研究環境基盤部会(第89回) 議事録

1.日時

平成29年6月28日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階13F1・2会議室

3.議題

  1. 今後の共同利用・共同研究拠点の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

稲永忍部会長、小長谷有紀委員、松本紘委員、天羽稔委員、井本敬二委員、佐藤直樹委員、瀧澤美奈子委員、永田恭介委員、藤井良一委員、山内正則委員、横山広美委員、相田美砂子委員、加藤百合子委員、松岡彩子委員、観山正見委員、森初果委員、八木康史委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官、寺門学術機関課長、石崎学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、坂場学術機関課課長補佐、高見沢学術機関課課長補佐、錦学術機関課専門官、藤川学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

【稲永部会長】  皆さん、おはようございます。ただいまより、科学技術学術審議会学術分科会研究環境基盤部会第89回を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中御出席いただき、まことにありがとうございます。
 事務局から委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  おはようございます。本日は勝委員、伊藤委員、小林委員、橘委員、そして龍委員が御欠席でございます。
 配付資料の確認をさせていただきます。資料は議事次第にありますとおり、資料1から7及び参考資料1から2を配付しております。不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。なお、参考資料2につきましては、このような紙ファイルで机上資料とさせていただいております。御希望がございましたら、終了後郵送いたしますので、会議終了後におっしゃっていただければと思います。以上です。
【稲永部会長】  前回の会議において、永田委員より「国際共同利用・共同研究拠点構想」について御説明をいただきました。
 まずは前回の部会における主な意見と、本日御欠席の伊藤委員の提出された資料「学術研究における研究者の多様性の重視について」を御紹介させていただきます。これらについて、事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  前回第8期では、国際的な研究環境を整備するための取組に対して重点的に支援するということをまとめております。この具体化に向けて第9期では議論を深めていきたいというところでございまして、前回永田委員から御提案をいただいたところでございます。その内容としては、国際ステージでの共同利用・共同研究を推進し、国際共著論文の増加をはじめ、より高いレベルの研究を実施し、我が国のプレゼンスを高めることを目指し、国際共同利用・共同拠点制度の創設をしてはどうかというものでした。
 国際化には、研究の国際化や運営の国際化というものがございますが、特に研究の国際化につきましては、アメリカのバークレー研究所がなければ計算科学が困るというような実力のある国際的な中核研究拠点になってほしい。どのレベルまで求めるかという基準は、今後の検討課題だというお話があったところでございます。一方で、トップ層を支える次の層の大学が弱くなっているという課題も忘れてはならず、国際共共拠点にならない研究所であっても、いかにして研究力を引き上げるかを考慮する必要があるという内容も、御発表の中にありました。
 こういったお話に対して、各委員から頂いた御意見につきまして、3つのカテゴリーに分けて記載したものが資料1でございます。資料1をごらんいただければと思います。
 1つ目は、共共拠点の国際化を進めるに当たって、こういう点を検討してはどうだろうかという留意点についてまとめたもの。2つ目は、御提案のあった国際共共拠点構想のターゲットとなる研究機関をどのように考えるかというもの。3つ目は、評価に関するものでございます。順に紹介させていただきます。
 まず、1ページ目の1つ目の丸でございます。大勢の優れた研究者が集まって切磋琢磨する環境が必要であり、これを実現するための課題となるのは、事務や技術面の研究支援体制だと思うという御意見がございました。2つ目として、マックス・プランクは人事システムや選考基準が英語化されており、完全に公開されていることで、世界中で一番優秀な人を集めるというシステムが作られているが、このような理想に近付けるためには、どう運営上のシステムを変えていく必要があるかを検討する必要があるという御意見もございました。また、こういったことを進めるに当たっては、大学と一体になった国際化を進めることも検討してはどうかという御意見がございました。
 さらに、この国際共同利用・共同拠点への重点支援をするに当たっては、予算上の観点から、スクラップ・アンド・ビルドをどう進めていくかということも、併せて議論する必要があるというお話がございました。現在の予算の枠組みが変わらないまま国際化する方法として、例えば各研究所がよく似た研究を行う場合、最初の企画段階からネットワークを組んで国際ファンドを取りにいくなどという方法もあるという御意見もございました。民間には資金に余裕があるところがあり、投資先を探している傾向にある。英語化は確かに大事だが、魅力を表現して資金を集めることができない組織は、運営上大きな問題があると思う。資金を集める仕組みを共共拠点の中に入れる必要もあるとか、研究者になりたい人たちを増やすという世の中の雰囲気を作っていくことも重要な視点だと思うという御意見もございました。2枚目を御覧ください。
 これは御提案という形ですが、海外から優秀な人材を取り込む際、アジアに力を入れている研究所があるが、これについてどう考えるかも議論してはどうかというものがございました。国際共共拠点の取組を、当該研究所のみならず、大学やコミュニティーと連携し、波及効果を持たせることが大切という御意見もございました。共共拠点の役割について、例えば理研のような我が国の研究を牽引する研究所に人材を供給する役割があると思う。今後、共共拠点の機能を高めることは大切であり、その1つに国際化があると思う。国際共共拠点をいつから始めるか決める必要があるという御意見がございました。研究者を増やすに当たっては、多様性が必要であることから、国際共共拠点の認定に当たっては、研究者の多様性も考慮してはどうかという御意見がございました。
 これに関連して、本日御欠席されている伊藤委員から、資料2としまして、「学術研究における研究者の多様性の重視について」という御提案をいただいております。伊藤委員の意見の概要を申しますと、研究者の多様性について、伊藤委員としては、研究者の多様性と、あと研究の多様性の2つがあると考えていると。伊藤委員がおっしゃられている多様性というのは、研究者の多様性、特にインクルーシブネスやダイバーシティーという観点で、女性の活躍推進というところに焦点を当てられています。
 資料2の2枚目のところになりますが、最後の段落に、我が国の学術的研究の国際競争力を増すために、女性の活躍推進を含むインクルーシブネスに対する実績や将来展望、努力方針といったものを判断基準として明示的に取り入れるべきだと考え、本部会での審議をお願いしたいという御提案があったところでございます。
 資料1に戻ります。資料1の2枚目、2つ目の柱としまして、国際化支援の対象となる共共拠点の範囲についてというところでございます。この国際共共拠点制度については、ある程度選択と集中をすることであると思うが、どう多様性を保っていくかというバランスを考える必要があるという御意見がございました。国全体の研究力を上げるために、共共拠点の国際性という要素を加えることは重要だが、大学の特色は多様性であり、トップの研究者を引き上げる、単に優秀な研究機関を作るという視点のみでは研究者が育っていくという芽を摘んでしまうことを危惧する。新しい人材を育てていくという仕組みも評価基準として必要だと思うという御意見がございました。トップを伸ばすだけではなく、裾野を全体的に高めることが大切であり、地方の研究者や学生が研究装置などを使いやすくするという視点も大事だという御意見もございました。さらに共同利用・共同研究に携わる公私立大学の研究者を増やす工夫も必要だという御意見もございました。
 3枚目でございます。大学の多様性は重要であると思うが、一方で、研究者コミュニティーが国際性の中で評価されるということも必要だという御意見がございました。
 3つ目の柱として、評価についての御意見でございます。財政状況が難しければ、評価についてメリハリを付けた上で支援の重点化をしてはどうかという御提案がございました。現在、S、A、B、Cの4段階で評価をしているところでございますが、それにDを加えた5段階にして、例えばCを大幅に減額、Dは認定取り消しにしてもよいと考えるという御意見がございました。さらに具体論として、論文については、学内の雑誌に出すものと学外の雑誌で出すものとではインパクトファクターが異なるために、カウント方法を分けてはどうかというお話もございました。評価については定性的な指標ではなく、論文数の評価など、具体的な評価指標を検討するという御意見もございました。共共拠点、大学共同利用機関を含めて、それぞれが目指しているものがあるはずであり、それをKPIとして洗い出してはどうか。KPIを並べることで、各拠点や機関の特色が分類・比較できるようになり、評価基準も作れるようになると思うという御意見がございました。
 さらに、これは共共拠点制度全般としてのその他の御意見としまして、人口減と予算減の中、世界の中での我が国のプレゼンスが下がっている今こそ、各大学が競い合うというよりも、どう連携するかが重要であり、共共拠点が日本の研究組織の中でどう連携の役割を果たすかということも検討していただきたいという御意見がございました。以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。どうぞ。
【寺門学術機関課長】  事務局から1点補足でございます。今、事務局から申し上げましたとおり、前回までの議論の概要を御報告いたしましたけれども、もとより共通認識だと思いますが、前期の審議のまとめの中で、教育拠点の充実をいかに図っていくかという御議論があって、その中で1つ柱として、研究の国際化というテーマがございました。前回、実質初会合の中で、永田先生の方から、大学の現場で今取り組まれている知見を踏まえて、国際的な観点というのが強調されて御発表があったという点がございます。
 そういう点で、おのずと国際的な点に焦点が当たってございますけれども、もとより共共拠点をいかに今後も持続的に充実させていくかという点で御議論賜ってございまして、恐らく今後もそういう形で幅広い御議論がなされてくるものと思ってございますけれども、1点、必ずしも国際化だけに焦点が当たっているわけではないという点について、補足ですけれども、申し上げさせていただきます。以上でございます。失礼いたしました。
【稲永部会長】  ありがとうございました。基本的な物の考え方を御披露していただきました。これは共通認識になっているかと思います。
 それでは、本日の議論に移りたいと思います。前回の議論も踏まえて、今回は、現在、共同利用・共同研究拠点となっているところの各所長、センター長に、国際化の取り組みについてお話を伺おうと思います。
 本日は、東京大学物性研究所、瀧川所長、琉球大学熱帯生物圏研究センター、酒井センター長、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、仙石センター長に、この順番で各先生から約10分間御説明を頂きます。その後、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会の村上会長から、「国立大学共同利用・共同研究拠点協議会幹事会の意見」について、同じく10分程度御説明いただきたいと思います。
 質疑応答と、それから意見交換につきましては、全ての御発表が終わった後にまとめて行いたいと思います。
 まずは東京大学物性研究所における国際化の取組について、瀧川所長から御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【瀧川所長】  ただいま御紹介にあずかりました、東大物性研究所の瀧川でございます。本日は、このような機会を与えていただきましてありがとうございました。
 資料3に基づいて、物性研における国際化の取組状況について御説明いたします。最初の写真は、東大の柏キャンパスにあります物性研の全容でございます。
 1枚めくっていただきまして2ページですが、本日のお話は、このような内容で行いたいと思います。
 まず、言うまでもないことかもしれませんが、共共拠点におきまして何のために国際化をやるかという、その視点を少し明確にしておきたいと思います。それから、物性研の国際的な共同利用・共同研究の状況、これの統計に基づいた概要と、それから、幾つかの特色のある例を挙げて御説明いたしたいと思います。その中でも過去3年、学術振興会の支援で行っておりました頭脳循環プロジェクトについて、少し詳しい御説明をいたしたいと思います。最後に、今後共共拠点制度の中でどのような国際化を目指すべきであるかということで、少しコメントさせていただければと思います。
 3ページにいきまして、まず何のための国際化かということなのですが、共同利用・共同研究拠点は、まず基本的なミッションというのは、国内の研究力、研究水準の向上ということにありまして、そのために国内の研究者コミュニティーに、拠点にある価値のある研究資源、これには実験施設だけではなくて、研究者とか、あるいは新しいアイデア醸成のための議論の場といったソフトのものも含まれるわけですけれども、そういうものを提供して、質の高い共同研究の機会を提供し、日本全体の研究力向上につなげると。ですから、そのミッションとしては、まず裾野を広げると書いてありまして、ちょっとこの言葉は語弊があるかもしれませんが、国内コミュニティーの広い方に対して、そこからいろいろなアイデアを吸い上げて、それを共同研究として結実させると。もちろんその中から、傑出した成果を出すことが求められているわけです。
 一方、国際的な共同利用・共同研究といいますと、これは決して国際的に裾野を広げるというところまで大それた野望を持っているわけではありませんで、やはりこれは拠点にある研究資源をいかに有効に使って、そこからいかに最大の成果を出すかという、拠点の成果最大化というのが目的であると思います。言い換えれば、国際化そのものが目的でなくて、これはあくまで拠点の成果を最大化する、そこの研究資源を最大に使うための手段であるということが言えると思います。ですから、国際共著論文の割合ということがよく問題になりますが、これもあくまで国際共著論文が多ければ、それなりに質の高い成果が望まれるという、そういう因果関係をあらわしているのだと考えております。
 そういう視点で、物性研の活動状況を少し御紹介いたしますと、4ページですが、これは全体の状況を統計であらわしたものです。物性研では年に2回、共同利用の課題公募を行っておりますが、実は放射光などを除きまして、自主的な国際公募というのは実はまだやっておりません。というわけで、物性研の国際共同研究の実質的なものは、ほとんど公募以外のルートから来ております。個人的な研究者のネットワークを通じたものというのが多いです。その中でやはり重要なのは、滞在型の研究会とか客員所員制度というもので、比較的長期、外国の研究者が滞在して、そこで共同研究の機会を作るというのが非常に大きな、重要な要素となっております。
 その意味で、共同利用への参加人数、2番目のグラフの統計を見ていただきますと、受け入れ人数という視点では、全体で2つ目の1,570名の中で、外国機関からの方は100名ということで20%に満たないわけですが、国外の方は非常に長期滞在の方が多いので、延べ人数、人/日という数え方にしますと、右側にありますように全体約7,000名に対して2,100ということで、30%ぐらいが外国の方になっていると。その結果として、全体論文数で見ますと、昨年度の全論文414のうち、国際共著論文は大体4分の1ぐらいという状況になっています。数字ではこういう状況なのですが、その中で少し特色のある取組を少し具体的に紹介したいと思います。
 5ページにいきまして、具体例としては、1つは、施設そのものが国際的な大型施設。この場合、播磨にあります放射光施設のSPring-8ですけれども、ここでの活動状況について、まず御説明します。それから、そうではない物性研、柏の装置なのですが、非常に独自開発でユニークなもので、世界に1つしかないというようなものの例として、レーザー光電子分光というのがありまして、そういう装置であれば、特に国際的な受入体制というのが整ってなくても、自発的に国際共同研究でという例を挙げたいと思います。それから3番目は、先ほど申しました、非常に長期にわたる滞在型の研究員を通して、多様な発想の交点から生まれる国際共同研究の醸成という、この要素が非常に重要なのですが、さらにそれを突き進めて、招聘だけでなくて双方向の長期滞在型を極限まで進めたような例として、学術振興会による頭脳循環プロジェクトについてお話ししたいと思います。
 それぞれについて御説明しますと、6ページにいきまして、最初の例が、SPring-8における活動です。SPring-8というのは御存じのとおり、世界でも最大規模の最先端の放射光施設でありまして、この中にある物性研究所は10年ぐらい前から独自のビームライン、軟X線のビームラインを整備しまして、そこに幾つか4つぐらいの測定装置を設けて、国際共同研究をやっております。SPring-8そのものが国際的な施設ですから、これは課題採択その他全て国際スタンダードで、国内、国外基本的に何も差別がないという状況であります。
 右の方にそれぞれの年の課題数がありまして、共同利用開始以来ずっと課題数、採択数増えているのですが、全申請件数に対しまして採択件数が約半分ぐらいしかないという、非常に競争率が高い採択状況でありまして、ということはかなり質の高い、ベストなよい課題を選んでいるということが言えると思います。そういう状況になりますと、必ずしも国外、国内比較しますと、国外申請がいいテーマばかりを申請するわけではなくて、必ずしも国外申請の採択率か高いわけではないということが見てとれるかと思います。その国外申請の中のどういうところで国際共同研究をやっているのかというのが左にありますが、欧米、さらに台湾と、かなりいろいろな地方に広がっております。
 ただ、数としてはそんなに多くなく、毎年多いときでは10件近くあったのですが、実は最近数年、海外からの申請が少し減っておりまして、これは必ずしも理由は定かではありませんが、この四、五年、海外でも高輝度光源の新しいものが利用開始になっておりまして、これらはSPring-8に比べれば少し小型なのですが、非常に性能のいい高輝度の最先端の装置でありまして、そういうものが稼働したために、もしかしたらSPring-8への申請が少なくなっているという可能性もありまして、これは余談ですけれども、日本における次期高輝度光源の必要性が、これは待ったなしの状況であるということを1つあらわしているかもしれません。
 続きまして、次のページにいきますと、今度は同じ光科学の装置なのですが、これは物性研で独自開発したレーザー光電子分光という装置で、これは柏の物性研にあるわけですけれども、物性研では過去20年ぐらいにわたって、レーザー光源を独自開発しておりまして、非常に高性能のレーザー光源が実現しております。そういうものを使った分光学ということで、普通光電子分光という実験手法は放射光を使ってやっているわけですが、そうでなくてレーザー光源を用いた、世界でもユニークな装置を作り上げて、過去数年、共同利用に展開しておりますが、そうなりますと、特に国際公募のシステムをそれほど整備していなくても、ここに書いたような世界各国からの共同研究の申請がたくさん相次ぎまして、2015年以降、過去3年ぐらいでかなりトップレベルの雑誌に10報に近い研究が既に論文となっておりまして、これは今後、ますます増える傾向にあります。というわけで、これが1つのかなり特徴ある例となっております。
 先ほど申しましたように、それ以外の実験施設に関しましては、基本的に国際公募の体制がなく、余り国際的な共同利用の数としては多くないのですが、国際共同研究という面では非常に重要なのが、やはり研究者間の長期的な交流によるものであります。それをさらに推し進めて、ある種極限まで推し進めた形態というのが、この頭脳循環プロジェクトだと考えておりまして、これは8ページにありますが、学術振興会の事業としてやっておりまして、2年半にわたって採択されました。これはある特定の研究分野の開拓を目指して、戦略的に国際共同研究チームを作りまして、日本からの派遣研究者は非常に長期、期間内に1年以上海外の研究機関に滞在する。あるいは、海外の研究機関からの招聘研究者も多数呼んで、定期的に研究会を開催して、そういう情報が国内の研究者にも発信されるようにという、そういう枠組みでやっております。
 物性研からは、新奇量子物質が生み出すトポロジカル現象の先導的研究ネットワークというテーマで採択していただいたのですが、内容に関しては説明する時間が余りありませんが、物質科学と、それからトポロジーという数学、実はこれは深い関係があるということがここ数年分かってきまして、非常に大きなテーマになっております。実は昨年のノーベル物理学賞の対象になったのも、これの契機となった研究ということで、いろいろな方に知られるようになったかもしれません。
 そのような体制を作るために、9ページに全体のチーム作り、チーム体制がありますが、物性研究所からはシニアの方が担当研究者となって、実際に若手研究者6名というのを海外に派遣するということになっております。海外の方ではドイツとアメリカに全部で8つの研究機関を結ぶ、そういう共同研究チームを作りました。理論物理、それから実験、いろいろな方面の方が関わって、全体として効果的な強力な共同研究が推進できる体制を作ったわけです。日本からの派遣の方も、若手と書いてありますが、例えば最初の中辻准教授、これはかなり中核的な、今や分野をリードするような研究者でありまして、実際この期間中に教授に昇任されたのですが、そういう方を1年間海外に送るというのは非常に負担も大きくて、これはある意味、研究所を挙げてバックアップするという体制でないとできないようなチーム作りとなっております。
 そこまでやりますと、それなりにかなりの成果があったというふうに感じておりまして、その次のページ、具体的な例が少しありますが、まずやはり長期間にわたって研究者とのある種の信頼感といいますか、そういうものが醸成できると。これ、やはり同じ分野の研究者ですので、共同研究といってもある意味競合相手でもあるわけで、そういう人たちとどこまで情報を公開して、どこまで共同研究ができるかという、非常に厳しい判断というのもございます。その中で、信頼関係も含んで、チームとして、研究グループ同士として緊密な関係を築くというのは非常に財産となっているということがあると思います。
 その中で1つは、そこに挙げました反強磁性体における巨大ホール効果という具体的な成果を上げましたが、これは1つの特に目覚ましい例でありまして、これをベースにさらに今後の共同研究が進みまして、この例は、アメリカDOEの研究戦略にも、共同研究者を通じて掲載されるというか、外部資金獲得につながるとか、今後非常に大きな波及効果が期待されている成果です。そういう目に見えないある種の財産というのは非常に大きなもので、今後これをどうやって維持していくかということは、これから検討課題となっております。
 11ページに意義のまとめというのがありますが、こういう国際共同研究の意義というのは、まず研究成果にあるわけですけれども、やはり一番基本的なことは、傑出した成果というのは、異なる研究環境、それから異なる考え方を持つ研究者の間の継続的な議論から、思いがけないアイデアや画期的な成果が生まれると。やはりこれが一番国際共同研究の本来の意義であろうと思います。いかにこういうチームを作っていくかということが大事だと思います。これは実は、量的には論文の量に余り貢献しないと思います。ただ、それによって非常に質の高い、波及効果の大きな研究成果につながるということを実感しております。そういうものを、拠点の中だけではなくて、滞在型ワークショップとか研究会を開催することによって、国内研究者コミュニティーにそういう情報を発信して、国内研究者もそういう共同研究に参加する機会を提供するということが大事だと思います。それは翻って、所内の制度改革とか人事交流、活性化にもつながっております。ですから、今後、共共拠点がこのような共同研究を先導して、それに国内研究者コミュニティーが参加できるということが、今後の国際化にとって大事ではないかと考えております。
 12ページは、このようなハブ拠点としての活動というのは、頭脳循環に限らず、ここ10年ぐらい毎年やっているものでありまして、こういうものが非常に重要であるということで、少し詳細は省きます。
 その次のページにいきまして、このような物性研の例を材料として、今後、共共拠点の国際化がどうあるべきかということで、少しコメントをさせていただきたいと思います。
 13ページのこのグラフはいろいろなところで目にするもので、ドイツと日本のトップ論文数、大学によってどのようにトップ論文数が変わっているかということで、これは実はこの後お話しになります村上先生も同じデータを使われておりますので、ちょっと出典を書き忘れたのですが、出典はそちらの方にあります。これを見ますと、日本の課題というのが、やはり多様性の欠如にあるということが如実にあらわれているのではないかと思います。つまり、日本の場合はトップ数校、三、四機関というのは非常に活発に研究活動をやっているわけですが、それがすぐにだんだんと活動の低下が激しくなっているということで、活発な研究活動が非常に少数の機関に集中しているということが日本の問題で、これはいろいろなところで言われておりますように、やっぱり基礎研究の発展には研究の多様性を確保するということが本質的に重要であります。
 これはそれなりに理由があって、法人化以後、大学の基礎体力が低下しているということ。例えば、研究時間の減少、それから学生の減少ということでもたらされているという面が少なくないわけでありまして、それに加えて国際共同研究というのは、やはりコストがかかる。研究者の行き来にもコストがかかりますし、同じ1本の論文を書くのであれば、国内の身近なコミュニティーでやった方がコストも労力も少ない。だけど、そうすると本当にいいものができるかということが問題になるわけで、レベルの高い国際共同研究を先導するということが、共同利用・共同拠点の役割であろうと思います。
 では今後、何がポイントかというのを、最後の14ページでありますが、1つは、そこに共共拠点における国際化のポイントとして書きましたが、まずはベースにあるのは、拠点が持っている価値ある研究資源を生かして、レベルの高い国際共同研究を推進する、これは拠点の成果最大化ということになるわけですが、それが拠点だけに閉じないで、国内の研究者コミュニティーに還元する仕組みを作って、そのような国際的な活動に国内参加者が参加する、そういう還元の道を作るということが大事だと思います。これはやはり基本的にボトムアップのアプローチでありまして、WPIとか理研とか、そういうトップダウン的なアプローチと違うものが必要だろうと考えております。日本全体としては、やはりトップダウン、ボトムアップ両方が必要ということは、いろいろなところで学術会議の提言などでもありまして、これが基本的に広い意味でのデュアルサポートの考え方であろうと思います。
 この会議でも、運営・事務組織の国際化ということがいろいろ提言されているようですけれども、運営組織の国際化、事務組織の国際対応、これはできればやるに越したことはないわけですけれども、これを個々の拠点でやるのはやはり非常に労力と経費が必要でありまして、しかもそれ自体が今の最優先事項であるとは思えません。一方、これはやはり日本の大学システム全体の課題でありまして、個々の拠点で対応するというよりは、やはり日本全体として考える必要があるのではないかなと。はっきり言いまして、物性研ではまだこれはほとんどできていないのが現状でありまして、ただ、なかなか物性研だけでこれをやるというのは難しいと。
 最後に、では拠点のための経費が比較的限られているわけで、これが来年以降飛躍的に伸びるということはほとんど期待できないとすると、こういうものを使って国際化を推進するとすれば、やはり国際的な共同研究そのものを活性化するものに使っていただきたいというのが考え方であります。そのためには、実際には、例えば組織的な運営の問題というよりも、例えば研究者の時間をいかに確保するかということが最も重要なものでありまして、やはり国際共同研究に加わろうとすれば、それなりに相当な時間を割くわけで、それをどうやってサポートするかとか、その分不足になる大学の業務を誰が担当するかとか、そういう支援の体制というのを、もう少し具体的に考える必要があるのではないかと思います。
 少し長くなりましたけれども、以上です。どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 次に、琉球大学熱帯生物圏研究センターにおける国際化の取組について御説明いただきます。酒井センター長、お願いします。
【酒井センター長】  琉球大学の酒井と申します。このような機会を頂きましてありがとうございます。
 今日のプレゼンですけれども、構成としては、まず私ども熱帯生物圏研究センターの概要をお話しします。それから、私どもセンターで行ってきた国際共同研究について報告させていただきます。そして最後に、それらの国際的な共同研究を通じて、私が感じてきたことを意見として述べさせていただきます。次、おめくりください。
 2ページ目ですけれども、私ども琉球大学熱帯生物圏研究センターは、熱帯・亜熱帯に特有でかつ生物多様性の高いサンゴ礁、マングローブ林、熱帯・亜熱帯雨林などの生態系等に関する研究及び豊かな生物多様性を活かしたイノベーション創出に資する研究のための共同利用・共同研究拠点であります。亜熱帯地域に立地する唯一の共同利用・共同研究拠点であるということを生かして活動しております。
 私どもセンターは、沖縄本島と西表島に位置する4研究施設から構成され、教員定員数は24です。比較的規模の小さい研究センターですけれども、それなりにやっているということでお聞きいただければと思います。次、おめくりください。
 次は、私どもセンターの研究施設4つありますが、その配置図です。まず北からいきますと、瀬底研究施設、ここに私が所属しています。私自身はサンゴの研究を専門としていまして、瀬底研究施設はサンゴ礁に面した臨海研究施設で、もともと理学部附属の研究施設でした。それから、西原キャンパス。これは琉球大学のメーンキャンパスですけれども、ここに2つの研究施設があります。ここは理学、農学、医学というふうなところから教員を集めて作った分子生命科学研究施設という、分子解析を主にやっているところ。それから、西表島にあります西表研究施設。これはもともと農学部の附属施設でした。本日は、フィールドステーションである瀬底研究施設、それから西表研究施設について主に紹介していきたいと思います。次、おめくりください。
 次が瀬底研究施設ですけれども、一番左の写真にありますように、歩いて2分でサンゴ礁に行けるところに立地しております。そしてサンゴ礁で、主に生物を研究対象としています。サンゴ礁の海に出て研究するフィールドステーションとしての機能と、それから、海水をサンゴ礁の海から汲み上げて、きれいな海水を汲み上げて、それを1分間に1トン流して、それでサンゴや魚を飼育するというふうな飼育実験設備としても機能しています。それから、宿泊施設がありますので、写真の一番右にある、これはポーランドから来た外国人が、サンゴの産卵のときに実験しているところなのですが、サンゴの産卵は真夜中に起こりますので、宿舎に泊り込んでビジターも研究できるという、そういう体制をとっております。
 実は海水が流れている、フィールドステーションで海水が使えるというのが、アジア地域では比較的貴重な存在で、例えば台湾アカデミアシニカの臨海研究施設では海水が出ないので、アカデミアシニカの研究者が私どもの施設に来て実験をしております。次、おめくりください。
 次は西表島にあります西表研究施設ですけれども、ここはマングローブ林、サンゴ礁、亜熱帯雨林で、主に生物を研究対象としています。もともとは農学部附属で、海洋の研究はしていなかったのですが、2011年に海洋生物の教員を採用しまして、現在は拠点経費や学内予算を使って海洋のフィールドステーションとしても機能を強化中です。それから、フィールドステーション以外にも、農学部時代から続いている圃場や温室を利用した飼育実験も行っております。それから、やはり宿泊施設を完備しております。次、おめくりください。
 西表研究施設の拠点としての資産は、何といっても圧倒的な西表の自然です。西表は人口も少なく、琉球列島のもともとの自然が今もよく残っているという場所になります。そこでサンゴ礁、マングローブ、それから熱帯雨林というところのフィールドとして研究するという、そのような場となっております。次をおめくりください。
 熱帯生物圏研究センターでは、様々な予算による国際共同研究を行っています。予算のもとは、まず概算要求の全国共同利用・共同実施分、拠点経費と私たちは呼んでおりますけれどもそれで、今、総額が2,400万程度なのですが、そのうちの700万強を国際的な共同研究に回しております。それから、琉球大学学内予算で、外国人研究員を招聘するということを長年続けております。それから、外部資金で科研費などを獲得して、それで国際研究を行うということで、これが私どもの予算としてはかなり大きい部分となっております。それから、頭脳循環のプログラムなどに参加するなど、学振の外国人、事業を受け入れるということも行っております。次を御覧ください。
 これは熱帯生物圏研究センター全体の、平成23年度から28年度の利用者です。年間で延べ数なのですが、利用者は1万4,000人程度あります。そのうち10%が国外の研究者ということになります。フィールドステーションの、瀬底と西表の合計は年間約9,000人になっております。ですから、利用者のうち10%が外国人ということになります。次をおめくりください。
 それで、第2期の拠点期末評価を受けて、第3期からは私どもセンターはよりフィールド研究を強化するという方向に舵を取っております。フィールドを生かした国際化を行うという意味で、そこに示しましたように、公募による共同利用・共同研究に、平成28年度第3期から、A-2というふうに下の表にありますけれども、共同研究(海外機関)というので、海外機関に所属する研究者を対象とした枠を設けています。 それで、外国人を受け入れるということで、横に海外機関を対象とすることによる負担ということをちょっと書き加えたのですが、これは拠点協議会で、国際化することでコストという議論になりましたので、私どもの現状を簡単に書きました。まず、外国人を受け入れるとなると、それは契約を含みますので、科学論文の英語ではない、ビジネスの英語が必要ということで、それはちょっと私たちには難しいところがあるので、外注しています。それは余りお金をかけずに外注することができます。それから、基本的には事務が受け入れはやってくれるのですが、日程調整は教員がしないといけないということで、やはり教員も普通は国際基準のビジネスというのは身に付けていないので、国際化するのであれば、そのようなFD(Faculty Development)も必要だろうというふうに感じております。次を御覧ください。
 次は、拠点経費による共同利用事業に占める国外研究者の割合です。平成28年第3期の中期期間から、公募による共同利用・共同研究に海外枠を付けました。それで共同利用事業採択の総数は、平成28年度から減っているのですが、これは第3期に拠点経費が減ってしまったということがまず1つ。それから、共同利用事業の内容を変えたということがあります。拠点経費が減ったというのは、第3期になるときの予算額決定のときに、教員の定員数がたまたま20を割っていたので、配分係数が減ったために減ったということですが、しかし、国際化枠を設けたことで、総数は減りましたけれども、国外の比率は大きく上昇しているということになっております。次を御覧ください。
 それと第3期に、もう一つ我々の課題としては、大型の科研費などを獲得するということがありましたので、共同利用・共同事業で拠点経費を使って、それまでは外部の研究者が単独で応募するという公募をしていたのですが、今度は逆に、センターの教員が研究代表者となって、センター外の研究者もメンバーとして、それで複数で申請するというふうな、プロジェクト型と私たちは呼んでいますけれども、それは外国人もメンバーとできるものを始めました。それでサンゴ礁、マングローブ、熱帯・亜熱帯の生物多様性、それから熱帯・亜熱帯の生物資源を利用したイノベーションに資する研究という、拠点としての重点事項ということで、そのテーマのものを採択するということで、平成28年度は2件採択しました。
 1つは、マングローブの保全遺伝学です。これは地球レベルで見る。そこに図を示していますように、あるマングローブ植物の種について、全地球的に遺伝的な構造を調べました。そのために国際ネットワークを構築するということを、この経費も使って行いました。それからもう一つは、これは出かけていって行う研究なのですが、インドネシアでメダカの多様性を研究するというふうなこともやります。平成28年度に、この2課題を拠点経費で採択して研究してもらったところ、平成29年度に2課題とも科研、基盤Aを取ることができました。これは国際化が評価されたのではないかというふうに、私は個人的に考えています。これら2課題は、科研費、基盤Aを取りましたので辞退していただいて、今年度からまた別の外国人も含めたプロジェクトを募集して、今、審査しているところであります。
 次ですが、ちょっと時間もありませんので簡単に申し上げますが、琉球大学学内予算で、外国人研究員というのを雇用できます。これは3か月以上1年未満で、各年度3人を想定した予算になっています。実質は、予算の枠であれば人数は増えてもいいということなので、平成22~28の平均では年間4.6人の外国人研究者を招聘しています。そこに外国人研究員の研究課題と国名を書きましたけれども、やはり私たちが重点領域としていますサンゴ、マングローブ、生物多様性といったところの研究者に来ていただいて、研究していただいています。
 次に、国際共同研究による論文ですけれども、これは私どもの琉球大学のURAの方に作ってもらったのですが、国際共著論文の量です。2001年から2016年のWeb of Scienceのデータを使って分析してもらったのですが、全論文数が680です。そのうち228、33.5%が国際共著論文でした。その地図にある、色の濃い地域の研究者との共著論文が多いということになります。
 次、14ページですけれども、次はその論文の質ですけれども、これもURAに分析してもらったのですが、CNCI(Category Normalized Citation Impact)というので、その分野、サンゴ礁ならサンゴ礁といった分野での世界平均の被引用数に対して何倍引用されたかを示すというインデックスだそうです。1だと世界の平均程度の引用数、1より多いと世界平均よりも多く引用されたということになるということで、上を御覧いただきますと、国際共著論文の228報のうち21報、約10%がそれぞれの分野のトップ10には入っているということで、国際共同研究によって、比較的質の高い論文が出せているのではないかというふうに考えております。
 時間がありませんので、次、ごく簡単に申し上げますけれども、国際化を進めることで、共著論文は増える。それは確実に増えました。それで注意すべき点ですけれども、拠点も日本の税金を使って運営しておりますので、国際化ばかりに力を入れて外国人ばかり受け入れると、日本人が使えなくなるということになって、実際、当センターでも、特に瀬底の方ではサンゴ礁関係の外国人研究者がたくさん来て、日本人が使えないという状況になって、それでクレームが出るということもありました。ですから、特にこれは大事だと思っているのですが、これを回避するためには、国外の拠点以外の研究者も、国内研究者も参加できる国際共同研究を拠点が構築して提供するということが必要ではないかというふうに考えています。
 時間が来ましたので、以下は読んでいただければと思います。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 続いて、北海道大学スラブ研究センターにおける国際化の取組について、仙石センター長、御説明をお願いします。
【仙石センター長】  スラブ・ユーラシア研究センターの仙石です。本日はありがとうございます。基本的に10分ということですので、国際的な取組とかの主なところを中心にお話しして、エビデンスなどはホームページを見ていただくという形でやろうと思います。
 まず1ページ目ですけれども、そこにはスラブ・ユーラシア研究センターの概略を書いています。既に62年たっておりまして、基本的に政治、経済、文学などなど、法律を除く人文社会系をほぼフォローしております。中には、例えば最近ですと、資源開発や北極海航路の関係でロシアの経済学者が理系の研究者と共同研究する、あるいはシベリアの少数民族をやっている研究者が、植生とか生態系の研究者と共同するというように、理系との共同研究も増えてきております。
 ここでは書きませんでしたが、特に最近は共同研究として2つの核を持っておりまして、1つは地域間の比較をする。地域間の比較というのは、1つは例えば、ロシア、中国、インドといった地域における大国を比較する、ロシア帝国とオスマン帝国やハプスブルグ帝国などの帝国の歴史を比較する、あるいは1980年代後半に民主化した東欧を、ほかに同時期に民主化して市場経済に転換していったラテンアメリカや東アジアと比較するといったような地域間比較を行うというのが1つの柱で、ここではスラブ・ユーラシアの研究者以外の研究者との共同を進めております。
 それともう一つは、境界研究。境界研究ユニットという図がそこにありますが、ボーダースタディーズというもので、もともとはアメリカ大陸、それからヨーロッパで、それぞれ国家間関係とは異なる、境界を接したところでの人の交流や物の交流みたいな研究があったのですが、これを当センターではユーラシア、つまりロシアや日本なども含めた広い地域における境界研究という形に展開し、これをアメリカやヨーロッパの研究と接合するということをやっております。さらにこちらに関しましては、研究の幅を国際化するだけではなく社会との実働ということもやっておりまして、例えば境界地域の自治体、稚内とか根室とか対馬とかの自治体の交流を進めるとか、あるいは最近では、ボーダースタディーズといいまして、境界を超えて観光する。例えば、対馬から釜山に行くとか、稚内からサハリンに行くとか、そういうところでやはりANAツアーズさんなどと協働しながら旅行企画の開発を進めておりまして、それを通して地域活性化を進めるなどという、社会との協働を行うということもやっております。
 2ページ目に具体的な活動があります。詳しくは後で話しますが、大体1980年代ぐらいから、毎年スラブ・ユーラシア研究センターが主催する国際シンポジウムを最低年2回開催しておりまして、ここには多くの国内外の研究者が集まっております。それから、国際化を進めるということでして、1つそこにあります、スラブ・ユーラシア研究東アジア会議というのは、スラブ・ユーラシア研究センターが中国、韓国の関係機関に提唱して設立したもので、8年前の2009年からずっと進めております。今回は韓国で大会を行いましたが、この東アジア会議は我々のところが主催し、中国、韓国が入り、現在ではモンゴルや中央アジアの諸国もこれに参加するようになってきております。
 次の国際中欧・東欧研究協議会というのは、これは世界的な、中・東欧となっておりますが、実際は旧ソ連及び東欧研究者の連合体が5年に1回行う国際会議でして、これまではほぼヨーロッパ内で行われていたのですが、2015年にはアジアで初めてこれを招聘することに成功しております。また、その下にもありますように、先ほど境界研究でもお話をしましたが、政策提言とか社会連携などもいろいろ進めております。
 以下、ちょっと国際的な話で、3ページ目からいきますが、まず1つは、夏、冬の定例の国際シンポジウムを必ずやっております。2016年の夏、冬には、それぞれロシア極北、北極海研究を含めたもの。それから、2016年冬は、「体制転換から四半世紀:ポスト社会主義の多様性を比較する」ということで、旧ソ連、東欧地域と他の地域との比較をやっております。大体例年50名前後の外国人が来ておりますが、2016年の冬に外国人が少々少ないのは、不幸なことにこのシンポジウムの前後に札幌が大雪になってしまいまして、かなりの方がキャンセルされたという事情がございます。この定例のシンポジウム以外にも昨年度は2つほど、国際シンポジウムを開催しております。
 次に2つ目ですが、当センターでは、当センターが国際的な査読学術誌を2冊刊行しておりまして、1つはセンターの初期から刊行しております「Acta Slavica Laponica」という、スラブ・ユーラシアに関しては、人文社会系の広く投稿を認めるというもので、海外からもかなり多数の投稿があり、また海外の著名な研究者にしばしば査読もお願いしております。「Eurasia Border Review」というのは7年前から始めたもので、先ほど言った境界研究を統合するということで、ユーラシアの境界問題を扱う世界初めての雑誌で、大体年一、二回発行しており、多数の投稿があります。実を申しますと、これらの雑誌に関する一番の問題は、せっかく日本で、我々が一生懸命取り組んでいるのに、日本人の投稿が非常に少ないということです。そういう意味では、もう少し日本人の投稿を進めて、日本の研究の国際化を進めなければいけないなということはちょっと感じております。
 次に出版ですけれども、印刷物以外にも「Slavic Eurasian」Series、これはこれまでのシンポジウムの成果をまとめたものですが、そういうものを30冊ほど出している。それから、「Comparative Studies on Regional Powers」、これは先ほど申しました地域間比較の中で、特にロシア、中国、インドを比較する地域大国のプロジェクトに関するものを出している。それ以外に、外国における商業出版というのもかなり出しており、文系としては出版活動に関しては国際的に進めていると思います。
 次に、外国人客員研究員ですけれども、こちらは大体毎年6名から10名ほど大学の経費で採用し、3か月から1年ほど滞在してもらいますが、毎年かなりありまして、少ないときでも50から60、多いときは100ありまして、審査をするだけでもかなり時間をかけております。初期のころ、1970年代ぐらいは著名な研究者に来てもらうというところから始まったのですが、80年代には公募をするようになり、その結果として、現在では偉い先生が来るというだけでなく、若手で有望な人に来てもらって、うちでキャリアを積んでもらう。つまり、スラブ・ユーラシア研究センターに来たことによって、ワンランクステップアップするというような活動も進めております。
 どうしてこのようなことができたかといいますと、1つには、先ほど言いました、70年代から始めていて、非常に評判が広まっていると。中には本とか論文を書いたときに、スラブ・ユーラシア研究センターに来たことでこの成果をまとめられたということを書いてくださる方もいる。それからもう一つは蔵書でして、当センターは割と体系的に希少コレクションの収集をしております。そうしますと、例えば世界で北大とA大学にしかない、北大とB大学にしかない、北大とC大学にしかないみたいなコレクションがありまして、だったら北大に来れば早いじゃないかという話になり、その結果として、特に歴史系のコレクションを使いたいという研究者がこちらに来てくれるようになっています。
 それから、あとは申しますと、そこそこのお金を出しているということ。それから、これはちょっと1つ強調しておきたいのですが、この外国人客員研究員は、英語かロシア語ができることが条件です。つまり、そうしますと、私は東欧研究者でロシア語ができないので、ちょっとそういう方が来ると困るのですが、英語はできないがロシア語はできるというロシア・旧ソ連の研究者、特に言語系、文学系、歴史系、そういう方が来て欧米とは違う視点での研究をすると。それを世界的に発表することができるというメリットがあります。その結果として、様々な形でネットワークが出来上がりまして、例えば2国間交流を実施するとか、学術協定を締結するとかいうことも行っております。主な学術協定、特に部局間協定については、その次のページにあるとおりです。
 一応ここまでは主な話をしてきましたが、ちょっと最後に、ではこういうことを進めるに当たっての問題点ということでいきますと、例えば国際シンポジウムをやるとなりますと、うちのスタッフは10人しかいませんし、さらに事務も数名しかいないので、ロジスティック面、特に海外から人を呼ぶときのビザの手配ですとか航空券の手配というのは物すごく多くなり、教員も事務も非常に作業が増えてしまう。実を申しますと、うちの部局は事務の超過勤務が非常に多いということで、事務局から指導対象になっておりまして、事務職員の仕事を減らさなければいけないという事態になっています。
 また費用については、もちろん最近ではこういう外国人の招聘に対してお金を出してくれる外部資金も増えてきたので、そういうのを極力取るようにはしていますが、やはりそういうのが必ず取れるとは限らないので、科研費を使わなきゃいけない場合もある。そうすると、本来科研費で進めるはずであった研究を進めることが難しくなるということもあります。
 また、学術出版では、一応エディトリアルスタッフは1人いるのですが、日本人で、業務量の増加に対して対応できていないので、どうしても教員自身が編集作業をしなければいけないということがあります。ですので、十分な編集がなかなかできないところもある。それから、外国人研究員ですが、実は以前はスラブに予算が下りてきて、スラブの予算として外国人を置くことができたのですが、現在これは全額措置になってしまったので、その結果、以前はスラブでの選考を行なったたらそれで決められたのが、大学からの経費を得るために大学に申請しなければいけない。そうすると、必ずしも通るとは限らない。時々よく分からない理由で却下されたりする。あるいは、事後的に作業が終わった後に、これは仕方ないこととはいえ、評価があって、外国人が来たことによる評価がどうかみたいなところで手間が増えてしまう。そういうところで、やはり業務支援が増えているということがあります。
 それとやはり、外国人を毎年6人から10人呼ぶといいますと、それなりに、例えば家を探さなければいけない、滞在許可を取らなければいけない、日本語を話せない場合に、生活の支援もしなければいけないということで、どうしても部局の教員、あるいは事務職員、助教などが対応しなければいけなくなって、ここでも業務が増えている。その結果として、先ほど瀧川先生もおっしゃっていましたが、教員が研究に専念できる時間がどうしても減ってしまっているところがあると。
 ですので、やはりさらなる研究の国際化を進めるには、その支援体制を強化する。それはやっぱり当一センター、一研究所だけでできることではなく、何らかの形で共有できる施設が要るのではないかと。例えば、今日小長谷先生来ておられますが、人間文化研究機構に編集機能を持たせて、そこで例えば海外の雑誌の編集ができるようにするとかが可能ならば、少し変わるのではないかとか、そういう話もちょっとセンター内では出ておりました。そういう形で、協力体制を作っていくということは考えた方がいいかと思います。ちょっと早口になりましたが、以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 続きまして、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会の村上会長、お願いいたします。
【村上会長】  今回、このような機会をお与えいただき、まことにありがとうございます。また、永田先生におかれましては、このような案を作っていただきまして、協議会としましても、議論が非常に国際化に対しての意識も変わりましたので、感謝申し上げます。
 それでは、初めに、本日は3つの項目をお話ししたいと思います。1つ目が現況、協議会の現状ということで、2つ目が意見、こちらが中心となります。最後に、2ページ目の一番下のところでございますが、これは東大の宇宙線研究所、梶田所長からの御質問に対して、私なりに答えたところでございます。
 それでは1番、協議会の現状でございますが、ただいまの御発表にありましたように、拠点は77ございますけれども、幅広い学問領域をカバーして、設置目的に沿った研究を行うと。特に効果的に国内の当該コミュニティーの共同利用・共同研究を進めているという形になっております。そのことによって、我が国の全体の学術研究のさらなる発展に寄与しているものと自負をしておりますが、その中で、国際化といいますとそれぞれの拠点である研究所、センターが、それぞれの立場に応じまして積極的に国際研究交流や国際共同研究を進めておりまして、世界の学術研究の発展にも寄与しているということでございます。実際に具体的には4点、今回お示しいたしましたが、国内外の学術研究の発展と申しますと、ノーベル賞などの国内外の受賞が多数ある。また、WPIの基盤研究は拠点化で波及したものの数が多いと。さらに健康・長寿社会への貢献をするようなイノベーションも数多く拠点化が出ている。4点目は、地味ではありますが、非常に重要な長期的な視点に立った基盤課題や、地域に根差したような数多くの研究基盤、業績も拠点化が担っているという現実がございます。
 このような現実、現状を踏まえまして、2番、2つ目の意見等を述べさせていただきます。まず初めに、共共拠点の国際化に関しましては、協議会の幹事会メンバー全員が重要との共通認識がありまして、積極的に進める必要が非常に緊急にあると考えております。その一方で、この2ページ目のグラフでございます。先ほど瀧川先生もお示しになりましたが、このグラフというものが、しばしば文科省等の御説明で出てくるわけでございまして、これは非常にインパクトがあるグラフでございます。ドイツと日本の学術研究の比較でございますけれども、トップ、あるいは準、1番手の大学グループはドイツと比較しても、我が国は優れているということが示されているわけでございますが、2番手以降の落ち込みが非常に激しいということで、拠点の多くの研究者が、非常にこの点に危機感を持っているのも事実でございました。
 そのような状況の中で、今回示されました国際共共拠点構想というものは、既にWPIのようなトップレベルの研究を進める方策が行われている中で、また新たにトップレベルの研究グループの国際化を進めることを目的としているような印象を受けました。そのため、逆に申しますと、本構想は、2番手、3番手の研究グループの層を厚くすることにどれだけ寄与できるかが疑問であると思ったのが、協議会の率直な感想でありました。
 また、本構想においては、運営の国際化、つまり先ほど3つの研究所の先生方がおっしゃったように、共同研究に関する運営会議、申請、手続の多くを英文化することや、海外からの招聘研究者の生活に関する支援を含めた国際支援体制の整備を要求されているように思われました。実際にこれらの業務を現有の拠点事務部が行うことは、現実的に困難であります。また、その整備にかかる時間、労力も非常に膨大なものとなることが予想されます。そのため、本構想がこのままの形で実施された場合には、現時点ではその業務を多くの受け入れ側の研究拠点の研究者、スタッフが担うことになり、日常の研究活動に甚大な影響が生じる可能性が非常に高いのではないかと危惧をしております。そのため、運営の国際化は各大学における国際化指針とともに足並みをそろえ、慎重に進める必要があるのではないかと考えております。続きまして、次のページにお進みください。
 このような視点から、共同利用・共同研究拠点の国際化を検討するに当たっては、本構想を研究の国際化に対する支援制度と捉えまして、支援対象をトップレベルの研究拠点以外の層にまで広げて、これらの研究グループを強化する方策にしていただけるように、切に要望いたします。
 例えば、現状、各拠点がそれぞれの自助努力で進めている国際化事業に、数名程度の事務的な業務を行う専従人員の配置と、外国人研究者の滞在費、研究費などの予算配分を行うことによって、幅広い研究拠点を含めて、国際化の強化が可能となれば、国際化を通じた我が国の研究基盤発展への道筋となり、さらに本構想の本来の趣旨に近付くものではないかと考えております。
 また、来年度は拠点の中間評価もございますので、本国際化に関する申請書、評価調書作成に係る負担を可能な限り軽減していただければと要望したいと考えております。
 まとめさせていただきます。このような理由から、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会としては、現時点においては、共同利用・共同研究拠点としての機能を維持しながら、一律に定められた運営面での国際化を進めることは非常に難しく、大学当局、事務部の国際化を含めた慎重な制度設計を行っていく必要があると考えております。繰り返しになりますが、国際化は重要である一方、本来研究成果の結果であり、国内トップばかりではなく、2番手以降の研究拠点の研究者も、自身の研究に専念でき、高い次元の研究成果を得て、その成果をもって国際化につなげるという好循環を作るような研究者への負担の少ない国際化制度が必要であるのではないかと考えております。
 最後の3番目でございますが、一番下の段落と次のページでございます。梶田所長からの協議会1の質問でありましたものは、確かにマックス・プランクと共共拠点を比較しますと、マックス・プランクの方が非常に強い研究組織であると。ところが、予算面ではどうかという御質問がありました。そこで私がドイツの友人に聞きまして、マックス・プランクのファクトブックをお教えいただきました。そうしますと、2016年現在で、公的資金のみで2,232億ありまして、非常にあります、お金が。そこにサードパーティー、企業などからの資金もそれ以上加わっているのではないかということをお聞きしましたので、非常に予算的に差があるということが分かってまいりました。このようなことを考えますと、日本の研究機関は非常に健闘しているとも言え、その健闘を支えてきている1つが共共拠点制度であると、非常に感謝をしておる点でございます。
 この点からも、繰り返しになりますが、本構想に関しまして、運営の国際化を最小限にして、研究の国際化の制度としてトップレベルの研究拠点以外の、2番手以降の研究グループの層を厚くするような方策を含むような施策にしていただきたいとお願いする次第でございます。お時間をいただきまして、どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、4名の方に御発表いただきましたので、これまでの御説明について質疑応答、意見交換を行いたいと思います。御希望の方、どうぞ。
【相田専門委員】  ありがとうございます。広島大学の相田と申します。それぞれの先生方にちょっとずつ質問させていただいてから、意見を申し上げたいと思うのですが、まず物性研ですが、論文の総数がどこかに出ていましたが、共同利用当たりの論文の数などの経年変化はとっていらっしゃるのでしょうか。
【瀧川所長】  必ずしも課題と論文というのは完全に対応しているわけではないのですが、それぞれ見ますと、課題数、それから論文数、実は論文数は、やはり過去少しずつ下がって、過去3年ぐらい平坦ですけれども、例えば五、六年過去を見ますと、少し下がっているというのが現状です。それから、共同利用の課題実施数に関しては、大体横ばいというか、過去五、六年大体同じようなレベルというので、論文と課題が必ずしも一対一に対応するわけではないので、そこの相関というのはそんなに余り気にしていないところです。
【相田専門委員】  拠点のいろいろなエビデンスのデータなどは、ずっとこの間から見させていただいているのですが、全部の総数何千件とか、1人当たり何報とかというデータはあるのですが、共同利用ということは、全国から共同利用してきて、その利用した結果どういうふうになっていたかというのが大事であって、全部の総数で1拠点当たり何報というのは、ちょっと余り評価としては意味ないな、と、お聞きしていて思いました。
 琉球大のお話を聞いていて、Web Scienceの15年間のデータで680報というデータがあったのですが、ということはつまり、1年当たり40報ですよね。職員の方が24人ぐらいということでしたので、1年当たり、1人当たり一、二報かなというふうに計算したのですが、そういう理解で正しいでしょうか。
【酒井センター長】  2001年から入れたのですが、このときはまだ今の体制にはなってなくて、今22定員なのですが、12人の教員でやっていた時代も入っています。ですから、もう少し多い。今、具体的に幾つかというのは申し上げられませんけれども。先ほど御質問された、論文全体と、共同利用による論文というのは、それはともに増加しています。現在1人当たり平均は、もう少し多くなっていると思います。
【相田専門委員】  北大のスラブ・ユーラシア研究センターでは、2つの国際ジャーナルを出していらっしゃるということなのですが、これはインパクトファクターが付いているような雑誌なのですか。
【仙石センター長】  現時点では付いておりませんが、現在登録に向けて作業中です。一定の条件が必要ということで、その条件を満たさなければいけないので、そこを今整えているところです。少なくとも「Acta Slavica Laponica」は、ロシアのインパクトファクター的なものには載っているのですが、要するに、世界的なものに載せるために、現在さらに準備を進めているところです。
【相田専門委員】  人社系の雑誌で日本の雑誌がなかなかインパクトファクター付かないので、是非それは進めていただいた方がいいかなと思います。
 最後の村上先生のお話を聞いていて、ほぼそのとおりと思って、おっしゃることはそのとおりだと思います。それで最初の物性研の所長さんのお話を聞いていてちょっと気になったのは、瀧川先生のご説明の中の、地方からアイデアを吸い上げて裾野を広げる、というような内容の御発言です。私は裾野を上げるのは地方からアイデアを吸い上げることではないと思っています。そうではなくて、不便なところにいる小さな大学の先生方も、いろいろな学生さん抱えて、いろいろなことを研究なさっているわけだから、その研究を具現化するためには大きな装置が必要。それを使うために共同の利用拠点があるのであって、単にアイデアを吸い上げるために共同拠点があるわけではなく、地方にいる先生方もそれを使って研究ができる。その結果として、もちろんそうやって海外からの共同研究につながることもある。それでいろいろなところの裾野が上がっていくわけで。だから、その意識を持つことが、私は共同利用の拠点が日本のためになるためには必要なのではないかと思いました。
 協議会の村上会長の、多くの研究グループの層を厚くするような方策が必要、という意見は、そのとおりだと思います。そのためには全ての拠点の方もその意識を持つことが必要なのではないかと思います。
【瀧川所長】  少し言い方が悪かったかもしれません。アイデアを吸い上げるというのは、その方のアイデアを利用するというのではなくて、そこのアイデアをちゃんと実現するために拠点を使っていただくということなので、同じような主張だと御理解ください。
【稲永部会長】  ほかに御意見、御質問。はい、お願いします。
【観山専門委員】  物性研にお聞きしたいのですが、研究所によっては規模感が大分違うということもありますが、物性研は歴史もあるし、規模的にも大きいし、コミュニティーも非常に大きいと思います。SPring-8の部分は国際公募されているということでございますが、そのほかについては国際公募していないという状況を、非常にある意味で不思議に思ったのですけれども。
 確かに私も共同利用研におりましたので、コミュニティーの強い意向とか意見ということは、共同利用研を運営する上で非常に重要だと思いますが、一方で、国際競争の中でしっかりとした成果を上げていくということも重要で。実験の時間とか割り振りの面で、コミュニティーが日本の施設なので、それなりにほとんど全てを配分してもらいたいという意味は十分分かりますけれども、ただそれだけだと、国際的な中でどれだけのレベルを上げるかということ面で、そのバランスが非常に重要だと思って。
 国際公募をすることによって、全てを完全にイーブンな形にする必要はないと思うのですが、ある種の刺激がないと、研究はやっぱりなかなかいい方向に行かない場合が多いので、そこら辺、確かに研究者の紹介なんかで国際的な方々がそれに入ってこられているというのは分かるのですが、そのバランスみたいなものについて今後どのように考えられているか、ちょっとお聞きしたいです。
【瀧川所長】  国際公募はしないでいいと思っているわけではなくて、実はいずれやはり必要だとは思っております。ただ、そこがまだ実現していないということで。実は2年前に国際外部評価をやったときも、やはりウェブ上で、もう少し海外向けにアナウンスして使ってもらうべきだという提言がありまして、それはこれから準備しているところであります。
 ただ、国内と同じように、全部公募して、その中から選ぶというのはなかなか大変で、国内の場合よりは、やはりスタンダードを上げて、本当にいいものだけを選択するということは必要だろうと思いますし、そこはこれから考えていかなければいけないところだと思います。
 一方、国際公募という体制をとらなくても、本当にいいものがあれば自然と集まってくるという側面もあって、もちろんちゃんと組織的にやった方がさらにいいものがあるかもしれないというところで、それはおっしゃることは全くもっともだと思います。ただ、それがないとできないということでもないという状況は、ちょっと今日は指摘したいところであります。
【観山専門委員】  確かに国際的にオープンにすることでロードが結構かかりますので、適切な対応というか、公募の仕方があると思いますが、ある意味で、国際的にはフェアな公募というのも非常に必要ですので、そこがちょっと偏って見られると、非常に不幸な状態になります。そこのバランスはよく考えていただければと思います。
【稲永部会長】  どうぞ。
【八木専門委員】  大阪大学の八木です。今日はどうもありがとうございました。実際に研究所、共共拠点の国際化をしようとしたときに、ロードというところを考えてくると、かなり大きいものがあるかなというのは私も非常に思います。実際にWPIのような拠点、大阪大学ですとIFReCがございますが、IFReCの場合ですと、大体事務部門、URL等のスタッフが大体40名ぐらいいて、その半分以上がバイリンガルかネイティブなのです。そういう部隊を用意しないと、真っ当に国際的に展開するというのは難しいというのがあろうかと思います。実際に国際化をもし考えようと思われた場合に、先ほど共共拠点の場合、数名程度というような形であればできるだろうかということでしたが、その辺のところ、実際のところどういう形をとれば国際化の組織作りというのは作り得るのかというのは、何か御意見ございますか。
【村上会長】  私から答えさせていただきます。ここにも具体的に、先生もおっしゃられたように、数名程度のバイリンガルの事務員がまず必要であると考えております。そういう人がいることによって、国際公募をするきちっとした書式をまず作る。またそれを応募してくるところのまとめをする。で、その後、また私たちが審査をするわけですけれども、その場合に、審査をした後の生活の面のお世話というのが、実は非常に保険、あるいはアパートメントを借りる場合でも甚大になりますので、そこら辺をやっていただけるようなスタッフがいれば、かなり現時点での各拠点で行っている国際化の上積みをして、それが研究の国際化にもつながるのではないかと考えた次第であります。
【八木専門委員】  実際には、大学における国際化の支援とかも含めた中で、組織作りをしていく必要があるのですか。いわゆる共共拠点だけでなく、例えば東京大学とか北大であれば、幾つも拠点があるわけなので、それも含めた中でできる体制作りとか。
【村上会長】  そう思います。そこ自体が共共拠点のみの対応では、やはり限界が、運営の国際化というのは限界がございまして、そこをきっちりやるためには、やはり各大学における国際化指針とも足並みをそろえて進めるべきではないかと。そういうふうにする方が、よりいい国際化ができていくのではないかと思います。ここで書きました数名の事務員、英語バイリンガルな事務員とかいったことは、当面の制度がきっちりできるまでのつなぎの部分としては、そういうような制度でもまずはよくて、その後にちゃんとした、日本の共共拠点をマックス・プランクレベルにするには、やはり大学の協力が非常に必要ではないかと考える次第であります。ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ。
【小長谷委員】  本日の御発表、ありがとうございました。何を共同利用するかというときに幾つかの種類があって、ちょうど今日の御発表は、ハードな機器類を中心にしたところが1番目の発表で、普通は人文系ですと資料、マテリアルというふうに考えていましたけれども、それ以外にもフィールドという自然環境そのものが共同利用の対象になっているところも含めて、多様性を示していただきました。
 それで、いずれの場合においても、テーマの共同利用というか、アイデアの共同利用というのがあって、それがすなわち共同研究であると思うのです。それをさらに高度化する、国際化するために、ほぼほぼどこも同じような悩みをお持ちだということがすごく分かった一連の御発表だったと思います。
 それでその中で、仙石先生が私どもに言及してくださいましたけれども、その悩みを1つの共共拠点で解消する、すなわち自助努力に依存するのではなく、全体で共有して大学共同利用機関であるとか、あるいは機関を束ねた機構法人ですとか、そういうところが一括して支援する体制を考えていくというのも、1つの方法ではないかと思っております。今日の仙石先生からの言及では雑誌でしたけれども、ジャーナルの編集だけではなくて、大きな課題に応じた大きなプロジェクトにトライしようと思ったら、申請する作業も大変で、研究者の研究時間を減らす以外にないという、本末転倒になってしまっているのが現状なので、そこのところを分担して請け負うところをつくるというのは、とても理に適ったことではないかというふうに思って聞いておりました。
 それでちょっとお聞きしたいのは、理系の最初の2つの御発表で、同じような分野でそういうネットワークを組んで、サポート体制というのをアンブレラで作ることができるかどうかです。人文系の場合は、対象地域をすみ分けた研究所群があって、ところが今日の御発表で分かりましたように、その対象地域を超えた先に研究の最前線があるから、もともと合理的なのです、一緒にネットワークを組むことが。共共拠点の個別の多様性を生かしつつ、さらにその向こうを狙うというのがすごく合理的なのです、学術の発展のために。理系の場合に、そういうもともとすみ分けて違う機械を持っていて、ところがその先にそういうものを設定するということが理に適っているかどうか。それが結局、先ほど村上先生がおっしゃったような、大学の中で複数の共共拠点を持っていて、それをサポートするということはもちろんできるでしょうけれども、そういう大きな大学でない場合、拠点はたくさんないわけですから、もう一つの方向として、大学に依存するのではなくて、大学を超えて共共拠点のネットワークの先にそういう支援するところを設定するということが、学術的な意義の上で可能かどうかということを、最初の2つの御発表でお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
【稲永部会長】  では、瀧川先生の方からお願いします。
【瀧川所長】  まさにそのような例がありまして、今日はちょっと紹介する時間がなかったのですが、例えば物性におきまして、つまり強い磁場を作る施設、強磁場といいまして、強い磁場というのは非常に有効な手段で、強い磁場を作る施設が国内には主に4か所ぐらいありまして、世界的にもヨーロッパ、アメリカ、中国とそれぞれ拠点があるわけですね。日本ではやっぱりそれぞれの拠点で違った特徴を持つ装置を開発して、それはネットワークを使って強磁場コラボラトリーというネットワークで、拠点のネットワークとして運営しております。実際の物性研究所と、それから大阪大学にある強磁場センターは、完全に一体化した共同利用名を昨年から始めたところです。
 実はそれは、世界的にもそういうネットワークが作られつつありまして、そういう世界の中で、どこの国でも科学技術、基礎研究に対する予算が厳しいものがありまして、そういうものを世界的なネットワークとして強磁場の重要性を訴えていこうというのがありまして、世界的にも例えば、アメリカとかヨーロッパ、日本、中国でそういう拠点同士のネットワークを作るというのが進んでおります。
【稲永部会長】  では、酒井センター長、よろしくお願いします。
【酒井センター長】  私どもセンターは、サンゴ礁だけではなくていろいろ研究しているのですが、私が専門のサンゴ礁、海洋についていいますと、日本の国内でいうと、今起こっている気候変動、海洋酸性化とか温暖化の問題というのは、地球のどこでも起こっているのですが、私たちはサンゴ礁でそれを研究している。国内だと、例えば筑波大学の下田臨海センターもそれをやっている。それで実際、強固なネットワークというのはまだできていませんけれども、実際共催でシンポジウムをやったりとかということで、連携は始めています。国内でそういうことができますし、例えばサンゴ礁といっても、沖縄のサンゴ礁は亜熱帯で、冬は結構温度が下がるけれども、実際のサンゴ礁ではもっと年間の水温の変動が少ない。例えば、インドネシアとかいうところと、今連携をし始めていまして、例えば大学院生を受け入れるとかいうことから始めていて。将来的には海外のところ、もっと我々のサンゴ礁の場合は、もっと南というか、低緯度のところからネットワークを作っていくというふうなことは、十分可能だと思います。よろしいでしょうか。
【稲永部会長】  御質問は。どうぞ
【小長谷委員】  そうですね。研究所はそういうネットワークが必要だということは、今の御回答でよく分かりましたので、そのサポート体制をつくる上において、国内の共共拠点と共有できる、シェアできるかということですね、サポート体制を。1箇所ずつにサポートする組織をもつのは大変だと思いますので、そういうサポートが1つあれば、そのサポート体制をシェアして、大型プロジェクトに申請するとか、次の高次化のステップが可能になるかという。そういう制度ができれば、みんなにとって利益があるだろうなというイメージは得ることができました。ありがとうございます。
【稲永部会長】  よろしいですか。付け加えられることはありますか、今の点に関して。
【酒井センター長】  はい。外国人受け入れなのですが、私たちで受け入れている海外研究者、少ないこともあるのですが、私が就職してすぐに外国人研究者受け入れなどやってきて、実はそんなに不自由は感じていない。事務の方に確かめましたところ、そんなに負担ではないということです。
【稲永部会長】  ほかに御意見。どうぞ。
【佐藤臨時委員】  今日は、4人の先生方に、非常に有益な話を伺いました。本当にありがとうございました。
 幾つかコメントをさせていただきたいと思うのですが、最初は、八木先生と、それから村上先生のお話にあった、国際化は拠点だけではなかなかという点、まさにおっしゃるとおりだと思います。今、共同研究といったときに、特に対外というか、外国を考えたときには、ポイント・トゥ・ポイントといいますか、人と人という感じが比較的強いように思います。しかし、これがもっと進んでいくと、向こうのグループとこちらのグループというような研究室規模の交流といいますか、より広がりが出てくると思います。そうなると、もちろん今でもそういう実態は十分あるとも思いますけれども、大学院生をそれぞれ連れて動くというようなことが出てくる。
 そうすると、教育の問題が絡んできますが、そうした場合、拠点は基本的には附置研、センターですので、教育には主体的に手を出すことができません。ただし、そう言い切ってしまうと、ちょっと言い過ぎかもしれません。でも、そうした面があることは事実だと思いますので、やはり全体、すなわち教育研究の両方を絡めて国際化を進めていかなければいけないという問題が必ずあります。したがって、やはりそういった問題を念頭に置いて国際化を進めていく体制作りが不可欠ではないかと思います。正に、そこら辺はお二人の先生がおっしゃっていたとおりだと思います。
 次に、今度は純粋に研究についての国際化といった場合には、私、瀧川先生のお話でご紹介のあった、レーザー光電子分光の例、それこそがある意味で国際共同研究の理想形ではないかと思うのです。要するに、本当にいいものというのは、決して機器設備だけに止まらず、世界中どこにあってもそこで研究したいとか、そういうことから自ずと人を集めるようになるわけで、そのあげく交流や協働作業が進んで成果をもたらすというのが本当に理想形だと思います。ただ、そういう例が始終そこら中にあるわけは絶対にないでしょう。だからこそ、そうした状況を築いてこられた努力というか環境とともに、それを作られたこと自体がすばらしいと思うのです。ですから、そういう方向に進めていくということも、非常に大事なポイントだと思います。簡単ではないと思いますし、1つの研究拠点で10年とか30年とか50年とかやっていて、そういう例が幾つかあったかなと数えるぐらいの話だとは思うのですが、やはりそれは常に考えて目指していかなければいけないことだと思います。
 あと一つ、共同研究といったときに、いろんなフェーズですとか、あるいは形態があると思うのです。そこが今、全部を十把一絡げにして議論が進んでいるような気も、ちょっとしないではありません。もっとも、それは私の認識不足のためかもしれませんけれども。ただ、もし多少でもそうした状況があるならば、一口に共同研究というのではなく、ではどういうふうに分けていくか、分けた対象に対して、それぞれどのように特化した支援があるかといった、具体的な考え方の整理が必要な段階に来ているように思います。
 今日伺ったお話で、酒井先生のところのお話には、やや飛躍があるかも知れませんが、1つ非常に具体的で実質的なことが含まれていたように思いました。たいへんうらやましいと思ったのですが、共同研究者のための宿泊施設を完備しているとおっしゃったことです。これは今、大学への施設整備費補助金がどんどん減ってきている状況にあり、一方で特に外国人宿泊施設は本当に必要だと思っているのですが、なかなか自前ではすぐにというようなことにはいきません。国際化が謳われる中で、その辺は1つ大きな問題でもあります。ですから、どうやって完備をされたのかちょっと伺いたい気もしますので、差し支えなければ、教えていただければと思います。以上でございます。
【稲永部会長】  どうぞ。
【酒井センター長】  私どもの施設は、比較的短期に来たビジターが宿泊する、いわゆるドーミトリーに40人程度宿泊可能です。それともう20年ぐらい前に、外国人研究員制度ができてから数年たったときに、そのときの補正予算で長期滞在用の外国人アパートも敷地の中に作ってもらったので、それを今も使っているということです。それはやはり、比較的早い時期から外国人研究員制度を発足して受け入れていたということによるのだと思います。今はかなり難しいのではないかと思います。
【佐藤臨時委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ。
【加藤専門委員】  1つ質問と、あと幾つか、こんな方法があるのではないかという御提案を、事業家なものですから、すぐ課題があると解決方法を提案したくなってしまうのですが、幾つか御提案させていただければと思います。
 1つは仙石先生に、科研費取ると研究時間がなくなるというのが一部にあったと思うのですが、それはやっぱり科研費を取るのが非常に大変だという意味ですか。
【仙石センター長】  科研費といいますか、要するに、大型科研費ですね。特にSとかAとかいうのはかなり、今年から手続が変わるようなので、ちょっと今後はどうなるか分かりませんが。あとはそれと、取ったら取ったで、それをいかに使うかということに関して、やはりただ研究すればいいというわけではなくて、どう使うか、どう配分するかまで考えなければいけないと。そういう点で、教員の事務負担が増えるというか、時間が減らされるということはあります。
【加藤専門委員】  ありがとうございます。恐らく皆さんロジ回りというか、運営に非常に困難を来しているということで、幾つか民間で言うと、何となくイメージとして、皆さんのいろんな業務、大学も含めて閉じられているなという印象があります。世の中シェアエコノミーとか、いろんなクラウド系のサービスを皆さん安く共有しながら、働き方も副業とか普通になってきましたので、そういう意味では幾つか解決方法あるのかなと思います。
 1つは、私も農水省の事業を少し受託したりするのですが、いろんなものがテンプレート化されています。多分農家さんがいらっしゃるので、非常に文章が難しいのだという御配慮だと思うのですが、いろいろなものがテンプレート化されていて、農水の方たちが審査しやすいような文章を整えていらっしゃいます。そういう意味では、いろんなものが共通化できるのだろうと思うので、テンプレート化して、それがウェブ上で何か申請できるような形にするとか、間接業務のスリム化というのはできるのかなと思います。それは多言語化も一緒ですね。ビジネス用語という意味では、もちろん訓練を受けないとできないでしょうけれども、訓練を受けた方がテンプレート化しておけば、ある程度ここだけ変えれば使えますみたいなのがあればやりやすいのかなと思います。
 あともう一つ、農業界も使っているのですが、シニア人材ですね。皆さん、私、静岡ですけれども、結構大手企業のシニアの方たち、英語も日本語も堪能で、技術も分かっていらっしゃる方たちが今、大量に退職されています。そういう方たちは何か社会に役に立ちたいと思われているのですが、働く場が、活躍する場がなくて、いろんな個人事業をされています。そういう方たちに、もう少し大学側から接近をして、地域に支えられた大学という形もあるのではないかなと思いますので、もう少し地域の、民泊とかもありますけれども、宿泊からそういう事務回りの地域から支援を受けるようないろいろな手配を、もう少し地域に投げてみると、実はすごい役に立つ方たちが、今、遊んでいる状態というのが見えてくるのではないかなと思いますので、安く事務回りを外に出すという方法の例を挙げさせていただきました。ありがとうございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。次に松本委員、手を挙げておられましたので。
【松本部会長代理】  今日は4人の先生方、お話しいただきましてありがとうございました。ちょっと私は個別の件についてコメントするというよりは、冒頭、事務局の方からお話がありました、国際化だけがこの委員会のポイントではないということに関係するかと思いますが、今日のテーマ、議題は、今後の共同利用・共同拠点の在り方ということで、それぞれ歴史を持っておられる共同拠点、今日来られた4か所もそうですが、工夫されてきたと思います。
 どなたかおっしゃいましたけれども、共同利用、共同研究というのは何かということを、もう少し国際化に加えて議論をしてほしいなというのが、今日の素直な印象でございました。多分国際化ということが事前に言われていたのではないかと思うので、そこに力点を置かれましたけれども、それぞれの研究所、研究センターは、共同利用・共同研究拠点としての役割を果たしてこられたと思うのです。そこの分析を少ししないと、この話し合いが、何か国際化を推進するために事務局をどうしようかとかという話だけになってしまうのも、少し問題かなという印象を受けました。
 共共拠点というのはいろいろ歴史がありますが、装置の共同利用されるところもありますし、あるいは、研究試料というお話も先ほどございました。それから、環境というのですかね、その研究所の置かれた場所、例えば先ほどのサンゴ礁なんかはそうだと思いますが、環境ですね。それから、最後はやっぱりそこの研究者そのものが共同利用の中心になられるということが多いと思います。アイデアといいましょうか、研究業績といいましょうか、その4つのどれかに属しておられるのではないかと思います。そういうものが、永田先生から国際化という新しい斬新なアイデアを出されましたが、結果として成果があれば国際化になるのだというお話も先ほど頂きましたが、そこを目指すのはいいのですが、全部の共共拠点を国際化ということはあり得ませんし、国際拠点化ということはあり得ませんし、結果として国際的なレベルの研究が伸びるようにするということが問題になるだろうと思います。
 そこで私は、今回無理だと思いますけれども、事務局、負担かかるかもしれませんが、あるいは共同利用・共同研究機関がそれぞれ分析されるのかもしれませんが、研究所の固有の研究ってありますよね、所属しておられる研究者が自分でやっている、あるいは自分の研究周辺、あるいは研究所の仲間でやっている論文というのも結構あると思います。それと共同利用・共同研究することによって出てくる論文って2種類多分混在していると思うのです。それを一部峻別する必要があって、そういうことによって、その分野の特性、その分野の共共利用の貢献度というのがはっきり出てくると思います。例えば、今日出ましたトップ10%論文の分布、大学順位というのが横軸になっておりますが、拠点ごとに例えば77拠点あるのですが、そういうものが分類をある程度できるようなデータをそろえて議論していくということが、今後我々が考える上で大変大きな資料になっていくと思います。そうでなければ、なかなか定性的な議論になってしまうので、そこはちょっとお考えいただければというふうに思いました。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。論文に関して、共同研究・共同利用に基づくものと基づかないものを区別することは大切と思います。不十分かもしれませんが、手元の資料の31ページにも、それに類するデータがあるように思いますが。これは事務局の方で説明していただけますか。
【寺門学術機関課長】  詳細必要であればまたお示ししますが、一応そういうことになっています。あくまで国際化というのは、いわば共同拠点のさらなるレベルアップといいますか、そういう点についての問題意識ということから、永田先生がお話しさせていると思いますし、そういう問題意識になっていると思いますので、幅広い観点からという点は、松本先生、座長おっしゃったと思っていますので、引き続き意を用いて、その点は運営してまいりたいと思ってございます。ありがとうございます。
【稲永部会長】  どうぞ。
【相田専門委員】  今の点なのですが、31ページのこの表、グラフは、共同研究の結果の論文数だというのは正しいのですか。共同利用機関の成果論文数だからといって、必ずしも共同研究の結果とは限らないですよね。31ページは、本当はどっちなのでしょうか。
【小長谷委員】  では、数字を出している立場の方から申し上げます。人文機構の方です。人間文化研究機構では、各機関でこれまで共同利用に基づくものか個人の論文かということは区別していません。というか、物理的にかなりそれを区別するのは難しいです。個人が共同研究のテーマと全く別のテーマを設定する場合もあります。共同研究にはそぐわない個別の、成長したら共同研究にするけれども、それ未満みたいなものを個人研究でしておくというようなことをしておくのが普通です。共同研究では複数の人たちと比較し合って本にするというような形が多いです。しかし、そこに所収された論文は、大体1人で書きますから、人文系の場合は。だから、本自体は共同研究の成果であると、複数の人で書いてある。で、論文はそれぞれ個人の研究とも言い得るというような関係ですので、そこを区別することによって共同利用性が計測できるというのは、現実的には学術上も不適切な処理になるだろうというふうに思います。
 恐らく理系の場合、もっと1つの論文自体が複数の人によって書かれていて、単著で書いたものがないので、共同研究ではないものがないというのが普通ではないかというふうに推測します。
【稲永部会長】  ちょっとお待ち下さい。先ほど、松本委員のご意見に関連するデータが31ページに示されていると申しましたが、それは間違いです。大変失礼しました。松本委員どうぞ。
【松本部会長代理】  この委員会というか、今回の目論見は、共共拠点をどうしていこうかという前向きの議論をしましょうというのが期待値だったと思うのです。共同研究というのは、別に共共拠点でない、普通の研究科の先生、あるいは共共拠点でない研究所の先生もやっておられます。これはごく当たり前だと思うのですね。では、共共拠点って、先ほど言った4つの分類、できるかどうか分かりませんが、それらの特色を生かして、我が国の学術の発展に大きく寄与してきた、これは恐らく事実だと思います。今後、今時代が変わってきたときに、つまりほかのそうでない研究所も外国もいろいろな形での国際共同研究含めて多様化してきていますよね。そういう中で、この共共拠点は何を生かすのかということが分かるような資料というものを出していく必要があるということを申し上げた次第です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。ほかに、どうぞ。
【八木専門委員】  済みません、議論するときに、31ページがリファーされたことで、共共拠点でない、話が移ってしまったかと思います。是非ここは2つ分けて議論をしていただいた方がいいかと。性質が違うかと思いますので。その点、よろしくお願いします。
【観山専門委員】  松本先生の視点は非常に重要だと思いますが、大雑把に言って、先生が言われた4つのカテゴリーの中の、大型装置を使って共同利用を行っているというところは、私の印象ではほとんど全ての時間を共同利用に提供していると思います。所内の研究者においても審査のもとで行われているので、ちょっと大小あると思いますが、その部分についてはほとんど100%、共同利用の結果で出てくる論文が多いと思います。ほかのカテゴリーについては、先ほど人社系の先生が言われたように、個人ベースの方が非常に多いので、それは注意した統計が必要かと思いますけれども、概して大型装置を使っての共同利用は、100%近く共同利用に伴う論文だと思っていいのではないかと思います。
【寺門学術機関課長】  御指摘がありました点については、御趣旨を踏まえまして資料の精査をして、検討してまたお示ししたいと思います。ありがとうございます。
【相田専門委員】  それぞれの拠点では、共同利用申請を公募して受け付けるというのが一応基本になっていると思うので、その受け付けた共同利用申請ごとにどういう論文が出ているかということを、ちゃんと経年変化をとるという視点を見れば、共同研究なのかそうでないのかという視点での議論ではなく、申請ごとにどういう論文が出ているかという観点から、誤解は生じないのではないか、思います。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ。
【横山臨時委員】  ありがとうございます。4名の先生方と、あと先生方のこれまでの御議論、大変勉強させていただいております。少し違う観点から、共共拠点の全体の発展という、松本先生の御意見も含めて御提案したいと思います。
 私や何人かの先生方は、この何年か、1年間に約30拠点ほどの審査に関わって、拠点全体の動きというのを拝見させていただいております。その中で今、困っておることは、小規模で共同利用のアクティビティが高くない、大型施設も持たずに共同研究を中心にされている拠点の評価です。
本来時代の流れとともに、もしかしたら大学内においてスクラップ・アンド・ビルドにしなければいけないようなところもあるのだと思います。しかしながら、日本全体の研究力アップのために、共共拠点として継続して支援して差し上げたいという、そういう側面もございます。
 そういう背景をもとに考えると、最初に課長がおっしゃられた、国際化も含めてだけれども、もっと広く共共拠点を支援するような仕組みがあるとよいと思います。ご提案としては、国際化もひとつの選択として特徴ある拠点、いろいろな意味で特徴ある拠点を支援していって、全体を底上げしていくような、そういうところを重点的に御議論いただくと、今後の中間評価に向けてもいろいろな拠点が大変助かるのではないかなと思いました。
【稲永部会長】  ほかにございますか。どうぞ。
【松岡専門委員】  宇宙航空研究開発機構の松岡と申します。今日は大変ためになるお話、どうもありがとうございました。
 ちょっと議論の前半の方では、ロジスティックスとか、事務関係でちょっといろいろなかなか簡単に国際化は難しいというような議論もありましたけれども、私は瀧川先生の物性研の頭脳循環のところに大変取組というふうに興味を持ちました。外国の方を呼ぶときに、さっきから議論になっているロジスティックスの問題もあるのですが、例えば頭脳循環の場合にも、日本からも人を出されていると。そうすると、当然その分研究所としてのマンパワーというか、それがちょっと減ってしまって皆さんでサポートすると。一方、外国の方が来ると、やっぱり言語の問題とか、短期間とかいろいろあるのですけれども、なかなかちょっとそこを埋めるような形にはならない。そういうことも、こういうことをやっていく上で問題の1つになるのではないかなということが、ちょっと私の身近な例からもそういうことを感じています。
 非常に外国から著名な先生方を呼んでいらっしゃるようですけれども、なかなか日本人で抜けた方を埋めることまではないかもしれないけど、研究所の何か戦力になっていただいている。例えば、学生の指導をしてもらっているとか、何かそういうことがあれば教えていただけると、大変役に立つのではないかと思います。よろしくお願いします。
【瀧川所長】  まず、このプロジェクトの1つの特徴は、国内から、こちら側からはかなり長期の派遣をするということにありまして、9ページの表にある写真付きの方々というのは外国の拠点にいる方で、その方たちが長期に来るということではないのですが。ただ、実際問題としては、こういう若手の、特に特任研究員なんかは長期行きますと、やはりこちら側がお留守になってしまう。これが幸い、この経費はそれを補充するための研究員に使うということもできるようになっていますので、それは非常に助かったところです。
 ただ、それだけではなかなか長期的に、このプロジェクトが終わってしまったら終わりというわけでありますので、やはり将来的に何か、特に若い人を、1年というのは長過ぎますが、一月二月ぐらいを若い人がちゃんと研究相手先のグループに行って、そこでやると。先ほどどなたかがおっしゃいましたが、やはり学生や若手がかなり長期やって、研究グループ同士の交流というのが非常に、人材育成にとっては大事になってくると思いますので、それはなるべく所内の資源を使って、そういうことをきちっと維持していきたいと思っています。
【稲永部会長】  まだあるかと思うのですが、はい。
【永田臨時委員】  課長も松本先生もおっしゃってくれたので言う必要はないかなと思うのですが、要するに、研究環境基盤部会で共共拠点をいかにして強くしていくかという話をしているわけであって、単に国際化をしますという話ではないです。ではなぜそういう話をしたのかというのは2つの意味があります。研究者の立場から言えば、松本先生ではありませんけれども、頭脳循環にしたって、別に共共拠点でなくたって、大学はみんな努力してやっていることで、頭脳循環の例を全部持ってくれば、いろんな努力をされているところがあって、当然のことだと思うのです。研究者にとって国際ステージで共同研究をやって活躍するのは当たり前のことです。どの分野にしたって。では何で共共拠点があるのかという問題があるわけです。
 それで歴史を前回述べさせていただいたのは、もともと全国共同利用施設は国立大学だけに設置されていて、その後、認定制度として国公私立大学に共共拠点が設置されるようになりました。附置研究所だったものが、機能に着目した共共拠点というものに変わりました。実は、共共拠点の研究の貴さと、もう一つ大学内における一般的な附置研究所から、共共拠点化しているという部分があるわけです。そうすると、その方向性として、今後共共拠点としてどこに向かうべきであるかという議論の中で、1つのメルクマールとして国際性が顕著に出るような形もあるであろう。ただ、共共拠点を見てみれば分かるとおり、国立大学の77拠点を見てみれば、いろいろな特性があって、必ずしも普通に一般的にやっている国際的な活動も、一定の水準を超えないものもやっぱりあるわけです。そこはそれでいいと思うのです。それなりの支援をいかにするかという問題だと思います。しかし一方で、世界を率いるような卓越したことをやっていらっしゃるところもやっぱりあって、そこはそれなりに我が国としては力を入れて支えていくのも手であろうと思います。
 ですから、これは共共拠点間のコンペティションをかけようとして意見を言っているわけではなくて、そういう観点から見たときに、一体どういう支援ができるのかという問題を述べているということなのです。当然この全体としては、例えば先ほど、A、B、C、Dまで付けろというのがありましたが、決してきっとDはないだろうと信じているわけですけれども、A、B、C、Dというのが悪ければ、特徴A、特徴B、特徴C、A、B、Cではよくないですか、違う形でもいいのですが、ランクを付けるというよりは、特殊性を際立たせていって、その中でこれはやはり世界を牽引する共共拠点だねというものは、それなりの立場を与えたらいいだろうと、そういう観点で申し上げているわけです。
 極端に言うと施策上、先ほどのグラフで言うと、ナンバー2に相当する、あそこだって支援したっていいではないですかという議論も当然あるのだと思います。それはどういうカテゴリーに分けて、どういう特徴を持っているからそこを上げるのだという議論だと思うのです。今日お聞きしたのは、予想していたとおり、どれもこれもある意味での国際性はもう担保されていると思うし、それらはこれからも何らかの形で支援するにしても、この間申し上げたのは、その中から、さらにちょっといい例かどうかは別として、バークレー研究所みたいなのが日本にあったらと思います。あそこをつぶしてしまったら世界が困るというのもあるだろうという意味で申し上げています。それぞれが全部同じレベルで、同じようになっていってくださいとか、共共拠点の間でコンペティションかけてくださいとか、そういう意味ではないのだというふうに理解していただければ、前回の資料が役に立つかなと思っています。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。もう時間がありませんので、また次回御発言いただくことにしたいと思います。今日は4人の先生方、大変お忙しいところ、貴重な御提案、御説明等頂きましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。
 それでは、最後に、今後のスケジュールについて事務局より御説明願います。
【早田学術機関課課長補佐】  次回第90回につきましては、平成29年8月22日火曜日の10時から12時で開催させていただきたいと思っております。場所については、文部科学省内の会議室で調整中でございますので、またお知らせをさせていただきます。
【稲永部会長】  では、皆さん、御協力ありがとうございました。本日の会議はこれで終了させていただきます。


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