研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第27回) 議事録

1.日時

平成21年10月30日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、上島委員、植松委員、倉田委員、坂内委員、土屋委員、羽入委員

学術調査官

 阿部学術調査官、阪口学術調査官

事務局

 中岡科学技術・学術政策局政策課長、舟橋情報課長、飯澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

(1)事務局より資料1「大学図書館の整備及び学術情報流通の在り方について(審議のまとめ)」及び机上資料「次期学術情報ネットワークの整備について(中間とりまとめ)」について説明があり、以下のとおり質疑等が行われた。

【土屋委員】

   次期学術情報ネットワーク整備の方向性はよくわかるが、現行のSINETのイメージではノード校があるが、SINET4では、データセンターを活用するという話になっていると思います。つまり、エッジノードがノード校からデータセンターに移るという話が、費用負担の話とも関係してくると思います。物理的なイメージと概念的なものの説明が、今のままだと十分各大学に伝わっているかがやや不安なのですが、今後ご検討されるということで理解してほしいということでしょうか。

【飯澤学術基盤整備室長】

   次期学術情報ネットワークの構造につきましては、先生方のお手元に配付している中間とりまとめ(31ページ)に、SINET4構築の基本方針と概念図が示してありますが、各ノード校からデータセンターへエッジノードを移行することになります。それぞれのノードの事情があるので、次期の期間において順次ノード校からデータセンターに移行していくことになっており、完全にデータセンターにエッジノードが移行するのはSINET4が完成する平成27年度になると聞いています。それまでの間は、基本的に現ノード校にエッジノードが置かれていますので、ノード校の扱いは変わらない。SINET4が完成した後、ノード校をどう取り扱うかについては引き続き、検討会等において検討を進めていくと聞いています。

【土屋委員】

   結局、今はノード校と非ノード校の間の費用負担でバランスが悪いのはよくわかるのですが、ノード校にいると、今のままでいてほしいという感もあるので、個人的には早目にはっきりその問題は見えるようにしておいていただいたほうが大学としても対応がしやすいのではないかと思うので、お願いしたいと思います。

【阿部学術調査官】

   現在、ノード校は各大学に置かせていただいていますが、各大学で例えば年1回の電源の点検をします。そうすると、そのエッジノードにつながっている関係機関が、その間、通信ができなくなってしまう。そのような不便があるので、電源等がきちんと安定的に供給できるようなデータセンターに移行すると非常に安定した運用ができる。そのような意味も含めて、エッジノードを大学に置かせていただいているものをSINET4ではデータセンターに移すという位置付けもあります。

【有川主査】

   それが大きな変化ということであれば、今おっしゃったようなことを明確に伝える必要があるでしょう。実際には現場では年に1回など、点検のときに不通になりますので、実際に困っていますし、それ以外の利点も生じるのではないかと思います。

(2)事務局より資料2-1「『学術情報基盤の今後の在り方について(報告)』(平成18年3月23日、学術情報基盤作業部会報告)の指摘事項に関する現状等」及び資料2-2「論点例」について説明が行われ、以下の意見交換が行われた。

【有川主査】

   18年3月の報告から3年半程経過しています。その間に我々は、昨年12月にコンピューターとネットワーク関係のこと、今年の7月に電子ジャーナルの整備と学術情報流通のことを報告させていただきました。18年の時点では、コンピューターとネットワーク、大学図書館、学術情報発信という3つの柱を立てて報告をさせていただきましたが、そのうちの2番目と3番目を中心にしまして、その後の展開や、国立大学図書館協会での検討の状況なども含めてまとめていただき、論点の例として整理をしていただきました。
   今の説明を踏まえまして、ご質問も含めたうえで、重点的に検討すべき課題等につきまして意見交換をしていきたいと思います。
   資料2-2が、資料2-1で説明された論点例で示されたものを全部まとめていただいたということですので、この資料2-2などをご覧いただきながら議論していけば良いと思います。まず、今の説明に関しまして直接的な質問がございましたら、お願いいたします。

【羽入委員】

   非常に細かい点ですが、資料11ページの機関リポジトリを構築する予定がないのは全体の中で何%ぐらいかというのはご説明いただいたのでしょうか。

【膝舘情報研究推進専門官】

   本日お配りしております平成20年度学術情報基盤実態調査結果報告という冊子がありますが、99ページの一番右に、構築する予定がないと回答してきた大学ですが、複数回答ですので、一概には言えませんが、この調査は750程度の大学が対象になっていますが、そのうち運営資金の確保が困難と回答した大学が239大学あるということで、大体3分の1程度はまだ予定がないと回答してきたと理解しております。

【上島委員】

   図書館の副館長を置いているという例がありますが、この方の役割というのは、学術情報の積極的な発信であると書かれていたと思いますが、他にどのような役割をされているのでしょうか。

【有川主査】

   資料で紹介していただいていますが、九州大学も副館長を置いております。法人化の少し前から副学長が館長を兼ねていましたが、法人の理事・副学長は、他の用事も持っていますので、図書館の業務がその分おろそかにならざるを得ないだろうということもあり、導入しました。特に任務をということではなくて、全般を見てくれていると思います。また、現在は医学系の方に副館長をお願いし、その前は情報系、そしてその前は文系の人など、分野を補うようなことを考えています。

【植松委員】

   筑波大学でも副館長を置いており、1人は教員、1人は事務職員で、後者は、昔で言う図書館部長のポストです。教員の副館長は、九州大学と同じで、別にこれという任務はありませんが、研究開発室の室長をお願いしています。他にも国立大学の中で事務職員を副館長という名前で置く例は出てきています。

【上島委員】

   例えば、いわゆる情報と図書館のあり方のかけ橋をするような役割という位置づけでもあると考えてよろしいですか。

【有川主査】

   そのようには必ずしも考えていません。九州大学では、情報基盤研究開発センターがあり、事務組織として情報システム部があり、さらに全体をまとめる情報統括本部があるので、ICT系はきちんと対応してくれていて、連携は非常にうまくいっています。

【土屋委員】

   論点例のまとめ方は、18年の報告に沿っていますが、7月の報告との関係はどう考えたら良いのでしょうか。つまり、ある意味で、この中には7月までの議論でかなり論じた部分もあって、それが論点例として残っているのは良いのですが、必ずしも十分反映していないという印象を持つ部分が若干あります。あるいは18年の段階では十分に表に出てきていないが、春、夏の段階の議論では出てきているところをどう継承するのかについては、どのように理解すれば良いか、伺っておきたいと思います。

【飯澤学術基盤整備室長】

   大きな項目立てとしては、18年3月の事項に沿った形でまとめさせていただきましたが、7月までに電子ジャーナルの整備については中心的にご議論いただいたということ。さらに、オープンアクセスや機関リポジトリについても十分ご議論いただきましたので、今後どうあるべきかという言い方をしている部分はありますが、ある程度結論的なことはいただいていると思っています。そのような意味で、リポジトリは今後の検討課題も明確になっておりましたので、今回もお示しをさせていただきました。これはあくまでも例ということで、事務方で検討の上、整理をさせていただいたものですので、当然、ここでのご議論を踏まえれば図書館に求められる役割や機能も変わってきていると思いますので、それを踏まえて論点も整理しつつ、今後、図書館の整備と情報流通のご議論を進めるに当たって必要な論点の整理もこの場でしていただければ有難いと思っております。

【有川主査】

   今、ご指摘のようなこともありますが、資料2-2の上から順番に議論していきながら、そして漏れている点なども浮き彫りにするというようなことでいきましょうか。
   まず、大学図書館の戦略的な位置付けということで、論点例としては4つ挙げていただいておりますが、18年の報告からかなり変わってきたところもあると思います。1つは、先ほど上島委員がおっしゃいましたIT関係のことは、もう少し前から言われていたことでした。それから、お茶の水女子大学やその他にもありますが、少し昔では、大学図書館で飲食したり、話をしたりするというのは何事かという状況だったと思いますが、例えばラーニング・コモンズの中に位置付ける、あるいは滞在型といったようなことは、ごく最近明確に変わってきたという気がしています。そのような意味では、学習の場を提供することに関して、国公私を問わず関心を示していることなどは新しいことだと思います。また、機関リポジトリは、すべてではありませんが、かなり定着してきていて、、これは全く新しい仕事ですが図書館がになっており、図書館向きの非常に大事な仕事だということが顕在化してきたことにもなります。
   機関リポジトリは主に研究成果の発信・流通に関することですが、教育に関しても、例えば教材の整備など、いわゆる教育にも図書館が関わってくる。それから、本来、普通の図書館と大学図書館とは違うのではないかという認識も出てくるなど、大きく変わってきているのではないかということを私自身も感じています。
   また、事務組織についても、特に国立大学においては、16年の法人化以降、人員削減など厳しい状況にあるので、IT関連の部門と一緒になったり、研究協力関係の中に位置付けられたりなど、変わってきています。
   国立大学時代では、国立大学図書館協議会で館長や事務部長が集まり会議を開催しますが、その中で事務部長がしっかり問題、課題を共有して深い議論をしていたと思いますが、そのようなことが少し様変わりしてきています。要するに、図書館を担当している部長の会議なのですが、これまで図書館だけを所掌してきた部長だけではなく、図書館に関しては部長になって初めて意識したというような人たちも一緒の中で、図書館の重要性を考えるという状況になっています。これまでの国立大学時代の状況とはかなり変わってきてしまっています。
   そのような中で、大学図書館の戦略的な位置付けについて、少しご意見をいただければと思います。

【土屋委員】

   16年度、17年度の議論で18年にまとめられた時代から5年程度が経過した中で、国立大学における法人化以降の対応が進んで、図書館自体の位置付けが、いわば5年前では自明な位置付けを持っていた部分がありましたが、もはやその自明性は失われたと考えざるを得ないのではないかと思われます。それは単に法人化だけではなく、学術情報流通の電子化の影響も非常に強いのではないか。特に研究の資源である雑誌や研究用の資料に関して、ほとんどの資料、特に科学技術系の学術資料、雑誌論文などがオンラインにより、インターネットや学内LANを経由して、研究室あるいは先生たちの自宅へ直接届くという時代になっている。よって、資料を収集し、整理し、管理し、提供するという大学図書館の本来的な機能とされていたものは、もはやないと言わざるを得ないのではないかと思います。
   極論ですが、大学図書館からは研究資料収集機能はもはや不要であるという議論があっても不思議ではない。もちろん、紙などが残りますが、方向性としてはそのようにならざるを得ない。そうすると、研究支援的な機能、研究者が研究するときには支援的機能はどうしても沢山必要になりますが、その中で、今まで図書館がしてきた仕事のどういうところがどう変わっていったのかをきちんと追跡しておくことが必要ではないかと思われます。
   その変化自体については、もうすべての人が気づいていることだと思うので、研究支援機能はそもそもいささかでも残っているのかということを問題提起させていただきたい。機関リポジトリの位置付けも、その観点から考えなければならないと申し上げておきたいと思います。
   また、先程いただいた資料2-1の中の常勤職員と非常勤職員の比率が10年間で逆転したというのは、このように比較したことがなかったので、なかなか印象的だった感があります。ですから、それをどう見るかということですが、要するに、図書館業務のかなりの部分が非常勤でもできるようになったという見方も十分できる。つまり、これをゆゆしき事態と憂うだけではなく、従来行ってきた図書館業務の中のある部分が非常に定型化する、あるいは機械化が可能になって、その結果、非常勤の職員の能力を別に軽視するわけではないですが、常勤職員でなくてもできる仕事が増えてきたと理解できるのではないか。その場合に、常勤、非常勤という二分法が良いかは別にして、常勤職員がどのような仕事をするかということは、この18年の段階(16、17年段階)と事情が変化したと考えなければならないのではないでしょうか。
   先程、有川主査が指摘された、昔の国立大学図書館協議会の議論の中で、部長、課長が議論すると結構深まったが、最近そういう方向性がないという観察とも、ある意味で一致するのではないか。今のような状況の変化と技術の進歩とが非常に速いので、かつて持っていた図書館に関する知識と見識が、ある意味ではもはや役立たないという時代も来ていると言えるのではないか。そうすると、現在仕事をされている若い方々、あるいは若い意識を持つ方々の処遇や、どういう形で仕事をしていただくかということについて、特に、機関リポジトリなどの場合は、教員と直接つき合うという事態があるので、そのときに、今までのような事務職員という位置付けが効果的に図書館の機能を発揮させるために十分であるかということについて疑問が残る気がするので、その点も議論していただきたいと思います。

【有川主査】

   職員に関しては、専任と臨時に分けてありますが、今、定年後の再雇用も含めて、働き方が極めて多様化してきました。もはや専任・臨時その他外注の人にこだわらなくても良いというような中で考えても良い時代になっているという感もします。現在は、教員も実に様々な立場の人がいます。大体、定員の倍程度の人がいろいろな形で大学に関わっているという状況もあるようです。

【植松委員】

   大学図書館については、国立大学時代の研究教育学習支援という機能に、法人化と同時に、大学の社会貢献の一翼を担う組織としての位置付けや、機関リポジトリなど情報発信の窓口としての役割が加えられ、5つの機能を担うことになってきています。
   研究支援機能が国立大学時代、紙の冊子の時代にどの程度であったのかということをみれば、電子ジャーナル時代になったから今まで何かあった図書館の役割がなくなったというよりは、私は逆に考えています。つまり大学全体の電子ジャーナルの需要を把握するようになってきたことや、機関リポジトリの問題が大きなことになってきて、大学図書館の研究支援機能の大学全体における存在感、価値が高まったと私は考えています。今までは部局と出版社との学術雑誌の取次人に過ぎなかったが、電子ジャーナルをきちんとそろえて経費を全学から集めるとか全学共通経費化に切りかえるということをしてきましたので、大学図書館の研究支援における大きな役割が大学の中で認められてきていると思います。
   学習支援に関しては、法人化とは直接関係ありませんが、大学全体の教育が一方的に授業を受けるノートテイカーではなく、主体的な学習ができる学生を育てようというところになってきて、そのような学習の場としては、図書館が一番適しているという認識が学内で持たれてきたことから、ラーニング・コモンズの整備等に経費が投入されていると考えてよいのではと思います。研究、学習支援という機能の部分については、現在の方が昔よりも図書館の重要性が増しているということが言えます。
   伝統的なものとしては、教育支援機能が大学図書館はまだあまりできていないのではないか。授業に図書館員が参加している例もありますが、本当に成績を評価できているのかというような点でなかなか難しいので、教育支援にこれからどう取り組むかというのが課題ではないかと私は考えています。

【有川主査】

   図書館職員は、昔は主に本を見ていれば良かった。本を整理したりしていれば良かったのですが、電子ジャーナルなどで、資金の問題や、出版社等の対応など、相当外向きになり、随分変わってきました。
   また、学習の場として図書館の重要性というのは本当に広く定着してきたという気がしています。
   また、教育研究支援に関しては、これから新しい面が出てくる機関リポジトリのようなことだけではなく、もう少し本質的なことがあるのではないかと思っていまして、いまだかつてしっかり手をつけられていない部分があるのではないでしょうか。
   この間、法学部の先生と話をした時、自分の知っている外国のある先生は、昔、図書館の職員をしていたが現在は教授になっていると話していました。つまり、本をただ扱うだけではなく、その分野のある種の動向ぐらいまでわかってしまうようなレベルの人がいて、そのような者がいるということを前提にした研究支援と、そうでないものとの違いがあると思っており、日本においてはその辺の整理がなされていないのではないかと思います。したがって、これから、こうした状況は急に広がったりはしないと思いますが、考えておかなければいけないことなのではないのかという気が強くしています。教育についても同じような感覚があります。

【倉田委員】

   図書館における昔ながらの研究教育支援という機能が、特になくなったわけではない。ただし、今までは雑誌や本を所有するというところから管理が生じていたものが、インターネット等を通してのアクセスの提供に変わったということだと思います。筑波大学などここにいらっしゃる大学の先生方の場合にはそれを大学に強くアピールできていらっしゃるのかもしれないのですが、であるならば、大学全体の中で図書館の役割が一切明文化されていないところが6割を超えているというのは、逆に言えばいささか問題ではないのかと思いますし、私立大学においてはもっと差が出ているのではないかと思います。図書館は、研究や教育をしていくために一番重要な、基本となる資源、基盤を提供しているということがうまくアピールできているところもあれば、その戦略的な位置付けに失敗しているという面もあるのではないかということだと思います。したがって、どうすれば戦略的な位置付けを、それを認識していない大学当局に向かって、きっちりアピールできるのかということが大きな課題であるという気がしています。

【三宅主査代理】

   論点例を見て全体としての感想ですが、大学が独立していてその中に図書館があってそれは独立したもので、そこにフォーカスを当てたときにどのような問題があるかということが並んでいるという感じがします。例えばメディア学習センターというものがあり、そこで教材を作って学生の教育支援をしようということになると、当然、機関リポジトリで先生があげているものと、学生の教育に使われているメディアがどうつながっているのかなどを学生に見せたくなります。そうすると、例えば、図書館が運営する機関リポジトリとメディア学習センターとの連携や、図書館と学内のいろいろなところとの連携、学校間連携、また国の組織との連携などを今後の課題としてどうするかという話が中心になってくるかと思ったのですが、現在の書き方ですとそれらの話は全部行間に隠れていると思います。それを前面に出して議論していく必要があるのではないかという感想を持ちました。

【土屋委員】

   ここでは大学図書館について、そもそも要るのかという議論に戻るべきだということであれば、それは50%賛成、50%反対ですが、その辺が今の環境の変化というのはそういう問題までもう踏み込まざるを得ないのではないかと思います。

【有川主査】

   電子ジャーナルについては、前回の時点で取りまとめをし、報告をしましたが、そこに象徴的に表れていますように、電子ジャーナルは、アクセスできれば良いわけで、研究者から言うと、アクセスさえできれば自分の大学で契約していようが、なかろうが関係ないわけです。それにかかる経費の問題で現在のような状況になっていると思いますが、これをどうするかということは、前回、この作業部会でも議論したところでありまして、少し時間をかけて行わなければならないのだろうと思います。
   いずれにしても、本は所有でしたが、電子媒体ではアクセスということで、それに伴う図書館自体の位置付けも変わってくるということだと思います。
   図書館はなくても良いのではないかという議論をここでするかどうかということですが、それは時々、土屋委員から、そのような意見が出てきますので、それも意識しながら議論していけば良いのだろうと思いますが、一方では、先程から繰り返していますように、学習などで、明らかに図書館は大事な役割を果たしてきている面があります。九州大学は、新しいキャンパスを展開中ですが、過渡期のため図書館が少し狭いので、苦肉の策で、建物の1階にあるピロティーを柱だけにしておいて、途中でお金ができたらきちんとした部屋にするというような計画で進めています。ところが、それと同じようなものを屋上にも置くという仕掛けを最初していたら、学生が行くところがないので、慌ててそれを学生の学習の空間にしました。この空間の下で授業をしていますので、これは学生に人気がありまして、ある程度おしゃべりもできますので授業の前後などに大勢行くようで、本物の図書館よりもユーザーが多いという感じです。そのような状況などを見ていますと、おしゃべりするわけではなく、まじめなことができるような学生のたまり場所としての図書館の重要性というのは、昔は全然考えられていなかったのではないかと思うのです。そのような状況が明らかに出てきていますし、新しいこともいろいろ出てきていますので、図書館の重要性はどんどん増してきていると思っています。そのような現実と、図書館はなくてもいいという人もいるということを意識しながら議論していけば良いのかと思います。

【羽入委員】

   本当に無くても良いと思う人が学内にいる場合があると思います。ただし、意義があるとすれば何かということを十分に議論していくことによって、そのような人に対して何らかの根拠を示すことは必要ではないかと思うことと、大学の機能として、特に国立大学の場合には、社会貢献、社会に対して開くということが重要で、学内での図書館の役割と同時に、地域や社会に対してどのような機能を持っているのかということも検討しなければならないことだろうと思っています。
   また、どのような職員が図書館に所属するのか、それは図書館の機能を行使すれば良いのか、またはそうではなくて、図書館の中で人を育てるということが必要なのかということも考えるべきではないかと思っています。図書館で専門的な知識を持っている人が育つことが、学術研究そのものに対して新しい視点を開くということにもなるのではないかと考えますと、サービス機関としてだけではなく、その中に人材育成機能があるということも考えるべきではないかと思っています。

【倉田委員】

   図書館職員に関しては、その教育の一端を担っている者としては、いろいろじくじたる思いがあります。一つは、先程の専任と臨時という分け方の問題、幅広い働き方があるという点においては、実は専門性ということと働き方とが必ずしも今は一致しない状況が明確に出てきている。臨時職員が単純作業だけをしているという部分や、単純のアルバイトの部分が増えているという部分もあると思いますが、専門的な教育を受けた人間が逆に派遣でしか入れないということもあり、そのような点で、知識やスキルがあっても働き方などが合わない状況が出てきてしまっているということは大きな問題ではないかと思います。
   よって、図書館職員全員に高度な専門的な知識やスキルが必要だとは私は思わないし、今までもあまり思われてきたことはないかと思います。ただ、コアになる部分に関しては、ある程度専門的な教育を受けた人間が入って、図書館という場だけではなくて良いのですが、ある程度の長さの期間働くことができるような体制がどういう形で可能になるのかということが、難しい問題になっていると思います。

【土屋委員】

   その専門的ということが何を指しているかということが非常に問題だと思います。今おっしゃったように、図書館の現在の状況は、かつてのいわゆる図書館学的教育では対応できないことの方がほとんどになっているという状況がある。よって、専門性とは、場合によれば、先程有川主査がご指摘になったような、法学者と十分渡り合えるだけの法学的な知識を持っているというレベル、あるいは生命図書館とか生物学図書館であれば、医師と十分コラボレーションができる水準の専門知識を持っているという意味になるのだろう。つまり、図書館のことだけができる方というのは、これからの大学の図書館には不要であると言わざるを得ないのではないでしょうか。

【有川主査】

   倉田委員は、非常に専門性を持った人が専任で働いているかというとそうではなく、派遣やその他臨時であったりする場合が現実であると言われたと思いますが、国立大学が法人になってから、そのような人たちの中には、中途採用のしっかりした試験を経て、正規の職員になっている人もいます。工夫をすれば良いのだろうと思います。

【植松委員】

   倉田委員がおっしゃったように公共図書館などでは、公務員数の削減がありますので、かえって専門性の高い人のほうが派遣職員として働いているのが実態です。

【土屋委員】

   論点例のつくり方ですが、特に学術情報発信の今後のあり方と大幅に関係しますし、場合によれば人材の問題とも関係するのですが、本質的に、科学や学問というのはいわば人類普遍のものであるということがあるので、国際的な状況をどう考えるかについて議論しておかなければならないのではないでしょうか。その中で位置付けなければならないと思います。
   特に、自然科学系の方は、ほとんどが国際的なコミュニティーの中で仕事をされているので、その中で日本のインフラというのはどのような位置を持つのかという観点が必要になるでしょう。それは学会の雑誌出版や、学内あるいは研究所内における情報提供機能といったようなものも当然あるでしょう。ただ、例えば前回議論した電子ジャーナルの場合の外国出版社であるように、国の中だけで見ていると、そのようなことが全然捉えられない状況になっていて、かつ、鎖国して頑張ろうというのはもはや無理だという時代になっているので、十分考えなければならないでしょう。
   端的な例としては、先ほど論文のシェアの議論がありましたが、例えば、アメリカの大学で論文を書いている人たちの非常に多くが留学生なので、その方々は自国に戻ってから論文を書くということもあり得るというような、流動性は非常に高い状況になっている。単にアメリカは頑張っているというだけでは済まないので、日本の論文のシェアを上げたいとか、プレゼンテーションを高めたいと考えた場合には、一番手っ取り早いのは、優秀な留学生を連れてきた方が論文のシェアは上がるということになります。したがって、今いる日本人の学生や先生に頑張れと言うよりは、アメリカに行ってしまった留学生を連れてきた方が論文が出てくるかもしれないので、話が非常に複雑になっている。そのような事態を正確に分析する議論をした方がよろしいのではないかと思います。それがあって初めて、日本の学会の出す雑誌の位置付けや、例えば大学の中で外国の雑誌がどのように入ってくるかというようなこともかなり正確に事態が見えてくるのではないか、対応策がわかるのではないかと思いますので、その辺を論点として取り上げていただきたいと思います。

【有川主査】  

   18年の報告で、インパクトファクターについても言及されていたのですが、その後、評価のデータをつくるときにそれを書かされている状況があります。一方で、そういったものをしては駄目ということがあって、そういうことだとまずいと思います。

【土屋委員】

   それに関しても、18年度の報告以降の国際的な展開は結構あると思います。一つは、イギリスやオーストラリアにおける国による評価に関して、雑誌業績をどうするかという考え方が示されている。特にヨーロッパの場合、自国語で書かれた雑誌をどうカウントするかで、依然としてまだ議論は続いている。また、オーストラリアでは、特定の雑誌に論文を出せば業績として評価することとし、雑誌の一覧表を作っている。評価の問題との関わりはきちんと考えざるを得ないでしょう。

【有川主査】

   インパクトファクターのことはこちらから言ったことですので、フォローはしなければならないと思いますが、一方で、何年か前、インパクトファクターを指標とするのはまずいという記事がアメリカの数学界から出て、日本でもそれを翻訳したというのを少し前に見ました。18年の時点ではそう言っていたが、結構信用して良いということであれば、話は別だろうと思いますし、そこも議論しておかなければならないでしょう。

【倉田委員】

   それとあわせて、研究者の評価にそのままインパクトファクターを使うという形のものと、学術雑誌そのものの評価にインパクトファクターを使うという話は当然違います。資料で示されている科研費の計画調書が雑誌自体に関するものなら、インパクトファクターが良いということではないのですが、それが一つの指標であることは、ある意味では間違いがない話です。ただし、個々の研究者が書いた論文の評価を掲載された雑誌のインパクトファクターだけで測るのはいかがなものかということです。極論すれば、個々の論文の被引用数を今は調べられるので、それを示すこともありうるだろうと思いますし、国内のものに関しては、まだ今は途中ですが、今後、NIIのCiNii等が広まっていけば、日本独自の別の形での評価というのは当然考えられるのではないかと思います。

【土屋委員】

   国内雑誌のカウントをどうするかというのは難しいので、かつ、トムソン・ロイターズの数値を気にしてくださいと言われたときには、それだけで一つのパイが決まってしまう。つまり、彼らがインデックスしているもの、要するに引用している側はインデックスしているものしか見えないので、それ自体の問題性を、このような記載をさせることは、雑誌については問題であるということは、少なくとも日本の観点では言えるだろうと思います。この計画調書の中に被引用を書かせてはいけないという話にはならないのではないか、インパクトファクターは意味があるというだけの話では済まないということだと思います。

【有川主査】

   雑誌に関しては、その雑誌がどのくらい使われているかということですから、意味があると思います。また、サイテーションに関しては、もう少し個別的なものでカウントできます。一方で、ネイチャー、サイエンスに何本出たということは、少なくとも相当良い意味を持つという現実はあります。

【坂内委員】

   論点を一つ追加させていただきたいのですが、大学図書館、我々を取り巻くことを考えてみると、もっと大きなところで揺らいでいるのではないか。学会、出版社や研究者などがクオリティーの高いコンテンツを発信して、利用者がいて、その仲介として様々な形態で、大学、流通、アーカイブの機能を含めて、対価を払いつつ成り立ってきた。大学図書館は、コンテンツをつくるサイドでもあるし利用するサイドでもある。あるいはアカデミアという知をつくるというミッションを持っているコミュニティであるが故に、コンテンツをつくる出版社も、1冊1冊売りたいのを、まとめて提供できるような社会的な機能としての図書館を許容してきた。ところが今は、利用者は良いものを安い形で情報が欲しいということで、例えば出版社では、新刊を買うよりもブックオフで安いものを買ったほうが良い。すると、結局そのコンテンツをつくるサイドに流れ込んできているべきある種の対価としての価格が崩れてきている中でそれにどう対抗するか。グーグルやキンドルの問題も、そのような流れの中でみんなテイクス・オールをしたいという大きなグローバルな市場の中で起こっている。
   大学図書館を考えると、大学図書館だけで問題を扱っていては、ソリューションが出てこないのではないか。だから、例えば国会図書館や出版社など、地味だがクオリティーの高い情報を産み、流通・アーカイブし、活用して、サイクルしていく流れを、大学図書館、国会図書館、出版社、博物館、美術館、資料館、などのアライアンス総体で電子化という新しい流れも踏まえて、どう我が国として担保していくのか。
   これに対しては必要な投資も含めた大きな議論を提起して、中期的に大きなアライアンスを組んで形成していかなければならない。
   政権が変わったこともあり、改めて大きなクオリティーの高い知を作成し、流通・ストックし、活用し、そのサイクルを回していくという、アカデミック・コミュニティの原点の社会的な重要さをアピールすると同時に、アライアンスをきちんと我が国の中でしていく。
   したがって、論点として、図書館、資料館、アーカイブ、出版、という大きなアライアンスで捉えていくという視点が必要ではないか。
   また、新政権の下で、我々は良いも悪いもずっとやってきて、ある種の価値観が、固定し過ぎているのかもしれませんが、ここはきちんと大事さをもう一回アピール、いきなり大学図書館は重要と言うより、もっと大きなところで重要ということを言っていただいたほうが良いのではないでしょうか。

【有川主査】

   大学図書館の周辺を取り巻くいろいろなものがあるし、似たようなものがある。そのようなものも十分意識しながら議論をして、例えば国会図書館と一緒に考えなければならないかもしれません。

【坂内委員】

   国会図書館というより、個々の大学図書館だけでソリューションが出る問題ではないので、大学図書館がどのように、クオリティーの高いものを、グローバルにも対抗し、コストも下げていくということを考えるのは、連携型やクラウド型として、大学図書館同士が再びアライアンスを組むのか、どういう機能を共有していくのか、あるいはコンテンツをつくるサイドとのバランスをどう形成していくのかという視点も要るのだと思います。

【有川主査】

   博物館その他もありますが、一斉にはできることではありませんので、常にそのようなことを意識しながら議論をして、あるところでそれを大学に対して働きかけて、もう少し広いところで議論していくことになると思います。政権交代のことはありますが、それは我々の力の及ぶところではない。ただ、科学技術・学術審議会の下での委員会はここに存在しているわけですので、そこで我々は粛々とやっていくということだろうと思います。

(3)事務局より資料3-1「第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめ(素案)〔学術分科会(第33回)資料〕」、資料3-2「科学技術・イノベーションの研究環境・基盤整備〔基本計画特別委員会(第7回)資料〕」及び資料3-3「科学技術・イノベーションの研究環境・基盤整備(参考資料)〔基本計画特別委員会(第7回)資料〕」について説明が行われ、以下のとおり質疑等が行われた。

【土屋委員】

   研究成果、データベース等と書いてありますが、e-サイエンスというのは基本的にデータそのものの話でデータ・セントリック・サイエンスです。だから、データベースというように整理されたものでない部分の、データそのものの蓄積の話が出てこないとe-サイエンスのようでない。この点が非常に気になります。

【坂内委員】

   人によって整理整頓のされ方や、データのフォーマットというのはいろいろ多様なものまでを含めてデータベースという場合もあります。

【有川主査】

   今、いろいろな委員会で議論されて、特別委員会で議論しているということです。我々がこれまで議論してきたことは、様々な形で反映はされていると思っています。

(4)事務局より参考資料「平成20年度「学術情報基盤実態調査」の結果報告について」に基づき、同調査の結果報告が行われた。

【有川主査】

   次回以降ですが、大学図書館の整備に関しまして、現状を把握するために、幾つかの大学図書館の方においでいただきましてヒアリングをしたいと考えております。それを踏まえた審議をして、まとめていきたいということで、本日、用意していただきました資料2などは、その際にも手元に置きながら議論していくことになろうかと思います。よろしくお願いいたします。

(5)事務局より、次回の開催は平成21年11月18日(水曜日)10時30分から12時30分を予定している旨案内があり、本日の作業部会を終了した。

――了――

 

 

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

高橋、村上
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077

(研究振興局情報課学術基盤整備室)