研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第35回) 議事録

1.日時

平成22年9月24日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、上島委員、植松委員、加藤委員、倉田委員、土屋委員、羽入委員、山口委員、米澤委員

学術調査官

阿部学術調査官、宇陀学術調査官

事務局

岩本情報課長、飯澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

(1) 事務局より資料1「学術情報基盤作業部会 これまでの議論の整理【案】」に基づき説明が行われ、その後、大学図書館の整備に関する意見交換が行われた。

 

【有川主査】

  これまでいただいたご意見などを、専門の方々を中心にご協力いただき、全体として統一性がとれるようにまとめていただけたと思っております。これまでの報告に比べて、かなり踏み込んだ形になっているという印象です。ご意見等いただければと思います。

【羽入委員】

  教えていただきたいのですが、このまとめは誰が読むものとして、また、今後、どのように利用されるのでしょうか。

【有川主査】

  本作業部会においては、例えば、平成18年3月報告の「学術情報基盤の今後の在り方について」(紫本)や、去年の7月には「大学図書館の整備及び学術情報流通の在り方について」の審議のまとめを取りまとめております。手続的には、親委員会である研究環境基盤部会、学術分科会に報告していきますので、全国の関係者が見ることになりますが、さまざまな形で国の政策の中にも影響が出ると思っておりますし、特に大学図書館や大学の関係者にある種のメッセージを出すものとなっています。

【岩本情報課長】

  主査がおっしゃっていただいたような位置付けになりますが、政策として具体論を書く場合が非常にございます。
  今回、このような形でおまとめいただいて、基本的な方向性や求められることに関して、非常に良いご示唆をいただいていると思っております。しかしながら、実際に大学図書館の高機能化や安定的な基盤の確立を進めていただく上で、具体的にどのように取り組んでいくのかは、それぞれの大学当局において十分議論していただかなければなりません。各大学の取組みに対する具体的な支援になるような方策を、できれば行政も考えていく必要があると思っております。したがって、これからの大学図書館に求められることはこのドラフトの中に相当書かれておりますので、例えばそれぞれの大学で取り組みやすくするように、国等がコンソーシアム等とも協力して、具体的な事例等を収集、整理して、効果も具体的に検証して、大学当局においてもきちんと議論ができるように、具体的なアクションを起こしていくことも必要だと思っております。さらに大変欲張った話にはなりますが、必要であればこのまとめの中でも少しご指摘いただいて、それを受けて国でもこのまとめの考え方、コンセプトをはっきりしていきたいと思っておりますので、ご指導をお願いします。

【羽入委員】

  このまとめが大学図書館関係者に対して非常に有効な示唆になるだろうということはよくわかります。
  また、考えなければいけないのは、今後、どのように大学自体が社会的な役割を果たしていくかという中での図書館があると思います。このまとめにいろいろな理念的なことを書かざるを得ないことはわかりますが、大学が実際にこれを実行しようとした場合、例えば財政基盤があるのかということがあります。財政基盤がどこで保証されるのか。大学そのものの存在とも関係してくると思います。したがって、このまとめを活かすには、大学図書館関係者だけでなく、大学関係者にも読んでいただくようにしなければならないと強く思うことと、それを行政に反映して、さらに財政的な裏づけを獲得することまでに持っていくような機能を果たすものになれば良いというのが、私の希望です。

【有川主査】

  このまとめに関して、部分的には当然できることがあると思いますし、基本的には、それぞれの大学で、このまとめ等を参考にして、できることを積極的に進めることが重要だと思います。自分の大学でできること、地域と一緒になってできること、大学図書館同志でできることなどがあって、国や自治体が財政的な支援をすることもあると思いますが、それよりまず、そうしたことを引き出すための一番基礎となる理念、方向性を出しておくことが大事ではないかと思っております。そのような意味では、新しい、踏み込んだところも入っているのではないかと思っております。

【土屋委員】

  国立大学に関しては、法人化以前には基本的に文部科学省が大学図書館に直接、予算措置や政策を展開して、てこ入れができたと思うので、その時代の報告書の書き方としては、審議会で議論したことを反映させることも原理的には可能でした。しかしながら、法人化以降は大学の判断がまず先行するという理屈ですし、もともと私立大学の場合では、当然学校法人ごとの判断です。したがって、大学図書館はこうすべきだと書いてある部分は大変そのとおりだと思うのですが、個々の大学にとってはそう言われてもという事柄もあります。
  社会における大学の位置付けの中での図書館の位置付けというストーリーになっているので、図書館や、文部科学省情報課に向かって何かをすべきという話を、少し違うスタイルに変えなければいけないのではないでしょうか。つまり現在の環境はこうで、大学や社会は当然大学にこういう要求をする以上は、図書館をこう位置付けるべきという言い方にしかならない。多分、本作業部会でまとめを行って情報課の方が努力してくださっても、基本的に国立大学に関しては運営費交付金の中に組み込まれていますし、私立大学もそれぞれの法人の予算の中で位置付けている。その予算の中での位置付けをどうしていくかということを検討するときの理論構築の糧になるものという位置付けとして考えないと、直接これが実現できると思ってしまうと、夢物語になってしまうのではないかという気がして、その辺の書きぶりはうまく調整しなければいけません。特に5年以上前の報告とは随分異なるものであってもいいのではないかという感じはします。

【有川主査】

  このまとめには、かなり理念的なことが書かれていて、例えば大学の学長という立場では、このまとめに基づいて、図書館関係者が具体的に何か話を持ってきた場合には、かなり困ります。そのようなインパクトは明らかにあります。
  学長としても、財源の問題等もあるので、このまとめによって、聞かざるを得ないように追い込んでもらった方が良いような面もあると思います。
  また、国公私の中でも実に様々な大学があって、まとめで書いていることを同じように実現することはできないと思います。まとめを参考にしながら部分的に実現して、それぞれの特徴を出していく。国の施策としては、国立だけを対象にするのではなく、例えば教育系ではGPのように共通のフレームワークが設定されると、それに対して国公私問わずアプライするように、それぞれに同じ機会が保たれるようにしていくことが考えられるので、その辺は期待をしながら、議論をしていけばいいのではないかと感じております。

【植松委員】

  土屋先生のご指摘に関して、私も意見を申し上げた立場としては、いずれにしても大学図書館が、大学全構成員からその重要性や機能について理解を得ることが一番重要なことであるという視点で、全体をまとめようという立場で案を作成したつもりです。

【山口委員】

  このまとめの位置付けは大きく2つあると思います。一つは大学を巡る環境変化に関して指標という位置付けです。その700大学の図書館に関わる人も含めて、どこまで環境が変わっていて、どの程度国際化にも対応していかなくてはいけないかという理解のレベルは、大学によって相当異なると思います。したがって、一つの大きな役割は、これを取りまとめることによって、状況の変化の把握、それぞれの大学における図書館としての位置付けをもう一度考え直す指標になるということです。
  もう一つは、外に出していくとき、アクションプランはどうなるのかという、今後の行動計画への取り組みを示唆するという位置付けがあると思います。
  時間をかけて現状分析をして、こういう必要性がある、これが重要であると書かれていますので、今、手がけなければならないことはかなり明確になっていると思います。それに対してやはりアクションプランの概略を作成することが大変重要だと思います。例えば今後、実現するために行政ができること、または行政に対するリクエスト、財政面を含めた全体に関するアドバイスや大学の行政、大学のマネジメントレベルに対するリクエスト、図書館のあり方に関するオプションなどが含まれると思います。大学が自分たちの人材、予算の中で何ができるかということを具体化するアクションプランを作成するときに大学図書館のマネジメントに対して、役立つようなものが必要になってくるのではないでしょうか。以上の様な2本立ての位置付けだと、大変活用性があるのではないかと感じています。

【有川主査】

  このまとめは、かなり役に立つと思います。また、毎年の統計などのデータを使うと、かなりのことができるのではないでしょうか。このまとめは、それぞれの大学において、これから自分の大学図書館をどうしていくべきかを整理してアクションプランを作っていくための一つの指針にはなっていると思います。
  踏み込み方については、大学といっても本当に多種多様ありますので、全部を対象にすると、かえって主張がはっきりしなくなることもあると感じています。
  また、社会の変化に関しては、多様性があると言いましたが、皆さんが一様に感じていることは、学生の確保であると思っています。学生が学ぶ環境の整備ということに関して、図書館の環境整備は、必ずしも立派とは言えないかもしれませんが、すべての大学において従来に比べるとかなり良くなりつつあると言ってもいいのではないかと思っております。その辺を押さえて、大学の取り組んでいる戦略に従って、電子ジャーナルやネットワークの整備なども含めて取り組んでいくのではないかという気がしております。
  本日の議論と次回にかけて、少し戦略的なことなども描き出すことができるのではないかと思います。

【土屋委員】

  大学評価・学位授与機構や大学基準協会の機関別認証評価の際の基準では、大学図書館は基本的に「施設」という位置付けになっています。したがって、学生サービスや研究は、認証評価でもあまり扱いませんが、カテゴリーとしては運動場の次に図書館が来るような位置付けになっています。つまり、蔵書数と閲覧席数などを中心にチェックします。我々がここで議論してきたテーマは、サービスや機能など、大学に対する役割や位置付けであると思うので、その認識が変わらないと、日本の高等教育全体を考える枠組みの中での図書館の位置付けが、施設のままでは建物中心の話にしかならない。前提となる評価の部分で、大学の評価を良くするために図書館が頑張っていても、所詮、施設の評価ということになるのでは非常に良くない気がするので、その辺をうまく盛り込めたらと思います。

【有川主査】

  現地調査を受けたりしていますが、なかなかそう見ていただけないようにも感じています。ただし、時には、学生がどのような図書館環境で勉強しているかということなどについて意見をおっしゃる方もいらっしゃいます。多少は変わってきたのかもしれませんが、あくまでも施設や蔵書数、空間や閲覧室に机が幾つあるかなどになりがちだと思います。これから大学図書館が担う役割は非常に多くなってきて、大学に期待されている諸活動の中枢になってきており、評価機関にもしっかり理解していただくようなことをしなければいけないと思います。まとめがきちんと出されましたら、それをもって評価機関に説明することもできるのではないかと思います。

【加藤委員】

  私は、学位授与機構や大学基準協会の法科大学院の認証評価の基準委員会の委員も勤めています。その設置基準も含めて基準の策定などに関わった過程で、大学の施設の部分に関しては、図書館が何平米あって、どの程度のスペースがあるか、閲覧席数がどの程度かというような、特に形式的な数字の面だけが捉えられたということは確かにありました。しかしながら、大事なことは、例えば開館時間がどの程度になっているか。特にロースクールのライブラリは、開館時間はどうなっているか、基本書はもとより判例集がどこまで備えられているかという実質的なところまでチェックがなされています。これは専門図書館としての意味があるので、そこまでできると思いますが、しかしながら、図書館の形式や規模の問題もさることながら、サービスの内容についてまで、将来的な認証評価の基準の一つとしての意味付けをすることはある程度重要な部分であると思います。それは私がロースクールの認証評価の基準を策定している過程で、随分重要な意味を持つという感じを持っておりました。

【羽入委員】

  非常に積極的な取組みをしている大学では、教育に関する評価において、図書館の取組みをあえて書くことが、大学によっては可能かと思いますが、この中では、評価に対して図書館がどういう姿勢で臨む可能性があるかを、どこかに書き加えるというのは有効なことではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【土屋委員】

  大学の評価を上げるために、図書館の評価がプラスの特典にならなければいけないという枠組みができれば、それはそれで大学の見方は変わるだろうとは思います。

【羽入委員】

  まとめでは教育や研究に図書館が深く関与すると書いているので、まず、大学の執行部側に、図書館がこういう機能を持ち得るということを認識してもらい、その次に、それを大学として評価の際に強調する道具としておくことができれば良いような気がします。

【有川主査】

  そういう意味では道具にもなるのではないかと思います。こうすべきである、重要であるというまとめ方になっています。そのことをしっかり意識して取り組めば、成果が上がったものに関しては、自分たちの評価の中でもそれを当然書きます。

【上島委員】

  まとめには、大学のサービス的な位置付け、人材育成を含めた方向性を書いていますが、実際に評価を盛り込むとなると、蔵書数や閲覧席数などが現状の中で、まとめに書き込む内容、認証評価での対象とするべき事柄について、もう少し議論が必要なのではないかと思っていますが、その辺はいかがでしょうか。

【土屋委員】

  まとめでこういう取り組みは可能だということが書いてあるので、その中で、うまく書ければそれにプライオリティーや大学の教育研究にとって図書館の機能に必須なものは何かがきちんと明確になれば、当然、認証評価だけではなく、法人評価も含めて、図書館はきちんとしたこういう機能を持っているかどうかというのは、チェックポイントとして入り得ると思います。そこで取り上げられれば、当然、大学としては実施せざるを得ないというストーリーは考えられるのではないかと思うので、それに関して素材としてはもう随分出ているという気がします。

【有川主査】

  今、素材という言葉を使っていただきましたが、そうした意味で、この時点でも素材は十分に出ているという気がします。それについてさらにもう少し軸や属性などを設定していくことも考えられますが、それはかなり詳しいものになるだろうと思うので、そこまでは必要ないかもしれません。特に、冒頭から申し上げていますが、大きな動きがある中ですので、新しく図書館に求められている機能、果たさなければいけない役割が変わってきているということを広く認識していただく必要があると思います。また、例えば大学基準協会による大学図書館基準の改定を再度行うことを検討する時期でもあるのではないかと感じていますが、そうしたことをしていただくための契機にもなるのではないのかという気もします。

【上島委員】

  具体的な評価指標を入れることは難しいので、すぐには無理かもしれないとわかっているつもりですが、これが初めの位置付けとして、ビジョンまたは基本大綱のような位置付けで、それぞれのアクションプランとして、それぞれの大学でのシナリオとして実行するときのビジョンになると考えたとき、評価基準の柔軟性を入れることも可能と思った次第です。しかしながら、主査がおっしゃったようにかなり大きな話になるかと思いますので、この辺りはご判断かと思います。

【土屋委員】

  要するに評価関連機関は、大学についての評価において大学図書館のこういう変化を考慮すべきであると一言書けばよろしいのではないかと思います。
  他に気になった点として、今の図書館の実際の仕事の中で果たしている国立情報学研究所のNACSIS-CATの役割は非常に大きいことと、それだけではなく国立情報学研究所を、日本の大学図書館は一貫して頼ってきたことがあるので、その辺りについてはあまり議論してこなかったのですが、少し記述が薄いという印象を持ちました。実際に、既に図書館関係者と国立情報学研究所の間で具体的な作業はされていると思いますが、そういう方向性をバックアップする意味でも、どう考えるか少し明確にしたほうがいいのではないでしょうか。特にネットワーク関係の議論とのバランスを考えますと、ネットワーク関係の場合にはほとんどSINETの議論になってしまいますが、金額は全然違うかもしれませんが、それに匹敵するだけの重要性はあるので、その部分を含めていただきたいという印象を持ちました。

【有川主査】

  認証評価機関がこのような動きをきちんと知っておくべきだというようなことは、追記することにしましょう。
  NIIは、3つの意味で非常に大事だと思っています。ネットワーク、目録データ、機関リポジトリに関する活動はこれからもNIIに中心になっていただいた方がいいので、活動がよりスムーズに行くように、または、次のステージに入れるようにという意味も込めて、そのことを少し記述することにしてはいかがでしょうか。
  かなり全体的な議論がなされていると思っていますが、細かなことを少し述べますと、例えば5ページの機関リポジトリについて、機関リポジトリの非常に大事な点として、いわゆるテクニカルレポートレベルで載せられるというような流通の迅速性という面がもう少し強調されてもいいのではないかという気がします。
  また、9ページの「国からの直接の助成金に頼ることができない公立大学」という記載については、国立大学は国、公立大学は自治体が設置主体ですので、少し表現を変えたほうがいい気がします。

【土屋委員】

  「大学による個体差」も何となく違和感があって、一般的に書いていいのか疑問です。

【有川主査】

  「直接の助成金に頼ることができない公立大学」という書き方では、公立大学も国から助成をすべきだという感じになります。また、競争的なGPは国公私問わないので、ここはあえて書かないほうがいいのかもしれません。
  10ページの「大学図書館が上記の諸課題にイニシアチブを」という表現ですが、「図書館が」というのを「図書館長が」ということにした方が、図書館長も意識を持ってきちんとしっかり仕事をしていただけるのではないかという気もします。

【土屋委員】

  これまで二、三回の報告書作成に携わりましたが、図書館長は頑張れとは結構書いてあるのですが、結局、大学の意思決定として図書館に対してしかるべき配分をすべきであって、図書館長が頑張って持ってこいというのは、大変な気がします。

【加藤委員】

  このニュアンスは、大学の予算が全体的に絞り込まれていて、図書館としても基本的には従前のような十分な予算を持っていないので、所要の予算を効率的にきちんと執行しないといけない。そのためには、例えば、電子ジャーナルと紙媒体の両方を購入しているものを整理するなどの効率的な執行を、きちんと図書館としても考えるべきだという趣旨です。

【土屋委員】

  「図書館として」と言える大学は、多分、国立でも全部ではないと思います。私立大学で、例えば実質的にほとんどの業務を外部委託しているようなところでは、館長がいないような状態になってしまっています。そこで経営的な判断からの予算の執行は、図書館の内部的な判断よりも大学としてという話が多くなっているので、いつも苦しいのです。「図書館が」と言われても、ほとんどの図書館は大学がほとんど決めているので、しかも意思決定できるような人がいないという状況をどう酌み取るかというところが結構大事ではないでしょうか。つまり、今回、国立・公立・私立と書き分けているのは、最終的にこれがいいのかどうかまだよくわからないのですが、私立の場合でも、規模の違いやその他目的の多様性はあると思うので、そのようなものをどの程度組み込めるかということは結構重要だと思います。

【加藤委員】

  いずれにしても私立大学では、限られた財政の中で、中小のいろいろな大学を含めて、それなりの苦労、努力はしています。大学の絞り込みに対して、多額の予算を図書館だけに配分しろとはなかなか言いにくいというのは、どの大学でも同じだろうと思います。したがって、図書館自体も施策の中に効率的な執行という課題を本来的には背負わされています。それをどう実現するかは、図書館あるいは図書館長自身がイニシアチブをどのようにとるかの問題ではないだろうかと考えます。

【植松委員】

  国立大学においても、法人化後は経費を大学内で競争して取り合うということですので、図書館長がその部分に力を発揮するというのは必須の仕事かと思います。

【有川主査】

  12ページで、「市場化テスト」については、当然触れておかなければいけないのですが、ただ「指摘されているところである」と言っているだけですので、これに対して何か対応やコメントを考えてもいいのではないかと思います。その前のページに外部委託等に関しての統計が示されており、全国においてこうした状況になっているという言い方ができると思います。このデータでは、基本的には外部委託について、国公私の間で有意な差がなく、また、相当数が既に実施していますので、いずれにしても「指摘されている」ということに対してどうかということを少し書いた方がいいと思いました。

【土屋委員】

  11ページの数字の並べ方では、専任職員と非常勤の割合と外部委託が、どういう関係になっているかがよくわからないと思います。全部専任職員から、一部非常勤職員になって、業務委託になるというのが、多分わかりやすいストーリーだと思いますが、そうであれば、順番が逆なような感じもしますし、例えば臨時職員という形で直接雇用するとオーバーヘッドが出てくるので、外部委託しているという言い方もありますし、外部委託すればその分のトータルの金額は結局、受けた会社の中でオーバーヘッドがとられているだけという見方もあるし、その辺のところの整理をしなければいけないのではないでしょうか。それは今後お願いしたいと思います。また、国立176館について、国立は90弱程の大学なので、普通の人が読んでもわかるように整理しておかないといけない気がしました。
  また、市場化テストに関して、「図書館運営も民間委託すべき業務を切り分けて民間委託すべき」という指摘ですが、今回の市場化テストというのは、単に図書館運営という観点もあったとは思いますが、国立大学の事務の外部委託というのが多分大きなターゲットになっていて、この場合は国立の機関の運営を民間委託すべきという流れだと思うので、図書館業務を民間委託すべきというようなまとめになってしまうと、何かずれてしまうので、表現を工夫する必要があると思います。

【有川主査】

  そうでもありますが、これは図書館が対象になっているので、図書館に関することに対してコメントや対応をしておくということだと思います。
  13ページの「求められる専門的知識の有無」については、「有無」と言ってしまうと、0か1のような印象を受けますので、「程度」でいいのではないかと思います。
  15ページの「パスファインダー作成」については、それに限ることではないと思いますので、「等」を付け加えた方がいいと思います。
  16ページの「図書館職員の養成には学部レベル」については、この順番でよろしいのでしょうか。
  17ページの「養成」については、自分の大学に社会人や修士、ドクターとして入学して研修することも十分考えられます。他の職種では難しいと思いますが、図書館は、昼間学校でも夜間開館をほとんどしていますので、図書館職員に関してはそれが可能になると思います。したがって、少し踏み込んで、そのようなことを、どこかで触れていただいてもいいのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

【土屋委員】

  非常に頻繁にサブジェクト・ライブラリアンという言葉が出てきていて、幾つかの点で強調し過ぎではないかという気がします。アメリカの図書館のコンテクストは、サブジェクトごとの独立性のある図書館員は減ってきている実態と聞きますので、それをあえて今このコンテクストの中で、名称として表に出すのはいかがでしょうか。
  また、サブジェクト・ライブラリアンの重要性というのは、どの程度のリアリティーがあるのかという問題があって、非常に数少ない大学では可能かもしれませんが、ほとんどの大学でサブジェクト・ライブラリアンに仕事をしていただく余裕はないという直感的な抵抗感があると思うので、それでもあえてこれほど強調するのかという気がします。特に全面業務委託の私立大学でサブジェクト・ライブラリアンと言われても、絵空事にしかすぎないと思いますので、もう少し表現を変えるか、トーンを落としてはいかがかということです。

【有川主査】

  確かに16ページはかなり目立ちますし、大事なこととして、アメリカの動向は先生がおっしゃるとおりだと思います。日本ではあまり顕在化したり機能してきませんでしたが、むしろこれから大事になってくるのではないかという見識が入っているのではないかと感じています。この議論をする少し前までは、図書館学はそんなに要らないのではないかという状況があったと思いますが、よくよく考えてみますと、ここは議論するとかなり時間がかかってしまいますが、大学を大学たらしめるためには、もう少し図書館が頑張っておかなければいけなかったのではないかといった反省もあります。一方で、少なくとも国立では10数年前まで、特に人社系では、助手がいわゆるサブジェクト・ライブラリアンのような役割をしっかり果たしてきました。それが定員削減や重点化などで削減せざるを得なくなり、助手などがいなくなっています。もともとそうしたところに頼り切っていた面もあって、図書館にそのような種類の人材がほとんどいないような状況があります。おそらく自分の図書館に結構重要なものがあるが、それについて誰も知っている人がいなくなるという心配さえしなければいけない状況にあるのではないかという気がします。外国の動向はそうかもしれませんが、そうしたことをこの時期あえて喚起することによって、人的なことも含めて、もう少し図書館の体制を強化することにつながっていくのではないでしょうか。
  そのような意味では、かなりの戦略的な思いがあると思います。教員と事務職員は違った存在という言い方をしてあると思いますが、これはどちらかを減らすときに引っ張られて減ってしまっている大学が多いと思います。教育や研究に関して、単に支援だけではなく、その後にも関係するような機能が、かなりの大学図書館に求められているのではないか。おそらくそのような思いが、書かれた人たちの背景にあったのではないかと思います。

【土屋委員】

  その思いは共有するところですが、最初に申しましたリアリティーの問題はあると思います。確かにインパクトを出す必要はあると思うのですが、最終的な人の配置は大学全体の中で決まってくるので、大学が認識を持たないと、図書館の側から人材を揃えると言ってみても始まらないので、図書館の中での人の育成や人のやりくりということではなく、大学としての位置付けをすべきだというような書き方のほうが、戦略性が高いという気がしますが、いかがでしょうか。

【有川主査】

  その辺は踏み込んで少し書いたほうがいいと思いますが、図書館長がこういうものを持ってこられたら、かなり考えざるを得ないというような効果はあると思います。

【羽入委員】

  図書館は新しい専門家が育成される場でもあるということを、図書館長の人たちにも理解していただき、大学にも理解していただく、という意味でのサブジェクト・ライブラリアンということが明確になっていれば、それはすごく重要なことだと思います。

【山口委員】

  サブジェクト・ライブラリアンが目立っているのは、むしろ他のライブラリ・アーキテクトや、リエゾン・ライブラリアンなどに関する表記が手薄だといえます。例えば、16ページのリエゾン・ライブラリアンに関しては、これからますます、教育課程にライブラリアンが入っていくことが重要であるという議論をした記憶があります。ここでは「教員や大学図書館以外の部署との連絡と調整を行う仕事であるため、大学で養成することは困難であり、現場で養成することが望ましい」と、消極的な表現になっているので、例えばこの後に「新しい取り組みに従事している事例も多くの大学であるため、幾つかの事例をもとに情報交換を行い、お互いに支援をしていくことが重要である」など、リサーチ・ライブラリアンやアーキテクトに関しても情報を増やしていくと、サブジェクト・ライブラリアンだけが目立つという状況は避けられると考えます。

【有川主査】

  16ページは突き放してしまったような感じですので、「大学と連携して現場で養成することが望ましい」というようにすればいいと思います。

【土屋委員】

  これだけ強調されると、1係を5人程度の大きな大学図書館ではどうすればいいのか。サブジェクト・ライブラリアンが大学院で養成されても、その人のために1人を割くのは非常に難しい。しかし、それだけのバックグラウンドを持った人が来ても、それだけの仕事はできないという状況が見えます。その場合、一体、大学は、職員のあり方についてどのような考え方を持てばいいのかということについて、必ずしも十分触れていないような気がするので、その辺りを少し手当てしないといけない気がします。

【有川主査】

  従来、図書館が、例えば情報リテラシー教育のように教育という面で先生のお手伝いをする、研究でもレファレンスサービスなどでお手伝いするということがありました。逆に、例えば文学部の歴史の先生がある時期かなり組織的に、サブジェクト・ライブラリアンを兼ねていたという構造が出てくるのではないでしょうか。九州大学ではそういう提案をすると、少なくとも人文社会系の人は、図書館との関わりというのを非常に喜ばれます。したがって、今のようなことを九州大学で進めると、それほど抵抗なく部局からも受け入れられるのではないかと思います。問題は理系をどうするかということがありますが、それに対してもある程度のことは考えられていくのではないかと思っています。
  したがって、図書館の仕事は図書館の中にいる人たちだけが行うのではなく、教員とも相互に関係する新しい方法があるのではないかということを、私は頭の中で描きながら読ませていただいています。

【米澤委員】

  紫本では「学術情報基盤の今後のあり方(報告)」というタイトルで、非常によくわかりますが、このまとめのタイトル「大学図書館の整備」というのはあまりよくないタイトルです。その辺をどうお考えなのでしょうか。
  私の所属する東大の情報基盤センターでは、図書館情報部門やスパコン、ネットワーク、情報教育について、それぞれ教員、設備を大学の中にサービスしていますが、情報教育も、図書館の話と非常に密接に関係します。特に学生が入学してきたとき、図書館、本、学術ドキュメントの使い方の中に、当然いわゆるコンピューター的なウェブを使ってどうするというようなことも必須で、それを図書館と完全に切り離して話をするのは不自然ではないかと思います。また、ライブラリアンについても、むしろそういうことがかなりできて、かつ専門のことを知っている、あるいは専門のことをよく知っている方が図書のレファレンスのことをといったようなコンテクストをまとめの最初のほうに書いていただいて、アトラクティブなタイトルをつけていただくと、読まれるのではないかと思います。
  まとめを見させていただくと、図書館がすごく変わっていく、あるいは新しいところに強烈に変貌していくというイメージは、縁取りの仕方やプロファイルのつけ方だとは思いますが、平文で出ている文章の集まりを見ると、そういう印象を受けません。

【有川主査】

  かなり踏み込んだことが書いてあるので、タイトルについては、もう少し工夫してもいいのではないでしょうか。平成21年7月の審議のまとめでは「大学図書館の整備及び学術情報流通のあり方について」というタイトルになっていますが、そのようなものに倣うということもあると思います。
  最初のほうで、この紫本からここに至るまでの流れ、これまでに出してきた審議のまとめ的な報告等についても触れておいて、今回は特に大学図書館について提言するというような文章を最初に置いておいてはどうでしょうか。
  大きく変わっていくという印象がこれだけではないということですが、深く読むと、すごく変わった、驚くようなことが書いてあると思います。

【米澤委員】

  セクションのタイトルとか、章の名前とか、そういう縁取りの部分でということです。

【有川主査】

  最初の1枚目や目次などを見て、大体イメージを固めてから、本文に入っていきますので、タイトル、チャプター、セクション、キャプションをしっかり工夫するというのは大事かもしれません。

【土屋委員】

  情報教育に関して、情報リテラシー教育という単語をそろそろ捨てないといけないのではないでしょうか。この言葉を使う限りは「またあれか」という話にしかなりません。もう少し具体的な教育内容を表すようなものが必要で、それを考えていただけたらと思います。

【倉田委員】

  まとめの形式、位置付けについて、確認させていただきたいのですが、今回のまとめは、平成21年7月の審議のまとめにある電子ジャーナル関係の話は、最初にまとめ的に入れるだけで、それを合体させる必要はないと考えてよろしいでしょうか。
  また、最後に学会等の学術情報に関しても、前回のまとめでは後ろにありましたが、議論が時間的に無理だったこともあると思いますが、大学図書館の部分だけを表に出したようなまとめという形に最終的にはなると考えてよろしいでしょうか。

【有川主査】

  それでいいと思います。あまり被らないほうがいいですし、非常に進展著しい面もありますので、おそらく、次には、前に議論していたことを再度検討しなければいけないと思います。したがって、今回は特に大学図書館に限定してよろしいのではないかと思います。ただし、先ほどの米澤先生のご指摘もありますので、我々の作業部会としてこれまでに議論してきたことを、最初に半ページか1ページを使って整理をして、本文に入っていくと全体の位置付けがわかると思います。また、今後のスケジュール、今後検討するようなことなどがわかっているのであれば、これからこうしたことを議論するというようなことまで書いておけば、いいのではないかと思います。
  大体議論ができたと思っております。全体についても、個別のことについても、非常にいい議論ができたと感じております。 

【岩本情報課長】

  大学図書館の姿が大きく変わるという姿を見せるということが一つ共通認識としてご議論の中であるのであれば、まとめをつくるとどうしても整然とした文章になってしまいますが、ある程度コンセプトを1、2枚紙で、もっと世の中にお見せする資料をつくる中で、もう少しその辺が打ち出せたらと思います。それはもちろんよく先生方とご相談しなければいけないと思っております。

 

(2) 事務局より参考資料について説明が行われた。その後、次回の開催は平成22年10月29日(金曜日)10時00分から12時00分を予定している旨案内があり、本日の作業部会を終了した。

 

――了――

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

井上、首東、新妻
電話番号:03-6734-4080
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(研究振興局情報課学術基盤整備室)