資料1‐3 ”食品のたんぱく質量の新たな算出法と新しい 窒素ーたんぱく質換算係数 の考え方等について” に関するコメント

吉田 昭(名古屋大学名誉教授)

 食品のたんぱく質量の算定法は従来の食品成分表においては食品の窒素含量に 窒素ーたんぱく質換算係数 を乗じる方法が用いられてきた。この換算係数は基本的にJones(1941)によるものであるがデータは古く、その数値の正確さについてはかねてから疑問がもたれていたが適当な数値がなく、国際的にもこの数値に基ずく係数が用いられてきた。
 今回の提案ではFAO(2003)も好ましい方法として推奨する個々のアミノ酸残基の総量としてたんぱく質量を表わそうとするもので極めて望ましい方法と考えられる。
 さらに、新しい換算係数を提案しようとするもので優れた、先進的なものと言えよう。
 しかし、これらの方法は従来のものと大きく異なるので細部については理解不十分な点もあるが質問を含め若干のコメントを記述する。

1.アンモニアについては原則としてすべてアミド態の窒素に由来すると仮定しているが  試料には遊離のアンモニア、尿素なども含まれることがあるがそれらはどのように取り扱うか。
アンモニアが多い場合、 アスパラギン酸、グルタミン酸は全てアミド態として計算されるが問題はないだろうか。
参考として、グルタミン酸、アスパラギン酸がどのくらいアミド態になっているか酵素分解による分析データはないか。

2.この提案には ”基準窒素” と云う新しい用語が何回もでてくるが この用語は一般にはなじみがなく 理解が困難であるように思われる。この ”基準窒素”が改良ケルダール法による総窒素量から特定の食品に含まれるカフェイン、テオブロミン、硝酸などを差し引いたもの(つまり、たんぱく質に含まれる窒素と、由来のわからない窒素の合計)を示すものであれば、単純に改良ケルダール法による総窒素量としたほうが一般の利用者にとっては分かり易くないか。 特定の食品については別途補正することを示す。

3.本調査で検討するFAOが好ましいとする方法によるたんぱく質量は"五訂増補成分表"に示されているたんぱく質量に比べて減少することが予想される とのことであるがその理由は。

4.FAO報告書では “窒素ーたんぱく質換算係数”を用いることなく食品100g当りのアミノ酸残基の総量としてたんぱく質量を求める方法を好ましいとしている。
日本食品アミノ酸組成表でも 先ず 試料1g当たりのアミノ酸量を求め、これを基準にしている。したがって、FAO方式のように食品100g当りのアミノ酸残基の総量にアンモニアを補正してたんぱく質量を示すのが理解し易いのではないか。
 たんぱく質のアミノ酸組成が同じと考えられ、たんぱく質量が異なる食品に上記の数値を利用しようとする時には ”新しい窒素ーたんぱく質換算係数”が必要になる。

5.今回提案の骨子は次のように理解してよろしいか。
 1) アミノ酸分析値を基にアンモニア量を考慮したアミノ酸残基の総量でたんぱく質量を示す。
 2)上記のたんぱく質量をアミノ酸分析試料の窒素量(基準窒素量?)で除して新しい窒素ーたんぱく質換算係数を算出する。
 3)この換算係数を利用して五訂増補食品成分表のたんぱく質量を修正する。

6.炭水化物量の推定方法について
 従来の“差し引きによる炭水化物”でなく、今回は でんぷん、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖などを成分値として示すことは極めて望ましいことと考えられる。

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