していくことが必要であるといっていて、この点線の中にあえて特別推進研究を突然入れることはないので、基盤研究に円滑に移行できるよう支援するというようにしていただきたいと思う。
 それから、その下の点線の今後の方針の4.であるが、下から3行目に「若手研究者をどのように扱っていくのかといった点についても検討していくことが必要である」とある。どのように扱っていくのかといった点というのは、日本語としても趣旨としても不適当ではないかと思う。その前の文で「それが、研究者の意識や行動、特に若手研究者の意識や行動にどのような影響を与えるのか」などとあるので、その後の「若手研究者をどのように扱っていくのかといった点」は削除して、「などについても検討していくことが必要である」としてしまうか、あるいは若手育成支援については、科学研究費全般の中で包括的に検討していくことが必要であるというように修文していただきたい。少なくとも、「どのように扱っていくのか」は何を言っているかわからないので削除したほうが良いと思う。

【有川部会長】
 終わりのほうは言われるとおりだと思う。これは「どのような影響を与えるかなどについても検討していくことが必要である」くらいで良いのではないかと思う。
 それから最初のほうは、当面の措置のところに「基盤研究や特別推進研究」とあるが、「や特別推進研究」をとって、「基盤研究に円滑に移行できるように支援する」ということで良いのではないかということだが、これでよいか。これのもとになっている文章が15ページの上から2行目にあるが、基盤研究や特別推進研究となることが予想されるといって、1つの方向を誘導しているような形になっている。

【甲斐委員】
 特別推進研究は日本の科研費の顔だと思う。基盤研究(S)がこれまでの図の中のように基盤研究(A・B・C)の上にあると位置づけているのであれば良いが、今後、基盤研究(S)を特別推進研究と一緒に考えていくというように一段上げた議論になったので、基盤研究(S)も特別推進研究も日本のトップ水準の研究者の集団と位置づけられると思う。そうすると、若手研究(S)からそこに移行していくというような形でとらえられるのはよくないと思う。若手研究(S)はあくまで独立した研究者となるように支援するということであって、これまで基盤研究(A)が普通の研究者にとって一番大きくて一番良い研究費と思っていたような感があると思うが、それがすごく薄まってしまうのは問題だと思う。

【有川部会長】
 当面の措置のところは、特別推進研究を削除したいと思う。

【小林委員】
 11ページの当面の措置の1.の前年度応募について、この文章の意味は、基盤研究へ応募するときだけ可能という意味で良いか。13ページでは明確にそういう表現になっている。

【山口学術研究助成課長】
 私どもの趣旨としては、最終年度前年度応募というのが、例えば若手研究(B)から若手研究(A)へ移行できるようにというような議論ではなく、基盤研究へ応募できるようにするという議論であったと思うので、基本的に基盤研究へ円滑に移行できるようにするためということで書いているつもりである。例えば、13ページの当面の措置の2.では、「基盤研究への最終年度前年度応募の重複制限緩和を認める」といった形で書いていて、その観点で11ページの当面の措置のところにも書こうと思ったが、この部分には「基盤研究へ応募できる道を開き」というのがもともとあったので、もう一度、重ねて書かなくても良いのではないかということで書くのを控えた。ここは明確に基盤研究への重複制限を認めるというようにしたほうが明らかではあると思うが、重なりを少し懸念して書かなかったというだけである。

【有川部会長】
 これは正確を期していただくということで良いと思う。

【中西部会長代理】
 これからのことということで少しだけこれからの議論の種にしていただければと思うが、若手とそれ以外の区別は何かということをもう少し議論していただきたいと思う。どうも若手という言葉がひとり歩きしているような気がしているが、本当は立場の違いではないかと思う。どのように助成するかについては、やはり内容が一番の問題である。良いものを掘り起こして助成していくときに、同じものでも老練な人はうまく書いたり、実績をもとにいろいろ展開できたりするのに対して、若い人はそれに比べてハンディがあるということであればよくわかる。科研費のあるべき論を議論していけば、自然と若手の問題というのは出てくるのではないかと思うので、これから議論をお願いしたい。
 それから、基盤研究は科研費の中核という位置づけは非常に判りやすくまた良いことだと思うが、研究者の間で、金額が高いほど良い研究だという雰囲気が生まれつつある。基盤研究(C)よりも(B)を、(B)よりも(A)をというようなことではなく、内容のすばらしさというのは金額とは別だということを、もう一度しっかり認識していただきたいと思う。少ない金額でも大きなことができる。それは助成をすることが醍醐味でもあると思う。
 それから最後に、若手ということを考えていくときに、わからないことが多々ある。15ページの一番下にもあるように、JSPSでいろいろ考えられて議論を重ねてこられたと聞いているので、ここの方のノウハウや意見を一度聞いてみる機会があっても良いのではないかと思う。

【三宅委員】
 日本語の読みの問題だけだが、15ページに当面の方針の2.のところで、括弧の中に「したがって、若手研究(S)のみを2回受けることは認めない」という文章がある。これを普通に読むと、(S)、(A)、(S)であれば良いとも読めるので、「若手研究(S)を」ではなく、「若手研究(S)のみ」という「のみ」は要るのか。あるいは、括弧は全部要らないのではないか。
 それから、若手がきちんと評価をしてもらえるような応募書類を書けないということや、応募書類の書き方がきちんとしていなくて意味が伝わりにくいようなことがある気がする。特に若手の場合に、最初に周りに支援してくれる人がいなくて、どう書けば良いかわからないということがどのくらいあるのかということも周辺的な部分として少し気になる。そのような応募する前の段階での支援ということをどこかでやってもらえれば、日本の若手の研究の質が上がるのではないかというようなことを考えていた。

【有川部会長】
 最後のところはここで議論するわけにもいかないので、それぞれの研究室や機関等で適当な工夫をされることだと思う。
 15ページの下に書いてあるが、日本学術振興会からも意見を聞きながら検討するということは何回か前に話題になったが、日本学術振興会のほうでも準備をしていただいた上で、プレゼンなどをしていただけると思っている。
 冒頭のほうで非常に本質的な指摘もあった。そういうことを十分に書き込むことができない状況にあるが、この後で、理念的なことも含めて、基盤研究を中心にした議論ができるので、その議論に生かせればと思う。
 今日いただいたいろいろな意見を踏まえ、事務局において修正案を作成し委員の先生方にメール等でお届けするので、それに対してできるだけ意見をいただいて、その意見を踏まえて最終的な審議のまとめにしたいと思う。最終的にはそういうプロセスを経て、部会長に一任していただきたいと思うが良いか。

(「異議なし」の声あり)

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は、日程調整の上、改めて開催の通知を行う旨の連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課