数学イノベーション委員会(第26回) 議事録

1.日時

平成28年2月17日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室
東京都千代田区霞が関3‐2‐2

3.議題

  1. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

 若山委員、合原委員、國府委員、高木委員、常行委員、中川委員、樋口委員、本間委員、森委員

文部科学省

 小松研究振興局長、生川大臣官房審議官(研究振興局担当)、岸本大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、渡辺基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官

オブザーバー

 東京都立青山高等学校 逸見由紀子 主幹教諭
 群馬県教育委員会事務局高校教育課 丸橋覚 補佐・教科指導係長
 東北大学知の創出センター 前田吉昭 副センター長

5.議事録

【若山主査】
  定刻となりましたので、ただいまより第26回数学イノベーション委員会を開会いたします。本日は御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。
  本日、今井委員、大島委員、グレーヴァ委員、小谷委員、長谷山委員、舟木委員からは欠席との御連絡を頂いております。女性委員がきょうはいらっしゃらないということで、しかしながら小松局長がおいでになりますが、バランスを欠かないように進めましょう。
  きょうは高校現場での数学への御関心とか御興味について、東京都立青山高等学校の逸見先生、群馬県教育委員会から丸橋先生、それから現在数学の委託調査を率いておられます東北大学の前田先生にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは本日の議事を進めるに当たりまして事務局より配布資料の確認をお願いします。

【粟辻推進官】
  配付資料でございますが、座席表、議事次第、委員名簿の後に資料1、整理図を付けております。
  資料2が今御紹介がありました東京都立青山高等学校の逸見先生の資料でございます。
  資料3が丸橋先生の資料でございます。
  資料4が東北大学の前田先生の資料でございます。
  資料5が数学イノベーション委員会の報告書構成案でございます。
  資料6が今後の予定です。
  参考資料が3種類ございまして、参考資料1が前回の議事録。
  参考資料2がこれまでの数学イノベーション委員会における議論の概要についてでございます。
  参考資料3が昨年8月の数学イノベーション委員会の上の部会で報告させていただいた数学イノベーション推進に必要な機能についてというポンチ絵でございます。
  以上でございます。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。8月以降数学イノベーションに必要な人材育成について審議しております。その中で、8月以前からですけれども、数学系出身の人たちのことだけでは数学イノベーションは進まないという御議論もたくさん頂いております。本日は、大学に進学する前の高校における数学教育の状況などについて最初に御発表を頂きまして、その上で、この委員会での報告書の取りまとめの方向性について議論したいと考えています。
  それでは議題に入りたいと思いますが、事務局で必要な方策の整理をしていただきましたので御説明いただきたいと思います。お願いします。

【粟辻推進官】
  資料1を御覧いただければと思います。前回もお示ししたものですので簡単に御紹介しますと、一番右端に必要な方策例が4つに分けて書いてありまして、1が大学の教育のカリキュラムの中に関わる部分で、2が数学イノベーションの実践の場に参画させることによる育成。色がついていますけれども、既存の大学における数学連携拠点、あるいは今回新しくできる理研の拠点などの活動に参加することによる育成の部分がこの薄い黄緑色の部分でして、戦略創造事業の数学関係の領域などの活動が緑の部分でございます。水色の部分が統計数理研究所に委託しています数学協働プログラムなどで行われているものでございます。3が企業へのキャリアパスの構築の問題。4が高校における数学への意識の問題ということで、本日は一番下の4について現状を報告していただいて、その上で全体を含めた意見交換をさせていただきたいと思っております。以上でございます。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。続きまして高校教育の現場から数学への興味・関心等について東京都立青山高等学校の逸見主幹教諭より御紹介いただきたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。10分程度を目安にお願いいたします。

【逸見主幹教諭】
  ただいま御紹介にあずかりました都立青山高校の逸見でございます。よろしくお願いします。座ったままで失礼いたします。数学イノベーションの取組を長くされていると伺いまして、御苦労様でございます。本日お招きいただきまして、また高校現場のお話を少しでもさせていただければと思っております。
  短い時間ではございますけれども、実際、高校での生徒たちの様子などもお話しさせていただきますが、今、高校に入学してくる生徒たち、以前に比べまして高校入試が随分変わってきていることもございまして、将来何になりたいのかということを非常に考える機会を多く持っているようでございます。そのせいもありますでしょうけれども、入学当時から自分の進路は大体こんな方向ですよ、こんなふうに決めていますと言うんですが、高校側といたしましては、今後新たな世界を見せて、広くこんな社会がありますよということで進路指導を進めているところでございます。私ども、高校入学のときの習熟度によって、教員もいろいろだと思うんですけれども、その中で、人生の最後の学びになってしまうかもしれない数学を高校で何とか楽しめたらいいなと思って指導しているところです。
  高校における進路設定、前に少し書いておりますが、入学時の志望はあっても、今申し上げたとおり、まずはどの学校におきましても視野を広げる指導をしております。自分自身と向き合う時間でもありますが、視野を広げてもらうために各校いろいろな努力をされているところです。講演会、芸術鑑賞、定番の行事もございますが、進路ガイダンスもここのところ、5年、10年、随分と各校で改革をしているところです。
  例えば本校、青山高校では大学模擬講義という形で毎年1回しているものがございます。これは高校1年生、2年生を対象とするものですけれども、前には載せておりませんが、毎年18の講義をしていただいています。その中でも理系分野のものは六、七入れてもらっているんですが、その中で数学という名前のものは残念ながら1つもございません。6分の4ぐらいは工学系の講義、あとは看護、教員志望というまとまりは文理共通でございますが、医学の志望者も若干名ございますので、そちらへの講義を毎年しております。一般的にはどの学校でもやっているような行事であると思っているところです。
  もう一つ、本校の卒業生、いろいろ社会的に活躍している方も多いですので、どの学校でも卒業生、また多くの社会人の方々に来ていただいて経験を聞くことも重ねているところです。
  そんな中で、講演会などもございますが、生徒の、自分を発見していくための適性検査の利用も多く聞いております。
  このように、授業以外では数学に触れることがすごく少ない学校の中ではありますけれども、私たち数学の教員としてはどのように興味・関心を促していくのかというところでの取組を少し御紹介したいと思います。
  その前に、数学科への進学者でございますが、実際、学校現場で今の模擬講義にあるように、数学という名目が表題になることはほとんどございません。他校の先生方にリサーチをしても、定常的に、多くて数パーセントの子供たちが数学科に進学している。それは過去5年程度では推移が見られませんでした。私どももそのような観点でデータを見たことがなかったものですから、このたび粟辻様にお話を頂いて、各校の先生方に少しデータを見てもらってくださいということでお話をしたんですけれども、推移は、申し訳ないことに何も見られずということでした。
  ただ、この後少し御紹介いたしますが、国での取組、SSHとか東京都の理数への取組で数学への関心が高まってきていることは、一時的にはあったと伺っています。
  学校の中でどうやって数学への興味・関心を培っていくのかですが、すみません、まずは授業と書きましたが、そのほかにも特別授業という時間帯が高校ではございます。学校によって呼び方はいろいろかと思うんですが、正規の時間帯に入っている授業のほかに、例えば試験後の時間帯、特別に時間割を組んでみるとか、そこにイベント、講演会とか、そういった時間が多少学校の中でもあります。特に昨今、学校ごとに特徴を出そうということがございますので、特別授業という中に数学を少し入れてもらおうかというところを少しずつ出している学校もございますが、伺ってみるとほとんど聞かれない状況がございました。やはり理科が非常に多くこの特別授業には入っています。
  3の講演会ですが、実は数学に関しての講演会はほとんどございませんでした。私は今都立青山高校でございますが、青山高校でも随分昔に一度数学の先生に来ていただいてお話は1回ありました。以前、都立西高校にいたんですが、そちらでも数学者の方に来ていただいた経験はございますが、一、二回でございました。ほとんどが文系、理系のものを順番にお呼びいたしておりますが、理系については理科の実学のようなものが多いかなと、数学の教員では申しているところです。
  先ほどから申しておりますスーパー・サイエンス・ハイスクールですけれども、都立高校でも5校が指定されております。その中でも8年間指定され続けている都立青山高校での取組を御紹介いたしますと、私は都立戸山高校に所属したことはございませんが、研究会の先輩などにも伺いますと、実は都立青山高校のSSHでは数学の講座を1つ設けておりまして、そう多くはございませんが、取ってくれているということがございました。もともと数学に興味がある子たちが取ってはくれているんだけれども、SSHの特別授業の中で随分と興味を持って頑張ってくれたと伺っています。ただ、進学に関して、先ほどの数学科への進学の変化があったのかということに関しますと、もともと興味があった子なので、もともと進学を希望していましたので、それによって新たに進路を変える生徒は見られませんでしたという残念なお話も伺っております。
  また、都立高校では今年度より理数イノベーション校を独自に3年間3校指定しておりまして、その中で進学重点校の1つである都立八王子東高校での取組を伺ったんですけれども、やはり数学に関してはほとんどイベントがございませんで、ただ研究会の者も八王子東高校におりますので、研究会でやっているようなことも御紹介しながら、平成28年度には数学関係のものも入れていきたいということでございます。ただ、こちらは本当に始まったばかりなんですけれども、これを始めたことで数学の教員への希望者が増えたような気がするということを、実際この子は数学を希望してくれるのではないかという子が芽生え始めてきたという、うれしい報告は受けているところでございます。
  私、都立だけではなくて私立も一緒にやります東京都高等学校数学研究会というところで長く勉強させていただいているんですが、その中で20年近く前に、数学がもう余り必要ないのではないかという大きな流れの中で、数学教員の中でも危機感がございまして、研究会の中でももともと生徒の興味・関心を引き出すことを目的として研究もしてまいりましたが、元東大の杉原厚吉先生の御助言だけではなく、すべて杉原先生にお任せするような形でしたが、高校生のための見学会というものを平成12年より毎年夏に1回させていただいております。杉原先生、ずっと前にもこちらの指導要領の協力者でいらした関係で都数研の者と高校生に紹介してくれるということで始めていただきました。東大を退官されても明治大学で現在、学校を挙げて毎年1回同じような形でさせていただいているところです。
  生徒への紹介ですけれども、SSHなどの生徒たちは学校で講演会を聞く機会とかございますが、そうではない、うちの学校ではちょっと異質なんだけれども、この子だけ数学に興味がある、理系に興味があるという子たちにもこういう機会を与えたいということで私どもが始めたものでございます。大きな学校、SSHなどですと予算が付いてこういう機会にも恵まれますが、そうではない子たちにもしっかりと見させていきたいということでやり始めたところでございます。100人を超える生徒たちが毎年参加してくれますけれども、明治大学でも今また新たな形でやらせてもらっているところでございます。
  すごく長くなりまして申し訳ないんですが、この見学会でもそうですけれども、数学、ふだんの授業の中でとても楽しくて、頑張らなくてはいけない科目だけれども苦手だという生徒たちにも興味を持ってやってもらいたいということで教材開発をさせていただき、とにかくふだんの授業を中心として数学への興味・関心を促していきたいと思っています。
  私は今進学校にいるわけですが、進学校だけではなく高校で数学を終わってしまう子たちにも数学的な見方や考え方を活用して幸福な生活ができるようにということで日々やっているところでございます。また、今後とも高校数学にもいろいろなお知恵を頂き、改善していきたいと思います。本日は御静聴ありがとうございました。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。それでは5分程度時間を取っておりますので、御自由に御質問とか御意見とかお願いできればと思います。どなたからでもどうぞ。

【森委員】
  森と申します。私、自分の高校のときのことを思い出しながら聞いていましたけれども、その中で数%が数学科に進学というのを伺ってびっくりしたんですけれども、そんなに多いんですか。数%ってすごく多いように。

【逸見主幹教諭】
  そうですね。多いところで数%、今青山高校では1%でございます。

【森委員】
  そうですか。

【逸見主幹教諭】
  進学校では、1%はいます。と申しますのが、数学の教員を目指そうというところで数学科でございますね。

【森委員】
  もう一つ伺いたいのは、自分のときのことを思い出してみると、落ちこぼれという表現は正しくないけれども、変わり者、はみ出し者なんですね。数学でも特にある分野にはすごく興味があるけれどもほかのところは余り興味ないとか、そういう学生はいますか。

【逸見主幹教諭】
  そうですね。

【森委員】
  そういう学生はどのように対応されるのか興味があるんですけれども。

【逸見主幹教諭】
  1個でも興味を持ってくれればそこをとっかかりにお話をしますけれども、新しい単元に入るところでは、なるべく研究会でもいろいろな教材を提案していますので、そういったところで興味を引いてから、じゃあというところで数学に入ったりとかしています。

【森委員】
  ありがとうございます。

【若山主査】
  ほかに。

【合原委員】
  うちの研究所も結構高校生の見学が多くて、また杉原先生はうちの専攻にいたので東大のものは最初から参加していたんですけれども、杉原先生はイリュージョンとか見せられるし、僕らもカオス、フラクタルは見せられるものもあるんですけれども、数学って見せにくいものがたくさんありますよね。そういうものを高校生にどう伝えるかというのは難しい気がするんですけれども、その辺、アイデアとかありますか。

【逸見主幹教諭】
  私どもにアイデアはないんですけれども、先生方から伺うばかりなんですが。

【合原委員】
  例えば森先生の数学を見学に来た高校生にどう教えるかって難しいですよね。

【森委員】
  前にやったことありますけれども、数学は役に立つというのを専門の話ではない話としてやるというのが1つのパターンで、もう一つは、例えばこういうふうに解いたら面白かったというのをやったりはしますね。自分の研究だったら、よくやるのは代数幾何(きか)というのは抽象画のようなものだと言うことです。その際、対比させて、微分幾何は具象画だと言います。

【逸見主幹教諭】
  私ども都数研と呼んでいます研究会では興味・関心を高めるための教材を集めていまして、毎年このような形で教材をまとめまして広くやっているところなんですね。その中では、先生方のような研究を子供たちに知らせることはできませんので、高校で扱ったような公式とかでも、私たちが考えているような頭の中、どのように考えているのか、今先生がおっしゃったような、こんなところから考えてこんな考え方があってこんなことやっている、習得していくよということをなるべく生徒に見せることができないかということで、図を使ったり、みんなで話し合って、もうちょっと、ここは右からの矢印か左からの矢印かとか、そういったことで私どもの勉強も兼ねながら生徒に少しその考え方が、ふだんの教科書の考え方なんだけれども、それを実際にどうやっていくのかということを少しでも見せようかということで研究をテーマにして扱ったこともございます。それは生徒にも面白かったようで、コンピューターが発達する中で動画でも見せられるようになりましたので、そんな教材も作ったりして見せておりました。

【若山主査】
  きょうはお客様ですけれども、微分幾何として何か御意見ございますか。

【前田副センター長】
  また後で僕の委託調査の中でもお話ししたいと思いますが、アメリカでサマースクールというのがあって、だんだん広まってきています。オハイオ州立大学と、その後ボストン大学でやっているサマースクールがあります。学生が平均で70人ぐらい参加しています。6週間から8週間ぐらい数学に浸らせるというか、本当に数学だけやらせる。ただ、アメリカの場合はそういうスクールに行って修了したことが、大学に入るときの、AO入試のいい材料になるということで積極的に参加しています。6週間ぐらい数学をよく考えさせるようなテーマを選んでやらせることは、数学をきちんと考えるのには非常にいいトレーニングになっているようです。

【若山主査】
  ありがとうございます。ほかにございませんか。どうぞ。

【樋口委員】
  私の質問は、数学の苦手な人、文系の人、そういう人たちに数学の現代社会における重要性をどのように伝えていらっしゃるのかということです。どうしてかといいますと、私、統計数理研究所の所長をしておりまして、略すと統数研なので、都数研と似ているんですが、それはいいとしまして、私の研究所ではデータからどう数学を使って生活に役立てていくかということを非常に大切にしておりまして、それを考えると今の文系の方々が進学されている分野も水面下ではどんどん数学が使われていて、この道具なしに生きていけない時代になっているんですけれども、一方高校でどのようにその辺のところを伝え、あるいは努力されているのかお聞かせ願えればと思います。

【逸見主幹教諭】
  ありがとうございます。大学の先生方のお話を伺いながら高校生に少しエッセンスを伝えたりとかいったことでお話はしているんですけれども、例えば普段子供たちが使っているスマホの話ですとか、パスモの話ですとか、そういった身近なもので数学が、難しいことを言っても文系の子たちはあれですけれども、こんなふうに使われているんだよ、実は100年前数学で分かったことが100年後に実社会で使われているんだよとか、そういったことを機会があるときにお話をしながら、そうだよね、先生、数学は分からなくてはだめなんだよねという感じでモチベーションを上げながら取り組ませたりとかしております。
  重要性につきましては最近社会でも随分と声が上がっているようにお見受けして、意外に、駄目なんだよねと思いながら、でも私、数学苦手でどうしたらいいんでしょうという文系の子たちも増えてきたように思っております。

【若山主査】
  ありがとうございます。中川先生。

【中川委員】
  私は産業側の人間ですが、高校の数学と大学の数学は結構ギャップがあるなという印象があります。先生は数学に対してどういう印象をお持ちですか。

【逸見主幹教諭】
  やはり記号の使い方とかが一番初め、言葉の違いですね。そういうところがギャップがあるのかなと思います。ただ、私、今の都立青山高校もそうですが、以前は西高校だったんですけれども、このところ長く進学高校におるものですから、そういった場合にはふだんの授業をやりながらも、例えば微積の入るところでも、大学にはこんな話がつながっていくんだよ、ここは大学でこうやっていくよということを意識して伝えるようにしております。
  逆に、実は都立高校でも本当に数学が苦手な学校にも長くいたんですけれども、そういうところでは逆に、数学も算数もよく分からないような子たちだったんですけれども、それでも算数の時代に、先生、小学校では計算がとても楽しかったんだよとか、そういったことを少しアンケートをしながら、じゃあそこから今この数学はどうかなというところでつなげたりしているところでございました。

【若山主査】
  御質問は尽きないかもしれませんけれども、時間もございますので一旦ここで。

【逸見主幹教諭】
  ありがとうございました。

【若山主査】
  是非、よろしければきょうはここにいらしてください。

【逸見主幹教諭】
  はい、勉強させていただきます。

【若山主査】
  それでは続きまして、群馬県高校生数学キャンプの事例などについて、県の教育委員会事務局高校教育課の丸橋補佐・教科指導係長より御紹介いただきたいと思います。丸橋先生、よろしくお願いいたします。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  それでは失礼いたします。群馬県教育委員会の丸橋と申します。本県における高校生数学キャンプの概要について、参加した生徒の感想、進路先等も含めてお話しさせていただきたいと思います。
  最初に、群馬県教育委員会の平成27年度の取組を紹介させていただきますが、群馬県では高校生数学コンテストを行っております。平成10年度から始めていて今年度で18回目でございます。県内の公立高校・私立高校等に通う高校生、中等教育学校については後期課程の生徒を対象にして、数学的な美しさや楽しさが見いだせるような問題を6問出題し、その中から4問を選んで解答するものです。解答時間は3時間。今年度は21校から453名が参加しています。今回は昨年7月27日に実施しましたが、最優秀賞等を含めて40名程度を表彰しております。
  具体的な問題ですけれども、例えば、条件を満たす自然数の組合せを求めるような問題があります。全部で6問中の1番をこんな形で出題しております。これは、論理的な思考を用いて条件の絞り方を工夫する力を問う問題です。
  4番は、過去の京都大学の入試問題をアレンジさせていただいて、考えやすくヒントを与えた問題ですが、等面四面体の体積を求める問題です。これは展開図を配っておいて、作りながら、考えさせながら解かせる形で出題しております。この数学コンテストの参加者で、希望者の中から24名を選考し、群馬県高校生数学キャンプを実施しております。数学キャンプは、平成18年度から実施しておりまして、平成27年度で10回目になっております。
  数学キャンプの概要ですけれども、東京大学の大学院数理科学研究科と連携して、県内の高校生が第一線で活躍する数学者の講義を受け、数学の楽しさを発見したり数学的な知識・技能を積極的に活用する態度を養ったりするなど、数学に関する資質を高めるもので、大学生・大学院生との交流も行っております。群馬県教育委員会が主催して、共催として東京大学大学院数理科学研究科にお世話になっております。今年度は9月19日から21日の2泊3日で東京大学玉原国際セミナーハウスにおいて実施しております。
  この取組のきっかけですが、群馬県の北部、新潟県の県境に玉原高原があり、東京大学大学院数理科学研究科が、平成17年度に玉原国際セミナーハウスを開設しております。それに関連して地元の高校生・中学生との交流も深めたいということで、当時の桂研究科長さんが県庁にお見えになって、平成18年度から取組が始まったということであります。このセミナーハウスですが、数理科学の教育研究において長期集中セミナーを行う施設ということで開設したと伺っております。ウエブページで概要が見られますので、後ほど御覧ください。
  数学キャンプの内容ですが、これが平成27年度の日程でございます。2泊3日で宿泊研修を行っております。私も平成18年度から参加させていただいております。主な取組としては5つあります。まず1つがテーマ学習です。今回のテーマは「いろいろな多面体」ということで、テーマ学習1として「球面多角形・オイラーの公式」、テーマ学習2として「凸多面体の剛性」、テーマ学習3として「プロブレムセッション」となっています。実は、最初の頃は講義が中心でしたけれども、そうしますと高校生の頭からあふれてしまうということがありました。途中から講義をテーマ学習に変更し、演習と高校生によるグループ発表を行っております。
  演習ですけれども、コンピューターを用いたり、物を作ったりしています。今回は、多面体を作るということと、変形する多面体の製作です。これは東京大学の先生の指導の下で実施しております。
  3つ目は、日程の後半にありますが、最終日の発表があります。6班が各班10分程度の発表と質疑応答を行い、大学のゼミのような形で進めております。4名ずつ6班に分かれて発表しますが、各班に学生が1人ずつティーチングアシスタントとして付いて、指導の補助をしていただいております。
  4つ目は学生とのディスカッションです。夜の時間帯を使って学生とのディスカッションを行い、学生生活とか勉強の仕方などの情報交換を行っています。5つ目は、玉原のハイキングです。ブナ平というきれいなところを高校生と講師、大学生と一緒に歩き、交流を深めていく取組です。
  数学キャンプのテーマですけれども、平成18年度は、複素数です。例えば複素数平面を扱ったり、KSEGといった図形ソフトを使って作図をしたりしています。また、3次・4次方程式の解法、多項式の定める写像の様子を十進BASICを使って理解する、代数学の基本定理などを主な内容として実施しました。平成19年度は素数です。RSA暗号理論などを扱いました。平成20年度は図形の数理です。円錐(えんすい)曲線や一葉双曲線の模型を作成したり、反転や立体射影などを扱いました。平成21年度は面積と体積です。分解合同の定理などを扱いました。平成22年度はまた複素数に戻ります。3年でテーマを変えると、同じ内容を学ぶ生徒がいなくなります。
  平成22年度までは講義中心でしたが、平成23年度からSPP、JSTのサイエンス・パートナーシップ・プログラムの指定を受けておりまして、ここから少し生徒の活動を入れなさいということがありましたので、平成23年度から先ほど言ったテーマ学習、生徒の発表という形式に変えております。例えば平成23年度は対称性と周期性、空間を埋め尽くすブロックについてや、空間充填などをやっております。
  平成27年度の「いろいろな多面体」と平成25年度の様子を少し紹介させていただきます。「変形する多面体を作る」というのがありますが、厚紙を使って、これはペコペコ動くんですね。変形する多面体を作って、何でこうなるのかを考えてもらう。こちらの写真は、骨組みのところをストローで作ってあり、動きますが、なぜ動くのかを生徒に考えてもらうものです。
  平成25年度は「動く折り紙」と、「折り紙の一裁ち切り」です。こちらにあります、ポップアップ・スピナーと言っていましたが、紙を開くと中心部分がくるくる回ります。どうして回るのかを子供たちに考えてもらいました。
  こちらが「折り紙の一裁ち切り」ですけれども、直線骨格法という方法で図形が描かれた折り線に沿って平面状に折り、それをはさみでまっすぐに1回だけ切ることにより最初の図形を切り出すものです。この問題を「一裁ち切りの問題」と呼ぶことにするということです。Hの記号を、こうやって折ってたたんで1回だけ切るとHの形が切り出せるということです。そういうものを考えさせる取組もしておりました。
  これらの取組については東京大学数理科学研究科でビデオアーカイブスとして公開しております。例えば公開講座の様子は、このようにウエブで見てもらうことができます。全ての講義がこういった形で視聴できます。これが平成27年度ですけれども、平成26年、平成25年と、多分平成18年から全てあると思います。全て動画で配信しております。
  これは東大の坪井先生からの情報提供ですけれども、フランスの国立科学研究センターでの報告、それから国際数学者会議で掲載しているというものです。例えば(資料の)一番下の掲載例ですと、このようにその様子を外国にも紹介しているということでございます。これもウエブで見られます。
  次に、参加者の感想です。「フラクタル図形の基本的なことはある程度知っていたが、写像として表される図形だというのは初めて知った。フラクタルは自然界においても多く見られる現象と聞いているのでもっと学んでみたい。」平成18年度の生徒の感想です。「素数の講義を受ける前は、私の素数に対するイメージは、2、3、5、7…というものしかなかった。講義を受けてみて、素数だけでもこんなに難しい問題があることを知り、改めて数学の規模の大きさを感じた。」「数学が好きで、興味をもって学習していても、こんなにたくさんの時間を取って、こんなにも深く向き合ったことは初めての経験でした。内容は本当に難しいものが多くて付いていくのが精一杯だと感じることもありました。しかし、学校で教わる数学が、踏み出せばこんなにも広くて面白い世界だと知ることができたことが貴重だと思いました。教わる数学ばかりではなく、自ら考える数学に取り組めるようになっていきたいと思います」と、このような感想を頂いております。
  それから例えば真ん中にある感想ですと、「ちょっと面白そうと思って数学コンテストに参加したら、いつの間にか自分がこんなに数学の深いところに入っていてびっくりしています。キャンプ中、短い間でしたが、学んだことをここまで発展させられるとは思いませんでした。数学はどちらかといえば好きくらいだったのですが、2泊3日のキャンプに参加してみて、大学は数学科に行こうかと考えました。それほどまでに数学は魅力的でした。」
  それから、「今回は多面体というテーマで、定理の証明や数学の歴史なども学べ興味深いものでした。ふだんの学習では学ぶことがなく、自分で学習することもないテーマについて考えることができたのはかけがえのない経験となりました。私は数学を学ぶことは論理的思考力を付けるのが目的だと考えていましたが、数学そのものを究めるのも面白いのではないかと思いました」平成27年度の感想です。このような感想が寄せられております。
  続いて進路状況です。平成18年度から平成25年度の参加者の進路状況をまとめてみました。平成26年度以降の参加者についてはまだ在学中であります。123名の進路をまとめてみましたが、右にあるように医歯薬看護系が123名中42名で34%です。理学部・理工学系が44名で36%。農学部系が5名で4%、工学部系が11名で9%。文系が21名で17%となっております。
  まとめていて感じたことは、左の表にあるように、医学部医学科が医歯薬看護系42人の33名を占めており、非常に多いということです。それから、理学部・理工学系の44名の中で数学科に進学した内数ですが、教育学部を含めて4名でした。このほか、理学部数学科に進学する可能性がある生徒は、東大理1が11名、理2が1名。京大理学部が3名、東北大学理学部が1名、東工大第1類が3名で合計19名おります。その19名が数学科に進学しているかどうかは分かりません。
  最後に、5つほど感じたことを述べさせていただきたいと思います。1つは、東大の先生方の豊富なアイデアを頂いて、一流のプログラムがあれば生徒は変わる、引き付けられるという感じを持ちました。2つ目は、高校生にとって少し高いレベルの内容を、また少し広い数学の世界を体験させることは効果的であると思いました。
  3つ目は、講師の先生に教えていただくときにレベルを少し下げてきてもらうことも大事であると思います。高1のレベルまでおりてきてもらって話をする、その辺の準備を綿密にしております。例えば内積は使えなかったよねとか、ベクトルは使えなかったよね、微積は絶対に使えないねということをしっかりチェックして、高校1年生にも分かる用語を注意深く配慮しました。
  そして4つ目が、一方的な講義等では、生徒が消化不良を起こしてしまうことがあります。質の高い情報を提供して、生徒に自分の疑問について考えさせる時間を持たせるといいますか、主体的、協働的に活動できるような時間を作ってあげる形がよいと感じました。
  最後ですけれども、出口の保証ということでしょうか。先ほど医学部医学科の人数が非常に多かったということもありましたけれども、将来の職業につながることが重要だと感じました。以上でございます。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。それでは御質問、どうぞ。

【國府委員】
  まず東京大学との連携についてですが、玉原のセミナーハウスが群馬県にあるということでしょうか。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  そうですね。

【國府委員】
  それで、お伺いしたいことは、どれぐらいの準備をされているのかということです。毎年テーマを決めて、先ほどおっしゃったように教え方についても高校生の学習状況を考慮して準備されるとのことですが、テーマを決めたり、東大の先生方と打合せをされるということを含めて、毎年の準備にどれぐらい時間をかけておられるのか教えていただけますでしょうか。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  最初の年は東大にお伺いして打合せしたりもしたんですけれども、2年目からは、終わった日の夜に、来年はどうしようかというテーマを考えて準備しています。基本的なコンセプトは、我々にはちょっと分かりませんのでほとんど東大の先生方にお任せですね。夏になりますと、夏休み中ぐらいに情報交換しながら、こんなテーマでやっていきたいんですけどということで準備しまして、テキストが出来上がりますと、前日に前泊をしまして打合せをしております。そのくらいですね。

【國府委員】
  分かりました。ありがとうございます。

【若山主査】
  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【本間委員】
  きょうは数学の取組を教えていただいたんですけれども、逆に群馬県でほかの科学系の取組で似たようなことをされていらっしゃるのかどうか。あったとしたら人気度はどう違うのか。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  群馬県もそうなんですけれども、全国的にスーパー・サイエンス・ハイスクールとか、先ほど言ったSPPという理科系の研究を支援するようなものが各学校に広まっておりますが、群馬県では合同成果発表会を年に2回やっております。発表が30ぐらいありますかね。それを全部で800人ぐらいが見に来る。いろいろな、物理、化学、生物、地学。数学も少ないんですがたまにあるんですけれども。そういったそれぞれのテーマについて研究したことを発表していく合同成果発表会を実施しています。

【若山主査】
  ほかによろしいですか。どうぞ。

【合原委員】
  医学系に行く人が多いということで、確かに数学が得意になると入試で受かるので医学部に行く学生が多くなるというのは結構進学校が共通に抱えている問題だと思うんですよ。それでうまくいい医者になっていけばいいんですけれども、例えば僕が経験している中でも、医学部を出てうちにきた人が4人います。また医学部をやめてからきた人が1人います。それから今医学部にいて進学を考えている人が数人いるんですよ。本来やりたいことがあるけれども、通るから医者になるという人が少なからずいるので、医学部で教育を受けたことは全く無駄になっているわけではないとは思うんですけれども、もうちょっと高校のときに丁寧に相談に乗ってあげて進学先を決める、通るから医学部に行くのではなくて、本当に医者になりたい人が医学部に行くようにならないと変かなと思っているんですけれども。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  そうですね。進路については興味・関心があるところを勧めたりもしておりますけれども、出口のところを本人が考えてやってしまっているかもしれませんね。もう一つ、群馬県の取組のほかに、もうやめてしまったんですけれども、群馬県いきいき高校生海外派遣というものをやっておりました。そのときに、数学コンテストの優秀者を対象にして、ハーバードとMITとスタンフォードとかの数学科の授業を受けてくるというプログラムを平成20年度までやっていたんですけれども、そういった経験をした生徒の中には、脳科学を将来やりたいと考えていたんだけれども、その授業を受けてみて数学を究めたいということで進路を変えて数学科、大学院を卒業して企業に勤めている生徒も出てきております。

【若山主査】
  ほかにございませんでしょうか。それではどうもありがとうございます。
  次にまいりたいと思います。続きまして文部科学省の今年度の委託調査、「数学・数理科学を活用した異分野融合研究の動向調査」の中から人材育成に関する調査成果を、委託先である東北大学知の創出センターの前田副センター長より御紹介いただきたいと思います。前田先生、よろしくお願いいたします。

【前田副センター長】
  東北大学知の創出センターの前田です。きょうはお招きありがとうございます。今、「数学・数理科学を活用した異分野融合研究のための動向調査」を文部科学省から委託されて行っております。調査自身は大体まとまってきておりますが、今週の土曜日、2月20日に東京大学大学院数理科学研究科で報告会をさせていただきます。興味のある方がいらっしゃったら是非おいでいただきたいと思います。
  今日はその調査報告の中から特に人材育成に関して行った調査の一部をお話させていただこうと思います。青山高校の逸見先生、群馬県教育委員会の丸橋先生とも少し関連した話も出てくると思いますが、私達の方は、定量的なデータから皆さんにお分かりいただこうという調査をしております。
  調査は大きく3つに分けて、若年層の数学教育、中・高校生あたりの数学教育について、この部分が逸見先生や丸橋先生の部分と少し関連してくると思います。それからもう一つは、大学学部・大学院教育、数学に関する教育。最後は博士課程のキャリアパス、この3つを主に今日はお話しさせていただこうと思っております。
  最初にやった調査は若年層教育で、特にスーパー・サイエンス・ハイスクール指定校、これは1校ですが、全生徒354名に対するアンケートです。ここでの数学の好感度調査をしてみました。一般に、数学の好感度調査を全国的にやるとそれは非常に低いと思いますが、青山高校の逸見先生がおっしゃったように、スーパー・サイエンス・ハイスクールになりますと数学の好感度はそんなに悪くはないという気はいたします。これは高校にもよるのかもしれませんけれども。これが大体この表です。このスーパー・サイエンス・ハイスクールでは文系志望が109人、理系志望が245人、大体30%と70%程度です。進学校で調査をしますと文系の学生は確かに社会とか国語、理系だと物理・化学が高い。数学に関しては、文系は好感度はちょっと低いといっても、割と高い感じはします。理系が高いのは分かるところですけれども、文系としてもそんなに悪くはない。数学は将来役に立つかという質問を1つ入れてみたんですけれども、そんなに悪くはないんじゃないかと思うんです。化学・物理よりは、言い方は悪いんですけれども役に立つという。

【若山主査】
  好感度って何ですか。

【前田副センター長】
  好感度という言い方は、この質問ではやや違っています。
  文系と理系の中で、どういうきっかけで数学に興味を持ったか聞いてみたところ、塾の先生、学校の先生、本、雑誌、友人、コンピューターゲーム、自然の観察とか体験、学校での理科の授業とか映画とか、理系の学生は、確かに先生からの関心度はあるんですけれども、本とか雑誌という回答も多い。理系の学生は自分で数学を勉強するのが好きなので、自分で面白いなと思うものを探すのではないかという気がします。
  一方で文系ですが、先生からの影響力が非常に高い。塾の先生、学校の先生から数学を聞いて、関心を持ったという学生がかなり多くいます。逆に言うと本とか雑誌とかは、余り読まない。文系の学生は授業とか、塾とかに行って、先生からいろいろな面白い話を聞いたりすることの影響力が大きいのだろうという気がします。逆に言うと、先ほども話題になっていましたが、数学に興味を持たせるのは先生にかなり大きなウエートがあるんじゃないかと思います。そういう意味で、先生の役割が大きいのではないでしょうか。
  次は高校の先生にアンケートを取りました。これは非常に小規模の標本数なんですけれども、ある県の教育委員会で選抜をして、夏休みに研修会をやっているところがあります。県内の高校の教員で、これから期待されている人たち20名ほどが参加されていました。 そのうちここでお話ししたいのは、1つは学生に数学科や数理科学科といった数学系の学部・学科への進学を勧めますかという質問についてです。先生方は選択の一部として勧めると、これはどの程度理解していいのか分からないですが、強くは勧めているわけではなくて、弱くも勧めていない、こういうところに行きたかったら行きなさいという勧め方で、普通の勧め方だとおっしゃっている方がほとんどだということです。
  一方で、数学は社会に役立つと思いますかという質問については、かなりの先生方が役に立つとおっしゃっている。その質問をちょっと深めて、もし学生に数学科や数理科学科へ進字を勧めないとしたらその埋由は何でしょうかというやや意地悪な質問をしてみました。先ほども出ていたんですが、大学と高校の数学のギャップについていけない、大学と高校の数学にかなり差があるというのは、先生の体験でもあるように見えます。余り勧めたくない。もう一つの理由は将来の就職先。医学部等へ進学した方が就職、出口はいいだろうと思っていることです。学生の将来やりたい仕事に余り必要がない、別の学科の方が本人のためになる場合が多いと、こういう答えが出ております。将来の就職先と、あとは高校の数学から大学の数学へいくところにギャップがあると先生方が感じている部分、この点が調査の中ではポイントになっています。
  先ほど言った数学が社会に役に立つと思いますかという質問で、ほとんどの先生方が役に立つとおっしゃっているんですが、大学で習った数学が社会で役立っている例を御存じでしょうかという質問をしてみると、具体的に社会へ役立っている例はすぐには見当たらない、特に考えたことはないが、直接でなくとも間接的に役に立っていると思われる、特殊から一般へ考え方を広げる、あるいは考える過程や粘り強さ、知識を使いこなせる力を付けていくことという、割と抽象的な答えが多いのです。天気予報とかビッグデータ解析という答えも少しはありました。数学は論理思考を育てるトレーニングになるとか、抽象的な答えが多いといえます。
  ここでこの2つ、出口の問題、それから高校と大学の数学のギャップ、これらの問題も含めて、もっと数学が社会で役に立つ具体例を大学で教えるべきではないかという気がします。つまり、高校の先生になられる方々がそういうことを知って高校の教員になられて、学生にこういうことがあるんだよと教えていくような形のものができてこないと、高校の先生も数学の教科書を非常に熱心に教えられて、これが面白いとおっしゃっても学生の頭の中には、これは何の役に立つんだろうと思うのではないでしょうか。そういうときに具体的な例が欲しいだろう。そういうことができるように、具体的な例を高校に行って高校生に教えられるように、大学の教育にそういう部分があってもいいんじゃないかというのが2つ目の結論です。
  3番目は大学の数学の学部、修士課程とか博士課程で進路を調べました。数学を出た後にどういう進路に進むかということですが、これは日本の学部ですが、千五、六百名ぐらいが学部の、数学の卒業生。数学の中には数理情報とか、数理系と呼ばれているいろいろな分野も含めてこれぐらいの卒業生がいます。黄色の部分が修士課程へ行った学生ですね。3分の1ぐらいが学部から修士に行く。最後の29、33、30といった数は、大学院の修士課程に進学した人以外に、学部を卒業した後に数学・数理科学系以外の大学院に進学した数です。千五、六百名のうちから30程度の学生が他に行くというので余り大きい数ではないということです。
  いろいろな調査をしてみますと、日本の学生の特徴は、高校生で数学が好きだという子は医学部を選んだりするんですけれども、数学を選んだ子はずっと数学科に、縦に行く。非常に優秀な子は学部で数学科を卒業して修士数学科を修了して、大学院の博士課程に行くというパターンが非常に多い。1,500ぐらいから出てきた数で587、ここからまた博士に移っていくんですけれども、これが修士課程修了ですけれども、修士課程で割合を見ますと、一番多いのが企業への就職が修士までで半分ぐらい、修士の卒業生が600ぐらいだと300弱、あるいは300をちょっと超えるぐらいが企業に就職して、中学校・高校の先生が100人、博士課程の進学者が100人と同じぐらいで、あとはその他という感じです。
  数学の卒業生は、修士まで行って教員になるか、企業に勤める。残りの、いわゆる数学科と呼ばれるところの数学の大学院博士課程に行く人が100人ぐらい残っていくという感じです。ほかに進学するところは非常に少ない。先ほどの繰り返しになりますけれども、数学科に来ると博士課程数学科に進んでいくか、企業か教員になられるというパターンが一番多いといえます。
  このほかの調査として、高校と大学のスムースなつながりがどれぐらいあるか、それからカリキュラムについてどうか、あるいは工学教育での数学教育についても日米比較のような調査もしました。今日は時間の関係でこれらを外させていただいています。
  日米の学部カリキュラム比較ですが、アメリカのカリキュラムはかなり柔軟な気がします。アメリカの数学の卒業生、数学の中には統計とか応用数学も入っての数ですが、日本が4,000ぐらいの学部の卒業生、それに対してアメリカだと数学と言われるところの、これは数学のメジャーという感じなんですけれども、2万人。アメリカの修士は日本のシステムとは違っていて、Ph.D.に直接行ってしまったりするのですが、いわゆる修士課程で計算しますと、6,000か7,000ぐらいです。日本が1,600か2,000弱ぐらいのところです。博士になるとアメリカが1,800人で日本が160人程度です。日米比較すると学部で5倍、修士で4倍、博士で10倍学生数が違うという印象です。
  もう少しいろいろな調査をしてみますと、アメリカの進学状況、博士とか、他分野に行くという状況が分かります。アメリカのカリキュラムの具合とか、学生の進路を割と柔軟にしていることが、日本と比べると、様々な進路に行っていることも分かります。
  アメリカのPhD、博士まで行った学生がどの程度いろいろな進路を選んでいるかを、アメリカ数学会、AMSの調査から調べました。2010年あたりから2014年まで、US国籍の学生の23%ぐらいが博士を取ってからノンアカデミックなところに行っている。博士課程までに行く間にも確かにいろいろな進路を選んでいます。
  アカデミックポジションについてですが、統計、バイオ、アプライド・マスといったところ、あるいはマスター、バチェラーの先生となる学生もかなりの率でいます。そういう意味では、日本よりは博士のキャリアパスとして柔軟にはなっているかなという気がします。
  多分先月池川さんがここでお話になったと思いますが、日本の今の博士課程修了者のキャリアパスの図を頂くと、博士の卒業生で民間に就職するのは全体の4%、全部で140人いるんですけれども6名ぐらいでした。今回の調査では純粋数学以外に応用数学系、統計のコースも持つような修了者を含んでいるのでもう少し高い比率にはなっています。博士を修了したところでノンアカデミックなポジションを取ってくる人たちはそれほど多くない。全体的に、もう少し多様な進路を選択できるようなキャリアパス教育、あるいは、博士課程の学生には喫緊の課題にはなっているんですけれども、どうしてもキャリアパス支援が必要です。
  3つの調査をして、若年層への積極的な数学教育では、数学が社会で役立つ具体例を教えるような教材、それから数学教員の教育や博士課程修了者の高校教員ヘの採用という形で、数学が具体的にどういうところで役に立っているか、あるいは成功事例といったものを高校生に分かるように教えられるような先生方を作っていくのが1つかなと思います。
  数学・数理科学系学部や大学院教育の検討はこれからある程度真剣にしないといけないのではないかと思います。先ほど出てきた先生の中の意見で、高校の数学と大学の数学に大きなギャップがあるという部分を、高校の先生方と大学の先生方の交流を通したりして変えていく、あるいは検討していく必要があるんじゃないかと思います。それから他分野にも行けるような数学のカリキュラム、学部カリキュラムが大事なのではないでしょうか。それからキャリアパスも学部から教育をした方がいいのではないか。
  今日はお話しできなかったんですけれども、工学部教育、それから文系の教育も重要です。数学・数理科学系以外の数学教育も検討していく必要があるんじゃないか。他分野の数学教育のカリキュラムの検討や他分野で数学を教育できる人材を採用したり、教育したりという人たちも数学のキャリアパスとしては必要ではないかと思います。
  是非ここで訴えたいと思っているのは、博士課程の学生たちの出口、キャリアパスです。これがしっかりしてほしいというのが一番のお願いで、先ほどお見せしましたような、今の日本の現状は、アカデミックポジションは限界に来ているので、民間企業での研究職に人を輩出していくことを全体の流れの中でやっていく以外にはないだろう。博士課程の修了者がすぐに社会に出るのもなかなか難しい時代だと思うので、例えばポスドクのような形で、修了者が一、二年でもかけて次のキャリアを探せるようなポスドクの採用の仕方もあるんじゃないかと思います。
  もう一つは博士課程のうちからキャリア支援を積極的にやる。例えば企業交流会、これはこの前池川さんがおいでになってお話になったと思います。日本数学会が主催してやっている企業交流会のようなものがありますが、そういうものをもっと広げて、企業と大学の側がもっと密接な交流を深めていって学生を社会に出していくような働きかけも欲しい。あるいはインターンシップやキャリアアドバイザーのようなものを置いていく。こういう形で博士課程のキャリアパスを是非進めていってほしいなと思っております。以上です。

【若山主査】
  どうもありがとうございました。きょうの後ほどの議論の問題点の多くが人材育成の面に関して、御説明いただいた中に入っていると思うんです。グラフの見方ですけれども、1か所だけよろしいですか。日本での数学学部・修士修了者の進路というところがありまして、その後日米の学生数があったんですけれども、ここだと数学系を卒業しているのが4,000人ぐらいいるみたいに見えますよね。

【前田副センター長】
  数学系が4,000人ぐらいいますね。

【若山主査】
  これは1年ものですか。

【前田副センター長】
  1年のデータです。3,700人くらいです。

【若山主査】
  前ページを見ると、大体左側、どれを足しても2,000ちょっとですね。

【前田副センター長】
  ちょっと待ってください。

【若山主査】
  1,500、500ぐらいなので。これは旧7帝大だけじゃなかったでしたっけ。

【前田副センター長】
  そうでした。旧7帝大で調べていただいたものです。こちらの3,700という数は、これは粟辻さんにお聞きしたものですが。学校教育基本調査で、全国のものです。

【若山主査】
  分かりました。

【前田副センター長】
  こちらは大きな大学のアンケートでやっただけの調査です。すみません。

【若山主査】
  分かりました。どうもありがとうございました。それでは技術的なことも含めて質疑応答したいと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。

【森委員】
  非常に説得力のあるデータ、ありがとうございました。1つ質問なんですが、やはり表の見方なんですけれども、7ページ、日米の比較というので、右と左で分け方がよく分からなくて、じっと見ていて、右側の上のダイダイと赤の部分が左側に赤字で書いてある民間企業での研究職と対応していると思えばいいんでしょうか。

【前田副センター長】
  これはノンアカデミックなものですから、必ずしも企業だけではないと思います。

【森委員】
  そうするとどう対応しているんですか。

【前田副センター長】
  これは対応がすごく難しいことは否めません。

【森委員】
  やっぱり。

【若山主査】
  右側は連邦政府とかに結構行っているんですよ。日本は少ないですよね。

【森委員】
  ただ、そうだとするとせっかく説得力のあるデータが右と左で違う方向を向いている感じがするので残念です。

【前田副センター長】
  日本のデータが完全には取り切れていないです。アンケートの中で取ったデータはあるんですけれども、それだと民間企業に行くというデータはもう少し高いです。この調査は、いわゆる純粋数学系の教室だけではなくて数理情報とか応用系にも配付したアンケートなので、大分数値は高くなっています。

【若山主査】
  ありがとうございます。ほかに。

【中川委員】
  7ページの右下の図の下の脚注なんですけれども、灰色のapplied mathと書いていますが、これの定義は数学界の応用数学でしょうか。

【前田副センター長】
  アメリカは数学、応用数学、統計というのは大体3つに分かれています。

【中川委員】
  灰色がものすごく少ないですね。

【前田副センター長】
  この中では、アカデミックポジションには余り行っていないようです。

【中川委員】
  というと、表のアカデミックポジションというのは純粋数学の人たちですか。

【前田副センター長】
  数理科学の中からアカデミックポジションを取った人たちの行った場所ということです。applied mathに行っている人が少ないと思います。

【若山主査】
  工学部の中で電気系・電子系にapplied mathがあるところが、割と大きな大学にはあります。そういうところじゃないかと思うんですけれども。

【中川委員】
  数学の中のapplied mathは別にあるのですか。

【本間委員】
  mathに入っている。

【中川委員】
  mathに入っているんですね。

【森委員】
  分け方が違うんですね。

【若山主査】
  ええ、分け方が随分違っていて、工学部の先生でもともと機械出身でも、俺はapplied mathematicianだという人はたくさんいますから、そこは違うんだと思いますけれども。

【中川委員】
  あと、マスターとバチェラーと書いていますが、それは何でしょうか。黄色のグラフです。

【前田副センター長】
  これは、いわゆるマスターコースしかない、バチェラーコースしかないというカレッジのような学校の先生になられた方々です。

【中川委員】
  分かりました。

【若山主査】
  ほかにございませんでしょうか。

【高木委員】
  先ほど米国では柔軟なカリキュラムというお話があったと思うんですが、それは具体的にどういうことなのか、逆に日本でも、他学科とか他学部の講義を聴講すればその分野を取れると思うんですけれども、日本との違いはどういうところにあるんでしょうか。

【前田副センター長】
  日本のいわゆる数学科の4年生までのカリキュラムはかなり専門性が高いと思います。例えば関数解析とか、高度な代数のものとかは大学院に置かれているようです。学生の方は自分の能力で、4年生で大学院の科目も取っていっていいと。取れる科目についてはある程度ベーシックなものを決めておいて、そこから先の選択が割と広がっていい、違う専門の科目を取ってもいい。一番極端なのは入学したときに1年目、2年目でメジャーが決まっていないですね。日本だと1年目に入って決まっているところか、1年たってすぐに数学科と決まってしまうのが、2年ぐらいかけてメジャーを決めていくところが多いと思います。だからダブルメジャー制度とか、メジャーを変えてしまう人たちもたくさん出てくる。そういうところに多様性があるんじゃないかと思います。

【若山主査】
  アメリカなんかだと最後までマイナーがありますよね。

【前田副センター長】
  そうですね。

【若山主査】
  そこが大きく違っているのかなという気がします。ほかにございませんでしょうか。

【常行委員】
  私は物理なんですけれども、アメリカで物理だと大学院生は留学生がものすごく多いんですね。数学はどういう状況でしょうか。

【前田副センター長】
  数学もかなり多いんじゃないかと思います。特に中国系の方はかなり多いと思います。

【合原委員】
  キャリアパスのポスドクの部分なんですけれども、我々の分野だとポスドクのポジションが山ほどあって、優秀な日本人がそんなにいなくて奪い合いです。しようがないから海外のポスドクを採るんですけれども、ポスドクの採用を考えましょうというのは、数学はポスドクの枠に比べて候補者が多いということなんですか。

【前田副センター長】
  日本ですか。ポスドクのポジションは数学の場合は少ないと思います。

【合原委員】
  そうなんですか。

【前田副センター長】
  多分合原先生の分野は特別だと思います。

【合原委員】
  オーバードクターの方もたくさんいらっしゃるんですか。

【前田副センター長】
  かなりいます。

【合原委員】
  そうなんですか。

【森委員】
  でもむしろ、先輩がそういう状況なのを見て学生が行かなくなってしまう傾向があるように思いますね。

【合原委員】
  それはまずいですね。それなら是非欲しいですね。お願いします。

【若山主査】
  結局、SSHもそうですけれども見えていないというところが一番大きいんですね。外からも見えていないし、内の人も外が見えない。ほかにございませんでしょうか。

【國府委員】
  日米の比較以外に、例えばヨーロッパとの比較はされているのですか。

【前田副センター長】
  この進路ですか。

【國府委員】
  学生数とかも。

【前田副センター長】
  余りやっていません。

【國府委員】
  そのあたりはどうなんでしょう。

【前田副センター長】
  ヨーロッパも、数学はかなり学生数が増えていると思います。

【國府委員】
  例えば進路だとか、キャリアパス等についてはいかがですか。

【前田副センター長】
  いろいろな人から聞くことは聞いて、ちゃんとデータにはなっていないんですが、イギリスとかフランスでもかなり学生数を増やして、ドイツでも割と就職はしているという話は聞きます。

【若山主査】
  前回ニコンの方のお話もありましたけれども、企業とかで数学の人を採用しようと、採用する見る目がある人がヨーロッパの方が日本より多いということが違いとして出てくると思います。ほかに。

【樋口委員】
  いろいろ説得力あるデータでポイントを押さえた解説で非常に分かりやすく、ありがとうございます。1つ、6ページに、学部で5倍とありますけれども、何らかの規格化をした方がいいかなと。もちろん米国における留学生の存在や、人口比とか、年齢層の違いから言うと5倍というのはそんなに変わりがないんじゃないかと思うので、何らかの規格をしていただくとより説得力が増すと思います。

【前田副センター長】
  分かりました。

【合原委員】
  少なくとも2分の1にはしないといけないですね。人口が約2倍なので。

【前田副センター長】
  それはそうですね。留学生を引くと同じぐらいかもしれません。

【樋口委員】
  ちょっとそういう印象を持ちました。

【前田副センター長】
  はい。ありがとうございます。

【若山主査】
  ほかにございませんでしょうか。それではどうもありがとうございました。
  続きましてこれまでの本委員会での議論を踏まえ、戦略的基礎研究部会への報告書の構成案を事務局で作成いたしましたので、粟辻さんからお願いいたします。

【粟辻推進官】
  資料5として1枚紙を付けています。これは前回お配りしたんですけれども、余り御議論いただく時間がなかったのできょうは少し御意見を頂ければと思っています。
  全部で大きく3つに分けていまして、表の1が数学イノベーションに関する現状について整理したもので、2がそれらを踏まえた現状の問題点を整理している部分です。これはこれまでいろいろ議論してきたものをちりばめているので細かい説明は省略しますけれども、2のところで問題点の整理として、大きく1)が人材に関するもの、2)が拠点に関するものという形で整理しています。1)はこういった数学イノベーションに必要な人材を育成する機能が大学なんかに不十分だということ。特に博士課程の学生のキャリアパスの問題。それから最後が、きょうちょっと議論していただきました高校における数学、あるいは数学者に対するイメージ、あるいはキャリアパスのイメージが限定的ではないかという問題があろうかと思います。
  2)は、これまでも少し取り組んできていて幾つかの大学で拠点ができているわけですけれども、そういった現状も踏まえてどういう問題があるのかということで、1つ目は各大学の拠点によって体制とか活動内容は極めて多様で、いろいろな段階のものがあるということ。それから諸科学とか産業界といった、マス学会の外から見て十分認知されているかというとまだまだ十分ではないということ。それから人材育成とか情報発信とかその他を含めて個別の拠点の活動だけでは限界があるような課題もあるのではないかということです。
  こういったものを解決するために何が必要かというのを裏の3に整理しています。これは全くたたき台なんですけれども、これも大きく2つに分けていまして、1)が数学イノベーション推進拠点に必要な機能。2)が、そういった個別の拠点だけでは必ずしも十分に対応できない、あるいはもう少しまとめてやった方がいいと思われるような機能、全国的な機能と書いていますけれども、そういう意味合いでございます。
  1)は、最後に参考資料3としてポンチ絵を付けていますけれども、これが昨年8月の戦略的基礎研究部会で、それまでの数学イノベーション委員会の審議の結果をまとめて報告したときに使った紙でございます。こういったイメージは基本的に同じなんですけれども、これまでの議論を踏まえて、それをブラッシュアップしたものでございます。
  1が、数学と諸科学や産業とが協働できるような機能ということで、トランスレーション機能だとか、研究を実施する機能とか、成果の実用化を支援する機能。これはこちらのポンチ絵にも描かれているものでございます。
  2は産業界や高校向けの情報発信の機能。
  3が人材育成機能、これは8月以降議論していただいたものを反映しているもので、諸科学や産業との連携といった実践を通じた育成、例えばここに書いてあるような問題提示型の研究集会、いわゆるスタディー・グループと言われているものとか演習ヘの参加。あるいは数学以外の分野を専攻する学生にも参加してもらうという形での実践の場への参加を通じた育成ですとか、あるいはもう少し数学という分野の連携を進めていく上で共通的な課題として数理モデリングとかデータ科学といったものもございますので、こういったものを広く履修機会を与えるような副専攻のような取組ですとか、それから数学以外の分野専攻の学生への数学力の強化みたいなものが必要ではないかということでございます。
  2)は、こういった個別の拠点の取組だけではなかなか十分ではないということを抽出してみたもので、1と2がありますけれども、1は先ほど問題点として挙げていましたものの1つに外からまだ十分見えていないということがございますので、それを改善するために、例えば情報をもっと集約して発信できるような機能。例えば各拠点とか各研究者に今はいろいろな関連の情報が散在しているわけですけれども、そういったものをうまく集約して外から使いやすくするような仕組みを作るとか、外からの相談に対応してうまく数学者につなぐような機能とか、国内外の研究動向を分析して、数学の力を発揮できるような重要な研究テーマ等を抽出していく機能といったものが考えられると思います。
  2は人材育成機能で、これは1)の個別の拠点での取組と重なるところもあるんですけれども、複数の拠点が協力し合いながらやった方がいいものもあるだろうということで、例えば実践を通じた人材育成でも、スタディー・グループなんかを複数の拠点で共同開催することですとか、あるいは学生が行ったり来たりする、数学イノベーションの推進拠点間だけではなくてほかの分野の研究室ともうまく行き来するような仕組みですとか、あるいはこれもかねて言われていることですが、訪問滞在型拠点のように、外国のトップクラスの研究者に滞在してもらって、日本の若手研究者と交流することで触発して育成するみたいなことですとか、キャリアパスの構築支援、これも個別の大学だけではなくて全国体制でやった方がより効率的だろうという部分もあろうかと思います。
  こういったように個別の拠点でやるようなことをうまく支援することと、オールジャパン的なものとして活動を支援するような仕組みが必要かなと思っておりまして、現行の統計数理研究所に委託して実施している数学協働プログラムの後継を考える上でもこういった整理を基に御議論いただければと思っております。以上でございます。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。それでは意見交換をしたいと思いますが、特に、ここに書いてあることはもう既に委員の皆さんは御承知だと思うんですけれども、過不足、特に不足している観点とかございましたらそれを指摘していただけると有り難いと思います。これは3月9日ぐらいにある、これの上部委員会で検討状況をお知らせすることになっております。報告書は来年度になります。
  例えば先ほどの前田先生の日米の学生数の前の日本のものを見ても、数学の博士課程はたしか100人ちょっとぐらいだったですね。

【前田副センター長】
  160人ぐらいですかね。

【若山主査】
  数学で160人ぐらいですか。きょうのお話でも外からも見えていないということで、例えばよく言われている長期インターンシップとかいうのは、学生にとってもそうですけれども、同時に産業界への情報発信に十分になっているというか、産業界の方がよく分かってくださる大きな機会になっていると思うんですね。博士課程が160人ぐらいだとすると、それを多いというか少ないというか分かりませんけれども、それが二十、三十あるだけでも随分変わってくるんじゃないか。そこのところは書いておいていただいた方がいいかなと思いましたけれども。あと、ほかの学部での教育ですね。何か。

【小松局長】
  私が発言してもいいですか。

【若山主査】
  どうぞ。

【小松局長】
  本日冒頭に若山先生が、きょうは女性が少ないとおっしゃっていましたが、それよりもゆゆしきは、ここのメーンに座っている中で人文社会系の人が粟辻推進官と私だけということだと思います。委員構成については当方の責任ではあるのですが、外から見えていないというときに、数学や数学に近接した分野の方々だけで話していても足りなくて、やはり人文社会系の人の意見なども聞きながらやった方がよかったのかなと、今更ながら感じました。
  というのは、私自身は高校時代すごく数学が好きだったし、得意でした。でも大学は法学部に行きました。先ほどアメリカなどでは数学から行政に行く人も多いが、日本は少ないとおっしゃいました。それは、私たちのような法学部出身者が行政で幅を利かせているからです。彼らは高校までの数学しか知らない。数学を好きだったら大学で学べたはずですが、例えば私が学んだ大学では、教養がまだあった頃ですが、それこそ数学はすごく難しくて、とても勉強するものだと思えませんでした。つまり、人文社会系の人が一般教養として数学を学んでいないような気がします。
  産業界も割と人文社会系の人がトップになっている例が多いですね。そういう人にもっと広く数学について知ってもらうことが必要です。きょうの御発表にもあったように、高校で数学に進む学生以外の学生へももっと数学、あとは大学において、ほかの分野の人にももっと数学的な基礎を楽しく学べるようにすることが大事じゃないですか。そうでないと、数学の中だけで検討していても余り広がらない。人数も少ないですし。そう思います。

【若山主査】
  御指摘のとおりで、この委員会も、もう26回になりますが、最初の半分ぐらいは本当に数学の中という感じだったんですね。それが徐々に外の、きょうのお話でも講師の先生方の御発表を伺いたいということ自体が、今局長がおっしゃったようなことを随分と私たち自身が意識しているということなんです。委員構成については、今のところきょうお休みのグレーヴァさんが経済ですけれども、粟辻さんたちとも随分、もう少し、法の数理とか、そういう方に入っていただきたいとか、そんなことを検討したことはございます。現時点ではこのようになっています。

【小松局長】
  すみません、それは役所の側が言うことではないんですけれども。

【若山主査】
  いえ、きょうは、珍しいですよね。局長自らが。大変貴重な御意見を頂きましてありがとうございます。
  ほかにございませんでしょうか。

【本間委員】
  恐らくきょう示されている内容で、人材育成の問題と先ほどの高校の取組の話は、非常に近しくて難しいのではと思います。今高校生が進路を高校に来る段階で少し決めてしまっているとなった場合に、今局長がおっしゃったことも少し関係しているんですけれども、その進路を決める時には、高校生の方たちに数学者って見えていないはずで、プロの数学者を知らないから当然選択肢に入らない。逆に言うと高校の先生も数学がどこで使われているか御説明になれない状況があるとするならば、それは産業界側の問題もあって、産業界側で活躍している数学者を一般の方にわかるように露出させていないからだと思います。一般に、アカデミアに行きたいって、進路上、高校ぐらいまでは考えていないはずです。多分研究を究めた結果大学に残るというのが割と健全な姿で、中学時代からいきなり大学の先生をやろうと思う子は数%だと思うんですね。そして、その数%は、数学専攻よりも少ないはずです。そう考えるとこれは文部科学省の取組でもありつつも、この間の東洋経済の雑誌の取組もそうなんですけれども、産業界で活躍している数学者を引っ張り出せる枠組みをどこかで作らないといけないと思います。Jリーグが盛り上がったのもかっこいいサッカー選手が出るとみんな憧れが出ると思うのです。つまり、数学でも活躍している人を出さないといけないのだろうなと。そして、企業の中でも数学者の進路ってどこなんだろうといったときに、大学の卒業と企業の就職はつながっても、企業の中のその後のキャリアが切れてしまうじゃないですか。つまり、数学選考の学生が企業に就職されました。しかし、その後の進路、キャリアが不明。このように、就職された後のフォローもできていないので、数学専攻者の企業の中のキャリアを調べて、どこかで引っ張り出さないと。多分活躍されている人もいるはずなんですね。無駄な教育をしているはずはないし、日本の産業も科学も伸びていることを考えると数学は絶対にどこかで生きているので、ただそれが企業側で隠されているのか、うまく企業側も露出の仕方が分からないから出せていないのか、1回因数分解して、出し方が分からないというのであれば、一緒にサイエンスの1つの発展のために出しましょうというのを掘らないと、アカデミアだけで解決できないというのもすごくよく分かるので、何か考えられないかなというのが気になったところです。

【若山主査】
  ありがとうございます。

【國府委員】
  今の御意見に関係していると思いますが、きょうのお話でも、スーパー・サイエンス・ハイスクールでのいろいろな取組があって、例えば東大などの大学と連携している事業がありますね。それからJSTのさきがけでは、前の西浦先生の領域から数学キャラバンという高校生や一般向けの講演会が始まっていて、それにさきがけやCRESTの研究者、広い意味で数学者、数理科学者だと思いますが、そういう人たちが高校生に対して話をする機会があります。そういうものがいろいろなところでされていると思うのですが、何となく全体として見えてこないのは、それらが割と個別にバラバラに行われているからではないか、例えばきょう初めて群馬県の教育委員会での活動についてお伺いして、非常にうまく運営されていると思ったのですが、他にも大阪府の大手前高校が、マスフェスタという取り組みで、全国のスーパー・サイエンス・ハイスクールの数学の活動を行っている高校の数学研究の発表をして、そこに、森先生も行かれたと思うんですけれども、何人かの関西圏の数学の大学教員が参加してコメントをしたりという活動をされています。このようないろいろな取り組みをもう少し全体として把握しておくとそれらの効果がよく見えてくるのではないかと思います。横の連絡が、情報共有がもっとあるといいのではないでしょうか。

【若山主査】
  はい。

【森委員】
  幾つかコメントありますけれども、さっき本間委員がおっしゃっていた、企業の中の数学者が表に出るというのは、ドイツでも数学がキーテクノロジーだとか言われたのは、根っこのところを攻めるので表に説明しにくいし、特許にもなりにくいし、それと関係しているんじゃないかと思うんですけど、もしそれが何らかの方法でできるのであればすばらしいことだと思います。
  丸橋先生の群馬県の話は、玉原という地の利が非常に強烈で、東大の数理の方々がバックアップしておられるので、文句の付けようがない進め方だなと思って拝見しておりました。
  局長の御意見を伺いながら、実は私は教員の立場というよりは、学生のときの印象が強烈に強くて、そちらを思い出していました。学生紛争でまともな授業がなかった時期なので、自分たちで勉強していました。学生を放任しておくところが、京大の悪いところでもあるけれどもよいところでもあって、私自身はそちらを享受していた側(がわ)なので、なかなか言いにくいところはあります。けれども、最近はそんなことを言っていられないというので、國府先生なんかもよく御存じのように、学生への対応の仕方が大分変わりつつあります。ちょっと弁解ですが。

【若山主査】
  本当にそうですね。1つだけ局長に横の広がりという意味で、ずっと外の分野を考えてこなかったのは、ここが研究振興局であるというのがあって、最初は研究、だからせいぜい人材といっても本当に数学者、数理科学者になる研究人材しか議論しないということで始まっていたのがあります。それが今ここで議論になって、さっき御指摘になったようなことは、文部科学省も研究振興局と、例えば高等教育局とが一緒にやっていただかないといけないところも多く出てきているのかなと。

【小松局長】
  そうですね。おっしゃるとおりだと思います。文部科学省の中の縦割り、しかも更に言うと局の中でも縦割りがあるような気がするんですけれども、今は割と分野融合ということで、科研費でも、大規模なものは大くくりにして審査する方向になっています。もちろん数学イノベーションなので、数学はどうあるべきかを考えながらも、周りの分野とどう付き合っていくか、それは数学に限らずなのですが大変大事だと思います。そこは当然教育にも絡んでくるし。おっしゃるようにこれまで高等教育局はスーパーグローバル大学等の事業、研究振興局はWPIとばらばらにいろいろなプロジェクトを立ち上げ、それが全て金の切れ目が縁の切れ目のようになってしまうこともおかしなことです。

【若山主査】
  ちゃんと議事録に残しますので。

【小松局長】
  文科省の中でももっと連携をとらないといけないと思います。そういうことも中に書いていただけると有り難いです。

【若山主査】
  よろしくお願いいたします。そう言えば、一例ですけれども、今名前を思い出せないんですけれども、ロイヤル・ダッチ・シェルで、資源に関しての探索の、部長だった人は、それまでMITの准教授だった方で、代数幾何(きか)で数理研にも半年いたようです。彼が、生まれがオランダなので、どういう理由か分かりませんけれども、MITを辞めて、そこの技術開発系の担当部長になって、もう執行役員になっているかもしれませんけれども、3年ほど前にお会いしたことがあります。

【樋口委員】
  きょういろいろなお話が出て大変勉強になったんですけれども、私はそれらの大体はつながっているんじゃないかと思います。この会議にて、私、紹介させていただきましたが、ビッグデータの利活用に関する人材育成ということで、振興局と高等局の担当の課長さんに出ていただいて、一緒に議論して報告をしました。きょうのお話、大学も特にそうですけれども、研究開発現場、あるいは私どもの生活空間がどんどんデジタル化され、その産出物がビッグデータになり、それを利活用し、いろいろな数理的センスで世の中に役立てていくという、これが非常にイノベーションの根源的なものになってきたときには、これまでのサイエンスの分野の分け方、あるいは教え方を大きく変えないといけないんじゃないかと感じています。特に大学教育では多様性、ダイバーシティーをどのように担保していくのか、勉強する側がダイバーシティーを身に付けられるようにする必要があると思います。それを高校に写影すると、局長の場合のようなケースもあるとは思いますけれども、多くの学生さんは数学が得意じゃないから文系を選ぶとか、得意だから理系を選ぶとかいう傾向があります。世の中の産業を見ると、理系・文系という分け方がもうナンセンスになってきているような、あらゆるところで数理的センス、あるいはデータ・リテラシーが必要になってくる。そこを考えると高校の理系・文系という進路指導も行き詰まりじゃないかと思っています。結論としてダイバーシティー、多様性をどうサイエンス、教育の場で育てていくのかというところを今まさに考えないといけないんじゃないかと思います。

【若山主査】
  ありがとうございます。文系・理系って、例えば数3を取るか取らないかみたいな、そんな感じで決まっているのかもしれないと思うんですが。

【逸見主幹教諭】
  発言させていただきます。進学校ですので、2年生までは文系・理系関わらずみんな勉強しなさいと、数学も一生懸命やらせてもらっています。ですが高3になりますと、文系の方は選択科目でいろいろありますので、時間的に数学が取れないことになりますが、それでも若干は数学はやってもらっています。その中でも、文系の方でもうれしいことに、数学を受験しなくていいんだけれども、私数学好きになったのでやりたいんですと言ってくれる子もいろいろ出てきたりするので、先ほど申しましたけれども高校で最後になってしまうような授業でも一生懸命楽しく頑張ってほしいなと思ってやっております。

【若山主査】
  群馬県の教育委員会ではどういう感じですか。教育委員会の中での御議論も、インフォーマルな形でもあるかと思うんですけれども。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  文系・理系。

【若山主査】
  文系・理系とか。

【丸橋補佐・教科指導係長】
  その辺については何とも言えないところかなと思いますけれども。現場では大学入試があるでしょうし、そのことでそういったことが分かれてしまっているのかなと、現状がそのようになっているからと思いますけれども。

【若山主査】
  高大接続というのが今すごく言われていますけれども、高大だけ接続しても社会に接続していないと、その視点がないとまずいかなと常々思うんですけれども。どうですか。

【高木委員】
  全然その話と関係ないかもしれませんけれども、この報告書の中で人材育成が大きな柱になっていると思うんですが、人材育成といった場合にどのぐらいの規模感で考えるのか、先ほど米国の場合は二十数%がアカデミックという話がありましたけれども、10人、100人レベルの教育を考えるのか、1,000人、2,000人を考えるのか。1,000人2,000人の場合は数学が使えるという話と新たに研究開発できるという人とは違うと思うので、そのあたりのキャリアパスも含めて、人材を幾つかに分類して、それがどの程度の規模感で必要なのかということは少し議論をした方がいいかなと。どうしてこういうことを申し上げるかというと、私はいつもバイオインフォマティクスに関して、必ずこういうことを言われまして、財務省とかに上がっていくときに、何人ぐらい本当に日本に必要なんだと。ゲノム解析人材について言えば、病院が幾つあって、あるいは生物系の学科は幾つあって、そのためにどれぐらいの教育をしなければいけないのかということを常に言われるものですから、私、そういうものは余り好きではないんですけれども、ここでも少しは考えておいた方がいいかなと。

【若山主査】
  そうですね。ちょうど樋口先生が御紹介になっていた、先ほどのデータサイエンティストの中で、ものすごく、マスターとかから三角になっていましたね。そういうイメージは確かに大事かなと思います。ほかにございませんでしょうか。

【合原委員】
  幾つかコメントあるんですけれども、まず本間さんがおっしゃった企業からスターが出たらいいなというのは僕もそう思います。ビッグデータのブームのときに、結構何人かの、数学の人ではないと思うんですけれども、企業の方が注目を浴びて、かなり僕も応援していたんですけれども、最近ビッグデータがちょっとしょぼくれてきているので、樋口さんに頑張ってもらわないと。あの人たちには注目が高かったですからね。ああいう感じの人たちがもっと目立つようになればいいかなというのが1つです。
  それから、小松局長がおっしゃった他分野との関連の部分なんですけれども、数学の分野は特殊性があって、例えば議論している対象がゲノムであったり、脳科学であったり、人工知能とかであれば必ずELSIの問題が重要になるので、倫理学の人とか法学の人とか社会学の人が、少なくとも1名は入るんです。ところが数学はまだそういうところまで来ていない、そういう意識まで行っていないのか、数学はELSIの問題を考えている人はほとんどいないですね。でも、これから数学がゲノムにも、高木先生の仕事なんかまさにそういうことと関連しているところですし、脳科学もそうですし、人工知能も数学の貢献がこれから必要になってくるので、そうすると、数学分野におけるELSIの問題は我々も考えておかなければいけない課題になってくると思うので、そういう意味で法学の人とかも委員に入ってくるのは好ましいタイミングになってくる感じがします。
  最後に、文系・理系の問題と関係するんですけれども、最近僕は数学検定の協会のお手伝いをしているんですけれども、英検は文系も理系も受けますよね。あれで英語に親しみが増していくわけで、数学検定みたいなものをもっと大勢受けるようになると、日本全体の数学の底上げという意味で結構効果があるかなという感触を持っています。

【若山主査】
  ありがとうございます。加えて、この前の大木さんの御指摘もあったと思うんですけれども、一番数学に近い物理というところで受け側として、物理出身の方は産業界にたくさんいらっしゃるというわけです。受け側としてもう少し数学を、現代数学とか分かっていただくともっと数学の人を採りやすくなるというニュアンスのお話もあったと思うんですけれども、常行先生、そのあたりで。

【常行委員】
  今言われたことと論点がずれるかもしれないんですけれども、私の分野が、実は産業界で似たような、計算シミュレーションを使った材料研究というのがたくさんやられているはずで、研究者もたくさんいるんですが、そこで産業界でどんなことに役立ったんですかというのを出してくださいというと出せないというんですね。それは余りにも生々しくて、特許に絡むとか、本当に最先端のところに絡むので、それは当分出せませんという答えがよく返ってくるんです。研究会をやって、例えばそこに企業の人に御参加いただいても、企業の人がうちから出席したことは出さないでくださいと言う場合もあります。そういうのが、例えば今回の報告書の3の2)の全国的な機能の1ですか、産業界とつなぐ機能というときに、これはすごく大事で、こういうものがつながるとキャリアパスも生まれて人がそちらに行っていい循環になると思うんですが、そこをつなぐところが実は企業の方にとっては非常にデリケートで、余りオープンに出せない可能性もあるんじゃないかとちょっと心配しています。

【本間委員】
  それについて少し僕も考えがあります。完全オープンにするのかという問題が多分あると思います。少しセミクローズな段階とオープンにするものと分けないといけない可能性はあるんだろうと。ただ、今求められている僕たちの機能としては、産業界と大学及びほかの研究所の諸科学をつなぐことであって、キャリアパスが安定的だという多少の保証があれば良い話だと思います。最終的に企業で活躍するというのは、実態としてその人が離職せずに企業に定着していることによって説明ができ、理解が得られると思います。いきなりオープンにする必要もないと思います。セミクローズな、コンソーシアム的なものがもし可能であれば一番望ましいと思う。ただ、楽観的に言ってしまうと、実は、僕も数学出身で企業活動25年目になっていますけれども、意外と企業の基礎的な領域・活動にいることが多くて、特許出口に近い分野は余り数学者はいない可能性は多分あると感覚的に思っています。この理由から、企業の数学者がオープンなフィールドに出る可能性もあるので、いきなり100%セミクローズにする必要はないと、少し楽観視はしています。嫌な言い方をすると、そこが高校生から見るときに、物理は諸科学で使われていると。数学は諸科学で使われていないということの裏返しかもしれないんですけれども、数学といえばこれというものが実態と直接結びついていなくて、広くいろいろなところに入ってしまっているので、そこをどう整理するかだと思います。
  ひょっとしたら数学者で半分以上在庫管理とか、ファイナンスマネジメントとかいう人もいて、それは旧来の学問だと会計なんだけれども、会計に数学者は結構いるはずだし、在庫管理って、あれ、それは効率化されてもうないんじゃないのと思うところにも今もやっているし、そういうところに人はいるので、在庫管理って、例えばヤフーのようなネット広告のバナーの在庫管理に数学者はすごく多いんですよ。リアルタイム性が求められるので。やっている技術は数学の非常にシンプルな基礎要素なんですけれども、それをプログラムとしてステップを減らしたい。計算ステップが増えるので、計算ステップを減らすために数学者がいるんですね。やっている学問としては枯れている学問なんだけれども、新しいアイデアを出さないといけないところにもいるので、そこに数学者がいることは公然と言われているし、グーグルにもいますよね。そこは物理・化学とか、実学系の学問より、数学者の方がオープンに出せるかもと、楽観視しています。

【若山主査】
  中川さん、何かこの点、今の御議論。

【中川委員】
  企業の場合は守秘があり、データは基本的には出せない場合が多いです。発表できるネタとしては、特許を出して公開されて、公知になったものが基本です。しかし、最近ソフトウエアの特許を出さない方向になっています。まねされても分からないというのが理由です。そういう点で企業が数学活動の成果をどのようにアピールするかは検討が必要ですね。僕が今まで講演会で紹介しているのは10年以上前のものばかりです。

【若山主査】
  どうもありがとうございます。時間がなくなってまいりました。本日までの御議論いただいた内容を今後の委員会の検討につなげていきたいと思いますけれども、まずは3月9日に戦略的基礎研究部会がございます。そこで検討状況ということで報告してまいりたいと思いますが、きょう頂いた御意見等を、先ほどの粟辻さんの御説明の1枚の紙に加えまして御説明したいと思います。報告内容の紙は私に御一任いただけますでしょうか。どうもありがとうございます。
  それでは最後に今後のスケジュールについて事務局からお願いします。

【粟辻推進官】
  資料6に記載がありますように、次回は4月8日金曜日の午前にこの場所で開催する予定でございます。議事録につきましては事務局で案を作成して、委員の皆様にお諮りして御確認いただいてホームページに掲載することを考えております。本日の資料につきましては必要があれば郵送させていただきますので、机の上に置いていただければと思います。以上でございます。

【若山主査】
  よろしいですか。

【粟辻推進官】
  はい。

【若山主査】
  それでは何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

‐了‐

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