資料1‐4 中間報告書(財団法人 日本食品分析センター)に関する意見

京都大学名誉教授 安本教傳

1.中間報告書に関する件

 中間報告書「新たなたんぱく質量の推定に関わるアミノ酸組成に対する検証分析調査中間報告書」、は、炭水化物、脂肪に関する検証結果、意見をまって、その推奨する方法の採用・不採用を判定すべきである。
 理由:食品の栄養成分を、それぞれのモノマー(たんぱく質は構成アミノ酸、炭水化物は構成単糖、脂肪(リン脂質を含む)を構成脂肪酸とグリセロール)のレベル、つまり腸管吸収されるに望ましいと思われる化学形態として表現するのが望ましい。一部の成分のみをモノマーレベルで表現し、残りはポリマーレベルで表現する、と言う混乱は避けるべきである。例えば、たんぱく質量をアミノ酸(モノマー)量として表現し、炭水化物、脂肪はそれぞれの構成糖類・脂肪酸の量として表さないで、従来通り、多糖・トリアシルグリセロール量として表す、という混乱はさけるべきである。

2.心配するほどでもないアンモニアの問題

 試料の加水分解物に、しばしば、有意に過剰のアンモニアが検出されるが、その由来はアミド態(アスパラギン、グルタミン)以外に、試料を塩酸加水分解中に吸収・混入されたアンモニア、さらには被験試料中のアミノ酸の熱分解に由来するアンモニア由来する。例えばトリプトファン、ついで水酸基を有するセリン、トレオニンは熱分解されてアンモニアを発生する。なお、厳密なデータの集積には、これらのアミノ酸は別途分析して分析値を追加するのが通例である。(2.04 アミノ酸分析法
 なお又、アシル残基の部分分子量をXとすると、アミド形態アミノ酸の分子量は、
X+16、遊離形態のアミノ酸の分子量はX+17、というように、遊離形態とアミド形態のアミノ酸の分子量は1しか違わない:例えば、もっとも小さなアミノ酸グリシンとグリシンアミドの分子量は、それぞれ75と76である。この差は実験誤差から考えると、ほとんど無視できる筈である。
 従って、検出されるアンモニアが、見かけ上、アミド態量を超えて過剰となるのは至極当然なことで、有意量のアミノ酸の分解によるとの証拠はない、と理解されたい。

3.炭水化物量の問題

 差し引き計算法による炭水化物量には、繊維が含まれる。従って、繊維を別途定量すれば(その定量法に問題なしとすることができないが)、差し引き計算による炭水化物量を求めることができる。しかし、単糖、二糖、少糖、デンプンは直接定量し、それらの和をもって、利用可能炭水化物量とすることが推奨されている。その詳細はFAOのホームページhttp://www.fao.org/docrep/006/Y5022E/Y5022E00.HTMに掲載の“Food energy ‐  methods of analysis and conversion factor”の4.3 CCARBOHYDRATE の項目を参照されたい。関連する項目の本文を以下に転載した。

Preferred ‐ available carbohydrate. For purposes of energy evaluation, a standardized, direct analysis of available carbohydrate (by summation of individual carbohydrates) (FAO, 1998; Southgate, 1976) is preferable to an assessment of available carbohydrate by difference (total carbohydrate by difference minus dietary fibre). Direct analysis allows separation of individual mono‐ and disaccharides and starch, which is useful in determination of energy values. Direct analysis is considered the only acceptable method for analysis of carbohydrate in novel foods or in foods for which a reduced energy content claim is to be made. When carbohydrate is determined by direct analysis, it is expressed as the weight of the carbohydrate with a conversion factor of 17 kJ/g (4.0 kcal/g). When expressed as monosaccharide equivalents, a conversion factor of 16 kJ/g (3.75 kcal/g) should be used.

September 8th 2009

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