第9期基礎基盤研究部会(第2回) 議事録

1.日時

平成31年2月5日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省17F1研究振興局会議室

3.議題

  1. 2019年度政府予算案について
  2. 基礎基盤研究部会の主な審議事項に係るこれまでの検討・進捗状況について
  3. 今後の課題・検討事項について
  4. その他

4.出席者

委員

岸本部会長、雨宮委員、有信委員、宇川委員、尾嶋委員、片岡委員、菊池委員、佐藤委員、土井委員、西島委員、原田委員、山本委員、若山委員、波多野委員

文部科学省

科学技術・学術政策局総括官 勝野頼彦、科学技術・学術政策局研究開発基盤課長 渡邊淳、科学技術・学術政策局研究開発基盤課課長補佐 黒川典俊、科学技術・学術政策局企画評価課課長補佐 小野山吾郎、研究振興局長 磯谷桂介、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連帯担当)千原由幸、研究振興局基礎研究振興課長 岸本哲哉、研究振興局基礎研究振興課基礎研究推進室長 金子忠利、研究振興局基礎研究振興課課長補佐 岡村圭祐

5.議事録

【岸本部会長】  それでは,定刻少し前ですけれども,おそろいになりましたので,ただいまから第2回科学技術・学術審議会基礎基盤研究部会を開催いたします。
本日の会議は公開扱いとなりますので,御承知おきお願いいたします。
まず前回の開催時,少し前になりますけれども,平成29年7月から今回までの間に,事務局であります文部科学省にて人事異動がありましたので,事務局から御紹介をお願いいたします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  それでは,人事異動がありました者について,科学技術・学術政策局,そして研究振興局の順に御紹介させていただきます。
勝野科学技術・学術総括官です。

【勝野科学技術・学術総括官】  よろしくお願いします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  渡邉研究開発基盤課長です。

【渡邉研究開発基盤課長】  よろしくお願いします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  千原大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)でございます。

【千原大臣官房審議官】  よろしくお願いします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  金子基礎研究推進室長でございます。

【金子基礎研究推進室長】  金子でございます。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  そして私は基礎研究振興課の岡村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【岸本部会長】  よろしくお願いいたします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  後ほど磯谷研究振興局長と井上企画評価課長も参りますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【岸本部会長】  ありがとうございます。
それでは,続いて事務局より,出席者と資料の確認をお願いいたします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  本日は,栗原部会長代理,長我部委員,栗原委員から御欠席との御連絡を頂いております。
続きまして,配付資料の確認をさせていただきます。お手元の配付資料を御覧ください。本日,資料が多くて恐縮ですけれども,まず資料1が,本部会における審議事項という横長の1枚の資料でございます。資料2が,政府予算案の関係部分抜粋でして,関連資料を何枚か横でまとめたものがございます。資料3,4,5は,それぞれ,戦略的創造研究推進事業,未来社会創造事業,そして世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の各事業についてのまとまった説明資料になっております。資料6は,横1枚のパワーポイントの資料でして,研究力向上加速プランと銘打っているものでございます。資料7,少し厚めの資料ですけれども,平成から新元号へという,後ほど総合政策特別委員会の担当のほうから御説明させていただく,第6期の科学技術基本計画に向けた資料でございます。資料8は,本部会の下に設置されております研究基盤整備・高度化委員会における議論の状況に関する資料です。
これに加えまして,参考資料といたしまして,先般2月1日に公表されました柴山大臣のイニシアティブに関するもの他をまとめておりますので,適宜御参照いただければと思います。
何か欠落等ございましたら,事務局までお知らせいただければと思いますが,欠落等ございませんでしょうか。

【岸本部会長】  よろしいでしょうか。
それでは,議題の方に入りたいと思いますけれども,お手元の資料の次第のとおり,本日は全部で4件の議題がございます。その中で,(3)のところが今後の課題・検討事項になっておりまして,できるだけ皆様から今後に向けての議論を頂きたいと思います。(1),(2)のところはこれまでの復習を含めて説明いただき,御意見も頂きたいと思いますが,(3)のところについて,皆様から御意見いただくようにたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,まず議題(1)ですけれども,2019年度政府予算案についてですが,来年度の政府予算案の全体像及び,そのうち基礎研究や研究基盤全般に関する予算について,資料1及び資料2をもとに事務局から説明を頂きます。よろしくお願いします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  それでは,まず資料1を御覧ください。
資料1は,本部会における主な審議事項について1枚でまとめているものでございます。大きく二つございまして,まず一つ目は,「戦略的な基礎研究」,そして「複数領域に横断的に活用可能な基盤的研究開発の推進」という事項でございます。関連する施策といたしましては,戦略的創造研究推進事業,そして未来社会創造事業ですね。いずれもJSTの運営費交付金で実施している事業でして,後ほど資料3と資料4をもとに御説明させていただきます。検討事項といたしましては,戦略的な基礎研究,そして基盤的な研究開発における研究開発テーマをどのように設定していくか,となっております。
二つ目の審議事項の柱といたしましては,「先端的な研究基盤その他の科学技術に関する研究環境の整備・高度化・利用」に関するものでございまして,こちらは関連施策としては三つございます。一つは,世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)です。こちらは後ほど資料5をもとに御説明させていただきます。残り二つは,先端研究基盤共用促進事業,そして先端計測分析技術・機器開発プログラム,この二つは,本部会の下に設置しております研究基盤整備・高度化委員会における検討事項でして,こちらの検討状況についても,後ほど資料8をもとに御説明させていただきます。検討事項といたしましては,研究施設・設備の整備・共用や共通基盤技術の高度化・開発をどのように進めていくかということでございます。
以上,簡単ですが,本部会における審議事項についての御説明になります。
続きまして,資料2を御覧いただければと思います。こちらは2019年度の政府予算案について,本部会に特に関連する部分をまとめさせていただいているものです。
1枚おめくりいただきますと,ポイントと書かれた青いページがあるかと思いますが,左半分が本部会に特に関連が深いものでございます。まず科学技術予算全体といたしましては9,861億円,これは文科省関係ですけれども,本年度の予算よりも235億円の増となっております。
柱といたしまして,「Society5.0を実現し未来を切り拓くイノベーション創出とそれを支える基盤の強化」というところに黒いダイヤが三つございますけれども,そのうちの三つ目の中に,ハイリスク・ハイインパクトな研究開発というものがございます。そのメニューを見ていただくと,未来社会創造事業が65億円で,本年度より10億円増の予算案。そして,ムーンショット型研究開発制度の創設,こちらは新規でして,16億円,併せて本年度の第二次補正予算案額として800億円となってございます。
もう一つ下にございます,「我が国の抜本的な研究力向上と優秀な人材の育成」では,一つ目の黒ダイヤの中で,「研究力向上加速プラン」として,若手研究者を中心としたリソースの重点投下や,新興・融合領域の開拓,若手研究者が海外で研鑽(けんさん)を積み挑戦するための支援といったものがございます。主立ったところといたしまして,科学技術費助成事業,いわゆる科研費が2,372億円と,本年度よりも86億円増。そして,戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)ですけれども,424億円。後ほど御説明差し上げますけれども,事業のプログラムの整理に伴う当然減が織り込まれたものでございます。
3ページ以降は,「研究力向上に向けた基礎研究力強化と世界最高水準の研究拠点の形成」という政策課題でまとめた政策パッケージでございまして,幾つか事業を束ねておりますけれども,このうち戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)と世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI),そして一つとばして先端研究基盤共用促進事業,この三つが主に本部会のスコープに入っておりまして,それぞれ資料3と5と8で後ほど御説明をさせていただくものです。
また,3ページ目の一番下のほうに,「2019年度から研究力向上加速プラン」と書かせていただいていますが,後ほど資料6で事務局から御説明させていただきます。
1枚おめくりいただいて,4ページ目,これは本部会で直接的に扱う内容というわけではございませんけれども,大型の研究施設の整備・利活用に関する2019年度予算案の概要でございます。従来取り組んでおります大型放射光施設のSPring-8,X線自由電子レーザー施設のSACLA,大強度陽子加速器施設のJ-PARCとスパコンの「京」に加えまして,ポスト「京」の開発と官民地域パートナーシップによる次世代放射光の整備というものがございます。
次の5ページですけれども,こういった大型のものに限らず,より幅広くということで,こちらが本部会での審議事項になるわけですが,先端研究基盤共用促進事業,こちらの状況について,後ほど議題の3で御説明させていただきます。
最後のページ,6ページ目は,ハイリスク・ハイインパクトな研究開発の推進として二つの事業,未来社会創造事業と,先ほど申し上げたムーンショット型研究開発制度というものについてでございます。特に未来社会創造事業のほうについて,後ほど御報告をさせていただきます。
簡単で駆け足ですけれども,以上でございます。

【岸本部会長】  ありがとうございました。本部会の主な審議事項について確認いただいたことと,来年度の予算案について,本部会に関係するところの概要を御説明いただきましたけれども,御質問等ございますでしょうか。
詳しくは後ほど関連するところについては御説明を頂き,御意見いただきたいと思いますけれども,ここまでのところはよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,議題2の方に進みたいと思いますが,基礎基盤研究部会の主な審議事項に係るこれまでの検討・進捗状況でございます。まず資料1の順番どおり,戦略的な基礎研究及び複数領域に横断的に活用可能な基盤的研究開発の推進について,資料3及び資料4をもとに事務局から主な事業の進捗状況等について説明をお願いいたします。それでは,よろしくお願いします。

【金子基礎研究推進室長】  資料3を御覧いただければと思います。まず,戦略的な基礎研究ということで,JSTにおいて実施してございます戦略的創造推進事業等について主に御説明申し上げたいと思います。
1枚おめくりいただきまして,2ページ目でございます。御案内のとおり基礎研究分野において,科研費と並んで戦略創造事業は,両輪をなす制度でありますけれども,科研費がボトムアップとして実施するものであれば,戦略創造は国の方で戦略目標を定めて,その目標のもとで研究を推進するというような位置付けです。
一枚おめくりいただきまして,3ページ目でございます。先ほど冒頭,政府予算案の全体の中で言及があったとおり,右上に書いてございますとおり,2019年度の予算規模でいきますと424億円ということで,若干数字が減して見えてございますけれども,一部事業の統合ございまして,実質的には9億円増ということになってございます。予算のポイントでございますけれども,右手の中ほどに予算のポイントとございます。大きくは二つございます。一つは,新興・融合,まさにこれからの新たな領域を切り開いていくといったニーズがある,必要性があるというふうに認識してございまして,そのために国で定めるところの戦略目標を大くくり化した上で,領域数を拡大するということであります。
規模でありますけれども,括弧内が前年度の領域数でございますけれども,CRESTが前年度3領域に対して4領域,さきがけが前年度4領域に対して6領域,ERATOが前年度2課題に対して3課題ということで,若干ながら増できたというふうに考えてございます。
もう一つ大きなテーマとして,若手育成です。そこに三つございますけれども,さきがけの領域を増やしたということと,新たな支援制度を設けたということで,次のページにその内容について記載してございますので,ページでいきますと4ページ目に当たります。
左手はさきがけの制度であります。基本的に個人の能力に着目して,若手を中心にチャレンジングなアイデアを盛り立てようという制度でございますけれども,現状,大体採択者の平均年齢を見ますと37歳程度で,比較的若手を支援する制度でございますけれども,こういったものについて今回6領域ということで,領域を拡大することができたということでございます。
右手がACT-X,これは新たなプログラムでありますけれども,さきがけのいいところをより若手に広げようということで,35歳未満の若手,ポスドク,あるいは一部学生も含む,そういったところを積極的に支援しようということでございます。規模感としては若干小振りではありますけれども,年150万程度ということでございますけれども,事業スキームとしては,さきがけなんかはまさに研究総括のもとで領域会議等々で,厳しく指導いただきながら,いろいろなネットワーキングも兼ねてやっていこうというようなプログラムであります。
続いて5ページ目でありますけれども,これはいわゆるCREST等々,そういった研究ツールをAMEDファンディングとして生かそうということで,右上に予算額がございますけれども,若干減してございますけれども,実質的には同規模程度で実施できるかなと考えてございます。今年度新しいのは,一番下に※で書いてございますけれども,AMED-CREST,あるいはPRIMEで得られた制度を速やかに展開するために,ヒト疾患サンプルまでを追加的に行う場合には追加支援をしようと,そういうような新たな取組を導入したというのがポイントであります。
続きまして,6ページ目でありますけれども,先ほど新興・融合領域を拡大するためには大くくり化するということでありますけれども,戦略目標の策定の大まかなプロセス,ステップを書いてございます。ステップ1としては,諸々(もろもろ)の研究データベースといったものから最新の研究動向を客観的に浮かび上がらせようと。右手にはNISTEPのサイエンスマップといったものを活用して,新たな分野を可能な限り客観情報として浮かび上がらせようというのが,まずファーストステップであります。
次にステップ1で抽出されたデータをもとに,やはり最新の研究動向というのは何よりも現場の研究者等々が,より一番肌身で感じているところかと思いますので,そういった2,000名以上の研究者の方々に,これから力を入れるべき分野はどういったところかというのをインタビュー,あるいはアンケートして,そういったものを抽出するというのがステップ2でございます。
その上で,得られた研究動向を世の中,社会,あるいは経済的な価値がどういったところが見いだされるかといったところを,ワークショップ等々を通じて浮かび上がらせようと,そういったことで大きく分けると三つのステップで策定するということであります。
次,7ページ目でありますけれども,言うは易し行うは難しで,より適切な粒度と,果たしてどういったものが戦略的に優れたものかというのは,なかなかいろいろ試行錯誤を重ねて,よりいいものにしていく必要があるかなということでございまして,日々我々,不断にこういったことを積み重ねて,さらにはいろいろな方々の御知見を頂いて,よりよくしていければというふうに考えているところでございます。
報告は以上でございます。

【渡邉研究開発基盤課長】  研究開発基盤課の渡邉でございます。資料4,未来社会創造事業について御説明したいと思います。
ページを開いていただきたいと思うんですけれども,未来社会創造事業につきましては,今御説明した戦略創造事業などの成果をもとに,更に実用化,応用につなげる事業をまとめて平成29年度からスタートしたものでございます。目的といたしますと,丸の二つ目にございますように,過去の延長線には想定できないような価値やサービスを創出し,経済社会に変革を起こしていくということで,非連続なイノベーションを積極的に生み出すハイリスク・ハイインパクトな研究開発が急務ということで,そのような事業を立ち上げたということでございます。ちなみに今年度予算は55億円でございますけれども,来年度予算は65億円の予算となっているものでございます。
事業の目的・目標が左にございますけれども,経済・社会的にインパクトのあるターゲットを明確に見据えて,技術的にチャレンジングな目標を設定すると。その上で,今申し上げましたように,戦略創造事業や科研費などから創出された多様な研究成果を活用して,実用化が可能かどうかと。概念実証,POCといっていますけれども,そういう段階までを目指した研究開発を行うというものでございます。
内容については大きく二つに分かれてございまして,探索加速型と大規模プロジェクト型というのがございます。事業スキームというところが右にございますけれども,まず探索加速型につきましては,文部科学省が五つの領域を指定してございます。超スマート社会,持続可能な社会の実現,世界一の安全・安心社会,地球規模課題である低炭素社会の実現,そして共通基盤と,この五つの領域がございまして,これに対してJSTが更に細かいテーマを年度ごとに設定して公募を行うというものでございます。
そして,探索加速型のやり方について,更に右側の赤い枠がございますけれども,3年程度は探索研究ということで,小さく,スモールスタートですね,小さくとってステージゲートで取捨選択,統合などをして大きくして,更にもう一度ぐらいステージゲートを経て10年程度支援をしていこうというような研究の仕方をとってございます。
もう一つの大規模プロジェクト型というのがございますけれども,これは現在の技術体系を変えて,社会の基盤技術となるような技術テーマを国が設定いたしまして,それを10年程度集中的に投資するということでございます。これに関しましては,今まで29年度に3テーマ,30年度に3テーマとってございます。レーザープラズマ加速,超伝導接合,量子慣性センサ,これは29年度です。30年度は高精度時間計測,革新的接着技術,あと水素液化技術というのをスタートしてございます。これにつきましては,初年度から大きくスタートしまして,4年目と大体7年目にステージゲートを設けて,ここで絞り込みでございますとか民間との連携などを見ながら次へ進んでいくということで進めていく予定にしてございます。
次のページにつきましては,今までの既存の戦略創造後の実用化に向けた研究を束ねて未来創造事業を起こしたという概念図でございます。
次の4ページにつきましては,今御説明しましたように,探索加速は文部科学省が領域を設定して,JSTが重点公募テーマを策定して公募を行うということ。大規模プロジェクト型につきましては,文部科学省がかなり絞った形で技術テーマを設定して,JSTが公募を行うというやり方について示した模式図でございます。
次のページでございますが,これは探索加速型と大規模プロジェクト型の現在の運営体制でございますけれども,例えばスマート社会につきましては,平成29年度はサービスプラットフォームの構築,30年度はモデリングとAI。持続可能社会領域につきましては,平成29年度は二つ立ててございまして,ものづくりプロセスの革新と社会活動寿命の延伸と生産性を高める「知」の拡張の実現。30年度は食料生産技術創出ということをやってございます。安全・安心社会につきましては,29年度は二つ立ててございまして,一人一人に届く危機対応ナビゲーター,ヒューメインなサービスインダストリーの創出。あと30年度は,危険物から解放された安全・安心・快適なまちの実現というものをやってございます。低炭素社会につきましては,ゲームチェンジングテクノロジーというものを示してございまして,その中で29年度,30年度につきましても公募して行っているところでございます。共通基盤領域につきましては,30年度に立ち上がったものでございます。先端計測分析技術・機器開発プログラムを引きついでいるものでございまして,製品創出のための共通基盤システム・装置の実現というもので公募したところでございます。
大規模プロジェクト型は,先ほど申し上げたとおりでございます。
なお,後ろのページにつきまして,実際に選定をしたテーマの概要,研究開発代表者等についてつけておりますので,お時間のあるときに御覧いただきたいと思います。以上でございます。

【岸本部会長】  ありがとうございました。資料3,資料4について御説明いただいたところですけれども,御質問,御意見ございますでしょうか。どうぞ。

【山本委員】  一つお願いします。戦略創造の方で,19年度からこうしましたというのが3ページあたりにあるんですけれども,大くくり化した戦略目標の下で,研究領域数を拡大するとなっています。これがちょっと説明いただきたいと思います。つまり,大くくり化するといいますと,普通ばらばらとあったものをひとまとめにして圧縮するのかなという印象を持つんですが,むしろそうではなくて,その中でまた領域数を増やしているという狙いといいますか,意味といいますか,お願いできればと思います。

【金子基礎研究推進室長】  戦略目標を大くくり化するというアイデアでございますけれども,狙いとしては,先ほど申し上げたように,新興であるとか融合領域というのを開拓すると。そのためには,国の定めるところの研究領域をブロードにするというか,広く設定することによって,より創意工夫のあるチャレンジングなアイデアを喚起できるんじゃないか。そういうことで,複数あったものを統合するとかそういう意味ではなく,個々の領域,研究戦略目標を大くくり化するという内容でございます。

【山本委員】  ありがとうございます。

【岸本部会長】  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【有信委員】  未来社会創造事業の3ページ目の話ですけれども,相変わらず基礎研究,応用研究の実用化というリニアモデルベースの区分けがされているんですが,これは実際に出口のイメージをどういうふうに考えるかによると思いますけれども,出口に向かうときには,出口のスコープに合わせて,いわばベースになる基礎研究,コアになる基礎研究の知見は重要なんだけど,ほかに様々な別の基礎研究の知識が必要になってくる。だから,ここのフォーメーションが,むしろ複数の基礎研究と,これを出口に向けてオーガナイズしていく役割を果たす人たちとがあって,基礎研究の人たちが応用研究ということで縛られて,研究の内容そのものが大きく制限されると,かえってマイナスになる。ですから,そこのフォーメーションを今後考えるときには,少し検討されると良い。全てがそれでうまくいくわけではありませんが,従来の基礎研究の延長上に応用研究をやればというスキームは,なかなか成り立たないんだろうと思います。

【渡邉研究開発基盤課長】  おっしゃるとおりでございまして,特に探索研究などは最初小さくスタートして,その見直しなどを行うわけですが,そのときは体制を変えていろいろな研究を取り込んだりということもやりますし,今後進めていくに当たっては,基礎研究より実用に向けて,例えば今,研究者が代表だったものを,ある程度民間的なマネジメントをする人を代表にしたりとか,そういう意味では実用化に向けた研究という意味での体制の見直しというのは必要だろうと思っております。そのためにも,この推進体制にもございますけれども,運営統括及びその下の事務局などが連携して,どのような体制が一番いいのかということは,ステージゲートごとにかなり見直して進めていく必要があると思いまして。

【有信委員】  そこのところがすごく重要で,特にそこで新たに必要となる基礎研究がまた出てくるという視点も,是非忘れないでほしい。

【渡邉研究開発基盤課長】  そういうときには,また追加公募なりして,中に新しい人に入ってもらうとか,そういうことも視野に入れて考えていきたいと思っております。

【岸本部会長】  あと今のお話の中で,基礎研究,応用研究という呼び方そのものが重要か,となってしまうんですけれども,その前の段階の,やっぱり基礎研究ではあるんですよね。

【渡邉研究開発基盤課長】  そういう意味では,リニアモデルみたいなことでよくないところはあるんですけれども。

【岸本部会長】  このことについては,NISTEPの方でもいろいろ検討されているので,これからは研究していく方々に分かりやすくするためにも,そのあたりのところも考えていったらどうかなと私は受け取ったので。呼び方についても少し検討した方がいいのではないかと思います。

【渡邉研究開発基盤課長】  はい。

【菊池委員】  すみません,今の御意見と御質問にも関連するんですが,未来社会創造事業のところでのステージゲートのところの議論が,今この段階では計画だけ私たちは知らされるんですが,ステージゲートでの議論とか,そのときの見直しがどのような形でされているかということが,もしかしたらそういう御報告があれば,今,有信委員から出たようなことに関しても,いろいろ様々な意見を集約できる可能性があるんじゃないかなと思っておるんですが,そこの点はどういうふうにお考えでしょう。

【渡邉研究開発基盤課長】  今,ちょうど探索加速につきましては,29年度のものにつきまして,どのようにステージゲートを通し,例えば再編し,どこの研究者を幹にして,若しくはお引き取り願うような研究者もいる中でどうしていこうかという議論が,JSTを中心に議論されているところでございますので,それについて御報告できるようなものがありましたら,またここで是非お知らせしたいと思います。ありがとうございます。

【土井委員】  今のお二人の委員の先生のお話ともつながると思うのですが,探索加速型ってやるというのもすごく重要だと思うのですが,例えば超スマート社会とか持続可能社会とか安全安心社会というのは,社会に受け入れられるようにどうするかということが問題で,今までも要素技術というか,基礎技術を作るということはやってきたのですが,それを出口として社会に実装しようとするときに,日本ですと規制が厳しいとか,今ですと個人情報の管理の問題があって思うようにできないとか,そういう事務処理的なことも全部研究者に被ってきていてできないとか,そういう根本的な問題があるんですよね。
そういうものをきちんと見極めることを,せっかくそれぞれの運営会議に分かれてやるのであれば,それをやっていかないと,これだけ見ると,今までのように要素技術のばらまきをしているという見え方になるんですよね。終わってステージゲートをどうするかというときに,これから考えますというのだと,やっぱりばらまき型でやってきたんだなという受けとめしかできない,申し訳ないんですけれども,そういう受けとめになります。
なので,やはり探索加速型をやるにしても,どういう出口にしていきたいか。社会の要請は喫緊なわけで,そこに対してものすごく大型化して実験的にいろいろなことをやっていくということは重要なわけなので,そこを是非考えていただかないと,ちょっと後出しじゃんけんになってしまって,やっぱり評価がうまくできなかったで終わってしまうので,そうならないように,是非探索加速型が,この後次にきちんと大規模プロジェクトとして日本の経済・社会活性化になっていくかということを,きちんとそれぞれの運営統括の方がビジョンを示していただくというのが非常に重要だと思います。それでそのビジョンに通らないものは,年度ごとにきちんと見直しをしていく。で,大きくしていくというのが非常に重要だと思います。是非御検討のほど,よろしくお願いします。

【渡邉研究開発基盤課長】  ありがとうございます。

【岸本部会長】  そういった意味でいうと,先ほどの先端研究開発の中でのいろいろな領域の設定の中で,ある種研究,サイエンスベースで全部やっている。後で評価するというよりも,段階の中に,社会科学的な要素についての研究をどういうふうにやるかとか,どこをやったらいいかというのを取り入れていた方がいいというお話ですかね。

【土井委員】  そうですね。

【岸本部会長】  だから,研究だけ進めていくのもすごい大事なんですけれども,その中にそういった要素も取り入れながら,研究をコーディネートしていくという見方も要るんじゃないかというふうに捉えたんですけれども。そのあたり,検討できるといいかもしれないですね。

【渡邉研究開発基盤課長】  ありがとうございます。最初の説明でちょっと触れるのを失念してしまったのですが,未来社会創造事業というのは,今までJSTの事業はどちらかというとシーズドリブン,いい研究成果がある,これを何とか実用化に持っていこう,こういう考えだったんですけれども,未来社会についてはそうではなく,ある種のテーマについて,どちらかというと将来の社会を描いて,そこに役立つようにするにはどうすればいいか。そういう意味では,先にそういうものを一応考えて研究を進めていこうということで,今までとは違う新しい取組をやっているところですので,上手に成果が出るかどうかまだ分からないところですが,土井先生のおっしゃっている視点も盛り込もうと思っているところでございます。
そして,今まだ3年目ではありますけれども,今後,成果創出に向けた企業との連携でございますとか,当然規制の在り方ということも視野に入れながらやっていかないと,実際実現,実用化も絵に描いた餅になりかねませんので,今言ったような視点についても,是非今後は重要視して運営を進めていくようにしたいと思います。ありがとうございます。

【佐藤委員】  ちょっと良いですか。どっちの立場で言っていいかよく分からないのですけど,今の議論で,皆さんが言われたことはものすごく意識していて,だけど問題はハイリスク・ハイインパクトのものが出ない限りはやっぱり駄目なので,それはちゃんと出しましょうと。だけども,未来社会に対して俯瞰(ふかん)的に見て,これが未来社会を実現していくためには何と何と何が必要なのということを俯瞰(ふかん)的に見ながらステージゲートを立てて,そこでそういう観点で見て残していくとか,あるいはそれ以外の,そうはいってもほかにいろいろ研究やっているでしょうと。そういうものを組み合わせて,次の段階にいってちょうだいよというようなこともやってはどうなのということは言っているんですね。だから,そういう観点で,これまでのやり方とはちょっと違ってきているので,もう少し様子を見てもらいたいなという気がするのですけれども。

【岸本部会長】  そういう方向にいってくれたら,すごく良いかもしれないです。

【佐藤委員】  どっちの立場かよく分からないですけど。

【岸本部会長】  はい,どうぞ。

【片岡委員】  この未来社会創造事業,これはハイリスク・ハイインパクトということが目標とされていて,かつバックキャスティングで考えるということですよね。

【渡邉研究開発基盤課長】  はい。

【片岡委員】  ただ,これが建て付けとしては,基礎研究と書いてありますが,バックキャスティング研究にも基礎研究が必要なんですけれども,例えばCRESTなんかを考えたときに,CRESTはもともとバックキャスティングでハイリスク・ハイインパクトな考え方でスタートしているんじゃないかと思うんですね。だから,そういう点ではここで一旦切っているというところが余り明確ではない。つまり,そうするとじゃあCRESTというのは一体何なんだという話になってくるんです。あれもやっぱりバックキャスティングでハイリスク・ハイインパクトな状態。ですから,これはある意味では上に乗っかっているということになっているので,その辺の多分議論がよく分からないんじゃないかという。それで基礎研究とか応用研究という話にもなるのかなと。
そうすると,これをもし本当にバックキャスティング型で,例えばDARPAって書いていますけれども,EUホライズンも期間長いんですよね。例えば,DARPA10年,EUホライズン7年,それで本当にバックキャスティングで考えて掘り下げていって,そこからスタートしていくということですから。これ,2階構造にしているのでちょっと分かりにくくなっているのかなという気がします。
それから,これは本当にそうすると考え方としては,かなりバックキャスティングで考えてスタートして,かなり社会実装に近いところだという捉え方であるとするならば,民間投資の誘発と書いてあるんですが,この辺の何を考えているのかということですね。つまり,企業に受け渡すということを考えているのか。ただ,それは企業の方も,ある意味ではバックキャスティングで考えてなくちゃいけなくなりますから,そうするとベンチャーをスタートアップを作って,それで実際に要するに,ファンドを外から持ってくるとか,そういうことまで考えているのかどうか。
実際アメリカなんかの場合は,完全にそういう状況になっているわけですね。特に医療とかバーの関係が。だから,大企業に受け渡すだけでなくて,やっぱりほかの文科省でもスタートアップのことをやっていると思うんですけれども,そういう枠組みと,どうやって連携していくのかとか,やっぱりそれを考えた方がいいんじゃないかなと。何か縦割りになっているんじゃないかという気がします。2点ですね。

【渡邉研究開発基盤課長】  すみません,これは予算説明向けの資料になっていて,断絶感があって非常に申し訳ないです。そういう意味では連続性があるということは承知をしていて,そこは全く切れていってはいけないというふうには思っています。
その上で,ハイリスク・ハイインパクトでなきゃならないということは当然でありまして,それは科研費でも戦略でもリスクをとってやるんだという話になるんですけれども,どうも実用化に近い事業ほど,実用化しなくちゃいけないというようなプレッシャーがあって,なかなか高い目標を立てていないのではないかということが,結構懸念をされています。なので,予測可能な範囲での目標を立て,それに向けて研究をしていくというのが多いので,そうではないだろうと。特に文部科学省がやるのであるから,もう少しリスクをとって,本当にホームランなのか,三振も幾つかあってもいいだろうぐらいの目標を立ててやろうじゃないか。これは心意気という意味でそういうふうに言っていると考えていただくといいと思っています。
そういう意味で,なかなかバックキャストというのは,今政府全体でもやっていますけれども,そんなにうまくいっていないという認識を持っていますので,それでもやはりこれからの社会を考えると,そういう研究開発なりを,諸外国でやっていることも多いので,日本としても是非取り組んでいきたいと考えているということでございます。民間については,今はそういう意味では確かに大企業なり,既存の企業の興味関心があるか,例えばお金を出すかというような形で今話はしているんですけれども,確かに研究者の方がベンチャーなり,自分から自ら実用化に向けてやりたいということであれば,JSTがそういうサポートをする部隊はありますので,そこはちょっと連携をして考えていきたいと思ってございます。

【片岡委員】  分かりました。前半は予算向けの考えだと。それから,心意気は違うんだということで,要するに考え方としてはずっとつながっているというふうに,そうやって運営するんだという理解でよろしいですよね。

【渡邉研究開発基盤課長】  はい。

【片岡委員】  それから,後半のステージゲートに関しては,ですから,とにかくこれは社会を実装していくゲートが見えていないという話ですから,そこがどういうスタンスで考えるのか。そうしないと,ともかく製品の企業のラインに乗ればそれでいいんですかということで,それで済ませちゃうと,その後実は消えてしまうということもありますから,やっぱりそういうスタートアップを作って,それで実際にファンドを持ってくるということもですね。これ,考えてみたら,つまり外からファンド持ってくるというのは,この時点で発熱しているんですよね。つまり,外からお金来てますから,そこで経済効果が出て,それで人が雇われて,人材育成されていくわけですよね。だから,そういうプログラムとうまくマッチングというんですかね,そういうことも考えていかれると,多様なステージゲートに対応できるのではないかと思いますし,やっている研究者もそういう考え方もあるんだなというのをちゃんと理解していくんじゃないでしょうかね。

【渡邉研究開発基盤課長】  分かりました。ありがとうございます。

【波多野委員】  すみません,皆さんの御意見ごもっともなんですけれども,私はちょっと質問させていただきたく。資料2の6ページ目のハイリスク・ハイインパクトの研究開発の推進というのに,今御説明ありました未来社会創造事業と,あとムーンショット型という制度が進むとされると。例えば,未来社会創造の大規模プロジェクトも非常にハイリスク・ハイリターンで,社会からも要請もありというところだったと思いますし,予算規模も大きかったと思うんですけれども,ムーンショット型が補正予算で800億円って非常に驚いたんですけれども。研究現場からすると,この区別というか,期待されるところというのはどのように考えればよろしいのか,御説明いただきたいと思いました。

【渡邉研究開発基盤課長】  そういう意味では,非常に難しいところがあるんですが,いわゆる内閣府だったらImPACTという事業を推進しております。これもハイリスク・ハイインパクトをうたっていたんですけれども,なかなかチャレンジが少なかったのではないかという意見もございます。そういう意味で,今の未来社会創造事業というのは,まずImPACTの派生ということで,やっている事業を更に改善して,文科省でも取り組んでいこうということでスタートしたものであるんですけれども,内閣府自体,本年度でImPACTも終わりますので,内閣府,文科省,経産省と協力をして,そちらのImPACTを更によりよくした事業を立ち上げようとしてスタートが決まったというようなものでございます。こちらはビジョナリー会議というもので,今後社会の在り方,目標などを設定して,それに向けて研究開発を進めていこうという状況でございます。そういう意味では,余りちょっとまだ詳細は決まっていないんですけれども,思いはかなり似ているところがあり,政府一体となって,より大きな規模で今後取り組んでいこうというような事業になってございます。

【波多野委員】  ありがとうございます。

【岸本部会長】  では一つだけで。また後で総合的に検討したいと思いますので。竹山さん。

【佐藤委員】  一つだけ。ムーンショット型という名前は,もう変えられないのだよね。

【渡邉研究開発基盤課長】  最後,愛称がつく可能性はあります。

【佐藤委員】  何か議論していて,ムーンショットって数十年前アメリカで打ち上げたあれじゃないのと。今もう火星に行ってしまっているではないかという話があって,それでいいのという話があちこちから出ているので。

【渡邉研究開発基盤課長】  アポロの頃の話ではあったらしいんですが,数年前ぐらいからシリコンバレーあたりではちょっと使われたはやり言葉でもあるようでございまして,一度復活した言葉でもあるようでございます。いろいろ御意見があることも承知しておりますので。

【岸本部会長】  じゃあ竹山さん。

【竹山委員】  未来社会創造が作られてからの研究費の統合前後の図について指摘です。これは簡単な整理をしたのかと思いますが、ひとたび図としてまとめられてしまうと独り歩きをしてしまうので気を付けるべきかと思います。基礎研究から実用化研究というのは,もう何十年も言われている横の軸ですが,科研費というのは,基礎研究ではなく研究者の自由な発想の研究という位置付けであり、その中にはいろいろな研究が含まれます。当然、基礎研究から実用化に近い研究もあります。未来社会創造事業は、先ほどもありましたが重点領域を決めて進めるものです。修正をお願いします。

【岸本部会長】  ありがとうございます。

【渡邉研究開発基盤課長】  承りました。

【岸本部会長】  それでは,まだここまでで議論があるかと思いますけれども,先に進ませていただきたいと思います。
それでは,続きまして,先端的な研究基盤その他科学技術に関する研究環境の整備・高度化・利用についてということで,資料5について御説明をお願いいたします。

【金子基礎研究推進室長】  資料5を御覧いただければと思います。基盤的なものということで,ここで一つ申し上げたいのは,世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)プログラムの状況ということでございます。
おめくりいただきまして2ページ目であります。いわゆるブレインサーキュレーションのハブとなるような,目に見える拠点を我が国も作ろうということで,2007年に5拠点が採択されたところでございます。左下に図がございますけれども,2007年度に5拠点採択から,2010年度に1拠点,さらには2012年度に3拠点ということでございます。ここまでが前回の部会でも御紹介申し上げたところでありまして,その後,2017年度,東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構及び同年度,金沢大学ナノ生命科学研究所。下,真ん中でございますけれども,2018年度2拠点採択,北海道大学化学反応創成研究拠点,京都大学ヒト生物学高等研究拠点ということで,総勢13拠点これまで支援及び支援しつつあるということであります。
ここでは四つのミッションということで,左手真ん中ほどに書いてございますけれども,何よりもトップサイエンスと。世界最高水準の研究を実現しようというミッション。さらにはシステムリフォーム,研究組織の改革ということ。さらには国際的な研究環境,さらにはフュージョンということをミッションとしているところであります。
3ページ目にいっていただきまして,WPI,これまで十二年たっているわけでございますけれども,今後,どういうふうにこのプログラムを考えるかと。そのエッセンスがここのページに書いているところでありますが,当然国際頭脳循環のハブというのをさらなる強化をするというのは当然の前提であろうと考えてございますけれども,更に循環,ブレインサーキュレーションの進化でありますとか,拠点間,あるいは大学内の他のセクション,部局への連携といったようなところを更に推進する必要があると考えてございます。
すなわち,事業開始後10年以上が経過していまして,相当程度これまで支援してきた拠点は,我が国の財産であろうと。これを最大限これまでの投資を生かしていくことが,一つ極めて重要であろうというふうに考えてございまして,左下に書いてございますけれども,これを核として,更により目に見える形で世の中からもってこれを真似(まね)られるとか,これのいいところを更に発展させていくような取組。さらには大学のシステム改革的な側面も相当ございますけれども,そういったノウハウ的なところとか,そういったところもどんどん他機関,あるいは大学内へ展開していくということが一つ重要な方向性であろうと考えているところでございます。
4ページ目,拠点内の公用語は事務職員に至るまで英語とすると。ポスドクは全て国際公募。一部においては倍率が80倍を超えるというようなところがある等,さらには組織改革ということでありますけれども,何よりもこの拠点というのは,拠点長のトップマネジメント,従来型の既存組織にとらわれないトップマネジメント型を導入するということで,相当いろいろなことが蓄積されてございますので,それをどんどん世の中に展開していこうというところであります。
5ページ目を開いていただきますと,そういったものを可能な限り展開していくということで,そういった情報を可能な限り共有するというような取組も,最大限努力していきたいと考えているところでございます。
6ページ目以降,前回の部会以降採択された拠点について,それぞれ構想のエッセンスを1拠点ごとに1枚書いているところでございますけれども,詳細は割愛いたしますけれども,非常にまだこれからまさに,平成29年度採択拠点は,スタートから1年半ぐらいのところでございますので,まだまだこれからの部分がありますけれども,こういったことで我々としても新規採択拠点,あるいは十数年歴史のある拠点も含めて,どんどん発展させていきたいと考えているところでございます。
御説明は以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございました。ただいまの御報告について御質問,御意見ございますでしょうか。では,先に。

【尾嶋委員】  このWPIは2007年に始まって,大変大きな成果を上げて,国際化という観点でも非常にすばらしいとは思うんですが,しかし大きなお金が出ているときはもちろん大きな成果が出るのは,ある意味では当然といいますか,厳しい目で言うと。しかし問題は,それが終わった後,自助努力で続けていくのか,はたまた大学が支援していくのか,いろいろな手法があると思うんですけれども,その後の追跡調査というか,その辺はいかがでしょうか。

【金子基礎研究推進室長】  まさに御指摘いただいたとおり,そこが非常に重要であり,これまでの投資を十分に生かすという意味では,そこが最大の課題であろうと思っています。2ページ目の左下にアカデミーということで書いてございますけれども,2007年採択拠点につきましてはアカデミーということで,これまでの成果をどんどん生かしていただきたいということで,更にその活動を他に広げるような取組に対しては,わずかながら支援していきたいというのが一つと……。

【尾嶋委員】  わずかながらということですか。

【金子基礎研究推進室長】  はい。原則的には,残念ながら期間限定10年を原則とするということがプログラムの前提となってございますので,一つには大学,運営費交付金の中で自立化等々やっていただく部分と,さらには一部の拠点では,民間資金,相当規模の大きな外部資金等を獲得している拠点もございますので,そういった取組を好事例としてつなげていくのかなというふうに考えています。

【尾嶋委員】  分かりました。民間資金を取り入れるという方向は非常にいいと思うので,是非その方向でやっていただきたいと思います。

【原田委員】  すみません……。

【岸本部会長】  ちょっとすみません,順番で。その後お願いします。

【竹山委員】  今のお話に関連することです。本日の会議は時間がないので細かい説明はなかったのかと思いますが、是非WPIのお話もしていただければと思っております。この委員会で以前ご報告があったかと思います。10年間の研究期間終了後の拠点についていろいろ討議がありましたが、最終的にはアカデミーとして拠点の認定を継続することになったと理解しています。その際に、何かしらのサポートが必要であることが拠点側から意見として出されたのも記憶しています。その後、報告はありませんでしたので状況は分かりませんが、現時点では、新規の採択とアカデミーが並列して進んでいるので、是非状況をご報告いただければと思います。
今後WPIのような国主導の大規模プロジェクトに関しては、申請時に約束した事柄を
どのようにして大学が守っていくか、事業を10年間サポートを受けたら大学内でどのように維持するか、今後の大学の在り方が問われているかと思います。

【岸本部会長】  どうぞ。

【岸本基礎研究振興課長】  今の点について,やはりアカデミーを作ったのは,終了した後もその拠点がきちんと質を保っていけるようにということで,引き続きそのプログラム委員会の枠組みを使って見ていけるような体制を作りました。それを支援することは,補助金としては終わっているので,なかなか国として直接にというのは難しいんですけれども,先ほど申し上げたように,外部資金を取るか,あるいはファンディングの方法はないか、あるいは,国としても大学の取組を支援できるような枠組みはないかということは今も検討しております。それは一つには,まずはプログラム委員会がございますので,そちらの方で検討させていただいておりますけれども,またこの審議会の枠組みの中でも,その状況について御報告させていただきまして,御議論いただければと思っております。

【岸本部会長】  すみませんでした,原田先生よろしくお願いします。

【原田委員】  今の竹山先生のお話ともちょっと関係していますが,私は実際に京都大学のWPIで経験しましたが,拠点の評価基準というのが余り定まっていなくて,最初と,だんだん年数が経ったときで,評価の観点が変わってきたように感じています。最初は融合研究をしなさいということをすごく言われて,新しい研究分野を作ることを言われていたと思うんのですけが,最終的な評価のときには,そうではない点で評価されたような印象を受けました。
 やっぱり10年もたってくると,先ほどおっしゃったように,結局東京大学さんだけが延長されましたが,どうして東京大学が延長になったのかという理由が,私たちにはよく分からなかった。研究をやっている者にとってはすごく苦しいし,アカデミーになることも,最後の最後までなかなか決まらなかったですよね。だから,私の場合はそれで,終了の1年ぐらい前に転出したわけです。やはり中にいる者にとっては,すごく大変なので,竹山先生がおっしゃったみたいに,採択するときにある程度決めたルールで最後までいってほしいと思います。


【岸本部会長】  そういう意味で,WPI拠点ごとのマネジメントもあるということなんですけれども,これ全体がかなり大きな予算を文科省として投入したので,それ全体のマネジメントを10年もやっているのを,どういうふうにしてずっとつないでいくのかということをきちんと考え直さなきゃいけないんですかという,そういうことでしょうかね。

【原田委員】  そうです,そうです。

【岸本部会長】  そのあたりはもう少し拠点ごとではなくて,大きな観点から見てうまく進むようにということじゃないかなと思いますけれども。御検討いただければと思います。

【岸本基礎研究振興課長】  そこはしっかりと受けとめて,私ども今検討しておりますので,その成果をまたここの委員会でも御議論いただければと思っております。

【岸本部会長】  ありがとうございます。

【宇川委員】  よろしいですか。宇川と申しますけれども,WPIのプログラムディレクターやっておりますので,いろいろ御意見を伺っていて,一言言うべきかなと思います。

【岸本部会長】  お願いします。

【宇川委員】  何点かあると思うんですけれども,まずは10年たった後で,各拠点のサステナビリティーをどうやって担保しているのか,実情はどうか。これについては,もちろんこの場で簡単に御説明することもできないと思いますので,後ほど多分別の機会に文科省の方からきちんと御説明いただいた方がいいと思いますけれども。もともと各大学が11年目以降は維持するということの約束で始まっておりますね。それでアカデミー拠点,4拠点2年たったわけですけれども,毎年我々の方で行って状況を見ておりますけれども,まず予算については,やはりWPIの予算,13億がなくなりましたので,ざくっといって予算規模は半額,数十億円の規模に落ちています。人員に関しては,しかし,各大学の運営費交付金の補助,それからスペースの補助,ポジションの補助といったことを,ある意味合わせ技で各大学補助をして,人員規模に関しては,約7割から8割の規模で研究をしていると。研究の活動については,私ども見るところは,もともとの10年間と比べて,決して引けをとるものではないと思っております。
一方で11年目以降,各大学が維持をするべしということはあったにしても,それを一体どうやって予算的,あるいは人員的に担保をするための仕組みを作っていくかということに関しては,必ずしも十分なものがあったとは思えないわけで。アカデミーは,基準のための枠組みの大きなものではありますけれども,それに肉付けをするための施策の検討,これは必要なのではないかというふうに思っています。
それから,先ほど評価基準が振れてきたのではないかというお話がありましたけれども,それについてはもともと四つのミッション,トップサイエンス,フュージョン,システム改革,グローバリゼーション,この四つのことに関して評価をするということは最初から決まっておりましたし,それは振れてはいないというふうに思います。一方で,そういったことに関して各拠点に明確に通知をし,更に各拠点の中で拠点を構成する研究者の方々にまでそういった情報が十分に伝わったのかどうかということに関しては,これは反省すべき点もあるかもしれません。しかし,評価に関しては,振れてはいないということは申し上げていきたいと思います。
その上で,私は後の総合討論のところで申し上げようと思っていたんですけれども,おっしゃるとおりWPIもこれで12年目です。13拠点走っています。成果を上げていると思いますけれども,10年たってそもそものミッションからして,いまだに現代的なミッションであるのかどうかということも再検討すべきですし,やはりWPIとして進化をすることは必要ではないかと。様々な研究推進の施策がございますけれども,人の改革,予算の改革,それから環境の改革というのが後ほども出てくるようですけれども,いわばWPIというのは研究のフレームワークを革新するというプログラムだと私は思っていて,その観点から,やはりもう1回今の時点立ちどまって,再検討した上でまた走らせると。その中には,研究所のサステナビリティーに関してもどういった施策を打つのかということも含めて議論するのがいいのではないかと思っております。

【岸本部会長】  どうもありがとうございました。
それでは,次に進んでから,また全体的な討論に移りたいと思いますので,続いて基礎研究・基盤研究の推進や研究環境の整備・高度化に係る全体的な議論の現状についてということで,資料6の説明をお願いいたします。

【岸本基礎研究振興課長】  資料6,A4の横長の紙一枚で,研究力向上加速プランと銘打たせていただいております。これは来年度の政府予算案の中に盛り込んでいる内容について,中心に取りまとめさせていただいておりますけれども,この研究力の低下ということが指摘される中で,三つの柱を大きく設定しております。
一つが,新興・融合領域ということで,日本が諸外国に比べて相対的に弱いと言われている部分でございますけれども,この部分につきまして,例えば戦略創造研究,先ほど御説明をさせていただきましたが,ちょっと従来の戦略目標の設定が既存の分野であるとか,あるいはそこを更に微に入り細をうがったものになっているのではないかといった御指摘もあった中で,この部分について新興・融合領域に取り組むことを加速できるような,そういう戦略目標の設定をしていくことに取り組むこととしておりま
す。
また,その横,右側でございますけれども,申すまでもなく国の枠を超えた国際頭脳循環ということが進んでいる中で,これを日本から出ていく,あるいは日本に帰ってくるという両面について,枠の拡充等の充実,あるいはその障害となっている制度の改革等を進めるという内容でございます。
その下の部分でございますけれども,若手の支援ということで,かなり多くの成果が若いうちに出されているという状況がございますが、この部分についての支援が十分ではなかったのではないかという意識のもとで,従来からの支援は引き続き行いつつも,若手に重点を置いた形で科研費の改革,あるいはその左上にございますけれども,戦略事業の中でもACT-Xの新設,あるいはさきがけの拡充といった形で,若手に特に重点を置いた支援を進めていくといったようなことでございます。
これらにつきましては,来年度の政府予算案の中の事項についてまとめさせていただいておりますけれども,不断の見直しと取組が必要でございますので,引き続きこれについて皆様方の御意見も賜りつつ,さらなる深化を進めていきたいと思っております。以上でございます。

【岸本部会長】  ありがとうございました。
それでは,この件につきまして,御質問,御意見ございますでしょうか。はい,どうぞ。

【西島委員】  10年後を見据えて事業は大変重要だと思いますけれども,10年後を見据えて,生産性高い若手研究者が,この額に匹敵するものを競争的資金で取りにいくとなると,結構やっぱり先ほど出ましたけれども,非常に短くなる。ここで議論することではないんですけれども,やっぱり大学から見ると,私も企業から見ると,大学があれだけ運営費交付金というものが減らされていって,しかもそういう大きな動きがある中で,10年後の若手の人たちで一番モチベーションが上がるのは,少し将来を見て落ち着いて実験できるという環境も重要だなと思っていて。科研費の若手研究者も,結局これは競争的資金ですよね。ということになると,自由研究とはいっても,やはり審査する側(がわ)が本当に10年後,生産性の高い事業というもの,若手という言葉はきれいですけれども,もう少し落ち着いて見られるような,さっきのWPIもそうですけれども,少し長いスパンで見ないと,この言葉どおりかどうかというのは,日本の基礎基盤研究力向上という,少し大学の置かれている状況は厳しいのではないかなと,運営費交付金も含めてというのを,民間企業からは思います。その辺を総合的に少し考えておかないといけないなという印象を持ちましたけれども。

【岸本部会長】  どうぞ。

【若山委員】  今,西島さんがおっしゃったことにちょっと関係するんですけれども,全般的な印象としていつも思うのは,大学の個性がどんどんなくなってきているような気がするんですね。こうやっていろんな手厚い新しいものが出てくると。これはもちろん一定の意義があるということは認めるわけですけれども,何かどの大学も同じ方に向いてきていて,個性がなくなってきてしまっている。個性を出すのは,もちろん今,よくあるのは大学の中で,強い領域をもっと強くするんだという,そういう個性の出し方もあると思うんですけれども,目利きの先生が見ても分からないような個性の出し方というのは当然あると思うんですね。そういう、おそらく強みだと思うのですが,多分アメリカなんかに比べると日本は少し弱いという気がします。
基礎研究と,それから科研費でも実用に近いところという話もありましたけれども,ある意味で役に立たないことをやれというわけではないにしても,たとえば青空研究というものがもうすこし尊重されるのが良いと思います。言葉は悪いですけれども,ある意味で一定期間のばらまきという言い方はよくないんですけれども,そういうところもちょっと必要なんじゃないかと。やはり評価があると,評価する方だって委員になれば,やっぱり評価基準に沿って評価をしていくというのは当然のことですから,そこがますますもしかすると出てくる個性というのを失わせている気がします。そういうところがずっと私は気になっています。

【岸本部会長】  そういう意味でこのACT-Xは大事なプロジェクトだと思いますけれども,その中での採択の仕方,評価の仕方というのは,これまでの延長線で考えるのはよくないんじゃないかということで,例えば採択するとすると,今までの既成概念で新しい研究についてはなかなか採択するのも分からないから採択されないとか,もっと自由に若い人たちが研究をやれるという観点からどうするかというふうなことを考えて運営していった方がいいんじゃないかなという御意見だと思いますけれども。御検討いただければと思います。

【尾嶋委員】  先ほどのお二人の意見に非常に賛成です。若い人が何を望んでいるかというと,幾つか新しいプロジェクトが出てきて,それに応募してお金を取ってくることを望んでいるのではなくて,やっぱりじっくり研究したいと,あるテーマについてですね。ところが,プロジェクトで雇用されているから,3年後には首を切られて次に移らないといけないと。そうなると,すぐ成果の出ることしかもうやらないわけですよね。だから,ある意味で若手研究者を全部非正規雇用にしてしまっているという状態で,これは国にとってすごい大きなボディブローとして効いてくると。企画する側は,新しいACT何とかとか,幾つかのプロジェクトの名前がありましたけれども,新しい企画をやれば,何か新しいことをやったという評価になるんですけれども,全部若手にしわ寄せがきていて,本当に日本は若手を食いつぶしてしまっているのではないかという,非常に懸念を覚えています。全てアメリカナイズしているのか,グローバライズしているのか分かりませんけれども,その辺を見直さないと,いくらこの議論をやってもちょっと若手のためにならないのではないかなというのが正直なところです。ちょっと感想ですけれども。

【岸本部会長】  そうですね,せっかく取ってきていただいたファンディングが,うまくそうならないように考えていけるといいかなと。

【尾嶋委員】  そうですね。

【片岡委員】  三つ。一つは大したことじゃないんですけれども,1番上に研究生産性の高い事業と書いてあるんですけれども,研究生産性という言葉が結構センシティブなんじゃないかなと。だから,もうちょっと別の言葉にした方が。研究力が高いとか。生産性というとちょっとなじまないような気がちょっとしました。
それから,ACT-Xで若手を支援するのはすごくいいと思うんですけれども,是非外国の方で,日本でやっている若手の方が増えていますから,そういう方も積極的に応募できるような形にしていただきたいなと。つまり,どうしても若手というと,日本人の若手というイメージが湧くんですけれども,現実的には研究というのはボーダーレスなので,やっぱり一番問題は,私なんかの経験だと,今は大分変わっているんでしょうけれども,優秀な外国人の方が大学院生で来ていて,日本でやりたいと思っても,なかなか障壁があって,結局アメリカに行ったりとか,ほかに行ったりしています。これは人材的にもったいないということと,それから,実際日本の大学で培ったいろいろなノウハウとか,そういうものがどんどん出ていく。これはいいことなんだと思いますけれども,グローバリゼーションで。でも一方においては,やっぱりせっかくだから日本にとどめておいていただいて,活躍してもらうのもいいんじゃないかと。だから,そういう点で,グローバルな視点で若手を育成していただきたいと思います。
それから,雇用に関しては,多分ここでは議論できないと思うんですね。やっぱり大学の一番の問題は,評定コストとかそういう問題がありまして,実はあれが一番のネックなんですよね。だから,それで要するにある意味では人を分けてしまっている面がありますから,やっぱりそこから入らないと,なかなかこれは解決提供と思いますし,多分ここで議論するような話ではちょっとないなと思います。

【岸本部会長】  ありがとうございます。ちょっと御意見あるかもしれませんが,1回ここで,次のところが今後の課題・検討事項についてということで,大分そこに踏み込んだ議論もされていますので,そのときに御意見いただきたいと思いますので。
次にいきますけれども,今後の課題・検討事項についてということで,資料7,8について御説明いただいた後に,皆さんで議論したいと思います。よろしくお願いいたします。

【井上企画評価課長】  企画評価課長の井上でございますけれども,資料7に基づきまして,この科学技術・学術審議会の下に置かれている総合政策特別委員会での御審議の様子を御報告させていただきます。
この総合政策特別委員会,略して総政特と呼んでおりますけれども,審議会のもとに第7期から置かれているものでございます。各分野横断的に議論する,全体俯瞰(ふかん)の観点で御議論いただいております。第5期科学技術基本計画を取りまとめる際にも御審議を頂いております。最近では各部会,各分科会の御協力を得つつ,第5期基本計画の進捗をフォローアップするという作業,御議論を行っていただきました。そして秋以降は,第5期の基本計画以降の話,具体的には第6期に向けての議論を開始していただいているところです。
御案内のように,科学技術基本計画は,内閣府,CSTIが取りまとめていくという形になってございますけれども,文部科学省としてどういったことをしっかり打ち出していくべきかというところを御議論いただいております。そしてつい先週,1月31日の木曜日に第9期の最終の総政特が行われたわけですが,第9期までで論じるべき論点と,そして大まかな方向性を御議論いただいて,第10期に向けてそれを肉付けをしていって,ある程度のまとめを夏の終わりぐらいを目標に行い,それを内閣府,あるいは関係省庁の方にも打ち出していくということをしたいと考えてございます。
それでは,具体的な内容について簡単に御紹介させていただきます。資料7の1枚目でございますが,これは議論をするに当たっての基礎となる部分,考え方として,我が国の立ち位置,そして今後の方向性,科学技術が担う役割について御議論を頂いたところのまとめです。
一つ目のまとまり,現在将来像や価値観が多様化して,持続可能な開発目標(SDGs)の達成であるとか,Society5.0等の推進が求められるといった,非常にダイナミックに時代が動いているという認識のところ。
そして二つ目のまとまり,科学技術が急速に発展をして,情報通信技術でありますとか人工知能,遺伝子改変技術等の革新的技術が登場し,それらが直接的に経済,社会,政治に影響を及ぼすような時代になっているのではないかという認識。そして,サービスが価値の中心となる知識集約型への大転換が行っている中,科学技術が人々の暮らしや将来,幸せに本当につながっていくのかというところの問いも出てきているんじゃなかろうかという点。
三つ目のまとまりのところですが,我が国を見てみますと,少子・高齢化が浸透し,女性をはじめとしてダイバーシティ,いろいろな方々の活躍が求められている時代に入っているという中で,地方と都市の格差への懸念でありますとか,日本企業のある部分での伸び悩みであるとかGDPの停滞,あるいはこれは科学技術の分野の本丸でございますが,研究力の国際的な相対的な低下も危惧されている中であると。
そのような状況の中,またそのような状況の中であるからこそ,四つ目のまとまりですが,課題先進国でもある我が国が,調和,共創する社会,括弧に書かせていただいておりますが,人間性,持続可能性,包摂性,ヒューマニティー,サステナビリティー,インクルーシブ等のある社会の実現に向けて,影響の力によって挑戦を続けていく社会ということを構築して,それをモデルとして世界に発信していくことが重要ではなかろうかという御意見も頂いております。
最後のまとまりでございますが,先端的・基盤的な科学技術というものが,全く社会に新しい価値をもたらし得る社会基盤であるということ,そしてそれを一層充実すべきであるということをここで一旦再認識をして,我が国の強み,弱みございますが,競争するところ,協調するところ,守るところ,そして新たな価値を創造するところなど,戦略的に見極めて資金循環の創出,サイクル,エコシステムを作っていくとともに,社会の方々にそれを理解し,受け入れてもらうという活動もしていくというように,科学を文化の一つとして捉えてやっていく必要があるんじゃなかろうかというところが,基盤的な考え方の1ページでございます。
それを踏まえまして,2ページ目になりますが,今後の研究の在り方と科学技術システムの考え方ということで御審議いただいたところを抽出してございます。
一つ目のまとまりでございますが,正に研究における卓越性,アカデミックエクセレンスと申しましょうか,その部分でございます。真理の探究,基本原理の解明,新たな知の発見,創出や蓄積など,卓越した新たな発想を追求して創造する活動というものがますます重要であって,いわゆる学術研究,研究者の内在的動機に基づく,独創的で質の高い多様な成果を生み出す研究というものを,社会に新しい価値をもたらし得る力の源泉として捉えて進めていかなければならないという点。その際には,これは国際共通の活動でございますので,国際的な連携が必要ですし,人文・社会科学といった視点の重要性,あるいは自然科学の中でも分野が分かれておりますけれども,融合や交流ということが今後ますます重要ではなかろうかという御議論がございました。
二つ目の大きなまとまりでございますが,失敗を恐れずに挑戦していくことが重要じゃないかと。挑戦,あるいは失敗の連続ということ,そしてそれを蓄積していくことこそが成果であって,それを回していかないといけないんじゃないか。そのためには,研究というものを適切に評価をして,次の研究に再挑戦できる環境を整えていかなければならないのではなかろうかという点。そして,若手研究者と研究者が自ら大きなテーマを描いて,自ら決定をし,研究を進めていくということが重要ではなかろうかという点と,人材の面でいいますと,大きく俯瞰(ふかん)的な視点を持って見ることができる人材の育成。あるいは,複数の専門分野を,深く高度な知識を持った人材も育成していく必要があるのではなかろうかという御議論を頂きました。
その次の柔軟性,即応性の部分でございますが,発明,発見といった研究から開発,イノベーションといった研究への展開の流れの中で,柔軟性と即応性,フレキシビリティーとアジャイル性といったものが今後重要になってくるんじゃないかという点。多様な個性・能力が調和,共創できるように,組織,あるいは組織間のネットワーク,科学技術システムへというものに転換をしていかないといけないのではなかろうかという点。
最後のまとまりでございますが,未来社会デザインとシナリオへの取組ということでございますけれども,地球規模課題でありますとか社会課題の解決,そういったことに関しまして,未来社会ビジョンを前向きに,主体的にデザインして,よりよい社会に向けてやっていかないといけないのではなかろうかと。その際に,地球規模課題や社会課題の解決からのバックキャストと,科学技術の潮流,動きからのフォアキャストをうまく組み合わせながら,関係者が積極的に共有していかなければならないのではないかという御議論がございました。
また,下から二つ目のポツでございますが,イノベーションにも一点突破型のイノベーションであったり,ネットワーク型のイノベーションであったり,様々な類型がありますが,それぞれにきめ細かく対応していかなければならないのではなかろうかという御議論もございました。
そして最後のところに,人文・社会科学からの視点というものの重要性。あるいは,最近とみに議論がされておりますELSIに係る議論を活性化していかなければならないという御議論を頂いておりました。
3ページ目のところでございますが,これは今後の検討項目と方向性として,これ自身は総政特で中身を詳しく御議論いただいたというところまではまだ至っておりませんが,先ほどもございました,研究力向上に向けたシステム改革,主要な研究の3要素,人材,資金,環境のそれぞれの分野で,今やれることというのをしっかり捉えて議論してやっていかないといけない。そして,それを大学改革とも結び付けながら,一体的に検討をする必要があるという点と,先ほど2ページ目にも出てきております,未来社会デザインとシナリオの取組,そのキーとなる,先端・基盤研究,技術開発についても,各部会,分科会の御議論も踏まえつつ,どのような形で盛り込んでいくかというのを,今後10期において検討していきたいと考えてございます。
先ほど申しましたとおり,これはまだ事項の部分ですが,第10期から肉付けをしていきまして,各分科会,部会での御議論も踏まえつつ,どういった形にまとめていくかということを御審議していっていただきたいと考えてございますし,将来の各課においても議論をして,それも踏まえながら御提示していきたいと考えてございます。
この点につきまして,竹山先生,土井先生にも御参画,御議論いただきながらやっておりますので,もし私に足らない部分がございましたら,後ほど議論のときに補足していただければと思います。以上でございます。

【岸本部会長】  お願いします。

【渡邉研究開発基盤課長】  渡邉でございます。資料8について御説明したいと思うんですけれども,今,井上課長から説明のあったとおり,今後基本計画に向けての議論を行うということで,佐藤先生を主査とする高度化委員会がそれを先取りする形で議論をしてまいりました。特に3ページにありますもののうち左側,人材,資金,環境とございますけれども,当部会では特に研究資金の改革,研究環境の改革が非常に重要だと思っています。特に前半では,研究資金の方についていろいろ御意見を頂いたわけですけれども,高度化委員会はその下の研究環境の改革を中心に議論をしてまいりましたので,それについての御説明をしたいということでございます。
資料8を御覧いただきたいんですけれども,その点で,研究基盤の整備・高度化に関する議論を行ってまいりました。新共用事業という,大学機関における研究施設・設備の共用を進める事業の協議会でございますとか,技術職員の有志の会からの御提言なども伺いながら議論をしていただいているところでございます。
内容といたしましては,各研究施設・設備の共用割合,共用対象に応じた議論。何かといいますと,例えばSpring-8であるとか「京」などで,日本で一つ作るか作れないかのような規模の施設。あと,我々でいうとプラットフォームと呼んでおりますけれども,我が国に何個しかない,全ての機関で持つようなことができないような施設・設備をどのように有効活用していくかということ。あと最後は,今,新共用の事業でやっているように,各機関がそれぞれ持ってはいるけれども,個人で抱え込まずに学部,機関などで有効に施設・設備を使っていってはどうかという,こういう段階に応じた議論が必要ではないかということでございます。また,共用に当たっては,それらの共用施設・設備一覧できる環境の整備が必要ではないかということを考えてございます。
また,国として戦略的な整備。そういう意味では,数億円から数十億円規模の先端的な研究の施設・設備についてどのようにするかということで,例えば先端的機器群,支援スタッフ及びノウハウをどのように維持していくか。また,そういった高度な研究機器については,イノベーションシステムをどのように一翼として担っていただくかということ。また,そのような個々で抱え込まないように共用が望まれるような施設・設備は一体どこが持っているのかということ。そして,さらには国際競争力の観点から,伸ばすべき事項,どのような機器を開発していくかということも必要ではないかということです。あと,一定以上の国費を投資した研究施設・設備についても,抱え込まずに共用を原則かしていく必要があるんじゃないか。またその際には,利用手続をシンプルにして,ある程度リーズナブルな価格設定にしないと使えないのではないかという議論がございました。
また,今度は少し機関ごとに有するような数百万,数千万から数億円程度の研究施設・設備につきましては,研究室ごとの機器の購入・管理ではなくて,研究組織,学部,大学機関などで全体で運用してはどうかということ。そして,さらには大学・法人単体ではなく,連携した広域での活用も考えてはどうかということ。あと,様々な各機関でいろいろないい事例が出てきてございますので,そういうものを共有して,共用を広げていってはどうかと。更に研究者個人,持っている人,持たざる人の利益の相反というか,メリット,デメリットございますので,やはり法人の経営陣が関わった形での共用の促進を進める必要があるということ。あと,今申し上げました共用に取り組む,特に施設・設備を持っている方についてのインセンティブというのがないと,なかなか機器を開放してもらえないのではないかというお話がございました。
また,人材育成という観点では,余り日が当たってこなかった技術職員というものの役割に,もう少し注目して重要性について考えてはどうか。その際には,組織化でありますとか,ステップアップというのを考える必要。その評価体系,キャリアパスなども明確化しないとなかなか彼らにとって力付けることができないのではないかということ。更に,個々の技術職員だけでは技術の継承などが難しいということであれば,人的交流でありますとか,育成・確保のやり方ということも考える必要があるということでございました。
一方で,共用の場合には,利用者については,持っている方に対して,開放していく方について,何らか成果を,出版,利用に対する謝辞なども明確にする必要があるだろう。あと,ORCIDの活用などもあり得るのではないかという話がございました。
あともう一つ,裏のページになりますけれども,機器・共通基盤技術の開発。これは昨日ちょっと議論いたしましたので,余り厚い内容にはなっていないんですけれども,ユーザーのニーズ・意見を反映できる場の構築でありますとか,開発が必要な機器の整理,そして国としての戦略的な開発の促進というのが必要であろうということ。グローバル社会を積極的に牽引(けんいん)する施策というのを考えてはどうかということがございました。
また,データの利活用というような観点では,データ利活用の計測・測定の質的向上でございますとか,組織間の垣根を越えるようなプラットフォームの整備が必要ではないか。また,測定技術のクラウド化・バーチャル化に関する技術開発も行ってはどうかということがございました。あと,やはり共用の拡大に対応したデータ解析環境の充実が必要だというふうなことがございました。昨日は,さらにはハードとソフトの密接に連携した開発が重要であるということ。あと,将来的なビジネスモデルというのを企画・立案しなければ,なかなか実用化につながらないというような議論もございました。
後ほど主査の佐藤先生からきっと補足があると思いますけれども,私からの説明は以上でございます。

【岸本部会長】  どうもありがとうございました。
今御説明いただきましたように,いろいろな形で検討が進んでいるところですけれども,これからは今後の方向性について,皆様方から御意見いただきたいと思います。先ほどの資料7のところで,ページ5でしょうかね,まとめた図になっているのが。これからの科学技術イノベーションの改革を加速するためには,大学改革も含めた形での一体的な改革が必要であるということになっていまして,研究人材,研究資金,研究環境の改革という3本柱なんですけれども。その中で,この部会としては,研究環境のところが一つ大きな柱になっていますので,それについて資料8の方で,ただいま御説明いただいたところであります。全体的な議論にも広がるかと思いますけれども,特に資料8のところについても御意見たくさん頂ければと思いますので,よろしくお願いします。
それでは,先ほどとめましてすみませんでした。菊池さんの方からお願いします。

【菊池委員】  先ほど皆さんの方から,若手研究者を中心にした研究力についての御議論があったかと思うんですが,ちょっと印象的な話で申し訳ありませんが,私ども企業がある大学と連携講座を開きたいということで交渉を始めたときに,実はたくさんの若手の皆さんとヒアリングをしました。その結果なんですが,短期的な資金力の大きいものを求めるのであれば,別に日本にいなくてもいい,アメリカに行きますと。そして,研究の成果について正当に評価してほしいと思ったら,今だったら別に中国に行ったっていいんじゃないんですかという若者の声でした。
 それで,たくさんの日本の若手の研究者から,私たちが企業に対して期待されたのは,申し訳ありません,文科省のように短期的な形で資金を投入してもらうのであれば,細く長く,できれば3年とかじゃなくて5年じゃなくて,10年にわたるような細く長い研究をサポートしてほしい,そういうふうな連携講座を作ってもらいたいというふうな声が,実は圧倒的だったんです。そのことが,先ほど皆さんの御議論の中から出てきたお言葉のかなりの部分の集約かなと思っておりまして,そのとき,繰り返すようなんですが,今,グローバル化が進んでおります。若者にとっては,別に本当に短期的なハイリスクの,そして多額の研究資金の必要なものであれば,アメリカに行けばいいんじゃないんですか。もしその成果を本当に評価してほしい。お金,若しくは何がしかの名誉で評価してほしいんだったら,別に中国に行ったっていいんじゃないですかというお言葉は,繰り返すようですが,非常にびっくりするというか,私,目を開かされたような印象を受けましたので,皆さんとちょっとこれからの議論をしていく上での共有していただきたい情報でしたので,お伝えしました。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございます。
それでは,佐藤委員の方から補足というのはございますでしょうか,資料8については。

【佐藤委員】  議論の時間をとってほしいと思うので,簡単に補足だけします。研究基盤・整備高度化委員会でいろいろ活動してきて,これ1枚でまとめきれないほどのことを実はやっていて,議論はいろいろやっているのですけど,簡単に言えば,いわゆる研究開発効率向上ということを念頭に置いて,SPring-8だとか大型のものとか,中規模,あるいは研究室レベルのあるものを共用の形にして,研究開発効率を上げてもらおうということを取り組んできています。かなりの成果は出てきています。ただ,ちょっとでこぼこはあるのですけれども,かなりの成果が出てきていて,それを更に発展させたいなというのが1点。
それから,今話が出ていますように,それを維持・発展させてうまく使っていくためには,要するに世界との競争力に勝つためには,老朽化しているとか,更新しないと無理でしょうというのがたくさん出てきているわけですよ。そういう設備なりに対してメンテナンスをしていかないと,やっぱり研究力向上は見込めないなというのが1点と,今出てきた,誰がオペレートするのと。昔,我々の世代から考えてはいけないのかもしれないのですけど,技術職員の方々がいて,それでオペレートして,非常にいいオペレーターを出してくれて,それが成果につながっていった経緯があるのですね。それをちゃんと非正規じゃなくて正規の雇用でちゃんと確保してメンテナンスしていかないと,とても共用システムをたくさん作ったとしても,それがなかなか維持・発展できないということで,現場から強い要望が上がってきています。これをやっぱり第6期に向けては取り上げていく必要があります。人事の問題やキャリアパスの問題も絡むので,ずっと前からの課題なのですけれども,これを本格的に取り上げて解決していかなくちゃいけないのではないかと思います。
それでもう一つは,最後にちょっと。これ,さっきの7の資料にも出ていたのですけれども,未来社会をどうデザインするのだと。そこはやっぱりできていないわけですよね。未来社会というのをどうデザインして,日本は世界に対してどういうふうに貢献していくのというのを,科学技術でしか貢献できないはずなのですけれども,そこのところのデザインをやって,委員会に下ろして施策を作っていくということをやりたいのですね。だから,その辺の議論を是非今日はしてほしいなと思ったのです。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございます。
それでは,竹山先生,その次,山本さんでお願いします。

【竹山委員】  様々な委員会でも課題の抽出と総括が行われてきたかと思いますが、特に若手研究者の件では,研究費だけでは到底解決できないという状況かと思います。
先ほど10年というお話がありましたが、若手のうちにこの期間あればそれなりの研究成果を上げることもできるかと思います。逆に、現在若手にいろいろ集中し過ぎてもいることから、彼らが10年後中堅になった時のギャップが心配な気がします。優秀な若手を引き上げるために、博士課程からも競争的資金に応募できるようになっていますが、力のある研究室から、という傾向があるのかと思います。そこは建て付けを注意深くやっていただきたいと思っております。

【岸本部会長】  じゃ,山本さん,お願いします。

【山本委員】  一つ確認でお願いしたいのは,資料7と8との関係です。資料7の方は,次の第6期の科学技術基本計画に向けて,特別委員会の方でこれから一年近くかけてやっていく上での,まず土台になるところというふうに理解しました。その上で,特に我々の部会として重要視しているところの研究環境としては,資料8のような論点が出てきていると。資料8のような点を中心に,これから夏に向けて議論していくのが強い部会のミッションだというような理解でよろしいでしょうかというのが一つです。

【岸本部会長】  いかがでしょうか。

【渡邉研究開発基盤課長】  そういう意味では,基礎基盤ということで,基礎研究なり,研究資金ですとか,研究環境の改革がこの部会の重要な検討ミッションになると思ってございます。特に研究環境につきましては,今まで高度化委員会で課題を検討してまいりましたので,これを次の期の委員会にもつなげていって,更にブラッシュアップとか,より問題点を明らかにし,基本計画に何を反映していくか,次の政策は何が重要かということの土台としてこういう資料を提出させていただいたので,是非本日,御議論いただければと思っているところでございます。

【山本委員】  それから,もう一つ続けてお願いします。若手研究者の話も,今これほど出てきて,それは研究環境として重要だということで,皆さん本当に認識が一致していると思います。ですけれども,皆さん感じているように,要するに科技側の委員会での話ではなくて,国立大学の改革,大学改革の話と非常に絡んできてジレンマを感じているところだと思います。その意味で,私からお願いですけれども,この間,柴山プランが大臣の方からも出されたように,まさに今,高等教育の改革と科技局との改革がばらばらではなくて,一緒にできるチャンスがまさに今年だと感じておりまして,それは内閣府の後押しもありますし,プランも科学技術基本計画の次,国立大学の中期計画の次を控えた,すごく重要な期間だと思っていますので,その意識を事務方にも我々の方も共有してまいりましょうというメッセージです。失礼いたしました。

【岸本部会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【有信委員】  三点あります。第一点は,資料7の一番初めの,今更言っても仕方がないと思うんだけど,近代社会の終焉(しゅうえん)という言葉があるんですけれども,近代の終焉(しゅうえん)って五十年前に言われて,そのときもこれが二番煎じだと散々言われたと記憶しています。今また近代の終焉(しゅうえん)が出てきたかという,こういう印象です。それはちょっとここも文理融合じゃないけど,文理の分離が影響しているのかもしれません。
それから第二点,大学改革の話なんですけれども,常に大学改革が言われていて,この前の中教審の2040年に向けたグランドデザインの中にもいろいろ書き込まれています。ただ,非常にいろいろ難しいポイントがあって,どこから攻めるかということがあるんですけれども,一つは,WPIがいわば非常な成功をおさめていると思いますが,これはいわば旧来の大学のシステムの中におさまり切らないんですよね。これをいかに大学のシステムの中に内在化するかということで,これをきっかけに大学のシステム改革を進めると。
例えば一つは,WPIというのは教育のミッションがないものだから,WPIで大学院生を育成するという観点がないわけです。これは大学のシステムの中に完全にはめ込まれてないわけで,常に出島として扱われてきているんですよね。これをいかに内在化していくかというのは,一つ重要なポイントになると思います。例えば,名古屋大学で採択された卓越大学院の一つのモデルは,WPIを大学のシステムの中に内在化するという提案だったと記憶しています。
それから三点目に,ちょっと全体の話になって申し訳ないんですけれども,さっきのイノベーションというか出口と基礎研究の関係に関わる話ですけれども,例えばCOIで成功している例を見ると,いわば基礎研究と出口との関係がかなりうまくマネジメントされて,いい例として成功しているケースがあるので,その辺のモデルを少し参考にしながら,全体を考える必要があるかなと思いました。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございました。どうぞ。

【井上企画評価課長】  今,有信先生から頂きました点,ありがとうございます。一点目の表題ですね,近代社会の終焉(しゅうえん)。先生,間に合いませんというか,先週の木曜日も同じ意見がありまして,事務局,時代が変わったということを強く強調したいがためにこういう表現を書いてしまったんですけれども,これを言い出すと近代社会,現代社会といろいろ定義があってどこを指すのだろうみたいな話になりますので,ここはもう少し意味が分かるというか,伝えたい意図が分かる表現に変えて,最終のまとめ案ということで主査と相談したいと思っております。

【佐藤委員】  そういう意味では,二番目の科学技術の影響力,役割は拡大って,そんなの当たり前でしょうと。今更こんなこと何を言っているのですかという。だから,これがやっぱりいわゆる科学技術行政の二十数年間全然予算が増えていないという,先進国では日本だけ増えていないという状況をあらわしているのではないかと思うのですけれども。こういうことを書くようでは,多分駄目なのではないかなと思うんです。何か文言を変えて,もっと。

【井上企画評価課長】  肉付けに向けて,また御相談したいと思います。

【佐藤委員】  そういう夢のある形にしてもらわないと,多分駄目なんじゃないかなと。

【岸本部会長】  いろいろ議論あると思いますけれども,資料8のことについても少し議論いただきたいと思います。どうぞ。

【原田委員】  ちょっと資料8のことではなく,ここで言うことではないかもしれませんが,ちょっと一言だけ言いたいんですけれども。特別研究員事業のことですが,これだけ博士課程に行く学生が少なくなって困っているといっているのに,DC1の採択数が多分2019年度は若干減らされますよね。それから,海外特別研究員事業の拡充ということで,70人増ということですが,一方で,普通の特別研究員は四,五十人減らすということになっているのは,非常に困った状況だと思っています。

【岸本部会長】  シフトし過ぎているんじゃないかということですよね。

【原田委員】  そうですね。もっとDC1を思い切って増やさないと,博士課程に行く人を増やすということはできないから,幾つか新しい試みをやっていらっしゃるとは思うのですが,そういうことをやるよりも,抜本的にそういうところにお金を集中的に投下した方がいいんじゃないかと思います。いかがでしょうか。

【菊池委員】  ちょっと資料8について,すみません。企業側の,これはおまえたちのエゴだろうと言われるかもしれませんが,国に期待したいのは,本当にこの二つ目のかぎ括弧のところの,放射光施設とかJ-PARCなどの中性子,ミューオンですね,その設備を私たちは少なくともかなり大きな企業の中で活動しているんですが,この手の設備は企業単体,若しくは企業グループで持つということはやはり不可能なんです。
三つ目のポチのところの数百万から数億円であれば,申し訳ありませんが,もう最新のものは私どもが自前で得ることができまして,本当にエゴイスティックですが,SPring-8なりJ-PARCなり,そういうふうなところを今使わないと,それを本当に活用しないと競争力を保(たも)てないというところにあって,本当に日本がものづくりで生きていくということを覚悟するのであれば,私はここのところに本当に集中投資してほしいなと,企業側からはそのように思っております。
特に言われているのは老朽化なんです。J-PARC1つとっても,中性子を今使いたいと思っても,稼動日がめちゃめちゃ限られているんです。そういうふうなところ。そしてまた,それを動かす技術員がいないと。そこの問題で稼動できないということも言われておりまして,何か一回そのときに脚光を浴びたものを作ったからもういいという形でいくと,本当に作った設備が産業のところまで落ちないんじゃないかなということで,私,できればここのところだけは日本が科学技術立国を掲げるということであれば,すみません。

【岸本部会長】  時間が迫っておりますが,雨宮さん。

【雨宮委員】  この資料8の人材育成の二つ目の技術職員の組織化,ステップアップの促進,それから能力に応じた評価体系の云々(うんぬん)と,ここが非常に大切だと思います。Spring-8,J-PARC,等の最先端の装置をいかにユーザーに使わせるか。そこで支援する研究者をどのように評価するのか、の視点が大切です。支援しなさいといいながら,あなたは一体論文を何報書いたのか。大学の教員とそれで戦えるのか、と問われる。要するに,秤(はかり)が一つなんですね。それから,産学連携が必要だといいながら,産学連携の支援をしたら論文にはならないんですよ。そしてお金も入ってくるわけじゃない。だから,研究を支援する人,新しい意味での技術職員を育てること,キャリアパスも含めてきっちりと待遇されるというか評価される仕組みが必要だと思います。産学連携,大規模共用施設を使った産学連携の促進,それから学術と大学のユーザーとのコラボを通しても,支援スタッフの評価基準がちゃんとないと,優秀な人は,やる気があっても行かないです。

【岸本部会長】  ある意味ドクターコースのキャリアパスになるように持っていかなきゃいけない。そのときの評価というのも,研究というのもずっと考えていかないといけないということですよね。

【雨宮委員】  そうです。研究支援をする研究者が評価されるときに, 大学の教授と同じ基準で評価され、論文を何報書いたか等々で評価されるのだと,それができる人はいないですよ。

【岸本部会長】  あと,この共用化のときに一つ大事だったのが,若い人たちは,先ほどの話にも通じるんですけれども,大きな研究費というよりは,装置を買うというよりは,自分で自由に使える研究費で,いろんな共用化された装置を利用して自分たちがやりたいことをやれるようにするために全国にネットワークで,基盤,研究環境を作ろうというのがもともとの目標だったので,それがちょっとここに書いてないですよね。そもそも何で皆さんこれをやるのかと。そこをやるためのスタッフであり,若い人たちなので。若い人たちがあちこちでやれれば,自分たちで装置をうまく磨いていくんじゃないかと思うんですよね。そういった人のことも含めると,研究環境の改革と若手人材というのはうまく成り立っていくんじゃないかなと。その辺を分けないでやってほしいなと思いますけれどもね。分けないでやりましょうという。
【土井委員】  済みません。先ほどものづくりとして大型の基盤設備が重要というお話がありましたけれども,本日,資料8の後ろの方のところで,データの利活用を書いていただいているんですが,これはちょっとプラットフォームの整備をして技術開発をすればいいよ的な位置付けで書かれていますが,これこそがこの後,データ駆動型で勝っていくためには非常に重要なことなので,これはやはり根本的に戦略的な整備として位置付けないと負けていくと思います。
そういう意味では,計算力があるかないかで研究,論文が何本書けるか決まってしまうというビッグデータのところも,AIとかいうところもありますので,是非このあたりをよく考えていただきたいと思います。
一方,併せて業務改革もやっていただかないと,いろいろなものを共用しても,結局戦略的なことをやろうとするときのいろいろな提案とか何とか,それを紙ベースでやっていて,それを若手がやっていて疲弊していくというのがずっと変わらないので,また評価するときにいろんなものをたくさんもらっていて,それを全部フォーマットで出すみたいなことを延々やっているわけですね。これは絶対やめないといけないと思うんですよね。だって出したらちゃんと申請してやっているんだから,それが全部きちんとe-Radならe-Radに全部入っていくような,そういう枠組みを作って,国自身が若手の要らない業務を減らすということもきちんと考えないといけないと思います。是非よろしくお願いいたします。

【岸本部会長】  ありがとうございます。予定の時間になりましたので,すみません,最後に。

【西島委員】  最後に。先ほどSPring-8とJ-PARC,まさしくそのとおり,大型機器の重要性というのは私もそれに関与していたので,SPring-8もJ-PARC,両方中間評価に関わったし,ビームラインの建設にも関わったのでやってきたんですが,確かにそうですが,ここで議論に,資料8で問題になったのは,そうはいってもJ-PARCとかSpring-8とかスパコン系というのは,共用促進法でかなり守られていて,私たちがSPring-8を使うときは,逆に予算を組んで使いやすいです。今ここで問題になっているのは,大学にある数百万とか1億じゃなくて,むしろ数十億クラスの,例えばNMRとか風洞実験とか,ああいうものについての共用促進と余りにも隔たりが大きい。ですから,共用促進法とは言いませんけれども,今度,東北の放射光施設がもし共用促進法になるのであれば,準共用促進法みたいな形にして,共用促進,準促進に人がうまくいくんですけれども,人材育成のスタッフを考えるときに,SPring-8で働いているスタッフと,それからNMRに関わっているスタッフ,身分保障が余りにも違い過ぎてかわいそうであるというのを考えます。私はSPring-8とかJ-PARCについては大変賛成で,そちらの方に十分私はやったので,今は中ぐらいのSPring-8のNMRに絡んでいるんですけれども,そこに行って初めてそういう意識を持ちましたので,ちょっと御紹介しました。

【岸本部会長】  ありがとうございます。資料8については,また今日の議論も含めて引き続き御検討いただければと思います。
まだまだ本当は議論が尽きないところではありますけれども,時間が過ぎていきますので,是非これからの科学技術政策の立案に,今日の議論をつなげていただければと思います。
それでは,本日の議論は以上でございますが,研究振興局長の磯谷さんがお見えですので,御挨拶をよろしくお願いいたします。

【磯谷研究振興局長】  研究振興局長の磯谷でございます。遅参しまして申し訳ございません。今日は,第9期の基礎基盤研究部会の最後の回になりますので,一言御礼の挨拶を申し上げたいと思います。
まず,岸本部会長,そして委員の皆様方におかれましては,御多忙の中,この部会の取りまとめに御協力を頂きまして誠にありがとうございました。既に先ほど来議論が出ておりまして,まさに御指摘のとおりでありまして,縷々(るる)事務局からも説明を申し上げましたが,予算としましては,一応来年度予算は久しぶりに235億円,補正予算1,500億円ということで,これは別にそれで満足するということではないんですが,しっかりと必要な予算はまた確保していかなければいけないと思っています。
それから,先ほど来の制度改革とかファンディングの話ですとか,あるいは人材育成の話,それから原田先生から御指摘のあったDC1の話も,我々も強くそれは感じておりまして,具体的に若手とか任期の話ですとか,それからデータの話ですとか,あるいは技術職員,そして共用といった問題は,これまでみたいにばらばらに何か何となく予定調和的にやるのではなくて,科技3局と高等局が一体となって進めるということで,先般,柴山プランも出ましたが,具体的には副大臣のもとでのタスクフォースも設けて,今年の夏までの間に全体最適ができるような政策を,是非整理をしていき,今まで散々先生方から言われて,とてもできていないというのは,とにかくそれはちゃんと片付けて対応していいものを作っていくということで,職員一丸となって進めてまいりたいと思いますので,これ以上付き合えないよなんてことを言わず,是非今日のような御議論を引き続き叱咤激励いただいて,我々確実に,着実にできるものからきちっとやっていきたいと思っておりますので,是非今後とも基礎研究,あるいは基盤的研究開発の振興,研究環境の高度化について,来期以降の本部会の進め方についてはまた御相談をさせていただきますけれども,これからも様々な形で御指導,御鞭撻(べんたつ)を頂きたいということで,何とぞよろしくお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

【岸本部会長】  どうもありがとうございました。
事務局から御連絡ございますでしょうか。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  本日の会議の議事録ですけれども,後ほど委員の皆様に御確認いただいた上で,後日,文科省のウェブサイトに掲載させていただきます。
また,本日配付いたしました資料につき,郵送を御希望される方がいらっしゃいましたら,机上の封筒の上に残しておいていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【尾嶋委員】  議事録案が回ってくるのがちょっと遅いと思いますね。記憶が全部飛んでしまっている。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】  大変失礼いたしました。速やかに。

【尾嶋委員】  できるだけ早く,1か月以内ぐらいにやってもらわないと。

【岸本部会長】  それでは,以上をもちまして閉会としたいと思います。活発な議論をどうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課/研究振興局 基礎研究振興課

電話番号:03‐5253‐4111(内線4388)