資料1 学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について(案)

はじめに

 我が国は、これまで高い科学技術力をもとに、社会・経済発展を遂げてきたが、グローバル化の流れの中で、円高の進行、新興国の台頭、少子高齢化の影響等により、国際競争力が低下し、社会に停滞感が蔓延している。
 物的資源の少ない我が国にとって、知的資産は重要な資源であり、そのため、従来以上に科学技術振興に力を注ぎ、特に、将来を見据えた独創性の強い学術研究を推進することが国際競争力を高める上で不可欠である。
 学術研究の推進のためには、情報を必要とする人々に対してタイムリーに広くアクセスが保証されていることは必須の条件である。それと同時に優れた研究成果を国内外に迅速に発信・流通させ、さらに社会に活かしていくことが重要であり、そのことが日本の知的存在感を向上させ、世界中から優秀な人材を引きつけることにより、我が国の学術の更なる発展及び社会全体の活性化につながる。
 第4期科学技術基本計画においても、このような研究情報基盤の整備に関して、研究教育成果の電子化およびオープンアクセスの推進、大学等における機関リポジトリの構築、さらにはデジタル情報資源をネットワーク化し、研究情報基盤全体を「知識インフラ」として統合的に展開していくことが謳われている。
 我が国の学術レベルは、様々な分野で世界トップ水準にあるなど、総じて研究力は優れているとされるが、我が国としての学術情報発信力については高いとは言えない。例えば、研究成果としての論文発表の場であるジャーナル(学術雑誌)に関して、国際的に有力なジャーナルが国内に少ないこともあり、国内で生産される論文の約8割が海外のジャーナルに投稿されている。優れた研究成果が電子化されていないため、結果的に十分流通していない可能性もあることから、より多くの成果が電子化され、日本発で国際的に発信・共有される流通システムの整備が必要である。
 学術情報流通の世界的な動向に注目すると、海外の商業出版社や大手学会が刊行し、大学図書館が提供する電子ジャーナルは広く普及し、全般的なアクセスは大幅に進展している一方、継続的な購読料の値上がりや弾力のない契約方法への批判も強まっている。それを背景として、論文等の成果に無償で制約なくアクセスできるようにするオープンアクセス化を促進すべきとの流れが世界的に強まっている。
 他方で、日本の研究・教育拠点である大学や研究所においては、自ら生み出す様々な学術情報(成果である論文、研究データ、教材など)を集約、保存、発信し、それらを次の研究・教育に活かすための仕組みとして「機関リポジトリ」の構築が進められている。大学等が日本全体での整備・展開が必要とされている「知識インフラ」の一翼を担うためにも、機関リポジトリの有効活用と大学での戦略的位置付けは重要な課題である。
 また、日本からの学術情報の国際発信力を高め、オープンアクセスの推進や機関リポジトリの構築を展開していくためには、支援事業や環境整備も不可欠である。学術基盤整備に関して、様々な事業を実施している国立情報学研究所(NII)や科学技術振興機構(JST)等の関係機関がそれぞれの必要性や重要性を踏まえ、連携しつつ、効果的・効率的に取組むことが重要である。
 このような状況から、今期の作業部会では、我が国における学術情報の国際発信・流通力強化のための基盤整備やシステム改革に必要な課題や対応策について、審議することとした。
 作業部会では、平成23年4月以降、関係者へのヒアリングを含め、計16回の審議により、背景や現状の把握とその対応策に関する検討を行い、1.科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の改善、2.科研費等競争的資金による研究成果のオープンアクセス化への対応、3.機関リポジトリの活用による情報発信機能の強化、4.学術情報基盤の強化のための環境整備に関わる機関(NII、JST、NDL、JSPS)の連携・協力等の取組強化に関するとりまとめを行った。
 今後、大学、学協会、関係機関が結集して、個々の研究者の対応を含め、我が国からの学術情報の発信・流通を高めるための取組を強化し、知的国際競争力の向上に寄与することが望まれる。

1. 学術情報基盤の整備と我が国の情報発信・流通の強化について

a. 背景

○ 我が国が国際競争力の高い優れた学術を振興する上で、その基礎となる学術情報基盤の整備は、研究者間における研究成果の共有、研究活動の効率的展開、社会に対する研究成果の発信・普及、研究成果を活用する教育活動の実施、研究成果の次世代への継承等の観点から不可欠なものである。

○ 学術研究及び学術情報流通は元来グローバルな性質を持っているが、近年は特に国際的な動向を踏まえた戦略的な観点から、我が国の研究活動の振興、社会における存在感の向上に努める必要がある。

○ 現在の学術情報流通は、商業出版社および学協会等の発行するジャーナルにおける研究成果の発表を中心としている。ジャーナルは同一タイトルのもとに継続して発行され、査読制度のもと掲載論文は質が保証されたものであることから、当該研究成果の評価システムとしても機能している。

○ コンピュータ、ネットワーク技術の著しい発展を受け、学術情報の流通・発信は、国際的に電子化が基本となっている。我が国においても、研究成果を国際的に発表するジャーナルについては、自然科学系を中心に、紙媒体を郵送等により頒布する形態から、電子ファイルをインターネットによって頒布する「電子ジャーナル」に移行しており、人文学・社会科学においても電子ジャーナルへの移行が加速されつつあるものの、学術情報基盤全体としての電子化は遅れている。

○ また、学術情報流通の硬直化等の問題に対して、電子化の進展を前提に、学術情報の国際発信・流通を一層促進する観点から、利用者側が費用負担なしに、必要な資料を入手することを可能にするオープンアクセスが国際的に大きな関心を集めている。特に、公的助成を受けた研究成果についてはオープンアクセス化を図るべきという考えが強くなってきていることを十分認識すべきである。

b. 現状

○ 日本の研究は、多くの分野において世界でもトップクラスの業績を上げている。それは、日本人による学術論文数が世界の学術論文の約1割を占めるという調査結果からも明らかであるが、一方で、日本においては、掲載論文の平均被引用度(インパクトファクター(IF))が高く、国際的に認知された有力なジャーナルの発行は決して多いとは言えない。これは、発行主体が主に学協会ごとに細分化しており、査読制度の脆弱さ、マーケティング力の不足、一部は言語が日本語などの理由が考えられる。
 その結果、我が国で生産される論文の約8割が海外のジャーナルに投稿されている状況にあり、査読で不利益を受ける可能性や公開前に情報が流通することを懸念する声もある。言語等の問題等も含め、優れた研究成果が十分流通せず、結果的に埋もれてしまう可能性がある。日本自らが学術情報を発信する場としてのジャーナルの整備に関しては、十分な成果を挙げてきていない。

○ 世界の中で日本の研究上の位置づけに見合った貢献を学術コミュニケーション(学術情報流通・発信)において実現するには、日本の学術コミュニティに基礎を置く国際的なジャーナルが必要である。
 我が国が知的存在感を増すとともに、また、投稿論文がその扱いにおいて不利益を受ける恐れがないようにするためにも、我が国発の有力ジャーナルの育成は不可欠であり、こうした懸念は、日本学術会議からも強く指摘されている。
 我が国において国際的ジャーナルが刊行されることは、日本発のオリジナルな研究成果の掲載と、それに続く優れた研究成果が諸外国からも投稿されることにつながり、我が国が当該学術分野において世界をリードする発展拠点になることが期待される。

○ 将来を見据えた我が国の学術情報基盤の整備に当たっては、学術情報の電子化、ネットワーク化、さらにはオープンアクセスの理念を踏まえ、第4期科学技術基本計画でも指摘されている「知識インフラ」構築に向けて、多様な取組を加速化して実施していくことが望まれる。日本で生産される多様な学術情報の電子化、オープンアクセス化を推進することで、我が国の研究成果の国際的な流通を促進し、研究成果の共有により学際的、創発的な研究活動の推進が期待される。

c. 課題

○ 学協会が行う学術的価値の高いジャーナルの刊行に対しては、これまで科学研究費補助金により支援することで、ジャーナル刊行の継続性や情報発信力の確保に一定の成果を上げてきたものの、助成対象は紙媒体に対する発行経費に限定されてきた。日本発の国際的に有力なジャーナルの育成に当たっては、電子ジャーナル化、オープンアクセスジャーナルへの取組を含め、国際情報発信力の強化を支援する方向での改善が望まれる。

○ 研究成果のオープンアクセス化に関しては、利用者が費用を負担するこれまでの学術情報流通のあり方と根本的に異なるため、このような取組に対する反発や躊躇もあるが、研究活動が自由で活発な学術情報流通を前提に成立すること、また、国際的な大きな流れにも鑑み、我が国としても積極的に取り組むべきである。そのためには、オープンアクセスジャーナルの育成とともに、各大学が整備を進めている機関リポジトリの活用も有益である。

○ 機関リポジトリは、各大学等の教育研究成果を収集・保存し、インターネット上で発信・流通させることを目的に構築、運営されるものであり、学術情報流通のオープンアクセスの文脈だけではなく、我が国における「知識インフラ」の構築に当たってもその一翼を担うことが期待されている。その整備を加速化させるためには、大学等が教育研究活動をアピールするに当たって、機関リポジトリの整備・充実は重要であるとの認識を一層普及させることが必要である。

○ 国際的な動向を踏まえた上で、日本における学術情報基盤の強化を図るに当たっては、助成事業を行う日本学術振興会(JSPS)のほか、科学技術振興機構(JST)、国立情報学研究所(NII)、国立国会図書館(NDL)が学術情報流通のための電子的なプラットフォームの整備や統合化、国際的にも流通する識別情報の標準化、各種情報の統合検索、利用データの活用に基づく新しい機能の提案など、学術情報流通を側面から支援するための環境整備が重要である。これらの機関が連携・役割分担を図りつつ、関連事業を強化することが求められる。

2. 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の改善について

a. 制度の概要

○ 科学研究費補助金は、我が国の優れた学術研究に対する支援を目的とした基幹的な助成事業であるが、学術研究は、単に研究を行うだけでなく、その成果を公開し、社会において利用できるようにする視点が重要である。
 そのため、科研費では、研究費を助成する基盤研究等の種目とは別に、研究成果の普及経費を助成する研究成果公開促進費が設けられている。

○ 研究成果公開促進費は、我が国の学術の振興と普及に資するとともに、学術の国際交流に寄与することを目的とし、優れた研究成果の公的流通の促進を図るものとしており、その中で、「学術定期刊行物」の区分を設け、学会又は複数の学会の協力体制による団体等が、学術の国際交流に資するために定期的に刊行する学術誌に対する助成を行っている。

b. 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の課題

○ 現在、科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の審査・採択においては、質の良いジャーナルであれば、継続的に科研費の助成を受けられる結果となっており、このことは、科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)が、競争的資金である科研費の一種目であるにも関わらず、競争性が十分でないという批判にもつながっている。

○ 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の配分額については、科研費全体の予算が伸びている中で、平成17年度の約9億1千万円をピークに年々若干ずつ減少し、平成23年度には約3億5千万円と約1/3になっている。長期的に助成を受けられている学協会がある一方、予算規模の大幅な縮小により、応募意欲の減退を招き、これが応募件数の減少につながっている。

○ 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の応募対象経費については、紙媒体が前提とされていたため、直接的な出版費としての製版代や印刷代等が助成の対象となっており、電子化の進展に十分対応できていない。また、査読審査や編集等に係るジャーナルの発行に不可欠な経費への助成も対象となっていない。

○ 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の評定基準においては、個々の刊行計画の学術的価値等が中心となっており、国際情報発信強化への取組みについても、海外有償頒布部数、編集委員やレフェリーに占める外国人の割合、海外からの投稿論文数等の評価にとどまっている。

○ 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の審査については、他の研究種目と同様に、研究者のピアレビューを基本とし、各分野の専門家が学術的価値等を評価する体制を構築していることから、ジャーナルの発行に係る実務者等が参画しておらず、発行改善への取組内容を十分に評価できるような審査体制となっていない。

c. 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の改善の方向性

○ 我が国の学術情報発信力を強化する観点からは、研究の多様性を確保し、世界の学術に貢献するような有力なジャーナルを多く育てることが必要である。そのため、科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)は、国際的な学術情報流通の電子化を踏まえて、国際競争力を高める観点から助成方法を検討することが重要である。

○ 以下は、学術情報基盤作業部会として、科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の改善の方向性等を示すものであり、本種目の審査・交付業務を行う日本学術振興会において制度改善による影響を検証しつつ、具体的な内容について検討することが望まれる。

(ジャーナルの発行に必要な経費の助成)

  • 電子化の進展をふまえつつ、ジャーナルの発行(査読審査、編集及び出版等)方法の改善に必要な経費の助成を可能とするため、助成対象及び応募対象経費を見直すことが必要である。
  • 助成対象については、ジャーナルの発行による国際情報発信力強化のための取組に係る事業計画を対象として助成することが必要である。その際、個別の学協会の取組はもちろん、分野のコミュニティによる電子ジャーナル発行にかかる連携の取組等、新たな取組にも配慮するべきである。
  • 応募対象経費については、電子化の進展をふまえつつ、国際情報発信力強化の取組に係る経費など、紙媒体の直接出版費以外にも、柔軟に経費を助成することが必要である。ただし、条件の緩和が学協会等による経費執行に混乱を生じる可能性もあるため、指針や例を示すことが望まれる。

(国際情報発信力強化のための取組内容の評価)

  • 国際情報発信力強化に向けた電子化・国際化等、ジャーナルの改善に関する取組を評定要素として重視することを明確にした上で、学協会等が自ら、国際情報発信力強化の取組等について、事業期間を通じて達成すべき目標を設定するとともに、事業期間内の年度毎の計画を設定し、その内容を応募時に審査できるようにすることが望ましい。
  • 事業期間については、現状では、学協会等からの応募を踏まえ単年度中心の助成となっているが、取組の実を上げ、かつ内容を評価できるような事業期間とすることが重要である。
  • 応募区分については、欧文誌の欧文化率が100%に近づく傾向にあるほか、和文誌についても分野の特性に応じて欧文化率に係る取組内容を評価できるようにするため、欧文化率による条件を緩和することが重要である。また、国際的なコミュニケーションの現状を踏まえると英語を基本とし、場合によって例外的措置を認めることも考えられる。

(オープンアクセスの取組への助成)

  • 我が国の学協会が基礎となって刊行される国際的なジャーナルの情報発信力を強化して、すみやかに欧米並みのレベルに到達させ、さらにリードできるようにすべき状況にあることを考慮すると、電子ジャーナルを前提としたオープンアクセスジャーナルへの取組に対して科研費で助成することは重要である。
  • なお、現行の科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)においては、海外で有償頒布が行われていないものは公募の対象とはならないため、オープンアクセスジャーナルは応募できない。このため、公募の対象から海外有償頒布の条件を削除することにより、購読誌とオープンアクセスジャーナルのどちらも応募可能とすべきである。
  • 政策的にオープンアクセスジャーナルの育成を推進することについて明確化するため、新たな重点支援のための区分として「オープンアクセス誌(スタートアップ支援)」を設けることを検討すべきである。その際、ジャーナルが評価されるまでに時間がかかることに配慮した事業期間とするとともに、従来からある購読誌とは別に新たなオープンアクセスジャーナルへの取組を促進できるように重複応募についても配慮すべきである。

(研究成果の公開に必要な事業の拡充)

  • 原著論文の発表の場であるジャーナルの助成を行う研究成果公開促進費に関しては、我が国の研究者の高い研究力に見合った国際貢献をするためにも、各分野において世界の学術に貢献するような有力なジャーナルを育てていくことが重要であり、そのための事業の拡充は不可欠である。

(その他科研費の改善に関する留意事項)

  • 科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の審査に当たっては、ジャーナルの改善への取組内容を適正に評価できるような体制を構築すべきである。
     また、学協会等が連携して行う国際情報発信力強化の取組については、特段の配慮を行うことを検討すべきである。
  • 各応募区分に関する応募上限額の設定については、適正な規模で必要な支援を確実に行う観点から、その必要性等についての検討が必要である。
     また、事業年度が単年度中心の助成から複数年度に渡って継続の内約を行うことから、予算を平年度化するための経過措置についても検討すべきである。
  • 「科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)」の名称について、改善案を踏まえて変更することも検討すべきである。

3. 科研費等競争的資金による研究成果のオープンアクセス化への対応について

a. オープンアクセス化の必要性

○ 学術研究の成果は、そもそも人類共通の知的資産として広く共有されることが望ましい。また、特に、公的助成を受けた研究成果については、広く国民に知らされ、利活用されるべきものである。そのため、ジャーナルに掲載された論文が出版者側の求める高額な購読料や著作権ポリシーにより、閲覧が難しくなる状況は望ましくないとして、利用者側が費用負担を伴わず制約なしで研究成果に接することを可能にするオープンアクセス化を進めるべきという考えが世界的な流れになっている。
  第4期科学技術基本計画においても、教育研究成果の収集、オープンアクセス化を推進すべきとされており、積極的に対応する必要がある。

b. オープンアクセス化の方法

○ 研究成果をオープンアクセス化する手法としては、大きく分けて2通りの方法がある。一つは、オープンアクセスを前提としたジャーナルに論文を発表する方法(購読誌に投稿するが、費用を支払い自らの論文のみオープンアクセス化を選択する場合を含む)であり、もう一つは、研究者が発表したジャーナルの許諾を得て、自らインターネット上で論文を公表する方法である。

(オープンアクセスジャーナルにおける公表)

  • ジャーナルは、これまで発行に要する経費を購読料で賄ってきたことから、利用者が無償で閲覧できるオープンアクセスにする場合、特段の財源がなければ、その費用負担を発表する研究者に求めることになる。そのため、研究者側に掲載費用を負担しても投稿したいという動機が必要になるとともに、ジャーナルによっては、ビジネスモデルの変更により、登載する論文の質的及び量的確保が難しくなる事態も想定されることから、我が国において、オープンアクセスジャーナルはまだ少ないのが現状である。
  • しかしながら、諸外国では、米国のPLoS One誌のように、ビジネスモデルとして成立する有力なオープンアクセスメガジャーナルも存在することから、既に記載のとおり、科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術定期刊行物)における助成内容を改善し、オープンアクセスジャーナルとしての評価を確立するまでのスタートアップ時期の必要経費を助成することによって、その育成を積極的に支援すべきとしたところである。
  •  また、研究者側に発生する費用負担に関しては、競争的資金を受けている場合は、投稿料を当該資金から支出可能である旨を明確に示すことにより、論文のオープンアクセスジャーナルへの投稿を避けることがないように促す必要がある。なお、既に科研費の研究者については、論文投稿料のような成果公開のための経費への使用が認められており、このことはハンドブック等で明記されている。

(インターネットによる公表)

  • 研究者自らがインターネットにより公表する方法については、発表したジャーナルの著作権ポリシー等に伴い、次の3つの観点による組み合わせが考えられる。
  1. 公表する場所
    • 研究資金を支援した資源配分機関におけるウェブサイトにおける公表
    • 研究者の所属機関におけるウェブサイトにおける公表
    • 研究者個人の設置するウェブサイトにおける公表
  2. 公表する時期
    • 最初に成果を発表した時点
    • 最初に成果を発表した時点から出版者側の認める一定期間を経過した時点
  3. 公表する文書の内容
    • ジャーナルが登載を承認し公式に発表したもの(出版版)
    • 出版版に至る前の著者最終原稿等
  • オープンアクセスを実現するための公表場所については、諸外国においても様々な取組がなされているが、我が国においては、大学等が有している教育研究成果を集積・保存・流通させる場として構築を進めている「機関リポジトリ」をオープンアクセス化の受け皿として活用することが現実的な方策と考えられる。なお、機関リポジトリを持たない企業等に所属する研究者に対しては、研究者自身による研究成果の発信を促す必要がある。
  • 研究者自身が行うセルフアーカイブにおける公表時期については、著作権を所持する出版者側が承認する時期となる。出版社が著作権保護の観点から他での公表を認めるまでの猶予期間をエンバーゴと呼び、概ね6か月から3年程度までその期間は様々であるが、1年間としているケースが多い。エンバーゴの期間が長いことも問題であるが、著作権ポリシー自体が未定の学協会が多いため、研究成果を他の媒体で公表していいのかの判断ができないことが課題となっている。 
  • 公表内容に関しては、出版者側は基本的にジャーナルに掲載した出版版の他への掲載は認めず、公表されるのは、著者最終原稿である場合が多い。一方、研究者の立場として、出版版以外の流通は、同じ研究成果に関して2通りの情報が存在することとなり、混乱を招く恐れがあるとして、書誌情報の公表に留めるケースも多い。
  • 著作権を保有する学協会や出版社との交渉等により、ジャーナルの発表時期と近い時期、出版版に近い内容で公表できるように努めるとともに、研究者にはオープンアクセスへの積極的な対応を求めることが重要である。

c. その他の環境整備

○ 競争的資金を受けた研究の成果については、研究助成機関が支援と成果との関係を把握できるようにする必要があり、オープンアクセスへの対応を含め、支援した研究の成果にどのようにアクセスできるかを研究者側に報告させるべきである。
 科研費については、提出する研究成果報告書に研究成果論文が掲載されているWebアドレスを記載する項目を設けているが、その記載を強く奨励することにより、科研費データベース(KAKEN)とリンクした形での流通を進めるべきである。

○ 研究成果の利活用を促進するためには、研究成果の可視化、検索機能を強化するめの施策が必要である。国、研究助成機関、NII等の関係機関が連携して、メタデータの標準化、論文識別方法の標準化、著者情報の標準化等に取り組むことが必要である。

4. 機関リポジトリの活用による情報発信機能の強化について

a. 機関リポジトリの役割・意義

○ 研究成果のオープンアクセス化への対応を含め、日本における学術情報の発信・流通機能の強化、我が国の「知識インフラ」構築に関し、大きな役割が期待されるものが、大学等において、インターネットに整備が進められている「機関リポジトリ」である。

○ 機関リポジトリ自身は、情報発信だけでなく、研究、学習・教育活動を実施、推進するに当たって、幅広い環境整備に関わる役割を有するものであり、主な機能としては以下のとおりである。

  1.  大学の生産する知的情報・資料の集積、長期保存の場(アーカイブ)
  2.  学術情報の発信及び流通の基盤(論文、データ、報告書等の公表及び提供)
  3.  学習・教育のための基盤(教材の電子化、提供、保存)

○ 機関リポジトリを情報発信の観点から整備する意義は、以下のとおりである。

  1. 機関側の意義として、大学等の有する知的生産物を一元的に収納し、保全することにより、大学全体の知的資産を把握・可視化することができるとともに、教育研究成果を国内外に迅速かつ広範に情報発信し、大学の存在感、優秀度等をアピールする手段となりうる。
     ユーザー側のメリットとしては、大学等の有する様々な知的資産に対し、どこからでもワンストップでアクセスし、基本的に無償で利用できる。
     そのため、学術情報に関する新しいコミュニケーションツールとしての発展が期待できる。
  2. さらに、商業出版社の寡占による高額な購読料などの影響から、一部でアクセスに問題を生じさせている現行の学術論文流通システムを代替する機能としても期待される。

○ 大学等の生み出す多様な知的生産物は、第4期科学技術基本計画においても形成が謳われている「知識インフラ」を構成する中核的要素であり、我が国の貴重な財産として、社会に共有され、活用されることが、今後の発展に必要である。
 大学等は、責務として、知的情報の蓄積・発信に努めるべきであり、そのための重要な手段に機関リポジトリを位置づけ、整備・充実を図ることが望まれる。

b. 機関リポジトリの現状

(機関リポジトリの整備状況)

○ 機関リポジトリの構築については、これまで、各大学等の図書館を中心とした自発的な努力により、独自もしくは連合して開発したシステムや既存の公開システムを用いて、その整備が進められてきた。また、NIIやDRF(機関リポジトリに関わる広域コミュニティ組織)等による啓発活動・支援などの効果により、近年、構築数は急速に伸びており、現在では、国公私立大学等の約250機関に設けられている。
 国際的には、機関リポジトリ関連情報サイトOpenDOARに登録されている機関数は、世界全体2,199機関の中、日本は136機関で世界4位となっている。(2012.4現在)

○ しかしながら、科学研究費補助金の申請機関として登録されている大学・研究機関だけでも1,000機関以上あることを考慮すると、より一層の整備・拡充が求められる。
 昨年度からは、独自にシステムの整備が困難な大学を対象に、NIIが共用リポジトリシステムを提供することにより、機関リポジトリの構築をサポートするJAIRO Cloud事業も開始されたことから、さらに加速することが見込まれる。
 将来的には、機関リポジトリの有する価値の多様性から、全ての大学等が、機関リポジトリの構築・充実に向けて努力されることが期待される。

(機関リポジトリの横断的な連携・データ分析機能)

○ 機関リポジトリを効果的に整備・活用するためには、リポジトリ間の連携や横断的なデータ分析は欠かせない。国内では、NIIが機関リポジトリの横断的検索ツールとしてJAIROを設け、情報の連携を図るとともに、JAIROを通じたコンテンツ等のデータ分析ツール(IRDB)を設けている。また、ユーザー分析に関しては、アクセスログを入力することにより、国別、機関種別等の分析を可能にするシステム(ROAT) が千葉大学を中心に開発されており、活用可能である。
 海外との連携においては、OpenDOAR、OAIsterといった機関リポジトリの情報共有サイトが整備され、運用されている。

○ IRDBを用いた分析では、JAIROにおける収録コンテンツについては、登録件数約100万件のうち、紀要論文が約51万件、学術雑誌論文が約16万件と多く、次いで、学位論文が4万件となっている。また、アクセスは、国別では日本国内からが多くを占めており、コンテンツ別では紀要論文に対するものが多くなっている。(2012.5現在)

○ 私立大学、特に人文・社会科学系分野において、研究紀要を発信する重要なツールとなっており、大学の発信機能の向上とともに、公開であるため、研究紀要の質の向上にも寄与している。

c. 機関リポジトリの機能強化に当たっての課題、留意すべき点等

(コンテンツの登載強化への対応)

○ 機関リポジトリの整備における課題としては、機関・研究者の理解、システムの整備、人材の確保など様々考えられるが、最も重要な問題は、登載されるコンテンツの充実である。
 大学等では、その整備は、図書館職員を中心に、部局や研究者の協力を得て進められる。
 コンテンツの登載については、基本的に「セルフアーカイブ」によるとしているケースが多いが、既にジャーナルに掲載された論文等については、事務的に二重の負担になる。加えて、著作権の関係から出版版でなく、その前の著者最終原稿となる場合がほとんどであり、同じ成果に対する異なる情報の流通は適切ではないとする意識も働き、機関リポジトリの構築に対する研究者のインセンティブは、必ずしも高くない。
 また、機関リポジトリへの登載には、ジャーナルを発行する学協会等の許諾を必要とするが、その公開のための著作権ポリシーが定まっていない場合が多いことも支障になっている。

○ 大学等では、セルフアーカイブの促進を図るため、研究者はコンテンツのデータをPDF化し、送るだけでよく、著作権ポリシーの確認を含め、その後は図書館職員がすべて代行する方式、また、大学等が公開する研究者情報とリンクさせることや科研費の研究成果報告書に情報を出力できるなど、研究者の負担軽減につながる様々な工夫を行っているが、このような取組の共有化を図ることも重要である。 

○ 一方、ジャーナルに掲載された論文に関しては、その著作権ポリシーを踏まえた上で、学協会等の理解を得て、直接データを得るなど、よりスムーズに機関リポジトリに情報が収納されるシステムの構築も望まれる。

(研究者の意識改革)

○ 研究者に対しては、大学等は、自らの学術情報を機関リポジトリに掲載し、オープンアクセスにすることで、国内外からの検索、流通が一層進むことから、研究者にとっても有益に機能することや機関に所属する者の責務として、情報登載への理解を促す必要がある。

○ さらに、機関リポジトリの構築は、大学等が全学的に取り組むべき情報発信機能であって、その業務を図書館が担っていることを明確に位置づけるとともに、サポートすることも重要である。

(評価への組み入れ)

○ 大学等の機関別評価を行う際に、機関リポジトリの構築による情報発信への取組状況についても評価する仕組みを導入することで、積極的な整備を促すことが期待される。
 また、大学等が研究者の個人評価を行う際において、機関リポジトリへのコンテンツの登載を通じた情報発信への取組について、研究者の教育、研究、社会貢献にかかる業績として評価の観点に加えることが重要である。

(登載すべき情報の在り方)

○ 機関リポジトリに登載されるコンテンツとしては、主に以下のような事項が想定されるが、各大学等が保有するユニークな資料や他では流通しづらい資料の登載にも力を注ぐなど、独自性を意識した展開も重要である。

  • ジャーナルに掲載された論文
  • 研究紀要等による学内掲載論文
  • 学位論文
  • 国際会議等での口頭発表資料
  • テクニカルレポート、研究成果報告書
  • 研究データ
  • 教材

 特に、研究データの流通促進については、今後、知識インフラ形成の一環として重要になると思われるが、機関リポジトリへの登載に当たっては、データ量が膨大なため、今後のクラウド技術に関するイノベーションの動きも踏まえつつ、機関リポジトリで流通させるべきデータの選択など、ニーズを踏まえた適切な対応が必要である。

○ また、コンテンツの内容によっては、機関リポジトリに登載し、タイムスタンプを付与することにより、知的財産権保護の立場から有益に寄与することも考慮すべきである。

○ 大学等は、その情報戦略・整備方針等に基づき、どのようなコンテンツを重点的かつ網羅的に整備するか、また、オープンアクセスにするかを判断しつつ、機関リポジトリに登載するコンテンツの充実・発信に努め、国内外における存在感の強化を推進すべきである。

○ 機関リポジトリが現状では主に国内で活用され、登載される日本語文献に対するニーズ・重要性が高い一方で、国際的な情報流通を促進する観点からは、分野を問わず英語による発信が重要であることから、少なくとも、要約やキーワード等について英語で登載することが望ましい。

(学位論文の登載)

○ 機関リポジトリに登載される主要なコンテンツの一つである学位論文は、学位取得者の研究成果としてのみならず、学位授与大学の大学院教育の成果でもあり、専門分野の最新動向を反映するものとして利用ニーズも高い状況がある。大学の社会への成果還元、さらには説明責任を果たす意味からも、学位論文の機関リポジトリへの登載を一層促進することが重要である。

(連携の促進)

○ 機関リポジトリの連携効果としては、大学等の教員データベースやJSTのJ-GLOBALの研究者情報にリンクさせ、活用することも有効と考えられる。
 また、科研費との関連においては、KAKENと機関リポジトリを連携することによって、科研費の成果の把握・分析等に活かすことも期待される。

(支援の方向性)

○ 国等は、ジャーナルを発行する学協会等の著作権ポリシーが明確になっていないために、ジャーナル掲載論文の機関リポジトリへの登載に支障が出ている状況から、未定の学協会等に対しては、オープンアクセス化もしくは著作権ポリシーの早急な検討・公表を促すことが求められる。

○ また、機関リポジトリの整備・普及をさらに推進し、ユーザーの利活用を促進させるため、NIIが提供する共用リポジトリの積極的な展開、機関リポジトリのソフトウェアの高度化・機能標準化など、情報発信機能や運用体制の強化に寄与するサービスの充実に努める必要がある。

5. 学術情報の流通・発信力強化に関わる事業実施機関(NII、JST、NDL、JSPS)の連携・協力等の取組強化について

a. 関係機関の目的及び事業

○ 学術情報の流通・発信力の強化に関しては、国立情報学研究所(NII)、科学技術振興機構(JST)、国立国会図書館(NDL)、日本学術振興会(JSPS)の各機関(関係機関)がそれぞれの目的に基づいて支援事業等を実施している。
 限られた資源の中で、効率的・効果的に施策を展開するためには、関係機関が実施する事業の内容・状況を踏まえ、連携・協力、役割分担等を進めつつ、事業の拡充・強化を図る必要がある。

○ 関係機関における学術情報の流通・発信強化に関わる部分としての目的及び事業の概要は、以下のとおりである。

〔国立情報学研究所(NII)〕

 大学共同利用機関として、国公私立大学全体の教育研究活動に資する設備や資料等を共同利用に供するため、学術情報流通のための先端的な基盤の開発、整備、運用等を行い、大学における学術研究の発展等に資する。
 大学図書館等との連携により、図書・雑誌、機関リポジトリ等の学術情報の流通・発信に係る事業を実施している。〔GeNii、CiNii、JAIRO、SPARC Japan等〕

〔科学技術振興機構(JST)〕

 我が国における科学技術振興に関する中枢的機関として、我が国のイノベーション創出の源泉となる知識の創出及び研究成果の社会・国民への還元を総合的に推進する。
 専門的なサービスとの連携により、多様な科学技術情報(論文、研究者、専門用語、特許等)の流通・発信に係る事業を実施している。〔J-GLOBAL、J-STAGE、ジャパンリンクセンター 等〕

〔国立国会図書館(NDL)〕

 我が国における唯一の国立図書館として、納本制度に基づき国内出版物を網羅的に収集し、国民の文化的財産として永く保存するとともに、これらの資料を基に、国会、行政及び司法の各部門、国民に対してサービスを提供する。
 国内外の関係機関と連携し、電子図書館サービスの拡充に取り組んでいる。〔国立国会図書館サーチ、国立国会図書館デジタル化資料、インターネット収集保存事業 等〕

〔日本学術振興会(JSPS)〕

 我が国唯一の学術の振興を目的とする資金配分機関として、学術研究の振興と普及に資するとともに、学術の国際交流に寄与することを目的として、優れた研究成果の流通の促進を図っている。
 科学研究費補助金により重要な研究成果の刊行及びデータベースの作成について助成する事業を実施している。〔科研費 研究成果公開促進費(学術定期刊行物、学術図書、データベース)〕

b. 関係機関の連携・協力の現状

(関係機関の有する学術情報の相互利用及び統合検索機能の連携)

○ 学術情報の流通・発信に関して、助成事業のみを行うJSPSを除き、各機関とも目的及び事業内容に沿った情報を収集し、それぞれにアクセスするための検索サイトを用意している。
 その整備に当たっては、主な対象として想定している利用者が異なることから、利用者のニーズや利便性を配慮しつつ、幅広いコンテンツの充実に努めているが、その際、ニーズの重複する論文情報等については、各機関の有する情報を相互に共通利用できるように連携を進めており、望ましい方向での整備が図られている。

(ジャーナルの電子化に関する役割分担と連携)

○ ジャーナルの国際情報発信力強化において、重要な電子ジャーナル化に関しても、「科学研究費補助金研究成果公開促進費」による助成事業を行うJSPS、「J-STAGE」によりジャーナルを電子的に流通させるためのプラットフォームを提供するJST、「SPARC Japan」としてジャーナルの電子化を含む国際化促進のためのセミナー事業等を展開するNII、と役割分担を進めつつ、事業を展開している。

(その他)

○ 書籍目録に関するNIIとNDLの役割分担、学術雑誌の電子化におけるJSTとNIIの役割分担、学術情報の共有促進に関するジャパンリンクセンターにおけるJST、NII、NDLとの連携、独自事業としてのNIIの機関リポジトリ形成支援やNDLのデジタル化・インターネット資料収集など、関係機関における連携・協力、役割分担に対する意識や取組は進んでいる。

c. 関係機関が連携・協力を図りつつ推進すべき事業

(ジャパンリンクセンターによるDOIの付与)

○ 学術情報の国際流通を促進するためには、機関間の連携のもと、学術情報のメタデータの標準化とその国際連携を促進することが必要である。そのため、学術情報に対する識別方法として世界的に普及しつつあるDOI(Digital Object Identifier)の導入・付与は急務とされている。
 平成24年4月からは、国内の関連機関が持つ書誌・所在情報を一元的に管理することにより、学術コンテンツの共有・活用を推進するため、JSTを中心にNII、NDL等とジャパンリンクセンターの共同運営を開始した。本組織は、世界第9番目のDOI付与機関として指定されている。今後、この枠組みを活用して、我が国の学術情報に対するDOI付与を早急に軌道に乗せることが重要である。

○ DOIの付与において、論文情報に関する出版版と著者最終原稿等の区分が識別できるように設定できれば、機関リポジトリ等への著者最終原稿の登載に対する抵抗感も少なくなると考えられる。

(J-STAGE3による電子ジャーナル流通機能の高度化)

○ 平成24年5月からは、J-STAGE3の運用を開始し、デザイン/ユーザーインタフェースを一新して、データベース形式の国際標準(XML)への移行、投稿査読システムの改善が行われたところであるが、機能高度化に対する学協会からの期待は大きい。引き続き、関連機関や日本学術会議などと連携を密にし、我が国の電子ジャーナルプラットフォームとして、学術情報の流通・発信強化に向けた取組を積み重ねることが望まれる。

(SPARC Japanを活用した情報共有による国際化の促進)

○ NIIがSPARC Japanとして、欧米のSPARC US、SPARC Europeと連携しつつ、国内外の動向を踏まえて、セミナー開催等の形で進めている電子ジャーナル化、オープンアクセスなどの有益な情報に関するプロモーション活動については、学協会、大学図書館等の意識向上、情報共有の場として、非常に重要であることから、充実・強化を図る必要がある。また、こうした活動について、積極的に周知し、広めていくべきである。

(関係機関間の更なるデータ連携、サービス連携の推進)

○ 関係機関がその目的に従って、電子化の促進、手続きの簡素化等によりコンテンツの収集・発信を推進することはもちろん、各機関のデータ連携、サービス連携により、論文の全文情報など、より詳細な学術情報へのアクセスを容易にする「統合検索機能」の強化、また、利用データの把握などの「分析ツール・統計機能」の充実を図ることが重要である。 

6. その他

○ 研究成果の発信・共有においては、成果の表現、提供形式が多様化してきており、画像データや映像データ等、文字テキスト以外のマルチメディアでの流通が増加しつつある。電子ジャーナルの形態もさらなる変化が見られることから、文字テキスト以外の学術情報への対応強化も必要になると考えられる。

○ 今後の作業部会における審議課題としては、アカデミッククラウド等の技術革新に伴って進められるビッグデータの流通や我が国を網羅する知識インフラの整備・活用を意識した学術情報基盤整備の在り方についての検討などが考えられる。

お問合せ先

研究振興局学術基盤整備室

井上、堀下
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用する際は、全角@マークを半角@マークに変えてください)