マスタープランとロードマップの今後の推進に関わる検討事項についてのメモ(抜粋)

(海部宣男 主査 作成 平成27年5月20日)

1.マスタープランとロードマップの意義と位置づけについての確認 

 1)マスタープランとロードマップ

「学術の大型研究計画マスタープラン」 

  • 我が国の科学者コミュニティを代表する機関である日本学術会議が、公募を基礎とし全分野を網羅した科学的評価に基づいて、我が国全体として推進すべき優れた大型計画をリストアップし公表するもの。 

「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想-ロードマップ」

  • 学術の大型計画の主な実施主体である文部科学省が、科学技術・学術審議会において、学術会議のマスタープランを基礎とし、実施に重点を置いた評価を加えて、学術的価値及び緊急性が高く実施に移すことが適切な大型計画候補をリストアップし公表するもの。

 2)学術政策としてのマスタープランとロードマップ

  • 「マスタープラン」と「ロードマップ」の建設的な組み合わせは、学術コミュニティが全分野を網羅して大型将来計画を策定・公開し、行政機関がそれを受けて科学的に価値の高い計画を透明性の高いプロセスで実施に移す新たな学術政策であり、両者は支え合う車の両輪の関係にある。
  • 2度にわたり実施された「ロードマップ」についてのパブリックコメントでも、この方式は特に研究者やジャーナリストの方々から極めて高い支持を得ている。また2010年のマスタープラン・ロードマップの英語版は、日本の学術の方向を明確に示した資料として、国際的にも評価が高い。

3)研究者コミュニティへの影響

  • マスタープラン2010で従来の「大型施設計画」に加え新たに「大規模研究計画」を設定したことで、学術の全分野で大型計画の策定が可能になった。
  • 大きな分野を視野に我が国の学術研究の向上や社会への貢献を目指す大型計画の組織的策定は、その検討・議論を通じて、我が国の広い分野の究者コミュニティに新たな活気をもたらしている。

4)マスタープラン及びロードマップに記載された計画の実施主体

  • 「マスタープラン」に記載された優れた計画を実施する主体は、もとより文科省のみに閉じるものではなく、広く各省庁・研究機関に及ぶものである。
  • 「ロードマップ」も、現在「大規模学術フロンティア促進事業」が中心的に関わっているが、その枠を越えて文科省全体を対象とし、さらに関連他省庁における学術的計画の推進にも、十分に資するものである。

5)今後に向けた検討

  • 以上の基本事項を確認した上で、このシステムを実効性と継続性のあるものとして長期的に進めることが重要である。
  • 第3期目のロードマップの検討に入るに際し、そのために考えるべき事項を学術の大型計画全体を視野に入れて検討する。

2.「学術の大型計画」の定義について

【現状】

  • 現在の「学術の大型計画」の定義はマスタープラン2010・2011に明記され、ロードマップの策定においてもこれを踏襲している。
  • 具体的には、「大型施設計画」、「大規模研究計画」それぞれについて、狭い意味での定義は下記1)、2)の丸1にそれぞれ書かれたもの、広い意味での定義はそれぞれのリストアップ基準全体ということができる。
  • マスタープラン2014でもこれを基本的に踏襲するとされたが、結果として207件の「マスタープラン2014」はそれが反映されたものではなく、実質上は27件の「重点大型計画」がほぼ大型計画の定義に沿うものと考えられる。

マスタープラン2010・2011に明記された定義とリストアップ基準

1)学術の大型施設計画リストアップ基準(マスタープラン2010/2011)

  1. 定義:大型の研究施設・設備を建設・運用することで科学の最先端を切り開く研究計画。 
  2. 予算:運営費を除く建設費総額が目途として100億円(物質科学など分野によっては数十億円)を超える規模の計画であること。
  3. 科学的目標:明確な科学目標により、真理を探究し人類の知的資産を拡大する計画であること。
  4. 国際的水準・国際連携:世界状況に照らし十分な先進性と独自性を持ち、効果的国際連携が可能であること。
  5. 研究者コミュニティの合意:研究者コミュニティの十分な検討と議論を経て合意が形成された計画であること。
  6. 計画の実施主体:計画を実施する主体組織が明確であり、かつ責任果たす用意があること。
  7. 共同利用体制:完成後、共同利用運用などコミュニティによる効果的利用が期待できること。
  8. 計画の妥当性・透明性: 全体として実現性・計画性・推進体制が妥当であり、透明性が確保されていること。

2)学術の大規模研究計画リストアップ基準(マスタープラン2010)

  1. 定義:大分野の根幹となる大型計画であり、大規模な研究基盤設備の設置、研究ネットワークの構築あるいは膨大な研究データの集積を行い、これらを運用することで科学の最先端を切り開く研究計画。
  2. 予算:初期投資および運営費等の経費を含め、総額数十億円以上の経費を必要とし、科学研究費補助金等では実施が困難な研究計画であること。なお、分野により必要とする予算規模は異なるので、上記の総額は一つの目安と考えて良い。
  3. 科学的目標:1)と同
  4. 国際的水準:世界状況に照らして十分な先進性と独自性を持ち、我が国として推進すべき研究計画であること。
  5. 研究者コミュニティの合意:1)と同
  6. 計画の実施主体:1)と同
  7. 共同利用体制:1)と同
  8. 計画の妥当性・透明性:1)と同

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-- 登録:平成27年12月 --