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4.機関リポジトリの活用による情報発信機能の強化について

a.機関リポジトリの役割・意義

○ 大学等の生み出す多様な知的生産物は、第4期科学技術基本計画において形成が謳われている「知識インフラ」を構成する中核的要素であり、我が国の貴重な財産として、社会に共有され、活用されることが、今後の発展のために必要である。
 研究成果のオープンアクセス化への対応を含め、こうした知的情報の蓄積・発信は、社会への貢献が求められる大学等の責務であり、そのための重要な手段として機関リポジトリを位置づけ、整備・充実を図ることが望まれる。このことは、文部科学省が策定した「大学改革実行プラン(平成24年6月)」における「大学ポートレート」と同様に、大学の教育研究に関する積極的な情報発信を促すことを目的とするものである。

○ 大学等においては、機関リポジトリ自身は、情報発信だけでなく、研究、学習・教育活動を実施、推進するに当たって、以下のような幅広い環境整備に関わる役割を有している。

  1. 大学の生産する知的情報・資料の集積、長期保存の場(アーカイブ)
  2. 学術情報の発信及び流通の基盤(論文、データ、報告書等の公表及び提供)
  3. 学習・教育のための基盤(教材の電子化、提供、保存)

○ また、機関リポジトリを情報発信の観点から整備する意義としては、以下のように整理される。

  1. 機関側の意義として、大学等の有する知的生産物を一元的に収納し、保全することにより、大学全体の知的資産を把握・可視化することができるとともに、教育研究成果を国内外に迅速かつ広範に情報発信し、大学の存在感、優秀度等をアピールする手段となりうる。
     ユーザー側のメリットとしては、大学等の有する様々な知的資産に対し、どこからでもワンストップでアクセスし、基本的に無償で利用できる。
     そのため、学術情報に関する新しいコミュニケーションツールとしての発展が期待できる。
  2. さらに、商業出版社の寡占による高額な購読料などの影響から、一部でアクセスに問題を生じさせている現行の学術論文流通システムを代替する機能としても期待される。

b.機関リポジトリの現状

(機関リポジトリの整備状況)

○ 機関リポジトリの構築については、これまで、各大学等の図書館を中心とした自発的な努力により、独自もしくは連合して開発したシステムや既存の公開システムを用いて、その整備が進められてきた。また、NIIやDRF(機関リポジトリに関わる広域コミュニティ組織)等による啓発活動・支援などの効果により、近年、構築数は急速に伸びており、現在では、国公私立大学等の約250機関に設けられている。
 国際的には、機関リポジトリ関連情報サイトOpenDOARに登録されている機関数は、世界全体2,199機関の中、日本は136機関で世界4位となっている。(2012.4現在)

○ しかしながら、科学研究費補助金の申請機関として登録されている大学・研究機関だけでも1,000機関以上あることを考慮すると、より一層の整備・拡充が求められる。
 大学等による個別の機関リポジトリ構築に加え、地域等において機関間連携による共同リポジトリの整備も積極的に進められており、平成23年度からは、独自にシステムの整備が困難な大学等を対象に、NIIが共用リポジトリシステムを提供することにより、機関リポジトリの構築をサポートするJAIRO Cloud事業も開始されたことから、さらに加速することが見込まれる。
 将来的には、機関リポジトリの有する価値の多様性から、全ての大学等が、機関リポジトリの構築・充実に向けて努力されることが期待される。

(機関リポジトリの横断的な連携・データ分析)

○ 機関リポジトリを効果的に整備・活用するためには、リポジトリ間の連携や横断的なデータ分析は欠かせない。国内では、NIIが機関リポジトリの横断的検索ツールとしてJAIROを設け、情報の連携を図るとともに、JAIROを通じたコンテンツ等のデータ分析ツール(IRDB)を設けている。また、ユーザー分析に関しては、アクセスログを入力することにより、国別、機関種別等の分析を可能にするシステム(ROAT) が千葉大学を中心に開発されており、活用可能である。
 海外との連携においては、OpenDOAR、OAIsterといった機関リポジトリの情報共有サイトが整備され、運用されている。

○ IRDBを用いた分析では、JAIROにおける収録コンテンツについては、登録件数約100万件のうち、紀要論文が約51万件、学術雑誌論文が約16万件と多く、次いで、学位論文が4万件となっている。また、アクセスは、国別では日本国内からが多くを占めており、コンテンツ別では紀要論文に対するものが多くなっている。(2012.5現在)

○ 私立大学、特に人文・社会科学系分野において、研究紀要を発信する重要なツールとなっており、大学の発信機能の向上とともに、公開であるため、研究紀要の質の向上にも寄与している。

c.機関リポジトリの機能強化に当たっての課題、留意すべき点等 

(コンテンツの登載強化への対応)

○ 機関リポジトリの整備における課題としては、機関・研究者の理解、システムの整備、人材の確保など様々考えられるが、最も重要な問題は、登載されるコンテンツの充実である。
 大学等では、その整備は、図書館職員を中心に、部局や研究者の協力を得て進められる。
 コンテンツの登載については、基本的に「セルフアーカイブ」によるとしているケースが多いが、ジャーナルに掲載された論文等の場合は、既に情報が流通していること、また、研究者にとって作業的に二重の負担になることなどから、研究者のインセンティブは、必ずしも高くない。
 また、機関リポジトリへの登載には、ジャーナルを発行する学協会等の許諾を必要とするが、その公開のための著作権ポリシーが定まっていない場合が多いことも支障になっている。

○ なお、オープンアクセスジャーナルへ登載した論文等の場合は、書誌情報のみを機関リポジトリに掲載して、全文情報については所在を示唆することで、二重の登載は不要とすることが適切である点にも留意すべきである。

○ 大学等では、セルフアーカイブの促進を図るため、研究者はコンテンツのデータをPDF化し、送るだけでよく、著作権ポリシーの確認を含め、その後は図書館職員がすべて代行する方式、また、大学等が公開する研究者情報とリンクさせることや科研費の研究成果報告書に情報を出力できるなど、研究者の負担軽減につながる様々な工夫を行っているが、このような取組の共有化を図ることも重要である。

○ 一方、ジャーナルに掲載された論文に関しては、その著作権ポリシーを踏まえた上で、学協会等の理解を得て、直接データを得るなど、よりスムーズに機関リポジトリに情報が収納されるシステムの構築も望まれる。

(大学等及び研究者の意識改革)

○ 大学等は、研究者に対して、自らの研究成果を機関リポジトリに掲載し、オープンアクセスにすることは、国内外からの検索、流通が一層進み、研究者にとっても有益に機能するとともに、学術情報を社会に還元すべきとされている大学等の責務を果たすことにつながることについて、理解を促す必要がある。

○ さらに、機関リポジトリの構築は、大学等が全学的に取り組むべき情報発信機能であって、その業務を図書館が担っていることを明確に位置づけるとともに、サポートすることも重要である。

(評価への組み入れ)

○ 大学等の機関別認証評価等を行う際に、機関リポジトリの構築による情報発信への取組状況についても評価の対象とするとともに、その取組状況を国の学術情報基盤実態調査やJAIRO等により把握・周知することを通じて、積極的な整備を促すことが期待される。
 また、大学等が研究者の個人評価を行う際において、機関リポジトリへのコンテンツの登載を通じた情報発信への取組について、研究者の教育、研究、社会貢献にかかる業績として評価の観点に加えることが重要である。

(登載すべき情報の在り方)

○ 機関リポジトリに登載されるコンテンツとしては、主に以下のような事項が想定されるが、各大学等が保有するユニークな資料や他では流通しづらい資料の登載にも力を注ぐなど、独自性を意識した展開も重要である。
- ジャーナルに掲載された論文
- 研究紀要等による学内掲載論文
- 学位論文
- 国際会議等での口頭発表資料
- テクニカルレポート、研究成果報告書
- 研究データ
- 教材
 特に、研究データの流通促進については、今後、知識インフラ形成の一環として重要になると思われるが、機関リポジトリへの登載に当たっては、データ量が膨大なため、今後のクラウド技術に関するイノベーションの動きも踏まえつつ、機関リポジトリで流通させるべきデータの選択など、ニーズを踏まえた適切な対応が必要である。

○ また、コンテンツの内容によっては、機関リポジトリに登載し、タイムスタンプを付与することにより、研究成果の公表時期が明らかになるため、研究者が自らの研究成果としての明確性とその優先性を主張する上で有益に寄与することも考慮すべきである。

○ 大学等は、その情報戦略・整備方針等に基づき、どのようなコンテンツを重点的かつ網羅的に整備するか、また、オープンアクセスにするかを判断しつつ、機関リポジトリに登載するコンテンツの充実・発信に努め、国内外における存在感の強化を推進すべきである。

○ 機関リポジトリが現状では主に国内で活用され、登載される日本語文献に対するニーズ・重要性が高い一方で、国際的な情報流通を促進する観点からは、分野を問わず英語による発信が重要であることから、少なくとも、要約やキーワード等について英語で登載することが望ましい。

(学位論文の登載)

○ 機関リポジトリに登載される主要なコンテンツの一つである学位論文は、学位取得者の研究成果としてのみならず、学位授与大学の大学院教育の成果でもあり、専門分野の最新動向を反映するものとして利用ニーズも高い状況がある。大学の社会への成果還元、さらには説明責任を果たす意味からも、学位論文の機関リポジトリへの登載を一層促進することが重要である。

(連携の促進)

○ 機関リポジトリの連携効果としては、大学等の教員データベースやJSTのJ-GLOBALの研究者情報にリンクさせ、活用することも有効と考えられる。
 また、科研費との関連においては、KAKENと機関リポジトリを連携することによって、科研費の成果の把握・分析等に活かすことも期待される。

(支援の方向性)

○ 国等は、ジャーナルを発行する学協会等の著作権ポリシーが明確になっていないために、ジャーナル掲載論文の機関リポジトリへの登載に支障が出ている状況から、未定の学協会等に対しては、オープンアクセス化もしくは著作権ポリシーの早急な検討・公表を促すことが求められる。

○ また、機関リポジトリの整備・普及をさらに推進し、ユーザーの利活用を促進させるため、NIIが提供する共用リポジトリの積極的な展開、機関リポジトリのソフトウェアの高度化・機能標準化など、情報発信機能や運用体制の強化に寄与するサービスの充実に努める必要がある。

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)

-- 登録:平成24年07月 --