参考2 学術情報基盤作業部会における公的資金を受けた研究成果のオープンアクセスに関する議論の観点(案)

[現状認識]

  • 科学、学術研究の推進に学術情報の発信、流通は必要不可欠である。
  • 現在の学術情報流通は国際的な商業出版社、大手学会が刊行する電子ジャーナルが主流となっている。

[対応策]

  • 日本は成果公表の場としての電子ジャーナルを十分に発展させてこられなかった。
    →これに取り組む学協会、その他のプロジェクトを国としても支援すべきである。
    (科研費による支援については検討済)
  • オープンアクセスへの更なる対応について、議論を深める。(議論の観点は以下の通り)

[議論の観点(例)]

公的助成を受けた研究成果のオープンアクセス

1.公的助成を受けたオープンアクセスの意義及び目標

1)公的助成には、競争的資金だけでなく運営費交付金等も含まれるが、研究成果のオープンアクセスについては、まずは科研費等の競争的資金を対象として議論することとしてよいか。

2)公的助成を受けた研究成果のオープンアクセスの意義について。(誰のため、どのような目的、どのような機能)

→オープンアクセスの意義は、「論文などの学術研究成果は、本来、人類にとって共通の知的資産であり、その内容を必要とする全ての人がアクセスできることが求められる」ということにある。(「大学図書館の整備及び学術情報流通の在り方について(審議のまとめ)―電子ジャーナルの効率的な整備及び学術情報発信・流通の推進―」平成21年7月、学術情報基盤作業部会)

NIHでは、これに加えて、米国国民に研究成果を還元する観点から必要な経費を負担してオープンアクセスを進めている。

我が国においては、オープンアクセスの意義をどうとらえるか。

3)日本国民への研究成果の還元ととらえる場合、公的助成を受けた研究成果としての論文は無料、即時、全文を全て満たす形でオープンアクセスにすべきか。それとも、即時ではなく一定期間後に公開すれば良いか。また、全文ではなく日本語で抄録・概要等を公開すれば良いか。

4)我が国としてオープンアクセスについて、その到達目標をどこにおくか。

  • 公的助成を受けた研究成果としての全ての論文をオープンアクセスとすることを補助条件や委託契約の条件とする。
  • 公的助成を受けた研究成果としての全ての論文をオープンアクセスとすることを通知等で研究者の義務とする。
  • 公的助成を受けた研究成果としての全ての論文をオープンアクセスとすることを原則として義務化又は補助条件等とした上で、例外措置や経過措置を認める。
  • 公的助成を受けた研究成果としての全ての論文をオープンアクセスとするための条件整備を行い、最終的に100%オープンアクセスを実現する。

2.公的助成を受けた研究成果のオープンアクセスの具体的な内容

1)公的助成を受けた研究成果のオープンアクセスを実現するためにどのような条件整備を行うのか。

  1. 大学等の機関リポジトリ(共用リポジトリ、ポータル整備を含む)を活用したオープンアクセス
  2. 研究助成機関による自らが実施する情報提供事業を活用したオープンアクセス
  3. 電子ジャーナル(オープンアクセス誌)を活用したオープンアクセス

→オープンアクセスの促進のためには、どのような受皿が必要となるか。オープンアクセスジャーナル、機関リポジトリ等、我が国の実態を踏まえると、どのような仕組みの組み合わせで、全体としての受皿づくりを行うことが妥当か。

2)NIH、RCUK、DFG、NSF等の海外の研究助成機関の実態を踏まえ、オープンアクセスを推進するために我が国はどのように取組むべきか。

→海外の実績や取組状況を踏まえれば、オープンアクセスを積極的に推進するため、公的資金を受けた研究成果としての論文は全文を12ヶ月以内にオープンアクセスにすることが適当ということになるのではないか。

→オープンアクセスの実現は、オープンアクセス誌以外の日本の学協会のジャーナルによる情報発信力強化の取組と両立するとすれば、どのような考え方に立つのか。

3)機関リポジトリを活用してオープンアクセスを行う場合、どのようにすれば具体的に実現できるか。

→研究助成機関は、実態把握のため、オープンアクセスを研究者及び大学等の所属機関に求めることとし、報告を受けることとしてはどうか。(例えば、研究者の論文が、オープンアクセスジャーナルや機関リポジトリなど、どこでオープンアクセスになっているかを研究助成機関が把握。)

→研究者の負担とならないようにオープンアクセスに取組むために、研究者は所属する大学等の所属機関に対し、(購読誌・オープンアクセス誌に関わらず)研究成果として論文の公表を知らせることにとどめることとしてはどうか。

→大学等として自ら社会への説明責任を果たすために、大学等の機関は、研究者の研究成果としての論文のオープンアクセスへの取組の支援(例えば、オープンアクセスに係る事務手続き)とそのための経費負担(例えば、オープンアクセスのための間接経費の活用)等を行うことが必要となるのではないか。

→公的資金の対象には大学に所属していない研究者も含まれる。このような場合に、機関リポジトリにかわる受皿を考えるべきではないか。

3.公的助成を受けた研究成果のオープンアクセスの実現に向けた課題

1)オープンアクセスの実現を目指す場合、どのような検討が必要か。

→大学等において論文等を電子化・公開するための経費や人員の確保等について、実態を把握し実現可能性を見極めることが必要ではないか。

→オープンアクセスの到達目標を何年後に実現し、その工程をどのように設定するか。大学等において速やかなオープンアクセスへの対応が困難な場合、どの程度の猶予が必要となるかを見積もることが必要ではないか。

2)100%のオープンアクセスは速やかに実現しない場合もあるのではないか。できるだけ速やかな到達目標の実現のため、 (共用リポジトリを含めた)機関リポジトリの更なる整備の促進、研究者や学協会等の意識改革を促すことが重要ではないか。

大学図書館の整備及び学術情報流通の在り方について(審議のまとめ)―電子ジャーナルの効率的な整備及び学術情報発信・流通の推進― (平成21年7月、学術情報基盤作業部会)

2.学術情報発信・流通の推進

(2) オープンアクセス推進の意義・必要性

論文などの学術研究成果は、本来、人類にとって共通の知的資産であり、その内容を必要とする全ての人がアクセスできるようにすることが求められる。このような観点から、オンラインにより無料で制約なく論文等にアクセスできることを理念とするオープンアクセスを推進する必要がある。

特に、科学研究費補助金等の公的助成により研究が推進され、そこから生まれた研究成果である学術情報については、社会的透明性を確保し、説明責任を果たす観点からも、オープンアクセスを促進することが重要であると考えられる。例えば、米国の国立衛生研究所(NIH)では、平成20年4月から、NIH からの研究助成による成果論文について、同研究所が運営する分野別リポジトリであるPubMed Centralへの登載によるオープンアクセスを義務化するなどの動きも見られる。

 

日本の学術発信機能を強化するための科学研究費助成事業(科学研究費補助金(研究成果公開促進費))の活用等について(平成23年12月、学術情報基盤作業部会)

5.その他

  • 本報告書は、これまでの議論を整理したものであり、科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会に対して、電子化やオープンアクセス誌に対応した科研費の制度改善について報告することを主眼としている。引き続き、学術情報基盤作業部会では、日本学術会議における検討にも留意しつつ、公的助成を受けた研究成果のオープンアクセス、人材養成、研究評価、学協会や関係機関との連携等を含めた我が国の学術情報の流通・発信(循環)の在り方についての検討を総合的に行うこととしている。

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