2.概論

1.自然資源及び統合的管理の概念整理

(1)自然資源の概念

 自然資源とは、自然の中に存在し、人間にとって価値あるもののすべてを意味する。この意味で自然資源と自然環境は不可分である。「価値ある」ことは「高価である」ことと同義ではない。自然資源の統合的管理の基準はその市場価格でなく、その本来の価値でなければならない。自然そのものを意味する総体としての自然資源は価格で評価できない「絶対的価値」を持ち、その保全は「至上命令」である。それはまた自然を本来の基盤とする人類文明の存続が「至上命令」であることを意味する。
 自然の保全とは、自然を一定不変な状態に保つことではない。自然はそれ自身の論理により、また人間の働きかけによって絶えず変化している。自然の保全とはその変化の中でダイナミックな均衡を維持することである。
 地球は物質に関しては閉じた系であり、エネルギーに関しては開かれた系である。安定的な物質循環とエネルギーの流れを維持することが、自然資源保全の目標である。
 広義の自然資源は「フロー」として利用される狭義の資源と「ストック」としての環境及び「土地」からなる。ストックとフローの蓄積とみなす経済学の考え方には限界がある。
 国民経済計算の中で環境保全のコストを評価することは可能であるが、ストックとして自然資源・環境の価値評価をその中に組み入れることは不可能である。

(2)資源の統合的管理

 資源と環境を一体として把えた自然の保全の問題は、自然科学的、社会科学的、そしてまた自然と人間の相互作用において、極めて複雑多様な関係をふくんでいる。またその中で直面する課題も多種多様である。それに対して対象をできるだけ広く把え、それを総合的かつ体系的に扱うべきであるとするのは必ずしも正しくない。なぜならそこには、時間的にも空間的にもさまざまなスケールを持ち、異なる様相を持つ多くの課題がふくまれており、それらを一括してひとつの大きい問題の部分として扱うことはできないからである。短期的・局所的・或いは部分的で具体的な課題にはそれぞれに対応しつつ、他方全体としての整合性と効率性を保つことが、統合的管理のあり方であり、医療にたとえれば「対症療法」と「根治療法」の双方が必要である。かつそれが相互に矛盾しないことが要求される。
 自然資源・環境の管理についてのひとつの考え方は全体的総合的計画である。かつて旧ソ連では「自然改造計画」の名の下に自然を人間に好都合なものに大きく変えようとする試みが行われた。それは一部には成果もあったが、全体としては大きな環境破壊をもたらし失敗に終った。それは複雑、微妙な自然システムを一元的な計画によって作り変えることは無理であること、また中央政府の権力の下に、そこにかかわる多くの人々の主体性を無視したためであった。
 もうひとつの考え方は、それと反対に、政府の活動を最小限に抑え、できる限り多くを市場の調整に委ねるべきであるとするものである。環境破壊のように市場に反映されない「外部性」が生まれる場合には、それを何らかの手段によって「内部化」してコストに反映するようにすれば後はすべて市場に任せればよく、政府が直接干渉・統制してはならないというのである。しかし地球環境問題のような長期的地球規模の問題については「外部性」を価格評価することが不可能であるし、それを適切に「内部化」することはできない。
 統合的管理は集権的計画でも、自由放任でもない第3の考え方であって、関係する多くの人々の主体性を尊重しつつ、全体として整合的な結果が得られるよう調整をはかるのである。

(3)自然資源の歴史的変化

 人間社会にとって何か自然の中で「価値ある資源」であるかは人類社会の発展に応じて歴史的に変化する。
 前近代の農業社会では、土地と水、そして森林が本源的な自然資源であった。
 工業化が進むと原料及び燃料としての鉱物資源が重要となった。
 20世紀には、科学技術の発達によって、空中窒素固定法によって窒素は稀少資源でなくなり、また多くの化合物資源は人工的な合成が可能になって稀少性がなくなった。
 食料はなお完全な人工合成はできないが、その生産量は化学肥料、農薬、温室等の施設、品種改良、更には分子生物学にもとづくバイオテクノロジーによって大きく増加した。
 しかしこれらの資源利用にはすべてエネルギーが必要であり、21世紀初頭、燐など一部の元素資源を除けば「フロー」としての資源問題はエネルギー資源の問題に帰着するようになった。
 ただし、降水を源泉とする水、多様な生物種の供給源としての原生林、土地の生産力を支える土壌については、本源的なストック資源として、土壌は作物を育てる基盤であり、地殻表面の母岩が風化・崩壊したものに腐植などが加わり、気候や生物などの影響を受けて生成されたものである。土壌は作物等の継続的な栽培により劣化するが、有機物の投入や深耕などによって保全することができる。
 エネルギー資源には固有の問題がある。ひとつは熱力学の第二法則により、利用可能なエネルギー(負のエントロピー)は本来外部から供給されるものしかなく、それには太陽エネルギーに由来するものと、核エネルギーしかないことである。もうひとつの問題はエネルギー利用の効率にはやはり熱力学の法則によって限界があるから、必ず外部に影響し、環境破壊を起す可能性があることである。
 物質による環境汚染については、エネルギーを投入して、それを移動させたり、無害な物質に転換したりすることが可能である。しかしエネルギーについては、その汚損を除くために更にエネルギーを投入することは矛盾である。
 21世紀の資源問題は、エネルギー問題が基本になるであろう。地球温暖化問題はそのひとつの面を表している。

(4)統合的管理の必要性と地球温暖化対策

 地球温暖化問題には、最近にわかに関心が高まっているが、これは統合的アプローチを必要とする典型的な問題である。
 化石燃料の消費によって大気中のCO2濃度が上昇して温暖化が進行し、重大な被害が生ずる可能性が高いことについては、科学者の意見は一致しているが、その量的関係、それにもとづく将来予測については、大きな不確実性があり、可能性の幅がある。他方すでに温暖化は進行しており、それに起因すると見られる異常気候や異常気象も世界各地で起こっている。
 地球温暖化、気候変動とその影響の問題は極めて複雑である。CO2排出の影響は全地球的であり、その影響は200~300年にも及ぶ。しかし超長期にわたり、自然変動の大きさや、ましてや人間社会の歴史的変化、技術の発展を予測することは不可能であるから、超長期にわたって、CO2排出量を減らし、気候を安定させるような「シナリオ」を揚げても無意味である。
 可能なことは、一応見通しのできる50年或いは100年の将来について、気候変動のトレンドを許容できる範囲に収めることである。同時にある程度の気候変動を前提にして、その対策を考えることが必要である。
 CO2排出量の抑制は必要であろうが、自己目的になってはならない。バイオエタノールにしても、それが未利用のバイオマスの利用であればよいが、人間の食料や動物の飼料となる穀物を原料としたり、またそのために原生林を伐り拓いて穀物を栽培したりしたのでは本末転倒である。また排出量取引きにしてもそれが有効であるためには、いくつかの前提条件が必要であり、それが満されるような状況を作り出すことが先決である。
 最も重要なことは、エネルギーの利用効率を高めること、地球上の自然なクリーンエネルギーの利用を増すことである。それは21世紀における自然資源管理の本質的な課題である。
 エネルギー利用の効率化については、個々の場合における単体技術の開発とともに、社会システムを変えることが必要である。特に自家用自動車中心の交通、運転システムを公共交通機関中心のシステムに変えねばならない。
 地球温暖化問題については、それにかかわる多くの問題を総合的に考え、統合的に対処する必要がある。エネルギー税・炭素税の導入も望ましいことと思われるが、それも租税や財政の全体系の中で総合的に考えて制度化すべきである。

(5)人口と資源・環境問題

 マルサスの「人口論」が公刊されて以来、人々は人口は絶えず増殖して、食料の供給量を超え、窮乏と貧困が不可避になると考え、地球上の有限な資源に対する「人口過剰」を問題として来た。20世紀半ば以降、世界人口が急速に増加した時には、「人口爆発」がいわれそれは核爆発より恐ろしいと説く学者も現れた。現実には人口が増加しても、食糧生産はそれ以上に増加し、1人当たりの食糧消費も増大したが、依然自然資源・環境の問題について人口問題、すなわち「人口過剰」が重大な問題であると考える人は少なくない。
 しかし問題を資源とし人口との単純な比の関係として考えるのは誤まりである。第1に人間が1人当たり必要とする資源の量とその内容は時とともに大きく変化する。供給可能な資源の量と質も技術の進歩によって時には予想以上に増加する。また人口が可能な限り増加しようとすると考えるのは誤りであって、すべての国々は近代化の進展、経済水準の向上とともに出生率が低下したのである。
 地球上で養うことのできる人口に絶対的限界が存在することは事実であるが、それを明確に計算することはできないし、また資源との関係で「最適人口」なるものを求めることも困難である。
 「人口過剰」現象は、人口の絶対的大きさによってではなく、人口が急激に増加することによって生ずる。既成の社会の枠組が新しく増えた人口を扱い切れなくなるからである。
 同様に人口が急激に減少する少子化も、また困難を生ずる。人口減少は自然資源・環境に対する圧力を減らすから望ましいとはいえない。少子高齢化が急速に進行し人口が急激に減少する社会では、社会資本ストックを維持し、自然環境を保全するために必要とされる人手も資本も不足して、荒廃が進行するからである。
 自然資源の統合的管理において、人口とその動向は最も重要な要素のひとつとして考慮しなければならないが、単純なマルサス的論理に陥ってはならない。

(6)統合的管理の方法

 自然資源の統合的管理においては、その問題にかかわる多くの人々の利害と立場を尊重するとともに、多様で利害、価値観を持つ人々の行動を調整して有益な結果をもたらさねばならない。また多くの異なる分野の専門家の間のコミュニケーションを改善し、超分野的協力を進める必要がある。
 同時に根底においては世代を超えて全人類の利益を尊重するという理念が貫かなければならない。国益も無視できないが、各国がそれぞれの国益だけを追求したのでは、世界的に資源の浪費や環境の破壊を喰い止めることはできない。各国が自然資源を奪い合って対立するようになれば、甚だ危険である。自然資源の統合的管理においては、各国の国益や多くの集団の利益の追求が人類全体の利益と矛盾しないよう、調整をはからなければならない。
 自然資源の統合的管理は地域レベルでも考えられる。最近問題にされている地域の活性化において、地域社会の発展と自然資源・環境の統合的管理とを結びつけて考えねばならない。国レベルでは各々の省庁の管轄に属する、農林水産業、商工業、建設業、観光業の発展、自然資源の保全、更には地方財政の健全化などの問題を地域の人々の立場を中心として総合的に把握し、いろいろな政策を統合的に進める必要がある。その中で例えば森林に関しても、林業の観点からだけでなく、環境保全、或いは観光開発などを統合した施策を進めて、林業の不振と人手不足のために手入れがされない森林が荒れてしまう事態を防がねばならない。
 地域振興のためには国の支援も必要であるが、財政的に適当な支援を行った上で、統合的施策の実施は地方に委ねるべきであり、その上で国として地域間の調整をはかることを任務とすべきである。

2.気候変動が生態系資源及び土地資源等に与える影響

(1)気候変動の展望

 気候の時間スケールと空間スケールは小さいものから大きいものへ、その比はほぼ一定である。微気候・小気候(局地気候)・中気候・大気候と呼ばれ、その現象の寿命時間(発生してから消滅するまでの時間)の小さいものは現象の大きさ(空間スケール)も小さく、寿命時間の長いものは現象の大きさも大きい。
 統合的管理においては、その対象のスケールをまず特定しなければならない。すなわち、気候変動(変化)の影響の内容(質)・程度(強弱)・速度は、スケールによって異なるので、生態系・海洋・土地資源・人口・経済などの人間社会について考察し、検討する場合、どのスケールに属する現象課題を扱うのか、まず最初にきめることが必要である。
 スケールの小さい方から大きい方へ、その例を述べると次の通りである。
 領域1.はマイクロスケール、微気候・小気候と呼ぶ。管理を行う母体は個人・事業所、日本では大字(おおあざ)・小字(こあざ)、田畑では一筆ごと、森林では南斜面・北斜面、谷底・山頂部などである。日変化、日最高・日最低気温などが対象となる。
 領域2.はマイクロスケール(局地スケール)、日本では市・町・村・県・郡、地形的には湖・川・湾など、季節が対象となる。市町村県の行政単位が対応する。
 領域3.はメゾスケール、時折リージョナルスケールの現象が対象である。都・道・府・県の行政単位がかかわる。
 領域4.は半球規模またはマクロスケールで大陸・海洋(日本海・太平洋・インド洋など)、歴史時代の気候が対象となる。管理に責任をもつのは各国政府である。
 領域5.はマクロスケール、グローバルスケールで各国政府はもちろん、国際的には国際連合の世界機関が責任をもつ。
 最近の気候は人間活動の結果、排出される二酸化炭素や微量気体による温室効果ガスが増え、100年間に3.5℃、近年の20~30年間にはそれ以前の2/3くらいの大きな上昇率で全地球平均でみて温暖化している。しかし、高緯度の北海道でやや大きく、低緯度の沖縄ではやや小さい。
 地球温暖化の結果、降水量は減少し、台風の頻度は小さくなるが、強度については回数は少ないが大きなものが来襲することがある。
 「気温などの気候要素の年々変動は大きく、温帯化して暖冬傾向があっても、その中に、エピソードとして寒冬が起こる。そして、多雪、豪雪に見舞われる。台風の頻度は少なくなるが、強大な台風は数少ないが、日本付近にくることがある。梅雨季の降雨は少なくなり、水不足・干ばつが多くなるが、年によっては長梅雨になる。前線活動が活発になり、集中豪雨・落雷・突風などがある。
 このように長期の変化傾向と、それに反する現象がある年では起こることがあり、災害はひどくなり、経済活動に大きな影響をもたらす。統合的な管理においてはこのような場合のリスクを常に配慮していなければならない。
 気候変動のそれぞれの現象のスケールに応じて、対処すべき行政単位は異なり、個人が責任をもつべき範囲も明確にしておかねばならない。

(2)気候温暖化の生態系への影響

1.農業生産

 地球温暖化は自然災害発生の頻度を増し、その影響は低緯度及び高緯度地域において著しく、小麦生産地の北への移動や、小麦・粗粒穀物のインドやアフリカでの減産と稲作への転換が進む。中緯度地域でも作物生育期間の地域的移動や新しい作目や品種への転換が促進される。

2.漁業生産

 地球が温暖化している場合、2つの劇的変化が予見される。1つは、海表面温度の上昇に伴い海洋生物の分布が変化し北上する。2つ目として、海水温度の上昇に伴い、グリーンランド沖の深層への潜り込みが弱くなり、海洋の大循環の停滞をもたらし、栄養塩の深海からの湧昇が減少し、海が貧栄養状態に陥って、結果として海面での生物生産が低下する、つまり漁獲量が減ると予想される。こうした変化は、ある日突然、短期間に起こることになるだろう。漁業独自での具体的対応策は難しく、温暖化防止のためには異業種との連携が不可欠である。

3.人口問題が生態系資源及び土地資源等に与える影響

(1)人口動向

1.世界の人口動向

a.第2次大戦後の人口爆発とその終息見通し

 20世紀の後半は、発展途上地域の死亡率の急低下により世界全体が人口転換過程の「多産少死」状況となり、世界並びに途上地域の人口が爆発的に増加した。特に1960年代後半には世界人口の増加率が年率2%を超え、人口爆発が世界的危機ととらえられ、国際的な取り組みが活発化した。それによって途上地域の出生率が顕著に低下を始めたため、人口増加率も低下に向かった。世界人口は1950~2005年に25億人から65億人に増加したが、今後は次第に伸びが鈍り、2050年に90億人前後に達するとみられている。

b.世界の高齢化

 世界全体で出生力転換が進むとともに、世界人口の高齢化が始まった。世界人口の高齢化率(65歳以上人口の割合)は、1950年~2050年に5%から7%へ上昇したが、2050年までには16%に達するとみられる。先進地域の高齢化率は2005年ですでに15%となっているが、近年の少子化傾向により2050年には25%になると予想され、高齢者の扶養負担が極めて重いものになるため、社会保障制度の再構築が求められる。途上地域の高齢化は、当面子供人口割合の減少による子供の扶養負担の低下、生産年齢人口割合の上昇となって表れるため、高齢化はむしろ「人口ボーナス」となって途上地域の経済の発展には有利に働く。

c.世界の都市化

 世界人口の爆発的増加は特に都市人口の爆発的増加となってあらわれた。1950年~2005年に世界の都市人口は7.4億人から31.6億人に増加し、世界人口に占める割合も29%から49%に上昇した。今後の世界人口の伸びのすべては都市で起こると予想されている。地域別にみると、ラテンアメリカは先進地域並の都市化率(70%以上)であるが、アジア・アフリカの都市化率はまだ40%以下である。途上地域の都市化は、都市の人口吸収能力を超えて人口集積が続いたために巨大スラムが形成され、過剰都市化の側面が色濃い。

d.世界の人口動向が資源・環境に及ぼす影響

 世界人口は、出生率の低下が順調に進むとの予想のもとで、21世紀の第4四半期には92億人をピークにして減少を始めるとみられている。今後30億人の増加は世界の資源・環境への大きな圧力の増加には違いないが、人口爆発が世界の脅威という事態は回避されつつあるとみるべきである。世界人口の高齢化は資源・環境への負荷を小さくするが、都市化はそのような負荷を大きくする方向に作用する。

2.アジアの人口動向

a.アジアの地域別人口の動向

 アジアの人口は、今日、世界人口の6割を占める。アジア域内の人口の動向は多様である。東部アジアは人口増加が顕著に減速しやがて減少に向かうとみられている。南東部アジア、南・中央アジアの人口増加は減速傾向にはあるもののなお増加率は小さいとは言えず、西部アジアの人口増加はアフリカに次いで大きい。

b.アジアの少子化と高齢化

 東部アジアは既に出生力転換を終え、そのまま少子化状況に入っており、南東アジアは出生力転換の最終段階にある。日本とアジアNIESは超少子化の状況にある。南・中央アジアと西部アジアの出生率は、人口置換水準までにはまだ距離がある。この出生力転換のスピードが高齢化のスピードを決める。東部アジアの高齢化率は既に9%であるが、現在はむしろ人口ボーナス期にあり経済発展にとって有利な人口構造である。他の3地域の高齢化率まだ5%前後であり、今後出生力転換が順調に進めば人口ボーナス期を迎えられる。

c.中国とインドの人口動向

 中国とインドの人口は今日、世界人口の20%、17%を占める巨大人口国であり、その動向が世界人口を大きく左右する。中国の人口増加は1970年代以降大きく減速傾向にあり2030年頃の14.5億人をピークに減少を始めるとみられているのに対し、インドの人口増加は緩やかにしか減速しておらず、そのため、2035年には中国の人口を追い越し、2050年には15.3億人になるものとみられている。両国の差は中国が既に少子化状況にあるのに対し、インドがなお出生力転換の途上にあることによるが、それはまた両国の家族計画プログラムの強度と有効性の違いによるところが大きい。

3.日本の人口動向

a.超少子化と人口減少社会の到来

 日本の出生率は1970年代半ばから人口置換水準を下回り、少子化状況を続けているが、2000年代に入ってさらに超少子化の状況に入った。そのため、日本の人口は2005年1億2,800万人をピークに減少を開始し、2050年には9,500万人まで減少するものとみられている。超少子化は、主として女性の社会進出に伴う「仕事と子育ての両立」の難しさから生じている。

b.超高齢社会の到来

 超少子化の結果、日本人口の高齢化も急速に進んでおり、高齢化率は2005年で20%と世界一の水準にあるが、今後も高齢化は進行し、2050年には高齢化率は40%になるとみられる。

c.都市化と東京圏一極集中

 日本は近代化の過程で都市化と3大都市圏(特に東京圏)への人口集中が進んできたが、この傾向は今後も変わらないとみられている。

d.日本の人口変動が資源・環境に及ぼす影響

 日本人口の減少は資源・環境への負荷を大きく緩和することになり、高齢化の進展も同様の効果を持つと考えられるが、都市化の趨勢はそれとは逆の方向への作用を持つであろう。

(2)生態系資源への影響

1.人口増加による食料生産とバイオ燃料に投入するエネルギー

 自然植生帯内の植物群から選びだした作物は、科学的な管理・選抜をへて多くの人類を扶養する高収性農業の基幹作物群になった。現在、豊かな環境資源、多産・多収な作物・家畜類、優れた各種技術、安価な化石エネルギーの4つの資源を総合的に利活用することで、現代農業は約22億トンの穀類を生産し、人口増加にも係わらず人当穀類生産量は、前世紀半ばから20年前まで順調に延びてきた。しかし、その後、穀類生産の増加速度が鈍くなってきている。これには、大きな成果を挙げた高収性農業技術の進歩の鈍化、地球環境の劣化の進行、気候温暖化による異常気象激化、優良農地・淡水資源の不足等が原因している。今後の世界人口の増加と生産水準の向上を考えると、農産物とくに穀類の更なる増産が必要である。そのためには、地球上の自然環境・植物生産量・資源量などの分布と時間的な変化に関する確かな情報の把握と、それの一括管理と合理的な利用を図る国際的なシステムが必要である。また、食料資源・生物資源(種多様性を含めて)の総合的な国際バンクの設立・運営が必要である。
 一方、化石エネルギー高騰を受けて、バイオ燃料生産への要望が高まり、サトウキビ・トウモロコシからのバイオエタノール、ダイズ・ナタネ・ヒマワリからのバイオデーゼル油の製造が進められている。このため食用穀類の高騰が起きている。しかし、作物類の乾物生産のエネルギー効率は1~2%と非常に低く、それから液体燃料の製造がエネルギー収支的に妥当であるかは、石油ショックの1970年代からの問題であった。最近の研究資料からEPR(energy profit raio)を求め、次のような値を得た。この結果は、穀類・油脂
バイオエタノール:0.61、バイオデーゼル油:0.57
種子を利用する現在のバイオ燃料製造が、Negative Energy Returnであることを示している。これを改善するには化石燃料の低投入で高収量をうる新しい農業技術と効率的な発酵蒸留技術との開発が不可欠である。

2.バイオマス資源の人類による利用

 人類は生存エネルギー以外にも多くの用途のためにバイオマス資源を利用している。各種の収穫資料と関係式を利用して、農耕地・牧野・林地からのバイオマス資源の収穫量は、14.03Gトン乾物/年と評価された。この他、土地利用パターンの変化・焼き畑・砂漠化・環境劣化などで、多くの植生の生産力が間接的に低下している。それらを考慮するとバイオマス資源の人類による直接・間接利用率は、前世紀末で25~35%、今世紀半ばで55~65%と推定された。また、今世紀半ばには、人類利用ブロックと野生生物利用ブロックとの間のバイオマス小道が、バイオ燃料製造へのバイオマス残滓の使用で痩せ細ると予想された。これは多くの耕地・林地の地力の低下、従って植物生産力の著しい低下を招く恐れがある。また、多くの野生生物1.生存エネルギー量の減少、2.安全な生息場所の縮小・消失のために、絶滅の危機に襲われるだろう。

3.各資源への影響

a.農業資源(食料増産による肥料、農業使用量増加と人類健康悪化)

 化学物質の大量使用は農業生産力の増加をもたらしたが、同時に化学物質の流出による環境汚染を広めた。すなわち、食料増産に比例して人類をはじめ生産系全体への悪影響が拡大され心配されている。

b.漁業資源

 ヒトの食料源として生物資源は不可欠であるが、近年の人口爆発は膨大な需要を生み出し、既に陸上生産ではまかないきれない量に達しようとしている。海洋生物資源に対する期待、負荷は高まる一方にある。一方で、海洋生物生産は1.3億トンに達し、利用状況は陸上生物生産と同様満限に近く、今後増加が期待できない逼迫した状況になりつつある。海洋生物資源の有効利用は今後利用状況、魚種の問題に移るだろう。また、海洋生物資源の持続的利用のためには、海洋環境の保全が欠かせないが、その面でも状況は悪化しており、課題は山積している。

c.土地資源

 過去40年間に世界人口は倍増し、世界の森林及び耕地面積はそれぞれ‐4%と+8%の変化を記録したが、この間に工業用材生産量は僅か0.6%の伸びに止まったのに対し、1人当たりの食料生産指数は61%の上昇を実現し、一部開発途上国での飢餓問題はあるものの、平均的には人々の栄養水準は改善されてきた。この間わが国農村人口の急減は、工業用材及び食料の生産量の大幅な減少をもたらし、食料自給率の低下が示すように、農家人口の急減や高齢化、経済構造の変化が農業生産資源の維持管理に困難をもたらしている。わが国は世界人口の僅か2%を擁するに過ぎないが、食料輸入額では世界の11%を占めている。一方、世界人口の8割が居住する開発途上国の食料輸入額は世界の食料貿易額の29%に止まっている。

d.水資源

 水の供給を含む生態系の持続可能性は、農業生産や雇用の拡大など貧困の減少に関わる。水の惑星といわれる地球上の水の97.5%は海水で、淡水は2.5%に過ぎず、人間の利用が可能な淡水はその17%である。水は無限に再生産可能で、地球上の1人当たりの最低必要量1,700立方メートルに対して、その4倍以上の水が世界には存在するが、利用可能な水量の地域間分布の格差は大きい。過去100年間に世界の水使用量は7倍になっており、食料生産には家事等に使用される量の70倍もの水が必要とされる。

e.土地及び水資源の利用システム

 農林地や水といった農林業生産資源の開発・利用・維持保全には、地域的特色をもった資源の管理システムが重要な役割を果たす。わが国では、生産基盤の整備とその維持管理のために集落組織や土地改良区などの組織が機能しているが、人口の減少や人間の社会活動がもたらす影響は無視し難く、農用地の減少はその例証である。

4.わが国における自然資源管理の現状と統合的管理の必要性

(1)生態系資源

a.林業資源

 戦後の大面積植林のあと、外材輸入の増加と国内での森林伐採の減少により、わが国森林の林木蓄積量は50億m3(年間国内消費の50年分)を超えたと推定される。その一方で木材の需要が世界的に増加し、外材が入りにくくなってきた。国産材を使った大規模な製材・合板・集成材工場などが各地で建設されつつある。国内の木材生産は確実に増えるであろうが、森林資源が無秩序に食い荒らされていく恐れも出てきた。当面は林道・作業道を整備して間伐を繰り返し、高蓄積で伐期の長い林業に誘導していくのが重要であろう。大面積の皆伐や跡地更新の不履行を厳しく取り締まるべきである。また山から下りてくる木質材料をすべて無駄なく使い尽くす「ウッドコンビナート」の構築が急がれる。
 森林資源を「統合的に」管理するという場合、木材の生産、加工、流通にかかわる全プロセスの統合と並んで、もうひとつ重要なのは森林の木材生産機能と環境保全的機能との統合的管理である。高度に発達した工業化社会において、環境としての森林の役割はきわめて大きく、今後さらに高まることは間違いない。その一方で木材の需要も世界的に増加しており、林業・林産業の分野では、市場経済にゆだねる傾向が一段と強まってきた。加えて広い地域から大量の木材を集荷すべく、大型の伐出機械類が入ってくるようになったため、その環境インパクトが無視できなくなっている。こうした状況に対処すべく、国際的なレベルで「持続可能な森林経営の規準と指標」をづくりが進められてきた。具体的には、1.森林資源及びグローバルな炭素循環に果たす森林の役割を維持し、適切に向上させること、2.森林生態系の健康と活力を維持すること、3.木材・非木材にかかわる森林の生産的機能を維持・増進すること、4.森林生態系における生物多様性を維持・保全し、適切に向上させること、5.特に土壌と水にかかわる森林生態系の保護機能を維持し、適切に高めること、6.その他の社会経済的機能と条件を維持すること、などが挙げられている。森林資源の統合的管理というのはこうした要件のすべてが満たされるように管理していくことであろう。各国の政府は民間の自由な経済活動を容認する一方で、逸脱してはならない規範を明確にして監視を強める傾向にある。

b.農業資源

 農業はその生産活動を通じて、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全などの多くの効用をもたらす。農業生産活動や集落活動が適切に営まれている限りは、農業の多面的機能も十分に発揮される。しかし、近年の農村人口の減少や高齢化は農地や農業用水路の維持管理に負の影響を及ぼし、耕作放棄という現象はこの負の影響を端的に表現している。各種の対応策が試みられているが、農産物価格の低落や資産としての土地所有にこだわる傾向が事態の改善を妨げている。農地や用水路の維持管理作業は、集落の共同作業で行われるのが一般的であったが、ここ数年集落の関与が大きく後退している。農村地域では資源の有効利用や維持管理にも、人口減少や混住化の影響が出てきている。
 一方、農村地域に存在する自然資源は、農業生産活動や社会活動を通じて地域ぐるみでその維持保全が図られてきたが、農家の兼業化や高齢化、農村で過疎化や混住化は集落機能の低下をもたらし、資源維持管理のための仕組みを構築し直す必要に迫られており、加えて自然環境保護の動きが全国的に広まってきている。農業は本来自然界における水・窒素・炭素といった物質の循環を利用した持続可能な生産活動であるが、化学物質の過剰投入や家畜排泄物の不適切な管理による環境への負荷の増大が懸念され、多くの農家が環境保全型農業を志向するようになり、その動きを支援すべく、国と地方公共団体との連携の下に「農地・水・環境保全向上対策」が進められている。森林の整備・保全についても市民の参加意識が高まり、さまざまな主体による活動が活発化している。
 一方、視点を変えて経済面からみると、農村各地に展開している大資本によるマーケッティング商法が農村の経済自立構造を阻害している。
 これらを改革するための課題には、1.大学による人材(リーダー)の養成、2.安心、安全確保を要望する都市住民(消費者)との信頼性確立、3.情報、センサ等関連技術の開発、4.これらを支援する国家組織創設などが考えられる。いずれにせよ1次資源である林業、農業、漁業は協同して地域的特性をいかした流通システムを推進し経済的自立を構築すべきである。

c.漁業資源

 漁業を取り巻く環境は時代とともに変化する。有限である海洋の自然資源を有効に活用していくためにはそうした流れを適切に把握することが重要である。
 世界の人口は今もなお増加をたどっていて、66億人を越えている。人口の増加は食料資源の需要の増大を意味するが、一方で、食糧の増産は緩慢である。必然的に、食料資源の争奪が起こる。こうした背景もあり、公海におけるマグロなどの高度回遊魚を含む水産資源は一国のものではなく、人類共通の資源と見られ、管理が強化される方向にある。今後は、グローバルな視点を持ち、資源保護の思想による開発、利用が求められる。
 新興国の経済発展に伴い、水産物に対する需要が飛躍的に伸びた。それ以前は、水産物の開発輸入は日本の買い手市場であった。今や、水産物は国際商品としての地位を確保しつつあり、入手は各国間の競争になっている。
 近年、地球の温暖化が問題となっているが、現状の速度で温暖化が加速すると海洋環境が激変し、金華山沖の世界有数の漁場が北上し、日本の漁獲量は減少する可能性がある。予見しうる状況を想定しつつ、水産資源の確保を模索することが必要である。
 漁業とは離れるが、海洋は漁業だけが利用するものではなく、あらゆる産業が参入する可能性がある。
 統合的管理の必要性については、漁業管理の必要性を世界中で認識しているにもかかわらず、実行できないのは、科学的研究の裏づけが不足していることに起因していて、日本ですら資源管理の精度が不足している。科学的研究の充実と、世界における日本の地位、世界の先端を行く海洋科学国日本がとるべき方策が必要である。

d.森林土壌資源と森林資源

イ)森林土壌資源
 土壌は、岩石が地表の温度や水分条件下においてルーズな含水物質へ形態的・組成的に変化する物理的土壌生成過程と、生成されたそれらの鉱質物質に、主として植物や土壌生物の遺体に由来する有機物が加わり、腐植の生成や団粒構造の形成が進み、土壌の理化学的性質が向上し、肥沃度が向上する生物的土壌生成過程に大別される。
 一般に、森林が伐採されるなどにより落葉落枝などの有機物の土壌への供給が絶たれると、それらを栄養源とする土壌動物や微生物の活性度の低下や棲息数の減少が引き起こされるため、腐植の生成が減少し、団粒構造などが劣化するので、土壌の理化学的性質の劣化が進行する。さらに、土壌を被覆していた有機物堆積層(Ao層)が消失すると、露出した表層土壌の浸蝕流亡が開始される。
 一般に岩石の風化の進行は極めて緩慢であるから、ある程度の厚さの土層が形成されるには地質学的長時間を要するので、その再生は実質的に不可能と考えられている。
 従って、森林土壌が資源としてその機能を十分に、かつ持続的に発揮していくために基本的に大切なことは、浸蝕により流亡しないことと、表層の団粒構造が維持されることである。そのため、有機物堆積層の存在が唯一無二の条件であるが、そのためには、森林状態が常に維持され絶えず落葉・落枝が土壌に還元されなければならない。
 国土の3分の2が山地地形のため森林にしか利用できないわが国において、そこに生成分布する森林土壌は、他の資源の少ないわが国にとって極めて貴重な資源であり、しかも、適切に管理される限り、何回でも繰り返し利用が可能である。
 土壌侵食危険度などに基づいた統合的管理により森林土壌資源を保全し、できるだけ有効に利用しつつ健全な姿で次世代へ引き継がなければならない。

ロ)大径材、高品質材等の生産のための森林資源
 わが国では文化財保護法により国宝或いは重要文化財に指定されている建造物は約3,600棟あるが、その約90%が木造建造物である。その管理、修理のためには大径材、高品質材、及び特殊材等が必要不可欠であるが、それらの生産が極端に減少し、重要文化財保存修理事業が極めて深刻な状況に陥っている。
 しかもそのような大径材、高品質材等については、わが国では極く一部を除き、計画的な育成がなされていないため、生産面で将来的な供給の見通しが全く立たない状況である。
 文化財補修用樹種を含む天然林などの調査を早急に行い、大径材、高品質材等が採取或いは将来採取できる森林の実態を把握し、要件にかなうできるだけ多くの森林を、大径材等を育成・採取するための超長期の保存林、即ち、文化財用備林として地域社会などの同意を得ながら設定すると共に、真の長期的視点に立った、文化財補修用の大径材、高品質材等の計画的な生産のための国有林、民有林、大学演習林などにまたがる統合的な森林資源管理計画の策定を、国家として急ぐ必要がある。
 わが国の多数の国宝などを含む木造重要文化財修理の問題は、単なる森林資源調達だけの問題ではなく、大切な民族の遺産を守る国民的な課題である。

ハ)人工林資源
 戦後半世紀余りで、1000万haに達したわが国の人工林は、西南日本を中心に徐々に成熟期に達しつつあるが、依然としてその70%近くは35年生以下である。それらの若齢人工林を健全で活力ある森林に育てていくためには、保育、間伐等の森林施業が適切に行われなければならない。
 しかし、それらの林業活動を支える山村地域においては、林業経営の収益性の悪化により林業労働力の減少及び高齢化が急速に進行し、保育、間伐等の森林施業を適切に行うことが極めて困難な状況に陥っており、手入れ不足人工林分が急増している。
 また、近年、狩猟禁止などに伴うニホンジカなどの急増により、人工林内植生や植栽木の食害が深刻化しており、林内植生がほとんど全滅状態のところもある。
 このような状態を放置すると、折角植林した人工林の資源的劣化、更には土壌侵食による森林生態系の荒廃による国土保全、環境保全、水源涵養機能などの喪失が進み、山村地域の荒廃のみならず、国民生活にも重大な影響が及ぶことが危惧される。
 森林は、木材等林産物の供給、国土の保全、水資源の涵養、気象緩和や防音・大気浄化などの生活環境保全、保健・文化・教育的利用の場の提供等の、多様な機能を有しており、国民生活と深く関わっている。
 従って、木材生産による収益により森林を整備していくような従来の方式はこの際棚上げして、国民全体の利益のために、森林を健全な状態に維持して公益的機能の発揮を期することに重点をおき、例え公費を投入してでも適切な森林整備により安全で豊な国土の形成を進め、生産される木材は副次的に考えるような発想の転換が必要である。
 森林の整備・管理を立地環境条件などに即して統合的かつ適確に行い、次世代に健全な姿の森林資源を引き継ぐため、受益者である国民全体が応分の負担をするなど、森林の整備・管理を社会全体で支えていく体制づくりが急がれている。

(2)海洋資源

 わが国における自然資源管理上の最大の問題は管理が対象別に独立に行われている点である。陸、海、大気はまったく別々に扱われ、陸でも農地と森林、河川、海岸は別なチームが手掛けている。所轄官庁もいわゆる縦割りで、研究者の学会も細かく分かれていて交流は少ない。最近ようやく地球惑星科学合同学会ができてかなり改善された。多くの大学でかつての地学科、地質学科、鉱山学科などが地球惑星科学科や環境システム学科などに衣替えしているのは一応の進歩である。海洋では2007年から東京大学に海洋研、生産研、地震研、理学部、工学部、農学部の枠を超える「海洋アライアンス」が設立されたのは注目されてよい。学問や手法の垣根を越えて統合的に管理を進めるのは容易なことではないだろうが、自然資源の正しい理解と将来の展望を得るにはどうしても必要である。
 提案のひとつは日本周辺の統合無人観測ステーション網の建設である。海底には地震と地殻変動、津波を観測するケーブル付ステーションの構想が進んで、一部は実現を見ている。エルニーニョ海域には日米で多数のブイを設置して観測を続けている。しかし、日本周辺におけるさらに多くの対象と分野を網羅する統合的観測の必要性である。
 もうひとつの提言は南北大東島の自然遺産指定である。それは隆起サンゴ礁という稀有な自然であるのに加えてビキニ掘削の30年前に学術掘削が行われたという科学遺産であるからである。南大東島には気象通報でおなじみの大東島測候所があり数人の気象官が常駐して環境保護に当ってきたが気象観測の無人化に伴い人手がなくなったので、せめて小笠原並みの環境レンジャーを大東村役場において監視指導を担当させたらいかがであろうか。現地の製糖工場とも好い関係を保ち続けることも望ましい。
 さらに、自然資源の統合的管理は国民全体の理解と協力がなければ成功しない。残念ながら日本国民の自然に関する基礎知識は諸外国に比べてきわめて低いと言わざるを得ない。これは特に小学校における「自然」教育が不十分、不完全なためである。体験学習としてごく身近な自然に目を向けさせるのはよいが、わが国の回りにはさらに多様な自然が存在することを忘れている。例えば、小学校で使用される日本周辺の地形図は戦前の方が美しくかつ精密であった。特に現在使われている地図の海底地形はあきれるほど粗末である。
 対策の第一歩は小学校、中学校の学習指導要領を改善して、わが国の自然資源にもっと時間を取って詳しく教えられるようにすることである。

(3)土地資源

 農地や農業用水、多様な生態系、等の農村地域に存在する自然資源は、地域住民は勿論、国民が広く享受している農業の多面的機能の発揮にも深く関わっており、農家を主体とする農業生産活動や集落での社会的活動を通じて、地域ぐるみでその維持保全が図られてきた。しかし、農家の兼業化や高齢化、農村での過疎化や混住化、等によって農村集落には構造的な変化が生じ、農業生産活動の停滞のみならず、集落での社会的な活動にも沈滞が見られるようになってきた。このような農村での諸活動の沈滞化や集落機能の低下は、農村資源の維持保全及びその活用を困難にしてきており、あらためて資源維持管理のための仕組みを構築し直す必要に迫られていることが痛感される。他方、自然環境保護の動きが全国的に広がってきており、全国の半数を超える集落で景観や地域環境の保全活動が、また7%の集落で自然動植物の保護活動が行われ、近年その割合が上昇しているともいわれ、自然環境保護の動きが更に活発化することも期待される。
 自然環境保全に関しては、農業のみならず森林整備の面でも新たな動きが見られる。森林を整備し保全してゆく上で重視すべき機能に応じて「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」に区分し、それらの区分毎に望ましい森林の姿やそれに誘導するための森林施業の考え方を明らかにし、適正な整備・保全による望ましい森林の状態が確保されるための施業実施の条件整備に取り組むことが進められている、そのため、針広混交林、広葉樹林、大径木からなる森林等へ誘導する多様な施業の適切な実施に向けて、森林所有者への情報提供、間伐などの適切な施業技術の普及、低コスト・高能率な作業システムの整備など、森林整備の低コスト化への努力が進められている。
 一方、環境問題に対する国民の関心が高まるなかで、農業生産のあり方にも環境保全をより重視する方向に転換することが求められよう。農業は本来自然界における水・窒素・炭素といった物質の循環を利用した持続可能な生産活動である。しかし、肥料や農薬などの過剰投入や家畜排泄物の不適切な管理による環境への負荷の増大、具体的には、地下水の硝酸性窒素濃度の上昇や湖沼・海域での富栄養化などが懸念されるようになってきた。これを受けて、全国の農産物を販売している農家(販売農家)の約半数が化学肥料・農薬等の投入の低減や堆肥による土作りなど多くの農家が何らかの形での環境保全型農業を志向しているのが現状である。
 環境保全を重視した農業への取組みが広がるなかで、農業が本来有する自然循環機能を維持増進するという観点から、地域的な広がりを持った取組みが求められている。そのため、農業者の環境保全をめざした着実な実践活動のみならず、地域全体としての纏まりをもった共同の取組みを推進すべく、更に将来に亘っての保全を考えて、2007年度からは、化学的薬剤使用の大幅な削減などの環境保全のための相当程度の纏まりをもった先進的共同活動への支援を内容とする「農地・水・環境保全向上対策」が、国と地方公共団体との緊密な連携の下に進められることとなった。
 森林の整備・保全についても市民参加の意識が高まってきている。その内容は、上下流域の住民等が連携して行う水源地域での森林作りや、漁業関係者等の行う河川上流での森林作りなど、きわめて多岐に亘っている。また、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として森林の整備・保全活動を通じた社会貢献を意図する企業が見られるようになっており、内閣府が実施した「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」では、「植林・間伐などの森林を守る活動」に対する協力を社会貢献と考える企業が多かった。

5.自然資源の統合的管理を支える社会システム及び必要なソフト資源のあり方

(1)自然資源の統合的管理を支える社会システム

1.自然資源の概念と利用の方向性

 自然資源について過去から未来を俯瞰して長い時間スケールで捉えることが重要でここでは以下の4点の考慮を提案する。
 第1は、自然資源は必ずしも絶対的で普遍的なものではなく、時代によって資源の利用価値は変化することを認識し、それへの対応を考えることである。現在、資源価値の高いものが、将来にわたって、その評価が続く保証はないし、反対に、現在は資源価値のないものが、将来は高い資源価値を持つこともある。
 第2は、従来の経済価値で自然資源をとらえるだけでなく、自然資源の持っている環境維持作用などの公益的価値も加えて、私たちの資源観を拡大する必要性である。経済性(供給サービス)は、食料、淡水、木材、繊維、燃料、鉱物資源などのように、直接に人間生活に利用され、経済的価値を有しているもので、公益性(調整サービス、文化的サービス、基盤サービス)は、森林が人間活動によって放出した二酸化炭素を吸収したり、私たちが必要とする酸素を供給してくれたり、といったような、経済的な直接価値は明確でないが社会にとって極めて重要なもので、従来は資源には入れられてこなかったのである。
 第3は、私たちの自然観では「ヒトを自然の外側においてしまう」、つまり自然とヒトを対峙させることで生じる問題である。一般に、私たちはヒトが手をつけていないものを「自然」と捉えがちで、これではヒトは自然に自然の外側におかれてしまう。しかし、実際は、ヒトは自然の中で生活しているので、ヒトも自然の構成員として扱わなくてはならない。しかしヒトを自然の一員として考えることは難しい。
 第4は、単一目的だった20世紀型の資源利用を複数目的で徹底利用して廃棄物を少なくし、あるいは廃棄物が出ても処理が簡単で安くすむ方向に変えることである。太陽光、風、空気、淡水、海水、バイオマスなどの再生型資源の価値が高まるが、これらの資源の多くは資源密度が低いので資源を抽出・利用する技術開発が大きな課題である。

2.自然資源の統合的管理の概念と取組の方向性

 増加した人口と豊かさの追求による個人の物欲の増大によって、人間活動による自然資源への影響は極めて大きい。特に、食料、淡水、木材、繊維、燃料の需要が過去50年間急増し、それに対応するために人類は歴史上かってない速さで生態系を大規模に改変してきた。生態系に加えられた改変は、人間の経済発展には多くの利益をもたらしたが、反面で、多くの生態系サービスが劣化した。これらの経済性による自然資源の利用によって生じる問題を解決しておかないと、将来世代が得る利益が激減する。特に、生態系サービスの劣化は今世紀前半にはさらに増大することが心配されていて、事態は緊急である。
 地球上の陸地で森林と農地・牧草地の占める割合は1969年にはそれぞれ38.3%と25.5%だったが、2000年には約30%と34%に逆転した。農地や牧草地が増えたのは森林伐採のためで、食料などの生産は高まったが、森林のもっていたさまざまな公益性が失われた。土地利用の変化だけでなく、実際の利用でも人間活動は食糧増産のための肥料と農薬の大量使用などで自然資源に対して大きな影響を与えている。
 従来は、経済性のある資源が注目され、自然資源の管理も利用対象となる資源が中心だった。しかし、先に述べたように、自然資源は経済性だけでなく、公益性も重要で、そのためには従来型の経済性優先の資源管理では不十分である。エコロジカル・フットプリントという新しい概念が有効である。これは人類が地球に与えるさまざまな「環境負荷」を「人が生きるために必要とする土地面積」で表したもので、食糧生産、資源の消費、廃棄物の発生などの人の生活で必要としている再生可能な自然資源の利用を必要とする土地面積(ha)で表している。この概念を利用すると、先に述べた自然資源の経済性と公益性の両者を取りこんだ自然資源の管理が可能になる。

a.自然資源の統合的管理を支えるための社会システム

 人類による自然資源の過剰利用によって、地球全体の自然資源の再生力を徐々に失いつつある現状認識に基づくと、人類による自然資源の利用を抑える必要がある。それについて筆者(高橋正征氏)は次のように考える。○イ個人の物欲の抑制と、○ロ人口増加を止めて人口を適正規模に収斂させる、という2つの努力の方向がある。物欲の抑制は難しいので、ここでは人口対策の可能性を考える。
 人口問題では、“人口減少”を避けたいという社会的風潮があるが、ここでは“人口減少を止める”のではなく、“適正人口”を真剣に考えることを提案する。2条件を入れて適正人口を考える。第1条件は、“食糧の自給”で、この条件を入れることによって適正人口が論理的に求められ、また、さらに地球環境の維持で重要な“物質循環”の正常維持にも貢献する。第2条件は、住民の意志を入れた市町村程度の広さでの適正人口の提案である。
 地域の適正人口の合計が国の適正人口になる。ある程度、国の適正人口の方向が固まってきたならば、それを視野に入れて、実際の人口が適正人口からずれている場合には、いかにして適正人口に近づけていくかを真剣に考えることになる。目標は100年、200年先の話にはなるが、目標年度を一応定めて、それに向けてどういった無理のない方法で人口を収斂させていくかを考える。
 人口問題は日本だけでなく世界的に共通する深刻な問題である。ただ、多くの国々は宗教と人種及び民族問題を抱えていて、人口問題を真正面から取り扱うことが難しい。幸い、日本は、宗教と人種・民族問題が少なく、人口問題を直接に考えられる極めて数少ない国の1つである。その日本で、「食料の自給」と「市町村規模の単位での住民の意思による適正人口の提案」の2つを軸にして人口問題を考えることが起動に乗れば、それは世界の範となる可能性が高い。

b.自然資源の統合的管理に必要なソフト資源のあり方

 自然資源の中でバイオマス・水・空気・太陽光などは再生量や供給量を考慮して利用すれば持続的利用が可能である。バイオマスでは最大生産速度を維持する管理も工夫できる。最近の日本では自然資源の利用の技術継承が必ずしもスムーズではない。農業・林業・漁業・狩猟などの歴史的な技術の保有者がいなくなって、そうした技術が急速に失われている。現在残っている技術を早急に洗い出し、その技術継承を工夫することが喫緊の課題である。特に、自然資源の持続型利用にとっては、伝統的な利用法を基礎にすることが極めて重要で、伝統技術がまだ息絶えないうちにそれらを継承していく努力が、自然資源の理想的な利用を目指す意味でも現代の私たちの喫緊の課題である。

3.自然資源の変化に即応できる社会能力

 農村には農地や多様な生態系そして農村景観などの地域に固有の自然資源があり、農業者など地域住民の共同的な活動によってそれが維持保全されてきた。しかし近年、都市部を中心とした産業の集積と高度化等が進行するなかで農村人口特に若年層や働き手の流出が続き、それに伴って農村地域における活力や地域資源の維持管理能力の低下といった事態が見られるようになった。他方、ゆとりや安らぎを求めるような国民の価値観の変化や環境保全に対する関心の高まりが、豊かな自然資源に恵まれた農村地域での生産及び社会活動を、その多面的機能を十分に活かした環境保全をより重視したものに転換させることを要望している。
 現在、地域活性化に取り組む活動主体の多くは市町村と第3センクターであり、集落や農林漁業者のグループ等の組織もその一翼を担っているといわれるが、その活動を支えるための行政の支援、例えば人材や資金の確保、施設整備への助成等が重要な役割を果たしているのが実態である。
 近年、農村では女性による起業数が増加傾向にあり、その7割はグループ経営であるが、個人経営の比率も次第に高まってきているという。このような女性の起業活動は、農村での所得拡大のみならず、社会参画を更に進める契機ともなっている。しかし、立地条件による差異の存在は否定し難く、生活基盤や情報通信基盤の整備によってその格差を縮める努力が求められるとともに、都市農村間など地域間の人・もの・情報などの交流をより活発にすることが重要であろう。

4.地域社会の統合的管理

 高齢化の進展は全国的にも生産年齢人口比率の低下をもたらしているが、農山村地域での低下傾向は都市圏に先行して進んでおり、特にいわゆる「全部山村」では人口減少率も高く、2030年の生産年齢人口の割合は50%を下回り、65歳以上の老齢人口は40%を超えると予測され、集落機能の低下や不在村者保有森林の増加が一層進行するものと懸念されている。一方では中高年層を中心としたいわゆるUターン率も高まっている。
 それぞれの地域がUターン者に農林水産業の担い手や地域づくりのリーダーなどとしての役割を担ってもらうことを期待しているものと考えられる。また、都市住民の中には、都市と農村とにそれぞれ住居を設けて往き来をする2地域居住に対する関心が高まっているともいわれている。しかし、現在わが国の農村でほぼ共通する問題として重視しなければならないのは、先ず農地利用率の低下傾向を如何にして押さえ込み、土地資源の活用化を図るかということではなかろうか。
 過去における種々な投資によって生産力を高めてきた水田は、現在需要の減退や労働力不足等の理由によって遊休化が進んでいる。
 何れにしても、新たな人材や組織、そして新たな技術を導入することによって、遊休化した農村地域の土地資源の活用と地域経済の活性化を図ることが、今求められているのである。その為には、農業の活性化・競争力強化には意欲ある優秀な農家への農地の集中・大規模化、そしてコスト削減を可能にする仕組み作りが不可欠であろう。しかし、郊外型店舗や公共事業などへの転売期待などは農地としての規模拡大を妨げている。1970年の農地法改正や1993年の農業経営基盤強化促進法なども、農地の流動化・集積に大きな効果があったとはいえない。日本農業の競争力強化には、法的措置も含めて農地問題の解決に取り組む必要があろう。

(2)自然資源の統合的管理に必要なソフト資源のあり方

1.社会システムの考え方

 基本的な社会の基盤として21世紀の社会システムの統合的管理戦略目標としての考え方

  • 価値観の転換(Shift in the Value System)
  • 制度の変革(Reform of Institutional System)
  • 技術の革新(Innovation of Technology)

の3つがお互いに融合し動的に社会システムをデザインする仕組みが必要であると考える。社会システムを支える基盤を資源(ハード、ソフト)と考えるが、実社会システムとしては、「資源」だけではなくその「マネジメント(ガバナンス)」(資源(人知などソフト、ハードを含む)の育て方、使い方)と表裏一体と考える。また、ガバナンスを司るために「情報の非対称性」を防ぐためにもそれらにふさわしい情報通信技術(ICT)をベースとした「情報」を付与する。

・「自然資源の力」=「資源」×「マネジメント(ガバナンス)」×「情報」
・「ストック」としての資源ばかりでなくダイナミックな「フロー」としての資源の概念を考える
・資源を第1次産業、第2次産業、第3次産業といった利用形態別の視点から産業横断型での社会システムとして考えそのためのシステムの構築を行う。
・時間軸の考え方の相違を総合的に考えるシステムとする。
 ・短期的時間軸(ミクロスケール)    主として経済活動等
 ・中期的時間軸(メゾスケール)  主として生活やコミュニティ活動等
 ・長期的時間軸(マクロスケール)    主として環境や生物学的視点等

a.実現すべき社会システムの基本方針

 これらの基本的考え方を社会システムの基本方針としてまとめると下記のようである。

イ)資源のライフ・サイクル・アセスメント(LCA)
 ストックとしての考え方とフローとしての考え方の融合

ロ)資源の可視化(数量化)
 資源は存在や採取するためのさまざまな制約要素や利用の形態によりさまざまであるが、相互に連関しているためマネジメント(ガバナンス)するためにはさまざまな指標の上に可視化出来ることが望ましい。

ハ)資源の時間軸と変容(メタモルフォーゼ)を考えた社会システムの実現
 資源の考え方としては時間軸が重要であるが社会システムとしてマネジメント(ガバナンス)を行う場合には、社会の変容に柔軟に対応できるシステムが必要である。

b.社会システムの基本的な考え方

イ)原資源(素材)からリサイクルされるまでをライフサイクルアセスメント(LCA)として実現する社会システムとする。

ロ)リサイクルされたときから次のサイクルが開始されるが資源の状態を可視化できるようにする。

ハ)資源+情報+マネジメントシステム(ガバナンス)を実現する。

ニ)自然資源を次の4つの観点から考察する。

  • 「市民生活向上力」
  • 「経済価値創造力」
  • 「国際社会対応力」
  • 「資源・環境負荷力」
c.ストック型のシステムとフロー型(持続型、分散強調型)のシステムの融合

 ストック型からダイナミックなフロー型のマネジメント(ガバナンス)への移行を社会システムとして導入する。

イ)社会のソフト化に対応した統合的社会システムの必要性
 資源の活用の効率性や有効性により社会システムをマネジメント(ガバナンス)して行かなくてならないのとシステムとして考えるときには効率性も考えた共通性のある指標が必要となる。(グローバル・ヘクタールのような)

2.自然資源・環境の有限性と公平な分配に着目した指標

a.マテリアルフロー勘定(Material Flow Account) ドイツ ヴッバータール研究所

 持続型社会を目指して資源環境の有限性を重要視した考え方で経済活動と環境の間の物の流れ(マテリアルフロー)として包括的に捉え様とする考え方である。
 自然環境から人間活動への資源の投入量(インプット)
 人間活動から自然環境への廃棄物の放出量(アウトプット)

b.エコロジカルフットプリント分析(Ecological Footprint:EF)

 カナダ、ブリテッシュコロンビア大リースら
 「人間活動の足跡(踏みつけた面積)」の大きさ、資源の供給元及び汚染の吸収源としての緩急をすべて面積に換算し、それにより環境負荷の大きさを測るという考え方である。

c.エコスペース概念

 オランダ 自然環境研究諮問員会(RMNO)、ヴッバータール研究所、地球の友オランダ等の提唱で地球上の資源の1人当たりの利用可能量を算出する。

3.最新事例

a.(事例1) 生きている地球レポート(2006)

 WWF(World Wide Fund)、ZSL(Zoological Society of London)、Global Footprint Networkが行っているレポートを取り上げる。
 世界の生物多様性の変化の状態と、人類による自然資源の消費の結果、生じる生物圏への圧力について述べたものであり、2つの指標を中心にまとめられている。
 1つ目は地球の生態系の健康度を示す「生きている地球指数(LPI:Living Planet Index)」、2つ目はこれらの生態系に対する人類の需要の程度を表す「エコロジカル・フットプリント」である。

b.(事例2)    EPI(Environmental Performance Index)2008

 Yale Center for Environmental Law & Policy Yale University
 Center for International Earth Science Information Network(CIESIN)
 Columbia University
 In collaboration with World Economic Forum Geneva, Switzerland
 Joint Research Centre of the European Commission Ispra, Italy
 EPIは、エール大学環境法政策センターを中心としてコロンビア大学、ワールド経済フォーラム、ECの4者が協力をして環境パフォーマンス指標を作成した。

c.(事例3) 国連Millennium Ecosystem Assessment 2005年3月

 国連Millennium Ecosystem Assessmentでは、下記4つのシナリオに基づき生態系と人間生活について2050年をターゲットとして推計を行った。4つのシナリオを作成。

イ)世界が結束

ロ)力による秩序

ハ)モザイク適合

ニ)テクノガーデン

このシナリオにのっとり2050年の世界の推計を行った。

6.自然資源の統合的管理の事例調査(国内)

(1)岐阜県森林関係機関の事例

 森林が果たすべき社会的な機能はきわめて多面的で、国民の各層が森林に寄せる期待も多様である。森林資源の統合的管理というのは、こうした多面的な要求に応えられるように管理することであろう。これまで森林利用についての全体的なデザインは中央政府や地方政府の担当になっているが、現実にはそれぞれの機能に即して別々の部局で計画がつくられ、全体を統合するというのは生易しいことではない。またわが国の森林の多くは地形の険しい奥地に所在することが多く、踏査をベースにして正確なデータを得るのが非常に困難で、それが足かせにもなっていた。ようやく近年になって、空中写真や衛星画像のデータが広く利用できるようになり、情報処理技術の飛躍的な発展もあって、状況が大きく変わりつつある。特に目立つのは、各部局ごとに独自のGISをつくって、課題ごとにさまざまな解析や応用がなされるようになったことである。しかしそれぞれの部局が関係する地理空間情報をそれぞれ管理し運用する方式には問題が多い。それを統合すれば、情報の交流、共有、公開が可能になり、同時に縦割り行政の弊害を打ち破ることもできよう。
 岐阜県が整備を進めてきた県域統合型GISの画期的な点は、個別GISの共通のベースとして共有空間データが準備され、業務ごとに作成されたデータの重ね合わせが可能になったことである。この報告では、個別的な事例の紹介にとどまっているが、これらを重ね合わせることにより、相互の矛盾や問題点を容易に発見することもできるであろう。統合的森林資源管理というのは、1人の全知全能な計画者が描き出すような性質のものではない。課題ごとに作成される個別空間データの重ね合わせを通して、問題点を是正しつつ、国民各層の合意を得ていくのが、現実的なアプローチであろう。そのような意味で共有できる地理空間情報の整備は統合的な森林資源管理を進めるうえできわめて重要な意味をもっている。

(2)宮崎県農林牧業関係機関の事例(宮崎県諸塚村と高千穂町の牛放牧利用)

 宮崎県諸塚村、高千穂町は、ともに九州山脈に位置しており、総面積の90%前後を山林が占め、人口の減少と高齢化の進行が著しい中山間地域である。ここでは牛を育成林や耕作放棄地等に放牧し、飼料の自給化をはかるとともに景観の保全の実効をあげており、牛放牧が自然資源の管理に大きな役割を果たしている。
 諸塚村は総面積に占める山林の割合が94.9%にも達しており、林業が第1次産業の柱を担っている。木材、シイタケ、和牛、茶が主たる生産物である。財団法人ウッドピア諸塚を設けて森林管理の受託を推進しているものの、基本的に林業労働力は不足状態にあり、間伐、枝打ち、下草等の手入れに苦慮しているのが実態である。植林後7~8年の育林期間中に下草の刈取りが行き届かないと、雑草等が繁茂して日陰をつくるため樹木の生育が妨げられることになる。このためこれまで畜産に重きを置いて行われてきた林間放牧に加えて、林業と畜産とを複合させ、育林期間中の下草刈りをねらいとする「育林放牧」への取組みを99年度から開始した。育林放牧は畜産振興センターの所有する牛を無畜農林家に預託し、農林家は預託料をもらいながら牛に林地の下草刈りをさせるシステムが主となって展開され、一時は約52haにまで普及した。技術や環境対策も確立されてはきたが、その後林業情勢が厳しくなるのに伴って育林そのものが減少し、これに連動して育林放牧は減少してきているのが実情である。
 育林放牧は、林地の下草刈りによる森林管理、林業労働の省力化、畜産経営における粗飼料の自給化、牛の健康増進、鳥獣害被害の抑制等の直接的効果を発揮している。これにとどまらず、林業立村を基本に、「百彩の森づくり」による全村の森林公園化をめざす諸塚村にとっては、育林放牧によって手入れされたきれいな林地と、そこで草を食む放牧牛のいる風景は、都市部からの来訪者にとって魅力のひとつともなっている。
 また高千穂町は農用地が急傾斜地に点在しており、水稲をベースに肉用牛、葉タバコ、野菜等の複合経営が展開されている。農業者の高齢化や後継者不足等により遊休農地や耕作放棄地が増加して荒廃化は著しく、景観も悪化するとともに鳥獣害も拡大してきた。そこで先進県の視察等も踏まえ、今狩牧野営農組合を結成して06年度から耕作放棄地での放牧を開始した。繁茂していた雑草は牛によって“舌刈り”され、景観は一変してきた。またその効果をみて放牧を委託する農家が増加しており、直近では30戸の農家(一部実施希望を含む)により、10haでの放牧が行われている。放牧用の牛は営農組合のメンバーがそれぞれ畜舎で飼養していた牛を利用しており、放牧によって景観の回復や農地の保全がはかられただけでなく、粗飼料の自給化とともに繁殖牛1頭当たり年間2~3万円のコスト圧縮が可能となり、加えて畜舎で飼養していた牛の一部を放牧にまわしたことから畜舎の飼養密度にゆとりが生まれ衛生状態の向上をもたらしている。
 高千穂町は自然や史跡も多く観光地として全国的に知られており、放牧による景観整備による観光に対する効果も認められる。さらに当地は優良牛の産地でもあり、繁殖牛の放牧は健康で素質のいい子牛の供給を可能にし、銘柄牛産地を基礎から支えている。
 これらの取組みを可能にしたのは安価で機能的な電気牧柵の登場によるところが大きいが、国や県等の支援なくしては成立し難い。また育林放牧を展開していくためには育林自体が行われていること、すなわち林業経営が成り立っていることが前提となる。
 育林放牧、遊休農地での放牧は下草、雑草等の処理にかかる労働を人力ではなく牛に交替させるものであり、高齢化、担い手不足が深刻な中山間地等では貴重な役割を果たしている。さらに国民経済的に見ても、1.豊富にある草資源を粗飼料として供給することをつうじて、食料自給率の向上をもたらす、2.農林地や草地等の地域資源を畜産の粗飼料として活用することによって、畜産経営の低コスト化を可能にする、3.耕作放棄地等がきれいになり、農地としての復元も可能になるとともに、鳥獣害の抑制にもつながり、定住条件が維持される、4.景観の保全が都市住民が農村と交流していくための重要な環境整備を果たすことになり、中山間地等の活性化にもつながってくる、など放牧による自然資源管理は貴重な役割を果たすと同時に、中山間地の活性化をめざすための統合的管理手法導入の事例として、さらに外部からの支援をすすめる必要がある。今後耕作放棄地の一段の増加が懸念されており、放牧の重要性はますます高まってくるものと考えられる。

(3)愛媛県水産関係機関の事例(県漁業協同組合連合会等)

 水産の課題は大きく分けて4点ある。
 1つは、日本は1984年には1,282万トンを漁獲する世界一の漁業大国であったが、2005年には576万トンと半減し、首位の座は4,000万トン近く漁獲する中国に譲っている。こうした減少に伴って、産業の質的転換が必要になっている。
 2つ目は、漁場環境の問題で、日本でも問題だが、世界的で人口の増加に伴う廃棄物の増加は重大で、処理されるにしても一部は、最終的に海洋に蓄積される。特に、排水、廃棄物管理が追いつかない新興国による排出は問題で、海流のたどり着く先にある日本近海にも影響を及ぼしている。
 3つ目は、資源管理の水平的、垂直的拡大で、すなわち、TACで8種が指定されているが、海洋生物は多種多様であり、対象種を広げていく必要がある。また、資源量推定については、毎年見直しを図り、精度の向上が求められる。
 さらに、水産で最も欠けているものに水産振興に関わる制度や知的財産、情報などのソフトの不足がある。人材育成も入るが、近年の水産高校での定員割れ、高校の再編に伴う水産高校の縮小は人材確保の点から深刻である。背景にある労働環境の問題の改善を探るべきである。漁労は「3K」「戸板一枚は地獄」と称される苛酷な労働状況は問題で、また、一攫千金を夢見るのではなく、安定した給与収入、安全で魅力的な職場に換えることが欠かせない。漁村は過疎化していて活力を失いつつあるが、2004年に日本学術会議の答申を受けて水産庁がまとめた「水産業・漁村の多面的利用」にあるように、地産地消とそれらを組み合わせた統合的管理を念頭においた振興策が求められる。
 愛媛県に限らず、日本各地の水産業の状況は、3重苦、すなわち漁船の燃料油高騰、漁価低迷、後継者不足に喘いでいる。しかしながら、愛媛県では比較的対応がまとまっていて、そうした困難な状況は緩和されている。対応策として、厳格な漁場管理、生産を漁業だけではなく、養殖産業振興にも広げ安定生産を図る一方、生産される漁獲物のブランド化、従来の流通機構に頼ることなく、直販体制を築き漁家所得向上に務めたことにある。なにより、水産漁業を指導する組合の長が、問題点の把握に努め、確固とした方針を立て、着実に実行していくリーダーシップが発揮されていることが順調な起因と考えられる。

7.自然資源の統合的管理の事例調査(海外)

(1)中国東北部の黒竜江省(林業地域)における事例調査

1.中国林業地域における天然林資源保護事業

 中国では、度重なる戦争・自然災害・人為的な伐採などにより天然林面積の急激な減少、質の低下が進行し、天然林資源の枯渇とともに、水源涵養機能・国土保全機能・生物多様性保持機能・非木質林産物供給機能などがいずれも大幅に低下するなど、経済・社会の持続可能な発展を支える基盤能力の脆弱化が危惧されている。
 折りしも1998年に発生した長江などの大洪水を契機として中国共産党・国務院により出された、「長江、黄河上・中流域の天然林伐採の全面的な禁止、及び森林工業企業体の営林・管理保護への転換」という方針に基づき、国家林業局、国家発展計画委員会、財務部、労働・社会保障部により、2000年に、それまでの天然林保護事業の実施範囲を拡大し保護を強化した、「長江上流、黄河上・中流地域及び東北・内蒙古等重点国有林区における天然林資源保護事業の手配実施に関する通知」(林計発[2000]661号)が公布され、同年、天然林資源保護事業が本格的にスタートした。
 これは長江上流、黄河上・中流地域、東北・内蒙古等の重点国有林区、及びその他の地域における天然林の厳重な保護や、積極的な育成・保育及び回復などの、天然林資源の効果的な保護と合理的な利用を通じて、各種公益的機能の発揮による生態環境の改善を進めると共に、天然林における木材利用中心から生態利用中心への転換を実現させ、あわせて下流域の各種災害を防止することを目的とした森林資源の統合的管理である。
 中国の天然林面積は約1億haであるが、そのうち7,300万haの天然林が長江や黄河流域、東北・内蒙古、及び海南・新疆など17省(自治区、直轄市)に分布している。
 それらの地域においては、基本的に地域ごとの自然環境条件や天然林生態系の状態に合わせて、土壌などの自然環境条件が優れており良好な林相状態を呈する天然林においては、管理・保護を強力に進めることにより生態環境機能の更なる発揮を図るとし、森林破壊が深刻で順行遷移が遅々として進まないか逆行遷移を起こしている天然林については、天然更新の人工促進と保育強化などの措置を講じることにより、順行遷移の進行を加速すると共に、順行遷移の安定性を高め、自然力による病虫害生物の防除能や耐火性を高めることとしている。
 また、森林区の経済構造や産業構造の発達のため、森林区の後続産業の積極的な育成、エコツアー地区や野生動植物飼育・繁殖センターの整備を図り、森林区における第3次産業の発展を促進する政策も取り入れられている。

2.中国東北部の黒竜江省における天然林資源保護事業

 東北部(黒竜江省)の重点国有林区は大きく、大興安嶺森林区、小興安嶺森林区、長白山脈森林区に区分される。それらの森林区においては、事業区の林業用地を、(1)山頂・稜線部、生物多様性に富む地域、及びその他の生態環境が脆弱な地域を禁伐区とし、既存林の保護と回復のため森林伐採を全面的に禁止し、法に基づいて厳重に保護する、(2)生態環境が比較的脆弱な地域であるが回復力が比較的大きい地域を伐採制限区とし、森林伐採方式を適度な択伐、或いは保育間伐を行う施業に改め、木材生産量を削減する、(3)地形が比較的なだらかで土壌条件も良好であるなど自然環境条件が優れており、土壌流亡の影響を受け難い地域を商品林経営区とし、集約経営方式を採用して、早生多収穫用材林、短周期工業原料林、果樹などの経済林の造成に力を入れ、木材及び林産物などの森林資源の持続的生産を図る、に区分している。
 重点国有林区の管理・保護に関しては、事業区内の森林分布及び地理環境の特徴に基づいて、(1)交通が不便で人が少ない遠方の山地の森林においては、山を封鎖した上で管理・保護を行い、森林管理・保護専門チームを組織して任務に当らせる、(2)交通の便が比較的良く、人口密集地に近接している山地の森林においては、森林管理・保護責任区の区分を行い、個人による請負を実施する、に区分している。
 林木以外に開発・利用が可能な資源が豊富で利用価値が高いといった特徴を持つ森林区については、個人による請負を展開する過程で、森林の管理・保護に特用林産物の開発・利用を有機的に結び付けることとしている。
 事業の実施によって、(1)事業区内の林業経営方向が、木材生産中心から森林保護及び発展中心へと転換し、森林資源の回復及び成長速度が加速した、(2)森林区経済が「一つの産業のみに頼る」という状況から、多角経営へと転換し、一部の地域に良好な発展傾向が見られる、(3)植生整備が単純な造林から造林と管理の同時並行へと転換し、生態系整備の歩みが大幅に加速した、(4)森林区の従業員の就業ルートが「大企業」のみへの依存から、多元化へと変化し、就職ルートがさらに広まった、(5)企業の従来型の管理体制から、現代企業制度の構築への転換を推し進め、企業の発展に活力が注がれた、など、森林区の林業経営思想、経済構造、産業構造に著しい変化が生じた。

(2)中国西北部内蒙古自治区(農牧地域)における事例調査

1.中国における退耕還林事業

 長江上流、黄河上・中流地域では傾斜地での森林破壊による開墾が進み、激化し続ける土壌浸食によって中・下流地域では水害の激化と共に水資源の不足が引き起こされるなど、現在、中国が直面している最も切迫した、最も重要な問題のひとつとなっている。
 そのような限界農地での耕作を中止し水土保全のために植林などにより植生の回復を図る、いわゆる「退耕還林」の実施によって、中国の土壌浸食問題を根本から解決し、水源涵養機能の向上、長江、黄河流域などの地域の生態環境の改善を図り、それらの下流地域での水害を予防し既存の土地の生産力を高めると共に、平地地域や中・下流地域における工業・農業などの発展を促進することを目的として退耕還林と呼ばれる統合的自然資源管理が行われている。
 1999年、中国は「退耕還林、封山緑化(山を封鎖して育林措置以外の一切の人為活動を禁止する育林方式)、食料給付による山村農民救済、個人による請負」という統合的管理措置を打ち出した。それを受けて1999年に、四川、陝西、甘粛の3省で退耕還林パイロット事業が開始され、2000年には対象地が長江上流及び黄河上・中流地域にまで拡大され、2001年に、中国の国民経済・社会発展「十五」計画(第10次5ヵ年計画)の国家レベルの重点事業に退耕還林が正式に組み込まれ、2002年に全国的規模で退耕還林事業が本格的に開始された。
 全国土における1999~2007年の植林達成面積は2533万ha(年平均280万ha)であり、そのうちいわゆる狭義の退耕還林地は927万ha(37%)、荒廃地などの非耕地植林地が1,606万ha(63%)となっている。
 中国歴史上例がない大面積植林地を造成する事業であるが、農家の長期的生計を担保する構造的な問題は未解決であり、一部の農家では補助期間の満期(一般の生態公益林:8年、果樹園などの経済林:5年、還草地:2年)に伴う困難な状況が生まれた。そのため、国務院は補助期間の延長と退耕還林の成果の定着及び農家の直面する当面の困難と長期的な生計問題の解決を旨とする退耕還林政策の改善に関する国務院通知第25号(2007年8月9日)を公布した。
 同通知の基本原則は、1.植林面積の増大を最重要視する政策を改め、退耕還林政策による植林を抑制し、食料生産のための農地1億2,000万haを確保する、2.これまでの退耕還林政策による成果を固める方向を重視し、補助期間を延長する、3.基本農地、農村エネルギー施設、生態移民などを通じた構造政策により農家の長期的生計の確立を図る、4.生態林と経済林の比率を撤廃し農民に任せ、間作も認める、などである。

2.内蒙古自治区における退耕還林事業

 内蒙古自治区は、中国北方の過剰な森林伐採、開墾、放牧による土壌侵食や生態環境悪化の激しい黄河中流域に位置し、総面積1億1,830万ha、総人口2,386万人である。耕地面積が698万ha、その中に、急傾斜の耕地が212万ha、沙化(=沙質荒漠化;沙漠化の一種)の進んでいる耕地が280万ha存在する。
 森林の面積は1,870万haで、森林被覆率は15.8%である。
 2002年の退耕還林事業実施以来の全自治区累計植林達成面積は244万haであり、その内訳は、狭義の退耕還林地が92万ha、荒山荒地造林が142万ha、封山(沙)育林が9.3万haである。事業実施の対象は、自治区内の12盟・市(内蒙古自治区は一級行政単位である5つの市と7つの盟に分かれている)、96旗・県、830郷(鎮、スオウ(蘇木))、8,731行政村、149万農家537万農民にわたる。
 退耕還林事業の退耕地分92万haの内、25度以上の傾斜耕地は5.8万ha、16~25度は20万ha、5~15度は42万ha、5度以下は24.4万haである。
 生態林面積は91万haであり主要な植栽樹種は、檸条(コバノムレスズメ、Caragana microphylla)、山杏(ヤマアンズ、Prunus sibirica)、ポプラ(Populus sp.、樟子松(モンゴルアカマツ、Pinus sylvestris)、油松(マンシュウクロマツ、Pinus tabulaeformis)、白楡(マンシュウニレ、Ulmus pumila)、沙柳(サリュウ、Salix psamophila)、沙棘(サージ、Hippophae rhamnoides)、枸杞子(クコシ、Lycium chinese)、旱柳(カンリュウ、Salix matsudana)、梭梭(ソウソウ、Haloxylon ammodendron)などである。
 その他6,700ha弱が経済林であり、残りの67haが退耕還草地である。
 退耕還林事業実施以来、国家は内モンゴル自治区へ累計106億元を投資し、造林補助、農民の生活補助、食糧またはその換算現金による補助を行った。2007年だけで、22億元以上の補助があり、退耕還林農家の人口1人当たり412元の計算になる。
 退耕還林事業の実施は、生態環境の改善のみならず、自治区内における農牧業地域の市場開拓、内需拡大、地域経済の持続的かつ速やかな発展をもたらすなど、その歴史的意義は大きい。

(3)中国南部雲南省(自然観光地域)における事例調査

1.雲南省として:

a.山地の高度差が大きいので、氷河から熱帯雨林・サバンナまで、中国内の省として唯一で最も大きな多様性が存在する。これが動植物の種の多様性を生じている。この状況を十分に取り込んだ企画・計画をたてるべきである。

b.国内的には冬の避寒地として気温・日照・日射の優位性を強調し、高山の氷河風景を取り込んだ自然資源を市場に提供すべきである。特に、春節で帰国した華僑(南部出身者が多い)の人たちへの宣伝・対処をさらに考慮すべきであろう。

c.最近数年の観光客数・観光業からの収入の増加率は大きい。しかし、世界的な感染症(SARS)が深刻化した2003年の落ち込みは、前年の同じ月と比較して約20%も減少し、多大の経済的被害を受けた。このような突発的な災害にも十分対処できる企業の体力を育成しておく必要がある。

d.雲南省には東アジア(日本・韓国)の他に欧米からの観光客が多数来る。上記のようなリスクを計算に入れても将来性が高いので、このような人達の誘致を積極的に行うべきであろう。

e.地球温暖化の影響で、夏の高温はさらに上昇する。観光客の熱中症対策・健康管理、観光施設の冷房整備などが重要である。また、都市ではヒートアイランドの強化により、高湿化・低湿化が進む。これは大気汚染・細じん量などが多くなり、深刻化する傾向につながる。都市部を中心に展開している観光園・観光森林公園などでは十分に考慮しておかねばならない。

2.昆明・西双版納において:

a.盆地底の谷底における霧日数・霧の発生時間は、近年減少の一途をたどる。これは地球温暖化により高温化と乾燥化が進行し、夜間の冷気湖の形成が弱くなった(時間が短くなり、冷気湖の深さが浅くなった)ため、冷気湖内の霧の発生が減少したのである。前記のeにも関係する。

b.現在、試みられている民族文化生態村のモデルは経済を主体とした市場体制に適応するために参考になる。特にこのモデルに従って、組織化し推進してゆく手順は統合的な管理システム確立の具体例として参考になる。

c.少数民族が進めて来た伝統的な祝祭・生活習慣・住居形態など観光資源として大きい意味をもっている。さらに新しく設定されたイベントは観光客数を増加させ収入を増加させるが、少数民族の主体性を十分に考慮に入れる必要がある。

d.また、民族村、民族園などにおける経営上、イベントの演者・企画・運営母体への支援の割合が大きく、住民・労働者への給料に必ずしも反映しない場合が多い。地元をどれだけうるおすか、今後の課題であろう。

e.少数民族間、例えば、タイ族(谷底・盆地底を主として生活する)と山地頂上部に住む他の少数民族との差を観光資源の展示において強調する。この雲南省南部の特徴をアピールすることは重要であろう。

 以上をまとめて、統合的管理を行わねばならない。統合的管理には、(a)資源状態の適正化と、(b)観光資源の適正化が重要である。このうち、資源の適正化においては、生態的な見地からの環境収容力を評価することが大切で、特に社会的な見地を欠くことはできない。さらに、昨今のIT化時代においては、情報価値の付加が重要である。

表7‐1 雲南省における観光産業を中心としてみた自然資源と統合的管理

 

 

 

 

自然の特徴と課題  西双版納の例 
地球規模 でみて 地域的 (全中国)でみて 局地的(雲南省)でみて 漢族 タイ族 その他の 少数民族
面積 136,184,000km2 9,634,000 km2 390,000 km2 19,100 km2 
人口 6,486,253 人 1,323,345,000 人 42,300,000 人 852,900 人 
自 然 資 源 地形 大地形。 大地形。 中地形。 小地形。 小地形。 斜面下部、谷底。 小地形。 山頂部、斜面上部。
気候 大気候。 地球規模の気候変動・変化。 大気候。 アジアの気候変動。 中気候。 局地気候。 近年の気候変動。 局地気候、小気候。 近年の気候変動 局地気候、小気候。 ( 朝霧。日照日射条件わるい。 ) 局地気候、小気候。 ( 盆地・谷間の朝霧の上限より上に居住、土地利用。 )
統 合 的 管 理 管理・労働・産業 行政責任者。 農林業従事者。 第3次産業経営者。 盆地底・谷底で水田耕作、その他農業労働。 山頂部・斜面上部で焼畑、近年はゴム園労働、野菜・果物など。
観 光 業 への参画 国際的アクセス、市場の開発。 国内観光客の流れ、季節性への対応。 省経済への貢献。賃金労働者数の増加。観光関連施設・設備投資。 企画・運営・経営。 運営・労働・経営。 伝統文化の保存・提示。 労働・経営。 伝統文化の保存・提示。

 中国雲南省の例で言うならば、中国の国内外の変化にすみやかに対応し、さらに、地球温暖化の直接・間接の影響、特に山地の森林破壊・盆地にある小都市の都市化に敏速に対応して将来計画をすべきである。近年、中国全体及び雲南省では、第3次産業の比率が高まりつつあるが、この中で特に観光業の地位は大きく高くなりつつあるので、観光の統合的な管理の重要性が増している。
 今回は西双版納の例としてまとめた。表7‐1を『現段階における統合的管理のまとめ』とした。
 今後の課題としては、この表のボックス間の現象の流れの方向、速さなどを研究し、その対策・設計・実施・運営などを提案し、実行に移すことである。

8.わが国の自然資源の統合的管理のあり方と必要な技術開発

(1)今後の国土に関する統合的管理等

 わが国の自然資源の基本要素である水と土地資源をめぐる社会的背景は、1990年以降著しく変化している。また、災害をめぐる社会情勢もまた、水関連の災害のみならず、その他の災害も同じく、被災地の土地条件及び周辺状況は、近年著しく変わっている。加えて気候変動により、災害発生条件は厳しくなっている。
 気候変動によってわが国では豪雨の機会が激増しつつあり、加えて降雪量の減少傾向が今後とも継続することなどが、昨年のIPCCの第4次報告及びその執筆者たちによって明らかにされている。従って、今後の日本列島においては、大洪水の頻発による大水害発生の危険性、融雪量の減少と早期流出により、夏季に渇水発生の確率が増大する。これらの対策は、従来通りのハードな対策のみでは到底国土を守り切れず、警報システムの避難対策の整備、特に危険地からの移転計画を含むソフト対策に多くを依存せざるを得ない。
 気候変動による海面上昇も、四方を海に囲まれ広大なゼロメートル地帯を3大都市圏に持つわが国としては重大問題である。IPCCの予測によれば今世紀末の海面上昇は、最大59㎝である。満潮高潮時の東京、名古屋、大阪の3大都市圏のゼロメートル地帯は、名古屋878km2、東京322km2、大阪384km2にも達する。東京ではこの322km2の人口は約415万人に達する。ここに予想される高潮による大災害への減災措置に極め手はない。的確な情報伝達と避難などのソフトと従来通りのハード対策との両面作戦に頼ることとなる。全国の沿岸部や河川上流部で人口密度の低い地域からは移転計画を樹て、沿岸、河川中流部では、沿岸の湿地、沼沢地、休耕田などを極力利用して、洪水調節地として役立てる方針を考えたい。
 気候変動が第1次産業に与える影響は甚大である。もはや土地資源に根ざす農林業は、経済効率でのみ考慮せず、国土を防衛し、自然保全事業の一環として捉えることを基本理念とすべきである。その観点に立てば、水田は水循環の基盤であり、農業用水路は農村文化の拠点である。つまり、自然との共生の場が農林漁業である。
 水資源の開発、保全、利用の社会的背景もまた1990年代以降、大きく様変わりしている。水源はかつてはダムなどの河川開発であったが、現在では河川水、地下水、下水処理水、雨水、そして海水淡水化ときわめて多様化している。本来ならば、それらを統合的管理をする国家戦略が理想である。その第一歩として上下水道の一元化、河川と下水道の都市排水対策の一元化が期待される。
 現在、上下水道界における新たな難問への対策として以下を提言する。
 上下水道の外国資本からの民営化の波に対して、公共性を確保できる制度と組織を早急に設ける。
 水の統合的管理は、原則として流域圏単位であるべきであり、そこに各種利用者が平等の権限で参加すべきである。
 治水においても水資源利用においても、つねに健全な水循環の持続可能を保証する仕組みを構築する。
 現在の新しい水事情を打開するためには、そして上述の各項目を実現するには、各種水法の上に水政策の理念を問う水基本法、もしくはそれに準ずる法規制が望ましい。気候変動、水問題の国際化によって新たな難問を迎えた状況に鑑み、この対処を検討すべきである。
 水、エネルギー、食料は、それぞれの部門ごとに独自に最終目標を定めるのではなく、この3者はきわめて密接不可分であることを認識し、その相互関係を把握し、3者を一元的視野で統合的管理を目ざすべきである。

(2)自然資源の統合的管理に必要な技術開発、ソフト資源開発並びに予測技術開発

 持続型社会へ向けての科学技術の在り方に関しては、2002年に「持続型経済社会の実現に向けた科学技術」の今後の在り方について、「情報ヘッドクォータの創設」については、2001年11月22日に公表された経済財政諮問会議、循環型経済社会に関する専門調査会で下記のように政策提言されている。
《情報ヘッドクォーターの創設》
 循環型経済社会の実現に向けては、極めて複雑で多様な側面があり、知識・情報の体系化・構造化が不可欠であり、「循環型経済社会推進のための情報ヘッドクォーター(仮称)の創設」が提言される。主たる目的は、下記2点に要約される。

  • 知識の構造化・データの共有化システムを構築、各種取組の成果を蓄積
  • わかりやすい情報提供、世界への情報発進、予測に必要な情報収集

1.持続型社会への基本的な考え方

a.持続型経済社会の実現に向けた科学技術

イ)研究開発の基本的方向性
 持続型経済社会を検討する側面としては、物資・元素収支、エネルギー収支、微量有害化学物質管理、水資源収支、生態系の保全等物質的な側面と、それを受け入れるまたは用いる人間社会や経済などの人文・社会的側面の両面がある。従って、持続型経済社会の実現には、自然科学と人文・社会科学を融合させた取組みが重要である。

ロ)取り組むべき具体的な研究課題例
〈自然科学と人文・社会科学を融合させた取組みに関して〉

  • 物質的な側面の課題
  • 自然科学と人文・社会科学を融合させた取組み

〈総合的な評価基盤の形成に関して〉

b.研究開発の推進方策

イ)自然科学と人文・社会科学との融合のための方策

  • 既存の学問的枠組みを前提とした分類にとらわれない研究資源配分や評価
  • 自然科学と人文・社会科学との融合によるプロジェクトを優先するなどの動機の付与
  • 両分野の研究者や技術者の参画による目的を絞り込んだ政策追求型の研究プロジェクトの形成

ロ)総合的な評価基盤の形成のための方策

  • 技術開発の進歩や国際的取り決め等、さまざまな状況変化に対応できる機能を持った「持続型経済社会を推進するための情報ヘッドクォーター(仮称)」の創設
  • 社会の各層及び各分野と総合的な評価基盤の間を有機的に結ぶコミュニケーション手法の開発

ハ)人材の育成・確保のための方策

  • 分野横断的で新たな境界領域の研究を受け容れる学術雑誌の創生などによる研究発表の場や仕組みの形成
  • 境界領域への優先的な研究資源配分や境界領域の研究者・専門家としての正当な評価

ニ)国際的な取組みの推進方策

  • 科学技術振興調整費の活用も含め、国際協力を確実に実行に移すための国際会議の開催、国際共同研究の実施、専門家派遣等の動機的な推進
  • 科学技術振興事業団や日本学術振興会の諸事業を通じた国際共同研究の一層の強化

ホ)研究を社会経済活動や市民生活に反映させるための方策

  • ビジネスモデル、環境モデル及び都市モデルに関して、都市・田園等の一定地域における政策立案・決定と科学技術が融合する社会実験的な取組みを進めること

〈「サスティナビリティ・サイエンス」の創生に向けて〉

  • 「サスティナビリティ・サイエンス」の概念
  • 「サスティナビリティ・サイエンス」の方向性

などが考えられる。

2.統合的自然管理に必要な技術開発、ソフト資源

a.指標の開発とデータの収集整理

 総合国力概念にしろフットプリント概念による表現にしろさまざまな指標の開発とそれに関するデータの収集整理が必要なことは言をまたないが各システムが閉じた系(システム)で行われているところに大きな問題点があると考える。また、資源の観点を中心としたシステム、特にソフト資源はシステムとして十分に考慮されていない。
 望ましい研究開発の在り方として、時間の短期、中期、長期的視点と資源のストックの概念、資源のフローとしての概念について、従来からの管理的発想からではなくマネジメント(ガバナンス)の概念をシステムのダイナミズムの中に包含していることが重要である。そのためには、統合的資源管理の考え方の中に、市場原理ばかりでなく官の役割の見直しも含めたガバナンスの総合的な検討が必要である。さらに、関連する知識の統合的な体系化・構造化が必要である。エネルギー資源を考察すれば、1次エネルギーのように資源そのままを利用する場合もあるが、実際には2次エネルギーとして利用するように多様に形や利用形態を変えて利用される。また、原油価格の高騰により従来は価格競争力がなかったバイオエネルギーが急に政策の柱になりさまざまな穀物を転用する事態が発生している。これらの状況からみると資源としての統合的管理の視点からは、単なる市場原理にまかせるばかりでなく新たなガバナンスのシステムが重要である。

b.体系的・構造的な知識の整理

 知識の体系化・構造化が必要となるのは、専門外の人々へのアカウンタビリティばかりでなく「知識の細分化と対象の複雑化」の中で「全体像が見えない」ことを解決するためである。
 また、ネットワーク型統合知識基盤(視点に応じた像、シミュレーション機能、可視化機能、常に更新する機能、データベース、知識ベース、法・規制、国際情勢)が必要でありネットワーク上の分散協調型システムとしてWeb2.0の基盤技術としてのXML Web Servicesを中核としてインターネット上のiDC(インターネット・データ・センター)のアーカイブ能力、コンピューティング能力、仮想化能力、セキュア能力等をフルに活用したディレクトリサービスを担う情報ヘッドクォーター(途上国型→先進国型への戦略構築システムの進歩)のネットワーク利用の分散協調型システムの創設が望まれる。
 これら知識を体系化構造化するためには、さまざまなデータや情報を統合化してマネジメントする仕組みが必要である。そのためには、分散している情報やデータの所在情報(1次情報)ばかりでなく2次情報として知識化するためのネットワークを活用したシステム及び情報の信頼性を確保するためのメタデータ(情報だけでなく作成者、データの出所、過程等の情報が付加されている)としての位置づけが重要である。さらに2次システムにおいてもメタデータの活用により1次情報が追跡可能なシステムの考え方が重要である。また、デジタルでの長期的なデータの保存・活用の指針を示すことも重要である。

c.予測技術開発の必要性

 日本が開発した「地球シミュレータ」は各国に衝撃を与えた。それまで不可能と思われていた予測を可能にしたばかりでなく予測技術による信頼性のあるシミュレーションを可能にした。すなわち、衛星観測など進歩していた観測技術と結びつき予測技術のさらなる高度化を可能にしたからである。
 反面、経済並びに社会現象のシミュレーションについてみると、その基本構成の中心は人間であり、人間の行動には物理のような普遍性はない。
 しかしながら、関係する人間の行動パターン、経済状況や社会的位置などの初期条件を与え、さらに境界条件(周辺条件)を与えることによりシミュレーションが可能な分野も存在し研究も行われている。このように、社会科学分野のシミュレーションでは単なる技術の開発ではなく社会制度や文化といった従来の研究では考慮されなかった多元的な視点での総合的な研究が不可欠である。
 さらに、自然資源のシミュレーションを考えると社会科学的な問題ばかりでなく時間・場所のスケールの問題が存在する。
 すなわち、従来の科学的と言われるシミュレーションの多くは、短期的予測を可能にしたに過ぎない。初期値として現在もしくは一歩前のデータを用いて計算を始め現在の境界条件から計算をスタートせざるを得ない。自然資源のシミュレーションを考えると、短期的(ミクロ・スケール)、中期的(メゾ・スケール)、長期的(マクロ・スケール)にわけて考える必要がある。これらをシミュレートするためには、多階層での新しい考え方をしたシミュレーションモデルの研究が必要である。さらに社会的には、ローカルレベル、国家レベル、グローバルレベルといった、地域的特性も考えなくてはならず、時間の多階層だけではなく地域の多階層も考えなくてはいけない。さらに難しいのは、ミクロスケールの積み重ねがメゾスケール、さらにマクロスケールになるわけではなくそれらの関係が非線形性を持つばかりでなく階層毎に別の問題を解決しなくてはならないという難しさを伴う。しかし、研究方法としてコンポーネント化出来る部分から着手しコンポーネント間の関係性を記述しそれぞれの階層別に開発研究を進めて接点となるデータを初期条件・境界条件として受け継いでいくことは可能であると思われる。
 コンポーネント指向多階層モデルと呼べる分散協調型モデルで時間の3階層と組み合わせて地域(場所)の3階層の研究を進めることは今後の国家戦略ばかりでなく21世紀の人類にとって豊かな社会構造を考える意味でも重要である。日本において研究開発の方向性を示し世界に先駆けて早期に着手する必要があると考える。

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科学技術・学術政策局政策課資源室

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