学術の基本問題に関する特別委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成21年8月25日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

佐々木委員、谷口委員、小林委員、白井委員、家委員、鈴村委員、郷委員、古城委員、沼尾委員、鷲田委員

(科学官) 
 縣科学官、喜連川科学官、佐藤科学官、福島科学官

文部科学省

磯田研究振興局長、倉持研究振興局担当審議官、土屋総括審議官、藤原会計課長、中岡政策課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口研究助成課長、松川総括研究官、石崎学術企画室長、小谷技術移転推進室長 その他関係官

4.議事録

【佐々木主査】 

 定刻になりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会の第6回会合を開催いたします。
 まず、事務局に人事異動があったということでございますので、ご紹介をお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 7月14日付で、大臣官房総括審議官に土屋定之が就任してございます。
 また、同じく、7月14日付で、科学技術・学術政策局政策課長として、中岡司が就任してございます。
 それから、私、8月1日付けで、学術企画室室長補佐から学術企画室長に着任いたしました、石崎と申します。引き続き、本委員会、それから学術分科会の事務局を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 続きまして、配付資料の確認を事務局からお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 本日の配付資料につきましては、議事次第の2枚目に配付資料の一覧を添付してございます。ご確認の上、欠落等がございましたら、事務局までお知らせいただければと存じます。
 また、これまでの配付資料につきましては、ドッチファイルといたしまして机上に置いておりますので、適宜ご参考いただければと存じます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 本日の議事にこれから入りますが、そこにございますように、実はこの間、いろいろな委員会等におきまして、基礎科学力強化に向けた提言とか、総合戦略及び第4期の科学技術基本計画の策定に向けた委員会の議論が進んでいるところでございます。本日は、それらの提言等につきましてご報告を申し上げ、皆さんからご意見を伺いたいということでございますので、我々の本来の議題を議論するのと少し違ったことになりますけれども、大事な機会でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 まず、本日1つ目の議題であります、「基礎科学力強化に向けた提言」及び「基礎科学力強化総合戦略」についてでございますが、これは理化学研究所の野依理事長を座長とする「基礎科学力強化委員会」を設置いたしまして、基礎科学力強化に向けた中長期的な課題を議論してきた、その結果をまとめたものでございます。この委員会には、小林委員や私、それから、本日ご欠席ですが、柘植委員も参加いただいてまいりました。今月4日に、「基礎科学力強化に向けた提言」をとりまとめ、さらに、この提言の実現に向け、文部科学省におきまして、「基礎科学力強化総合戦略」が策定されました。そこで、その内容につきまして、石崎室長のほうからご説明をいただきたいと思います。
 では、よろしくお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 それでは、「基礎科学力強化に向けた提言」及び「基礎科学力強化総合戦略」についてご説明申し上げます。資料といたしましては、資料1-1が「基礎科学力強化に向けた提言」の要点、資料1-2が「基礎科学力強化に向けた提言」、それから、資料2-1が「基礎科学力強化総合戦略」の概要の1枚紙、資料2-2が「基礎科学力強化総合戦略」というふうになっているところでございます。
 まず、「基礎科学力強化に向けた提言」につきまして、ご説明を申し上げます。本提言のとりまとめに至りました経緯について、まずご説明させていただきます。昨年、本日ご出席の小林委員をはじめ、我が国の4名の研究者の方がノーベル賞を受賞されまして、我が国の基礎科学力の水準の高さが世界にも示されたところでございます。そのさらなる強化を図るために、文部科学省におきまして、ことし1月に塩谷文部科学大臣を本部長とし、事務次官、それから関係局長から構成されます「基礎科学力強化推進本部」というものを設置いたしました。また、本年4月には、基礎科学力強化に向けた中長期的な課題をご審議いただくために、独立行政法人理化学研究所の野依理事長を座長といたします「基礎科学力強化委員会」が設けられたところでございます。本委員会の構成につきましては、資料1-2の23ページにございますように、先ほど佐々木主査のほうからもございましたが、本委員会の佐々木主査、それから小林委員、柘植委員にもご参加いただきまして、ご審議にご尽力いただいたところでございます。この基礎科学力強化委員会では、短期間ながら、精力的なご議論をいただきまして、今月4日に提言がとりまとめられ、塩谷文部科学大臣に提出されたところでございます。
 それでは、提言の内容につきまして、ご説明を申し上げたいと存じます。時間の都合もございますので、資料1-1の提言の要点の資料に沿いまして、ご説明を申し上げたいと存じます。
 まず、基礎科学力強化のための基本的な考え方というものが提言の中で示されてございまして、国是としての科学技術創造立国の意義を再認識し、基礎科学力の抜本的な強化が必要であるということ、それから、政治のリーダーシップの下、国家の最重要戦略として、科学技術の振興に「社会総がかり」で取り組むべきという基本方針が示されております。また、基礎科学力の意義につきましては、「人類の英知の創出・蓄積」と「イノベーションの創出」ということが明確にされまして、世界水準をしのぐ基礎科学力なくしては我が国の未来はない。しかし、現下の状況は、現実に逃避し、危機意識が希薄である。国際競争力に科学技術の果たす役割・重要性に関する国民の十分な理解のもとに、先進諸国と同水準以上の十分な公的資金の投入が不可欠ということを提言していただいております。また、リーダーたるべき創造的人材の育成が喫緊かつ本質的な課題となっており、特に大学人と社会全体の意識改革によって、大学院教育の抜本的改革を進め、新たな「研究人材養成システム」を構築することが極めて重要と提言をいただいているところでございます。さらに、初中教育からの未来の人材育成、世界水準の研究拠点の整備、研究者優先の研究システムの改善、さらには創造的な研究風土の醸成までを包括した、総合的かつ体系的な基礎科学力強化策を展開し、実行していくべきだという考え方を示していただいたところでございます。
 続きまして、個別の論点でございますけれども、1つは、人材の育成ということでございます。研究人材の養成システムということについてでございますけれども、まず個性的で豊かな創造性を有し、挑戦し、「やりぬく力」のある人材の育成が必要である。そのため、「出る杭を最大限に伸ばし育てる」ということが基本になる。また、国際的に頭脳獲得競争による人材流動性が高まる中、我が国が研究者にとって国際的に魅力ある国にならなければならないとの認識を示していただいております。
 次に、大学院教育等の抜本的改革といたしまして、志ある最も優れた若者を最高の知の府たる大学院で、世界水準で最高の研究人材・知識人に育成する必要がある。公的な財政支援を抜本的に拡充し、経済的な支援も含め「学生の立場に立った」大学院改革を実行すべき。大学院改革、大学人の意識改革、公的財政支援を一体的に進めることを検討すべきであるというご提言をいただきました。
 未来の創造的人材の育成ということにつきましては、小学校から大学までの各教育段階における理数教育の充実を図るとともに、イマジネーションや構想力を持つ創造性豊かな人材を育成する仕組みを構築すべき。また、社会において科学技術に対する関心が共有されることが重要であるということから、科学技術に関するリテラシーの向上を図ることも必要であるとの提言をいただいております。
 次に、公的資金の抜本的拡充についてでございますけれども、「経済危機だからこそ未来に投資すべき」であるという考え方に立って、高等教育及び基礎科学を含めた科学技術への政府投資の抜本的拡充が必要である。資金配分については、研究者を優先した柔軟性ある制度への改善も必要である。また、国立大学等の運営費交付金、私学助成等について、現在行われておりますマイナス1%の削減方針を撤回すべきだという力強いご提言もいただいているところでございます。
 3番目に、研究推進システムの項目につきましては、我が国は研究者に対する支援機能が著しく劣っており、研究支援機能の抜本的強化が必要。第一線の研究者が結集する世界トップレベルの研究拠点の形成と、当該拠点のシステム改革の維持・発展が必要である。世界最高水準の人材を積極的に受け入れ、定着させるなど、研究環境のグローバル化の推進が必要との提言をいただいたところでございます。
 以上の提言の内容を踏まえまして、文部科学省基礎科学力強化本部では、8月4日付で、この提言の内容の実現に向けたアクションプランを、「基礎科学力強化総合戦略」として策定いたしたところでございます。
 この戦略におきましては、基礎科学力の意義が、先ほどもございましたように、「人類の英知の創出と蓄積」、それから「イノベーションの創出」にあるということにかんがみ、このような基礎科学の特徴を踏まえた独創的・創造的な研究風土を醸成するという基本認識に立って、国是として科学技術創造立国を再認識し、基礎科学力の強化に「社会総がかり」で取り組むとの基本戦略のもとで、5つの具体的な戦略が掲げられているところでございます。
 その5つの戦略についてご説明をさせていただければと存じますが、資料2-1の1枚紙の資料をごらんいただければと存じます。
 まず、戦略の1つ目は、新たな研究人材養成システムを構築するということから、「若手研究人材養成総合プラン(仮称)」の実施というものを掲げております。この横長の資料ですと、ちょうど真ん中にあるところでございますけれども、具体的には、そこにも書いてございますように、まず若手の自立と活躍の場を確保するということで、「特別研究員制度」の拡充等を進めるとともに、「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業」を新たに創設して実施していくということ。この内容につきましては、博士課程の学生等の参画による研究推進体制の整備と、その人材育成を一体的に行うような研究システムを今後構築していこうということを内容とするものでございます。そのほか、若手による挑戦的・独創的な研究の推進、積極的な海外派遣による武者修行の奨励、牽引力ある研究人材の養成などを総合的に進めていこうとするものでございます。
 戦略の2つ目は、大学院、大学院教育等の充実・強化を図るという観点から、大学院への経済的支援と大学院教育の充実を掲げているところでございます。資料の右上の四角の中にございますけれども、具体的には、大学等の国際化を推進する。それから、経済支援等による大学院教育の充実ということで、競争的資金におけるTA(ティーチングアシスタント)・リサーチアシスタントの雇用を促進していくということ、それから、大学院生に対するティーチングアシスタント等の経済的支援を強化していく、そして、教育研究支援体制の整備という内容を総合的に進めていこうというものでございます。
 戦略の3つ目は、初等教育から高等教育まで、未来を担う創造的人材を育成するとともに、国民の科学技術リテラシーを向上させるという観点で、未来を担う創造的な青少年の育成というものを掲げてございます。資料で言いますと、下側に掲げてある項目でございますけれども、具体的にはここに記述してありますように、才能を見出し伸ばす取組の充実、国際科学オリンピックへの支援を充実する、あるいは「スーパーサイエンスハイスクール支援事業」を拡充するなどでございます。それから、理数好きな児童生徒の裾野を拡大するということで、理数指導において中核的な役割を果たす教員養成支援を拡充していこうということを内容とするものでございます。
 それから、戦略の4つ目でございますけれども、公的資金の拡充を目指すとともに、研究者を優先した柔軟な研究資金配分システムを構築するという観点から、競争的資金等公的資金の拡充と運用改善ということを掲げているところでございます。ちょうど左上の四角の中にある内容がそれにあたりますけれども、具体的には、大学や研究開発独法の基盤的経費の確実な措置、それから、戦略的基礎科学研究強化プログラムを創設ということで、こちらにつきましては、傑出した研究成果を出しうる潜在能力を持つ研究者による基礎研究を長期――大体10年を見越しておりますけれども――にわたり支援していく制度を構築していこうというものと、これにつきましては、ノーベル賞級の卓越した内外の有識者から委員会を組織いたしまして、そこで選定するという仕組みを設けていこうということを内容とするものでございます。このほか、科研費の拡充による基礎研究強化とその裾野の拡大、戦略的創造研究推進事業の拡充、それから、政府全体で取り組んでおります最先端研究開発支援プログラム運用などを内容としているものでございます。
 それから、戦略の最後、5つ目でございますけれども、世界水準の拠点を形成するとともに、研究の支援体制を強化するという観点で、世界水準の拠点形成と研究支援強化を掲げているところでございます。資料の右の下側の四角の中にある内容がこれに当たりますけれども、具体的には、世界的水準の研究開発拠点の形成ということで、世界トップレベル研究拠点(WPI)の拡充と先進的なシステム改革の持続と発展、それから、研究支援体制の抜本的強化ということで、「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業」の創設、こちらにつきましては、ポストドクター等の高度専門人材を活用した研究マネジメント体制や組織横断型の研究技術支援チームを整備していこうということを内容とするものでございます。このほか、グローバル化を推進していこうということを内容とするものでございます。
 以上で戦略の説明を終わらせていただきますが、文部科学省といたしましては、この戦略を踏まえまして、基礎科学強化というものを最優先事項として、今後、全力で取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 経緯も含めて大要のご説明をいただきました。そこで、何かご質問、ご意見等ございましたら、お出しいただきたいと思います。
 それでは、次の基本計画もございますので、またそこでご意見があれば、これについても出していただくということにして、少し次のものが重いものですから、そちらのほうへ進ませていただくということで、ご意見については、また時間をとってご発言いただくようにしたいと思います。
 そこで、「第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめ【論点例】(案)」についての審議をお願いしたいと思います。
 本委員会では、これまで、学術の基本問題に関する論点の整理ということで、「学術研究」の意義・社会的役割、学術研究の推進に向けた学術研究基盤の在り方、研究費の在り方、研究者養成の在り方、研究支援体制の在り方などにつきまして議論を進めてまいったところであります。これらの議論をもとに、今後の論点とすべき事項として、「これまでの審議の整理」をまとめて、6月の学術分科会で報告をさせていただいたところでございます。
 現在、科学技術・学術審議会におきまして、「基本計画特別委員会」が設置されておりまして、第4期科学技術基本計画の策定に向け、盛り込むべき事項の検討が進められているところであります。
 学術分科会としても、この科学技術基本計画の策定に向けた学術研究の今後の推進方策につきまして、基本計画特別委員会の議論に反映されるように、報告してまいりたいと思っているところでございます。
 本委員会は、学術の基本問題についての議論を進めるとともに、第4期科学技術基本計画の策定を視野に入れた議論を進めていくことも、いつぞやご説明したように、我々の任務であるわけでありまして、本日は、学術分科会での審議に資するよう、第4期科学技術基本計画に盛り込むべき学術研究の推進方策についてご検討いただきたいと思っております。
 なお、事務局のほうで、これまでの本委員会での議論や学術分科会の各部会での議論をもとに、第4期科学技術基本計画の策定に向けた論点例を作成しているところであります。
 資料4にございますように、「第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめ【論点例】(案)」を配付しておりますが、そこで提示した論点例につきまして、それらを中心にして皆様にご議論をいただき、重要な論点や付加すべき事項について、ご意見をいただければと思っているところでございます。その意味で、事務局から論点例の案を出していただきましたので、その説明をしていただき、その上でご議論に入りたいと思います。
 それでは、石崎室長、続けて説明をお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 それでは、ご説明申し上げます。
 まず、資料4にございます論点例の説明に入ります前に、資料3に基づきまして、第4期科学技術基本計画の策定に向けた今後のスケジュールというものにつきまして、まずご説明したいと存じます。
 左のほうにございますけれども、科学技術・学術審議会の中に、現在、「基本計画特別委員会」が設けられてございます。平成21年4月28日に設置されまして、平成21年6月2日に第1回会合が開催されておりまして、これまで審議が続けられているところでございます。こちらの基本計画特別委員会のほうで、まず文部科学省として第4期科学技術基本計画に対してどのような考え方で臨むのか、あるいはどのような内容を盛り込むのかにつきましては、この特別委員会のほうで審議をいただき、その内容をとりまとめていただくということになってございます。現在の予定では、ことしの12月にとりまとめをするという予定で審議が進められているところでございます。
 下のほうに内閣府、それから総合科学技術会議等というように書いてございますけれども、ことし12月に科学技術・学術審議会基本計画特別委員会でとりまとめられた内容につきましては、総合科学技術会議のほうにご説明といいますか、盛り込まれるような感じで、その内容が移っていくということになってございまして、その後、総合科学技術会議の中で科学技術の基本政策についての審議が約1年間程度行われるというふうに聞いてございますけれども、審議が行われて、答申がなされる。その答申を踏まえて、第4期科学技術基本計画が策定され、今の予定ですと平成23年3月ごろに閣議決定をされるのではないかという流れで来ているところでございます。
 今後、ことし12月に科学技術・学術審議会でのとりまとめをした後に、今度は内閣府の総合科学技術会議のほうに舞台が移りまして、ご審議いただき、その後、閣議決定につながっていくという、これが大まかな第4期科学技術基本計画の策定に向けたスケジュールでございます。
 それで、本基本問題に関する特別委員会、それから学術分科会できょうご審議いただく内容につきましては、基本計画特別委員会にご報告させていただきまして、そこで内容として盛り込んでいただくということを考えていただくということで、本日ご審議をいただくということになっているということでございます。
 それでは、資料4の「第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめ【論点例】(案)」についてご説明を申し上げたいと存じます。本資料は、主にこれまで本委員会でのご議論を踏まえまして、第4期の科学技術基本計画に学術の観点から盛り込むべき事項を論点案としてとりまとめたものでございます。資料5には、本委員会における主なご意見を項目別に整理してございますので、こちらにつきましては、後ほどご参考にしていただければと存じます。
 それでは、資料4に沿ってご説明をさせていただければと存じます。
 資料4の1ページ目をごらんいただければと思いますけれども、まずこちらにつきましては、具体的な論点に入る前に、第4期科学技術基本計画に学術の観点からの事項を盛り込む理由につきまして整理をした部分でございます。まず冒頭に、学術というのは、真理の探究という人間の基本的な知的欲求に根ざし、これを追求する自律した研究者の自由な発想を源泉とした知的活動とその所産としての知識・方法の体系であり、その対象はあらゆる学問分野にわたるものであるということで、学術の特性につきましてご説明した上で、学術の研究活動の中心というのは、基礎研究から応用研究に至るまで、一定の水準を有する研究者の集積や、学問の自由に基づいた研究者の自主性の尊重等の条件を備えた大学であり、また、その学術研究の発展に資するために設置されている大学共同利用機関であるということを述べた上で、これらの大学・大学共同利用機関で行われる学術研究は、新たな知の創造や幅広い知の体系化を通じて、人類共通の知的資産を創出する、また、新たな価値を創造し、我が国の国際競争力や文化力を高めるものである。そのため、このような学術研究を推進する上では、この第4期科学技術基本計画のほうに盛り込む必要があるということをご説明しているところでございます。
 特に2ページ目にございますけれども、第1期から第3期までの科学技術基本計画におきましては、個々の学術研究が必ずしも我が国の経済社会の発展と福祉の向上に寄与することを意図して行われるものではないということもあり、明確な位置づけがなされてこなかったというところがございます。そのため、第4期の科学技術基本計画におきましては、学術については、個々の学術研究は研究者の知的好奇心を源泉としていながらも、その全体の進展が科学技術の基盤を形成し、かつ、イノベーション創出の糸口となる大きな可能性を有していることを明確にする必要がある。そして、具体的には、その際掲げております5つの項目について盛り込んでいってはどうかというふうなご提案をさせていただいているところでございます。
 3ページ目をごらんいただきたいと存じます。
 項目の1つ、学術研究への体制的支援の拡充ということでございます。学術研究につきましては、その成果が現れるまで時間を要することも多く、将来どのような成果につながるのかをあらかじめ見通すことが困難であるなど、十分な基盤的な経費と、優れた研究を優先的・重点的に助成する豊富な競争的資金によるデュアルサポートシステムによって支えられていくことが求められる。ということで、学術研究への財政支援の在り方をまず示させていただいた上で、今後、現在、国立大学の運営費交付金など、毎年1%ずつ削減されるということに伴います研究活動費の減、研究者の日常的な研究活動への支障、あるいは学生への教育が十分に行えないなどの問題が指摘されている状況にかんがみまして、また、競争的資金につきましては、公正を旨とする審査の結果ではありますけれども、少数のトップクラスの大学等の研究者に配分が偏っているのではないか、そのため、トップクラスに次ぐ多数の大学等における研究活動の機会が少なくなり、我が国全体の研究水準が、他の主要国に比べて低落傾向にあるのではないかと危惧するご意見も出てきているところでございます。また、施設整備につきましても、大学の財政状況を圧迫しているということも、大きな問題となっているところでございます。今後、学術研究を発展する上では、我が国全体の研究のアクティビティを活性化されることが必要であるという観点から、大学あるいは大学共同利用機関における安定的・継続的な研究活動を支える基盤的経費を確実に措置するべきであるということを記述しているところでございます。また、大学・大学共同利用機関における研究の推進に当たっては、いわゆる科研費等の競争的資金が大きな役割を担っていることが現状でございまして、その意味でも、科学研究費補助金を、大学・大学共同利用機関における研究を支えるものとして改めて位置づけ、その抜本的な拡充を図っていくことが必要である旨記述しているところでございます。
 5ページ目に移らせていただきたいと存じます。続きまして、大学・大学共同利用機関における独創的・先端的研究の推進ということでございます。国公私立大学の附置研究所、あるいは研究施設などの研究組織は、優れた研究の芽をさらに発展させる場であるものとして、各大学における特徴的な研究の発展に大きく寄与しております。大学共同利用機関は、我が国の学術研究の中核拠点として、個々の大学では困難な大規模な研究施設・設備、それから大量の学術情報・データ等を全国の研究者に供しまして、我が国学術研究の発展に重要な役割を果たしているところでございます。こういう観点からも、我が国全体の学術研究発展のために、国としても着実に推進していくことが必要であるという認識を示させていただいております。また、特に学術研究の大型プロジェクトにつきましては、国の学術政策として、共同利用、また共同研究体制により、多くの研究者の参加を得て推進していく必要があります。学術研究の大型プロジェクトの実施に当たっては、国において、研究者コミュニティにおける開かれたボトムアップの議論と合意形成の上に立って、長期的展望を持った上で、計画的・安定的な財政措置を行うことが必要との記述を盛り込ませていただいているところでございます。また、共同利用・共同研究の一層の推進ということで、大学共同利用機関はもとより、昨年度に制度化されました、文部科学大臣が認定する共同利用・共同研究を行う施設についても、研究活動を支える安定的・継続的な財政措置を講じる必要があるとの内容を盛り込ませていただいているところでございます。
 7ページ目に移らせていただきますけれども、3つ目の項目といたしまして、大学・大学共同利用機関における学術支援体制の強化がございます。まず、研究環境の重要性でございますけれども、現在、多くの教員はさまざまな業務に時間を取られまして、十分な研究時間を確保できない状態にあると言われてございます。そのため、大学・大学共同利用機関の大学教員の負担を軽減しまして、研究に専念できるよう手厚い研究支援体制を構築し、研究活動の活発化に取り組む必要があるとの認識を示させていただいております。特に研究装置の保守などを担当いたしますテクニシャンや、高度な研究事務の処理ができるリサーチアドミニストレーターの配置など、博士号取得者をはじめとする必要な能力等を有した人材によります高度な研究支援体制の確立が喫緊の課題であり、国はこうした研究支援人材の確保と資質の向上のために取組を推進する旨記述させていただいているところでございます。また、国際化に対応した事務組織体制の確立といたしまして、近年、国際共同研究も盛んになっており、研究の国際化が進んでいる中で、各大学・大学共同利用機関の国際化に対応した取組、また、それに対する国の支援が求められるようになってきております。さらに、昨年7月に政府が策定いたしました「留学生30万人計画」もございまして、留学生の受入れを促進するなど大学の国際化に向けた取組が進められているところでございます。このようなことを背景にいたしまして、各大学・大学共同利用機関においては、国際化に向けた戦略的な取組が求められているところでございます。このため、各大学・大学共同利用機関におきましては、海外の研究者あるいは留学生を受け入れるための環境整備が必要でございまして、特に留学生につきましては、受入れ留学生のリクルート活動、生活面への対応などで、教員への過度な負担がかからないようにすることが求められているところでございます。その意味からも、留学生に対するさまざまなサポート体制の充実が求められるという旨記述しているところでございます。
 9ページに移らせていただきますが、4番目の、大学・大学共同利用機関における研究基盤の充実ということでございます。研究施設・設備の整備についてでございますけれども、大学・大学共同利用機関の研究施設につきましては、耐震化等の老朽化再生、あるいは狭隘化への対応が重点的に進められているところでございます。今後、教育ニーズ等を踏まえた施設の高度化・多様化、それから安全・安心な環境の確保等の観点からも、大学における研究施設の計画的な整備に必要な財源措置を講じていくべきである旨記述させていただいているところでございます。また、運営費交付金、施設整備費補助金の減少傾向が見られるところでございますけれども、こうした設備の計画的な整備、維持・更新に必要な経費負担が、現在困難になりつつある状況が見られているところでございます。このため、基盤的経費を確実に措置することが重要であり、当面は、限られた資源の有効活用の観点から、特に大型の研究設備については、その目的・用途・規模に応じた計画的・組織的な整備・更新を進めていくことが必要な旨記述しているところでございます。また、大学間連携によりまして、研究設備を相互に利用するための体制を構築したり、設備の保守等を行い、共同研究のオペレーションを可能とするための技術職員を確保するなどの方策を講じる必要性についても記述させていただいているところでございます。
 それから、研究情報基盤の整備でございますけれども、先端学術研究の支援、連携に不可欠な最先端ネットワーク基盤として重要な役割を果たすものでございますので、やはりその整備・拡充を進める必要がある旨記述させていただいております。特に安定的かつ信頼性の高いネットワーク環境のさらなる向上に向けた取組を着実に推進することが求められておりまして、具体的な取組例といたしましては、大学図書館における電子ジャーナルの効率的な整備、あるいは、オンラインにより無料で制約なく論文等にアクセスできる「オープンアクセス」の推進、それから学術雑誌の電子化の一層の推進など、学協会が刊行する学術雑誌の国際競争力の強化に向けた取組などを推進する旨記述させていただいているところでございます。
 それから、文献・資料、研究材料等の体系的な整備といたしまして、これまで学術研究の過程で収集された図書などの研究用材料等は、多くの研究者の研究に活用される基盤とすべきであるということから、大学図書館等の整備・充実、それから、さまざまな資料を有効的に共同利用することにつきまして、今後検討していくべきである旨記述させていただいているところでございます。
 それから、最後の5番目の若手研究者の育成に向けた取組の充実でございますけれども、若手研究者への支援の必要性といたしまして、学術の発展のためには、我が国の未来を支える研究者の養成や資質の向上が不可欠でございますけれども、現在、博士課程修了者の多くが、安定的な研究職に就く機会に恵まれておらず、社会的に不安定な立場に置かれているということが見られます。このため、このような状況を早急に解決することが求められる旨記述させていただいた上で、まずキャリアパスの多様化に向けた取組といたしまして、国や大学・大学共同利用機関は、優秀な学生が研究者の道を選択できるよう、経路とゴールが見えるキャリアパスを明示すること、研究組織におけるポストの整備・拡充に向けた取組を推進すること、それから、社会の多様な場で活躍する人材や高度な専門職業人としての発展の在り方を認識できるような取組を進めることが必要である旨提言させていただいております。
 また、優れた若手研究者への支援として、フェローシップ等の給付型の経済支援の充実を図るべき、また、大学院生をティーチングアシスタント、リサーチアシスタントとして雇用し、早い時期から教育・研究活動に参画させることにより、研究者としての能力の醸成を図っていくことの必要性を記述させていただいております。
 また、大学院教育の充実として、今後、大学院における教育目的を明確化していくことで、また、その明確化された目的に応じた教育システムを、今後検討していくことが必要である旨記述させていただいているところでございます。また、大学院の質を向上させるためには、外国から優秀な留学生や研究者を獲得することが必要であり、国は、大学院の定員とその充足率と、これらに対応した教員組織の在り方についての考え方を、博士号取得者の質の向上を図る観点から再検討することが必要である旨記述させていただいているところでございます。
 以上、資料4につきまして、ご説明を終わらせていただきます。
 なお、第3期科学技術基本計画の策定の際に、学術分科会がとりまとめました「第3期科学技術基本計画に盛り込まれるべき学術研究の推進方策について(意見のとりまとめ)」を、参考資料2として配付させていただいてございます。また、第3期科学技術基本計画への意見のとりまとめの内容と、実際の第3期基本計画への反映状況、その後の進捗状況につきましては、資料6としてとりまとめさせていただいておりますので、こちらもご参考にしていただければと存じます。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 「第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめ【論定例】(案)」という形で、事務局からきょうご提案をいただいたところでございます。これらの論点につきましては、既にここでいろんな形で取り上げてきたところでございますけれども、なおほかに見落としがないか、あるいは追加的な論点も含めまして、率直な議論をお願いしたいと思います。これから約1時間あまり、そのために時間を充てたいと思いますので、何かございましたら、どうぞ。
 これは、順番を踏まなくてもよろしいでしょうか。

【石崎学術企画室長】 

 はい、結構でございます。

【佐々木主査】 

 どこでもよろしいということで、もうおなじみの論点だと思いますので、どこからでも結構です。
 それでは、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】

 説明資料の1ページ、2ページ目に関して、質問と意見があります。この説明部分の前半では、科学技術基本計画は、科学技術の振興に関するものに焦点を絞っているために、科学技術基本法が対象とする科学技術からは固有の意味の人文学・社会科学を除外しているのだといっています。言い換えれば、人文学・社会科学はもともと排除するように、当初から「科学技術」という概念を定義しているのです。これに対して後半(2ページの2行目以降の部分)では、人文学・社会科学も含めてあらゆる学問分野を対象とする学術は、必ずしも我が国の経済社会の発展と福祉の向上に寄与することを意図して行われるものではないために、科学技術基本法に明確な位置付けがなされていないのだという趣旨の説明が与えられています。この2つの説明は、固有の意味の人文学・社会科学を、科学技術基本法からーーしたがって同法に基づく科学技術基本計画からーー排除する理由付けとして、全く違う論法になっております。
 それのみならず、「科学技術」の概念を「科学に基づく技術」というーー国際的には特異なーー意味で定義すれば、トートロジーの嫌いはあるにせよ、前半の議論はそれなりに筋は通ります。しかし、後半の議論については、率直にいって強い異論の余地があると思います。人文学・社会科学の大きな部分は、まさしく経済社会の発展と福祉の向上に寄与することを明白な目的として推進されていることは、だれしも否定できない事実であると思います。逆に、科学技術基本法が前提する特異な「科学技術」の概念には、必ずしも経済社会の発展と福祉の向上に寄与することを明白に意図しているとは限らない研究も含まれています。これら両面から見て、この後半の書き方には多分に疑問があります。
 そこで質問なのですが、論点のまとめという以上、これまでこの分科会の中で、後者の議論が科学技術基本法との関連で人文学・社会科学の位置付けを理解する方法として、共通理解になったことがあるのでしょうか。 
 以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 この点について、特に2ページの3行目からのところでしょうか。

【鈴村委員】 

 そうですね。

【佐々木主査】 

 これについて、特にこの場で議論があったからこうなっているということではないように私は記憶しているのですが、いかがでしょうか。何か、ほかの委員から意見はございますか。記憶違いがあるといけませんから。
 では、こういう議論があったからこうかと言われる点については、そのようにお答えしたいと思いますが。
 あとは、この理由づけについては、鈴村委員としては、いろいろ議論の余地があるというご意見だということを確認させていただきます。

【鈴村委員】 

 はい。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 それでは、谷口委員、お願いします。

【谷口主査代理】 

 今の問題は、学術と科学技術の根本というのになってしまうのですが、この位置づけの問題にかなり根ざしている、結構深刻な、かつ重要な問題ではないかと思うのですね。これはこの委員会でも、学術は何かということは随分議論されたと思うのですが。
 ちなみに、日本学術会議でも、今、本件に関係して、日本の展望とか、いろいろまとめられて、この中にも委員がおられますけれども、そこの学術のとらえ方というのは、学術の中に科学技術がある。それにもかかわらず、科学技術基本計画が策定されているというところに実は問題の根幹があるのだというのが、おそらく日本学術会議のとらえ方なのだと思うのですね、基本的には。そこをやはりどうこれから本部会として考えていくかということは、結構重要なことだと思います。
 ちなみに、私は大変興味深くというか、びっくりしたのは、参考資料2でございますけれども、平成17年に「第3期基本計画に盛り込まれるべき学術研究の推進方策について(意見のまとめ)」、これは文科省がおまとめになったものだと理解いたしますが、書かれている内容は、今回のこととあまり変わらないというのが、率直な印象です。少し誤解があったらお許しください。内容は、いろいろ個々に述べれば、少し変わっているところもあるのでしょうが、基本的にはスタイルはあまり変わっていないように感じます。
 最も象徴的なのは、ここで学術研究と学術を何度も述べられているにもかかわらず、少なくとも私の知る限りでは、科学技術基本計画の中で学術という言葉は一回も出てこないというのが現実であると認識しています。
 すなわち、ここでまとめられたこの意見のおまとめは、第3期科学技術基本計画の中に実際的に生かされていないという現実がある。そうしますと、今我々がここで議論をして、今度、資料4の論点例ということでまとめておりますが、これも同じ憂き目に遭うのではないかと。つまり、やり方を間違ってしますと、大変僭越で、かつ誤解があるのかもしれませんが、この辺にかなり根幹的な問題があるのではないかと思うのですね。やはり学術と科学技術という問題をどうとらえるかというところが、こういう大学の先生が集まっている会合で論じられているのと、国家戦略としての科学技術基本計画の策定の現場との間には、大きな開きがあるのではないかという印象を受けるわけです。
 ですから、それをどう生かしていくための戦略を練るかということが、かなり重要なのかと思いました。もし今の学術のキーワードがなぜ科学技術基本計画に生かされていないかということを、ご存じでしたら、教えていただきたいというのが第1点です。
 2点目は、この資料4を全体的に拝見しますと、今これは意見のまとめですから、箇条書きにしているということで重々理解いたしますが、全体的には少し要望的な印象があって、インパクトが少し低いような印象を私は受けます。
 それから、この中で、例えば、大学の使命とは何かといったような、根源にかかわるようなこういう問題について、あまり深く踏み込んだ議論がなされていないというところもあります。大学自身の改革というのは、これから非常に重要になると私は思っております。
 それから、国際戦略についても、例えば、先ほど説明いただいた資料1-1には、いわゆる基礎科学の強化に向けた提言ではしっかり書かれているのですが、ここではあまりそういうことが述べられていないということがございます。 それから、先ほどの最初の問題と関係があるかもしれませんが、第3期の科学技術基本計画がどうやって生かされてきたのか、その検証というのもあまりなされていないので、これはしていいのかどうか私にもよくわかりませんが、科学技術基本計画の中では、「モノから人へ」とか、結構いいことが述べられています。しかしながら、実際それが活かされているかどうかということは、あまりここでは触れられていない、分析もされていないというところもあって、これが若干、結局、同じ轍を踏むのではないかということを、少し心配な気分にさせるという、そういう印象がございます。
 以上、前半は質問で、後半は少し私のコメントです。

【佐々木主査】 

 では、その質問について何か、これは事務局のほうからだれかお願いします。これはなかなか、それこそ根深いというのか、根が深い問題であることは間違いないので。基本的に、第3期の話ですね。

【谷口主査代理】 

 はい。

【佐々木主査】 

 これから4期はどうなるかという話はあれですけれども、どんなふうに考えたらいいのかということについて、何かご示唆があればいただくと。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 第3期の科学技術基本計画でございますけれども、科学技術基本法に基づく科学技術基本計画ということで、定義上は、まさに鈴村先生もご指摘になっています、専ら人文のところを除くという、そういう議論で、いわゆる政府の計画として引っ張っていける部分を対象に政策を打ち出そうと、こういう基本的な認識があったと思います。
 今、谷口先生からご指摘の、いわゆる学術研究との接点につきましては、これは、さはさりとて、何のための科学技術政策かという議論があって、3つぐらいの目標を掲げて、人類の英知を生むというところも、非常に大事な科学技術政策のドライビングフォースでありますので、そこについて発見し、発明しよう、あるいは、科学技術の限界を突破しよう、そういう目標を立てながら、ではそれに向けてどういう具体的な施策を打つかという議論になりまして。そこで、いわゆる基礎研究の部分と、その戦略的重点化といいますか、まさに出口を目指しながら政策的に引っ張っていく部分と、そういう2つの構造を形成しながら議論をしていった経緯があるというふうに認識しております。
 そのいわゆる学術研究の部分につきましては、これは参考資料2にもございますように、学術研究は、研究者の自由な発想に基づく研究、ここの価値観を非常に重視するものだというふうに受けとめまして、これは基礎研究のところで論じているわけでございますけれども、いわゆる国の計画なり施策として、これをやろうあれをやろうということではなくて、むしろそういうものの重要性を認識して、そこにはきちっと一定の資源を充てるようにしよう、こういう流れの中で、科学技術基本計画の中では整理がなされている。
 したがって、学術という言葉自身は、これは、ここにも書いてありますように、非常に幅広い概念でございますけれども、科学技術基本計画というのは、科学技術基本法に基づいたものですから、そこで科学技術の特に基礎研究というところ中の整理において、そういう、多様な知と革新をもたらす基礎研究については、一定の資源を確保して、着実に進めるんだと、これがメーンのメッセージとして科学技術基本計画に位置づけられたというように認識してございます。

【佐々木主査】 

 谷口委員、今の件について何か。

【谷口主査代理】 

 その辺が、確かにおっしゃるとおりだと思うのですね。その辺の理解というか、あまりこういう言葉の定義で時間を費やすのはどうかという気はいたしますが、その辺はかなりそれぞれ意見が、見方が違っているところが大変悩ましいところなのだと思うのですね。
 ですから、端的に申しますと、学術の中に科学技術がある。しかしながら、その科学技術の側面のみが特に科学技術基本法でうたわれているというところに問題があるのだというのは、例えば、日本学術会議等の認識でもあるわけですね。ですから、その中に、基本的には人文社会系といったようなものがあまり触れられていないとか、それから、より応用に特化したようなものがより重要視されているのではないか、基礎研究の重要性というのは言われてはいますけれども、そういう傾向があるのではないかというようなことも言われているわけです。その辺が、もう机上の空論では終わらないので、実際に現実的にどう対応していくかということを考えても、ここで学術と言っても、科学技術基本計画の中には、実は学術の中に科学技術があるのではなくて、科学技術の中に基礎研究をする学術もあるという、そういうとらえ方に見えるのですね、この科学技術基本計画の文面が。ですから、そういうところでいくのであれば、それはそれでやむないということで、私はこれ以上特に何か申し上げるわけではないのですが、やはりその辺の理解がはっきりさせていないとなかなか難しい。
 それから、基礎研究と応用研究のことを少しおっしゃいましたが、確かにきちんと区別してということは書かれているのですが、これもなかなか悩ましいところで、日本学術会議等では、例のOECDの「Frascati Manual」とか、そういうところからきちんと定義して、議論しているのですが、あまりそういう定義でもなくて、何となく日本の省庁の研究費の配分に合うような、そういう感じと言っては私の言いすぎかもしれませんが、そういうことで意識した書かれ方がなされていて、あまりその辺の具体的な定義というのもきちんとされているわけでもないというところがあるので、やはりその辺もきちんと、先ほど申し上げたように、検証して、実際にどうやって実を取るかといいますか、やはりそういうことをやっていくのが大切なのかという気がいたしました。

【佐々木主査】 

 先ほどのお話に出た第3期科学技術基本計画の検証は、どこの場で、内閣府でするのか、総合科学技術会議でするのか。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 第3期科学技術基本計画のフォローアップというのは、総合科学技術会議で行います。それの実施主体は、科学技術政策研究所なんかが活躍されていますけれども、いろいろここでうたわれていることについて、どういう進捗になっているかというのは、そういう調査をしているところでございます。
 それから、私自身は、第3期科学技術基本計画というよりも、まさに第2期科学技術基本計画を担当したのですけれども、ここでは基礎研究と言っているのですが、当時もいわゆるcuriosity-drivenという価値観と、やはり政策論において、社会ニーズがこうだからこういう研究をしようということで引っ張ろうとする部分との、そのいわゆるマネジメントの仕方が違うものですから、そこはやはり一線を引くべきだろうと。本来、そこで学術研究とか、そういう名前もつけたらいいのではないかというご議論もあったのは、今から10年くらい前ですけれども、その言葉をめぐって、やはりエンドレスな議論になりまして、当時の判断として、基礎研究という、当時ある共通に受け入れられている言葉で代用しなければ――当時は、まだ科学技術会議の時代で、井村先生なんかが議論をリードされていたのですけれども、特にやはり意識としては、curiosity-drivenの研究というものをどう位置づけたらいいかという議論をさんざんしたのですが、そこについては、日本語にするときに、やはり基礎研究というところで、そこを位置づけようではないかと。
 心は、やはり今回の学術研究もそうかもしれませんけれども、やはり学術コミュニティのその価値観で、ここで言えば、研究者の自由な発想というものを大切にしながら、それで引っ張っていこうとする部分と、そうでない、いろんな産業技術、産業政策とか、いろんな技術の政策との接点を見ながら、科学技術政策としてまとめていく部分の、その体系をどうつくるかというのは、第4期科学技術基本計画でも間違いなくイシューになるとは思います。むしろ、今までは、どちらかというと、学術側は、内容についてとにかく自由にすることが一番大切で、かつ、資源はやはり大切なので一定確保は重要だけれども、それ以上細かいことを云々と計画で書くよりは、その自由度を確保すべきだと、こういう議論がやはり大勢を占めていたように認識しておりまして、こういう書き方に、第2期科学技術基本計画のときは少なくともそうだったわけです。
 第3期科学技術基本計画も、かなりそれを引きずった議論になっていましたけれども、ただ、そのときには、基礎研究のところも、まさに、基礎研究は今度2種類に分けておりまして、政策課題対応型の研究というものと、自由な発想の研究と、こういう2つの体系に分けて、一応全体をカバーできるようにして、資源を重点配分するには、それなりの、どれだけその姿を出せるかということとのパッケージになりますので、そういう議論の積み重ねが第3期科学技術基本計画だったというふうに、私自身は認識しております。
 したがって、第4期科学技術基本計画は、こういう学術の塊の部分を本当にどういうふうにアピールしていったらいいかというのは、ぜひご議論いただければと思います。

【佐々木主査】 

 今の点は、そういう意味で、かなり基本にかかわりますので、今の点について意見があれば。
 では、家委員、お願いします。

【家委員】 

 ご説明いただいたように、確かに科学技術基本計画は、読ませていただくと、なるほどということが書いてあるのですけれども、問題は、例えば、第3期科学技術基本計画なら第3期科学技術基本計画の検証で、資料6の比較のところの第3期計画への反映状況のところに、確かに第3期科学技術基本計画には、基礎研究については、一定の資源を確保して、着実に進めるというようにうたってあるのですね。それが、多分、いわゆる学術的基礎研究、つまり、真理の探究を、役に立つか立たないかは別にして、真理の探究を求めるような、そういう基礎研究にどの程度の税金を投入すべきかというのは、多分、あまり絶対的な基準はなくて、かなりエイヤというところがある。あるいは、国際比較でこのくらいが適当な線というのがあるのだと思うのですけれども。
 一定の資源とここに書いてあるのですけれども、具体的に、例えば、社会的要請ないし国策的な研究と同額くらいを配分するとか、あるいは何分の1になるかもしれませんけれども、そういう議論というのはあったのでしょうか。あるいは、今後、第4期科学技術基本計画に……。つまり、大事だ大事だと言っていただくのはいいのですけれども、具体的にそこをどの程度サポートするかというのに、なかなか絶対的な基準はないので、そういうやり方しかないのかというふうに思いまして。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 そこは、私も第3期科学技術基本計画の議論にすべて出ていたわけではないので、ごく雰囲気でございますけれども、基本的な科学技術の予算がございますので、例えば、科学技術振興費というのがどのくらい伸びるのか、それに対して、いわゆる学術に向けられる競争的資金というのはどうなのかとか、そういう感覚であろうかと思います。幾らでなければいけないという、そういう議論ではなかった、それはできないと思うのですけれども。

【家委員】 

 ですから、例えば、重点4分野にどのくらい資金をつけたら、例えば、典型的には、科研費に対して、あるバランスをとったような資金配分とか、そういう議論でもないと、基礎研究は大事だということに関しては、だれも反対はされないと思うのですけれども、では具体的にどうするのかというのは、なかなか根拠がなくて、難しい議論になるのではないかと。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 そこにつきましては、むしろこの計画が出て、それぞれ各省がどう受けとめるかというところにあるわけでございまして、まさに今第3期科学技術基本計画のフォローアップの調査結果などを見ながら、またご評価、ご判断いただくようなことになろうかと思います。文科省としましては、やはり科研費なら科研費のある一定の伸びをどうするか、そういう議論は、この計画には書いてありませんけれども、こういうのがあれば、いろんな内部の議論としては、当然、そういうプロセスを経るということでございます。

【佐々木主査】 

 では、ほかの方。では、白井委員から、それから鈴村委員お願いします。

【白井委員】 

 今、家委員が言われたことは、非常に重要だと思うのですが、現実的な問題をここで議論しておかないとしょうがない。今議論があるように、純粋なというか、広い意味の学術研究、その中でも人文社会系があるし、基礎的な部分があるし、それから、政策型のイノベーション志向、大体3種類あるわけですよね。それは皆さんもそうだと思います。ですが、それをどのくらいの割合で我々はやらなければいけないのかということは、ある程度第4期科学技術基本計画で明確にしていかないとぐあいが悪いのではないかと思います。
 例えば、ずっとやられてきたことですけれども、間接経費を30%つけるということをやってきました。それで、現実的なことを申しますと、非常に自由に使える研究費みたいなところは、本来そういうところでまかなうわけではないが、何となくそういうような部分でもってつじつまを合わせていくというようなことになりかねないですよね。別に間接経費だけでするとは、とても思えないですが、何となく広い意味の学術研究というのは、位置づけを、だんだんお金がなくなってきますと、押されていくのではないかという感じもします。
 広い意味の新しい学術研究は、やはり大きなイノベーションであって、そこから新しいものは生まれてくるわけですよね。ですから、産業的に生まれるものも確かにイノベーションは生むだろうけれども、両方とも大きい意味を持っていますよね。そういう意味で言うと、私は、広義の学術研究というものをどういうふうに位置づけるかは、書き方はいろいろあるでしょうが、これを明確にして、その中で、やはりこういうふうに我々は科学技術のところはこう位置づけてやるのだというのが、オーソドックスなやり方ではないかという気はするのですがね。

【佐々木主査】 

 では、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 先ほどの基礎科学力強化の箇所でも感じた点ですが、全体として、抽象的な書き物としてはあらがい難い書き振りがなされています。たとえば、自由な発想に基づく研究であるとか、研究者優先の研究システムなどは、それとして抽象的に考えれば否定し難い説得力を備えた表現です。しかし、具体的なコンテクストを念頭に置けば、こうした響きの心地よい表現を連ねるだけでは済みそうにない重要な問題が浮かび上がります。
 一例だけ挙げたいと思います。10ページのあたりには、研究用資料・試料等の体系的な整備、あるいは、データベースの整備という類いのことが書かれています。抽象的に言えば、こうした研究の条件整備は当然のことに思われますが、私たちが日本学術会議における提言作業で直面した難関は、まさに研究試料の公共的な利用のための制度設計に関する問題のコンテクストではっきり登場しました。
 この問題は、生命科学の研究者にとっては極めて重要な、ヒト由来試料のバンク化を巡って表面化しました。医学研究者の立場からいえば、このようなバンク化の実現が研究促進的であることは間違いありません。それどころか、日本ではヒト由来試料の公共的管理と利用が制度化されていないために、欧米と比較して先端的な研究にハンディキャップを負わされていることさえ主張されています。自由な発想に基づく研究を促進する制度を、研究者優先で設計するという発想に立てば、ヒト由来試料のバンク化の推進は当然のアジェンダであることになりそうです。とはいえ、ヒト由来試料の公共的な管理と利用は個人の私的権利(ヒト由来試料を研究の素材として提供させられる人々のプライヴァシー)の社会的尊重というー-公共的なーー要請に抵触する可能性があることを、我々は忘れるべきではありません。この権利の主張を敢えて抑制するために、医学の進歩による多数の人々の福祉の改善を持ち出すことは、多数の人々の幸福のためには少数の人々が被る権利侵害は正統化されるという、素朴な功利主義の立場に後退する危険性を含んでいます。
 私のこの議論のポイントは、社会のなかの、社会のための学術を目指して制度の設計と整備を行うためには、自由な発想に基づく研究の促進とか、研究者優先原則の尊重など、抽象的な原理だけで議論を構成することにはおのずから限界があるということです。また、現場の研究者が学術研究のための制度の善し悪しに関する最善のジャッジだという考え方にも、冷静な限定を付す必要がありそうです。人文学・社会科学を含めて学術の知を総動員して、研究環境の整備のための社会制度の設計と実装に取り組むことこそ,いま必要とされる発想ではないかと思います。

【谷口主査代理】 

 私も医学系の分野におりますので、日ごろから私が所属しております医学部の中でも議論しておりますのは、法学部といかに連携するかとか、文学部といかに連携するかという、新しいこれからの医学を求めていくという、そういうことを随分議論しているのですね。
 先ほど鈴村先生のおっしゃった、医療倫理の問題とか、もちろん、ここでES細胞の問題等も文科省で議論されているところでありますが、もっと直近な例で申しますと、これは議事録に載せていただいていいのかどうかわかりませんが、アプライド・ソーシャルサイエンスって、やはりあるのですね。これも非常に自由な発想に基づいた自由な研究です。具体例を申し上げますと、エイズの撲滅、HIVの問題、これは私ども医学者の問題でありまして、私の専門である免疫学においては非常に重要な改題でありますけれども、いかにこのウイルスを抑制するかという薬剤の開発がエイズの撲滅につながるということは言うまでもないのですが、それ以外にも撲滅への貢献はあるわけです。例えば、アフリカでエイズが蔓延している、これをどう抑えるかというので、一番有効な方法は、いわゆる避妊をすることなのですね。その避妊を推進するため、避妊具をアフリカで配ったと。これは実際の話です。ところが、当初はそれほど大きな効果が無かった。なぜかというと、その避妊具を使うのをアフリカの人たちが嫌った、とういうことが判明したわけです。その理由はなにか、どうすれば解決できるのか、これは単なる医学の問題では解決できない問題で、社会学者が積極的にそこに介入して問題解決した。それは、避妊具の色が白いものから黒いものに変えると途端に――それは白いものをつけるのを皆さんが嫌がったわけですね。色を変えるだけで大いに避妊具が普及し、効果があった。これはエイズの拡大を防止する、という意味では医学に大きく貢献したとも受け取れますよね。それこそは、やはり新しい医学と人文社会の融合と言っていいかどうかわかりませんが、あるべき姿を一つ示唆しているという一つの典型例だと思うのですね。つまり、従来の学体系的な枠を超えた新しい融合型の学問・研究を標榜することが大切であろうということの一例とも考えられます。
 ですから、そういう問題があるので、やはり人文社会を切り離して、それでも重要だという、そういう議論ではなくて、サイエンス全体の中に通した重要性という、そういう議論を展開させ、しっかりと理解していただきたいというふうに非常に強く思います。
 もう一つは、第4期科学技術基本計画では、自由な発想に基づく基礎研究と何とか何とかというのも書かれていましたけれども、やはりもう少し踏み込んで、日本学術会議でも議論しておられるような、「Frascati Manual」や、ストークスによる、いわゆるボーアの象限、パスツールの象限、それからエジソンの象限という科学の定義なども議論が随分されているところなのですが、詳細は省きますけれども、やはりそこに立ち入って、これからの政府関係者等が、「ああ、なるほど、これなのだね」ということを納得するような、説得力あるやり方で科学技術基本計画を検討していただくということが重要ではないかと思うのですね。
 ですから、何とかの基礎研究、何とかの基礎研究とか、そういう、瑣末とは言いませんが、分け方ではなくて、例えば、OECDのマニュアルに基づけば、基礎研究と応用研究と開発研究があります、英語ではこう言います、これはこうこうこういうことを意味しています、これについては、基礎研究と応用研究は文部科学省がしっかり担当します、開発、いわゆるexperimental developmentというのはほかの省がやればいいではないですかとか、説得力のある盛り込み方をしていただくのがよいのではいかと思います。いろいろご意見があれば、ぜひ承りたいと思います。ご批判があれば。

【佐々木主査】 

 それでは、ほかの方からも、いろいろな点についてご発言をいただきたいと思います。あるいは、今の論点に限らず。
 では、磯田局長お願いします。

【磯田研究振興局長】 

 局長としてといいますか、もともと私は文部省サイドで少しかかわっておりますので。
 当時の行政側のこの基本計画に対する雰囲気ですけれども、基本計画ができましたときには、あまりかかわりたくないというのでしょうか、役所が違ったこともございまして、そういう意味では、書かれなければいいというようなニュアンスで動いていたのではないかと想像しております。
 ですから、第1期の科学技術基本計画をお読みいただいたらすぐわかることですけれども、非常に学術について配慮しているといいますか、悪く言えば除外しているのかもしれませんが、そういう文言になっているかと私自身は理解しております。
 それで、第2期になって、やはり重点化、それから選択と集中という議論が全体的に求められるという中で書かれていくわけですけれども、基本的に、それでは学術研究をどうするかということについては、それほど突っ込んだ議論をしていなかったのではないか。少なくとも旧学術サイドの行政をしている人たちの中で、明確なビジョンを持っていたとは思えておりません。
 それで、第3期科学技術基本計画になって、先輩から聞いておりますと、さすがに学術研究について、科学技術基本計画との関係をしっかり考えないといけないのではないかということで議論はし、結果的には、基礎研究という観点で、先ほどご紹介があったような、研究者の自由な発想に基づく基礎研究と、それから、政策に基づく将来応用を目指す基礎研究と、こういう概念が出てきているわけです。もちろん、これで学術研究全般がとらえられているわけではなくて、そのごく一部がとらえられているだけに過ぎない。それから、非常に矮小化して言えば、学術研究は、科研費に象徴される研究費の充実と基盤的経費の充実、この辺が行政的に見える施策ではないかということで、その辺について言及がされていくという形だったのではないかと思っております。
 これはたまたま私の個人的な経験ですから、行政として、この3期科学技術基本計画までの学術行政、あるいは学術研究のかかわり方については、事務局としてしっかり整理をしてお出しをしたいということで準備をしましたが、今回間に合わなかったので出せていないのですけれども、少なくとも、そこについてはしっかり分析する必要があろうと認識しております。全体の第3期科学技術基本計画のレビューにつきましては、先ほど倉持からご説明しましたように、総合科学技術会議、あるいは科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会でやられることでございますので、必要があればその辺もご報告したいと思っております。
 それで、今、事務局で一番悩んでおりますのは、先ほど鈴村先生からもお話がございましたように、学術研究といえども社会とのかかわりが非常に大きくなっているということで、一つは、倫理とか文化とのかかわりでございます。
 それから、もう一点は、基礎科学の中には非常に巨額な国家予算を必要とするもの、さらには、それが行政もかかわりまして国際的な共同研究が必要なものがございます。こういうものについて、どういうプロセスで学術研究として推進していくのが最も望ましいのか。さらに、それは科学技術基本計画の中で取り扱うべき事項なのか、それともそうでないのかという議論がございます。
 トップダウンとボトムアップとか、あるいは、研究者の自由な発想に基づくという用語だけで学術研究に国民の資金を投入していただいたり、あるいは、その研究活動について国民の理解を得るというのは非常に課題がたくさんあるのではないかと思っておりまして、ぜひその辺をご整理いただければ、具体的な資金投入についてもめどが出るのではないかと思っておりまして、よろしくご検討いただければと思います。

【佐々木主査】 

 どうもありがとうございました。
 それでは、ほかの方からご発言をお願いしたいと思います。それでは、縣科学官からいきましょう。

【縣科学官】 

 そうしますと、科学技術基本計画というものが政策体系としてどうあるかを考えますと、ここに本文にはいろいろな理念と具体的なことが書いてございます。今少し倉持審議官がおっしゃいましたが、どう評価して、それが次の計画を策定するときにどうフィードバックされるかという点では、今の学術研究という概念そのものが第3期科学技術基本計画にあまりなかった場合に、それを新たに第4期科学技術基本計画で生かすためには、フィードバックとは全く別に、新たに目標をそこへ注入するという考え方になるわけでしょうか。それとも、第3期科学技術基本計画のものを振り返って、そこで全く欠落していたからというような認識で、新たなフィードバックとして入るのか。次の期へのフィードバックの結びつけ方における学術研究という概念の扱い方は、この策定プロセスではどうなるのでしょうか。そこが私には非常に分かりにくく、ここで先生方がずっと重要性を議論していただいているのですが、それが第4期科学技術基本計画にどう生かされるかという具体的なプロセスを教えていただければありがたく思います。

【佐々木主査】 

 倉持審議官、どうぞ。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 繰り返しになりますが、フォローアップのようなものは、今の第3期科学技術基本計画の体系でなされておりますので、それはそれといたしまして、そのときの認識というのは、先ほど申し上げましたように、いわゆる学術研究という言葉はありませんけれども、当時の政策担当側は、学術研究のエッセンスというのは、研究者の自由な発想といいますか、政府の計画でこれをしようあれをしようではなくて、むしろそういう自発的な、第2期科学技術基本計画のときにはcuriosity-drivenと言いましたけれども、そういった価値で引っ張るような研究ということで、ここでは基礎研究の中の自由な発想に基づく研究というふうに一応読み込んでいるつもりでおりますので、もしそこで足りなければ、やはり研究の実態が、例えば、先ほど医学の分野ではこういう側面も出てきたとか、やはりより中身の変化をきちんと認識を共有することによって、ではそういうものをどう振興していったらいいのかという議論につなげていくことが必要ではないかというふうに思います。

【縣科学官】 

 その議論は、このスケジュールによりますと、この審議会のもとにある基本計画特別委員会でまずそういう議論はされるということでしょうか。それとも、先ほど総合科学技術会議のほうでフィードバックがされるというようなこともおっしゃっていたのですが、どこの段階でそれが生かされる可能性があると思われますか。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 まさにボトムアップのそういう議論であれば、おそらく総合科学技術会議が今の体系の認識からスタートされると、これは想定ですけれども、やはりその問題意識を持っている側から言わないと、だれかが言ってくれるということではないと思いますので、もしここでのご議論がそういうところに煮詰まっていくなら、やはりここから発信すべきではないかと思います。

【佐々木主査】 

 沼尾委員、どうぞ。

【沼尾委員】 

 今まで学術と科学技術、そういったものを一応分けて議論しているような印象を持ったのですが、むしろ、両者の結びつきについての例を具体的に挙げていただくと、非常に説得力が増すのではないでしょうか。
 今、ご紹介のあったエイズ撲滅への人文学の貢献は、そのよい例になります。科研費を用いて行った研究が科学技術に結びついた事例の収集をJSPSの科研費ニュースでやっています。そういったものを参考にして、実際、具体的に学術が科学技術の発展に貢献していることを示す必要があります。例えば、社会学の議論から複雑系ネットワークが出てきて、情報学などでは実際にコンピュータネットワークの上で応用が進んでいます。そういった両者が結びついているような例を盛り込んでいければ、説得力が増すのではないかと思います。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 ほかに、ほかの方からご発言ございませんでしょうか。それでは、小林委員、お願いいたします。

【小林委員】 

 もともと第3期科学技術基本計画で基礎研究が重要だという指摘はあったわけですが、その先の具体的なことは書かれていないという点が不満だったということがあります。そこでその先の具体的な内容に踏み込もうとすると、学術というよりは、むしろ具体的には大学の在り方に立ち入ることに結果的にはなるのではないかという気がします。やはりその点は慎重になるべきものなのか、それとも、本当にそこまで踏み込んで考えるべきなのかという、そこがまだ何となく釈然としていないのですけれども。

【佐々木主査】 

 では大学の。

【白井委員】 

 いやいや、大学のだけではないですが。
 私、産学連携の委員会も出ているわけですが、そこでのいろいろな議論の中を見ても、日本の国家というようなことで言うと、非常にもうどんどん厳しい状況になってきている。そうすると、自分も好きでやっている学術研究が、政策までに完全にうまく反映するかどうか、私はよくわからないけれども、しかし、人文社会系の研究というのは、どういう戦略で日本がこれからやっていけばいいかという、ごく当たり前のところでさえ密接な関係があるわけですよね。だから、科学技術の細かい技術のところの研究だけやっていればうまくいくというのは、ほとんど幻想なのでしょうね。第4期科学技術基本計画ぐらいになると。そうすると、もう少し広いパースペクティブを持って科学技術の研究というのも考えていくのだという姿勢がないと、なかなか成功しないのではないかという気がするのですよね。

【佐々木主査】 

 磯田局長。

【磯田研究振興局長】 

 いわゆる科学技術行政の観点でも、やはり人文社会科学からどういうご支援をいただくかというのについては、大いに関心がございます。ただ、さはさりながら、これまで学術と科学技術の議論の峻別とか、あるいは学問の自由とか、そういうことに対する配慮から、どちらかというと、おそるおそる見ていたというところがございますので、本当は第4期科学技術基本計画ぐらいになりますと、社会と科学技術の関係ということは、これまでも総合科学技術会議で議論いただいておりますけれども、本当はもう少し踏み込んでご議論いただければ、多分、21世紀の科学技術政策としては意義があるのではないかと思っていまして、それも、やはり本委員会側からご提案いただいたほうが、より科学技術サイドとしては受けとめやすい。

【佐々木主査】 

 それでは、人文の話も出ましたので、鷲田委員、どうぞ。

【鷲田委員】 

 実はもう1年近く前になるのですが、この第4期の科学技術基本計画のラフないろんな考え方をまとめた結構長い文書についてヒアリングを受けたことがあります。科学技術基本計画と書かれている、その数十ページの文書の中に、一度もアートという言葉が出てこなかったのですね。芸術の場合ですとファインアートですけれども、アートという概念が出てこなくて。アートの語源というのは、ギリシャ語のテクネーですから、技術の語源と全く同じものなので、わざなんですよね。それがもう本当に不思議ですという、もうその一言でお返ししたのですけれど。
学術というもの、これも術ですね。芸術の術、それから技術の術、なぜこれはみな術と言うのかというあたりまで立ち返って考える必要があると思うのです。これは英語でもそうですよね。教養教育、liberal artsと言いますし、美術のことはfine artと言いますし、それから、技術のことはもうtechnologyという形にはなっていますけれども、すべて同じ概念で、ある意味では、概念的にはとらえられるわけで。
 実際のところ、現代、研究と教育というものの一体化の重要性ということはものすごく言われるようになったのですけれど、教育の中にアートという手法、芸大でするような制作として芸術ではなくて、要するに、今あるものを違うふうにイメージする、あるいは違うイマジネーションの視点でとらえ直すというのが広い意味でのアートだと考えれば、学術のパラダイムというのもそうですね。時代によって、同じものを見ていても、違う視点でとらえ返す、それが学術の進化ということですし、芸術というのは、まさに、同じこの部屋を見ていても、違うふうに表現できるような想像力による表現が芸術ですから。技術はこれを本当に変えてしまうということで、変えるという点では全く同じものなのですね。
 だから、そういう意味では、前回の第3期科学技術基本計画に対するこの委員会からの提案のところには、そこはかなり、むしろ高邁に書かれておりました。冒頭のところで、学術とは、科学技術にとどまらず、文化や芸術の発展にも貢献する、人類の幸福に資する知の体系であるという、学術の側から今の3つ、技術や芸術との関係まで書いてあったわけです。
 私としましては、今日いろんな議論を聞かせていただいて、特に具体的に前回の我々の委員会から科学技術基本計画に盛り込まれるべきものとして出したものが全然反映されなかった、特に学術ということが反映されなかったというときに、では今度は逆にものすごく具体的に、これはこうしてください、これは大体数値目標はこれでやってくださいと、具体的なことを言って意見を通すよりも、技術というもの、あるいは科学と技術の関係、芸術の、そういうこと全体をもう一度問い直すような視点をはっきり出して、谷口先生が最初におっしゃっていましたように、この委員会は学術の専門委員会ですから、学術という立場から、技術の問題、芸術の問題まで位置づけをきちっとしたようなものを出すこと、そのことによって基本計画の位置づけを変えていただくということが必要なのではないかと思います。
 そういう意味で、もう一点だけ言いますと、前回のこれと、今回、先ほどご説明いただいた意見のまとめの案ですが、ここで前回あって今回抜けているのが、磯田局長がおっしゃった、コミュニケーションの問題ですね。社会系の学術側からのコミュニケーションの問題が、今回は落ちていますよね。一つ、前にはちらっとしか書いていなくて、今度は具体的に書かれているのは、研究支援のスタッフ、研究支援機能というものをもっときっちり位置づけないといけないという、そちらのほうは出ているのです。それ以外のものは、あまり変わりはないなという感じがいたしました。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。

【谷口主査代理】 

 今の件に関して。
 実際にどう盛り込むかという話なのですが。

【佐々木主査】 

 ご提案として、どうぞ。

【谷口主査代理】 

 これは、なかなか難しい問題で、第4期科学技術基本計画というのがもう走るということは、わかっているわけですよね。つまり、第1期学術基本計画になることは、まずないわけですよね。そうしますと、いかに第4期科学技術基本計画の中に「学術とは何か」ということをしっかりと盛り込んでいくという、その戦略が非常に重要かと思いますが、そういう方向で、私、代理ですから、結びの立場ではないのですが、そういう方向で行くと理解してよろしいのかという問題があるかと思うのですね。
 やはり学術というのは、科学技術基本計画の中で学術の位置づけはこうだ、だからこそ科学技術基本計画の中でこう生かすべきだという、そこを言っていただくということと、それから、もう一点、先ほど磯田局長がおっしゃってくださった日本学術会議というのは、やはり科学者コミュニティを代表する会議でありますから、ここが今回の、この第3期科学技術基本計画では全く述べられていないのですね。総合科学技術会議については述べられているが、日本学術会議については述べられていない。しかしながら、日本学術会議というのは、総合科学技術会議と車の両輪だという位置づけがなされているからして、先ほどの延長でいきますと、学術が何かということをきちんと述べるということと、日本学術会議の意義というのは何かということをやはりここに書いていただくということは、この部会で議論していいかどうかわかりませんが……

【佐々木主査】 

 そちらでやってください。

【谷口主査代理】 

 いやいや、でも、この部会でもやはり議論していただいてもいいのかと。そういうことで、一緒に抱き合わせできちんと述べていただくということが重要かと思います。

【佐々木主査】 

 ほかの観点、ほかの点も含めて、何かございましたらどうぞ。
 かなり同じようなあたりの話を、大体集中した論点が取り上げられたと思いますが、先ほど小林委員から言われた大学云々という話とかいったようなことも、もし何かあればご意見をいただきたいと思います。
 先ほど言いましたように、これはまた学術分科会で議論していただきますので。ただ、この場では、とりあえずはきょうが非常に大事だということですね、石崎室長。

【石崎学術企画室長】 

 はい。

【白井委員】 

 全然違うことでよろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 もちろん、もちろん。

【白井委員】 

 ざっと基本のところは書いてあると思うのですが、女性研究者のことはほとんど触れられていないですよね。これはどこかやはりあっていいのではないかという気がするのと、それから、いろいろデータベースの整備だとか、インターネットの件とか、情報通信についても書かれているのですけれども、ここは強調しすぎても、僕はしすぎることはないと思います。要するに、同じコミュニティの人間が、それぞれ所属は違っても、いろんな分野の研究に平等に参加できるというのかな。今の世の中そういうことができるようになってきているのですよね。ですから、そういうようなことについても徹底してやるのだと、それで、成果を上げるという方向性を、強く求めていいのではないかという印象がしました。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 ほかにはございませんか。まだ少し時間が。
 それでは、家委員、どうぞ。

【家委員】 

 今の白井先生の最後のご指摘ですが、情報に関して、今は技術的、あるいは原理的には平等にアクセスすることができるようになっているはずですけれども、実際に起こっていることというのは、かなり大学間に情報格差というのが広がっている。つまり、学術図書、学術雑誌の購入経費が非常に高騰していて、地方大学――と言ったら失礼ですけれども――では負担に耐えきれなくなって、学術雑誌の購入をやめるとか、そういうことがあります。
 このまとめの中の10ページのところの真ん中あたりに、例えば、「オープンアクセス」を推進することが求められる。これ自体はもちろん大変結構なことで、そうなればいいと思います。一方、その次に、我が国の学協会の国際的な情報発信力を強化するため、学術雑誌の電子化を支援するということが書かれていて、これはそれぞれを読めば、それはぜひそうあってほしいと思うのですけれども、ではだれがその経費を負担するのという、背挙の公約ではないですけれども、そこのところも総合的に考えないと、具体的には進まない話だろうと思います。やはり我が国の研究成果を国際的に発信するプラットフォームとして、日本もきちんと自分の研究成果を発表するフランチャイズを持つということは非常に大事なことだと思いますので、その辺の部分の戦略というのをぜひどこかで盛り込んでいただきたいなというふうに思っております。

【佐々木主査】 

 ほかにいかがでしょう。鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 若手研究者のセクションについて意見を申し上げたいと思います。
 私は研究費部会にも参加していますが、その場でも若手研究者に対する助成制度の拡充を求める議論がなされています。しかもこの拡充は、科研費制度の内部における分配原則の再検討の問題としてではなく、科研費の他のカテゴリーについても整備・拡充が必要だ、増額が必要だという議論になっているように思われます。
 私の意見は2点あります。第1に、若手研究者という年齢を指標とする重点的助成制度を特別に強化するというのは、決して自然でも当然でもないのではないかと思います。むしろ、研究者に対する処遇の制度に年齢を指標とする優遇措置を取り込んでいるのは,日本くらいのものではないかと思います。もちろん、研究機会に対するアクセスをできるだけ衡平に整備する措置が必要であることは、言うまでもありません。ただ、優遇措置を必要とする根拠は、若手という年齢を指標とするような理由だけではない筈です。研究上のハンディキャップを補整する必要性のシグナルは、もっと多様である筈です。もちろん、現在の議論のコンテクストは真空の中での制度設計ではなく、現存する若手優遇措置の改善の方策を求めるためのものであることは、私もよく承知しています。それにしても、議論のバランスを絶えず意識するためには、若手研究者の処遇の改善という、重要ではあるが特定の視点だけで、研究環境の整備の議論が方向付けられることには注意が必要です。
 第2に、若手研究者のジョブの可能性が非常に狭く限定されていて、将来の保障がないことが懸念されています。この懸念を私も共有していますが、現在の大学・研究所の仕組みをそのままにして、若手研究者のジョブの機会を数量的に拡大するだけで、問題が抜本的に解決されるのかといえば、やはり大きな懸念が残されます。先ほど小林先生がおっしゃったように、大学・研究所の仕組みの方にも踏み込まないと、実際の問題の根源には迫れないのではないかと思います。
 最後に、若い人々にとって研究者というキャリアパスが魅力的なものであるようにすることの重要性が、先ほどから強調されています。全く同感であります。そのためには、研究者のチームの一員として参加することが、どれほど魅力的な将来であるかを実感させることが必要です。大学・研究所におけるチームのメンバーというキャリアパスを魅力的なものにすること、その仕組みのなかに若手研究者が参加して力を発揮できるような仕組みへと、現存の大学・研究所の仕組みを改革していく工夫が、高い優先度を持つ課題として取り組まれる必要があります。若手研究者に対する金銭的な処遇の改善とか、彼らが就けるポストの拡充だけが、研究者としてのキャリアパスを魅力あるものにする決め手ではないのではないかと思うからです。以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。

【谷口主査代理】 

 今の文脈でよろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 谷口委員、どうぞ。

【谷口主査代理】 

 先ほど小林先生のご意見もありました、鈴村先生のご意見もありましたように、やはり大学の在り方というのは、大学そのものの在り方について基本法で何とかという文脈ではありませんが、科学技術を推進する大学として、大学はいかにあるべきかという、そこは何らかの形で検討していただいたらいいのではないかという感じもするのですね。
 昨今、大学の体力が急激に弱くなっているというか、文部科学省の言いなりになっていると言うと語弊があるかもしれませんが、そうなれば文部科学省の皆さんもがっかりされると思いますね。なぜそうなっているかというと、やはり運営費交付金が削減されることや過度ともいえる評価制度などにより、自動的に自律性がなくなってくるという、そういうスキームがあるわけですよ。
 私は具体的なことに踏み込めとは申しませんが、大学とはいかにあるべきか、科学技術を推進するための大学の役割とは何かということを格調高く書いていただくということが、やはり重要なのではないかと思うのですよね。そのコンテクストで、やはり自由な発想に基づく研究がいかに大切か、それを大学、研究機関が行うことがいかに重要なのか、それがノーベル賞につながったり、あるいは、世の中の新しい技術のブレークスルーにつながるかといったことを、説得力のある、かつ格調高いうたい方でやっていただくとありがたいなと思います。

【佐々木主査】

  喜連川科学官、どうぞ。

【喜連川科学官】 

 ほとんど同じご意見を繰り返し申し上げるのかもしれないのですけれども。
 ことしのIT戦略本部、i-Japanで、iはinclusion、したがいまして、先ほど若手ということをおっしゃられましたが、私もそれにはやや疑問がありまして、とにかくすべての人がイコールフッティングでパーティシペートできるという環境、つまり、そういう学術環境ということが本質なのではないかと。
 それから、もう一つは、大学におりますともうとにかく感じますのは、いわゆるトップの知といいますか、スーパーエリートをどうやって育てるかというのが非常に本質的な課題になっているのではないかな。あまりきれいごとでは済まない、それをどう反映するかというのが一番の課題ではないかと思います。それが2点目。
 3点目は、人文社会に関しましてですけれど、私はもう本当に第4期科学技術基本計画においては、非常にエッセンシャルに重要だと思っておりまして、とりわけ情報の分野におきましては、今のレギュレーションが全く合わない。倫理もそうですし、著作権もそうですし、OECDに行っても、そういう議論ばっかりしていると思います。したがって、ここから人文系を外すということは、もう到底考えられないことではないかと。
 以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 白井委員。

【白井委員】 

 一つだけですが、ファンディングのシステムですよね。これの考え方は、私は今回やはり突っ込んでどこかでやっておくべきではないかという気がする。各省庁というのもあるしね。それから、日本学術会議があるのだが、ここのコミュニティとしての発言力というのは、やはり僕は弱いと思いますよ。そういうものは何か影響を及ぼしていくということから言えば、ファンディングのシステムの中にある程度の文化がやはりなければならないだろうという気もする。そういう意味で、研究もマネジメントもそうなのだけれど、この両方のところをもう少し突っ込んで議論しておくべきではないかという気がします。

【佐々木主査】 

 どうもありがとうございます。とりあえず、よろしいでしょうか。
 大変貴重なご意見をいただきましたが、なかんずく、この科学技術基本計画と学術研究との絡み合い、あるいは矛盾問題、あるいは非適合的関係というものを、どういうふうに我々の角度から見てアタックするかということについて、それぞれの委員にお考えを述べていただいたということでございまして、私の個人的意見を言えば、結局、科学技術というものが、社会的コンテクストとしては大変狭く考えられてきたという伝統がある。これは和魂洋才以来の伝統があるものですから、コンテクストは非常に狭いというわけですね。
 さらに、私も基本計画特別委員会に出ていますと、今度はイノベーションというのが出てくるのですが、このイノベーションも非常に狭く考えられている。少なくとも政策を所轄している人たち自身がイノベーションの対象になるとはだれも考えていないというのは、これは確かでございます。政治学も余り重視されてこなかったのですが、ついにイノベーションもぼつぼつ始まるかもしれないということになってきました。ただし、こういうことはあまり期待されていなかったのではないかと、ひそかに思っているのでありますが。
 ただ、きょうご指摘いただいたのは、それぞれの角度から、実はこの問題は非常に広くとらえるべきであると同時に、あらゆる知的なエネルギーと知見というものを活用しながら、狭いコンテクストから解き放つような形での科学技術のとらえ方が必要なこと、あるいはアートというお話もありましたが、それからイノベーションになるとまさにそうだろうと私は思っております。どうもすべてのスキームが、こういうのをちまちました――と言っては悪いけれども――ものにしたいな、あるいは、それで十分だという、文科的・政治的・社会的仮定に基づいているところがあるものですから、これと我々のきょうの議論というのはかなりぶつかるところがあるということは、強く確認をさせていただいたところでございます。どんなふうにやるのかは、またいろいろ考えなければいけませんけれども、この点については、学術分科会のほうでもさらに皆さんのご意思というものを確認するようにしたいと思っております。
 きょうのこのまとめにつきましては、いろいろご注文がつきましたが、私の主査としての責任で修正を加えた上で、学術分科会での議論に供したいというふうに思っております。これもまた一つのステップでございますので、またいろいろご意見を承ることになろうかと思いますけれども、そういう形できょうの議論を取り扱わせていただきたい、この点についてご了承をいただきたいと思っております。また、ひとつ学術分科会のほうでもよろしくご議論を賜りたいと思います。
 そこで、その他に入るわけでありますけれども、今後の予定ということでございます。本日、第4期科学技術基本計画の策定に向けた論点の検討をしていただきましたが、今後はまた学術の基本問題に関する審議に戻るわけであります。そして、以前お話しいたしましたように、これまでの論点となった事項についての議論をさらに深めていく必要があるということであります。そのため、この準備として、何名かの先生にお集まりいただきまして、作業を進めていただくのがよいという考え方、あるいは、私、前にも申し上げたかと思いますが。そこで、これを実際にぜひお願いしたいと考えております。
 そこで、今後の作業、それから作業メンバー等につきまして、事務局から少し説明をお願いしたいと思います。では、石崎室長、よろしくお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 それでは、今後の学術の基本問題に関する特別委員会のスケジュールにつきまして、ご説明申し上げます。資料7をごらんいただければと存じます。
 今後の審議につきましては、先ほど主査からも説明いただきましたように、これまでの審議の中で論点となりました問題につきまして、作業メンバーの方にお集まりいただきまして審議を進め、今後の審議のたたき台になるものを作成していただきたいと思っております。本委員会におきましては、その議論を踏まえまして、審議を進めていきたいと考えているところでございます。
 資料7の2枚目をごらんいただきたいと存じます。当該メンバーのほうに入っていただく先生方につきましては、事前にご相談もさせていただいているところでございますけれども、このメンバーで作業を進めさせていただければと考えてございます。メンバーの先生方、ご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。また、先生方に加えまして、国立教育政策研究所の松川総括研究官にもご参加いただくことになってございます。また、事務局といたしましては、本日は欠席しておりますけれども、山脇振興企画課長、それから、隣に座っております小谷技術移転推進室長のほか、私も参画したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 大変ご苦労をおかけしますけれども、ひとつよろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日の会議はこのあたりで終わらせていただきたいと思いますが、日程等について、事務局から連絡事項がございましたら、どうぞ。

【石崎学術企画室長】 

 次回の学術の基本問題に関する特別委員会の日程につきましては、現在未定でございますので、詳細が決まりましたら、またご連絡をさせていただければと思います。
 本日はどうもありがとうございます。

【佐々木主査】 

 それでは、ありがとうございました。これにて終了いたします。

── 了 ──

 

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