学術の基本問題に関する特別委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成22年2月19日(金曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

佐々木主査、谷口主査代理、石井委員、小林委員、白井委員、柘植委員、三宅委員、家委員、樺山委員、鈴村委員、平尾委員、磯貝委員、郷委員、古城委員、沼尾委員
(科学官)
縣科学官、喜連川科学官、高山科学官

文部科学省

磯田研究振興局長、土屋総括審議官、中岡政策課長、山脇振興企画課長、舟橋情報、山口学術研究助成課長、松川総括研究官、小谷技術移転推進室長、石﨑学術企画室長 その他関係官

4.議事録

【佐々木主査】  

 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会第7回会合を開催いたします。お忙しいところ、ありがとうございます。
 まず、配付資料の確認を事務局からお願いします。

【石﨑学術企画室長】  

 それでは、配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 本日も議事次第を配付させていただいていると存じます。2枚目に本日の配付資料の一覧を配付させていただいております。恐縮ですけれども、御確認いただき、欠落等がございましたらお知らせいただきたいと存じます。
 また、机上配付資料といたしまして、第4期科学技術基本計画の策定に向けまして、昨年12月に科学技術・学術審議会基本計画特別委員会で取りまとめられました中間報告なども配付しております。適宜御参照いただければと存じます。
 なお、前回までに配付いたしました資料、それからこれまでの報告書などをまとめた資料をドッチファイルで机上に御用意いたしておりますので、こちらも必要に応じて御覧いただければと思います。以上です。

【佐々木主査】  

 ありがとうございました。
 本日の議題は、学術の基本問題についてという1件でございます。
 まず、本日は8月の開催以来久しぶりの会合でございますので、この間、政府にさまざまな動きがございました。委員会の審議にも、こうした動向が直接・間接かかわってくることが予想されるわけでありまして、学術研究をめぐる最近の政府の動向、今後の動き等につきまして、委員の皆様に御説明させていただこうかと思ったところでございます。
 そこで、事務局のほうでこれらの動きを整理していただいたところでございます。本日は、最初にこれらの動向につきまして、事務局から説明をお願いします。それでは、山脇課長、お願いします。

【山脇振興企画課長】  

 振興企画課長の山脇でございます。
 資料1に基づきまして、御説明させていただきます。まず2ページを御覧いただきたいと思います。
 この学術の基本問題に関する特別委員会のこれまでの議論の経緯を申し上げますと、6月11日に、これまでの審議の整理をいただいております。また、前回8月には、科学技術基本計画の策定に向けた論点例を、議論の上作成していただいております。
 この第4期科学技術基本計画に向けた論点につきましては、意見のまとめとして学術分科会で取りまとめ、11月19日の基本計画特別委員会に報告したという形になっております。第4期科学技術基本計画に向けた報告書に反映されている部分がございますので、後で御説明申し上げたいと思っております。
 なお、今の意見の取りまとめについては参考資料2として配付しておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 また、学術の基本問題に関する特別委員会のもとに、10月以降、作業メンバーによります学術の基本問題に関する論点の抽出・整理に向けた議論を行っていただきました。別紙にある作業メンバーの方々、委員、臨時委員、専門委員の方々、科学官の先生、さらに事務局の間で、10月から11月にかけて、学術研究をめぐる現状や課題、あるいは振興方策について、データを踏まえた論点の整理や抽出作業を行っていただきました。今回、この論点の整理・抽出について、後ほど資料2として配付しているものについて御説明をし、この場で御議論いただきたいと思っております。これが今日の中心課題でございます。
 また、そのほかに、この学術をめぐる状況として今から御説明するさまざまな動きがございます。それらを踏まえながら、今後の学術の振興方策、基本的な問題点について議論を深めて頂きたいと思っております。
 次に、4ページ以降でございますが、学術研究をめぐる最近の動向に関しまして、幾つか主なものを御報告したいと思います。まず、科学技術・学術審議会のもとで、基本計画特別委員会におきまして、昨年の12月末にポスト第3期の科学技術基本計画の方向性についての中間報告が取りまとめられております。
 机上配付しております青色の冊子の資料が、基本計画特別委員会においてまとめられました報告書になります。「我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて」というものでございます。
 内容を要点だけ御説明申し上げます。資料の7ページ、あるいは8ページの部分を御覧いただきたいと思います。8ページの上の四角の中に書いてありますが、この報告書の中では、今後の科学技術政策における基本的な方針というもので、例えば、従来の科学技術政策から科学技術イノベーション政策へ転換する。科学技術政策と、科学技術に関するイノベーションのための政策を組み合わせた総合政策への転換が方向として打ち出されているというのが、1つの大きな点かと思います。
 内容的には、ポスト第3期の科学技術基本計画として、基礎科学力の強化と重要な政策課題への対応を車の両輪として推進するのだというような、基本的な考え方が述べられているところでございます。また、この要旨の中にはあらわれてきてはいませんけれども、基本的な方針の中で、学術が我が国の科学技術イノベーション政策を推進する上で重要な役割を期待されており、その着実な振興を図ることが必要だというような、基本的な考え方が明記されているところでございます。これはお配りしている青色の冊子の16ページあたり、学術の基本的な位置づけがこの報告書の中にも反映されたものでございます。
 また、要旨の8ページ下の3.以降でございますが、基礎科学力の強化のための課題として、この学術分科会で議論された内容が多く反映されている部分でございます。
 9ページの上にありますように、基礎科学力の強化に関して、具体的な方策として大学等の基盤的経費、科学研究費補助金の拡充といった資金面の事項でございますとか、大学院における教育研究の質の向上、大学院学生に対する経済支援の充実、キャリアパスの多様化、研究支援体制の整備、研究施設整備の充実などの方向性などが盛り込まれたところでございます。このほか、重要な政策課題への対応のためのスキーム、あり方、国際活動の観点等々、幅広い観点から議論がまとめられたところでございます。
 また、11ページにありますように、政府の研究開発投資の拡充という視点からも、ここではGDP比1%の投資を確保することなどの提言が盛り込まれているところでございます。
 この報告書の内容を受けまして、現在、総合科学技術会議の基本政策専門調査会のもとで、第4期科学技術基本計画のあり方の審議が進められているところでございます。第4期の科学技術基本計画は、平成23年度からの5年間という形になりますので、年内あたりには、総合科学技術会議の議論が固まっていくのではないのかと思っておりますので、ここの学術分科会での議論、あるいは基本計画特別委員会での議論が、第4期科学技術基本計画に適切に反映されるように努めていきたいと我々としては考えているところでございます。
 次に、12ページ以降を御覧いただきたいと思います。昨年末に、政府としての新成長戦略の基本方針が閣議決定されております。これは2020年までを見通した中長期的な成長戦略との位置づけのもとに、その基本方針が決定されているものでございます。内容的には、大きく6つの柱の成長分野について取りまとめられています。6つのプラットフォームという言い方もされております。グリーン・イノベーションでありますとかライフ・イノベーションを進めるというような議論とともに、その6つの分野の中の1つに、科学・技術立国戦略が主要事項で掲げられております。
 この資料は抜粋しておりますが、19ページを御覧いただきたいと思います。2020年までの目標といたしまして、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションの分野において世界をリードすること、世界トップに立つ大学や研究機関の数を増加すること、官民合わせた研究開発投資をGDP比で4%以上にすることなどを目標とし、それのための政策の基本が述べられているところでございます。
 20ページには、研究環境・イノベーション創出のための条件整備、推進体制の強化として、大学・公的研究機関の充実、あるいは基礎研究の振興なども含めた対応が必要という基本方針が述べられているところでございます。また、25ページを御覧いただきたいと思います。6つの柱の1つの中に、雇用・人材戦略、人材の育成というものも重視されておりまして、その中で25ページには、大学院の教育の充実でありますとか高等教育関係の施策も盛り込まれているものでございます。
 新成長戦略につきましては、この基本方針を踏まえて、本年の6月を目途に新成長戦略そのものを取りまとめる。そのために、具体的な目標の設定でありますとか施策の具体化、あるいは追加をしていく方向になっているところでございます。これは成長戦略という形になりますので、学術、科学技術の関連がすべて盛り込まれるというものではないかもしれませんが、中長期を見通した政府としての今後の方針という形になりますので、我々としても注視していきたい、この学術分科会の審議にも反映していきたいと考えているところでございます。
 次の動きでございますが、27ページを御覧いただきたいと思います。国立大学法人に関しましては、法人化以降6年が経過し、平成22年度からは第2期の中期目標期間が始まるという時期に当たっております。そうした節目に当たり、国立大学の法人化の成果と今後の課題について検証し、総括を行う作業が開始されております。ガバナンスに関する事項でありますとか、資源配分に関する事項などが、検討の項目例として挙がっております。
 28ページに検証の方法などを書いておりますが、このために国立大学法人評価委員会にワーキンググループを設置して、専門的な観点から検証を進めるとともに、国民、有識者からの意見聴取を行いながら、検証、総括をしていくということも、あわせて進められているところでございます。これについても、必要なフォローアップを行っていきたいと我々も考えております。
 最後に、32ページ以降でございますが、中央教育審議会大学分科会大学院部会におきまして、平成18年度から5年間の振興計画として大学院教育振興施策要綱というものが策定されましたが、その進捗状況と課題の検証、また、その作業を通じた大学院教育の方向性を明らかにするという検討も進められております。この要綱も平成22年までの5カ年の計画になっていますので、平成23年度以降の新たな教育振興施策、大学院の教育施策要綱を策定する予定という形で、大学院部会で検討が進められているものでございます。これらの検証の内容についてもしかるべくフォローアップをし、この学術分科会にもインプットしていきたいと考えております。
 以上が、学術研究をめぐる最近の主な動向でございます。これからの学術の基本問題の検討に当たっても大きく関連する事項もございますので、これらの動向も踏まえながら、本委員会での議論を深めていきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。

【佐々木主査】  

 ありがとうございました。これは伺っておくということでよろしゅうございますか。また後で何かございましたら、この議論との関係で御質問等あろうかと思いますが。
 それでは、まず今日の中心的テーマについて議論をお願いします。本日は、昨年8月の会議の際に申し上げましたとおり、本委員会におけるこれまでの審議で議論になりましたさまざまな点について、9月以降、作業メンバーの方々に議論していただいたところでございます。先ほど御紹介がございましたように、そこに委員のメンバーのお名前を記しておきました。この議論につきまして、資料2-2としてお配りしました論点の抽出・整理という形で、それが取りまとめられているところであります。
 本日は、この論点につきまして、ほかに追加すべき論点がないかどうか等、さらには、例示されている今後の具体的方策の部分について付加すべき点がないかどうか、こうしたことを中心にして御意見をいただきたいと思っているところでございます。
 なお、資料2-1は概要、2-3が本文の参考資料という位置づけになっておりますが、この資料につきまして、事務局のほうから説明をお願いいたします。

【小谷技術移転推進室長】  

 それでは、説明させていただきます。
 まず、資料2-2の本文の目次を御覧いただきたいと思います。こちらでございますが、この論点の抽出・整理は1部が学術研究の意義と課題、そして1枚おめくりいただきまして2部がその振興に向けた具体的方策という構成にしております。
 資料2-1の概要の冒頭に検討の視点を書いてございますが、今回の検討に当たりましては、国家の国際競争力と科学の国際協調のバランスをとっていくことが重要であるということ、また、昨年のいわゆる事業仕分けの状況にかんがみまして、学術研究の振興につきまして、国民の理解と支持を得る観点から、科学技術政策研究所の協力を得まして、我が国が海外と比較してどうかということですとか、国内の状況について具体的なデータに当たりながら検討してまいりました。
 学術研究の意義でございます。これは昨年の当委員会における論点例ですとか、その後の学術分科会で御審議いただきました内容をなぞる形で振り返ってございます。概要にございますように、学術研究の社会的役割ですとか、学術とイノベーションとの関係、あるいは学術と人材養成の関係について触れました上で、概要では2ページ目、本文では4ページ目に当たりますけれども、学術振興の留意点として3つポイントがございます。
 すなわち、1つ目が研究者の自主性と研究の多様性の尊重、2つ目が学問の全分野にわたる均衡のとれた資産の形成・承継、そして、3つ目として学術研究と教育機能の有機的な連携と総合的な発展ということで挙げております。
 続きまして、現状と課題の分析でございます。本文では6から9ページがそれに該当しますが、参考資料の図表を用いて紹介させていただきますので、資料2-3の図表のほうを見ていただければと思っております。
 まず、図表1が世界の論文量の変化を示しております。これは一貫して増加傾向でございます。1枚おめくりいただきまして、では、主要国の論文数のシェアの変化がどうかでございます。これにつきましては、国際的な共著論文のカウント法を2つのパターンに分けまして調査しておりますけれども、こちらを御覧いただきますように、断然トップのアメリカの割合がだんだん下がっていく中で、日本が一旦第2位になったのですが、この数年で中国に追い抜かれて、今は第3位の地位にある形になっております。
 図表4でございます。論文の質というところで1つの指標である引用の回数ということで、引用回数トップ10%の論文シェアをこちらに書いておりますが、トップのアメリカの割合がだんだん下がっていく中で、その次にイギリス、ドイツがあって、そして日本というのがトップ10%論文数の日本の位置だったわけですけれども、これについても中国がどんどん追い上げてきていて、イギリス、ドイツと日本の差よりも、日本と中国の差のほうが縮まってきているといった状況にございます。
 その要因として考えられるものの1つとしまして、図表5にございますが、主要国において論文の共著形態が変化してきておりまして、イギリス、ドイツなどの国は、国際的な共著の割合が日本と比べて高くなっております。そうなりますと、1枚めくっていただきまして図表6にございますように、トップ10%論文の比率ですとか、あるいは論文当たりの被引用回数、これはいずれの国にしても当然そうだと思うのですが、海外との共著論文のほうが高いわけでございまして、そういったことが影響しているのだろうということで、これらのことから、中国の台頭ということと、学術研究における国際共著が進展していくことで、このままであると我が国の相対的な地位が低下傾向にあるのではないかと書いております。
 具体的な要因ですとか懸念材料として、6つ挙げております。1つ目が、図表7を御覧いただきたいのですけれども、そもそも主要国の研究費の推移でございますが、こちらにございますように、日本も伸びてはおりますけれども、アメリカや中国ほど伸びてはおりません。1枚おめくりいただきまして図表8にございますように、日本の政府負担割合は諸外国よりも低くなっている状況にございます。
 そして図表9でございますが、年平均成長率の右側のほうに書いてございます伸び率を見てみましても、日本は1991年から2000年までの伸び率より、2000年から最新年、直近の伸び率のほうが下がっているという状況がございまして、アメリカ、ドイツ、イギリス、中国などは、むしろ2000年以降の伸び率のほうが高いということがございます。それを1つの懸念材料として挙げております。
 2つ目は、学術研究基盤の脆弱化ということでございます。図表10のように、いわゆる競争的資金は、文部科学省のものでいいますと一貫して伸びてきているわけでございますが、図表11以下にございますように、国立大学法人運営費交付金、あるいは私学助成は低下傾向にございますし、それによって研究設備の予算も、図表13でございますが、21年度は補正で多くついておりますが、大体非常に少ないということ。それから私学などにつきましても、図表15、16に示しておりますけれども、こういった形で近年減少傾向にあるということでございまして、図表17のほうで施設の老朽化の状況を示しておりますが、国立大学ですと25年以上の老朽施設が58%、さらに未改修のものが全体の3割、このピンクですが、それぐらいを占めているといった形になっております。1枚めくっていただきますと、私立大学も老朽施設が42%ということで、教職員や学生の安全や衛生にかかわるような状況も見られるのではないかと思っております。
 大学図書館について図表19、20で示しておりますけれども、電子ジャーナルの充実とともにそれに係る経費は膨らんできておりますけれども、しかしながら、そもそもの図書館資料費ですとか図書館運営費は、実額としても、大学の総経費に占める割合としても減少しています。
 実際に、研究費がどのように変化しているとかいうのを図表21に示しております。平成15年度と20年度のものでございますが、やはり人件費は雇用にかかわることでございますから、なかなか削れません。では、どこを削るかとなりますと、原材料費を見ていただきますと、このように割合が減ってきておりまして、研究者の方お一人お一人が、こういった研究に必要な原材料をカットしながらしのいでいらっしゃることがうかがえるのではないかと思っております。
 3つ目の懸念材料が研究支援体制の脆弱化でございまして、図表22でございます。こちらにございますように、我が国においては研究者1人当たりの研究支援者数が、中国、韓国などもわりあい低いのですけれども、欧米と比べて非常に低い水準にある中で、図表23でございますが、その中でも特に大学は、我が国においてほかの組織と比べて低いという状況になっております。
 そういう状況も反映しておりますと思いますが、図表24でございます。これは母数は少ないのですが、研究者の方の職務時間とその内容について調査を行っておりますが、おおむね5%前後、職務時間そのものは増大してきているのですが、研究に関する時間の占める割合、実際の時間も減ってきてしまっているという状況が見てとれます。
 それから次の懸念材料としてございますのが、4つ目、科学研究費補助金の関係でございますが、図表26、27にございますように、予算は伸びてはきておりますけれども、新規採択率はまだ20%台前半で、ほぼ横ばいとなっている状況でございます。
 5つ目は大学のマネジメントの難しさということが挙げられると思います。図表28、29、30でございますが、国立大学につきまして、平成18年度末と16年度末の本務教員数と人件費を除いた内部使用研究費を出しました。そして、その比の伸び率について、それぞれの大学でどうなっているかを並べたものでございます。
 近年、競争的資金が増加したことによって、特定の大学ばかり競争的資金が集中して研究条件の格差が広がっているという指摘がございますが、こうして並べてみた限りでは、全体としてはいずれも上がっておりまして、伸びしろの高いところを見ましても、必ずしもそういう指摘が言えないのではないかと思われるような形に、少なくともこの図表上では表れてきております。
 大学は教育研究の向上に加えて社会貢献なども求められておりますので、必要な経費や教職員の負担は増すばかりだと思うのですが、やはり財政支援の増に対する国民の負担、理解や支持を得るということでは、研究費がどうなっているかということ、あるいはマネジメントをどうしてやっているのかもきちんと明らかにしていく必要があると思っております。
 6つ目は、学術研究職そのものの魅力の減少ということです。国立大学でございましても、5年間大学院に通いますと、入学料、授業料だけで300万円ぐらいは必要で、それに加えて当然修学に必要な生活費がかかるわけですけれども、図表31にございますように、大学院生の約4割に奨学金を貸与しているという形になります。ただ、奨学金は端的にいいますと借金ですので、図表32にございますように、給付型の経済的支援ということでいいますと、博士課程、後期課程で全く支援がないという人が少なくとも34%以上はいらっしゃるという形になっております。
 図表33ですけれども、博士課程修了者の進路として、1万6,000人ぐらいの方が修了されている中で、一番左側、進学も就職もしない方が5,000人弱ぐらいいらっしゃるということ。そして図表34でございますが、大学教員採用数と博士課程修了者の変化を見てみますと、平成9年ぐらいから修了者数のほうが上回って、アカデミックポストへの就職がなかなか困難な状況になってきております。また、図表35マル2は、博士課程の入学者充足率の推移を示しておりますが、多くの分野で入学者数も減少してきてしまっている状況になっております。こういったことが懸念材料としてあると思います。
 それから、これに加えまして、やはり学術研究の振興を図っていくために国民の理解と支持を得ることを考えますと、昨年の事業仕分けの状況が1つの象徴的な出来事だったと思いますし、また図表36では、OECDが15歳を対象に実施した調査結果をお示ししております。日本は高校1年生の回答ですけれども、科学を学ぶことの楽しさといったいろいろな項目がございますが、残念ながら57カ国中56位とか、57位とかいった状況でございまして、やはり大人社会の認識が子供のにも反映されているのではないかと思われるところでございます。
 駆け足でございましたけれども、このような現状分析のもとで、資料2-1の概要では3ページ、本文では11ページになりますけれども、我が国の学術研究が国際的な存在感を保ちながら発展していくために検討が必要な論点として、世界的に魅力のある学術研究拠点を形成するということ、学術研究の基盤的なシステムの発展に向けた取組の維持、強化をするということ、それから世界で活躍できる研究者の育成をするということ、そして新たな学問の発展に向けた取組の充実の4つを取り上げました。
 その前提として、国民の学術研究の振興に対する理解と支持の獲得が基本となるということで、第2部でそれぞれについて検討しているという形になっております。第2部は概要では、3ページの中ほどぐらい、本文では13ページからになります。
 まず1つ目の論点の学術研究拠点の形成につきましては、参考資料のほうに戻っていただきますと、図表37でございます。こちらでは自然科学分野について、主要国の分野ごとに、論文のシェアとトップ10%論文シェアの比較をチャートにして示しておりますが、こうした分野ごとの状況ですとか、我が国の産業構造等も踏まえて、世界を先導できる学術研究を支援する視点が必要だと書いております。
 また、人文学や社会科学につきましても、新しい文明を構築する価値観の形成ですとか、国際的課題に対する枠組み、ルールづくりへ参画すること、あるいは国際社会における我が国の理解を高める観点から、世界レベルの研究活動を支援する視点が必要としております。
 そのときの考え方として、図表38、39に我が国とイギリスの、これは自然科学分野に限られますが、国際的な査読つきのジャーナルに掲載された論文数の状況を示しておりまして、図表39のほうを御覧いただきたいのですけれども、日本とイギリスにつきまして、横軸は論文シェアを第1グループから第4グループまでシェアの高い順に、それから縦軸は大学の研究者1人当たりの論文数ということで、論文数が多い順に、上からクラス1からクラス4という形でマッピングしております。
 このマッピングを見ていただきたいのですが、イギリスのちょうどオレンジ色に塗っております部分、第2グループで1人当たりの論文数がわりと高いところの大学数、日本のほうが大学数は圧倒的に多いのですけれども、このあたりが、イギリスと違って日本は少し層が薄いので、こういったグループにおいて、得意な分野についてはある程度の研究集団がきちんと成果を挙げていく支援をしていくような仕組みをつくっていくことが必要だと思いますし、それから緑に書いております日本の第4グループ、日本の場合は、規模が小さいので論文を生み出すシェアは小さいのだけれども1人当たりの生産性は高い大学という、イギリスにはないタイプの大学が日本にはあるということですので、こういった点にも配慮しながら、多様な拠点を形成していく必要があるとしております。
 こういった論文だけに示されるような視点だけではなくて、日本独自のすぐれた研究もございますので、そういったことも支援することで、相対的な研究の層の厚みと幅を形成するということ、さらにその結果を、学協会が中心となってすぐれた成果を世界に発信していただくことが必要としております。
 本文の14ページのほうに考えられる具体策を示しておりますけれども、拠点に当たって、研究資金の提供のみならず、研究体制の整備のための支援が必要であること等について記述しております。
 次が2つ目の論点になりますが、持続的な学術の発展ですとか、最初の論点の学術研究拠点の形成のための前提にもなることで、多様な基礎研究をきちんと支援して、重厚な知の蓄積をする必要がございます。これが2つ目の論点です。
 図表40に戻っていただきますと、我が国の研究費の現状を示しております。研究費について、企業、非営利団体・公的機関、大学等のそれぞれの割合を示しておりますが、研究費の割合で見ても、やはり基礎研究を担っているのは大学です。
 しかしながら、1枚めくっていただき主要国の性格別研究費の割合を見ていただきますと、中国も基礎研究の割合は非常に小さいのですけれども、日本もほかと比べると割合が低水準にございますので、こういった基礎研究をしっかりやっていくという意味においても大学への投資が必要だということで、具体的に考えられる支援策の例を、7つの項目として掲げているところでございます。
 3つ目の論点は世界で活躍できる研究者の育成ということで、概要だと4ページあたりから、本文だと18ページぐらいになりますけれども、今、我が国の研究者の3割程度が大学の研究者と、これは統計上そうなっておりまして、その約3分の2に当たる18万人が教員の方となっておりますが、我が国の学術研究が世界と伍していくためには、教員数に相当する規模、20万人くらいの方が世界で活躍できる研究者であることが望ましい。そのためには毎年一定の規模、例えば研究者の方が第一線で活躍される期間を20年と考えた場合には毎年1万人ということになるのですが、そういった人材を育成することが必要となってくることになります。
 しかしながら、先ほどの資料で見てまいりましたが、こうした国にとって必要な人材の育成というのが、今は大学院生1人1人の熱意に大きく依存してしまっているのが我が国の現状でございますので、初等中等教育段階からの教育の充実に加えまして、大学院生への経済的支援の充実ですとか、あるいはポスドクの支援の充実が必要になると書いております。
 ただ、本文の19ページにありますように、すべての大学院生やポストドクターが我が国の学術研究を担うのに十分な資質を備えているわけではないというのも現実ですので、そうした中で学生を後押しするためには、仮に学術研究者にならなくても、専門性を生かして活躍できる機会が与えられるセーフティーネットが必要ということで、本文の19ページから21ページにかけまして、4つの項目について、考えられる具体策の例を掲げております。
 それから4つ目の論点が、社会問題の解決など新たな学問の発展に向けた取組の充実です。概要では5ページぐらい、本文では22ページからのところにありまして、異分野融合型ですとか学際型の研究の推進について記述をしております。
 最後が、学術振興政策の明確な位置づけと学術に対する国民の信頼と支持の獲得について記述しております。学術の振興抜きにして科学技術や教育の発展や振興もあり得ませんし、逆に、意欲を持って学術の世界に飛び込む優秀な若者が継続的に一定の規模はぐくまれる教育がなされなければ、学術の持続的な発展はあり得ませんので、考えられる具体策の例として、2つの項目を挙げております。
 以上、駆け足でございましたが、この論点の抽出・整理の作業では、論点を抽出するための現状認識についての議論が中心になりまして、具体的方策については必ずしも十分な議論はできておりませんので、具体的方策はあくまでも例としているところでございます。
 以上でございます。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。大変盛り沢山の情報が提供されておりますが、これにつきまして、御意見、御発言をいただきたいと思います。
 今日の中心テーマでございますのでぜひ、または作業メンバーのほうから何か御説明いただくという必要がございましたら、あるいは作業メンバーから、もし追加的な御発言があればいただきます。
 それでは、どうぞ御質問も含めて。

【柘植委員】  

 よろしいですか。

【佐々木主査】  

 柘植委員、どうぞ。

【柘植委員】  

 全体を通して、私は第4期科学技術基本計画に向けてあるべき姿の方向づけとしては、書くべきこと、あるいは考えるべきことは大分よくなったなと思いながら、ここにあることをしっかりとやっていったならば、今、我々が直面しているさまざまな問題、特に修士、博士課程の卒業生が世界的にしっかりとやっていける人材に育っていくのでだろうかとの不安が残ります。当然それは、彼ら、彼女らの成果としては、学術的な価値を生み出していくことですが、第4期科学技術基本計画の効果を見るとなると、あと6年かかるわけですが、今抱えている問題が本当に、大丈夫だろうかというのは、正直なところ自信が持てないのです。
 例えば、資料2-2の論点抽出の中の考えられる具体的な方策の例として、14ページの①に世界的に魅力のある学術研究拠点という箇所がございますが、そこの2つ目の丸に大学院生に対する経済的支援が提案されております。もちろん今も実施されているのですけれども、これで、大学院の教育研究で抱えている問題が、本当に5年後にかなりよくなるのだろうかという点に焦点を当ててみたいと思うのです。
 この点は、経済的な、少なくとも大学院の学費と生活費、私としては、同期が社会に出て得ている年俸以上のものが報酬として大学院生に支払われないと、本当に意欲ある学生、能力ある学生が大学院に来ないのではないかと考えます。金額的な面でも、14ページに示された施策はそういう形で満たされるだろうかと疑問に思います。
 一方、資料2-3の42ページ、図表41ですけれども、ここでは主要国等の性格別研究費割合が書かれており、明らかに日本の基礎研究の割合が低水準だという数字が出ているわけです。そうすると、これは増やさないといけないわけですが、今の人材育成という面と重ねたときに、本当に解があるか? つまり基礎研究への支援を増やしていくことが、大学院生に対する十分な経済的支援と両立するのだろうか、ひいては、産業界のほうに7割ぐらいは出ていかないといけない博士課程修了者について、産業界とのミスマッチというものがこれで解消されるのだろうか。こういうような設問をしたときに、私はどうも打ち手に対してまだ分析不足ではないかと思います。分析不足のままで施策の方に落とし込んでしまうと、我々は5年後に同じような問題をまだ議論しているのではないかと、こういう不安を私は非常に感じております。
 以上です。

【佐々木主査】  

 それでは、今日はいろいろな論点を出していただくということでよろしいですね。どうぞ、ほかに。白井委員、お願いします。

【白井委員】  

 簡単に申し上げると、今の柘植委員の御意見と大体似ておりますが、若手を対象として、いろいろな施策がある。例えばキャリアパスを見せようといったことなど。そういう議論も非常にいいことなのですが、実際は、そういう職場が存在していない。予算は増やさなければいけないという必要は確かにあるけれど、仮にどういうところに予算を増やしていけば、これから参入してきた若い人たちはどういうイメージを持ち得るのか。ほとんどイメージを持てないというのが本当だと思うのです。
 要するに我々がどういうレベルで基礎科学をやり、学術をやり、どんな体制でどのぐらいのスケールで何をやらなければいけないのだということを国として思っているものがないと、若い人はイメージできない、参入する気は起こらないと私は思うのです。
 もちろん、今いる若い人たち、ポスドクにどれだけのお金を払ってあげなければいけないとか、生活が最低限成り立つようにしなければいけないというのは、そのときだけやっても、その先のキャリアパスは見えて来ません。
 ですから、私はやはり今回そういうところを少し描かないといけないのではないかという気がします。

【佐々木主査】  

 ほかにいかがでしょうか。

【谷口主査代理】  

 よろしいでしょうか。

【佐々木主査】  

 はい、谷口委員どうぞ。

【谷口主査代理】  

 資料2-3の図表36の「我が国の科学的リテラシーに関する意識」を見ると、57カ国中最下位となっています。大変ショッキングなことでありますが、科学を学ぶことの楽しさについて、これに対する関心の低さ、意識の低さはかなり深刻なことではないかと思います。
 実はこれが、今議論になっている、先ほどからの先生方から提起されている課題の根本にあるのではないでしょうか。もちろん、昨今ノーベル賞を受賞された先生方のころのサイエンスと今のサイエンスとは大きく異なっているというのが、1つ背景にあると思います。戦後から60年代ぐらいまで、科学を振興すれば社会のために役に立つという比較的おおらかな時代があったのだと思います。
 それが、私も実感したことでありますけれども、それ以降、国際的にサイエンスが国家戦略として、つまり、進歩の原動力から問題解決の手段として捉えられ、その国の経済成長を含めた豊かさの指標になるという戦略的な位置づけがなされたということから、おのずと目的思考的な発想に陥らざるを得ないと。そこで、研究を行う研究者たちも、そういう観点からの研究や教育、という方向性が進んできたのではないかと思います。おそらくは大学院の重点化もその問題と無関係でなないのではないかと私には感じられます。結果的には、大学がそれに追いつけていないというところから、大変悩ましい状況が生まれているのだと思います。
 サイエンスをするのは人であり、機械がするわけではないので、仕組みをつくれば、新しい機械が動くとか、そういうものではないことは申し上げるまでもないのですが、人間の自由な発想や好奇心といったものをいかに育てるか、いかにそれを豊かにはぐくむのかというシステムがかなり大きく欠落しているという問題に踏み込まないと、新しい政策と言いますか、いわゆる自由をある程度保障する政策をやらないと、なかなか難しいのではないかと思います。
 幾つかポイントを整理して申しますと、教育に関しましても、やはり幼稚園というのは小学校に進学するための学校、小学校は中学校に進学するため、中学校は高等学校に進学するため、高等学校は、大学に進学するための学校であり、また、最近では大学は就職するためのところであり、いわゆる学ぶことの楽しさといったことが根本的に欠落した社会状況にあるのではないでしょうか。これは、やはり私も含めて、大学にいる人たちの大きな責任ではないかと思います。
 基礎科学力の強化という、小林先生をはじめ、大勢の先生方がおまとめになった中には、その問題が的確に指摘されていると思いますので、それは大学の人たちが重く受けとめるというのは非常に重要だと思います。
 それに加えて、我が国の大学院教育は、非常に貧弱です。大学の教員がいかにあるべきか、大学院教育がどうあるべきかということを踏み込んだところを、検討しないと、教育を受ける学生がかわいそうだというところがあります。
 自分の研究のお手伝いをする大学院生をできるだけ多く雇って、適当に学位を出すという人はいないと思いますが、間違ってもそういうことが起きないような仕組みというのを、大学人も真剣に考えるべきだと思うわけです。
 それから、科学技術政策においても、先ほど申し上げたように、おのずと国の経済の活性化のための仕組みをつくっていくために、自由な発想という本来の発見、発明が生まれる土壌が徐々に失われているという背景があります。これが相まって学生、若い人たちの科学への関心等が非常に薄れているのではないかということを私は非常に危惧しております。
 最後に、これはまた後で議論してもいいのですが、国際性の醸成といったときに、御存じのように日本の大学は学部はともかくとして、大学院でさえ日本語で教育をやっているのが現状なのですね。そういうところに、世界中から優秀な学生が来るかといった問題もあるわけです。
 これは、我々に課せられた大変大きな課題ではありますが、そういう根本問題を議論していかないと、これからの時代に向けた教育研究のあり方というのは成り立っていかないだろう、日本は大きな曲がり角に来ているのではないかというのが私の印象でございます。
 以上です。

【佐々木主査】  

 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。はい。それでは、白井委員。

【白井委員】  

 先ほどの意見をもう少し分析的に申し上げれば、今の谷口先生の御意見にも大変賛同するのですけれども、人の育て方と大学の今のあり方、まさに御指摘のとおりのことはさんざん議論されてきたと思うのですが、研究チームのつくり方、プロジェクトの遂行の仕方、そういうことも全部これまでの政策だと、1つ1つの大学単位で基本的には競争し、行ってきております。だけれど、このプロジェクトのつくり方とか、そういうものを、私は根本的にシステムを変えたほうがいいのではないかと思います。
 研究所というのは、もっとしっかりしたレベルの高いものにして、ジャンルごとにどれだけ必要かはそれぞれのことでしょうが、そういうものをしっかり据えて、ここに投資して、レベルの高い研究者はもちろんのこと、若い人たちもそういうところに参加してやれる。特にドクターコースの学生なんかはそういうことができるとする。
 それから、例えば今のコミュニケーション能力ということを取り上げるならば、海外に行って勉強するというのは、昔はそこで一生懸命自分のところにないものを勉強することだったけれども、必ずしも今、そんなことをする必要があるかと言われれば、ないかもしれません。
 しかし、コミュニケーション能力をつけるということであれば、そういう環境に放り込むことが一番簡単です。ですから、1つの教育の過程として、いろいろ研究分野があるから、強制ではないかもしれないけれども、どういう経験を持ってこなければいけない、どういうグループで経験を積んでこなければ一流の研究者になりにくいと、ある部分、例えば、大きなプロジェクトのやり方とか、特にドクターコースの学生の育成の仕方とか、そういうものを全く変えて発想してみるということは、私は非常に必要なのではないかと思います。
 そういうことも全部含めて、先ほど言ったキャリアパスの問題があります。必ずしも職業だけではなくて、こういう分野に行くとこういうチャンスがあって、こういう育てられ方をして、こういう偉い先生がいて、といったイメージを次々に見せていくことが、そこに人が参入してくるということになるのだと思います。

【佐々木主査】

 どちらかというと若手、あるいはポスドク、人材育成というあたりに議論が集中しております。大いに問題があることは言うまでもないことでありますが、合わせて大学の実態という問題も、もちろんほかの点もあろうかと思います。今の点でも結構ですが、ほかの点ももしあればぜひ出していただければありがたい。小林委員、どうぞ。

【小林委員】

 21世紀COEを廃止し、グローバルCOEを開始したわけですが、その際、数が約半分になったわけですけれども、そこでグローバルCOEに残ったところと、落ちたところのサイテーションを調べたというデータがあるのですが、残ったところはレベルが上がり、落ちたところはレベルが下がっているというものでした。これはかなりひどいことではないかという気がするのですね。COEの数というのは、私の印象ではグローバルCOEにするときにかなり恣意的に減らされたという感じがしますが、いろいろな政策をデザインするときには、ターゲットとしてどういう規模をねらうかということを、まずは先にそこを設定すべきではないかと思います。
 先ほどの大学院生をどういう規模で育てるかという点とは、同じ問題ではないかと思うのですけれども、研究教育の何が適正な規模かというのは難しいかもしれませんけれども、いろいろな状況から考えて、どこにターゲットを設定するかという議論がまずしっかりとあって、それに沿って必要なファンディングをしていくという考え方が必要ではないかなという気がいたしました。

【佐々木主査】  

 ありがとうございました。
 それでは、ほかにいかがでしょう。柘植委員。

【柘植委員】

 何がセンターピンかということから、先ほどの谷口先生の初等教育も含めた視点でありました。とにかく科学に対する面白さ、知ることに対する喜びというものを、初等教育から教えねばなりません。「感性は幼少、幼児教育からでないと磨かれない」ということを私も本で学んだのですが、次のことは実は本会議でも発言したのですけれども、再度申し上げます。学術の基本問題に関する特別委員会、さらにその上の科学技術・学術審議会での基本計画特別委員会の報告を見て、科学技術イノベーション政策、私は科学技術とイノベーションの間に中ポツを入れたほうがいいのではないかと思いながらも、科学技術とイノベーション政策を一緒にすることはいい方向だが、なぜ教育政策を一緒にしないのか。誰かが意図的に「教育」を消しているのではないかと勘ぐらざるを得ないぐらいに「教育」が欠けているという発言をしたのです。やはり学術の基本問題の話も、科学技術とイノベーションにプラス教育というものを正面からとらえて、これを三位一体で推進していくべきと考えます。その中で、教育は科学技術のためだけではないというお話も、正面から受けて、議論してやっていくのは当然の話です。その中でやはり高等教育だけではなくて、初等教育も含めていくべきです。谷口先生がおっしゃったことは、私は教育と学術・科学技術、イノベーションの三位一体を議論するということが必要であると考えます。そして、その三位一体的な司令塔機能や実行部隊も含めて、もう少しきちんと正確な具体的な制度設計をしないと、今の議論の答えでは、我々が安心できない、確信できないのではないかと思っております。

【佐々木主査】

 やはり教育の話も含めてというのは、これは前から柘植委員が言われている。家委員、何かございますか。

【家委員】

 先ほど小林先生がおっしゃったことに関係するのですけれども、資料2-3の図表39に、日本とイギリスの大学のある意味で規模とアクティビティの比較を示したものだと思うのですけれども、この資料にあらわれているように、英国の場合はトップレベルの大学と、セカンド、サードクラス、第2集団といいますか、そのあたりのところがかなり充実していると。
 日本の場合、例えば私の分野を思い浮かべてみても、このセカンドグループ、サードグループのところに立派な研究者がおられる大学はたくさんあるわけですね。それが、いわゆる選択と集中という政策を続けていくことによって、総分離が起こるのではないかということが非常に懸念されると思います。
 このあたり、やはり大学単位で競争させるとどうしてもそういうことになるのかなという気がいたします。やはり今の日本は、例えば科研費の新規採択率の低さを見ても、トップグループはそれでもやっていけると思いますが、セカンドグループ、サードグループ、一生懸命やっている中堅のところが非常に受難の時代であるような気がします。
 それを続けていくと、やはり日本全体の国力が非常に弱まるということを懸念しておりまして、ある意味でトップグループは放っておいてもやっていける。国策としてやるべきところは、次のところをいかにレベルアップしていくかということではないかなということを、この資料を見て考えました。

【佐々木主査】

 はい。わかりました。
 ほかにいかがでしょう。三宅委員、どうぞ。

【三宅委員】

 教育というものも含めてという話になったときに、全体の概要を整理したときの基調をどこに持っていくのかという問題については、作業メンバーによる打ち合わせもいろいろと議論が揺れていたと感じておりました。つまり国際競争力を上げるためにトップをどうさらに上に持っていくのかという議論と、下のすそ野の部分をどれだけどう支援するのか、どちらに力点を置くかという議論です。
 無難なところに正解を持っていくとしたら、すそ野が広くなければ、トップだって層が厚くなければ、上が伸びるわけがないという話になるのだと思います。その中で先ほど谷口先生が言ってくださったような、日本というのは、今15歳のレベルで科学に対する興味というものが国際的に低いというOECDなどのデータが出てきます。ここには実は、本委員会の中で何度も話題になりながら整理できなかった大きな問題が潜んでおりまして、その1つは実はこれは15歳だけの問題ではないということです。ある意味、科学が進み過ぎたことによって、社会の中にひずみが出てきているのではないかと感じている社会、文化があって、その文化の中で15歳は、親からそういうことを聞く、マスコミからそういうことを聞く、学校の授業の中に「環境教育」が入ってきて、そこでも場合によっては「科学が進むことによって世の中がこんなにだめになってしまったのだよね」というメッセージが、今文化の中でのコンセンサスとしてあるために、そのまま伝えられかねないという現状があります。科学技術をやってどうするのだという15歳の反応を引き出しているこの文化全体のことを考えないと、実はこの「15歳の科学不信」の問題が解けないという話になっています。そこを見なくてはいけないのだと思います。
 そこから見ると、やはり教育というものに対して、学校で行われているある一部の教育を取り上げて、うまくいっていないところに対処療法をやっていても、問題の本質的な解決にはならないと思われます。例えば、学校で行われているようなフォーマルラーニングというものに対して、家庭やマスコミ、社会一般で不断に起きているインフォーマルなラーニング場面の中でどれだけ質の高い情報がどれだけしっかりしたIT基盤の上で常に流れているかというところから議論し直さないと、この問題は実は解決できない。そういう観点をこの中にどうやって盛り込んでいくのかということが、私としては本委員会に参加させていただいたのにもかかわらず、大きな宿題として残っている話ではないかと感じております。

【佐々木主査】

 どうもありがとうございました。
 今のような点も含めて、御感想、あるいは御意見。それでは郷委員、次に樺山委員。では、郷委員。

【郷委員】

 三宅委員のお話は、同感なところがたくさんございます。
 先ほどからの論点整理も、今まで長いこと、いろいろなところで言われてきたことがやはり言われているのですね。それは、どこか1つ突破するということで今までやってきた。政策的に次の予算をどこかにつけましょうということでやってきたのですけれども、もうそういうやり方ではどうにもならないという、具体的な政策ということから言うと、そういうところに来ているのではないかという感じがいたします。教育の問題、それから科学技術、学術研究の問題にしても、全体が今はもうこのままのやり方ではうまくいかないのではないかという感じがしております。
 今、三宅委員がおっしゃったことは、本当に15歳がそういう環境などのネガティブなことを知ったために科学技術に対する興味を失ったのかどうか。そのあたりは御専門でいらっしゃるので、きちんとしたデータがあるのかどうか、私はぜひ知りたいと思っておりますけれども、世の中の、一般の人たちが、科学技術に対する漠然としたリテラシー不足なのだろうと思います。私どもは今まで一般の人たちによくわかってもらおうという努力をきちんとしてこなかったのではないかという反省もあるのですが、やはり一般の人たちの、例えばリテラシーが不足していたのではないかという感じがしています。御家庭の中で御両親がお話されていることが、子供たちにも伝わるのではないかという感じが私もしておりますけれども、具体的なデータとして、先生の御研究などで、本当に15歳がそういうことのために科学技術に対するリテラシーが不足しているのか、あるいはそうでないのか、このあたりはもし伺えたらと思います。
 それから、もう1つ非常に大きな問題は、小・中学校の教員養成の問題です。中教審のいろいろなところでも、それから国大協でも、要するに大学が関係しているのに、どうしてきちんと議論しないのかという点です。大学の学長をしておりましたときも、総合科学技術会議でも、いろいろなときに申し上げてきましたけれども、どこでも本気になって取り上げられていないという問題がある。これは大きな問題過ぎますが、感想でもよいということでしたので申し上げました。長期的なことをきちんと考えていかないと、教員養成は、これから10年、20年後の話になります。5年ぐらいの話ではないというのが、私の申し上げたいことです。
 すごく大きなことを考えないといけないのではないかということを申し上げて、ではどうするかという話が大事なことなのですけれども、そこは多分この科学技術・学術審議会ぐらいでないと、できないのではないか。理科の先生が文系の試験を受けて、理科の単位は本当にわずかしか取らないで、小学校で理科を教えているという事実などは、どうにかしなければいけないことは明らかなのですけれども、そういう問題が解決できていない。いろいろな問題があると思います。
 どこからやっていくかというのはすごく大変なので、あまり軽々しく申し上げられないのですけれども、何もかもというよりは、どこからやっていくかということを、やはりどこかで考えないといけない。この科学技術・学術審議会は、そういうことを考えていく場ではないかなという感じがしております。

【佐々木主査】

 樺山委員、どうぞ。

【樺山委員】

 2つほど、簡単な感想を含めて申し上げます。
 第1は、今、ここで大変議論になっております、いわゆる教育の問題なのですが、実は私、ある基礎自治体で教育委員長を務めておりまして、とりわけ小・中学校、及び前期中等学校、中等教育での教育のカリキュラム及びその現実についていろいろなことで悩まされております。とりわけ、科学技術もそうなのですが、中等教育及び高等教育につながっていくような諸問題について、小・中学校の教育がますますというか、著しく空洞化してきているということは、よく言われるとおりだと思っております。
 ただ、現場の先生方は、それなりに努力しておいでになりますし、ゆとり教育以降、先生方で非常に多忙な中でもって、従来とは違った形での理科教育、差し当たり理科だけではないのですが、理科だけ申しますと、実験を含む、あるいは観察を含むさまざまな教育実践を教室で行っておいでになるということは否定できません。
 ただ、全体として問題があるのは、1つは、これも近年いろいろに指摘されるようになりましたけれども、まずは幼稚園と小学校、つまり幼小の連携、あるいは小学校と中学校、小中連携、あるいはその上、中学校から高等学校へ、大学へ、上に行けば行くほど実は連携関係が悪い、あるいはそれについての十分な意識、認識を持っていない。一番悪いのは多分大学と高等学校かもしれませんが、大学の先生方は高等学校でどんな理科、あるいは科学教育が行われているかということについては、ほとんどおそらく関心がない。入学試験の問題は、そこまで高校生が何を勉強してきたかということとは無関係に出題されているというきらいがなくはありませんし、ましてその上に大学院及びそれ以降のさまざまな教育体系と、初等中等教育との間の関係、あるいは連携といったことについて、いま少し正確な理解と認識を持っていただきたいと思っています。
 近年では、例えば小学校と中学校、中学校と高等学校の連携について、いろいろと新しい試みも提言されていますけれども、全体としてはそれがつながっていないということ、結果として15歳少年が18歳になると、実はもっと科学リテラシーにおいて低下しているのではないかという心配があるということで、文科省も実は初中局と高等局との間にかなりの段差もありますし、そのあたりの制度上の工夫も含めて、いま一つ、科学技術という視野からもこの問題を直接に取り組んでいただきたいという感じがいたしております。それが1つです。
 それから、いま一つですが、今日の論点整理、大変広範にわたりまして議論していただき、じっくり読む暇がありませんでしたけれども、感心いたしました。
 ただ、1点だけ、この点はなぜ触れられないのか、言及されていないのかという点があります。それは、留学生問題です。留学生という言葉が、多分一遍も出ていないという気がするのですが、留学生はもちろん諸外国から来るわけですから、諸外国の政策の問題ではありますが、しかし近年、私どもの分野で申しますと、留学生の方々が日本で勉強し、日本で学位を取り、そしてその上でもって日本の大学、あるいはそれに類する知識生産組織、機関の中でもって、かなりのウエートを占めるようになりました。
 とりわけ、日本学とか、日本文学とか、日本史といった、「日本」がつく人文系の諸科学の中では、以前よりもはるかに多くの留学生の方々が日本に永住というか、あるいはしばしば日本に来られて、日本の学問を大変大きく変革しつつあるような、そういうきっかけが生まれてまいりました。
 これは、外国人が日本に来て職につくと、その分だけ日本のマーケットが荒らされるという議論もありますけれども、そういう狭い話ではなくて、やはり人文系もしくは社会科学系の中でもって留学生、あるいは外国から来た方々、研究者が、今後、日本の学問を変えていく、進行する、そういう可能性について、やはり少しずつ考えていく必要があるだろうと。そのあたりについて、いま少しこの論点整理の中に書き加えていただけたらなという感じがいたしました。
 以上です。

【佐々木主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ほかに。

【鈴村委員】

 よろしいでしょうか。

【佐々木主査】

 はい。それでは、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】

 学術研究基盤の脆弱化という論脈で、研究支援組織の問題が書かれています。問題が山積しているという記述は全くその通りだと思いますが、この箇所の書き方はかなり抽象的であることに、私は少しいらだちを覚えます。
 この国の内外の研究現場を経験した立場から言えば、日本の大学の学術研究組織は、優秀な人材の処遇や研究資金の効率的な活用という観点からみて、些か誇張が混じりますが穴が開いたバケツのような状態にあると思います。
 現在では、先端的な学術研究に対する研究資金の配分はそれなりに拡大しましたし、競争的な公共的資金配分メカニズムの活用によって、意欲的で実績のある研究者を的確に処遇して、競争プロセスを奇貨として道を拓く意欲を持つ大学には、飛躍のチャンスが拡大したことは確かだと思います。とはいえ、折角獲得できた研究資金や次世代の研究者の育成資金を効率的・効果的に活用するという観点からみれば、日本の大学の組織革新の足取りはあまりにも重いように思われてなりません。先端的な研究の推進や人材育成のニーズに的確に応えるためには、研究活動の継続的な支援を困難にする予算単年度主義が不合理であることは、既に語り尽くされています。それのみならず、先端的な研究者がリーダーシップを発揮するために活用すべき時間が、研究補助者を雇用する仕組みが整っていないために膨大な書類作業などに消尽されて、本来の指導的な役割の発揮のために活用されないという憂慮すべき事例が数多くみられます。日本の大学の内部組織は穴開きバケツだという誇張を敢えてしてさえ、現場感覚に根差したこの憂慮を強く訴えて、大学の内部組織を革新する足取りを速めたいと、私は思っているのです。
 競争的な研究資金配分のメカニズムを活用することによって、大学間の格差に対処するひとつの道が開けたことは結構な前進ですが、その効果が的確に発揮されることを担保するためには、大学内部の資金と人材の活用の水路の整備に力を傾注する必要が、いまこそ高いのではないでしょうか。アメリカの例をみてさえ、研究費による教育時間のバイバック・システムとか、研究補助者の継続的雇用によってラーニング効果を活用できるようにするなど、この主旨の水路整備の具体例は数多くあります。タックス・ペイヤーに対してアカウンタブルな方法で公的な資金の活用効率を高めることは、華々しくはないにせよ、大学の内部機構の重要な革新であると思います。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。
 それでは、谷口委員、どうぞ。

【谷口主査代理】

 先ほどから議論になっています教育の問題に関することを少しコメントさせていただくのと、あともう1点は、おまとめいただきました先生方も含めて、先生方で御議論の確認をいただきたいという点がございます。
 1点目は、先ほどからいろいろ議論が出ておりますように、インテリジェンス、知性というのは、私はこういう専門家ではないので恥ずかしいのですが、自分の造語で「アナリティカルインテリジェンス」というのと、「イントゥイティブなインテリジェンス」というのがあるのだと思うのですね。
 やはり、有名な生化学者の言葉の中に、「発見というのは、みんなが見るものを見て、誰もが考えないことを考えることから生まれる」という名言があるのですが、その「誰もが考えないことを考える」というのが、サイエンス、自然科学においては必須条件なわけです。ですから、アナリティカルインテリジェンスのない人に、イントゥイティブなインテリジェンスだけをというのは、少し無理があるにしましても、そのイントゥイティブなインテリジェンスの芽を摘んではいけないというのは、非常に強く感じます。
 今の初等教育から高等教育まで、基本になっているのは、やはり物事をいかに理解して、みんなが考えることを考えるか、理解するかがポイントで、大げさに言えば、考えないことを考えると、今の社会では生きていけないメカニズムになっています。それは、かなり根幹的な問題で、日本のこれからの科学立国を目指す人材育成を考えたときに、それなしには語れないのではないでしょうか。それこそが基礎科学力の強化のところで、先生方が御議論いただいたところだと思います。それが先ほど申し上げたことに対する1つの補足でございます。
 もう1点は、この委員会の上の分科会の委員の方と1度お話をしたことがあって、「やはり谷口さん、研究というのは、競争的な環境も重要ではあるが、寛容性のない環境というのは、独創的な研究を生まないのではないか」とおっしゃったのが非常に印象的でありました。私も全く同感です。お互いに価値観の異なった人同士が、お互いの異なることを認め合い、さらにそれを高めていくというプロセスの中にこそ、初めて新しい発見なり、新しい考え方、価値観の創生というのが芽生えてくるのだと思います。
 ところが、政府主導型という言葉は悪いかもしれませんが、型にはめるような政策をあまり押しつけますと、やはり寛容性が破綻してしまうということになるという点は非常に重要であります。
 次に、第2点目の問題ですけれども、資料2-3を拝見しますと、これは私の誤解だろうと思うのですが、一見大学等における1人当たりの研究資金というのはそんなに減っていないのではないかと思えます。このために、運営費交付金を減らしてはいけないと言っているけれども、それほど大きな問題にはなっていないのではないか、結局、効率化というのはうまくいっているので、大学の先生たちは一体何を言っているのだということに、間違ってもならないようにと思っています。その点に関してはどうでしょうか。一見、案外研究費が潤沢にいっているように見えなくもないというデータがありますが、ただ、現実は数値化できない疲弊感、数値化できないつらい側面というか、そういうものがございます。そこはきちんと論点整理をし、論理構築をしていかないと、突き破れるものも突き破れないのではないかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。

【佐々木主査】

 では、後のほうは何か検討の経緯で出たのでしょうか。

【小谷技術移転推進室長】

 図表28から30についての姿だと思うのですが、これは、そもそも運営費交付金が減少されて、競争的資金が高まっていくことによって、研究条件の格差がどんどん拡大しているとの指摘があります。これは、学術分科会でも御指摘のあった御意見だったので、検討の中でそのことを申し上げたところ、議論の段階で、では、それを示すことができるデータがあるのかということが、お一人の先生から御意見としてございました。それを受けて我々として作業したところ、今、世に出ているデータを集めた限りではこうなったという状況を示してございます。
 ですから、データの見かけ上こうなっておりますけれども、多分、本部に研究費が配分されて、それが学部にまた配分されて、それがまた学部から研究室に配分されていく中で、いろいろな研究費の動きがあると思うのですが、本当は研究室ごとのの配分実態まで調べていかないと、先生方がおっしゃっているような実情とずれた形でこのような結果になっているのではないかということが、打ち合わせの段階でも意見が出ております。そういった意味で、論点の抽出・整理の文章としては「国においても、それぞれの大学等における研究経費の配分状況として検証することが必要である」といった書き方でとどまっております。そういった状況でございます。

【佐々木主査】

 谷口委員、どうですか。

【谷口主査代理】

 先生方にどうぞお聞きください。

【磯貝委員】

 少しよろしいですか。

【佐々木主査】

 はい、どうぞ、磯貝委員。

【磯貝委員】

 少しだけ申し上げたいと思うのですが、1つは、これまでもお話が出てきているのですが、結局法人化されて大学で何が起きているかというと、やはり教員の職員化という問題がかなり大きいのですね。それをサポートするための、先ほども議論がありましたけれども、研究支援者を増やしてほしいという議論も一方であるのですが、ただ、制度的に今の国立大学法人の制度では、定常的にそういう人を増やせないシステムになっている。
 つまり、人件費枠の問題とか、いろいろな足かせがあります。先ほど鈴村委員が言ったことに近いことなのですけれども、5年で退職させろとか、それはあるいは一時的にお金をあげるから何とかその間にしなさいという定常性がない制度的な支援というのでしょうか、そういうことはこれまでもいろいろあるのですけれども、根本的なサポート体制というのでしょうか、これはかなりシニアな研究者に対する問題かもしれませんけれども、そこのところがやはり細切れでないような施策を考えていただけないかという気がするのです。
 特に研究補助者、あるいはスタッフといった事務員ではないスタッフ的な人たちが、恒常的に必要な人が大学の中にいられるシステムを、それは法人化したのだからそれぞれの大学で考えればいいとよく言われるのですが、実はそんなことはなくて、やはりいろいろな制約の中で、制度的に結構できないことがたくさんある。そこのところを何とかしていただけないかというのが、大学を運営していて思うことです。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。
 それでは、平尾委員、どうぞ。

【平尾委員】

 すみません。今までのお話を聞いていて、学術の基本問題から少し離れるかもしれませんが、先ほど留学生のことがないということだったのですけれども、産学連携が、この中に全然入っていません。ここ何年かは産学連携の予算という形で、大学の先生もパテントをとれとか、産業界から寄附を集めろという形で、正のスパイラルへ持っていこうとしていたのですけれども、経済状況がこういう状態で、寄付金もすごく減ってきているというのも事実なのです。そのあたりをもう少しうまく利用して、今の研究支援者とか、ポスドクの人たちをうまく産学連携のほうに橋渡しするなど、そういうところがもっとうまくいっていれば、このようなペシミスティックな話にならなかったのではないかと思っております。
 特に理系の人たちが興味を持つのは、やはり企業に入って、非常にいい発明をして、ある程度インセンティブで給料が上がるというところがあるということで進んできたと思うのですが、そのあたりの工学教育がどうも今ストップしているというところがあります。せっかくここまで産学連携で進めてきているところなので、そこをまだある程度維持して今後も進めていけば、大学にロイヤリティも入って、大学の運営もうまくいくのではないかということで、ぜひそういうところも産学連携でどう進んできたか、その政策は全然日本ではアメリカのようにうまくいっていなかったのかとか、そのあたりの検討が少し入ってくると非常によろしいかなと思いました。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。それでは、古城委員、どうぞ。

【古城委員】

 データが豊富で、私もいろいろ考えさせられるようなデータがたくさんありました。こういうデータをつけていただいたのは、非常によいのではないかと思います。
 それで、私は科学は科学ですけれども、人文社会科学のほうですので、その立場からこの提言の中に盛られていなくて、近年非常に考えさせられていることについてお話ししたいと思います。優秀な研究者が育たないと、おそらくその後に人を育てるということが途絶えてしまうので、そのことがとても重要なのですが、優秀な研究者に育ってもらうには、やはり皆さんおっしゃったように、ある程度優秀な人の母集団がないとなかなかうまくいかないと思います。最近、私が勤めている学科で問題になっているのは、卒業論文の全体的な質の低下です。卒業論文を書くことを通じて研究者の道に行こうと思う人がかなり多くなるのですが、最近、優秀な人は一握り、コンスタントにいるものの、全体としては卒業論文の質は下がっています。
 それはどうしてだろうということを同僚と議論するのですが、要するに、学生の質が落ちているというよりも、時間をかけない、かけていないというのがものすごく顕著なのですね。私たちは、学生が専門課程に進んでから、卒論については時間をかけるように注意を喚起するということはここ何年もやっているのですけれども、なかなか改まらないわけです。なぜかというと、近年の経済状況の悪化もあるわけですが、就職活動が3年次の最初のころから始まってしまうことが原因です。大学院に進もうか、どうしようかと迷っている人も、一応、就職戦線に乗っていくということがあって、専門課程に進むと同時に就職活動で忙殺されるという非常に変な状況がここ何年も続いているということなのです。
 この状況をある程度改善しないと、大学がいくらカリキュラムをいろいろつくったり、いろいろと授業を工夫したりしたとしても、なかなか学生が卒論執筆に集中しないという状況が続いていくのではないかと危惧します。
 先ほど社会の側のリテラシーの問題が出てきましたけれども、それと別の観点からの社会の問題なのです。このことについてどうにかならないかと考えますが、大学としてやれることには限界があると感じています。この問題は社会科学系にとって、人材の育成、教育という点からは深刻な問題であると思います。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。
 まだ御発言になっていない方で、特に何かございましたら伺いたいと思いますが。よろしゅうございますか。いろいろな論点が出たと思います。ただ、かなり大学の実態にかかわるいろいろな御指摘があって、私が聞いている限りでは基礎科学力のときもそうですし、結局重なった議論をあちこちでしているという面も相当ございます。ですから、ある意味では書き込む材料が既にあるものもありますし、他方で初等中等教育云々という話になると、あるのでしょうけれどもほかの局にあるというのもあるのかもしれません。そのあたりはまたお願いするということで。白井委員。

【白井委員】

 1つだけつけ加えていいですか。先ほどの論点を少しぶり返して悪いのですが、三宅委員の言われたことなのですが、確かに若い人たちや、社会全体に閉塞感があると、全くそのとおりだと思います。ただ、やはりそういう中でこそ学術や、文化とか、我々がやっていることの意味があるのだと思うし、どういうことを次の可能性として開くのか、どういうような部分の学問とか、研究を組み立ててやっていくのかということを見せて、初めて価値があると思います。だから、やはりポジティブに、広く科学技術ももちろんいいのだけれども、科学技術だけではなくて、科学技術だってやはりその環境だ、食の安全だって、幾らでもやることはあるわけですよね。それをネガティブにとらえるのではなくて、次の可能性を開くというようなイメージで、幾らでも組み立てることができると思うから、展開として、計画を見せていかないといけないのではないかなという気がします。

【佐々木主査】

 それはもちろんだと思います。おそらく、トーンとして、今、古城委員からお話があったようなことだとか、いろいろなことがあって、ますますじり貧が悪いほうへ回り始めているという雰囲気もあるという中でございますので、それは実態を否定する、無視するというものではないのですが、その先には何もないということを確認した上で、もう一度シナリオをつくり直すということをやはり腰を据えてやるしかないのではないかなという感じは、私自身はしておりますので、そのようなことを今、白井委員も言われたのではないかと。

【白井委員】

 もっと言えば、今の若い人たちに見せているのは、我々の将来、何が一番いいのかと言ったら、一流企業に入ったら何とか一生全うできるというような姿しか見せていないですよ。そこの競争以外に何もないということ自体が、もちろんオリンピックに出るとか、若干そういうのはあるかもしれないけれども、非常に乏しい。だから、やはり何かをつくり出すことの夢というのか、それがどういうところでできているのかということを、もっと強く見せないとわからないと思いますね。それで社会からのいろいろな意見が出てくるのだと思います。

【佐々木主査】

 それで、この件につきましては、今日の議論を整理していただいて、引き続き、また大変御苦労さまですけれども、検討を加えていただくということになろうかと思います。

 そこで、もう一つ、あまり長い時間は必要といたしませんが、平成22年度予算案の概要についての説明も今日のシナリオの中に入っておりますので、これを石﨑室長からお願いします。

【石﨑学術企画室長】

 それでは、平成22年度予算案について、御説明を申し上げます。
 資料の3を御覧いただきたいと存じます。まず3ページをお開きいただければと思います。
 平成22年度予算案についてでございますけれども、3ページの一番上にございますように、22年度の予算案のポイントといたしましては、「コンクリートから人へ」の理念に立ち、「人と知恵」を産み育てる施策に重点化していくという観点から、そこの表にございますように、平成22年度予算額の案としましては、5兆5,926億円ということで、対前年度比で約3,100億円の増ということで、増加率5.9%ということになってございます。
 この増額の大きな要因は、3ページの下のほうにございますけれども、公立高校の授業料無償化の創設等ということで、こちらの増額が、全体の増額の大きな要因となっているというところでございます。
 恐縮ですが、6ページのほうを御覧いただきたいと思いますけれども、文科予算の中で、特に科学技術予算についてでございますけれども、科学技術関係予算につきましては、その表にありますとおり、平成22年度は1兆344億円ということで、昨年度に比べまして105億円の減という状況でございます。
 ただし、21年度の第2号補正が240億円あったと星印のところに書いてございますけれども、こちらがあったということでございまして、一番上に記述してございますように、第2号補正予算を含めますと対前年度135億円増ということになっているという結果でございます。
 少し飛びますけれども、21ページをお開きいただければと思います。こちらが学術研究の関係予算をまとめた資料でございますけれども、まず、基盤的経費の関係で申しますと、国立大学法人運営費交付金については、1兆1,585億円ということで、約110億円の減額、私立大学等経常費補助金については、3,345億円ということで、約29億円の減額ということになってございます。
 また、下から2つ目の丸にございますように、国立大学法人等施設整備費につきましては、503億円。こちらは62億円の増額ということになってございます。
 また、一番下にございますけれども、新規の予算といたしまして、最先端研究開発戦略的強化費補助金というものが400億円新規で計上されているというところでございます。こちらは後ほど詳しく説明したいと存じ上げます。
 22ページを御覧いただきたいと存じます。競争的資金の関係でございますけれども、まず、科学研究費補助金につきましては2,000億円が措置されまして、30億円の増額ということになってございます。また、グローバルCOEプログラムにつきましては、265億円ということで、77億円の減額。それから、22ページの下に人材育成の関係の予算が入っておりますけれども、特別研究員事業につきましては、167億円ということで、4億円の増額ということになってございます。
 23ページの(4)としまして、学術国際交流関係の予算が2項目記述してございますけれども、こちらはいずれも減額という形になってございます。
 それから、25ページ以下には、昨年行われましたいわゆる事業仕分けの結果と、それに対しまして文部科学省では国民の皆様方から意見募集をいたしましたので、その意見募集の概要というものをまとめた資料をお示しさせていただいているところでございます。
 まず、文部科学省で行いました意見募集につきましては、事業仕分けの結果を受けまして、文部科学省のホームページを通じて、11月中旬から1カ月間実施したものでございまして、総数で約15万3,000件の御意見を賜ったところでございます。
 恐縮ですが、29ページのほうを御覧いただきたいと思います。29ページの左のほうに競争的資金(先端研究)という部分がございますけれども、まず、競争的資金については、この先端研究というくくりで仕分けの対象となったところでございます。29ページにはいわゆる科振費、それから1ページおめくりいただきまして、30ページのほうでは科学研究費補助金のうち、特別推進研究、特定領域研究、新学術領域研究、基盤研究(S)、それから30ページの下のほうでは、戦略的創造研究推進事業などが一くくりになりまして、事業仕分けの対象となったということでございます。
 恐縮ですが、29ページにまたお戻りいただければと思いますけれども、その事業仕分けの結果につきましては、まず制度を一元化も含めてシンプル化するということと、予算につきましては整理して縮減という評価結果をいただいたところでございます。
 それから、特に科研費につきましては、何回も恐縮ですが、30ページをお開きいただきたいと思いますけれども、真ん中に国民から寄せられた意見という欄がございますが、科研費についての御意見については約800件の御意見がございました。事業仕分けの結果に賛成する御意見はごく少数で、ほとんどの御意見が結果に反対ということで、例えばトップダウン型の研究資金や、ボトムアップ型の科研費というものを一元化するということは、円滑な事業遂行を妨げるのではないかなどの御意見が見られたところでございます。
 それから、続きまして33ページのほうに飛んでいただければと存じますけれども、こちらは、競争的資金を若手研究者育成というくくりで事業仕分けが行われたものでございまして、33ページの下の欄に、科研費の若手研究関係のものもこの中で仕分けの対象となったということでございます。
 評価結果については、予算要求の縮減ということが行われまして、これに対する国民からの御意見につきましては、科研費については約1,400件の御意見を賜ったところでございまして、こちらにつきましてもほとんどの御意見が反対ということで、こちらは34ページのほうを御覧いただければと思いますけれども、反対ということでございました。
 それから、特別研究員事業につきましても、事業仕分けのこのくくりの中で対象になりまして、こちらについての御意見は約1,000件の御意見がありまして、こちらも結果には反対するという御意見が大半であったという結果でございます。
 それから、恐縮ですけれども、53ページの資料を御覧いただければと思いますけれども、先ほども少し触れましたけれども、最先端研究開発戦略的強化費補助金が措置されたことに関連しまして、最先端研究開発支援についての全体像を少し御説明させていただければと存じます。
 こちらに新しく措置されました最先端研究開発戦略的強化費補助金につきましては、昨年の補正予算で措置されました最先端研究開発支援プログラムというものがございますが、こちらを一層強化、加速、それから相互補完するものとして認められた補助金の予算でございます。
 最先端研究開発支援プログラムにつきましては、もともと2,700億円の規模で日本学術振興会に基金を設けて研究助成を行うというものでございましたが、予算の見直しの結果、現在は1,500億円に縮減されているところでございまして、そのうち1,000億円につきましては、昨年9月に選定されました30課題の研究課題に充当し、残り500億円につきましては、新しく若手・女性の研究活動を支援するために使っていくという方針が示されているところでございます。
 400億円の補助金につきましては、そのうち100億円程度を1,000億円により助成する30課題のほうにさらに上乗せしまして、その研究を加速化、強化するために使用していくという方針になっているところでございます。残りの300億円につきましては、基金で処置します500億円の支援対象であります若手・女性への研究活動支援と相互補完の関係に立ちまして、若手等が活躍する研究基盤を強化するという観点から、研究基盤の整備、運用などの経費、そして海外への研究者派遣(武者修行)の機会を提供するということで、充当していこうということで、現在全体を検討しているというところでございます。
 以上でございます。

【佐々木主査】

 ただいまの御説明、この際、何か御質問ございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 予定しておりました議題がこれで終了いたしましたので、今後の予定等について、何かございましたら事務局からどうぞ。

【石﨑学術企画室長】

 次回の委員会の日程につきましては、現在未定でございます。また皆様方の日程を調整させていただいた上で、後日、また改めて御連絡させていただきます。
 なお、本日御用意させていただきました資料につきましては、お手元に配布してございます青い封筒にお名前を御記入していただければ、後ほど郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 なお、ドッチファイルで配布しました机上資料につきましては、お持ち帰りいただくことなく、机上に置いていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【佐々木主査】

 ありがとうございました。
 それでは、本日の会議はこれにて終了いたします。

 

 

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