研究開発基盤部会(第1回) 議事録

1.日時

令和元年6月6日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 部会長及び部会長代理の選任について【非公開】
  2. 運営規則等について【非公開】
  3. 部会での審議事項について
  4. 第6期科学技術基本計画に向けた検討について
  5. その他

4.出席者

委員

岸本部会長、藤井部会長代理、網塚委員、飯島委員、市川委員、江端委員、江龍委員、木川委員、菊池委員、佐藤委員、杉沢委員、高橋委員、田沼委員、中村委員、西島委員、野村委員、波多野委員、原田委員、横山委員

文部科学省

科学技術・学術政策局:局長 松尾泰樹、科学技術・学術総括官 角田喜彦、研究開発基盤課長 渡邉淳、研究開発基盤課 課長補佐 黒川典俊、研究振興局:学術機関課 課長補佐 吉居真吾

5.議事録

今回の議事は、部会長の選任等があったため、科学技術・学術審議会研究開発基盤部会運営規則第5条の規定に基づき、開会から議題2までは非公開。

議題1.部会長及び部会長代理の選任について
岸本委員が部会長に、藤井委員が部会長代理に選任された。

議題2.運営規則等について
資料2-1および資料2-2について承認された。

【岸本部会長】 それでは、よろしいでしょうか。
 改めまして、部会長の岸本でございます。第1回研究開発基盤部会につきまして、これより公開の議題に入りたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、これから2年間になりますが、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題は3番目になりますが、部会の主な審議事項を事務局より説明をお願いいたします。
【黒川補佐】 資料3研究開発基盤部会の当面のスケジュールをお開きください。まず、調査審議事項でございますが、2つございまして、「科学技術を支える先端的な研究施設・設備等の研究基盤の整備・高度化・利用」、それから2つ目が「複数領域に横断的に活用可能な科学技術」ということで、前者は特に当課で所管をしております先端研究基盤共用促進事業のフォローアップを含んでおります。2つ目は研究機器・共通基盤技術の開発方策等を御議論いただければと考えてございます。
 まず、考慮すべき文部科学省、あるいは政府全体の動きといたしまして、第6期の科学技術基本計画に向けた議論がスタートしております。文部科学省の科学技術・学術審議会総合政策特別委員会におきまして、6月27日に「研究力向上に向けたシステム改革」について、関係部会等における検討結果を報告してほしいとなっています。この部会では、今月はまずここの部分について是非研究開発基盤部会からの提言というのを御議論いただければと考えてございます。基本計画については、この夏からは、総合科学技術・イノベーション会議の方でもおそらく検討がスタートしていくものと承知をしております。
 2つ目が、下の枠囲みのところなのですが、5月13日の総合科学技術・イノベーション会議の本会議におきまして、総理の方からも「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」というものを、年内を目途に策定するようにということで御指示がございました。これは若者に魅力ある研究環境を整える、あるいは自分の研究に専念できるような仕組みを構築していくということで、本部会での審議の結果・内容などもここに反映していければというふうに思ってございます。
 したがいまして、当面のスケジュールとしましては、第1回本日と第2回6月25日に第6期の科学技術基本計画の検討に向けた論点を御議論いただきまして、6月27日の総合政策特別委員会に報告をいたします。それから第3回目以降、「研究力向上改革2019」、後ほど詳細は御紹介させていただきますが、それを踏まえた具体策を御検討いただきまして、総合科学技術イノベーション会議で策定をすることとされております「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の方に反映を目指していければと考えています。
 以上でございます。
【岸本部会長】 ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、何か御質問はございますでしょうか。ちょっと6月は忙しいということですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、特に御質問がないようでしたら、次に進みたいと思いますが、次の議題は「第6期科学技術基本計画に向けた検討について」ということで、議題(4)になりますけれども、進めていきたいと思います。
 事務局から説明のほど、よろしくお願いいたします。
【黒川補佐】 資料の4-1から4-6とたくさん資料がございますが、大きく分けますと、まず最初に総合政策特別委員会の議論を紹介させていただいた上で、文部科学省の研究開発基盤に関する取組を紹介させていただき、その次に「研究力向上改革2019」を御説明させていただいた上で、最後に本日御議論いただきたい事項ということで順番に御説明させていただきたいと思います。
 では、資料4-1、5月23日の総合政策特別委員会に提出された資料でございます。これは、研究力向上に向けたシステム改革について、こういうことの検討が必要ではないかということで論点として提示をされたものでございます。現状認識があった上で、真ん中のところがポイントでございまして、場当たり的な対策からの脱却とシステム全体を見据えた抜本的対策というのを第6期の科学技術基本計画に向けて検討していきたいということでございます。当部会に関係するところは左側でございますが、まず基本理念として価値創造の源泉となる基礎研究力の戦略的な維持・強化が必要という中で、目指すべき方向性の具体的対策というところの赤字でございますが、「世界最高水準の研究環境の実現」を図るということです。例としまして、最先端の研究施設・設備、研究支援体制を備えた研究拠点の整備、共用を文化として根付かせ、組織全体で研究設備・機器を集約・共用(コアファシリティ化)、スマートラボラトリの促進、技術職員の育成・活躍促進やキャリアパス構築等ということが掲げられてございます。
 2ページ目に、「世界最高水準の研究環境の実現」に向けたポイントが記載されています。これらの具体的な対策ということを、是非各部会の方で検討してほしいということで依頼を受けているところでございます。本日は総合政策特別委員会の動きがあることも念頭に、是非御議論いただきたいと考えております。
 次に、資料4-2でございますが、これまで研究開発基盤に関しまして、文部科学省の方でどのような取組をしてきたのかということについて御紹介をさせていただきます。1ページ目、研究開発活動において、「研究開発プロジェクト」とそれを支える「研究開発基盤」は車の両輪ということで、研究施設・設備・機器の整備・共用と、研究機器の共通基盤技術の開発ということで、当課の方で取り組ませていただいております。
 そして左の図が本部会で御議論いただく際に非常に重要な図でございまして、このピンクの真ん中のところ、それから緑、青と広がっている、よく3Cというふうに呼んでおりますが、右側に整理が書いてございます。ピンクのところは、共用促進法に基づく施設ということでございまして、SPring-8、SACLA、J-PARC、京、全国的な共用を前提に整備・運用しているところでございます。これらの設備等の規模は数百億円以上というものでございます。
 2つ目が、研究プロジェクト等で得た既存の研究設備・機器ということで、ここは緑の部分と青の部分で少しフェーズを分けて対策を講じてきております。まず、緑の国内有数の大型研究施設・設備につきましては、例えば放射光施設や、高磁場NMRなどがございます。これは各機関が既に所有をする大型の施設・設備をネットワーク化して外部共用をしようということでこれまで取り組んできております。文科省からの支援としましては、ワンストップサービス構築のための経費等を一定期間措置するということでやっております。
 それから青の部分ですが、これは各研究室等で分散管理されてきた研究設備・機器ということで、こちらはその設備の規模としては数百万円~数億円規模です。平成27年より前は基本的に競争的研究費で買ったものは、そのためだけに使うということだったのですが、ルールの改善を実施いたしまして、原則共用化を決定しました。これらのルールについては、文科省の競争的研究費の公募要領にもそのことを明記してございます。加えまして、科研費、JST、AMEDなどのいくつかの予算を合算使用して共用設備を購入するということを可能とするような制度改善を実施してまいりました。
 併せまして、学内の研究室での分散管理から研究組織単位での一元管理を目指すべく、機器の移設ですとか、共用体制を構築するための初期経費を支援するということで予算の措置もしてまいりました。
 3つ目、共同利用・共同研究のために整備した施設・設備等ということでグレーになってございますが、こちらは別途、学術分科会の研究環境基盤部会の方で議論をしております。具体的には、大学共同利用機関や、共同利用・共同研究拠点ということで、研究者コミュニティの要請に基づき、研究設備等を共同で利用し、共同研究を実施するものでございます。この部会では、主にこの緑と青の部分を中心に御議論いただくわけなのですが、同じような設備に関するものとして、こういうグレーのものも議論の材料として見ていただきながら御議論いただければと思っております。
 研究機器・共通基盤技術の開発についてはJSTの未来社会創造事業の中に共通基盤領域というものを設けまして、「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」ということをテーマに研究開発を実施してございます。全体はこの絵を少し念頭に置いていただきながら議論いただければと考えております。
 次のページ以降が、それぞれ詳細になってございますが、2ページ目のところはピンクの部分の大型4施設についての予算の状況ということで、4施設プラス、新たにポスト「京」ですとか、次世代放射光施設ということにも取り組んでございます。
 次に、3ページ目ですが、先端研究基盤共用促進事業、これが研究プロジェクト等で既存の研究設備・機器の共用化を進めていくというものでございます。緑の部分・青の部分、それぞれについての取組を進めており、さらに今年からはオレンジのものとして研究機器相互利用ネットワーク導入実証プログラムということで、前期の部会下にあった高度化委員会で御指導いただきながら事業を作り込んできたものでございます。
 4ページ目が、緑の部分の共用プラットフォームとして採択されているところです。それから5ページ目、共用プラットフォームの取組状況ですが、利用件数は増えてきているものの、利用料収入は若干、産業利用が一部減ったりをして落ちているときもありますが、一定程度ちゃんと出ているところです。それから、高度な技術支援の提供や新たな知の創出ということで、今まで利用されていなかった分野の方々が、このプラットフォームを利用することによって成果を上げているという事例が右の記載になります。
 6ページ目は、青い色のところですが、各研究室等で分散管理をされてきた機器を一元管理するということで、競争的資金で購入された機器の共用化、あるいは経営・研究戦略と一体になった設備・機器運営、「研究室レベルでの機器購入」から「研究組織レベルでの共助分担へ」ということを進めるべく取組を進めていたところです。7ページ目、本取組は70研究組織で進めておりまして、代表的な事業の波及効果として、修士・博士課程の学生が機器を使えるようになり非常に教育・トレーニング効果が上がったとか、産学連携の強化を含むいろいろな分野の人が使っていただけるようになったとか、あるいは若手研究者が共用機器を使うことによって速やかな研究体制を構築することができることになったというふうなコメントを頂いております。まずこの取組の具体的な成果事例としまして、東京工業大学さんではキャンパスに点在していたクリーンルームをこの事業の費用を使って集約をしていくことによってスペースの有効化、光熱費の削減、それから技術職員の集約等といろいろな成果を上げているというところです。
 下のところ、機器の共用化による成果の創出ですが、共用機器を使用した研究成果というのが、7割以上は機器提供者以外のものであると、ほかの人たちが使ったものということで成果が上がっているという事例でございます。
 さらに8ページ目、学内の共用から学外への共用を進めていく上で、地方の研究力の底上げにも資するような取組ということで、現在公募を進めているような事業もやってございます。
 9ページ目からは参考になりますが、分野別の取組で、国内有数の施設の共用化ということでナノテクノロジーの分野、それから11ページからがライフサイエンスの分野、それぞれ関連の分野別の委員会の方でも、それぞれの分野における設備の共用化ということを検討してございます。
 一番最後、13ページになりますが、研究機器・共通基盤技術の開発ということでは、未来社会創造事業の中で革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現ということで、基本コンセプトとして(1)、(2)、(3)、3つ掲げております。先端的な計測・分析技術の開発、データ解析・処理技術のアプリケーション開発やシステム化、研究現場の生産性向上に資する開発ということで、毎年度10件程度の課題を採択しながら取組を進めているところでございます。
 では続きまして、関連する取組としまして、学術機関課の方から御説明させていただきます。
【吉居補佐】 御説明させていただきます。資料4-3を御覧ください。私の方からは「共同利用・共同研究体制等について」ということで御説明をさせていただきます。
 1ページ目、共同利用・共同研究体制の全体像でございますが、そこの図に書いてございますとおり、大学共同利用機関4法人17大学共同利用機関、それから国立大学で30大学73拠点、その中で特に国際的な活動を活発に行っておられる拠点が4大学6拠点、それから公・私立大学で合わせて25大学30拠点が現在認定されてございます。
 これら全体としまして、上段に書いてございますとおり、個々の大学では整備できない大規模な施設・設備や大量のデータ・貴重な資料等を提供しつつ、国内外の大学の枠を越えた共同研究を促進するシステムとして機能してございます。
 2ページ目、今ほど申しました大学共同利用機関の紹介でございます。4つの法人に17の大学共同利用機関がそれぞれ構成されてございます。
 3ページ、そちらの大学共同利用機関が有する研究資源といたしまして、様々な例示を載せてございます。一番左側の赤色のところでございますが、世界最先端の機能を有する研究装置等の実装ということで、チリにございますアルマ望遠鏡、ハワイにございますすばる望遠鏡など大型の設備を載せております。
 真ん中の緑のところでございますが、基盤的な研究施設・設備・資料の提供等ということで、研究施設・設備としましては、分子科学研究所が所有しておりますUVSOR、放射光施設でございますが、こういった施設、それから研究資料やデータとしましては、重要文化財に指定される貴重な学術資料、こういった国文学研究などに供されるような資料なども保有して、共同利用・共同研究に供しているということでございます。
 4ページ目、昨年度1年議論しましてまとめました「第4期の中期目標期間に向けた大学共同利用機関の在り方について」という報告書の概要でございます。様々な記載がございますが、特に中心の赤枠の部分、人的資源の改善、それから物的資源の改善という指摘がございまして、特に下段の物的資源の改善のところにつきましては、「厳しい財政状況の下、マネジメントを強化し、保有施設・設備の重点化、関係機関との共用の推進や国際的な共同利用を推進」という指摘がなされてございます。
 5ページ目、ここからは大学の共同利用・共同研究拠点の御紹介になります。一番上段に創設の趣旨が書いてございますが、こちらの趣旨は先ほど述べた全体の体制の趣旨と同じでございます。大学の認定としましては、左下にイメージ図がございますが、大学の研究所がございまして、学長が文部科学大臣に申請をする、その後科学技術・学術審議会の意見聴取を経まして、大臣が認定をするという仕組みになってございます。
 類型としましては、その右側に3つございますが、まず、基本的な類型としまして研究所1つで拠点となる単独型の拠点、それから幾つかの研究所がネットワークを作ってネットワーク型拠点として認定されるもの、それから右側に連携ネットワーク型拠点としましてピンク色の、拠点としては認定されませんが、大学共同利用機関ですとか、独法の研究所、それから民間の研究所などを一緒にネットワークとして構成するというようなパターンの類型もございます。
 6ページ目、日本地図が描いてございますが、これが現在認定されております共同利用・共同研究拠点の一覧でございます。左上に国立大学27大学73拠点、それから左下に私立大学18大学20拠点、中央右側に公立大学6大学9拠点、それから一番右側に16大学6ネットワーク型拠点24研究機関というふうにまとめてございます。
 合計しますと、右下に小さな表が載ってございますが、一番右下、108という数字がございますが、108の拠点が現在認定されて活動を続けているという状況でございます。
 7ページは、それらの拠点にどのような設備・資料などがあって、共同利用・共同研究に供しているかという例示でございます。
 8ページ目、共同利用・共同研究の基盤整備ということで、大学共同利用機関が中心になって取り組んでいる取組の紹介をさせていただきたいと思います。自然科学研究機構では、機構と大学との組織間連携を発展させるプラットフォームといたしまして、自然科学大学間連携推進機構(NICA)と呼ばれる機構を立ち上げて、大学の機能強化、研究力の向上に取り組んでございます。具体的な取組については、次の9ページ目になります。
 大学連携研究設備ネットワークというものを、そのNICAの一環として今行っておりまして、上段の青い枠の中でございますが、全国72国立大学と分子科学研究所でネットワークを構築し、物質科学分野の多様な研究設備をデータベース化、利用者によるWeb予約システムを構築し、設備の相互利用を促進ということで、既に大学が保有している設備をお互いに使いやすくしようということでこのようなネットワークを構成しまして、ホームページにそれを登録して他大学の方が例えばあそこの大学にある設備を利用したいというときに、そのマシンタイムが空いた時間を予約して使わせていただくというようなシステムでございます。中段の薄い色が掛かったところでございますが、登録設備数は平成30年度現在で2,650の設備が登録されておりまして、年間利用件数は14万6,273件、利用登録機関は359機関となってございます。
 10ページ目、設備サポートセンターの紹介でございます。文科省の支援といたしまして、平成23年度より「設備サポートセンター事業」を実施しております。国立大学の基盤的な教育研究設備の共同利用化と中古設備の改良等による再利用の一層の促進を行いまして、全国的な観点でモデルとなるような新たな仕組み作りに取り組む大学を支援しております。
 左下の日本地図に大学名が幾つか書いてございますが、現在まで20大学に対して支援をいたしまして、右側に書いてありますような共同利用化の推進、リユースの促進、設備マネジメントの強化などを行ってございます。
 駆け足になりましたが、私からは以上でございます。
【黒川補佐】 続きまして、資料4-4「研究力向上改革2019」について、今年の4月に柴山大臣から公表したものでございます。1ページ目、諸外国に比べ研究力が相対的に低迷する現状を一刻も早く打破するため、研究「人材」、「資金」、「環境」の改革を、「大学改革」と一体的に展開するということで、特に、「研究環境の改革」ということで、研究室単位を超えて研究環境の向上を図る「ラボ改革」を通じ研究効率を最大化し、より自由に研究に打ち込める環境を実現するということが本部会にも関係する事項かと考えております。
 3ページ目、研究人材強化体制の構築ですが、こちらでも赤枠囲みのところで、「若手のうちから高度な研究がどこでも可能な環境の整備(コアファシリティ化の推進)」、それから共用の促進、それから技術職員のキャリアパスの構築ということで、チーム型研究体制を構築していく上でURAですとか、技術専門人材を含めたキャリアパスの多様化が必要というふうにされてございます。
 研究環境の部分の詳細につきましては、7ページ目、全ての研究者に開かれた研究設備・機器等の実現ということで、ラボ単位では研究しやすい機器・スペースにするための施設のリノベーションですとか、新技術を活用したスマートラボラトリ化。組織としての整備ということで、どの組織でも高度な研究が可能な環境としていく、コアファシリティとしての共用、管理のラボから組織へ、共用機器の見える化・外部共用化等を好事例として展開していくこと。
 緑ですが、組織を越えた環境整備ということで、大型最先端の設備に誰でもアクセスできるよう、設備の戦略的・計画的更新ですとか、ネットワーク化、プラットフォーム化、共同利用機関・共同利用・共同研究拠点のネットワーク化等を行っていくこと。
 チーム型研究体制による研究力強化ということで、「技術職員」の育成・活躍促進、そういったことをやっていく上での共用ルールの浸透、こういったところを科学技術・学術審議会の下で取組の在り方を一体的に検討するということとされています。この部会におきましても、ここの部分の詳細の検討について、是非中心的に役割を果たしていただければと考えております。
 このうち、技術職員の育成・活躍促進については、早速1つ形になったものがございますので、参考資料4「令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」を御紹介させていただきます。こちらは5月31日から募集を開始しております本年度から新設をされたものです。真ん中の「研究支援賞の対象」にございますが、研究開発の成果創出に向けて、高度で専門的な技術的貢献を通じて研究開発の推進に寄与する活動を行った方々を表彰するということで、具体的には技術職員等の方々の活躍などを念頭に置いて新たに表彰制度を創設したものでございます。下の方に想定される業績の例のイメージとしまして、技術職員等が研究者と協働して測定・分析手法を開発・改良して精度の向上を達成したとか、あるいは技術職員等がグループで対応して、研究成果の創出に貢献をした、それから組織における機器の運用管理とか、技術支援、こういったものに指導的な役割を果たしていただいた方というのを、是非表彰させていただければと思ってございます。応募については、既にホームページに公表されておりまして、都道府県、大学、学協会等の推薦機関を通じて推薦を頂き、7月25日の締切後、審査を経て、翌年の4月に受賞者の公表・表彰となっておりますので、是非関係の皆様方にも御案内いただければと考えてございます。
 さらに、この部会の委員の先生方の一部の方々には、この賞の審査にも御協力をお願いいさせていただくことがあろうかと思いますので、よろしくお願いしたいと考えております。
【藤井部会長代理】 別の用務等も重なっておりまして、先に退出させていただくのですが、今、お話を伺った範囲で、感想めいたことを申し上げさせていただきますと、やはりこの設備の共用ということは非常に重要なことなのですが、その設備があるところには、おおむね教育あるいは研究機関があるということになっていますので、後半の学術機関課のお話にもありましたが、大学の共同利用・共同研究という枠組みがあるわけで、やはり全体感を見る必要があるのではないかなというのが1点です。
 それで、本日の話ですと、先ほどの利用料収入で何億円か収入があるというようなデータが出ていましたが、やはり民間利用がどれくらいあって、どれくらいメンテナンスのフィーをカバーできているのかということについて議論が必要かなというのが2点目です。民間利用していただくとすると、やはり利用者のケアをする体制を考えなくてはいけないのですが、そのための人手なり、リソースをどうカバーするか、そこまでを含めて民間利用をどう活性化するかという議論が必要で、そこに例えば大学院生がメンテナンスなり、利用のサービスの一部を担って、オンキャンパスジョブ的なことになるというのも1つあるのかもしれないなと思いました。
 それから今の御説明にあったスマート化の観点で言いますと、これは最近期待が高まっていますが、SINETがありますので、スマートラボラトリ化が進むと、ある意味サンプルの移動はどうしても必要かもしれませんが、かなりオンラインで必要な測定ができるという話になってくると、これはまた1つの新しい機軸になるのではないか。そうするとやはりネットワークがきちんとつながっている必要があって、オンラインで例えば観察ができるとか、そういったかなり多角的な利用ができるのではないかと。
 あと最後にもう1つだけですが、設備そのもののライフサイクルと言うか、つまりこれは私の分野でもそうなのですが、例えばもともとCMOSのファブはなかなか線幅が太過ぎて使えなくなるわけですが、今度はナノファブリケーションをやりましょうとか言って、新しいファシリティができるのですが、CMOSのファブ自体はもう一般に開放して、いわゆる試作ラインみたいな格好にするとか、あるいはMEMS、マイクロマシンとか、マイクロフルイディクスなどのファブとして使うとか、そういう格好で有効利用していくということで、単に新しいものを入れてリプレースしてしまうのではなくて、ある種研究分野の変遷とともに設備のライフサイクルも考えていくという観点もあってもいいかなと思いました。
 ということで、言いっ放しで恐縮なのですが、ひとまず感想めいたことを申し上げさせていただきまして、大変恐縮ですが、ここで退出をさせていただきます。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。後の議論でも先生の御意見も反映させながら進めていきたいと思います。
【藤井部会長代理】 恐れ入ります。
【岸本部会長】 それでは資料4-4まで来て、この委員会で何を皆さんに御議論いただきたいかというところが次のポイントになると思いますので、それでは資料4-5から説明をお願いいたします。
【黒川補佐】  では、資料4-5を開いてください。 御説明を続けさせていただきますが、まず第6期科学技術基本計画に向けてですが、研究開発基盤部会が発足する前、今年の2月まで、前身の基礎基盤研究部会と、その下の研究基盤整備・高度化委員会におきまして、ここにいらっしゃる委員の先生方の中にも御協力いただいた方がいらっしゃいますが、検討を進めてきたものがこちらでございます。これはたたき台ということで、我が国の研究力向上に向けて、研究基盤の整備・高度化について、新共用事業の全国連絡協議会の幹事校ですとか、技術職員の有志の会の方々にもお越しいただきまして論点を整理したものでございます。
 大きく分けて、先端研究施設・設備・機器の整備・共用と、共通基盤技術の開発というところですが、まず主な御意見としましては、全体像の整理が必要ではないか、それから緑の部分ですが、数億~数十億円規模の最先端研究設備群については、これまで培ってきた支援システムノウハウの維持が要るのではないか。あるいはそのイノベーションシステムの一翼を担う存在として、共用・開発・研究サイクルの活性化、サスティナブルな共用モデルの構築が必要ではないか。日本全体の科学技術を見たときに、相当程度の共用が望まれる施設・設備を洗い出した上で、それぞれの分野での伸ばすべき事項を検討する必要があるのではないか。あるいは一定以上の国費を投資した設備については一定程度共用を原則化すべきではないか。その際、使っていただく際には利用手続はシンプルに、価格はリーズナブルにしていくべきではないかといった御議論がありました。
 また、青のところですが、こちらは数百万円から数億円規模の各研究室とかで、これまで管理してきたものですが、こちらについては管理を研究組織に移行していくということで、ラボから組織へということで、機器・人材・資金・情報を集約していってはどうか。あるいは研究組織の中だけではなくて大学・法人間での広域的な連携を今後促進していってはどうかと。その際に各機関の好事例ですとか、課題を共有・定量化した上で、大学法人の経営陣への啓発を進めていく必要があるのではないか。ただ、その共用を取り組んでいただく際には、やはりインセンティブというのも考えていく必要があるのではないかという御議論がありました。
 また、人材育成という意味では、研究基盤の整備・共用の要としての技術職員の役割・重要性をもっと見える化した上で組織化ステップアップを促進していくと。評価体系の構築ですとか、キャリアパスの明確化等が必要ではないかという御議論がありました。また、人的な交流の促進ということで技術力の向上ですとか、支援の幅の拡大、それから持続的な人材確保、機関の枠を超えてやっていってはどうかということで御議論いただきました。
 また、2つ目の共通基盤技術の開発につきましては、ユーザーのニーズ・意見を反映できる場が必要ではないか。開発が必要な機器の整理をした上で、戦略的な開発を進めていく、あるいはグローバルな社会を牽引していく上で、プラットフォーム化、データベース構築、標準化等々対応が必要ではないか。また、新しい計測・測定・解析におけるデータの活用ということで、データ駆動科学時代を見据えた技術の向上ですとか、あるいは測定技術のクラウド化、バーチャル化、データ解析環境の充実等々が必要ではないかと言うふうな論点を出していただきました。
 次に2ページ目をめくっていただきまして、本日特にお願いしたいのは、総合政策特別委員会の方からは研究力向上に向けたシステム改革について、場当たり的な対策からの脱却とシステムを見据えた抜本的な対策ということで資料を出してほしいということでしたので、これまで全体を網羅的に論点を出していただいたのですが、特にそういった御議論の検討を踏まえていただいた上で、次の観点で突っ込んだ御意見を頂きたいということで3つ書かせていただいております。
 1つは、次のページから御紹介させていただきますが、第5期の科学技術基本計画の記載を振り返った上で6期の基本計画に盛り込むべき「今後目指すべき方向性」ですとか、「キーワード」にはどういったものが必要かと。2つ目は、研究施設・設備・機器の整備・共用について、次に書いております3つの課題の解決に向けた具体的な対策に是非お知恵を頂ければと考えております。具体的には数億円~数十億円の研究設備・機器については新規購入・更新が難しくなっている中でどうしていけばいいか。それから2つ目の、競争的研究費で購入した機器を共用化していく上では幾つかのボトルネックがございまして、それを乗り越えていくにはどうしていけばいいか。機器の維持管理に関して専門的な知識がある「技術職員」の育成・確保にはどういった取組が必要となるのか。3つ目の、研究機器・共通基盤技術の開発につきましては、今後目指すべき方向性というのを是非御議論いただければと考えております。
 3ページ目は、現行の第5期の科学技術基本計画の研究基盤関係の記載でございまして、項目としては研究開発活動を支える共通基盤技術、施設・設備、情報基盤の戦略的強化ということで、3つ項目がございます。1つ目が、研究機器の戦略的開発・利用ということで、基盤技術や先端的な研究機器というのは科学技術の発展にも貢献しますし、基幹産業を支えるものということで、特にユーザー層のニーズを考慮に入れた研究開発、それからユーザー視点に立った先端機器の開発・普及が必要と。
 基盤の整備・共用につきましては2つ目ですが、まずピンクの特定先端大型研究施設の共用法に基づく最先端の施設については、産学官の幅広い共用と利用体制構築等が必要であると。緑の部分、国内有数の大型施設につきましては、産学官への共用を積極的に促進し、共用可能な施設・設備の我が国全体としての拡大、ネットワークの構築を進めようと。青の部分は、研究室でこれまで管理されてきたものですが、利用者視点や組織戦略に基づく整備・運用、共用体制の持続的な改善というのを促していこうと。
 3つ目の施設・設備の整備につきましては、赤字ですが、大学及び公的研究機関の施設・設備について、計画的な更新・整備を進める、それらについて各機関に共用取組の実施を促しつつ、運転時間や利用体制を確保する取組をすると、こういったことが現行の計画には記載がございます。
 次の4ページ目ですが、未来投資戦略あるいは統合イノベーション戦略、基本計画に基づいて5年間でどうしていくかと、有効活用していくためには共用システムを平成32年度末までに100組織を目指して展開すると。それから複数大学、高等専門学校、公設試等が連携した研究機器の相互利用ネットワークを構築していこうと。具体的には工程表ということで3つ、共用化についての取組のフォローアップですとか、競争的資金による機器の購入については複数の研究費用を合算して購入することができるようにしようですとか、あるいは研究組織単位で一元的にマネジメントしていくためのシステムをどのように拡大していくと、こういった取組が記載されてございます。
 5ページ目以降が、事務局として課題と思っております共用関係の3つの主な課題でございまして、1つ目が、数億~数十億円の研究設備・機器の新規購入というのがなかなか設備予算も減少する中で難しい状況になっていると。他方で先端機器はどんどん技術世代が変わっていきますので、「今あるものを共用」するという取組がこれまでの取組だったわけですが、「世界で戦える新技術・新装置」というものに対応していくのが必要ではないかと。他方で、持続的にやっていくためには財源の多様化ですとか、適正な受益者負担も必要であろうということで、右下のところはナノテクノロジープラットフォームの方で試算をした研究開発基盤運営の財源でございますが、赤枠の部分が、これまで共用のためのワンストップサービス構築のための経費ということで、文部科学省から支援をしてきた部分です。それ以外にも各法人による負担ですとか、利用料収入ですとか、あるいは競金等での収入というのがあって、こういうものを積み上げて全体の支出をカバーしているということで、これを今後どういうふうにバランスしていくかということが課題かと思ってございます。
 6ページ目、競争的研究費等で購入した機器を共用化する上でのボトルネックということで、機器の共用による組織としてのメリットというところにつきましては、私どもの事業の方でも例として左に書いてあるような運用の効率ですとか、スタッフの集約化、安定運用等のメリットがあるという声を頂いています。一方で、これまでに機器を所有してきた方々からすると、共用機器の予約が取りにくいために自分で買っただとか、あるいは貸してしまった場合に壊れた場合の修理費の懸念があるとか、幾つかのデメリットもあるということで、トップマネジメントによって研究組織による管理というものも進めていく必要があるのではないかと考えております。そのためには、共用に取り組む研究者ですとか、組織に、どうインセンティブを与えていくのかということが課題かと思ってございます。
 右側が昨年、財務省の予算執行調査におきまして分かったことですが、全国の86大学法人と4大学共同利用機関法人に対しまして、2012年度から2016年度までに購入した研究機器のうち、相当程度の市場規模がある10機器について共用の程度がどの程度かというのを調べたものでございます。電子顕微鏡ですとか、レーザー顕微鏡ですとか、こういった10機器について調べたものですが、専用・共用を調べてみますと、専用が青の部分、約8割で、共用が約2割というような状況になっておりまして、共用化されていない理由としては、「特定の研究室での使用頻度が高い」ですとか、「特定の使用目的に特化した装置」であるということが挙げられていまして、それがおおむね8割くらいの理由を占めていると。ただ、赤で「他に利用する研究室がない」とか、特に共用していない理由はないのだとか、あるいは機関において利用ルールやシステムが整備されていないので共用されていないといった回答もございました。
 最後の7ページ目、「技術職員」の育成・確保ということにつきましては、前回の今年2月までの研究基盤整備・高度化委員会でも技術職員の有志の会の方に来ていただきまして、右側の1.2.3.4.にありますような御提言を頂きました。技術職員の役割・重要性の見える化、あるいは組織化、ステップアップの促進、人的交流等について、国としてどういう取組をしていく必要があるのかについて、是非御意見を頂ければと考えております。
 説明は以上でございます。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。これまでのいろいろな背景だとか、実際にプロジェクトを進めたときにどうなっているかということで、大分説明がたくさんございましたが、それぞれについて御質問もあるかと思いますが、本日は机上に配付させていただきました資料の2ページ目、本日のお願いと書いてありますが、この3項なのですが、特に2と3なのですが、ここの部会の対象となっております研究施設・設備・機器の整備・共用について、これまでも御説明があったようにいろいろな取組はしてきたわけですが、これから進めるに当たってどのような具体的な対策をさらに講じたらいいかということ、それからもう1つは、研究機器・共通基盤技術の開発について、こちらについては余りここに書いていないのですが、今後目指すべき方向性ということで、本日は「こういうアイデアがあるんじゃないか」、「こういうふうにしたらいいんじゃないか」という意見を委員の方々から是非出していただきまして、それを次回までにまとめて、こちらの部会から上の部会の方に上げて議論いただくというふうにしたいと思いますので、どんなアイデアでも結構ですのでお願いしたいというふうに思います。
 それで、その議論に進む前段といたしまして、江端委員の方から資料を頂いていまして、資料4-6になりますが、こちらについて、共用化の取組の一端かと思いますが、御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
【江端委員】  御紹介いただき、ありがとうございます。東工大の江端と申します。ここまでご紹介いただいたお話では、政策側からの見え方としての多様な課題を提示していただきました。1月23日に開催された第6回研究基盤整備・高度化委員会において、新共用事業の連絡協議会や、技術職員有志の会から、現場の問題意識と提言というものを取りまとめし出させていただきました。それを元に現在、総合科学技術イノベーション会議や、総合政策特別委員会等で議論されているといったホットな状況がありますので、本日私からは、実際に現場において、こういった政策が実施されたときにどういった課題があったのか、そしてそれによって現場がどういった形でマインドセットが変わってきていて、研究基盤の共用という意識が根付いてきているのかということについて紹介させていただきます。
 副題は、「設備サポートセンター整備事業シンポジウムという『場』の開発と技術専門職の重要性」ということで、吉居補佐から御説明いただきました設備サポートセンター整備事業というものを活用し、現場から積極的に意識共有する場をセッティングしたというお話をまずさせていただきます。
 1ページをご覧ください。こういった共用の事業というのは以前よりちょこちょこと出てきていたのですが、やはり予算自体はそんなに大きくなくて、現場になかなか根付かない状況が続いていました。なぜなのだろうと考えたときに、この設備サポートセンター整備事業というのは、先ほど御説明いただいたとおり、設備共用のモデル拠点を作るという事業となっておりましたので、そういったモデル拠点からしっかりとノウハウを共有されていれば、もう少し早く全国的に意識が変わっていくような状況になったのではないかと思っておりました。しかし、そういった共用ノウハウを共有するような場がなかったということで、私は当時、北海道大学の経営マネジメントを担うURAをしておりましたが、北海道大学の現場主導で、もちろん学術機関課さんには適宜相談させていただきながら、こういったシンポジウムを立ち上げたらどうだろうかということで提案させていただき、では採択大学で自主的に集まってやろうということで、北大が第1回目の幹事となり企画が立ち上がりました。
 これは第1回目の報告書の「はじめに」で、大学を含めて研究機関において研究に利用される設備というのは重要な研究資源であり、大型先端設備の共同利用は研究促進の加速を促すものであると書かせていただきましたが、こういった共用事業というのは非常に重要だということで、シンポジウムとしての報告書をまとめて、それを関係各所に浸透させていこうという取組を進めてまいりました。
 設備サポートセンター整備事業シンポジウムは、平成26年度に北海道大学からスタートしまして、今年度、第6回を宮崎大学で迎えます。シンポジウムの規模は、北海道大学での第1回で80名の参加者だったのですが、最大で200名くらいの参加があるようなところまで発展しました。本シンポジウムを通じて全国の大学で問題意識を共有しながら、政策主導というよりも現場が自主的にこういった場をしっかりと引き継ぎ、継続的に議論していこうという活動が実際にこのように起こっておりまして、各大学特有の問題意識もしっかりとテーマに入れながら議論を進めてまいりました。このような取り組みによって研究基盤共用の意識を高めて、グッドプラクティスや課題の共有が実現してきたという状況にあります。
 3ページをご覧ください。第1回目のシンポジウム開催の結果として、第5期科学技術基本計画ができる前の段階で、技術人材の不足や、育成プログラムの必要性、地域連携、共同利用料金の設定、システムの整備等が非常に大きな課題であると共有することができました。
 さらに、その提言として、技術人材育成体制の整備、ノウハウ共有のための取組を継続的に実施すること等を挙げ、各事業採択大学の先生方とまとめた提言を学術機関課、研究開発基盤課等、当時研究基盤共用事業を実施していた関係機関に提出させていただきました。
 これが実際どういう形で政策につながったかはよく分かりませんが、少なくとも現場の中の意識という意味では、自主的にこういった取組によって教員だけではなく技術職員、あるいは事務職員の方々等、本事業に関わる全てのステークホルダーが参加し、このような意識の共有というのが進んできたと実感しております。
 4ページは、第2回目以降の課題と提言ということで紹介させていただいています。各大学の特徴を捉えて、第2回では地域連携、第3回目では設備マネジメント、第4回目では研究・教育力につながるような設備共用の在り方について議論し、課題を整理し、それに対する提言をまとめました。
 全てのシンポジウムで共通に課題として挙がったのは、技術人材育成とキャリアパス等の話、シンポジウムでは常にパネルディスカッションを行う設計としておりましたが、その場では技術職員の方々からもいろいろな御意見がありまして、そこで当事者がパネラーの方と意見交換する場としても機能しておりました。
 平成28年度、新共用事業が立ち上がり、キックオフシンポジウムを研究開発基盤課さんの方でやられまして、そのシンポジウムもその後3年連続で続いております。さらに、あまり教員や事務職員の方々はご存じないと思いますが、実は全国の技術職員の方々の情報交換の場として、非常に大きな研究会が3つあります。総合技術研究会、機器・分析技術研究会、そして実験・実習技術研究会と、本当に大きいものですと、1,000人に近いくらいの技術職員の方が集まって情報交換を行っている場もあります。このような形で技術職員の方々が活発に活動されているということについては、余り皆さんは御存じなかったのではないでしょうか。
 こういった活動をベースにして、先ほど御紹介いただきました新共用事業の連絡協議会が幹事校の下に発足し、さらに技術職員の方々から有志の会ということで全国の技術職員の方々に関する詳細なデータを頂けるような形になってきます。
 6ページ7ページは、議論の頭出しということで、情報提供させていただくスライドになります。「研究基盤(設備・人財)に関するマインドセットを変えるために」ということで、これまでの政策や現場での活動を元に5つの観点から、お話しさせていただきたいと思っています。
 新共用事業の設計の中に「統括部局」という概念がありました。その統括部局自体は、実際にどこの大学もある研究基盤関係のセンターや、事務局組織等、様々な統括部局の在り方があったと思いますが、実際にその統括部局の機能という意味では、やはり大学全体の統一的な窓口として大変重要な役割を担っていると思います。
 また共用システムを確立するために、教員だけではなくて技術職員や、事務職員・URA等をチームとして機能させて、様々な共用に係る、新しいシステムを導入する際に発生する様々な事務コストを軽減するための機能を強化するような組織であるべきではないかと思います。
 さらに、人財を養成するためのプログラムを提供するようなものであるべきではないかということ等、「統括部局」が担うべき重要性・役割というのがあるのではないかと思います。
 次に、研究力向上改革2019でキーワードとして出てきた「コアファシリティ」という概念についてですが、新共用事業の設計においては研究組織という単位の中で共用を促進していましたが、応募されてくるものを拝見しますと、各分野でまとめて機器を共用するシステムが作られていたわけです。
 こういった事例から見てもコアファシリティというのは全体の統括部局の役割と言うよりは、各研究組織単位、あるいは部局単位のものであって、例えば各分野の専門的な共通機器、技術ノウハウの集約化、特に大きな予算がまだ取れないような若手研究者の研究環境を組織として提供するような役割や、統括部局と現場をしっかりつなぐような中間レイヤーとしての各部局の役割を担うべき拠点であると考えます。
 こういったファシリティをマネジメントする人財ということで、今、技術職員の方にフォーカスが当たっておりますが、確かな技術を持った専門人財を養成することがまさに急務であります。
 そして、「研究基盤戦略」ですが、研究基盤IR(Institutional Research)に基づいてエビデンスベースでしっかりと戦略を立てることが大変重要です。
 次のページに行っていただいて、研究基盤戦略を立てるために必要な技術に関するデータの収集ということを積極的に行うために、統括部局や、中間レイヤーの組織が果たす役割というのは非常に重要ではないかと考えております。
 最後に、「共用を文化にするために」ということで、トップダウンとボトムアップによる双方向からの意識改革について簡単にお話しします。先ほども課題として挙がっておりましたが、共用によるインセンティブが明確になっていないために、今現場の中での負担感は非常に大きいものとなっています。トップダウンとしての政策的なインセンティブが絶対的に必要です。一方、ボトムアップ的に共用を前向きに実施している方々はステークホルダー全ての方々が協力しあってチームを作って積極的に活動しておりますので、そういった方々をしっかりとまとめられるような「場」を戦略的に形成すべきだと思います。
 最後になりますが、このような共用の整備状況をしっかりとエビデンスベースで各機関及びこちらの部会にしっかりと情報提供をして、「国家的な研究基盤戦略」を策定して施設や設備、人財が一体となって共用の分化を根付かせることができるように、国としてしっかりとした形で予算配分を実施すべきではないかと思います。
 時間も限られていますので、以上で説明を終わります。
【岸本部会長】  どうもありがとうございます。
 今、こういう形でおまとめになられたのですが、きょうのテーマの中で、例えばボトルネックになっているところを解消するには、例えばどういうところがポイントになるとかいうような形で、先生の方からインプットいただけるとありがたいのですが 今、挙げさせていただいた5つの柱がそれに当たるものなのですが、この中で文科省さんからの資料で言及されていない部分というのは、中間レイヤーの役割というところです。実際、現場とトップのところ、経営層と現場を結び付ける組織の役割が、戦略的に研究基盤共用を促進するために非常に重要であると考えています。
【岸本部会長】 この中間レイヤーというのは、各大学で作ってくださいということですか。それぞれ設けましょうということでしょうか。
【江端委員】 はい。1つの例として。
【岸本部会長】 現場とトップ層の間をつなぐような仕組みを作る、それを共用化の中で入れていったらどうでしょうかというのが、1つ出てきたということでよろしいでしょうか。
【江端委員】 はい。機関内において共用を促進させるためのボトルネックを解消するために、それがある程度の予算措置の下にスタートアップできるような形に持っていけたら良いのではないかと思います。
【岸本部会長】 はい。どうもありがとうございました。
 このことについて御意見いただくということもありますが、限られた時間の中ですので、まず、研究施設・設備・機器の整備・共用ということで、これまでも各大学でいろいろな事業で取り組まれていらっしゃっている方々も多いかと思いますので、そのあたりの経験も踏まえて、是非次の機能はこういうことをやってほしいというようなことがございましたら、是非御意見をいただきたいなと、まず思いますが、いかがでしょうか。
【佐藤委員】 その前にいいですか。
 それぞれの課題とか、アイデアについては、先生方はいろいろ持っていると思うので、後で議論してもらえればいいなと思うのですが、私も研究基盤整備・高度化委員会をいろいろ進めてきて、いろいろ反省しながら「なかなかできていないな」と思いながら、今聞いていたのですが、そういうことも踏まえて、少し全体的に見て方向性というか、全体的に見てどういう観点で捉えて、どうすべきか、ということをちょっと見据えないといけないかなというふうに思ったので、各論に入る前に、ちょっとそれを話したいのですが。最初に質問したいことが2つあって、場当たり的な対策からの脱却とシステムを見据えた抜本的な対策とあるのだけれども、じゃあ、今までのは場当たり的な対策かと。これはどういうニュアンスを言ったのかということが、まず僕の意見を言う前に聞きたいという話と。
 それからすごくたくさんの話を今、最初からずっと説明を聞いたので、全部はなかなか消化できないのですが、要は最終的には国の施策として考えたときには、これがどれだけの最大の効果を上げられるのだろうかというのが多分琴線に触れるところで、そこのところに関しては、じゃあどれだけの予算をかけて、どれをやっているのという話が必ず問題になると思うので。もう1点聞きたいのは、先ほどの共同利用・共同研究基盤も含めて3Cの予算とそちら側の基盤の整備の方の予算も含めて、運営を推進するために現在使っている、設備更新もあるのかな、そういうものを含めた予算というのは、今どのくらい使っているのですか。その2点をまず最初に聞きたいです。まず、場当たり的というのはどういうことでしょうか。
【黒川補佐】 研究基盤整備・高度化委員会の中でも、場当たり的ということではなくて、終始議論を積み上げて提言してきたと、今も私も思っているわけなのですが、総合政策特別委員会の方からすると、ともすれば、こういうことが大事だという羅列ですとか、こういったことに予算をというのが出てくるので、必ずしもそういうことはあるのだけれども、こういう現状があるということを踏まえて、じゃあ、こういうふうな、特に今回がシステム改革というのがテーマになっていますので、予算に限らずこういうふうな制度なり、運用なりを定着をしていけば、その抜本的な対策につながるのではないかということを中心に提言を頂きたいと、どうもこういうことのようでございます。
【佐藤委員】 じゃあ、その予算はどうなのか。
【黒川補佐】 予算につきましては、資料4-2というところを御覧いただければなのですが、必ずしも全部出てこないのですが、2ページ目で、そのピンクのところの共用促進法に基づく特定先端大型研究施設につきましては、SPring-8、J-PARC、SACLA、それぞれ数字が入ってございますが、合計すると年間で設備の整備と運用に450億円とか、470億円とか、これくらいの予算が年間投入されていると。その次に3ページ目で研究プロジェクトで得た既存の研究設備・機器の共用化、こちらにつきましては、研究開発基盤課の予算として出ているのは、既にある設備があるという前提に立って、それを学内ですとか、学外に共用化、開いていただくためのアドオンの経費として出しているものとして、昨年ですと16億円、今年は少し減ってしまって14億円ということで予算を出させていただいております。
 それから分野別で、ナノテクノロジーとか、ライフとか、それぞれあるのですが、ナノテクノロジーということで言いますと、9ページ目、ナノ分野に特化していますが、既にある設備を外に開く、共用していただくという予算として16億円程度ありますと。
【岸本部会長】 ざくっと大体どのくらいと言っていただいた方が、多分細かく言うよりも、400億円くらいなのか、1,000億円くらいなのか。
【黒川補佐】 そういう意味では、既存のある設備を共用するためのアドオンという意味では数十億規模と思っていただいたらよろしいと思います。
【佐藤委員】 じゃあトータルで、研究基盤という観点で概略、共同利用とか、共同研究基盤も含めると、1,000億円くらいかかっているということでしょうか。 
【黒川補佐】 そこまで行かないのではないかなと思います。
【佐藤委員】 500億円くらい。
【黒川補佐】 はい。
【佐藤委員】 分かりました。なぜそんなことを聞いたかというと、要するに日本は今問題になっているのは、世界において日本は、研究ポテンシャルが世界で3~4番と高いのに、生産性が先進国中最低くらいのところに行っている。なぜポテンシャルが生産性に反映できないのだろうかということが非常に問題になっているので、そう考えると、多分第6期の科学技術基本計画の琴線に触れたところを考えると、そこの本質は何なのかということを少し明解にできるような文言を入れる必要があるのではないかと思った次第です。それで結局、私の考えとしては、今まで議論したものは、今回の話を聞いた中で、研究ポテンシャルというのは非常に高い状態なのだろうなというふうに思いました。相当の設備があって、相当の人材がいて、それをやっていると。だけどなぜこれが産業競争力強化とか、生産性向上につながっていかないのかというのを私なりに考えてみると、結局事業的にやりたかったことはソリューションの創出がやはりできていないのですね。
 計測・分析分野で言えば、マルチモーダル、マルチフィジックス、マルチスケールみたいなもので、本来ソリューションを出さなければいけないのだけれども、そのソリューションまで到達できていないということが関わっているのではないかなと。
 それに対する、ソリューションを創出するためのビッグデータとか、AIとか、人工知能も含めて、ハード・ソフト・人材・システムを含めた研究基盤を構築していかなくてはいけないのではないかという、第6期はそういうことが必要になるような気がして、ちょっと質問させてもらいました。以上です。
【岸本部会長】  そういった観点から、例えば今まで共用化というのをずっと進めてきたわけですが、このままの流れで行った方がいいのか、それとも先生のおっしゃるように行くには、こういうところの観点から攻めていった方がいいかというようなことを、皆さんと御議論したいと思っていたところなのですけれども。
【佐藤委員】 私の言い続けてきたことは、3Cの大きなものも含めて、個々の分野の計測・分析、あるいは京だとか、そういう計算能力だとかいうものは高いと思うのです。ただ、それがいわゆる社会実装に向けたソリューションにつながっていないと、じゃあ、それはいわゆるクラウドみたいな、今のGAFAは一生懸命みんな攻めているけれども、GAFAみたいなところに全部つながって、ビッグデータにつながっていって、それが現場に返ってきてというソリューションを出せているかと、そこのところが非常に弱いのではないかなという気がして、ソフト的なシステム化というのが必須だと、それを言い続けてきたつもりなのです。そこができていないと。
【岸本部会長】 だからものをどんどん作って共有化するだけじゃなくて、人がどういうふうに一緒になって研究するかとか、新しいものを出していくかという、いろいろなものにつないでいくところまで見据えた形の全体システムがうまく動いていないというふうに。
【佐藤委員】 人と同時に、それをソリューションとして出せる仕組みを作っていないと思うのですよ。まだできていないと。そこが問題。
【岸本部会長】 だから共用化、共用化が目的になってはいけないということかなと私は思っています。
【佐藤委員】 そうですね。共用化は絶対にいいはずなのです。だからそれをちゃんと本当の意味で価値を出すための方法を考えないといけないという話なのです。
【岸本部会長】 そうですね。それをどういう枠組みでみんなに進めるかというのが、このシステムを見据えた抜本的な対策という部分を何かということを、答えを出したいんですよね。
【佐藤委員】 はい。
【岸本部会長】 はい、ありがとうございます。
【佐藤委員】 そこにつながらないから、結局、さっきの若い人たちの人材の話にも出てきましたけれども、結局、最終的にそこに行かないから、非常に疲労感が漂うわけですよ。個別の研究に関しては、それなりに行くのだけれども、結果として大きな成果に結び付かないから、予算も取れないし、やった割には見えてこないと。で、どうしようかというのを、ここ1週間くらいで考えるというのも厳しいので。
 問題点はかなり明らかかなと思いますけれども、その中でどうしたらいいかということについて、それがいいというわけにはいかないかもしれませんが、何か御議論というか、キーワードでも出していただけるといいかなと思いますが、どなたか。
【西島委員】 少し話を戻して、文部科学省から提示された議論ですが、私の印象では、SPring-8のような共用促進法が適用される大型施設群は運用がかなり順調ですが、問題はここに書いてある中規模施設、つまり数億円とか数十億円の研究設備の新規購入や更新が現時点では実施困難です。しかし、それらの有用性を考慮すると、それらの新規購入や更新を何とか実施して広く有効に活用された結果によって、中規模施設の有用性を国側に示すことが重要です。
 1つの方策は、先ほど藤井先生がおっしゃったように、企業の利用ということです。数億円~数十億円の最先端機器を民間企業が買わない理由はいろいろあるんですけれども、正直言って、主たる理由の一つには固定資産を増やしたくないということなんです。
 以前、私はSPring-8に専用ビームラインを建設する事業を推進して、そのビームラインを製薬業界は10年間活用しました。その後、継続して新ビームラインを8億円くらいで再度建設しようというときに会員企業から賛同を得ることができませんでした。主たる理由は、企業として固定資産を持ちたくないという事情です。また、先端機器を操作する専門家、メンテナンス等に関わる人材等を企業として保有することは避けたいとの思いもあります。そこで、国の施策・公的資金等で先端機器について初期投資していただければ、その付帯施設の購入・更新・専門家人材とか、そういう経費負担は民間企業が基金を使ったり、補填するとか、コンソーシアム化してもう少し民間企業がお金を出すような、出せるような仕組み検討すべきかもしれません。
 それと人件費に関しても産業界の利用に関して必要な人件費については企業が雇用するのも一案です。その雇用者について、例えば50%は企業研究を成果占有でやってもらって、あとの50%は自身の研究をやって公表しつつキャリアパスを形成する。そうなると、先ほど江端さんがおっしゃったような、研究基盤戦略の策定の中で先端性・収益・ニーズ・インパクト、これはどうなのかというので、例えば今、業界の中で分かりやすく言うと、クライオ電顕に関するコンソーシアム計画がいま検討されつつあるのを聞いています。これはクライオ電顕の重要性が増していますが、日本ではすごく台数が少ない。それを各企業が保有すれば良いのですが、現実にはなかなかそれを買うのは難しい。だから国が買ってもらって、そこから先のいろいろなものについては民間企業が補填しましょうと、そういう動きがあるので、そういったような先端性、収益性もあるしニーズもある、こういうものを選択するという重点性を持っていって、そこから先は民間企業がもう少しお金をつぎ込むような仕組みを具体的に組む必要があると思う。
【岸本部会長】 はい。菊池さんが何かおっしゃりたいと。
【菊池委員】 私が民間と大学の両方を兼ねるものですから、1つの例として、例えばガリウムナイトライトというふうな先端領域に関連するような研究促進に関して、恐らく数十億程度の施設が私たちの研究所の近くの大学にできましたので、そのときに結局その設備を新しいものに更新するときのノウハウが大学側になかったということもあって、企業の方、私たちの方から人を大学の方に私たちの費用で出しまして、さらにその設備機器が出来上がって、それを運用するというふうな段階になっても、大学にもともといた技術職員プラス、そこだけで全部賄うことができませんので、私たちの研究所の方から思い切って5人なら5人という、そこの施設に大学の費用で払って、私どもの費用で出すという形の連携で進めば、今、西島先生及び佐藤先生の言ったようなことに関して1つの答えになるかなと。
 そして、やはりソリューションを出すのはベンチャー企業なり、民間の方が大学と一緒にやるというところが、そこで初めてソリューションになるわけですから、やはりそういったような、産と学の連携するところにもう少し官が後押しをしてくれればできる仕掛けかなと思っております。
【岸本部会長】 ありがとうございます。そういう意味で、官とか大学が入れたものを企業に使っていただくというよりは、最初から一緒になってプランニングもしていくということが必要なのかなということと、やはり産業界の人が資金を出しやすいようないろいろな仕組み、税制的な仕組みだとか、いろいろな方もしていくことによってお金が回るというのをやっていかないと、抜本的な改革にならないのかなと。
【菊池委員】 はい。実際に研究設備基金に関しまして、数億であれば多分単体の企業とか研究所、若しくは大学でも処理できる案件かと思うのです。
 一番面倒なのが、15億円から30億円くらいの間の設備・機器というのが実は非常に中途半端なところで、例えばSPring-8みたいにでかくなっちゃいますと、国の方でちゃんとその技術職員を必要なだけそろえて置けると思うのです。ところがこの15億円から30億円の間の設備・機器というのが、それを大学の方で持て、全部持てというのは、少し酷なんじゃないかなと。そうすると、企業でもまたそれを入れようとすると、かなり難しいところがありまして、その意味では大学と企業なりが連携して官の後押しがあればできるという仕掛けかなと思っております。
【岸本部会長】 そのあたりの金額の装置が大体どういうものがあって、それがあると日本はこういうふうに変わるというような、クリアに、もうちょっと分かってくるといいんですかね。まあ、それが1つ。答えてくださいと言うよりは、その規模のところが1つのものになっているという感覚があるということですね。
【西島委員】 1,000MHzクラスのNMRというのは結構値段がするんですよね。木川さん、どのくらいするの? 1,000MHzで。
【木川委員】 今、最新の1.1GHzというのが、そろそろデリバリーが始まって、1.2GHzが来年くらいという話です。それが大体20億円くらいですかね。ちょっとヨーロッパとのレートによって違うのですが、大体20億円から25億円と。今までは10億円くらいだったのが最新型で20億円、25億円という規模です。
【岸本部会長】 企業と一緒にやっていくところのボリュームゾーンがどこにあるかというのを明確にしながら、共用化がこういうことを考えていくというのが1つあるだろうと。
【西島委員】 例えばNMR本体が20億円であれば、それに必要ないろいろなサンプラーとか、そういう付属品は、A企業、B企業が購入して、それを利用するときの人件費を企業が出す方がベターです。そういうスペシャリストを自分のところで抱えるのは、かなり厳しいですよね。
【岸本部会長】 今、学術会議の方でも大型研究計画ということでやっていますが、どちらかというと学の人たちだけで考えて、学術的にこうあるべしということで計画を出すのは非常に大切なのですが、企業の方々と相談しながら、こういうプランニングをするというのは余りなかったんじゃないかなと思います。それを是非やっていくというのが1つこれからのポイントかもしれないし、多分これは文科省だけで閉じてやることではないかもしれないので、もっといろいろな省庁もまたいだ形で総合的に文科省がリードしてやっていただくといいのかなというような気もいたします。
 じゃあ、この辺の観点は1つということで、あと、ほかのところでいかがでしょうか。
【杉沢委員】  杉沢でございます。購入価格が数億円くらいから十数億円という価格帯の機器をそろえる予算はどこから来たのかという課題がございます。今回御用意していただいた資料の5ページに、その課題を示す図がございます。この図がこの課題を表していると私は見ております。これを見ますと、例えば平成の初期の頃は、補正予算を含む国立大学等の設備整備予算は600億円から1千数百億円の予算が出ており、平均すると800億円強の予算規模となっております。それが平成の後半に激減しており、平均で200億円弱と1/4以下になっております。数億円から十数億円くらいの機器というのは、多くがこの予算で購入されておりますので、平成の後半ではこの価格帯の機器の更新が著しく滞っていると言えるかと思います。これらの機器の寿命は10年から20年くらいになりますので、平成の初期に導入された装置は、今、軒並み更新時期に来ている、あるいはもう性能的にかなり落ちてきていて、最先端の研究をするのにふさわしくなくなりつつあるのではないかと考えております。
 この予算が急速に減少しているということが課題であって、これを平成初期の水準近くに戻さないと、今後10年間、さらに20年後に、日本の研究開発を支える基盤が弱体化して、中国などと戦えなくなるのではないかと危惧しております。
 これまで御説明されていた共用の予算ですとか、5ページの右側のゾーンに記載されているナノプラの予算は、既存装置の運営費をカバーするだけで精一杯であり、それを更新する予算にはなっていないのではないかと私には見えます。この問題をどう考えているのかについて、文科省さんにお聞きしたいと考えております。
【渡邉課長】 そのとおりでございまして、そういう意味では、基本的に新規導入・更新の予算が余りないというのが一番のところで、それは共用というのは今あるものを活用するということなので、確かに更新については、本当に予算措置をどうするかということは非常に大きな課題ではありますが、はっきり言って、今のところは余りいい解がないということではあるんです。
 そういう意味では、今、競争的資金で各々買っているようなものでも、例えばそれは組み合わせて何人か束になって買うとか、そういうこともできるんじゃないかということは考えているのですが、多分それでも10億円とかにはなかなか行かない。それでも1億円くらいのものまでが限界かなと思うので、今ここで議論になっている数億円から数十億円というのは、ちょっとなかなか厳しいというか、解がない状況です。
【岸本部会長】 そういう意味で言うと、文科省の中で賄うというよりは、文科省からもっと外に出ていくような提言になるようにしてもいいのかなと。そういうところが課題なので、ここを何とかしないと国として大変ですよというように、こちらから外に対しての提言をしていくというのが目標じゃないかなと。
 そのために、どういうふうにうまく話をしていったらいいかというのは、みんなで考えていくということかもしれないですね。
【佐藤委員】 ちょっといいですか。今の件は、前は先端計測の時代は、いわゆる日本製の計測分析装置が各大学とか、公共機関にほとんどなくて、海外製が多くて、こんなことをやっていたら日本の研究力が落ちるだろうという話で、野依先生が言い出して、それで、それをきっかけにして先端計測をちゃんとやらなきゃいけないという話があって、それで開発を進めて、かなりの先端計測設備がそれぞれ予算化されて入っていったという経緯があるのですよ。
 だけど、それを踏まえて考えると、じゃあ、それによって、さっき言った社会実装まで含めたソリューションが出たのかという話をすると、やはり弱いのですよ。
 だから今、数億円~数十億円という話をもしやるとしたら、これをやっていくとしたら、各大学が必要だからとか、公共機関が必要だからという話では多分出ないでしょうと。そうすると、さっきの菊池さんの話を聞くと、やはり企業との連携みたいな……。ただ企業もビッグプロジェクトでないと当然金が、大きな予算は出ないですよね。
 例えば前からIMECモデルと言って、IMECに半導体関係の研究開発設備がダーッと行って、今もものすごい勢いで行っているのですけれども、ああいうモデルが日本でできないのかという追求をしたんだけれども、ことごとく失敗しているのですよ。
 それで、そのモデルがなかなか難しいという話になると、かなり強力なビッグビジネスにつながるようなプロジェクトを絡めて、さっきの「必要だから」という話と違う切り口でそういう予算を取れるような仕組みというのを考えた方がいいのかもしれないという気がしますね。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
 時間がなくなってくると、皆さんの意見が聞けなくなるので、一言ずつでもとにかく皆さん、順番にマイクを回した方が早いかもしれませんので、どうぞ、木川先生。
【木川委員】 NMR共用プラットフォームを代表している木川です。そういう意味では、この第5期ではいわゆる、このモデルの中の真ん中のところは法律でちゃんと守られた、きっちりと国として共用すべきと位置づけされていますけれども、そのほかのところというのは、共用しろとは書いてあるけれども、あくまで各施設の自助努力、ないしは文科省の各部局なりが頑張って予算を作って時限的にやっているものであって、国として、きっちりそれを共用するということは位置付けられているわけではないので、自助努力でやっている。だからいつ終わってしまうかもしれない。明日終わるかもしれないというような非常に危ない状況でやっているということがあるので、そこはそろそろもう少しそういう共用施設の位置付け……。共用拠点はかなり歴史があってあれなんですけど、そういう位置付けというのはきっちりしてもらうことが大事で、それは実はさっきの技術者の問題もありますが、そこに入ってくる人たちが誇りを持って働けるというのは、そういうちゃんと位置付けがあるということなので、そういうのはきっちり科学技術基本計画においてある程度位置付けをしてもいいんじゃないかというのが、そういう共用活動をしている者からの思いです。
【江龍委員】 名古屋工業大学で施設共用等々を全部総括している産学官金連携機構の機構長であります江龍でございます。その立場でお話をさせていただきます。
 この数億~数十億円という点において、名古屋工業大学レベルですと、大体10台から12~13台くらいしかない。で、億円くらいのもの、1億円~2億円くらいのものは何年間かに1回、共同研究等々間接経費を積み立てて、それでリプレースしています。それはもちろん片っ端からというのではなくて、共用している、あるいは企業様のニーズが高い、あるいは学内の科学研究費の獲得に非常に多くつながっている機械からリプレースしていくというようなことでやっていっています。ただ、もっともっと高い5億円とか10億円に近いような装置というのは、「これ、どうするんだろうね」というのが実際のところです。
 もう1つ、技術職員の育成・確保という点では、私が若かりし頃というか、こちらにいらっしゃる先生方も若かりし頃というのは、装置というのはいじって壊してなんぼだとか、造ってなんぼだとかいう、そういう時代だったのです。今、ちょっとでも触ると、某メーカーさんが目くじら立てて、これ、補償はダメだとか、そんなことでは技術職員なんか育つわけがない。以上です。
【市川委員】 皆さん専門的なことを言っておられて、私は新聞社の記者をしている者ですから、少し国民目線というか、その点からお願いというか、述べさせてもらいたいと思います。
 共用化ということでごもっともだという、それなりの公費を投入するのであるから、利用する方も、利用するのも一部ではなく、多くの広く、研究者だけではなく企業の方も若手の方も使えるようなルールを作っていただきたいと思います。
 それに際して得られるデータというものも貴重な財産だと思うので、それを標準化というか、一般化して、データもより多くの人が活用できるような工夫をした方が、海外のGAFAとかに占有されないようにしていただきたいと思っております。
【飯島委員】 機器の更新というのは非常にいつも課題で、私も一時期その仕事をしていましたけれども、かなり計画的に更新していかないと、日進月歩の機器を入手するのは非常に困難だと思います。
 それはそのとおりなんですけれども、企業なんかでは、ある特定のそういう更新の費用の枠の中で取り合って、先ほどから出ていますが、どういう効果があるかということを熱心に説明して取り合いをする、優先順位を決めるということになると思うんです。で、これを国家的なレベルで優先順位を付けるというのは非常に難しいかもしれないとは思うんですが、費用が限られているわけなので、その優先順位をひとつ、すごく考えていただきたいなと思います。
 それから、その共用というところで、今までのこれの前身になる委員会で強く思ったのは、共用と言うと聞こえはいいのですが、ある意味、機器を持っていらっしゃる方々から見ればサービスの提供という面もあって、そこにいつも技術者の問題も関わってくるんですけれども、サービスの提供と自らの先端の技術開発・研究というところがあって、いつもそれがまぜこぜに話をされているんですけれども、それはある程度違う視点のものじゃないかなと思います。
 共用ということは、ある意味、国としての効率を高め、コストパフォーマンスを得ようという試みでもあって、それをするために人材も育成しなければならないし、場所の提供もあるし、ある意味、研究者がある程度自分の大切な研究時間を割かなければならないと、先ほどちらっと学生にやらせるというお話もあったけれども、その学生を教育する人はやはり必要で、ぐるっと回って結局みんなの時間を使っているんですよね。なので、そういう面もちょっと考慮していただかないと続かない。
 これはさっき期間の問題がありましたけれども、暫定的な費用の提供だけでやっていると、その技術者の方のモチベーションもなくなるし、じゃあ、例えばサービスをたくさん提供したところにはやはり機器の更新が優先的に来るとか、そういう話がないと、いつまでもサービスを提供することは難しいと思うんです。
 だから技術者のインセンティブだけじゃなくて、この共用の機器とか、場所とか、人材とかを提供する人たちにもインセンティブが必要だと私は思います。
【網塚委員】 北海道大学でこれまで機器共用に携わってまいりまして、大体そこでの問題点は、先ほど江端さんの方からお話がありました。それから高度化委員会に入れていただいて、資料4-5に大体そこで議論したことが網羅されております。で、大学の機器共用の立場から一言話をさせていただきますと、私が一番強調したいのは、資料4-5の中にあるラボから組織へというところであり、このキーワードは非常にいいと思います。
 北海道大学で設備サポート、それから新共用事業を進めてきましたが、まだまだ大学全体に浸透しておらず、もっとやりようがあると思っているところであります。特に、この「ラボから組織へ」の欄に経営陣への啓発というのがありますが、北海道大学の場合はボトムアップとトップダウン、両方から進めていますが、やはりもっと経営陣が積極的に絡んで欲しいと思います。大学に本当に機器更新にかかる費用を捻出する体力がないのかなとまだ思っていまして、北海道大学はセンターに結構予算は割いていただいてはいますが、全学的な視点ではまだまだ支援が必要ではないかと思います。 一方で、大学技術職員の方々の人材育成ということで、組織を一元化するといったことも行っておりますが、これら全体をよりシステマティックにパッケージ化した形で、大学が一丸となって技術人材育成と強くリンクした形で共用システムを位置付けていくという働きかけを、国がするべきじゃないかというふうに思います。
 要するに、大学の基幹的な機能に位置付けるべきであると思います。グローバル化や文理融合などの教育スローガンと同じくらいウエイトで、機器共用を基盤にして研究教育を進めることが重要だということを、もう少し強く意識させるような、そういう仕組みが必要だと思います。
【岸本部会長】 例えば大学の中期目標には必ず書くようにするとか、そんなことかもしれないなという、もうちょっとうまく表現しないといけないですよね。
【網塚委員】 そうですね。あと、評価ですかね。
【横山委員】 共同利用機関法人の1つとして、私自身もやはり機器の共用、共同利用というところを担当しております。それからナノテクノロジープラットフォームの代表機関としてもやっております。そういう立場からなんですけれども、やはり今、さっき杉沢先生がおっしゃられたとおり、この整備予算というのが余りにも減っていますよね。これだけ減ると、さすがにちょっとつらいんじゃないかなというのは、まず私、きょう一番強く感じました。
 ここをこのままよりは、もう少し何とかならないのかなというのが、一番大きな、やはり補正予算がぱたっとなくなっているというのが一番大きなところかなと思います。
 それから、設備はあるとして、やはり今大事なのは人材育成のところで、設備があっても共用に供するためには技術スタッフというのは必ず必要で、その技術支援、あるいは技術スタッフのモチベーションの向上、そこが今欠けているところかなと、そこは強く思いますので、今回のその賞の設定をされたというのは1つの試みとして私は高く評価したいと思います。
 大体そんなところです。
【原田委員】 技術職員は、昔は高卒、また大学卒業の方というイメージだったと思いますが、現在は機器が高度化していているので、例えば私たちの蛋白質研究所のNMR装置の場合、共用機器ということもあるので、准教授のしっかりした研究者を雇用しています。単なる機器のオペレーションではなく、その装置を使ってどのような研究をやるのか、研究内容に突っ込んでアドバイスができるような人がいないと、せっかくの機器が有効利用されない状況になってしまいます。
 今までの技術職員とは違った、研究をしてきたしっかりした機器の管理者がいらっしゃると、高額機器が有効利用されるようになると思います。
 だからそのような人材をいかに確保するかが大事です。また、機器によっては会社を退職した優秀な方に来ていただくというのもよいと思います。
【波多野委員】 私はユーザーの立場から話をさせていただきます。
 原田委員の意見と全く同じで、今、URAが非常に重要なように、その機器の管理の方もとても博士が持っている人が必要な状況になっていますので、その新しい人材を活用して、先ほど佐藤委員がおっしゃったように、ソリューションが生まれるためにも、やはり異分野を融合して若手がどんどん、学生がどんどんやっていくというのがソリューションになっていくと思いますので、そういうところで使うと、こんなことができるよという、もっと情報共有とデータ、先ほど市川委員のおっしゃったデータとソフトの共有化、ハードだけではない共有化を進めていって、モデル的なところを示していけばどんどん回るんじゃないかと思っています。
 あとは20年、30年のロードマップ、この辺のロードマップ、人材育成も含めた、その辺も重要と考えています。以上です。
【野村委員】 私は組織の縛りを外れて言いたいことを言わせていただきますというか。
 もともと放射光施設に勤めていたんですけれども、放射光施設を考えてみますと、私が就職した頃は先端機器であったと思うんですが、今は広い分野にとっても基盤研究施設になっているということで、多分先端機器というのは、ある意味で先端的な研究者は競争的資金を取って整備するのでもいいのかもしれない。ただ、基盤になったときには、それとは違うものが必要で、それに関して国として、先ほどからおっしゃられているように何十年スパンでどう整備していくのか、国全体として研究基盤をどう整備するのかというのを考えていかないといけないだろうし、結局、その共用のための設備・機器がユーザーにとって使い勝手が悪いと、自分の手の届く範囲でまた別のものを整備して、どちらも人が足りない、ランニングコストが足りない、性能が足りない、そんなことをやってるんじゃないかなという気がするんです。
 そういう意味では、やはり先ほどから数十億とかいう話がありましたけれども、例えば数十億円以上のものについて、やはり国として、もちろん時代も研究の進歩とともにそれは変わっていかなくちゃいけないんですけれども、どう整備するのか。そして整備したものは、もう日本中の研究者がとにかく使い勝手よくするということをやって、限られた予算をどう有効に使うかということを考えていかないといけないんじゃないかなというふうに考えています。
 だから多分この先端機器ということと研究基盤ということは、少し分けて、その体制とかも考えなくちゃいけないし、どなたかおっしゃっていましたけれども、やはり研究者が片手間として共用する……、新共用みたいなところはそれくらいかもしれない。自分のワークロードのうちの10%くらいなら、それでもいいのかもしれないですけれども、それが40%、50%となると、多分評価基準も変わってくるし、そういうことで本当にインセンティブの湧くような仕組みを作っていかないといけないんじゃないかと思っています。
【岸本部会長】 それをどういうふうに考えていく、その考える組織というのをどこかで作らないといけないですよね。文科省の中に作るとか、どこかで作らないと。
【野村委員】 ベースとしてはそういうところでしょうね。
【岸本部会長】 そういうプランニングをする組織をちゃんと作っていかないといけないんじゃないかという、今は毎年毎年概算要求をやっているので、もう少し長期的に考える仕組みを文科省なら文科省の中に委員会を作って、きちんと考えた方がいいんじゃないかと。
【野村委員】 多分、アメリカでもヨーロッパでも、そういうものは作っていますよね。
【岸本部会長】 長期的なプランニングですね。
【野村委員】 予算のある程度の裏付けのある長期的プラン。
【中村委員】 前回、この前の委員会で行なわれた共用プラットフォームの審査において、共用化により異分野の融合が進んだことを学びました。これは非常に印象深かった点です。この先、今回のこの議論が後々場当たり的な対応にならないようにするためには、やはり異分野融合により新しい価値を生み出すなど、10年後、20年後の先を見据えた形で議論させていただくことができればと思っております。
【田沼委員】 ナノテクノロジープラットフォームの話が先ほど出ていましたので、こちらの配付資料の5ページです.これは全収入と全支出は大体42から47億円くらいで、文科省からの委託費はそのうち大体3割から4割なんですね。
 こういうことをやってみると分かるのは、やはり人件費と装置のメンテナンスだけでも委託費じゃ足らないわけです。かといって、ここにあるように利用料収入を使っても新しい装置は入らない。今、ナノテクノロジープラットフォームが全部で装置が1,000台強、実際には1,093台あります。これは減価償却等を考えて、現在の資産価値に直すと大体600億円と思っています。そうすると、もしこれを10年で更新するにも、最低60億円が要るんですよ。ということは、ほとんど不可能だということです.どうしたらいいかというのは、常々考えています。
 ナノテクノロジープラットフォームじゃなくて物資・材料研究機構(NIMS)が今やっていることですが、例えば電子顕微鏡をリースして「オープンラボプログラム」を始めましたけれども、あれが最先端の電子顕微鏡が数億円ですかね。それに企業を10社募って、今年は8社来ていて、その負担金が年間多分350万円くらいですかね。300から500万円。それをやってNIMS自身が使える時間が多分25%くらい。ですから企業の方も使えるし、NIMSの人も使えますけれども、NIMSの人じゃないと、新しい装置がそういう一緒のコンソーシアムを作ったとしてもなかなか使うメンバーに入れないということになると思います。
 ですから地方の大学の先生の場合だと、NIMSが公募している研究テーマに応募し、一緒の共同研究のメンバーとなれば装置を使うことができますけれども、このようなシステムを作ったとしても、なかなか全国に普及するのはかなり難しいというふうに考えます。ちょっとこれはナノプラに導入するのは難しいかなと。
 あともう1つの技術スタッフのことについて.皆さんの指摘は合っているんですけれども、ナノプラの経験から言うと、やはり1つの問題は定年制スタッフがいなくて任期制スタッフになってしまうので、教育プログラムをどうするか。時間をかけて教育してもしようがないので、結局1年か2年で本当に実践的レベルまで育てて、残りの2年~3年を活躍してもらうためには、教育プログラムをしっかりと作っておかないとうまく行かない。なかなかこの教育プログラムができているようで、実際には装置や技術の変遷が激しいので、すごく難しいという問題があります。
 あともう1つ、最後は技術ストックの問題も出るのですけれども、ストックがよく人に付くと言いますが、人に付くことをいつまでも許していたらまずいので、それを研究者にしても、支援者にしてもおなじことですが、やはりそれを何とかデータベース化して集めておかないと、将来,人材が減ってきたときに、どうしても空洞化が起こってしまうんじゃないかというのがナノテクノロジープラットフォームの経験から言えると思います。以上です。
【高橋委員】 私どもが関係しているところに一番使えるところだけを繰り抜いてお話しすると、3Cの中のCの真ん中のところに京というようなかなり大きな計算機がございまして、資料にもございますが、その下には大学の基盤センター及び昔は独法、それから国立研究開発法人が提携したようなHPCIというコンソーシアムがございまして、形としてはトップクラスの世界に打って出る計算機と、その下にそれを取り巻く第2階層と私たちも言いますけれども、計算機の構造ができているわけなのですが、実はこの第2階層のところでの研究施設の共用と更新に関しましては一応情報交換をしているんですけれども、ここがどういうふうにそれぞれが更新していくかということに関しましては、情報を共有するという形だけでやっているわけなのです。ですが、それぞれの機関に関しましては非常に大きな危機感を持ってございまして、要するに同じ予算で次の機器を入れられるかどうかというのは、各施設非常に大変なわけなんです。それも数億から数十億円の間に入っている施設ばかりでございまして、これを、じゃあどうするのかという話になったときに、やはりHPCIの中でどういう……、更新の期間もばらばらなわけです。これを一斉にすると言うよりは、どちらかというと流動的にというか、柔軟的にというか、組み替えるというか、協力し合うというか、予算の組み替えをするというか、そういったことと、それからその施設を例えば共同運用する、あるいは共同に更新をしていくというようなことが可能なことを、もう少しエンカレッジするような文科省の施策。例えば大学の方では何をやるかというようなことをするときに、やはり予算が必要だというふうにお聞きしますので、そこと各大学が組むことによる何か強みみたいなものを出せることをエンカレッジするような、そういった施策みたいなものがあると、もう少しその施設の予算を組み替えながら、強いところをもっと強くする、あるいは違うところと組んでいくみたいなことができる可能性があるのではないかということを、実は常々先生方と話をしております。
 ですので、危機感としては非常に、10億円程度でしょうか、くらいのところの施設を持っていらっしゃる先生方というのは非常に危機感を持っておられるので、その予算の組み替えと、それから強いところを強くするというような研究のテーマの組み替えみたいなものと協力みたいなものというものを、もう少し具体的な形でエンカレッジしていただける政策というものを打っていただけると、もっとそちらの方が加速するのではないかなという気がいたしましたので、常々先生方と話をしていることの延長線上なのですが、何らかの形で考えていただけるとありがたいなということでした。以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
 時間が少し超過していますけれども、またこれで議論していく必要があると思いますけれども、結局研究のインフラをどういうふうに発展させ、さらに維持していくかということに対して、お聞きしているとすごく課題がいっぱいあって、それぞれのところでもどういう答えを出したらいいかという検討もあるかと思いますが、やはり全体的な長期的なビジョンというのを作って見せていく時期かなというふうに私は感じました。
 あと、これはインフラと言ったときに、道路だとか、そういった所謂インフラについても国としてお金が足りないわけで研究だけがうまくいくというわけにはいかないと思います。次回までに何か絵を作ってということにはなるのですが、きょうの議論のなかでは言い尽くせなかったと思いますので、こんなアイデアがあるよということを、メールで事務局の方に提案していただけると、それも参考にして次の案を作れるんじゃないかと思います。是非きょうの議論も踏まえてインプットいただきたいと思います。キーワード程度でも結構ですので思い付いたところを二、三、事務局の方に入れていただけないでしょうか。
 それでは、きょうの議論はこれでおしまいにしたいと思います。
【黒川補佐】 きょうはありがとうございます。
 2点でございますが、まず次回の研究開発基盤部会につきましては、6月25日の火曜日の14時から16時、2時間頂きまして、さらに議論を深めていただければと考えております。それからきょうの議事録でございますが、後日資料とともに公表するということになってございますので、できましたら、出来上がり次第確認のメールをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
【渡邉課長】 すみません。メモについては非常に大歓迎なのですけれども、機器の開発の方も何か御意見等がありましたら、是非頂きたいと。
【岸本部会長】 そうですね。2番目の具体的に機器の開発をどういうふうに進めたらいいかというところが、きょうちょっと議論できなかったので、申し訳ありませんでした。是非、こんなことが仕組みでやるといいとか、こういうのがあるといいというのを是非メモに入れていただきたいと思います。
 本日は、少し時間を超過しましたが、これで終了したいと思います。活発な御意見をありがとうございました。

―― 了 ――

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