今後の共同利用・共同研究体制の在り方について―前回(第88回)の研究環境基盤部会における主な意見―

共同利用・共同研究拠点の国際化を進めるに当たっての留意点について

○ 日本の存在感が低下している原因として、国際性が十分ではないことがあると思う。大勢の優れた研究者が集まって切磋琢磨する環境が必要。これを実現するために課題となるのは、事務や技術面での研究支援体制だと思う。また、外国の研究者からは、設備の使用料をいただくこともありうると思う。
○ マックス・プランクは、人事システムや選考基準が英語化されており、完全に公開されている。つまり世界中で一番優秀な人を集めるというシステムが作られている。「国際共同利用・国際共同研究拠点」という発想は賛成であり、マックス・プランクのような理想像に近づけるために、どう運営上のシステムを変える必要があるかを検討する必要があり、大学事務局の理解も必要。
○ 大学は、外国人教員や留学生の獲得など国際化にはかなり力を入れている。附置研だけ切り離すのではなく、大学と一体になった国際化を進めていった方が効率が良い。
○ 国際共同利用は、もう当然のことであり、あっていいことだと思う。ただし、予算が減少傾向であるため、海外から競争的資金を獲得する仕組みを整えないと実現は難しいと思う。また、スクラップアンドビルドをどのように進めるかという議論をしないと、「国際共同利用・国際共同研究拠点」への重点支援はできないと考える。
○ 現在の予算的な枠組みが変わらないまま、国際化するための方法として、各研究所がよく似た研究を行う場合、最初の企画段階からネットワークを組んで国際ファンドを取りに行くなど、自力で研究費を獲得する方法もあると思う。
○ 民間には資金に余裕があるところがあり、投資先を探している傾向にある。面白い研究者が集まるところには、資金も集まり、さらに研究者が集まるという好循環ができている。英語化は確かに大事だが、魅力を表現して資金を集めることができない組織は運営上大きな問題があると思う。したがって、資金を集める仕組みを、共共拠点の中にも入れる必要がある。
○ 研究者になりたい人たちを増やすという世の中の雰囲気を作っていくということも、「国際共同利用・国際共同研究拠点」を検討するに当たっての重要な視点だと思う。
○ 優秀な人材を取り込む際、アジアに力を入れることをどう考えるかについて、論点にしてはどうか。
○ 「国際共同利用・国際共同研究拠点」の取組を当該研究所のみならず、大学やコミュニティと連携し、波及効果を持たせることが大切。
○ 共共拠点、大学共同利用機関、研究開発法人といった全体の中で、共共拠点の役割をどう位置づけるかを考えることが重要。共共拠点は、例えば理研のような我が国の研究を牽引する研究所に、人材を供給するという役割があると思う。トップに続く次の層の強化策として、今後、共共拠点の機能を高めることは大切であり、その1つに国際化があると思う。
○ 国際化については、全ての共共拠点がそれなりに取り組んでいると考えられ、制度として可視化することが提案の趣旨だと捉えている。次のステップとして、「国際共同利用・国際共同研究拠点」を、いつから始めるかを決める必要がある。
○ 研究者を増やすにあたっては、多様性が必要であることから、「国際共同利用・国際共同研究拠点」の認定に当たっては、研究者の多様性も考慮してはどうか。


国際化支援の対象となる共共拠点の範囲について

○ 「国際共同利用・国際共同研究拠点制度」は、ある程度、選択と集中をすることであると思うが、その中で、どう多様性を保っていくかというバランスを考える必要がある。
○ 国全体の研究力を上げるために、共共拠点に国際性という要素を加えることは重要だと思う。一方で、大学の特色は多様性であり、「トップの研究者を引き上げる」、「単に優秀な研究機関を作る」という視点のみでは、多様性の豊かな大学で研究者が育っていくという芽を摘んでしまうことを危惧する。このため、共共拠点については、常に新しい人材を育てていくという仕組みも評価基準として必要だと思う。
○ トップを伸ばすだけでなく、裾野を全体的に高めることが大切であり、地方の研究者や学生が研究装置などを使いやすくするという視点も大事。
○ トップに続く次の層を強くするという観点から、共同利用・共同研究に携わる公私立大学の研究者を増やす工夫も必要だと思う。
○ 大学の多様性は重要であると思う。一方で、コミュニティが、国際性の中で評価されて、位置付けられるべきであるとも思う。


評価について

○ 「国際共同利用・国際共同研究拠点」ができ、財務当局が理解を示せばよいが、厳しい財政状況の中でそれが難しければ、共共拠点の評価についてメリハリを付けた上で、支援の重点化をしてはどうか。例えば、S・A・B・C・Dの5段階にして、Cは大幅に減額、Dは認定取消としてもよいと考える。
○ 論文については、学内の雑誌で出すものと、学外の雑誌で出すものでは、インパクトファクターが全く異なるため、カウント方法を分けるべき。
○ 国際性を評価するに当たっては、定性的な指標ではなく、研究所の規模等を考慮しながら具体的な評価指標を検討する必要がある。
○ 共共拠点の評価は定性的になってしまっているため、論文数等を評価の視点にする必要があると思う。また、共共拠点については、日本の科学力の推進の基盤を担っていることから、競争原理を働かせて、成果を競うという形にすることも大切。
○ 共共拠点、大学共同利用機関を含めて、それぞれが目指しているものがあるはずである。それをKPIとして、洗い出してほしい。KPIを並べることで各拠点や機関の特色が分類・比較できるようになり、評価基準もつくれると思う。


その他

○ 人口減と予算減の中、世界の中での我が国のプレゼンスが下がっている今こそ、各大学が競い合うというよりも、どう連携するかが重要であり、共共拠点が日本の研究組織の中で、どう連携の役割を果たすかということを検討していただきたい。

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