戦略的基礎研究部会(第7回) 議事録

1.日時

平成28年3月9日(水曜日) 14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 数学イノベーション委員会における検討状況について
  2. 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)における拠点の在り方について
  3. その他

4.議事録

【大垣部会長】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第7回科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会を開催いたします。
 本日は年度末の大変御多忙の中、また足元の悪い中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。一部の委員は少し遅れて来られるそうです。
 それでは、まず事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 配付資料ですけれども、クリップ留めを外していただきまして、資料が1-1と1-2、2-1と2-2、3-1から3-4、そして資料4、参考資料は1から7まで付けております。欠落等ございますでしょうか。万が一欠落等がございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお知らせください。
 なお、本日は阿部委員、長我部委員、貝淵委員、小谷委員、小山委員、波多野委員、柳川委員につきましては、欠席の御連絡を頂いております。また、有信委員、角南委員、宇川委員は少々遅れていらっしゃるとのことです。

【大垣部会長】
 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日の議題ですが、数学イノベーション委員会における検討状況について。また、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIですが、における拠点の在り方について審議を行います。
 まず、数学イノベーション委員会における検討状況についてでは、数学イノベーション委員会で主査を務めておられます若山委員から御説明を頂きます。その上で、数学イノベーション委員会における検討状況を踏まえて、数学イノベーションを推進していくに当たり必要な方策について御議論を頂ければと思います。
 その後、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)における拠点の在り方について、事務局よりこれまでの議論を踏まえたプログラムの将来構想素案について説明していただき、その上でプログラムの将来構想について御議論を頂きたいと思います。
 さらにその後、今年1月に決定されました第5期科学技術基本計画の概要、科研費改革の現状、本部会で議論してきました戦略的創造研究推進事業の改革の検討状況について、事務局より報告をしていただきます。
 以上が本日予定している議題です。積極的に御意見を頂くとともに、議事の円滑な進行に御協力をお願いしたいと思います。
 それでは早速ですが、数学イノベーション委員会における検討状況についての審議に入らせていただきます。数学イノベーション委員会は、本部会の第1回で設置いたしまして、若山委員に主査を務めていただいております。今回は、御報告いただいた昨年8月以降の数学イノベーション委員会における検討状況について、若山委員より御報告いただくとともに、数学イノベーション委員会で検討中の報告書の構成案について、事務局より説明していただきます。その後、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。
 それでは若山委員、お願いいたします。

【若山臨時委員】
 御報告させていただきます。資料の1-1をごらんください。
 1番は前期までということで、本部会の前の部会に数学イノベーション委員会が設置されていたときのことが書かれております。
 2の方をご覧いただきたいのですけれども、2の方で、今、大垣部会長からお話がございましたように、昨年4月に本部会の下に数学イノベーション委員会が設置されてからは、数学イノベーション推進拠点に必要な機能について4回の検討を重ね、数学の活用により解決できる問題を明らかにし、その解決に向けた研究を実施する機能等を備えた拠点の必要性について整理し、検討状況として御報告したとおりです。
 これを踏まえまして、平成28年度概算要求として、理化学研究所の数理科学連携研究拠点の要求を行い、予算案に盛り込まれたものです。また、さきの御報告以降、9月以降ですけれども、別紙2のとおり5回の検討を重ね、数学イノベーションに必要な人材の育成を中心に議論を行い、現在は数学イノベーションの推進に必要な方策の取りまとめに向けた議論をしているところでございます。
 今後は、数学イノベーション推進に必要な施策についてさらに検討を深め、戦略的基礎部会の決定を得て、平成29年度の予算の概算要求につなげる予定です。
 ポイントは、別紙2をごらんください。数学イノベーション委員会ができて以来、前期も含めて、人材育成というのは研究とともに議論してまいったわけですけれども、主として数学系の、つまり大学とか大学院で数学・数理科学などを専攻している学生たちに関する人材育成に限り、議論してまいりました。しかしながら、ここにございますような委員会における発表者の御意見、それから様々な具体的な情報から、数学イノベーションを進めるためには、数学専攻・数理科学専攻以外の方たちに関する数学教育ということもちゃんと考えていかないと、実際、数学イノベーションは起きないと。そういう結論とまでは申しませんけれども、そういう意見が多く出てまいりました。
 そういうことを踏まえて、第22回もそうですけれども、関連するビッグデータやデータ科学に関する人材育成の現状なども参考にしつつ、数学の異分野連携を進めるためのプログラムを走らせているわけですけれども、その中での人材育成、それから数学人材のキャリアパス、あるいは高等学校における数学教育等についての識者の御意見をお聞きして、議論を重ねてまいった次第です。
 また、詳細は事務局より御説明いただきますけれども、資料の1-2とございますように、報告書の構成案を、まだざっとしたものですけれども、準備しております。
 まず、現状の整理です。それから、現状の問題点の整理が2番として行われておりまして、この問題点をさらに明確にしていかなければいけないわけですけれども、2ページ目にございますように、数学イノベーション推進に必要な人材に関する問題点と、推進に必要な拠点に関する問題点、それから大きな3番目としまして、数学イノベーション推進に必要な方策としまして、もちろん具体的に社会に直接役に立つということを考えつつも、また将来の大きなイノベーションにつながる可能性を包含する新しい数学を生み出す基礎的研究の支援も重要であるという認識の下に、様々な意見交換、それから問題点の明確化をしている最中でございます。
 詳細は粟辻さんからお願いいたします。

【大垣部会長】
 それでは、続いて事務局より、数学イノベーション委員会報告書の構成案について説明をお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 今、若山先生から御紹介がありました資料の1-2に入ります前に、現状を簡単に御紹介するのがいいかなと思っておりまして、参考資料になりますが、参考資料の3という資料をご覧いただけますでしょうか。参考資料の3が、数学イノベーションに関する現状についてというペーパーでございます。
 1枚めくっていただきまして1ページ目に、数学イノベーションに関する現状の取組というものが整理されておりまして、全部で1ポツの「ニーズ発掘から協働へ」というところから、一番下の5の「体制」まで、5つに分けられているわけですけれども、このうち「ニーズ発掘から協働へ」といった具体的な活動として、数学協働プログラムという文部科学省の委託事業が平成24年度から28年度、来年度までの5年間の予定で、今行われております。したがいまして、これの後継事業をどうするのかというのが、現時点の議論の一つの対象になっているものでございます。
 それから、右側の2ポツのところですけれども、これは数学と諸分野、あるいは、場合によっては産業界も巻き込んだ協働研究の研究費ということでして、これはJSTの戦略的創造研究推進事業の中で、もともと数学関連の領域が平成19年度から走っていたわけですけれども、事実上これの後継になるような領域も平成26年度から開始されているところでございます。
 一番下が体制で、こういった数学と異分野の連携、あるいは産業との連携の拠点となる研究所や研究センターが幾つかの大学でできておりまして、ここにありますように、京都大学の数理解析研究所、それから統計数理研究所に加えて、九州大学のマス・フォア・インダストリ研究所、あるいは明治大学の先端数理科学インスティテュートなどが、新たに大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点に認定されているところでございます。
 3ページがその組織の概略で、このように北は北大から南は九大まで、こういう数学と異分野の連携の研究センターあるいは研究拠点のようなものが、既に幾つか走っているというところでございます。
 それから、その次の4ページ目が、さっきちょっと触れました数学へのニーズの発掘から実際の協働へつなげていく、共同研究にうまくつなげていく前のワークショップですとかスタディーグループのような活動を支援するものとして、統計数理研究所を委託先として、先ほど申しましたような大学などが協力機関となって活動する事業が、平成24年度から5年間の予定で行われております。
 それで、この後ですけれども、去年8月に報告させていただきました以降の動きといたしまして、6ページが8月に御報告させていただいた、数学イノベーション推進拠点に必要な機能ですが、この報告内容を踏まえ、来年度の概算要求で理化学研究所に、もともとの理論科学連携研究推進グループという、iTHESと言われるグループがあったわけですけれども、これを発展・拡大させて、数学・数理科学の研究者をうまく巻き込んで活動するという要求をいたしました。
 それが認められまして、8ページをごらんいただくと、新しい体制の模式図が描かれております。ちょっと分かりにくいですが、数理科学連携プログラム(仮称)と書いてあるところの赤い点線で区切った部分の内側が、新しく作ろうとしている部分でして、右上の理研内コア研究室、これがもともと物理、化学、生物、計算科学の中でも特に数理的な、理論的な活動をしている研究者の研究室がもともとあったわけですが、それに加えて新たに数学の研究室も設けて、そういう横断的な活動をしていこうというのが活動の中核でございます。
 それ以外にも、下にありますようなiTHESフェローあるいは上級フェローといった若手あるいはシニアの研究者を国際公募して、ほかの海外の機関も含めて還流させるようなプログラムですとか、あるいは左側にありますような滞在型の国際ワークショップ、あるいは分野横断型の国際スクールといったものを開催する企画運営機能なども担うということも、将来的には構想されております。
 あとは参考資料ですので、説明は省かせていただきまして、先ほどの資料の1-2に戻らせていただきたいのですが、資料の1-2の1ポツが、今申しましたような現状の整理でございます。(1)が必要性、(2)が数学イノベーションに関する取組ということで、今申し上げましたような取組が既になされているということです。
 大きな2ポツが現状の問題点の整理でして、(1)が、こういったこれまでの活動を通じて見えてきた問題点、人材が不足しているとか、あるいは諸科学とか産業での認知度がまだまだ足らないとか、あるいは国際的なプレゼンスの問題だとか、そういった問題点があるということ。
 それから(2)が、そういった問題点をさらに整理したもので、1枚めくっていただきまして2ページ目に、数学イノベーション推進に必要な人材に関する問題点と、それから拠点に関する問題点に分けて整理しています。
 人材に関する問題点は、大学等による育成が十分ではないですとか、あるいは、特に博士課程の数学専攻の学生のキャリアパスの問題ですとか、あるいは数学とか数学者に対するイメージが非常に限定的なのではないかといったことが挙げられています。
 また、丸2が拠点における問題点で、先ほど紹介しましたように、全国に幾つかの数学と異分野あるいは産業との連携の拠点というのができつつあって、活動も行われているわけですけれども、活動の内容、あるいはレベル、体制は様々であり、なかなか一律には議論しづらいということ。それから、まだまだ数学界の外、諸科学とか産業界から見て、十分に見えるような活動がなされているとは言い難いのではないかということ。それから、個別の拠点で努力してやる部分もあるわけですけれども、人材育成ですとか情報発信といったものなど、個別拠点の活動だけではなかなか限界があるようなものもあるのではないかということで、3ポツで整理させていただきましたのが、こういった個別の数学イノベーション推進拠点に必要な機能と、それだけではなくて、全国的な体制で、全国でオールジャパンにやらなきゃいけないような機能があるのではないかということで、その2つに分けて整理を試みたのが3ポツでございます。
 まず、3ポツの(1)、個別の数学イノベーション推進拠点に必要な機能ですけれども、大きく分けまして3つに分けられています。1つ目が数学と諸科学や産業とが協働できる機能。具体的には、諸科学とか産業の問題を数学の問題にうまく翻訳するような機能。それを受けて、実際の協働研究などを行う機能。そして、そこで出てきた成果を実際の現場で使えるように、実装・実用化の支援を行う機能。こういったものが必要だろうということでございます。これは8月にも議論されていた部分でございます。
 それから丸2が、外への情報発信ということで、企業向けの講習会ですとか、高校生や高校教員向けの講習会のようなものが必要ではないかということ。
 丸3が人材育成の関係でして、例えば数学専攻学生に、もっと実践を通じた育成・教育が必要ではないか。具体的には共同研究ですとか、あるいは課題を提示して解決策を探るような研究集会、あるいは問題解決型の演習といったものへの参加を通じた育成のようなものが考えられるのではないかということ。
 それから、数理モデリングですとかデータ科学といったように、数学系に限らず、分野を問わず求められている学問・知見を履修させる機会を提供する、副専攻などを利用して提供するということも必要ではないかということが2つ目でございます。
 それから、数学を専攻している人以外の学生にも数学力、基礎力を強化していくということも重要ではないかということでございます。
 その次が全国的な体制でして、これは個別の拠点の努力だけではなかなか難しくて、全国的なオールジャパン体制でやった方がむしろいいのではないかというものを、少し整理しております。
 丸1が、数学イノベーション推進拠点と諸科学・産業との間をつないでやるような機能ということで、幾つか例が挙げられていますけれども、例えば、今は個別の様々な拠点ですとか、あるいは研究者に、数学と異分野の連携の関係の情報がある意味、散逸しているようなところがありますので、それを集約してやって、外から使いやすい形で発信してやるようなことが必要ではないかということ。これが1つ目でございます。
 2つ目が、諸科学や産業界からの相談に対応して、数学者にうまくつないでやるような機能。それから3つ目が、国内外の研究動向をきちんと分析して、数学の力を本当にうまく発揮できる重要な研究テーマを抽出してやるような機能。こういった機能が現状では欠けておりますので、まずこれを個別の拠点でやるよりも、どこかオールジャパンの体制でやる方がいいのではないかということで抽出したものが、この丸1の部分でございます。
 丸2の人材育成関係は、複数の拠点の協力による実践を通じた育成。これは、複数の拠点が協力して、先ほど(1)で申しましたような人材育成なんかをやった方が、むしろ効率的な部分もあるのではないかということですとか、あるいは若手研究者とか学生を、こういう拠点間で異動させて交流させることが非常に効果的ではないかとか、外国の第一線級の研究者に日本に滞在してもらって、日本の若手研究者あるいは学生などと直接交流する機会を設けることを通じた育成ですとか、企業へのキャリアパスの構築の関係で、これも個別の大学ごとにやるよりも全国的な体制でやった方が、より効率的ではないかということで、ここに整理をさせていただいております。
 このように、個別の拠点でやるべき活動、あるいは全国的な体制の下でやる活動というものを整理した上で、こういった機能を備えた全国的な体制とか取組が、今後必要ではないか。そのための必要な予算措置を考えていかなければいけないという方向の、今検討を行っております。
 以上でございます。

【大垣部会長】
 説明、御苦労さまでした。
 それでは審議に入ります。御質問、御意見のある方は、お願いをいたします。いかがでしょうか。
 どうぞ。

【鈴木臨時委員】
 御説明ありがとうございました。
 数学イノベーションに関する現状について、参考資料3の最後のページのスライドについて質問させてください。2006年までということで、かなり古い資料だとお見受けいたしますが、一つは臨床医学等に関する文献が日本では出ていない背景が、何かあるのであれば教えていただきたいということと、もう少し最近のこのようなデータというのはあるのでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 これはデータが古くて恐縮ですけれども、以前の報告書に出ていたものをうまく引っ張ってきたものですので、最新のデータが今あるかどうかは分かりません。
 それと、臨床医療のところに日本の数学者が参画している研究チームが、これだと見られないということですけれども、その原因は必ずしも明らかではないですが、日本とアメリカの分野ごとの力の強弱の違いのようなものが多少、つまり日本が得意な分野かそうでないか、アメリカが強い分野かそうでないかというものが、一定の影響を及ぼしているのかなという推測も成り立つのかなと思っておりますので、そこら辺はさらに分析が必要かなと思います。

【若山臨時委員】
 例えば臨床医学、精神医学、心理学というところですけれども、これはトップ1%ということで、日本の方は入っていない。どちらかといえば、数学といったとき日本での言葉づかいからいいますと、統計科学というか数理統計学が主としてアメリカでもコントリビュートしているということが、まず1点です。
 それ、アメリカでは最初から、数理科学者が研究チームの中に入って研究をしているという、。日本でも徐々に増えてはきているんですけれども、どちらかというとお手伝い側に回っているということがございます。
 ですから、そういう意味で、例えばトップ1%に限らなければ、もう少し日本も増えるでしょう、本質的なところを数理統計の方とか数学の人たちが、一緒になって最初からやっているという事例が少ないというふうにごらんいただければと、思います。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 よろしいですか。他にはいかがでしょうか。有信委員。

【有信委員】
 この検討を見ていると相変わらず、数学を何とか役に立てたいという意図が非常にあるようで、逆に言うと、数学がなければ困るという部分からのアプローチというのを、どういうふうにやっていくかというところも重要だと思うんですね。
 つまり、数学の研究が進んでいるラインと、具体的な様々な応用分野で研究が進んでいるラインが延長上にあるわけではなくて、むしろ様々な分野の研究が展開していく中で、今度は様々な数学が進んでいる部分の、ある意味でインタラクションがとれるような、多分それに類するようなところも書いてあるので、そういう視点も多少は見えているんだと思うんですけれども、むしろそういう発想で、つなぐというのを、特定の数学の分野が特定のところに役に立つようにつながるというよりは、数学の研究って、様々な領域がありますよね。その領域の部分と、具体的に研究をやっている部分とがうまくインタラクトするような仕組みを、多分考える必要があるような気がして。
 例えば、データサイエンスというと、すぐ統計学的な話みたいなことになってしまうんだけれども、実は多分それだけではなくてというところもあるので、それが多分最後の、この参考資料の中にある、さっきちょっと説明があった、初めから数学者が研究グループの中に加わって一緒に協働しているかとかいうときに、限られた特定の専門の人たちだけが協働するという格好よりは、もう少し緩い感じの形みたいなものも重要なような気がするんですけれども、それはどうなんですかね。

【若山臨時委員】
 全く御指摘のとおりだと思っています。実際にこういう書きぶりになっているのは、どうしても、まず最初に、データサイエンスと統計は親和性が非常に高いからです。しかしながら、今重要なのは、数学の、とりあえずの役には立たないけれどやっている数学のための数学とともに、この時代、ハイパフォーマンスコンピューターが出てきて、他の科学の中に数学の新しい問題が出てきているわけです。そこが20世紀に余りなかったことで、19世紀を見ていただければ、別に数学が特別に何かやっていたわけではないわけですね。物理学と一緒にやっていたわけです。そういう時代が出現しているということがございます。
 例えば、数学的に抽象的に定義されて、おもちゃみたいな例は数学者も手で計算できるのでよく分かっていたけれども、余りにも大きな複雑な図形、例えばビッグデータみたいなものを図形だと思ったときに、それについて何か幾何学的な量を計算するというのは、昔は不可能だったわけです。ところが、HPCが出てくると、そこで計算できるようになる。そうすると、新しい問題が出てきてそこで新しい数学の開拓が必要となる。そういう状況が既に現れています。
 そこのところが若干、日本発は遅れています。つまり、人的交流がなかったので、問題意識として、数学側の人たちがそこに接する機会が少なかった訳ですと。ですから、多くの人が出会うチャンスというのを、自分の友達とか先輩、後輩でもいいですし、そういう状況をいっぱい作っていくということが大事だということで、そこがメジャーに書かれているという形になっています。しかしながら、今、有信先生がおっしゃったような面は、数学イノベーション委員会の、数学側の人間も、そうでない先生方々にも、かなり深く共有されている点だと思っております。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 それじゃ、土井委員、次にお願いします。

【土井委員】
 いいですか。ありがとうございます。
 2点教えていただきたいんですけれども、1点目は、参考資料3の8ページに国際頭脳還流プラットフォームというのが書いてあって、こういうのがあるということなんですが、この話って、理研に今度はAIPのプロジェクトができますよね。そうすると、AIは、今はディープラーニングが随分言われていますけれども、次はシミュレーション、今先生が御指摘されたようなHPCIを使ったシミュレーションみたいなものを、さらに発展させていくとなると、ディープラーニングのようにモデルがない話とモデルがある話、それをどううまくやっていくかというところは、すごく重要だと思うんですが、8ページのこれだけ見ると、AIPと余り絡まないので、同じ文科省で同じ理研の中なのに、何でこう別なのかなというのが理解できないなというのが1点目です。
 2点目は、先ほどのまとめの中、報告書の案の中で人材育成のお話があって、それは重要だと思うんですが、ちょっとひっかかったのは、拠点の中に、WPIのところを東北大学と東京大学があるのですが、この後の次のWPIの議論と関わるのですが、WPIはこういう人材を育成するための拠点ではなく、トップランナーですよね。だから、これをここに書くと、次の議論と全く違うことが書かれているような気がして、拠点とはいってもWPIは違うんじゃないかと思いますというのが2点目なんです。

【若山臨時委員】
 2点目については、私がお答えするのがいいのかどうか分かりませんけれども、数学と他の分野が関わっているという意味で、ここに入っていると。そういうことだというふうに御理解いただきたいと思います。
 それから、もちろん数学を発達させるためにというか、数学イノベーションのためにも非常に価値あるという、同列に並べるのは御指摘のような問題があるかもしれませんけれども、意義深いということで、ここに記載しているという形になっていると思います。
 最初のAIとの関係ですけれども、私が先ほど申し上げたのは、必ずしもシミュレーションということではなくて、そこから例えば、先ほど幾何学の話をしましたけれども、実際、昔、物理学の記述には、例えば保存量の記述というのは非常に重要なわけで、それは数学的に言うと不変量の記述になるわけです。そういうものをデータから取り出してくるというモデリングの話になっておりまして、必ずしもシミュレーションではない。
 それから、これも私からお答えすべきではないですが、AIの方と、理研の中に数理科学連携プログラムがあって、ここだけ特出しというのは変だと。確かに、これは余りにも小さ過ぎるので、ここでは大きく書いてみたというふうに御理解いただくことと、それから、AIと言った場合に、これは私見ですけれども、AIに最も理解しやすい言葉というのが、例えば数学だということがございます。
 それから、今は例えばAIによって何ができるか、コントロールできるかという話が先行しているような気がいたしますけれども、そうでない部分に数学の貢献というのが将来的にはなされていくのかなと考えている次第です。
 かなり個人的な意見を今、申し上げてしまいました。粟辻さん、よろしいですか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 参考資料の8ページの絵ですけれども、具体的にはどんな活動をするのか、特に研究の中身のような話はこの資料には入っていないので、分かりにくいかと思いますが、今走っているiTHESと言われる理論科学の連携グループというのは、理論物理、それから材料の中の数理的な研究をしている方々、それから数理生物学なんかを研究されている方といった方々が、今は生物、物理、化学といった各分野の中で理論的・数理的な研究をしている方が、横串を刺すような研究グループを設けることで、新たなブレークスルーが生まれるのではないかということで始まったものでして、結構おもしろい研究成果なども出ているところでございます。
 ただ、これまでの現状では、いわゆる数学の研究者が中にいたというわけではございませんので、それを新たに加えることで、さらにそれをパワーアップして、特に各分野で細分化、あるいは悪い言い方をすれば縦割りの中に埋もれているような理論科学の人たちを、横にうまくつないでやることで、ある特定の分野で使われているような数理的な手法が、全く別の分野にも応用できるのではないかといった、数理科学、数学の持っている汎用性のようなものをもっと生かしていくというのも、この取組のポイントの一つだと思います。
 そういう意味で、AIPとも多分いろいろな意味で連携を図っていかなければいけないのだと思いますけれども、幅広い応用分野を横断するような取組、それによって新たなブレークスルーを生み出していこうという取組だと御理解いただければと思います。
 それから、もう一つは拠点ですね。WPIの最初の拠点の体制図に、東北大学あるいは東京大学のWPIの拠点が入っておりますけれども、ここで挙げておりますのは、数学と異分野が連携していくような研究の場として、例えば東北大学のAIMRであれば、AIMRの中に数学あるいは理論物理の人なんかが集まるユニットを作ることで、新たなブレークスルーを生み出そうとされているわけで、そういった場が、結果として異分野と連携できる数学専攻の研究者の育成にもつながっているのではないかということで、ここに挙げさせていただいているということだと思います。

【土井委員】
 それはそれでいいんですけれども、報告書案の2ページの2の(1)の丸3のように書くと、WPI、東北大の拠点も東大の拠点もこれをやらなきゃいけないとなってしまうので、それは書くときには留意していただければと思いますということです。そうしないと、WPIの意味がないので。

【粟辻融合領域研究推進官】
 それは留意します。

【土井委員】
 あと、すいません、数学イノベーションというのは、イノベーション・イン・マセマティクスなんですか、バイ・マセマティクスなんですか。どっちの議論をしているのか、だんだん分からなくなってきたんですけれども。

【若山臨時委員】
 それも含めて、委員会の中で常にというか、何度もやっておりますけれども、少なくとも数学の中でのイノベーションではございません。それに特化したものでは全くありません。もちろん、それも当然、期待はしています。
 例えば、ちょっと付け加えさせていただきますと、理研のこの絵ですけれども、全般的に言いまして20世紀、それから21世紀に入っての数学というのが、使われる、使われないということもありますけれども、そういう考え方がまだ十分、他分野の人たちと共有できていない。細かい証明のところを共有する必要なんか全然ないんですけれども、そういったアイデアみたいなところが。
 そういうものが共有されることによって、数学も次にあるし、次の連携の発展もあると考えています。そういう機会を作っていきたいというのが、この数学イノベーション委員会の一つの重要な目的だと考えています。

【大垣部会長】
 じゃあ、先に川上委員、お願いします。

【川上臨時委員】
 自分の経験を踏まえてですが、2点ありまして、1点目が、特に医療や医学の分野では、1990年代から、いわゆる生物統計学の専門家が日本でも出てきて、臨床試験でAという薬とBという薬、どちらの方が効いているのということを明らかにするための統計的な手法として、疫学的デザインの中で統計家が活躍し始めました。
 ところが今後、臨床試験は減っていきます。これからいわゆるビッグデータの時代で、きょうこの瞬間にも医療が行われている中で、どういった医療を受けている人が結局よくなっていくのかということを明らかにするための統計学的・数学的手法というのが、今後望まれます。
 しかも、製薬企業はそういう方々を非常に欲していると思いますが、全く人がいません。企業もですし、大学にもいなくて、我々も、数学科とか物理学科に出向いていって、数学と連携を何とかしたいと、我々からラブコールを数学の方々に送っている現状です。ですので、もっと医療、医学、薬の分野には、数学の力というのは大きなパワーをもたらすだろうというのを、日々実感しています。
 2点目が、いわゆる購買者履歴情報という膨大ではありますが、ノイズの入ったような情報をデータサイエンティストがクリーニングして、数学的にどうやって生かして何を明らかにするのかというのは、恐らく今後の重要なテーマになると思います。
 ところが、データベースの運用者の方々とお話をすると、数学者はいないのです。ですので、データのクリーニングまではできても、どのようなアルゴリズムで解決することができるのか、プログラムを作れるのかということも、まだまだ萌芽的です。
 今後の若い人たちが活躍すべき数学の分野というのは、社会の進歩とともに日々発展していると思いますので、是非大学は何らかの仕掛けを作って、交流できるような、先生がおっしゃるようなことが、よりできるといいのではないかと考えています。
 以上です。

【大垣部会長】
 特によろしいですか。

【若山臨時委員】
 そういう仕組み作りもありまして、例えば、自分の大学のことで恐縮ですけれども、マス・フォア・インダストリ研究所というものを建てる前は、全く数学教室というのは、よくも悪くも孤立しているというところだったんですけれども、そういう看板の研究所ができますと、やはり話が来ます。例えば今だと、生体防御医学研究所との連携が始まっているとか、そういうのが積極的になってきた。
 それと、たまたま私が今、九州大学で研究担当の理事をやっているということがありまして、あいつの専門は数学だと知られているわけです。そういうところで数学というのが、変な話ですけれども、そういえば、数学は必要なんだということで、お話が私を介して来るということもございます。ちょっと特殊事情ですけれども。でも、今先生がおっしゃったことに関しては、数学イノベーション委員会でも相当意識が高い分野だと考えています。

【大垣部会長】
 片岡委員、お待たせしました。

【片岡臨時委員】
 この参考資料の6と7なんですけれども、イノベーションと言った場合は、社会変革ですね。そういうものが当然期待されるということになると思うんですが、そういう点では6の方は、そのことが随分詳しく出ているように思います。
 次の7の方は、今度は国際頭脳還流プラットフォームとか、そういう説明になるんですが、この6と7の関係といいますか、つまり、逆に言うと数理科学連携プログラムというのは、数学の中に閉じているようなイメージになってしまうんじゃないかなという気がするんですけれども。7の上の方に個別の企業の名前をが出ているんですが、要するにこの国際頭脳還流プラットフォームが動くことによって、それがどのように産業とか社会に波及力を及ぼして、どんなイノベーションが生まれるのかというのがどこかに書いてあると、非常に分かりいいなと思いました。

【若山臨時委員】
 ありがとうございます。それは先ほど申し上げたように、一つのポイントは、20世紀に数学の中で発達した非常に抽象的な、普通の数学専攻の学生から見ても非常に抽象的なものがあるということです。いい研究者というのは数学でも、非常に抽象的なところと具体的な例が常に往復できるような人たちということがあって、多くの場合、実際にすごくすぐれた仕事をしていきます。そういうところが、多くの新しい問題が出てきている他の分野との連携によって表に出てくるということが、次の新しい世界を生んでいくんだと思っているわけです。
 つまり、まだまだ残念ながら日本の中では、数学というものと外とのいろいろな接点というのが非常に少ないということがございます。その接点を増やしていくことによって、両方の人たち、賢い人たちがいっぱいいるわけですから、それで発展していくんだという期待の下でのプログラムです。

【片岡臨時委員】
 おっしゃっていることはよく分かりますし、多分そういうことだと思うんですが、それで今のような質問をしたんです。つまり、6と7と見ていったときに、特にこういう国際頭脳還流プラットフォームの中をぐるぐる動き始めたときに、それがどのように社会に波及効果を及ぼして、具体的にはどんなイノベーションというのがそこから、先ほど土井委員からイノベーション・イン・マセマティクスとイノベーション・バイ・マセマティクスとありましたけれども、イノベーション・バイ・マセマティクスですね。それから川上委員が言われたように、医療の分野ではまさに今、こういう数理科学の重要性というのはどんどん上がっていますから、それが、具体的な例でもいいと思うんですが、こういう具体的なものが出てくるんだというところまで示していると、分かりいいなと思ったんです。

【若山臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 御意見あれば。

【西尾部会長代理】
 有信委員がおっしゃったことと重なるかもしれないのですけれども意見を述べさせていただきます。まず、私は大学では数理系の出身でして、報告書で書かれていることは非常に重要なことあり、その方向で進めれば良いと考えております。ただし、どちらかというと今までの数学の体系とか数学の枠組みを、現実に出てきている様々な問題に、いかに応用あるいは適用するか、という色彩が強い感じがします。逆に、現在、ビッグデータ解析とか、現実的に有効な新たな手法が出てきているときに、それをベースにした新たな数学の枠組みであるとか、数学の体系を構築するということが、非常に重要なテーマになるのではないかと思います。
 その観点からは、数学の革新的な新たな体系を構築していくというような方向の議論は、この報告書では強く打ち出されてはいないという判断でよろしいでしょうか。私は、数学の新たな体系を作るには、非常に良い機会ではないかと思います。

【若山臨時委員】
 有信先生の御質問のときも少しお答えしましたけれども、外の世界に個別の小さな問題があって、それを今の数学で解いていくというだけじゃなくて、新しい数学が生まれるということに対しての期待はみんな持っています。先生のおっしゃるとおりです。ここはどなたかがブレークスルーするのか、どうなるのか分かりませんけれども、重要な点だという認識は深くあります。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 じゃあ、どうぞ。手短にできれば。

【竹山臨時委員】
 生命系の中で数理学や情報科学ができる人材を育てようとしているところで、同様なことを感じています。どうしても教育の体系が分かれているので、横串教育を試みても必ずしもうまく機能しないことが多いです。情報系、数理系教育を受けた学生、生物系教育を受けた学生、それぞれが同じものを目指したとしても、違いが出てきます。
 数理を基礎にした教育にイノベーションも、という中で外からそこに入る人材をどのようにそだてるかも課題かと思います。その中にいる人たちが外と連携するお話でしたが、より積極的にダブルメジャーのような考え方が必要かと思います。是非、純粋培養のような専門教育ではなくて、ダブルメジャーも選べる制度設計を進めるべきかと思います。学部は数理で大学院は生物系という方はいらっしゃいます。そういう人たちを輩出できる学部教育、制度というものを、教育の現場で作ってもらいたいと思います。
 例えば医学の中で数理人材が求められているというお話でしたが、彼らが論文の筆頭著者になることは少ないのが現状かと思います。情報系の人たちが主役になれない点ではモチベーションが下がるところもあるかと思います。 給料が高く、実力で成功できるIT系企業を選択する、というのが現状かと思います。
 イノベーションを具現化するのであれば、もう一段階高いシステムを作らないと、学生自身がそこの中で融合していかないのではないでしょうか。

【若山臨時委員】
 少しだけお答えさせていただきたいと思います。資料の1-1の別紙2で、最初にやった第22回は、先生が今おっしゃったようなことをお聞きしたくて、御発表いただいて意見交換いたしました。先ほど来もありますけれども、アメリカと日本と比べると、学部段階だとメジャー・マイナーという概念が希薄で、そこが一つの問題点であるという認識は私たちも持っています。
 それをどうしていくかというのはまた一つの問題で、それから大学院で違うところに行くことについても。意外と、先生方の前で言うのも変ですけれども、専門を変えた人というのは、成功した人って、かなり大きな成功をするんですよね。ですから、そこは私たちも念頭に置いて議論をいたしております。
 以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 次の議題へ移りたいと思いますが、特に御発言はよろしいですか。
 それでは、ありがとうございました。それで、本日の部会での議論も踏まえまして、報告書の取りまとめに向けて、数学イノベーション委員会で引き続き議論を深めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは続いて、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)における拠点の在り方についての審議を行います。
 まず事務局より、これまでの議論を踏まえたプログラムの将来構想の素案について説明していただき、その後、御議論いただきたいと思います。
 それでは、事務局よりプログラムの将来構想の素案について、説明をお願いいたします。

【斉藤基礎研究推進室長】
 資料2-1と2-2に沿って御説明申し上げたいと思います。WPIプログラムに関しましては、来年度で1期目10年が終了するということで、今後の10年、さらにその先を目指して、将来構想はどうあるべきかという議論を進めてきております。本部会でも何度か御説明させていただき、御意見を賜っているところでございます。本日は、その将来構想の現状の素案を御説明させていただきまして、改めて御意見を賜れればと思っております。
 まず、2-2のポンチ絵をごらんいただければと思いますが、こちらは前回までに御紹介している内容ですけれども、WPIプログラムにつきましては、拠点の代謝の観点から、当初始まった拠点の一部は終了するということになっておりまして、その部分については新規の拠点の公募を継続したいというのが1つ目。
 2つ目は、補助金支援期間が終了した拠点については、基本的には自助努力によって各機関が維持するということになっておりますが、高いレベルまで到達した卓越性に鑑みまして、そのブランドを維持するための何らかの工夫をすべきではないかという2点を、昨年のWPIプログラムの委員会で指摘されているという状況でございます。
 それを受けまして、プログラム全体について、どういう成果があったのか、どういう課題があったのかというのを2ページ、3ページあたりでまとめておりまして、これも今まで皆様方から頂いた御意見などを反映して、整理をしつつあるものでございます。
 きょう、その次でございますが、4ページでございますが、一応その全体を俯瞰しまして、実績をどういうふうに捉えて、今後どういうふうに進めていくかというあたりがここに書いてございます。
 まず、実績を全体から見ますと、世界から見える拠点を目指すシステム改革の事業として、トップダウンの運営ですとか、クロスアポイントメント制度ですとか、民間財団からの巨額の寄附など、かなり進んだ取組を今までも実施していて、成功してきているのではないかと。外国人の受け入れ実績なども、非常にすばらしいものがあるのではないかという御指摘を受けております。
 なので、研究費ではなくてシステム改革の制度を整えることで、世界のトップレベルに到達するような実際の実証をしたということだと言われております。さらに近年、大学改革ですとか、競争的資金と交付金の一体改革など、様々な改革が進んでおりますけれども、それぞれの改革の方向性に合致しており、それを要は先導したような実証例になっておりまして、今進んでいる大きい改革を進めるためにも、引き続き先導的な役割を担っていく必要があるのではないかということが書いてございます。
 では、そのためにWPIプログラム、今までの反省点というところを見てみますと、同じ大学内にあったとしても、大学内のほかの組織や、それ以外の大学への広がりに、引き続き課題があるということも指摘されておりますので、世界のトップレベルに到達した先導的な取組や国際的なブランドなどを高めながら、それをうまく使って外から改革を迫る手段であったり、参照とすべき手本として政策的に活用していく必要があるのではないかなと考えておりまして、この後も説明します新規拠点ですとかアソシエーションという新しい枠組みを考えたいと思っています。
 さらに、前回この会議でも頂いた御意見、たくさん頂きましたが、前回の中では、文科省のほかの制度ともう少し一体的に運用しなければ、WPIプログラムだけで考えてもなかなか限界があるのではないかという御指摘も頂きましたので、財政的な制約の中で、政策の最適化ですとか投資効果の最大化の先行事例となるよう、ほかの事業との連携を進めていきたいと考えております。
 資料2-1に移っていただきまして、以上の方向性を踏まえまして、プログラム全体としましては、1ポツ目で、事業単独では考えずに、関連する事業と連携を重視するというのが1ポツ目。2ポツ目といたしましては、WPIプログラムの4大ミッションということで、「世界から見える頭脳循環のハブとなる『世界トップレベル拠点』を確立する」という目標の下で、世界最高水準の科学、融合研究によるブレイクスルーの創出、国際化の達成、研究と運営のシステム改革という4本の柱で進めてまいりましたが、その4本については、大枠は維持するということでいかがかという方向性でございます。
 ただし、融合研究につきましては、融合自体が自己目的化しているという御指摘がある一方で、拠点形成のための大きな原動力となった、非常にすばらしいという御指摘もありまして、引き続き検討が必要かなと思っております。
 3ポツといたしまして、各拠点間が、今まで競争的な環境においてそれぞれが頑張っていただいたわけですが、今後は、今までは情報交換も希薄な傾向にございましたので、それぞれの拠点が達成したものに対する情報ですとかノウハウですとか、そういうものを積極的に収集して、ほかに展開していくような仕組みも必要ではないかということで、アソシエーションという枠組みを考えております。
 そのアソシエーションの詳細が、すいません、また資料を飛んでいただいて、2-2の5ページをごらんいただければと思います。アソシエーションとは何かというお話ですが、まず左下にございますとおり、WPIの1期目10年の支援が終了した拠点につきまして、国際性ですとか、論文の科学的な評価などを含めて、審査に通ったものについてはWPI Associationという枠組みに入っていただいたらどうかという御提案です。
 このアソシエーションですけれども、上に四角に囲まれておりますが、10年間のプログラムで構築された、目に見えるトップレベルの研究拠点ということで、日本の科学の国際的プレゼンスをさらに向上させるとともに、文科省の進める改革を実証例として先導していただくという役割を担っていただこうと思います。
 その中に、真ん中にアソシエーション事務局とありますが、そのような機能を担っていただくには、まず拠点間のネットワークをしっかり組んでいく必要があるという話と、各拠点が持っているシステム改革のノウハウですとか、具体的なのは下にございますが、若手研究者の問題ですとか、国際化の問題ですとか、様々な情報、ノウハウを収集して、まずはWPIの中でもちろん展開いたしますし、それ以外のWPIのような国際的な拠点を目指したいところにも、積極的に貢献していけるような仕組みというのを考えたいと思っております。
 6ページに行っていただきますと、少し似ている図ですが、そのようなWPI Associationというものがもしできるとすれば、右下にございますとおり、WPIプログラムだけではなくて、文科省が実施しております研究大学への支援制度ですとか、国際化への支援ですとか、大学大学院改革、いろいろ進んでおりますので、そのような事業と有機的に連携していくことが必要であろうということが1つ目と、左側真ん中下ぐらいでございますけれども、文科省内でも運営費交付金という予算を使いまして、様々な研究拠点、研究所などを支援している事業などもありますので、将来的にはそういうものと連携をとっていくということも考えられるのではないかと思っております。
 最後、7ページでございますが、新規拠点の公募についてでございます。先ほども申したとおりアソシエーションという形で、世界に発信していく政策を誘導していくような象徴的な仕組みができたときに、そこにつながっていくような拠点は引き続き育成していく必要があるだろうということで、今までの成功事例を再びほかの場所でもしっかり進めたいということで、引き続き新規拠点の公募をしたいということが書いてございます。
 大きいミッション4つは大きく変わらないだろうということが1つと、公募をする際には、これも前回この場でもいろいろ御意見頂きましたけれども、人材育成機能の強化ですとか、既存組織のスクラップ・アンド・ビルドですとか、定員の配置計画ですとか、WPIを通じて得られました拠点を進めていくために必要なものというのは、申請の要件にしていくということもある程度検討した方がいいのではないかという御指摘を頂いております。ということで、引き続き新規拠点を公募するというのを進めていきたいという形になっております。
 御説明は以上でございます。

【大垣部会長】
 御苦労さまでした。
 それでは、今説明のありましたプログラムの将来構想の素案について審議を行いたいと思います。御質問あるいは御意見ある方は、お願いをいたします。いかがでしょうか。
 どうぞ。

【鈴木臨時委員】
 御説明ありがとうございました。
 WPIなんですけれども、5ページ目のスライドに、「目に見える」トップレベルの研究拠点というのが上の方に書いてあると思います。実際に過去の資料でも、文献レベルとかでは大変すぐれているんだなということがよく分かりますし、実際に訪問してみてすばらしいと思いましたが、認知度は極めて低いと思います。知る人ぞ知るみたいな。私はWPIに訪問した後、何百人の人に、大げさじゃなく、WPIって聞いたことがありますかと一般社会人に聞くと、皆さん聞いたことないんですよ。
 なので、もしこのWPI Associationを作るのであれば、世界的な認知度の向上というのも一つの目的として御検討いただければと思います。

【斉藤基礎研究推進室長】
 ありがとうございます。先ほど少し申し上げましたが、各拠点が競争するような形で伸びてきたという経緯もあって、先生御指摘のとおり、WPIプログラム全体として、どのように戦略的に広報を行うかとか、事業全体としてどのようにPRするかというのは、ちょっと弱かった傾向があるかなとは認識しております。
 実際、アメリカのトリプルエーエスの総会ですとか国際的な場で、プログラム全体でPRというのは、部分的にはやってきたんですけれども、そういうものをもう少し、アソシエーションのようなものをしっかり作って、広報を戦略的に進めたいということで、検討は進めております。

【鈴木臨時委員】
 お願いします。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 ほかに。有信委員。

【有信委員】
 WPIの今後を考える上で、WPIというのはある意味で日本に新しいスタイルの研究システムを作り出したという点で、非常に高く評価をしています。で、いい部分を徹底的に生かしつつ、システム改革に結び付けるという意味で、WPIが大学に設置されているということの意味を、もう少し生きるようにする必要があると思うんですよね。そうでなければ、これは別に大学でなくてもいいと。独立した研究機関という拠点を作るということでもいいんですけれども、大学にあるということは、いわば継続的な人材の育成と、研究拠点としての機能が継続的に維持をされていくという見込みが、一応見通しを持ってやっていると思うんですよね。そうでなければ、一定の有期の研究グループを作って、それが終われば解散という話で済む話で。
 そうだとすると、新しい、ここで考えているアソシエーションでもいいんですけれども、それを作るときに、これを大学の仕組みの中にどうやって内在化していくかという部分が非常に重要だと思います。その内在化をするということの意味は、資料2-1の一番最初のところに課題として挙がって、大学全体が変わっていないと組織内の孤立した特区になっているという指摘が記述されていますけれども、基本的には大学内に設置はしながらも、大学内の具体的な定員配備は行われていない。教育部局としての位置付けもきちんとされていない。したがって、そこに大学院生を連れてきて育成をするためには、別途膨大な努力が必要になっているということがあるわけですね。
 だから、ある意味で大学の今の在り方を基本的に変えていく、非常にいいトライアルだと思っていますけれども、そういう部分が少しずつ、逆に大学内に侵食していくといいますか、浸透していかないといけない。そのための仕掛けを作らなきゃいけなくて、逆に大学の現状の定員をここから削り取るということになると、また多分、膨大なエネルギーが必要になると思うんですね。
 そういう部分を、どういうふうにアソシエーションという形の中でつなぎを作っていきながら、大学全体の研究教育機能のシステム改革をやっていくか。そういうときに、完全に定員化をしてしまうと、今度は人材が固定化してしまうという、WPIの持っているいい部分に、多少マイナスの効果もあるということなども配慮しながら、総合的にここを検討していくといいのではないかと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。

【斉藤基礎研究推進室長】
 大学によって少し事情が違うところもあるんですけれども、おおむねのところでWPIが学内でかなり目立った存在で、成果を出しているということで、特に今回終了が予定されているところについては、新たな学内の制度を作って、学長直轄の仕組みの中で、学内のリソースをある程度集めていくみたいなことも含めて、やっていただいているという認識でございます。
 大学の定員に関しましては、今回特に終了に近いところについては、かなり積極的に学内のリソースをということで御努力いただいているところがありますし、ただ、それだけでは限界があるので、どうやって外部の資金を引き続きとってくるかということを努力されているところも多いと認識しています。
 あと、御指摘いただいた大学院教育についても、まさに御指摘された、学生が入ってこられるのかどうかとか、教育ができるのかというところで、様々な工夫をしながら、部分的には進めていらっしゃるところもありますけれども、引き続き大きな課題の一つだという認識で関係者は動いておりますので、御指摘のとおり、アソシエーションみたいな形で引き続き、進んだ例ということで進めるに当たっては、そのようなことも配慮していかないといけないなと思っております。
 内在化という意味ですと、完全に大学の中に入ってしまって埋没してしまうのが内在化ではないと思っておりまして、適度に外からというか、国からというか、後押しして、ある程度PD・PO制度などで、こちらからもやりとりをさせていただきながら、高いレベルを維持していただくということかなと認識しております。

【有信委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 今のやりとりで、1つ気になる。大学にないWPIも研究拠点としてありますよね。ですからその辺の、これからは大学が前提なのかどうかというあたりはクリアに。

【斉藤基礎研究推進室長】
 いや、今も物質・材料研究機構(NIMS)はWPI拠点になっておりますので、大学だけが前提ということではないと思います。ただ、学生の受け入れという意味ですと、特に国立の研究機関とかですと、さらにハードルが高くなるのかもしれませんが、それはそれで、連携大学院などでいろいろ協力して進められているところだと思いますので。

【有信委員】
 ただ、国研にある場合は事情が全然違うので、もちろんWPIが国研にあっちゃいけないということではないんですけれども、多分、問題の深刻さが全然違うだろうと。そういう意味なんですね。

【大垣部会長】
 ちょっと確認までいたしました。
 ほかに。どなたか手を挙げた。どうぞ、竹山委員。

【竹山臨時委員】
 10年間の期間が終了後は、アソシエーションメンバーということですが、その間、人も制度も、機関のミッションも変わってくるかと思います。ですので、プログラム委員会により厳格に審査するというのが、WPIからアソシエーションになるところだけでなく、アソシエーションになった後も委員会による定期的に評価が必要かと思います。ですので、継続性に関してどのように担保していくかという課題があります。また、様々な事業がありますが、アソシエーションが「私たちが優遇で」という考えかたや、審査での優遇が起こらないように注意することも必要です。

【斉藤基礎研究推進室長】
 ありがとうございます。
 まず前段の方ですけれども、アソシエーションにつきましては、昨年のプログラム委員会からの御提言でも、例えば3年ごとに定期的に、基準に合致しているかどうかレビューしなさいと言われておりまして、一度入ったら安住してしまって、ずっとという制度ではないと認識しております。
 ただ、さらに将来で申しますと、仮に新拠点がどんどん増えていったときに、どんどん数が増え続けていくようなものでもないだろうと思っておりまして、世界のトップと戦えるのは本当にとんがった拠点が幾つか、国として必要な数が指定されていて、J1、J2ではないですけれども、常に入れ替わりが起こるような高いレベルの仕組みというものを目指すのかなと思っているのが1点目です。
 あと、ほかの事業との連携に関してですが、御指摘のようにアソシエーションだけがあれらの事業と一緒にやるということだけではなくて、今、WPIの事業なのでこういうふうに書かせていただいているんですけれども、本当はWPIだけではなくて、前回も御指摘いただきました文科省の制度が広く、例えば同じような拠点を作るのであれば、ほかの事業も連携してという方向性だと思いますので、それはそれでWPIに限らず、全体でどういうふうに連携がとれるだろうかということで、今、議論をさせていただいている状態でございます。

【大垣部会長】
 よろしいでしょうか。
 ほかには。土井委員。

【土井委員】
 具体的な案を出していただいてありがとうございます。
 1つ気になるのは、WPI Associationということで、これでやると、すいません、10年たったらまた同じ議論になるんですよね。で、10年たったらまた同じような議論にならないようにするための方策というのが、多分この6ページの下のところに書かれている、文科省内の施策との有機的な連携というお話だと思うんですが、だとすれば、逆に10年の間に、この中のどういうところと組んで出口を明確にするかというのを、ある程度最初にプランニングしておかないと、10年たってまた今回と同じように、10年たちました、どうしましょうという話になるので、そこで路頭に迷うのは、また同じ議論になるので、そういう意味では、大学の中に内在化させずに、だけど文科省の施策として、どう研究大学とか、国際・グローバル化とか、大学院の改革とかをしたいかというミッションの中で、ベストプラクティスを作っていくという、上手に出口を作っていただくようなことを考えないと、10年先延ばしにしましたというので終わってしまうので、是非そういうことがないように、さらなる出口の具体化が必要ではないかと感じます。

【有信委員】
 いや、それはちょっと私は違う意見。多分、今言っているのと、意見が違うというか、イメージが違うんですけれども、さっき大学の内在化と言ったのは、例えばWPIで、例えばカブリでもいいんですけれども、ああいう特定の、いわば世界の最先端の研究が、例えば東京大学なら東京大学、東北大学なら東北大学という形で、ある種の新しい世界に冠たる拠点ができて、そこに人がみんな集まると。集まることによって、いわばそこが世界の研究のメッカになっていく。
 ただし、今のままで内在化させたら、今の大学の仕組みの中で様々、また消えてしまう部分もあるので。ということで、将来的に自立的にやっていこうと思ったら、その大学が、その分野の光り輝く世界の拠点になっているという形に、最終的なイメージは持っていたんですけどね。ちょっと違うかもしれませんけれども。

【土井委員】
 いや、私が今言ったのもそれで、だからそういう意味で、大学に内在化するのか、大学がもっとそれによって引っ張られて、大学としてのブランドが高まっていくのか。そういうところをもう少し、いわゆる融合と書いてあるんですけれども、それで少し明らかにしてほしい。多分、同じイメージなんだと思うんですけれども。すいません、やっていると長くなりますので。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。

【斉藤基礎研究推進室長】
 内在化という言葉の定義によるのかもしれないですけれども、ただ、危惧していますのは、WPIという外からの大きい補助があってここまで来ているけれども、補助金が終わった瞬間になくなってしまうというのは避けなければいけないので、そういう意味ですと、その大学のリソースを出していただいて組織を維持していただくという意味では、内在化なのかなと思っておりますが、ただ、全くほかの大学内の組織と同じ仕組みになってしまうと、完全に溶け込んでしまいますので、それとは違うということかもしれないなと思っております。
 あと、10年後、また同じ議論になるのではないかという御指摘もございまして、それは避けたいと思っております。先ほど少し御紹介申し上げた、新規拠点を公募する場合には前提の条件を少し厳しくした方がいいのではないかという中に、組織の維持に関することですとか、そういうことも少し入れるというのもあり得るかなと思っておりますし、今回様々なほかの事業との連携を考える際に、そういうほかの事業からの支援みたいなものが、途中でも入ってくるような形でというのは考えられることだと思いますので、検討させていただきたいと思います。

【大垣部会長】
 どうぞ。

【川上臨時委員】
 1点気になったのですが、確かに今、議論を尽くしてルールを決めて、10年後に蒸し返されるというか、苦労しないというのは大事なことかもしれませんが、大学も社会も科学も文化も変わっていくものですから、逆に今、そんなに厳しく決めて、後で自分たちの足かせになる方が恐ろしいと思います。この10年前でも、隔世の感があるぐらい大学は変わりましたので、そこは考えていただいた方がいいかなと思いました。
 あと、カブリのときに私は同じことを言ったかもしれませんが、リーダーですね。PIのお力やお考え、ビジョンは、極めて重要だと思いますので、新規のところの評価に当たっては、リーダーシップというのは、是非何よりも重要に捉えて、評価にしていただくのがいいのかなと思っています。
 以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。特に事務局は今、よろしいですか。

【片岡臨時委員】
 大分話が具体的になっていると思うんですけれども、WPIプログラムの2-1で、現在4つのミッションというのがあって、その中に融合研究というのが入っております。それで、大学に置くWPIに関して、大きな大学の中に置く場合は比較的、融合研究というのも、部局がいっぱいありますし、人もいっぱいいるので、可能かと思うんですけれども、一方においては、資料2-1の下の方のBに、中規模大学に置くのもいいのではないかと。
 そういう場合、例えば1つの中規模大学でやるというのも一つの方法だと思うんですけれども、あるいは大学同士でもいいですし、それから、先ほど国立研究機関もありましたけれども、そういうものと一緒にやるとか、そういうやり方を考える必要があるのかないのか。つまり、一定の組織の中にあくまでも置くのか、あるいは組織間融合というので考えて設計をするのかと。これが一つですね。
 それからもう一つは、いろいろな大事な点はあると思うんですけれども、文科省のプログラムということになると、やはり人材育成。そうすると、若手研究者、ポスドクの人材育成も重要なんですが、大学院生がかなり重要なのではないかと思うんですね。そうしたときに、今の大学、全部がそうではないんですけれども、どちらかというと大学院生の囲い込みみたいなことが、どうしても起きかねない。特に部局レベルあるいは専攻レベルで動いているんですね。
 その壁を超えるということも、こういう点では重要だと思いますし、例えば大学以外の研究機関に大学院生が行って研究をするとか、あるいは複数の大学でやる場合には、一方の大学院生が他方の大学の場所でもできるとか、そういう枠組みも考える必要はあるのかどうかですね。これは余りやり過ぎると、意味不明になってしまう可能性もあるので、一定のルールは必要なんだと思いますが、そういう点はいかがなんでしょうか。

【斉藤基礎研究推進室長】
 まず前半の方ですけれども、融合についてなんですが、現状では大学を入れて、大学の提案として出していただいている関係で、例えば2つの組織が対等な立場で一緒に出してくるという形にはしていなくて、どこかの大学がメインになって、そことサテライト的に、少し国内でも組んでいるというのがございますが、今はそうなっております。
 ただ、今後のことを考えると、一緒に連携してやった方が、よりいいものができるというときに、そういうものを全く排除するのかということでもないと思いますし、まだそこまで、詳細まで議論できていませんけれども、御指摘を踏まえて可能性を検討したいと思います。
 大学院生の囲い込みについては、まさに御指摘のとおりでして、実際そういうことが起こっているやにも聞いていますし、一方で実際、いかに大学院生が一緒に研究を行うかというので、各拠点ごとに様々、現場での工夫、苦労をされて、様々な取り組みが行われているのが実態だと認識しています。
 先ほど、このプログラムは先行例としていろいろ走っているという御説明をさせていただきましたが、まさにその部分でも先行例で、いろいろ工夫、試行錯誤している先行例になっておりまして、それの裏返しとして、実際どういう問題があるのか、どういうことを解決しないといけないのかというのも見えてきている状態だと思いますので、それも重要なテーマの一つとして、今後の中に、検討していきたいと思っている項目に入っておりますので。

【有信委員】
 入れてくれるわけですか。

【斉藤基礎研究推進室長】
 今までの問題点ですとか、今後の中に入って。

【有信委員】
 ちょっとそこだけ。中で一番気になっているのは、例えばWPIで大学院生が研究したときに、誰が学位を出すのかという問題なんですよね。つまり、WPIの研究責任者が学位を出せれば何の問題もないんだけれども、実際に学位を出すのは、その学生がもともと所属していた専攻科が学位を出すという形にならざるを得ないので、そこは今言われたように囲い込みのところで、既存の組織が絶対的な力を持っているわけですよね。そういうことは、是非頭に入れておいて。

【斉藤基礎研究推進室長】
 はい。多分、拠点自体が学生を今後もちゃんと育てたいというふうに大学が判断すれば、大学院化するというのも一つの方法だと思いますし、現状ですと、WPIにいる先生方がもともとの学部内と併任が掛かって、そちらの身分で連れてきていただいて中でやっているという例もたくさんあるように聞いていますので、そういう工夫は今行っているんでしょうけれども、それで十分なのか、さらにもっと制度も含めて変える必要があるのかは、引き続き検討していかないといけないのかなということだと思います。

【大垣部会長】
 はい。

【竹山臨時委員】
 今、片岡先生がおっしゃったことは重要かと思います。WPIは、その専門でとんがった研究が求められていますが、新しい融合分野の創出も兼ねています。
 アソシエーションになってからの横のつながりを強化するということですが、今後WPI自身、組織連携をした形での申請も奨励しても良いかと思います。最近は、機関連携が非常に盛んに進んでいるので、その現状を考えても連携申請の可能性は考えるべきかと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 そろそろ次に移りたいと思いますが、ほかに何か御意見、いかがでしょうか。よろしいですか。

【若山臨時委員】
 1つ、最後に。

【大垣部会長】
 どうぞ。

【若山臨時委員】
 新規拠点という、この4つの目的を考えたときに、どの程度のスケールで今回、新規を考えておられるかというのを最後にお聞きしたいんですけれども、もし構想があれば。日本の中に、どれぐらいのこういう拠点があればいいかということに関連しています。

【斉藤基礎研究推進室長】
 1拠点当たりの規模という意味ではなくてですか。

【若山臨時委員】
 ではなくて。

【斉藤基礎研究推進室長】
 ではなくて。そちらも、今回これだけ1拠点当たりの規模が大きい事業ですので、そもそも日本国内にこういうのにふさわしい候補がどのぐらいあるのかというのも調べないといけないということで、論文のデータですとか、政策研究所とかの力もかりながら、拠点にするとしたらどういう分野があり得るかみたいな話は検討しております。
 まだデータを整理している最中で、なかなかないんですけれども、今までいろいろな関係者の方々からお伺いをすると、日本国内にこの手の拠点が15とか25とか20とか、それぐらいのオーダーではあった方がいいんじゃないかという御意見も頂いていますので、まずはそれぐらいに向けてと思っていますし、今回の新規拠点も、終わるのと同程度ぐらいは公募をかけたいと担当としては思っておりまして、それに向けて検討しているところでございます。

【若山臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 西尾委員。

【西尾部会長代理】
 特に来年度で終了する4つの拠点に関して、WPI Associationに組み込まれた場合にもプロジェクトの推進には多様性を確保することが重要に思います。先ほど川上委員もおっしゃいましたように、今後いろいろな意味でのプロジェクト推進の環境がドラスチックに変わる中で、WPI拠点として満たすべき重要な条件はきっちりと満たしながらも、各拠点がWPI Associationのメンバーとしての活動をどのように推進していくかについては、いろいろな多様性が出てくると思います。その多様性については、拠点を有する大学の戦略を大切にするという観点から配慮していくことが重要に思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいですか。
 それでは、ありがとうございました。大変有意義な御提案、御議論をありがとうございました。本日の議論を踏まえまして、事務局でさらに具体的な検討を進めていただき、次回には方向性を取りまとめたいと思います。
 それでは、次の議題に移ります。続きまして事務局より、今年の1月22日に決定されました第5期科学技術基本計画の概要、科研費改革の現状、そして、本部会で8月にも報告があった戦略的創造研究推進事業の改革の現状について説明をしていただき、その後、質疑を行いたいと思います。
 それでは、第5期科学技術基本計画の概要について説明をお願いします。

【浅井室長補佐】
 それでは、資料3-1と3-2をまず御覧頂ければと思います。この1月22日に第5期科学技術基本計画が閣議決定され、資料3-1がその概要になっています。既に御案内の委員もいらっしゃると思いますけれども、この部会との関係の部分を中心に御紹介させていただければと思います。
 科学技術基本計画は、10年先を見通した5年間の振興の基本となる総合的な計画になっております。基本的な考え方が、第1章に書かれており、(3)目指すべき国の姿、(4)基本方針として4本の大きな柱が掲げられています。今回の基本計画のポイントは、右側の第2章になるのですが、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組として、自ら大きな変化を起こし、大変革時代を先導していくためという形で、いかに世界に先駆けて「超スマート社会」(Society 5.0)と名付けられておりますけれども、その実現に向けての取り組んでいくこととされております。
 特に(2)、(3)で、超スマート社会における競争力向上と基盤技術の戦略的強化という箇所に、先ほども話題になりました理研のAIPの関係が出てきますし、本文にはこの基盤技術のさらに基盤となるものとして、本日の1つ目の議題にありました数理科学についても記載されております。
 裏面に行きまして、第3章には、経済・社会的課題への対応として、個々の政策課題に対する取組があり、第4章には、今後起こりうる様々な変化への対応として、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化とされ、大きな柱で人材力の強化、知の基盤の強化、資金改革の強化と記載があります。この(2)は、この部会での戦略的創造研究推進事業や、今議題になったWPIが位置付けられており、イノベーションの源泉としての学術研究、基礎研究の推進に向けて、どのように改革・強化を図っていくかが記載されております。
 後ほど述べますけれども、3つ目の四角のところにもありますが、こうした取組を通じた総論文数の増加、総論文数のうちトップ10%論文数の割合の増加というところが明記されております。この部分については、昨今、論文数のシェアの低下というのが見られることから、日本の科学力が落ちているのではないかとの指摘もあり、このような指標が入っている状況です。
 右側は、第5章、第6章、第7章で、それぞれ循環するシステムの構築や、社会との関係、そして推進機能をいかに強化していくかということが記載されています。
 資料3-2を見ていただきたいのですが、先ほど述べました論文数については、指標の具体的な記載は、資料の3ページ目に表1と記載されていますが、留意点としては、指標について総合科学技術・イノベーション会議で検討しており、第5期基本計画中にフォローアップ体制を構築すると記載されております。
 戦略的創造研究推進事業やWPIでは、現状結果としては、トップ10%論文の割合はかなり高いのですが、日本全体として取り組んでいくときに、どう貢献していくのかというところが今後の議論になってくると思われます。総合科学技術・イノベーション会議で指標とか目標値について議論は行われているので、我々としてはこれからも注視して考えていきたいと考えております。
 以上です。

【大垣部会長】
 それでは、続いて科研費改革の現状について、説明をお願いします。

【前澤学術研究助成課企画室長】
 研究振興局学術研究助成課企画室長の前澤でございます。お手元の資料の3-3に基づきまして御説明をいたします。
 表紙をめくっていただきまして、2ページ目でございますが、こちらに科研費の概要をまとめております。科研費は、もう御案内の先生も多くいらっしゃると思いますけれども、人文・社会科学から自然科学まで、全ての分野の学術研究を支援する競争的資金でございまして、ピア・レビューによりまして審査が行われております。近年の助成規模は約2,300億円となっておりまして、新規応募約10万件に対して、新規採択は約2.6万件、年間約7.3万件の研究課題を支援しております。
 次の3ページでございますけれども、科研費はかなり古い制度でございまして、大正7年に大本の資金ができております。2018年には100周年を迎えます。昭和40年代に今の科研費としての制度がまとまりまして、それから今にも続いております2段階のピア・レビュー方式という審査制度が導入されました。そのページの下の方でございますが、近年、不採択理由の開示や、間接経費の措置、基金化の導入など、様々な制度改善を積み重ねてきておりますけれども、平成30年度の公募に向けまして、現在審査システムを含めた半世紀ぶりの抜本的な改革を進めているところでございます。
 その次のページが、現在の科研費の応募や採択、配分の状況でございます。
 それから5ページ目、6ページ目は、ノーベル賞受賞理由になったような研究から、イノベーションとして大きな経済効果を創出したものまで、科研費の代表的な成果を御紹介しておりますので、御覧ください。
 7ページに行っていただきまして、科研費改革の概要でございます。まず、平成26年度に学術分科会にて、改革の基本的方向性を御提示いただきました。学術の現代的要請である挑戦性、総合性、融合性、国際性、この4点に沿って科研費改革を進めていくということでございます。この際に、改革に当たって不易として変えてはいけない部分、それから時代の移り変わり、学術を取り巻く状況の移り変わりなどにも合わせて変えていくべき部分というものが、それぞれ提示されております。
 平成27年度には、改革の実施方針や工程表を策定しつつ、特設分野研究の推進ですとか、新しく国際共同研究加速基金を設置して、国際共同研究を進める新しいプログラムを導入するなど、改革を始動しております。
 それから、平成28年度以降、第5期科学技術基本計画が始まる来年度以降でございますけれども、改革の加速・全面展開の期間と位置付けておりまして、大胆な挑戦的研究に対する支援の強化ですとか、科研費の大型プログラムの検証と充実、若手研究者の支援方策の検討を進めまして、それと並行しまして、この資料でいいますと右側に縦長で書いてございますが、科研費の審査に使われる分科細目の見直し、それから新しい審査方式の検討を行います。
 そして、最終的には平成30年度に、審査システム、研究種目や枠組みの見直しを含めて、新制度に移行する予定としてございます。
 その次の8ページと9ページでございますが、科研費改革の柱の一つとなります審査システムの見直しは、現在日本学術振興会と学術分科会の下の科学研究費補助金審査部会にて進めております。その検討状況を、「科研費審査システム改革2018」として、先月研究費部会に御報告いただきました。
 その概要は9ページで御説明したいと思いますけれども、9ページの左端が現行の審査体系の概念図でございます。現在400余りの細目で、大規模な研究種目から小規模なものまで、書面審査と合議審査の2段階審査方式というものを、ほぼ全ての種目において同じ方式で行っておりますけれども、これを新たな審査システムでは、現在の細目表を廃止しまして、小規模な研究費については多様性を重視しつつ、より効率的に審査を行うため、304の小区分に基づいて、書面審査を2段階で行う方式へ変えていこうと考えております。
 それから、より大型の研究費につきましては、従来の細目にとらわれず、研究者の創造性を喚起するため、65の中区分又は11の大区分により、審査委員全員が書面審査を行い、その上で幅広い視点から議論を行って採択を決定する、総合審査方式と呼ばれる審査方式を導入する予定となっております。
 今後、審査部会において、3月中にこのシステム改革の公表案を取りまとめまして、4月からパブリックコメントに付した上で、今年中をめどに最終決定を行う予定でございます。すいません、この辺のスケジュールはもう一枚行っていただいて、10ページにお示ししてございますけれども、ですので、今年に最終決定を行いまして、平成29年9月の平成30年度の科研費公募から、この新しい審査システムを導入していく予定となっております。
 それから、11ページに行っていただきまして、こちらも先月の26日の研究費部会に御報告いただいたものですが、今、科研費の最も大きな規模の支援である特別推進研究につきましては、学振での議論を基に審査部会で審議を行いまして、その結果をこのような形で研究費部会に御報告いただいたものです。
 12ページに行っていただきまして、こちらの下の枠囲いの中に学振での議論のまとめが載っております。具体的な改革の方向性としまして、新しい学術の展開に向けた挑戦性を重視し、研究者が従来の研究活動を超えてブレークスルーを目指す研究への支援、これを特別推進研究の目的としまして、そのために複数回受給を制限する、研究費・研究期間を柔軟化する、審査方式を改善するということが提言されております。
 審査部会では、この学振の提言を踏襲しながら、新制度の導入については平成30年度を目途とすること、それから文部科学省に対しては、新制度への円滑な移行に向けた適切な行財政措置が提言されております。今後、研究費部会の下に設けられました挑戦的研究の支援に関するワーキンググループで、この特別推進研究の見直しについて具体案を取りまとめていく予定としております。
 ただいま御紹介いたしましたとおり、科研費関係の部会からは特別推進研究の見直し後の新制度につきまして、平成30年度からの導入を目指して、円滑な移行に向けての適切な措置というものが求められております。それで今回、科研費の最大種目である特別推進研究が、挑戦性をより重視する方向で大きく見直されまして、受給回数制限も導入される予定でございます。これに伴い、この制度の下で高い評価を得た研究テーマをどのように扱っていくべきかは、日本全体の学術・科学技術の振興の観点から重要な課題になろうかと考えております。
 かねて科研費とCREST、さきがけなど、各種の研究費制度の役割、機能分担を明確化することですとか、相互の連携のシームレス化については課題とされまして、例えばJSTでファンディングマネジメントデータベースの整備を頂くなど、そういう対応も進められてきたところでございます。それをさらに進めまして、こういう科研費改革を契機としまして、さらなる改善の可能性を検討していく必要があるものと私ども担当課では認識しております。
 研究費部会におきましても、このような認識に立った御意見を頂いているところでございまして、今後、事務局において適切な対応の在り方を検討の上、必要に応じてこちらの戦略的基礎研究部会の御意見も賜りたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【大垣部会長】
 御苦労さまでした。
 それでは続いて、戦略的創造研究推進事業の改革の検討状況について説明をお願いします。

【浅井室長補佐】
 資料3-4と、参照で参考資料の7を御参照いただきたいと思います。夏の時点で、競争的資金の改革の中間取りまとめを受けた戦略的創造研究推進事業の対応について御報告させていただきましたが、その後の進捗と現状について御説明させていただきます。
 先ほど前澤室長からありましたけれども、科研費との連携については、戦略目標策定指針では、科研費からいかにつなげるかということで、ファンディングマネジメントデータベースによる科研費動向の分析も、現在進めている戦略目標の策定プロセスにおいては実施を図っております。策定次第、こちらで報告させていただき、そのプロセスについて、さらに改善できる点がないかについて御意見いただこうと考えております。
 それ以外、研究費制度としての内容については、その他の方に記載させていただいております。こちらは参考資料の7になりますが、競争的資金の中間まとめを受け、機器共用について等、科学技術・学術審議会先端研究基盤部会において11月に、新たな研究設備・機器共用システムの導入について報告がありました。
 1枚めくっていただくと概要がありますが、こちらの基本的な考え方の(2)の部分ですが、競争的研究費の改革と連携し、第5期基本計画中において共用体制の集中的な改革を進めていく必要があるとされ、国費で購入する研究設備・機器はもとよりということで、いかに効果的・効率的に使用するかという観点が記載されております。
 資料3-4に戻っていただきますが、競争的資金の中間まとめに基づき、戦略創造においても大型の設備・機器は原則共用化の方針に沿って、既存の共用設備の活用とか、新たに購入する場合の機器を共用化していくため、申請時において、共用システムにおいて取り扱われることを新たに確認する仕組みの導入を考えており、新たな28年度の募集要項から実装していこうと考えております。
 その他、成果を下流につなげるための仕組みの強化として、CRESTにおいて、分野の特性に応じ、成果の最大化に向けて、研究の途中で研究チームを分野融合的に再構成するという仕組みを本格的に導入していく予定にしております。
 また、国際融合研究体制、これまでも取り組んできているところですけれども、外国人の研究者を招聘するということも視野に入れつつ、様々な仕組みを取り入れ、取組を強化していく予定にしております。
 最後、若手等人材の関係ですが、研究者に出口を見据えた研究をしっかり進めていただくためということですが、アメリカのNSFのプログラムを参考にしていますが、研究者自身が実際に研究室の外に出て企業側に立って、社会からは自らの研究がどのように見えているかを感じていただき、それによって自らの研究の位置付けを改めて考えていただくというSciFoSというプログラムを、28年度より本格的に実施する予定とさせていただいております。
 最後の部分ですが、大学改革との一体改革として、研究代表者の人件費について、現在は研究費からは支出できないとなっていますが、この一部について研究費から支出可能と整理できないか、関係者と議論を行っているところです。
 簡単ですけれども、以上でございます。

【大垣部会長】
 御苦労さまでした。
 いろいろな現況あるいは検討状況の説明がありましたが、御質問がある方はお願いをしたいと思います。いかがでしょうか。

【西尾部会長代理】
 戦略的創造研究推進事業等の改革・強化についての報告の中で、この委員会でも以前から議論されておりました、科学研究費補助金助成事業の実績報告書等を広範に参照可能なデータベース等を戦略目標を立案する過程において活用していくということに関しては、実際にそれを進めていただいたということで、非常に良いことだと思っております。
 ただし、先ほど科学研究費の方で報告がありましたように、平成30年度の申請に向けて、例えば特別推進の枠組みがいろいろ変わっていくこともございます。そこで、国として学術研究を進める上での科学研究費補助金と戦略的創造研究推進事業における基礎研究の「さきがけ」、CREST、ERATOに関する戦略目標の立て方については、シームレスなつながりがありますと、我が国の科学技術政策において非常に有効になるのではないかと思っております。
 例えば特別推進において、卓越した業績をあげている研究に関しては、我が国として非常に強い科学技術分野となり得るものであって、そのような分野を戦略的な基礎研究としてさらに伸ばしていくということが重要だと思っております。そのような観点からも、今後、データベースレベルよりもさらに一段強化した連携を考慮していただけると大きな意義があると思っています。どうかよろしくお願いいたします。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 どうぞ。

【浅井室長補佐】
 御指摘いただいたように、科研費との連携は進めておりますが、科研費データベースの分析においては、データマイニングの手法など課題が多くあります。一概にデータだけでつなぐというのは困難な部分がたくさんあります。科研費データベースの分析だけでなく、Step 2では、分析結果を研究者に意見聴取を行っています。そこでは科研費の特別推進研究や新学術領域研究などで、いい成果が出てきているのは回答の中で話題になります。それを踏まえながら、今現在、目標等策定指針にのっとって戦略目標を作っておりますが、よりよいシステムとして、どのように取り組んでいけるのかというのは引き続き考えていきたいと思います。

【西尾部会長代理】
 よろしくお願いいたします。

【大垣部会長】
 ほかに御質問、御意見ございますか。よろしいですか。
 どうぞ。

【鈴木臨時委員】
 御説明ありがとうございました。
 この科研費の活用というのは、産学連携的なプロジェクトも含むんですか。

【浅井室長補佐】
 実際はCRESTやさきがけにおいて、いい成果が出た研究をどう扱うかというのも同じ問題があります。CRESTやさきがけによる成果には、様々な成果があり、サイエンスとして本当にすばらしく、その後に科研費の特別推進研究が実施される場合もありますし、CRESTとかさきがけの実施後に、ベンチャーを立ち上げたりという形で産業側につながっていくものもあります。一概に基礎から応用へと線形的につながっていくものだけではではないと考えており、どういったつなぎ方が一番よいのかについては課題として認識しています。
 単に優先枠を設けるということでも、新しく採択される課題が減少してしまうこともありますし、一方では、現在でも評価疲れがあるという話もあり、様々な課題があります。評価を有効的に活用しつつ、制度的にどのような仕組みがよいのか、科研費とも連携しつつ、一緒に考えていきたいと思っております。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。
 あと、こちらのスライドの何ページなんでしょうね。

【大垣部会長】
 資料の何でしょうか。

【鈴木臨時委員】
 3-3の3ページ目でしょうか。採択機関数で、その他374機関というのはどのような機関なんでしょうか。

【前澤学術研究助成課企画室長】
 恐れ入ります、3ページの……。

【浅井室長補佐】
 4ページだと思います。

【前澤学術研究助成課企画室長】
 あ、4ページですね。

【大垣部会長】
 ページで4ページ、上の箱。

【前澤学術研究助成課企画室長】
 ほかは、今、科研費の配分先が大分広くなっておりまして、まず独立行政法人がございます。例えば理研ですとか産総研のような。それから民間の企業の研究所にも、一定の資格を認められたところには配分しておりますので。それからあと、都道府県の持っているような研究所試験施設のようなところも含めて、それがその他に入っております。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。

【前澤学術研究助成課企画室長】
 すいません、先ほどの御質問について1点補足させていただきますと、今、科研費データベースというものを私どもは整備しておりまして、これが結局、データが全部FMDBの方に行っているんですけれども、1964年からの科研費の全てのデータを、研究者、研究課題、金額ですとか、それから実績、評価なども含めて、全て公開しております。
 それで、こういうところから、まさにおっしゃるとおり、産学連携みたいなものにもつながっていくといいなと思うんですけれども、私が担当として見ておりまして、国で本当に今、年間7万数千件を支援しておりまして、全ての課題の状況ですとか、あるいは企業とのシーズ・ニーズのマッチングをするというのは、やりたいとは思うんですけれども、かなり不可能にも近いことなので、こういうのはむしろ、このデータベースを活用していただきながら、各大学ですとか、あるいは分かりません、地方自治体なども含めまして、あるいは企業も含めて、それぞれの関心ですとかニーズに合わせてやっていただくというのが、今のところベストなのかなという気はいたします。
 ただ、逆に私どもも情報を提供する側として、どういう情報がニーズがあるのかとか、そういうことは、いろいろな声を聞きながらブラッシュアップしてまいりたいと考えております。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 よろしいですか。

【鈴木臨時委員】
 はい。

【大垣部会長】
 ほかになければ、よろしいですか。
 それでは、時間も近付いてまいりましたので、本日は以上で終了させていただきたいと思います。
 最後に、今後のスケジュールについて、事務局から説明をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 資料4の方で配付させていただきましたが、今後の予定については現在、事務的な調整を別途させていただいておりますけれども、次回は6月頃を予定させていただいております。先ほど部会長からもありましたけれども、WPIの将来構想についての方向性の取りまとめや、数学イノベーション委員会の議論を踏まえた報告書の取りまとめ等について、次回の議題としていただく予定になっております。
 本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様に御確認いただき、文科省のホームページに掲載させていただきます。
 なお、本日の資料につきまして、封筒に入れて机上に残していただければ、事務局から後ほど郵送させていただきます。

【大垣部会長】
 よろしいでしょうか。
 それでは以上をもちまして、第7回戦略的基礎研究部会を閉会いたします。どうも本日はありがとうございました。

── 了 ──

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