資料2 大学共同利用機関を取り巻く課題について

1.背景
(1)我が国の社会経済的な環境変化
○ グローバル化の進行により、持続可能な開発目標(SDGs)設定等の地球規模での課題解決の動きが高まる一方、国際競争が激化。
○ 少子・高齢化社会の到来、人口構造の変化、地方の過疎化
○ 第4次産業革命の進行とSociety5.0の実現
(2)我が国の基礎科学力を巡る状況
○ 研究費・研究時間の劣化による研究の挑戦性・継続性を巡る危機
○ 若手研究者の雇用や研究環境の劣化による次代を担う研究者を巡る危機
○ 研究拠点群の劣化による知の集積を巡る危機
→ 我が国の基礎研究力の国際的なプレゼンスの低下
(3)大学改革を巡る状況
○ 社会全体の構造変化への対応、大学や学部の垣根を越えた多様な資源の活用
→ 大学間の連携・統合(国立大学一法人複数大学設置等)、産業界や地方公共団体等との連携
○ 大学のガバナンスの向上 等
(平成29年12月28日中央教育審議会大学分科会将来構想部会「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」)

2.基本的な方向性
○ 大学共同利用機関(以下「機関」という。)は、「大学の共同利用の研究所(国立大学法人法第2条第4項)」として、大学では実現困難な高度な人的・物的資源を大学等の利用に供することにより、大学の枠を越えた国際的な共同研究を推進し、新分野の創成を図るとともに、これらを担う若手研究者の育成に貢献。
○ こうした特長を最大化し、大学改革の動きと連携しつつ、我が国の基礎科学力の復権を牽引するとともに、イノベーション創出や地方創生など今日の社会経済的な課題に貢献することが課題。
・研究者の内在的動機に基づく多様な学術研究や人材育成を強化
・高度な研究施設・設備等の資源を活用し、国際共同研究を推進
・我が国が弱いとされている学際的・融合的領域を創出
・Society5.0に対応したイノベーションの源泉としての役割を強化
・SDGs等グローバルな課題や地域課題など多様な社会的課題の解決に貢献
○ 現在の4つの大学共同利用機関法人(以下「機構法人」)という。)の枠にとらわれず、幅広い観点から、機関の設置状況が最適なものとなっているのか検証し、時代の要請に沿った構造とすることを検討。

3.検討課題の例
(1)機関における研究の質向上
1 機構法人のガバナンスの強化
【課題の所在】
○ 各機関における業務執行に対し、設置者である機構法人が担うべきガバナンス機能が不明確で、研究の進展や経営環境の変化に対応できる効果的・効率的な運営体制となっていない可能性。
【検討の方向性】
○ 各機関の主体的な活動を基礎としつつ、設置者としての機構法人のガバナンス機能の強化。 
≪考えられる施策の例≫
1)機構法人の役割(契約事務、国際交流、知的財産管理等)の明確化
2)機構長補佐体制の充実による機構長のリーダーシップの発揮
3)産業界や海外の分野研究者等機構外の者を役員として参画

2 人的資源の改善
【課題の所在】
○ 若手研究者の育成や大学等との連携に必要な機構法人や機関の枠組みを越えた研究者の流動性が低い可能性。
【検討の方向性】
○ 機構法人や機関の枠組みを超えた研究者の流動性を向上。
≪考えられる施策の例≫
1)ポスドクのキャリアサポートやクロスアポイントメント制度の活用等による多様な学術機関間の流動性促進


3 物的資源の改善
【課題の所在】
 ○ 厳しい財政状況の下、研究施設・設備の中長期的なマネジメントが困難。
【検討の方向性】
○ 機構法人や機関の枠組みを越えた施設設備のマネジメント体制の構築。
○ 公的資金に加え、民間資金の活用による多様な整備手法を推進。
≪考えられる施策の例≫
1)関連する機構法人と国立大学法人、研究開発法人その他の研究機関との協力による施設・設備の共同運用や維持管理等を促進
2)「技術支援組織」の位置付けを明確化し、他の研究機関との連携を促進

4 機関の構成の在り方
【課題の所在】
○ 現状の機関の構成が、基礎科学力を取り巻く環境変化や大学等のニーズに対応したものとなっていない可能性。
【検討の方向性】
○  新たな学際的・分野融合的領域の創出に対応するため、基本的な考え方や移行プロセス等を明確化し、具体的な機関の在り方について、機構法人や学術界の検討を促進。
≪考えられる施策の例≫
1)機関の新設に向け、機関が備えるべき要件を定めるとともに、プロセスを明確化
2)機関について一定期間ごとに検証し、その結果を踏まえ、機関の在り方を検討

(2)人材育成機能の強化
【課題の所在】
○ 機構法人と法人格が異なる総合研究大学院大学(以下「総研大」という。)等との連携協力が不十分となっている可能性。
【検討の方向性】
○ 総研大との組織的な連携協力体制を強化する枠組みの導入。
○ 連携大学院制度等の活用による大学の教育研究に対する貢献の促進。

(3)関係する他の研究機関との連携
1 大学の共同利用・共同研究拠点との連携
【課題の所在】
○ 一大学を越える共同利用・共同研究体制における機能強化が必要。
【検討の方向性】
○  共同利用・共同研究拠点との組織的な連携を促進。
≪考えられる施策の例≫
1)関連する機構法人と国立大学法人その他の研究機関等との協力による共同利用・共同研究体制の強化
2)両者の位置付けを明確にしつつ、それぞれの移行を可能化

2 地方創生やイノベーション創出
【課題の所在】
○ 多様なステークホルダーとの連携による組織的・戦略的な取組の強化が必要。
【検討の方向性】
 ○  機構法人や機関の枠を越え、社会の要請に積極的に応えることができる体制を構築。

(4)機構法人の枠組み
【課題の所在】
○ (1)~(3)に対応するため、4機構法人の枠組みの在り方を検討。
【検討の方向性】
○  機関の設置者としてふさわしい枠組みを検討。
≪考えられる施策の例≫
1)4機構法人及び総研大を構成員とするネットワークを創設し、例えば、以下のような業務を実施
・各研究所間の重点的な研究領域の調整
・研究者の人事交流
・国際共同研究の推進
・大学等との連携による人材育成の高度化
・施設設備のマネジメント
・産学連携・地方創生の推進
2)学術研究体制の強化及び管理運営の効率化を図る観点から、機構法人の統合や、現在の4機構法人の枠にとらわれない機関の在り方を検討。なお、機構法人の統合については、事務の統合・簡略化など管理運営の効率化の側面だけでなく、機関の分野、目的、形態等の違いや、適切なガバナンスが可能かという点についても留意しつつ検討することが必要

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