第5期研究費部会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年4月28日(火曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 有川部会長、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、田代委員、深見委員、三宅委員、井上(一)委員、岡田委員、金田委員、宮坂委員

文部科学省

 勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)科研費による若手研究者への支援の在り方について

 事務局より、資料3「科学研究費補助金の研究機関数と応募件数の比較(15年度~19年度)」、資料4「若手研究者の状況等について」、資料5「科学研究費における『若手研究』の現状等について」及び参考資料「第5期研究費部会において検討をお願いしたい事項(抄)」に基づき説明があった後、意見交換を行った。

【深見委員】
 資料4の1ページに大学教員数の年齢構成が書かれているが、一番衝撃的だったのが、平成10年から19年に移行するに従って教授の年齢がすごく上がり、年配の方が増えてきているということである。この間に国立大学等を含めて定年の延長等があったのではないかという感じはするが、実際に何が一番大きな要因で、ある意味、若手重視という方針に逆行するようなことが起こっていると分析されるのかをお伺いしたい。
 それから、若手がどのように研究を行っていくかということに関して、資料5の2枚目、3枚目あたりに、若手研究から基盤研究への移行がスムーズに行かないということについての現状が載っているが、若手研究から基盤研究に移行しにくい1つの大きな原因というのは、若手研究の問題というよりは基盤研究の応募の問題というようにとらえられると思う。
 若手研究と基盤研究をよく比べればわかると思うが、若手重視ということもあって、若手研究(S)が新設されるなど、若手に対して比較的いろいろな意味で優遇制度が出てきている。それに対して、例えば応募数が一番多い基盤研究(C)の応募金額が若手研究(B)と同じであるように、基盤研究の応募金額が非常に低く抑えられている。また、基盤研究(B)や基盤研究(A)に関しても、同様に若手と比較して十分な金額とはとても言いがたい。やはり基盤研究(A)、(B)、(C)を充実していくことが、若手研究から基盤研究に移行するというところでも重要だと思う。

【有川部会長】
 教授の年齢が高くなっているということについて、国立大学の定年延長は今検討されているところだと思う。既に実施されたところもあると思うが、基本的には、私の理解では年金の支給年齢に合うようにしようという方向ではないかと思う。

【山下企画室長】
 詳細なデータは手元にはないが、今、先生方がご指摘いただいたようなことも1つの要因としてはあるのかもしれない。それから、資料4の1ページのグラフにあるとおり、平成10年当時、50歳あたりに1つの年齢構成のピークが来ており、そのピークが10年たって60歳前後ぐらいに来ている。そのあたりのピークが平均年齢を押し上げている要因であるということもあるのではないかと思っている。

【有川部会長】
 平成10年の50歳のピークが10年してそのまま移っているという感じはある。それから、最近では、教授の中に特任教授などいろいろなものができていて、その辺に年齢の高い人がいるというようなこともあるのかもしれない。

【宮坂委員】
 この間に、国立大学では、例えば国立大学法人化や大学院重点化ということがあった。特に、大学院重点化のときに助手や助教授だった人たちを教授に上げた。結局、助手でいればある年限でそれ以上いられなくなってしまう人たちが、法人化や大学院重点化で教授になったためにいやすくなったということがもう一つの要因としてあるのではないかという気がする。

【有川部会長】
 大学院重点化の時に助手のポストを使って教授をつくるというようなことをやってきた。その影響が3ページの表の国立大学のところに出ているのではないかと思う。

【金田委員】
 本質とは関係ない質問だが、平成19年に41歳の人が落ち込んでいる。同じように10年前の同じ年齢のところも少ないが、これは何か理由があるか。

【山下企画室長】
 それは今わかりかねる。

【有川部会長】
 若手研究ではなく、基盤研究(A)、(B)、(C)を充実すべきではないかという深見先生からの話があるが、この辺を中心に議論していくと、今日のテーマに非常に深く関係してくるのではないかという気がする。
 資料5の3ページを見ると、若手と言われている37歳までの採択率が38歳以降より良いということになっている。そういう意味では、若手が優遇されているという見方もできるのだと思う。37歳までだと採択率28%であるが、38歳以降だと23%ということで5%ぐらい落ちている。

【金田委員】
 結局、37歳までのこの層の採択率が相対的に良くて、その後、基盤研究しかないという段階になるとそこで一気に落ちるという現象が、資料5の3ページで明らかに出ていると思うが、これは何か制度的な無理がそこに働いているのではないかという気がする。若手研究者をサポートして、良いスタートを切るように助成することは大変結構なことだと思うが、先ほどの別のデータで2回、3回繰り返している方がいるように、スタートのサポートのための助成で、少し別基準のものを2回、3回繰り返して一般の基盤研究のシステムに乗り切れないというのは、制度的にスタートの段階のものを続け過ぎているのではないかと思う。
 したがって、スタートのところの助成は大変意味があるが、それをどこでうまく切りかえるのかということを制度として少し考えないといけないのではないかと思う。

【有川部会長】
 若手研究を3回も繰り返しているというのがあったが、若手研究は1回だけというようなやり方も考えられると思う。本日、いきなりそこまでいくことはないが、例えばそういうことも含めて議論していただければと思う。

【三宅委員】
 30歳ぐらいで若手研究に応募すると、研究期間は2、3年なので3回というのは十分ある形になっている。さきほど深見先生も言われたが、500万円で2年間というものと500万円で3年間というものであれば、基盤研究に乗りかえるより若手研究に応募したほうが良く、単純に見たときに、どちらにも応募できる人がいれば、若手研究に応募するだろう。
 それから、ある程度恵まれた環境にいて38、9歳ぐらいになり、基盤研究(S)などもう少し大きなものの中に入ってそこで分担しているときは、38歳以降として採択されているというように数えられるのか。研究分担者として、若手研究でもらっているのと同じぐらいの金額をもらって、もっと大きな組織の中で研究をしているのであれば、この表の中に入ってくるのか来ないのかというのは統計上の問題で、39歳まで1人でやって、それから大きな組織の中で若手として次の基盤づくりをやっているというのであれば、あまり問題ないのではないかという気もする。この38歳以降の採択件数とパーセントがどこに入っているのか、基盤研究(A)、(B)、(C)しかないので、基盤研究(S)などにいっているということはないのかということを少し伺いたい。

【有川部会長】
 若手のときは1人でやって、ある程度いったら他の人の大きめの課題で分担者になってやるというようなことがあっても、そのデータはこの中に入っていない。その辺が38歳以降の件数が減っていることの理由としてあるかもしれない。いわゆる若手であっても若手研究に応募せずに、例えば基盤研究(B)、(A)、(S)などの分担になって研究をするということも十分考えられる。
 この若手研究というのは1人で独立してやるということだが、グループのメンバーとしてしっかり貢献するということも特に実験系などでは大事なので、そのようなこともあわせて考えていく必要があると思う。

【岡田委員】
 若手に関して、制度の変更や、審査のポイントを考えることは必要だと思う。それとは別に検討が必要と考えるのは、今はポスドクの人も科研費の応募ができて、例えば若手研究や基盤研究の小さなものに採択されているが、ポスドクは本来別の研究プロジェクトの遂行のために雇用されているだから、その人が別の研究に応募するというのは基本的に矛盾する面があるのではないか、制度を明確にする必要があると思う。

【深見委員】
 若手研究から基盤研究への移行のところで年齢制限を上げたが、そのときに先延ばしするだけではないかという議論があったと思う。若手研究に応募したほうが居心地が良いという環境を制度で保護してしまうことはもう一度考えたほうが良いのではないかという気がする。
 その後の採択率はそれほど良くないところがあるので、年齢制限以内の、例えば35歳ぐらいの方が、若手研究よりも基盤研究(C)や(B)に応募したほうが研究費をたくさんもらえるというようになれば、若手の良い研究者が移行していくことも考えられる。
 基盤研究に若い人が応募してはいけないということはないので、保護することも良いことだが、逆に言えば、保護し過ぎている結果がこのようなひずみになっているということも認識すべきではないかという気はする。

【井上(一)委員】
 そういう意味で言うと、若手研究と基盤研究の採択率が異なることが今のような差になっているのだと思うが、そもそも若手の研究を奨励するという意味で採択率が少し高くなっていること自体は、そうでないと若手研究を置いた意味がないので、その差をどれぐらいにするかという問題はあるとしても、当然のことのような気がする。むしろ、そういうことをやった結果、その研究者が、あるいは日本の研究全体として効果があったかというのを見るべきだと思う。

【有川部会長】
 若手研究、あるいはその前身の奨励研究が導入されたのは、一般のところで競争すると、やはり経験や実績のあるほうが強いというようなこともあったのだと思う。そういう意味では、高いというよりも変わらないというほうが健全だという考え方もあるのだと思う。

【宮坂委員】
 若手研究と基盤研究とで使っている物差しが違う。それが同じでこの差が出ているのであれば問題だが、若手を奨励しようと少しひいき目に見て多少の欠点はあっても何とかそういうものを拾い上げようとしている。基盤研究はそうではなく、1人ではないので、ある意味ではさっきの意見と同じで当然と言えば当然の部分はある。

【深見委員】
 若手を優遇することがいけないと言っているのではないし、若手の人をより発展させるために、ある程度保護してあげることが悪いとは全く思っていない。むしろ保護してあげることは本当に良いことだと思っている。ただ、基盤研究がもっと魅力的であれば、優秀な人が年齢だけにとらわれないで次のステップにもっと入っていくチャンスがあると思う。今、基盤研究の魅力があまりないため、若手の人が、若手研究に応募したほうがずっと良いと思ってしまうことが問題ではないかと思う。

【田代委員】
 科研費は最近いろいろと充実されてすごく良くなっていると思う。その中で最も良いのが、私たちが学生のときとは違い、若手研究が充実されていることではないかと思う。やはり研究者は独立して1人で思う存分研究したいし、偉い先生の下でグループで研究するよりも、自分の考えでいろいろなことを試してみたいと思うのは当たり前のことだと思うので、若手研究という助成金は日本の研究者を育てるすばらしい制度だと思う。いろいろなひずみが出てくると思うが、改革してからあまり早く変えないほうが良いと思う。何年か前に年齢を引き上げたが、1、2年、あるいは5年もたたないうちにまた元に戻すということではなく、おそらく引き上げるときには何らかの理由があったのだと思うので、やはり結果が出てから検討したほうが良いのではないかと思う。
 そこで、先ほどから問題に出てきている基盤研究とのかかわり合いであるが、おそらく基盤研究(C)と競合しているものが随分あると思う。基盤研究(C)の応募率がとても高くなっていて非常に通りにくくなっているため、若手研究者は基盤研究に行かないで、若手研究(A)、(B)に、特に(B)に応募するのではないかと思う。

【有川部会長】
 前回、基盤研究(A)、(B)、(C)等の採択率などのデータがあったと思うが、ご指摘のように基盤研究(C)の競争率が非常に高かったと思う。

【山下企画室長】
 前回の配付資料の中の参考1、科学研究費補助金についてという資料の8ページに基盤研究の応募件数の推移ということで、特に基盤研究(C)の応募件数が最近増加傾向にあるというデータはある。それから、手元のデータによると、基盤研究(C)の平成20年度の採択率は21.6%である。

【有川部会長】
 件数が非常に多いというだけで、採択率に関しては、他とあまり差がないと考えて良いか。

【山口学術研究助成課長】
 平成20年度で申し上げると、基盤研究(A)が22.3%、基盤研究(B)が22.2%、基盤研究(C)が21.6%である。基盤研究(C)が少し低いかもしれないが、それほど極端に低いというわけではない。

【有川部会長】
 応募件数に連動して予算の枠が決まるという面があるのだと思う。そうだとすると、基盤研究(C)が突出して高いが、そこをさらに増やすとかあるいはその間にもう一つ入れるとかいったことで、若手研究から移行しやすくしておくということもあるのかもしれない。
 それから、金額の多寡ではなく、研究費は少なくてもいいので、ある一定の期間継続して1人で独立して研究したいといったこともあると思うが、そういったことからすると、今、ご指摘いただいた参考資料の8ページのグラフで、基盤研究(C)の応募件数がものすごく多いというようなことなどは、今日のテーマと絡めて検討する価値があるのかもしれない。

【山口学術研究助成課長】
 追加で少し申し上げると、前回の配付資料の参考1の11ページに平成21年度の予算の資料があるが、基盤研究(C)の充実というのを大きな柱として入れている。基盤研究(C)や若手研究(B)など、比較的少額のもののニーズが増えているので、そういった面の予算は増やしている。したがって、応募件数も増えているが、予算もそれなりには増やしているという状況である。

【有川部会長】
 この11ページは、平成21年度の予算でどこがどの程度増強されているかがわかる資料になっている。

【鈴木委員】
 数字だけ見ていても全然わからない。若手を優遇するという効果があったのかということの検証が大事であって、パーセントだけでは判断できない。若手研究種目がなぜ導入されたのかという点は、日本の研究体制の体質に起因し、その改善策として若手研究者が独立して研究できる環境を育てようという主旨であったと思う。このため、採択率が高いのは当然である。しかし、この人たちが若手の年齢制限から外れた時に、さらに全員を基盤研究で救おうとするのは別問題であろう。若手研究種目中で力をつけた人たちが基盤研究に採用されるべきである。若手研究(S)、(A)、(B)などをつくった主旨が実現されているかということを、数字だけではなく違った意味で検証すべきである。

【有川部会長】
 今日用意していただいた資料、あるいはデータは議論を深めるきっかけにしたいという意図もあったわけだが、今のようなことでもう少し本質的な議論をしていただければと思う。

【岡田委員】
 今のご意見には賛成である。この資料で、ある意味予想はしていたが非常にショッキングだったのは、資料4の最後の7と8である。ポストドクター等の年齢分布、あるいは経験の総年数というところで、7のほうであれば40歳以上の方が10%もいるし、39歳までの方も2割程度いる。年齢は否応なしにどんどん上がっていくので、こういう人は増えていく可能性が十分ある。それから、8のほうを見ると、ポストドクターを6年以上やった方が16%いて、非常に多い数である。こういった人たちは大学やいろいろな研究機関等で定職につくということを願ってやっているが、現実としてすべての方がポジションを得ることは難しい。このような状況の中で彼らが生きていくために、いろいろなキャリアパスを用意しなければいけないと思う。
 若手研究は研究者として一本立ちをしてやっていくようにサポートするもので、それが一番まともな方向だと思うが、長年研究をやってきた方の中には、自分が研究に向いていないということを自覚するようになる人もいる。現在は大学で技術職員がどんどん減っている状況で、私の関わっている生物系でも、技術職員はそれほど要らないということでどんどん減らしていった時期があるが、最近のシステムバイオロジーなどでは、大きな機器を使って得られた大量のデータを高度に処理する必要があり、専門家が必要になってきた。そういうことをやる方は必ずしも研究者でなくてもよく、いろいろな研究手法を開発する専門技術者が必要である。多くの大学や研究所でも、そういう方が必要な状況になってきている。このような専門技術者に転身するルートを開くために、新しい機器の開発などの技術開発的な目的の科研費の枠を考えても良いのではないかという気がする。
 さらには、いろいろな研究者を集めて、うまく共同研究を組む、あるいは連携させるようなコーディネーターであるとか、市民、あるいは社会に対しての研究の広報をやっていくようなコミュニケーターなどに対する需要や関心もどんどん増えており、学位はとったが、必ずしも研究一本やりではなく、そういうことのほうが向いていて、大事なことだという自覚を持ってやっている人が結構いる。ただ、それをしっかりとサポートするシステムが必ずしも十分ではないので、そういうものを考えていただくことも新しい制度設計としては良いのではないかと思う。

【有川部会長】
 それは若手を議論する中で位置づけておいたほうが良いということか。

【岡田委員】
 そうだと思う。やはり、30代ぐらいになったときにそういうことを自分で考える方が増えてきているのだと思う。

【有川部会長】
 今のお話は資料4の最後の7、8のポストドクターの年齢分布や、経験年数ということで、このデータはかなりショッキングなことというか、ある程度いろいろなところで言われていたことではあるが、例えば、若手研究は39歳以下、あるいは若手研究(S)については42歳以下ということになっているのに対して、39歳以下の方がほとんど90%近くを占めている。この辺の方は若手研究にそろそろ応募できなくなるし、いわゆるパーマネントなポストにはまだついていないということで、今の先生のご指摘はそうした方々は普通の研究だけではなく、技術を生かした普通の研究とは少し異なったやり方があるのではないかということであって、コミュニケーターなども含めて、そういった分野をサポートするような科研費があってもいいのではないかということだと思う。これは少し前であれば、少し捉え方が違うと思うが、試験研究のようなもので、物を実際につくってみせるということがあったと思う。そういったものの若手版みたいなことと考えてもいいのかもしれない。ただ、科研費はすべての分野や方法論について、それぞれの学問分野において方法論は異なるとしても、考えられるほとんどのことはカバーされていて、カバーされていないものについても、スタートはここで言う分類だと基盤研究(C)になるが、時限付き分科細目などといったことはある。したがって、例えば学術会議や、いろいろなコミュニティから提案があれば、時限付き分科細目としてスタートさせることができるのではないかと思う。

【山口学術研究助成課長】
 大変重要なご指摘だと思う。この会議では研究費、あるいは科研費といったものをターゲットとして考えていただいているが、御議論いただいている問題については、おそらくその先の雇用や体系などといったものにまで広げてご議論いただかないといけない部分があるのではないかと思う。研究費という中で何をターゲットに議論していくか。私の感想で申し上げると、38歳になる前に研究者ではない道を探したほうが良い方もおられるということかもしれないが、それに対して科研費がどのように役に立つのかということもご議論いただいたほうが良いのではないかと感じた。

【佐藤委員】
 若手の研究者を育てるときに、国際的な競争の場につながっていくことはとても大切なことだと思うので、そういった意味では外国に派遣するというスキームが要るのではないかと思う。幸いなことに今は外国旅費も研究費で使えるので、その点は問題ないと言えば問題ないし、今度の補正予算の中に外国に研究者を派遣する予算がかなりついていると思う。そういった形で補強をしていくものと、科研費の役割をどう組み合わせていくのかということが私には解決策がない。科研費にミシン目をつけるわけにはいかないので、外国旅費にこれだけ使えとは言えないと思うが、若手研究者を育てていくときの視点の1つとして、そういう機会をできるだけ提供するというものがあったほうが良い。それは科研費ではできないのかもしれないし、今のような継ぎ足しでやるのかもしれないが、科研費の運用のときにそういう視点をある程度出すことはできるのではないかという気もする。判断が難しいことなので、そういう視点が大事だということだけを申し上げておきたい。

【有川部会長】
 今のお話は、現行の科研費の中でも海外出張をして、国際会議に出るようなことは措置できるが、おそらくもう少し長期間の、例えば半年あるいは10カ月程度の海外での研究活動を支援するような科研費があってもいいのではないかというように整理しても良いか。

【佐藤委員】
 はい。

【有川部会長】
 若手の自立支援というようなことからすると、非常に意味があると思う。それから、今回の補正予算で300億円ぐらいの基金ができるというようなことなので、そういったこととも整合すると思う。

【宮坂委員】
 私たちが留学したときは、向こうのグラントで雇ってもらって、そのボスがとったグラントで研究費も出た。ところが、今はそういうお金はアメリカでも取りにくくなっていて、日本でそれなりの自己資金を持って、あるいはどこかから取った外部資金を持って行かないとなかなか留学できないシステムになってきている。今は、その部分がすごく競争的なので、もし今のような制度が科研費の中で運用できるのであれば、若手を育成する大きな意味があると思う。

【小林委員】
 科研費で長期というのはなかなか難しい気がする。幸い5年間で300億円という基金があるので、その成果を見て有効性を判断すれば良いと思う。

【鈴木委員】
 1国だけでやっていると、問題が出てくると思う。特に若い人が、海外で研究し、その期間が終わったらそれでおしまいということになってしまう。300億円の使い方として、例えば日本とアメリカ、日本とヨーロッパなど双方のファンディング・エージェンシーが協定して、最初の3年間は渡航先での研究に従事、残りの2年間は本国での研究に従事できるようなシステムでやると、就職の心配なしに海外で研究に専念でき、帰国後の研究活動にも幅ができる。このような新しいシステムをつくってはどうか。

【有川部会長】
 日本学術振興会のプログラムにはそういったものがあったと思うが。

【門岡学術企画室長】
 現在、日本学術振興会で用意している海外への派遣、あるいは海外からの招聘というのが100億円規模で、運営費交付金の中の事業としていろいろなプログラムを用意している。期間も数カ月行くものから2、3年行っていただくようなものまで、ここ何年間でいろいろなプログラムが用意されて、いろいろな要望にこたえられる制度設計になっている。
 今度の5年間300億円の基金で日本の研究者を海外に派遣するというプログラムについては、補正予算が通って具体的に制度設計が進んでいくことになるが、その5年間で研究者を目指す方々の海外へ行く機会というものは、個人として申請していただくものと、機関にある程度任せて、グループ的にやっていただくものと、いろいろなものが想定されると思っている。

【有川部会長】
 先ほど鈴木先生から若手研究がきちんと機能しているかどうかなど、本質的なことを議論すべきではないかというような趣旨のことがあり、データとしては用意していただいたものがあるが、今、若手研究(A)、(B)と(S)について問題点、あるいは改善すべき点などのご意見をお持ちでしたらその辺をお聞きして、もう少し深い議論に入っていければと思う。

【鈴木委員】
 単純に考えると、若手研究(S)を42歳でもらって5年間で47歳になる。例えば理工系であれば、若手研究(S)をもらうような研究者は47歳では世界のトップクラスにいるであろう。本当にそうなっているかどうかを検証して、システムが健全に機能しているかどうかチェックできる。

【有川部会長】
 そういう点では、若手研究(S)はまだスタートして2年目なので、5年間だから5年ぐらいはしっかりやって、それから検証する。それはすべてのプログラムについてそうで、まだ終わっていない、ゴールまでだれも行っていないときに結論を出してしまうのは非常に危ないのではないかと思う。そういう点で1つ気になるのは、奨励研究から若手研究に移ったときは37歳以下だったと思うが、それが今は39歳歳以下になっている。先ほどの年齢構成や、ポスドクのことを考えていくと、だんだん若手の年齢が上がってしまいそうだということがあるが、この辺も今後の方向として、37歳以下から39歳以下になったようなことがまた起こるのか。

【山口学術研究助成課長】
 それについては、37歳で終わった後、基盤研究に移りにくいという状況もあって、1つの方策として2年間延長ということを議論していただいたと思うが、そのときも2年間延長することが良いことかどうかということについてはかなり大きな議論があったと伺っている。

【小林委員】
 この若手研究の年齢制限の前後で、採択率に若干の差があるということであるが、むしろ採択件数で200件ぐらいの差がある。前回、年齢制限を延ばしたときもそれが問題になったのだと思う。本来は、2歳延ばした21年のデータを見て判断すべきものだという気がするが、年齢を変えるだけで若手研究から基盤研究への移行がスムーズに行くかということには大いに疑問があるので、年齢以外の方法で若手研究から基盤研究への移行をスムーズに誘導するような方策を考える必要があると思う。

【有川部会長】
 若手研究から基盤研究にスムーズに移行するところに、少しギャップがあってもそれはそれで構わないという考え方もあると思う。先ほども少しあったように、他との共同研究をやるというようなこともあるので、そういう意味では、スムーズに行くということのためにさらに年齢を上げるというようなことはすべきではないと判断しても良いと思う。それから、若手研究(S)についてはまだスタートしたばっかりなので、これは1回、5年たってみたときに、しっかり評価をして制度がよかったかどうかを確認する。少し論点を整理しながら進んでいきたいと思う。

【田代委員】
 資料5の7ページの囲みにある平成21年度の公募要領の3のところに産前産後の休暇又は育児休業を取得しているとある。前回配られた資料の中にも、そういった女性研究者のスタートがかなり遅い、あるいは途中で中断されるとういうことで年齢的なものをもう少し考慮したほうが良いという記載があったと思うが、それもやはり考える必要があるのではないかと思う。科研費は男性研究者と女性研究者を全く関係なく一律でやっているので、何かそういったことが考慮されたのかもしれない。
 それから、若手研究に応募すると、確かに採択率がよいということで3度、4度と応募できる可能性がある。これを2回ぐらいに制限して、1度使ったらもう1回しかないというようなことにすればある程度基盤研究に移行していくのではないかと思う。

【有川部会長】
 スタートアップの応募資格として産前産後の休暇や、育児休業等で通常の時期に応募できなかった人を対象にしているということだが、ここと若手研究の年齢を上げたということとは関係あるか。

【石田企画室長補佐】
 経緯だけ申し上げると、今、ご指摘の点は、若手研究(スタートアップ)の応募要件のところである。もともと若手研究(スタートアップ)というのは、この公募要領から抜粋している1をターゲットとして始まったものであるが、並行して年複数回応募の試行というものを平成18年度から行っていて、その応募要件が2、3に該当していた。近年、年複数回応募というのを若手研究(スタートアップ)に統合したこともあって、現在は応募の要件にこのように包含される形で表記されている。この3の要件のところが、前期の研究費部会の議論で出ていたかというと、必ずしもそこは強調されていなかったように記憶しているが、調べて見る必要がある。

【有川部会長】
 今、田代先生から、基盤研究への移行をスムーズにするために回数の制限をしたらどうかというようなこともあったが、この辺についてはいかがか。さきほどのデータでは、1回、2回、3回というケースも相当あるということだが、そういったことはやるべきではないとか、あるいはそれはやったほうが良いというようなご意見をいただければと思う。
 現行では2年から4年ということなので、例えば4年間研究したとすると、1回でいいのではないかという考え方はできると思う。また、1回若手研究でやったのだから、普通の基盤研究に応募しなさいといった言い方もできると思う。

【金田委員】
 私が最初に申し上げたのは、今、ご指摘があったそういう趣旨であって、もちろん今の若手研究というスキームが悪いと言っているわけではなく、逆に今の基盤研究が完全なシステムであると申し上げているわけでもないが、もし基盤研究のほうが科研費の応募のあるべき姿を追求しているのだとして、スムーズにそこに移行できるようにするという趣旨であるならば、若手研究を公募するときに、どこかでスムーズに基盤研究に切りかえられるような形にすべきだと思う。したがって、何回ということをすぐに決めるかどうかは別にして、早くスムーズに移行できるように何らかの方法をとるべきだと思う。

【有川部会長】
 そういう意味では、回数を1回にするというようなことは非常に効果があると思っていいと思う。

【三宅委員】
 回数ということが問題なのかもしれないが、資料5の2ページのところで、何年間で幾らまで応募できるかという表を見ると、若手研究のほうが有利になっている。若手研究(A)は1人で、2年から4年で500万円から3,000万円である。基盤研究(A)、(B)で3年から5年で、(B)であれば500万円から2,000万円なので、3年ぐらいで3,000万円必要だとなると、若手研究(A)に応募するほうが有利になる。若手研究(B)と基盤研究(C)でも同じで、自分が何回目かとか、何をやっているかということは別に、1人で研究してこれだけのお金でこういうことをやりたいと思ったときに、この金額だけを見ると若手研究のほうへ応募するというようにできている。そういう判断をしている人たちというのを実際に知っているし、こうなっていればそれは移行しないだろうと思う。

【有川部会長】
 確かに研究期間が2年から4年、あるいは3年から5年なので、今の若手研究(A)と基盤研究(B)を見ると、若手研究(A)で応募できるのであればそちらのほうが有利で、競争率も低いということになっているのだと思う。研究期間などを少し整理するということもあると思うが、若手研究のことを議論しながら基盤研究の議論もしていけばいいと思う。
 基盤研究を固定して考えるのかということは、一般研究(A)、(B)、(C)などから来ていて、相当長い経験、伝統があるので、これは基盤研究(A)、(B)、(C)、あるいは(D)などをつくるかどうかは別としても、そういった枠組みはあると考えて議論しておいたほうがよいと思う。

【深見委員】
 既に年齢制限があるので、若手研究に回数制限を設けるという改めてさらに応募しにくくなるような制限は加えるべきではないと思う。先ほどから何度か言っているが、より基盤研究が充実していけば、若手の優秀層が自然にそちらに移行していくと思う。むしろ、若手を保護しつつ、かつ実績のある人が基盤研究に移行できるポジティブなシステムをつくっていくべきではないかと思う。

【有川部会長】
 基盤研究(A)、(B)、(C)を、もう少し移行しやすくしておいたらどうかということだと思う。

【深見委員】
 若手研究を獲得したすべての方が基盤研究を獲得できるような体制にするということに賛成しているわけではない。先ほどポスドクのデータもあったが、ある程度早いうちに方向を変えていくことも重要なことなので、すべての人を保護するというようなシステムを目指すのではなく、いろいろなキャリアパスでほかのところに移行していただくというきっかけをつくることが重要だと思う。ただ、ある程度の研究層というのは重要だと思っているので、そこの研究層をどうやって確保していくか、いたずらに切り過ぎないシステムが重要だと思う。
 層を厚くするという観点から考えても、基盤研究(C)へ移行するのは少し厳しい気がするので、基盤研究をきちんとやっていくことは最重要であり、かつそういう層を厚くするという目的とともに優秀な層をもっと伸ばすということも重要だと思う。このため、もちろん若手研究に応募するという選択肢も残しつつ、若手研究(B)から基盤研究(C)、基盤研究(B)に移行できるような基盤研究の魅力というのを出して、ギリギリで移行するのではなく早目、早目に移行できるようなシステムづくりがあるべきではないかと思う。

【鈴木委員】
 第5期は、特に概算要求をにらんだ場合、先ほど岡田先生が言われたポイントでいろいろな研究種目を提供するという点が非常に大事だと思う。例えば、座長が言われた試験研究について、これは非常に良いものだと思っていた。しかし、ある時突然なくなり理由を聞くと、JSTがそれをカバーするので、科研費から除くということがあったと聞いている。しかし、JSTが各個人が自分のアイディアに基づいて行う試験研究のようなものをやっているかどうかというと、"ノー"である。試験研究のような種目は若手を問わず新たな研究の道を開くものであり、さらに昨今、この種の開発研究が衰退している傾向にある。また、データベースあるいは大きな装置など、一たんつくったものをどう管理してどう運用するかということに関しても、その後のメンテナンスなど何らかの措置が必要だと思う。このような新しい研究種目を増やす議論を、若手研究と絡めてお願いしたい。

【有川部会長】
 先ほど佐藤委員から海外長期研修のようなことでご発言があったが、これをもう少し一般化すると科研費でサポートする内容をもう少し考えてもいいのではないかということだと思う。そうすると今の鈴木先生のお話も、例えばデータベースなど、科研費で得られた結果をそこで終わりにするのではなく、維持してフォローしなければいけないようなことがいろいろな分野であると思うが、そういったことも科研費でサポートできるような設計の仕方があるのではないかというようにまとめられると思う。

【田代委員】
 基盤研究の欠陥は、今度、議論する機会があると思うので、そこで問題になっている研究期間の点なども含めて議論されるといいと思う。今日は、若手研究ということなので申し上げたいが、先ほど申し上げた女性研究者への視点に関して、若手研究者というのは子供を産む年齢に該当する。そういうことを視点に入れていただかないといけないと思って、前回の資料を見ていたら、平成20年7月に出された研究費部会審議のまとめ(その2)の14ページの問題意識の中に、平成20年4月8日、男女共同参画推進本部決定によって女性の参加加速プログラムというものがあって、研究費申請等に際しても出産、育児を考慮した年齢制限の緩和が求められているという項目がある。そこで若手研究に応募する年齢層を考えた場合、もし今まで何も考えてきていないのであれば、女性研究者もこれからたくさん出てくると思うので、1つの新しい視点として考慮の中に入れていただけたらと思う。

【有川部会長】
 それは最近のキーワードとして、男女共同参画というものがある。そういったとらえ方をするべきではないかと理解してよいか。

【三宅委員】
 若手研究(A)、(B)といったときに、若手の人が上の人と一緒に仕事をするのではなく、早くPIを経験するという意味で1人ということが強調されていると思うが、若手研究(S)、あるいは基盤研究などに行くときに、いろいろな人たちと共同して、少し異分野の人と一緒にやっていくということも大事である。基盤研究(C)と若手研究(B)の金額もそう違わないし、自分がきちんとPIを努めるという若手であれば、別に1人でなければいけないとはしないで、若手のときでもグループで生産的にやれるという人のグループをサポートできても良いのではないか。そういう経験をしておいたほうが、むしろその後に基盤研究などに移りやすいということもあるかもしれないと思うので、例えば1人ではなくても良いとすることも考えられるのではないかと思う。

【有川部会長】
 若手研究は1人で行うが、協力者は使っていいということになっている。非常に気になるところではあるが、若手が自立してリーダーシップを発揮してもらうというようなことから、そういうことになっていると思う。そういう意味では、この1人というところは少し考えてもいいのかもしれない。基盤研究(C)や(B)などとあまり変わらないようにしておいて年齢だけが異なるということにすればスムーズに移行するということもあると思う。

【田代委員】
 グループも非常におもしろい発想だと思うが、その場合、少し注意しなければいけないのは、グループの中にこの年齢制限から超えた者が入る可能性がある。そうすると、こちらのほうが通りやすいので、50歳近い人が若手の人に頼んで応募させることも考えられる。グループでやる場合は、年齢制限がどうなるのかとの兼ね合いも考えないといけない。

【有川部会長】
 確かにそういう問題はある。
 若手と言ったときのその枠での支援の仕方、内容に関して、先ほど佐藤委員からご指摘いただいことをもう少し一般化して、若手にとってはこういうことが非常に大事なのだということが他にもあるのではないかと思う。

【佐藤委員】
 その文脈で言うと、非常に気になるのがスタートアップである。鈴木先生が言われるように結果を検証しないといけないと思うが、120万円ぐらいで分野によっては大金であるとしてもどんな機能をしているのか。総額を見ると若手研究(S)と同じぐらいの予算額になっているが、予算の使い方として役に立っているのかが気になるところで、何らか判断材料がないのかということをお尋ねしたい。

【山口学術研究助成課長】
 若手研究(スタートアップ)については、若手研究(スタートアップ)と言いながら、いろいろなものが入っていて実態と名前が少し異なっているということがある。また、根本的な問題として「150万円以下2年間」ということが果たして有効なのかどうか。前回のご議論の中でも、もともとスタートアップとして研究の環境を整えるのは、本来、研究機関がやるべきものではないかというご意見があったと思う。特に分野によって、150万円2年間というのが本当に有効かどうかということについて、私どももぜひこの機会にご審議いただければと思っている。

【有川部会長】
 若手研究については、(A)、(B)と(S)それからスタートアップと3つの区分があるが、それぞれについて議論をしていかなければいけないと思う。

【山口学術研究助成課長】
 今回、若手研究のご審議をいただいているが、今回だけで終わりということではなく、若手研究あるいは基盤研究のご審議などいろいろ重ねながら少しずつ進めていただくことを考えている。

【有川部会長】
 それでは、全般的な3つの区分にわたってのご意見をもう少しいただければと思う。
 若手研究(スタートアップ)については、いろいろないきさつもあって、いろいろなものが入っている。それから、田代先生がご指摘のように、特に女性研究者に対する配慮をもう少しすべきではないかということもある。それから、応募総額の150万以下2年間というようなことについてこの場で議論しておきたい。

【宮坂委員】
 すべてのことに共通すると思うが、こういう何か改革、変革をしたときに、その変革した成果を何でもって評価するのかということが何にも決まっていないと思う。そこが一番問題で、変えるときに何をアウトカムとして見るかということをあらかじめ設定しておかないと評価が難しいと思うが、それをしないうちにまた変えると本当の朝令暮改になってしまうので、これからは変革をするときに何を指標にするかということを決めることが必要だと思う。

【有川部会長】
 これは若手研究だけではなくすべてのことに対して言えることで、ほかのものに関しては評価をしている。例えば、特別推進研究や特定領域研究などではきちんとした評価がされていたと思うが、それをシステムに関すること、個別の内容に関することの両方をやらなければいけないのだと思う。特に基盤研究や若手研究などに関しては、件数が相当多いので、個別的なことをきちんとやっていくのは大変だと思う。
 それから、それをある程度見た上でないと、制度、システムがどうこうということも言えないと思うが、何かうまい評価の仕方があるといいと思う。先ほどから出ているように、若手研究は基盤研究等へスムーズに移行するためということであれば、どれだけ移行しているか。今日お示しいただいたようなデータは、ある意味でスムーズに移行していないという言い方もできると思うが、こういった統計的なこと以外にもう少し定性的な議論もあっていいと思う。

【三宅委員】
 周りでスタートアップに応募している人は、日本学術振興会の研究費を持っていたが、特任の助教で何かのプロジェクトに入って採用時期がずれたため、助教になって研究費が来なくなって、新しいところに入って何かやるが、自分のことも続けたいという人が応募している。例えば平成20年度の応募件数や採択件数の中で、応募資格の1、2、3がどのような分布になっているかというようなデータはあるか。しばらくやってきているので、どういうところが実際にサポートされているかというようなことは、応募した人の資格などで分別すればわかるか。

【有川部会長】
 若手研究を何回やっているかというデータはあったが、これはどうか。
 基盤研究から見て、この人は若手研究の経験者であるかとかいうことを調べることは可能か。

【石田企画室長補佐】
 少し時間がかかるかもしれないが、どこまでの検証が可能なのかということも含めて調べてみたいと思う。

【有川部会長】
 これはそういうことを記入する欄がなかったと思うので、ランダム・サンプリングをやって調査することになるのだろう。
 今日は若手研究に焦点を当ててさまざまな議論をしていただいたと思う。いろいろな角度から、必ずしもその方向が見えているわけではないが、大事なポイントはかなり出していただいたと思う。

【岡田委員】
 文部科学省にお聞きしたいが、最近の新聞で2,700億円という非常に高額の世界最先端研究支援強化プログラムが報告されていて、補正予算として実施の方向に向かっているということである。それが通ったときにこれまでの科研費の総額と匹敵するぐらいの巨額だと思うが、若手研究も含めて、これまで行われてきていた科研費には影響はないということでよいか。

【山口学術研究助成課長】
 現在、補正予算で5カ年間にわたって日本が世界をリードするような研究を30課題選んで2,700億円を投入して、支援して成長させていこうというスキームがある。それから、それとはまた別に300億円を投入して研究者、あるいは研究者の卵の方を海外へ派遣して外国の状況を見ていただくという話があり、総計3,000億円の補正予算の動きがある。
 実際上、世界最先端研究支援強化プロジェクトの中身自体は総合科学技術会議を中心に30課題を選定し、それからその中心となる研究者を選んで重点的にやっていこうということになっていて、内閣府中心でトップダウンでやっていくということで進んでいる。したがって、今の仕組みとしては、日本学術振興会の法律を変えてそこに基金を置いて5カ年間取り崩していくというようなことを検討しているが、中身自体は内閣府においてトップダウン型で進んでいくということになっているので、科研費のボトムアップ型とは全く異なるスキームが5年間に限り補正予算で準備されているという状況である。

【岡田委員】
 そういう大きなものが来たときに、いろいろな意味でこちらに何らかの影響がや圧迫がある可能性が全くないわけではないという気がするので、そのときには文部科学省として体を張ってとめていただきたいという気がする。

【有川部会長】
 こちらは自由な発想に基づく、いわゆるボトムアップ的なものであり、先ほどの2,700億円というのは、いわゆる典型的な政策課題型というような言い方ができると思う。今回のものはこれまでになかったようなものだと思っているので、直接的には関係がないと言いたいところではあるが、そこでプロジェクトをやられる方が科研費の大きなものを一緒にやることはできないのでというような影響は当然あるのだと思う。

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は5月14日(木曜日)14時00分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

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研究振興局学術研究助成課