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数学イノベーション委員会(第22回) 議事録

1.日時

平成27年9月29日(火曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省 5階 5F7会議室

東京都千代田区霞が関3‐2‐2

3.議題

  1. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

若山委員、合原委員、今井委員、大島委員、國府委員、高木委員、常行委員、中川委員、樋口委員、舟木委員、本間委員、森委員

文部科学省

小松研究振興局長、行松基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官、田渕基礎研究振興課課長補佐

5.議事録

【若山主査】
 それでは定刻となりましたので、ただいまより第22回数学イノベーション委員会を開会いたします。本日は御多忙の中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は小谷委員、長谷山委員、それからグレーヴァ委員から、欠席されるとの御連絡がございました。よろしくお願いいたします。
 それでは本日の議事を進めるに当たり、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 本日の配付資料ですけれども、議事次第のあと、座席表、委員名簿、資料1、資料2は高木先生の御発表資料、資料3が大島先生、資料4は今井先生の御発表資料でございます。資料5は次回の予定で、あと参考資料で、前回の議事録が参考資料1、参考資料2‐2、2‐2、2‐3の三つを付けております。
 以上でございます。
 それで、本日研究振興局長の小松が、着任後初めて本委員会の出席でございますので、一言御挨拶させていただきます。

【小松研究振興局長】
 皆様こんにちは。研究振興局長の小松でございます。8月4日付で着任しまして、その翌々日に前回のこの委員会があったのですけれども、そのときには出席できまず、大変失礼いたしました。
 数学とほかの分野を融合して、もっと新しい知見を広めていくということを御検討いただいているということで、特に今回人材育成という部分について御議論をいただけるということで、大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは前回委員会の後半で議論がありました、数学イノベーションに必要な人材の育成を中心に、審議したいと考えております。そしてちょっと議題に入ります前に、前回いろいろと御議論いただきまして、谷の絵の件ですが最終的には付けない形で、親部会である科学技術・学術審議会の戦略的基礎研究部会で御説明を申し上げました。議事録はまだウェブには上がっていないようですけれど、近いうちに上がると思います。ただし、今日の審議にも関係しますので、ごく簡単に御紹介しておきます。この前ここで御議論いただいたことを御紹介しましたところ、おおむね非常にいい方向に行っているとお感じいただけたようです。その中で幾つか御意見がありましたのでそこだけ取り出すとバランスが悪いですけれど、御紹介します。部会委員の有信先生から、「いつも言っているのと若干反対のことを言いますけれども」と、つまりいつももっとちゃんと出口を考えなさいということをおっしゃる方なんですけれども、数学に関してはどちらかというと余り応用側に引き寄せられて、役に立つものだけの方向に収れんしていくのが多少心配でしたけれども、これらの検討課題の中でいわゆる新しい現代数学の研究者だとか、その研究会上の改善をも含めて検討していらっしゃるということを聞いて、安心したという、そういう御意見がございました。
 それともう一つは、同じく部会委員の土井先生から、ちょっと言葉は悪いですが、数学者はいろいろなところの御用聞きに回るような、何かそういうイメージになってしまうと、多分目指していかれていることと異なってくると思いますので、そこをもっと明確に描かれてもよいのではないかと。こういうふうな意見もございました。
 あとはやはり、外向けにやっている、連携していくという態度に関しては、非常にポジティブに受けとめられているということです。
 以上、簡単ですがここのところだけ御報告しておきたいと思います。
 さて、きょうの議題に入りたいと思いますけれども、まず事務局の方で人材育成に関する論点を資料1に整理していただきましたので、粟辻さんから御説明をお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 資料1を御覧いただけますでしょうか。
 まず1枚目が論点の案でございます。これは前回も少し議論をさせていただいたものをベースに、前回の議論あるいはそれ以降、少し我々でも考えてきた結果を反映させたものでございます。これはたたき台ですので、これに必ずしもとらわれずきょうは御議論いただければと思います。
 簡単に紹介させていただきますと、まずどういう人材を育成すべきなのかという、育成すべき人材像を整理する必要があるかなと思っています。そこはA、Bというふうに二つに分けていまして、Aの方はいわゆる数学・数理科学専攻の出身で、数学・数理科学のバックグランドを持ち、諸科学・産業と連携できる人材、これは一つ育成すべき人材として考えられるということでございます。
 Bは諸科学・産業で活躍できる数理的な人材、これはいろいろな幅があると思いますけれども、数学、数理科学専攻の出身で今は諸科学の分野で活躍している人、企業で活躍している人もいらっしゃるでしょうし、専攻は数学・数理科学でないけれども、諸科学とか産業の中で非常に数理的なことをやっておられるという方もいらっしゃいますので、両方を含む概念だと思っています。
 それでAの方ですけれども、実は前回お示しした資料には数学連携コーディネーターのような名前を使っていたのですけれども、必ずしも数学・数理科学研究者と諸科学・産業との間の橋渡しやコーディネートだけをやるという意味ではなくて、それも含めて実際に諸科学・産業との共同研究などに取り組めるような人という、もう少し広い意味合いで捉えております。ここにありますように、例としてここでは書いていますけれども、数学・数理科学のバックグラウンドを持ち、諸科学・産業における問題の発掘とか、数理的問題への翻訳といったことができるだけではなく、諸科学・産業との協働による研究などもできる人材が一つ、ターゲットとして考えられます。
 もう一つは、諸科学・産業において活躍できる数理的人材、ここには例として生命科学分野、あるいは医療統計、企業を挙げていますけれども、これに限らず様々な分野で数理的なニーズというものはすごく高まっていますので、数理的な研究ができる人材というのもニーズは高まっていくというふうに考えています。
 したがいまして、大きく分けるとAとBがあり得るかということで、こういった人材に求められる能力として、2ポツに幾つか書いています。これはどちらかというとAの方から見た視点でありますけれども、広い世界への関心ですとか好奇心、分野を超えるような力、あるいはチーム運営ができるチーム力、もちろんバックグラウンドにある必要な数学の能力、それから最近のビッグデータ時代などに対応した、データを扱うような能力とか統計に関する素養、こういったものが、優先順位はいろいろあると思いますけれども、必要な素養として考えられるかなということです。
 3番目は、具体的にどんな、こういった1ポツに掲げたような人材像を育成するには何が必要なのかということでして、論点として少し整理してみたのは下の部分でございます。数学・数理科学をバックグラウンドにした人たち、これがAの部分でして、比べると1、2、3というふうに三つあるのかなと考えております。
 (1)が大学における育成でして、例えば諸科学を学ぶ機会を副専攻などで提供してやるとか、あるいは交流の場を設けるとか、卒業後の進路、特にほかの分野などへの進出も含めた進路の多様化などが考えられると思います。
 (2)はもう少し大学の学部とか大学院以降の、特にポスドクレベルにおいて、具体的な諸科学・産業との連携による研究に参画することを通じた育成で、具体的には、こういった問題解決型の研究におけるポスドクポジションの増加が考えられると思います。
 (3)がその他で、これはいわゆるキャリアパスの拡大ということですけれども、一つは企業などへの新たなキャリアパスの構築、もう一つは主に例えば高校の教員あるいは生徒向けに、実は数学は社会のいろいろな分野で幅広く使われている事例が、必ずしも十分知られていないというところがありますので、そういった情報をもっと知られるようにする活動を促すといったことが考えられるかということです。
 Bの諸科学・産業側においても、大学における取組あるいは企業における取組、大学の場合だとその後の進路に関する取組といったものが考えられるかと思っています。
 後ろにポンチ絵を少し参考に付けておりまして、上の部分は前回お示ししたもので、要は狭い意味の数学者が中心にいて、その外側の薄い水色の部分が応用的なことをやっている数理的な研究者、そして、各分野、周りのピンク色の部分の中にも数理的な研究をしている人はいて、その間の連携、あるいはその部分の人材の層の厚みを増していくということが、今後求められるのではないかということです。
 その下の円グラフですけれども、前回右側の数学専攻の博士課程の修了者の就業状況、これは前回お示ししましたけれども、見ていただくと分かりますように企業に就職する学生は全体の4%程度と極めて少ないわけです。これを修士課程修了者で見た場合のグラフが左側でして、北大から九州大学まで7つの大学の数学専攻の修士課程を修了した学生の過去5年程度の積算をしてみたものです。これを見ていただくと分かりますように、民間企業・官公庁などへの就職者が約半分弱を占めていて、それ以外に初等・中等教育での教育職というものも10%を超える比率があるということでございます。
 1枚めくっていただきまして、次のページの上の絵は、これも参考にということで付けてみたものですけれども、さきがけの数学と異分野との協働の領域が、新たに昨年度から発足しています。國府委員に研究総括を務めていただいている領域でございます。その初年度の採択者が全部で9名いらっしゃるわけですけれども、この9名の方がこれまでどういうキャリアを経てこられたかということを、若干細かい部分は捨象しているところがありますけれども、まとめてみたのがこの絵でございます。
 一言でいいますと、一番上が数学専攻で、真ん中が数理科学専攻、すなわち、数理工学とか統計とか、いわゆる数学そのものではないけれども数理的な分野の専攻で、一番下はそれ以外の諸科学専攻という形でございます。それで左から右へ、この採択された方が今、所属している機関で分けますと、数学専攻の組織にいらっしゃる方は1名、数理科学専攻の組織が4名で、諸科学専攻から来ている方がこのうち1名です。諸科学専攻の組織にいらっしゃる方も4名で、そのうち2名は数学専攻の出身の方です。このように、少し相互の乗り入れのようなものが起こっているということでございます。
 下の4枚目は前回お示しした資料ですので割愛させていただきまして、最後のページの5枚目に、これは議論のたたき台で、本日皆様方の御発表の後少し議論していただければと思うんですけれども、大学の学部から修士、博士、それから実際にいわゆるポスドク職、それからテニュア職、こういった流れを考えた場合に、数学専攻、また数理科学専攻、諸科学専攻、基本的に研究者を育成するというラインは左から右に一直線で行くというラインが中心ですが、こういった数学と異分野の連携を深めていく上では、それだけではなかなか人材育成という観点からは十分ではないだろうということです。一番右端のTenuredと書いてあるところの部分の、赤い枠線の中が、今回育成の対象になるべき人材像と考えられる部分で、いわば数学研究者の中にも諸科学・産業との協働に取り組める数学者がいたり、あるいは数理科学研究者の中にも数学出身の人あるいは諸科学出身の人がいたり、あるいは諸科学研究者の中にも数学や数理科学、あるいは諸科学の中で行った数理的な人材がいたり、企業も同様ということで、様々な専攻の出身の数理的な人材が、各分野の中にいるという形が、相互の連携を深めて、数学イノベーションの拡大につながってくるのではないかという仮定の下に少しこのような絵を作ってみました。皆様、本日の3名の方の御発表の後に、いろいろ議論いただければと思います。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 ここで数理科学専攻というところに米印が付いていまして、数理工学、統計、データ科学、計算科学、シミュレーション等と書いてございます。身近に数理科学専攻と書かれました、東京大学は数理科学専攻ですから、東大の数理はこの一番上の数学専攻組織と分類されているのだと、理解しております。
 言葉遣いはともかくとしまして、議論の役に立てていきたいと考えています。
 それではきょうは高木委員、大島委員、今井委員に、それぞれ関係する話題に対して取組や問題点について、御紹介いただきたいと思います。
 最初に高木先生から、バイオインフォマティクスでの人材育成の取組や問題点、課題について、御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【高木委員】
 東京大学の高木でございます。本日は数学イノベーションに必要な人材の育成ということですが、私、それについてはお話しできませんので、バイオインフォマティクスという私が取り組んできました分野の人材育成に関して、これまでどういう取組をしてきて、どういうところがうまくいって、どういうところがうまくいかなかったのかというようなことをお話ししたいと思います。御参考になればと思います。
 まずバイオインフォマティクスとはどういう学問かというのを、ちょっとだけお話しさせていただきます。これは、左側がゲノム科学と呼ばれている分野でございまして、右側がそれに対応するバイオインフォマティクスということで、大体ここ20年から25年ぐらいの流れを書いています。一番上の方が1990年頃でこの頃にゲノムプロジェクトがスタートして、それから下に行って2010年、2015年ぐらいまで来ているわけです。これがゲノム科学と呼ばれている分野で、キーワードだけ並べています。右側がそれに対応する必要なバイオインフォマティクスということで書いておりますけれども。
 ここで申し上げたいことはゲノムの文字列、配列を扱うところから出発したんですが、非常に様々な種類のデータを扱う学問に変化してきていると。それに伴い、様々な情報技術といいましょうか、もう少し数学や統計学と言ってもいいかもしれませんが、そういうものが必要になっていると。最近は一番下にありますように基礎生物学という分野を超えまして、医学、薬学、農学その他応用分野で、ゲノム科学そのものもバイオインフォマティクスも重要になってきているということでございます。
 今申し上げました、右側にバイオインフォマティクスのキーワードを書いていたものを、今度は左側に書いていますけれども、例えばこういうようなことを行うのに、情報科学、これは広い意味での情報科学でございますけれど、どういうものが必要かというと、ここにあるようにほとんど情報科学全部のキーワードをカバーしているような状況でございまして、これらを使わないと今のゲノム科学の問題、あるいはもう少し広くいいますと生命科学の問題が解けないという状況が生まれてきているということです。
 この右側をどうやって学んでいくか。既存の情報技術だけ使って問題が解ければいいんですけれど、なかなかそうはいきませんので、新しい技術も同時に開発していかないといけない、こういうことが言えるかと思います。とにかく非常に幅広いということです。
 それで最近はこういうような状況の中で、先ほど1枚目でお示ししましたけれども、ここにあるようなキーワードがまた新たに出てきておりまして、日々私どもそのデータなり、その解析と格闘していると。一番大きいのはNGSと呼ばれている次世代ゲノムシーケンサーでして、従来ヒトゲノムを決めるのに数千億円のお金が掛かったわけですけれども、今はほんの数万円でできる時代になって、大量のデータが出てくると。その中で、ゲノム時代の後にポストゲノムというのがありますが、これはタンパク質の研究だとかいろいろなものがあったんですけれど、ポストゲノムのポストはまたゲノムに戻ってきていると。これはデータの性質がゲノムは非常に安定したものですし、解析しやすい。そのデータが大量に取れるので、またゲノムに戻ってきているような状況がございます。
 この中でデータ量としては、いわゆるビッグデータという言い方がされますけれども。ペタバイトのオーダー、10の15乗ですか、それがどこでも当たり前になっておりまして、もうそろそろその上のエクサ、10の18乗ぐらいのオーダーのデータを扱わないといけないということになっています。
 それから従来のDNA文字列あるいはタンパク質の構造データに加えまして、最近はイメージデータを扱わないといけない。あるいは定量的なデータを扱わないといけない、生命動態とか言ったりしますけれど、そういうようなもの、それから個人ゲノムを扱う、臨床データを扱う、それから農業に関しましても資源植物を分子デザインするような、こういう方向に来ております。
 その中の一つの例だけをお示ししますけれども、従来はマウスとかラットとかを使ったり、様々なモデル生物と呼ばれたものを使って研究をしたりしたわけですけれども、今は簡単にヒトのゲノムを決めることができますし、様々な計測をすることができますので、この左下にありますような様々なヒトデータを集めてきて、これらを統合解析して、疾患の解析あるいはその予防医学に結び付けようと。こういうものを何万人分のデータを集めて行おうというプロジェクトが、今、世界的にも日本でも走っていると。こういうデータをどううまく扱って、そこから意味をとっていくかというのがバイオインフォマティクスの中心的な課題になっております。
 これは、私が勝手に絵を描いてきたんですけれど、バイオインフォマティクスの全体像、生命科学の全体像と言ってもいいかもしれませんけれども、そういうものです。下の方にどういうようなリソースがあって、それは腸内細菌もあれば、土壌細菌もあれば、様々な微生物、植物、ヒトもあります、そういうものを様々なセンサーを使って解析すると。その中にはiPS技術だったり、ゲノム編集と呼ばれている技術もあります。それから最近のIoT、Internet of Thingsということで、様々な情報をとるということもあります。これらを使って様々なプロジェクトが行われております。この中から、データだけではなくて論文や特許や報告書、こういうものも出てまいりますし、様々な種類のデータが出てくると。これをスパコンを使って、大容量のネットワークあるいはストレージを使って解析すると。この中にはいわゆる情報解析だけではなくて、著作権の問題であるとか、ELSIと呼ばれている倫理的社会的問題でありますとか、個人情報の匿名化、暗号化だとか、それらをクラウドコンピューティング上でとか、技術的な問題、様々含んでいる問題を解決しないといけない。こういうような状況がもう生まれてきているわけです。その上で、最近はこういう人工知能を使ったような技術、機械学習と呼ばれているようなものを使った技術というのが、非常に活発に活用されるようになってきているというわけです。これが概観です。
 さて、それでこういうようなバイオインフォマティクスに関しまして、これまでどういう人材育成が行われてきたかということなんですが、これは結構歴史がございまして、今回、数学イノベーションでもお考えになっているような大概のことは、多分やってきたのではないかと思います。これが大体先ほど申しました1990年代ぐらいから、ここ20年ぐらい行われてきたいろいろな施策といいましょうか、そういうようなもので、キーワードを挙げています。この中で、人材育成というのが図られてきました。またこのために日本バイオインフォマティクス学会では、どういう教育をすればいいかと言うようなカリキュラムなども2002年と2006年に出していると、こういうような状況です。今日はとてもこれ全部をお話しできませんので、幾つかだけかいつまんでお話しします。
 まず適塾でございますけれども、これは蘭学のときに有名なあれですけれども、もともとこのバイオインフォマティクスに関しましては当時の大学等でなかなか教育体制が整っていないということで、その当時大阪大学、奈良先端大学におられました松原謙一先生が、奈良の国際高等研究所でこういうふうに講師を20名、これはボランティアの講師ですが、学生も20名ほど集めまして、20日間ぐらい合宿をして教育するというようなことをやったのが、最初の動きでございます。
 それから、これは1990年のゲノムプロジェクト開始ぐらいからずっと、15年ぐらいのストーリーを書いておりますけれども、まずは科研費でいろいろなゲノムプロジェクトをスタートさせた。それを実施するために東京大学の医科学研究所にヒトゲノム解析センターができたと。この当時にこのヒトゲノム解析センターに3講座できたんですけれども、2講座がいわゆる情報系、バイオインフォマティクス系ということで、最初からゲノムプロジェクトを進めるためには情報解析、データベースをちゃんとしないといけないということが米国の報告書にもありましたので、こういうものが作られたと。
 その後幾つか科研費での人材育成の動きがありました。さらに、2000年頃にゲノム情報科学ということが重要だということで、人材養成とデータベースと情報解析の三つをどう推進するかというようなことで、JSTにBIRDというバイオインフォマティクス推進センターが作られました。この中に教育というようなことも含まれていました。
 その後2001年になりまして、科学技術振興調整費で新興分野人材養成というものが始まりまして、これはバイオインフォマティクスを中心に、大学に幾つかある種の寄附講座的なものを作って教育を推進するというのが行われたわけです。こういうような取組が様々ございました。
 それからこれがいわゆるゲノム特定と言われている科研費での大型プロジェクトでございますけれども、これが1990年ぐらいからずっと脈々と続いておりまして、この中でいろいろな人材育成が図られてきたと。一つは、まだ生物学に関して実績のない人も、公募の班員として採ることによって、このプロジェクトに引き入れていって、活躍してもらうというような仕組みでありますとか、様々な教育、人材育成をにらんだようなプロジェクトが、この中で行われました。
 具体的にはここにありますように、毎年情報系、生物系の方を集めたチュートリアルをするとか、あるいはこれはミレニアムプロジェクトから始まりましたけれども、この科研費に通りますと学術振興会特別枠でポスドクを1人雇えるとか、合同班会議と言いますけれどもこれも何度も開いて、情報系、実験系が一緒に共同研究を行う機会を提供する。あるいは生物系の方があるソフトウエアを作りたいとなると、これは実際にソフトウエア作りを、お金も支援して、あるいは作ることのお手伝いもするというようなこともやってきております。
 もう一つ人材育成として大きいのが、ここにありますように、先ほど少し触れましたけれども2001年から始まりました新興分野人材養成ということで、この当時ソフトウエア分野もありましたけれど、ソフトウエア分野以外ではバイオインフォマティクスとバイオスタティスティックスの人材養成ということで始まりました。2001年から2005年、実際にはこの後も少し続くんですけれども、ここにあります幾つかの大学でこういうような教育ユニットといいましょうか、コースといいましょうか、そういうものが作られて、人材養成が図られたわけです。このときのこの新興分野人材養成の精神は、5年ぐらいは国が支援するのでその5年たった後は各大学の自助努力で、学科を作るなり、コースを作りなさいということで始まったんですが、ちょっと申し上げにくいんですけど大部分はその後、尻つぼみに終わってしまったということで、これが続いていればもう少し違ったんでしょうけれども、皆さんやはりなかなか大学の中で手当ができずに、東京大学と一部の大学を除いてはほとんどこれが四、五年で終わってしまったという、残念な結果に終わったわけです。
 ただその中で東京大学は、この一番上にありますけれども、生物情報科学学部教育特別プログラムというものを立ち上げました。それでこの経験を少しお話ししますと、今申しましたように2001年から2005年まで5年間、この生物情報科学学部教育特別プログラムというものを東大の理学部の中に立ち上げました。これは今でいうサマースクールみたいなものを駆使しまして、夏休みとか土曜日とか夕方、他の学科の講義に影響がない時間帯を使いまして、講義、演習をすると。それで正式に単位を認定して、必要単位以上とったものは理学部長から、これは大学の正式なものではありませんけれど、一応理学部長から修了書を出して、この分野を学んだということにしたわけです。大体その分野を学んだのが70名ぐらいということで、結構今、この分野でこの人たちは活躍しています。
 これが終わりましたので、その後何とかしようということで苦労しまして、2007年から生物情報科学科というのを理学部に立ち上げました。10名という非常に学生の定員が少ないんですけれども、また教員の数も非常に少ないんですけれども、何とか立ち上げまして、今、第8期生を迎え入れたということでございます。東京大学は御存じのように進学振り分けという制度がございますけれど、今、生物系の中では高い点数の学生が来るような、人気のある学科に育ちつつあるという状況でございます。
 もう一つは大学院の方です。これも東京大学の例ばかり申し上げて恐縮ですけれども、東京大学以外に余り系統的に教えていらっしゃるところがないので、東京大学の例を持ち出しますけれども。先の教育プログラムが走っているのと並行しまして、この大学院を作ってほしいということをお願いしました。それで2003年に柏キャンパスの新領域創成科学研究科というところで、こういうものが立ち上がってきました。ここで入試は生物系、情報系どちらも選択問題にして、学生をなるべく受け入れるようにしたんですけれども、現実は問題がありまして、入学後にプログラミングができる人とできない人が混在して、教員の負担が非常に大きくて、いろいろな苦労がありました。プログラミングの演習なども初心者向けと熟練者向けにしないといけませんし、それでも受験生にはやはり少しハードルが高いということで、定員割れがずっと続いていたということです。それから就職先は様々なんですが、バイオインフォのための専攻ですけれども、実際にバイオインフォに進む人はほとんどいないというような、悲しい結果になっているわけです。
 時間も来ましたのでこれはちょっと省略しますけれど、もう一つデータベースプロジェクトという、先ほども幾つかお話ししましたけれどデータを整理することが非常に大事だということで、その中で内閣府、文科省その他のところでプロジェクトがスタートしていると。この中でも、いわゆるデータベースを作るような人材の教育ですとか、データベースの使い方の教材作成だとか、こういうことをやっています。
 あともう一つは、どんな人材が必要なのかということのアンケートをとったりして、それを踏まえた人材育成策の提言をしているということです。
 バイオインフォマティクスは人が足りない、足りないと言われるんですけれども、皆さん話してみると、求めている人が大分違うと。いわゆる自分のデータを解析するお手伝いをしてくれる人を求めている人もいれば、あるいはもっと新しいアルゴリズムを作ってくれる方を期待しているケースもあって、そこのところを分類しないと、どういう人をどう育てるのかということが、いつも議論がかみ合わないまま来ましたので、私どもが整理をしました。これには、バイオインフォと言っているのは11項目あるんですが、11項目の人材に分類して、どういう人材が今、どこで足りないのか、そのためにはどういうような、例えばこの5番目の人を育てるには、どういうふうにすればいいのかというようなところから解きほぐしてやっておりますけれども、なかなか問題は解決していないという状況でございます。
 今、ざっと日本の中での取組を御紹介いたしましたけれども、海外では、バイオインフォマティクスの教育というのは、ゲノムプロジェクトがスタートしまして急速に立ち上がってまいりました。それでこれはほんの一部で、ある国際学会が集計したものですけれども、ここにあるように非常に多くのところで教育プログラムが立ち上がっております。
 もう一つ欧米で言えることは、日本の場合、生物系からこのバイオインフォマティクスに入る人は非常に少ないんですけれども、欧米では生物とか化学とかそういうところから、このバイオインフォマティクスをやるという人が多くて、これはあくまでもバイオインフォマティクスの教育ですけれども、それ以外のところからも人材が出てくるということで、大きな差が開きつつあるというような状況でございます。
 さて、最後にこれでまとめますけれども、今お話ししたように、ここ20年ぐらい非常に多くの取組が行われてきました。ただいずれも、非常に小規模で単発的なもので、そのときの思いつきといったらちょっと言い方は悪いですけれども、どういう人材が必要で、そのためにどういうようなプログラムを用意すべきなのかということは、それほど深く考えずにやってきたというところがあるかと思います。
 学生としては、生物とコンピュータと両方学ばないといけないので、例えば私どものところですと、生物実験も学べば、プログラミング演習もしないといけないということで、相当ハードな負担になります。別な言い方をしますと、ある種のダブルメジャー的なことを学ばないといけないと。だけどそれほど得るものはないということで、先ほど申しましたように学生の人気というのはまだまだ低いと。大学院への受験生なども余り多くないというような状況になっています。
 もう一つは、大学院教育だとなかなかやはり難しくて、やはり学部から少しやらないと、例えば実験系に入ってしまいますと、なかなかコンピュータのことを学ぶ機会がない、あるいはそれを教えてくれるところがないということなので、やはり学部教育からある程度考えていかないと、日本の教育体制では難しいのかなというふうに思います。
 それから教員の負担がやはり非常に大きいです。いろいろなことを教えないといけないわけですから、特に先ほど申しましたプログラミングにしても非常にできる学生とできない学生がいますので、その両方を別のプログラムで教えないといけない。まとめますと必要な人材の具体化、明確化というのが、皆さんインフォマティクスが大事だ、大事だとおっしゃるんだけれども、どういう人材をどの程度、どういうふうに教育するかということの明確化が足りなかったのかなと。
 ネガティブなことをいろいろ申しましたけれど、実はそれなりに人材は育っています。ただ非常に需要の伸びが大きいので、追いついていないというふうに考えた方がいいかと思います。
 それから、アンケートをとったり何かいたしましたけれども、学生がこの分野に飛び込んでこないのは、やはりキャリアパスの問題で、アカデミックもそうですけれども、産業界のポジションが非常に少ない。製薬企業の人などとお話ししますと、よく人材が足りないとおっしゃるんですけれども、じゃあ、実際何人採ってくださるんですかと聞くと、やはり毎年1人か2人ぐらいしか採用しないということで、情報系とか電気、電子になりますと、毎年100人、200人の単位で学生を採りますので、勢い学生は、プログラミングができるとどうしてもそちらの方向に進んでしまうという傾向があります。
 それから、キャリアパスも重要ですけれども、人材も非常に多様ですので、どういう人にどういうようなキャリアパスを提供するのかということをもう少し、きちっと設計しないといけない。それからやはりその背後にある評価の仕組みということも大きいと。
 最後に、今日お話しできませんでしたけれども、やはり生物系は特に専門用語とか概念が非常に多いものですから、それが参入障壁になっています。これを越えるにはやはり使いやすいデータベースだとか、素人でも使えるようなものとか、知識の整理とか、こういうことが必要になってきますし、あるいはいろいろなデータを使いたくてもやはりデータの囲い込みというのが起きているので、どこどこ先生の言うことを聞かないとなかなかそのデータにアクセスできないというようなこともありますので、このあたりを解決していかないといけないと。このような状況でございます。
 最後に、私はもともとコンピュータが専門で、その中でもデータベースとか、最近の言葉ですと人工知能、推論とか知識表現とか情報検索、そういうことをやってきたんですけれども、ゲノムプロジェクトが始まる頃にいろいろお手伝いをしていて、結局このバイオインフォマティクスの世界に入りました。それで東大の医科学研究所のヒトゲノム解析センターというところに行って、ゲノムプロジェクトをやっていたんですけれど、次に、人が足りないということで大学院を作ろうということで、今度柏キャンパスに行って大学院を作りました。今度は大学院では駄目だというので学部教育で、理学系に移って学部教育をやっていると。そのようなことでどんどん、どんどん下に下がってきているということです。ほかの方と話しますと、もう少しプログラミングなどのことを含めると、高校教育の問題じゃないかとおっしゃる方もいるので、なかなか日本の構造的な問題なのかなというふうにも思っております。
 以上でございます。

【若山主査】
 どうも大変な、御準備を含めてありがとうございました。
 それでは今のお話に関しまして、御意見とか御質問とかございましたら、どうぞお願いいたします。

【合原委員】
 東大でこううまくいったのは、高木先生がいたからというのが大きいと思うんですよね。僕自身も早い時期に、高木先生に遺伝子ネットワークとかの重要性を教えてもらったので、結構世界でそういう研究を始める数年前から始められたので、すごく有り難かったです。
 お聞きしたいのは、やはり産業界のポジションが日本は少ないかなという点です。アメリカとかと比べて。就職しても外資系だったりしますよね。だからどういうふうにすれば日本でこういうバイオ系の、アメリカみたいにベンチャーがどんどん出てくるのかなというのが一つと、それから3ページで必要な科目みたいなものがリストアップされているんですけれど、これは我々数理工学から見ると、非常にぴったりはまるんですけれども、数学科から見たときにはやはり、数学科のカリキュラムとはかなり違いますよね。その辺は、数学科の人がこういうものに入っていくときにどういうふうにすればいいのか、その辺の御意見をお聞きしたいんですけれども。

【高木委員】
 まず1番目の産業界の問題ですが、徐々に改善をされてきていると思うんですが、やはり産業界でバイオインフォマティクスを学んだから就職が非常に有利になるということが、ほとんどないというのが現状だろうと思います。それは先ほど申し上げましたいわゆる製薬企業を初めとしたバイオ産業が、なかなかそのあたりの理解がないというより、余り基礎研究をやる体力が欧米に比べて少ないと。製薬企業は、誤解されると困るんですけれど、やはり規模が一桁ぐらい欧米の企業と違いますので、欧米では基礎のところからやるんですけれど、日本はなかなかそこのところを自社の中でやるというのは難しいというふうに聞いております。ある人に言わせると、これを解消するには日本のバイオ産業を世界のトップ3ぐらいに大きくするようなものにすれば、解消するんじゃないかと。日本はほかの分野は、自動車にしてもテレビにしても、世界のトップ3ぐらいにそれぞれ入っていると思うんですが、製薬とかそういうのはなかなかそうはいかない。そうするとやはり難しいんじゃないかということをおっしゃる。私はこれ、人から聞いた話なのでそこが本当にそうなのかどうかは分からないですけれども、そういうような構造があって、そこを何とか解消しないと、いわゆる自動車産業、電機産業のように毎年何十人、100人、200人の規模で人を採るということはないので、そうすると学生にとってはやはり賭けになってしまうと。というようなことをおっしゃっています。
 アカデミックも、皆さんバイオインフォマティクスが欲しいということをおっしゃる。いろいろな生物系、医学系の方も皆さんおっしゃるんです。私にも、どこかにいい人いませんかと。ただ、じゃあ、どういうポジションですかと聞くと、ポスドクから始めて、その次はちょっと成果が出れば助教になってみたいな話で、しかも成果が出るというのは、生物系で評価される論文を書かないと上に上がっていけない。アカデミックのポジションもそういう意味ではあるようでなかなか、それほどないというような状況ですので、結構厳しいのかなというふうには思います。
 それから、先ほど情報科学と数学との距離の話をされましたが、確かにあるんですけれども、今これはたまたま情報科学のキーワードで書いておりますけれども、実際には割と数学に、純粋数学とは違いますけれども、近いところもあるので、ここがちょっと我田引水的にとられると困るんですけれども、バイオインフォマティクスをやっているような人が間に入れば、情報系あるいは数理系から入ってきたような人がこの分野に多数いますので、そうした人たちが仲介すればそのあたりのコミュニケーションはとれるのかなというふうには思っています。それで少し進んでいけるのかなと思っています。

【若山主査】
 ありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。

【中川委員】
 16ページの表の中でベストの人材というのは1から11までの分類の中でどれでしょうか?

【高木委員】
 両方できるということで、この中では自分で問題を発見して、自分で新規のアルゴリズムを作れると。だから1番ですかね。

【中川委員】
 ウエットの方は、6番でしょうか?

【高木委員】
 ウエットの方は大体皆さん、4番が理想なんでしょうけれども、やはり6番とか5番あたりを目指していると。私の経験を先ほど申しましたように、いろいろなことを経験してきているんですけれども、生物系の研究者から言われて、この問題を解いてくださいって言われて、解いていて2年ぐらいするとまた別のデータが出てきて、別の問題を解かないといけなくなるんですね。そこで作ったアルゴリズムとかいうのはもう、それなりには役に立つんですけど、結局は余り役に立たない。そうするとやはり人から与えられた問題ではなくて、自分で5年先にはどういうデータが出てきて、どういう解析をしないといけないかを見越した研究をしないと、どうしてもうまくいかないと。そのためにはここで言う例えば1番で、自分で生物の問題を見付けて形式化できないと、どうしてもお手伝いする人材になってしまうというふうに考えています。

【若山主査】
 ありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。

【樋口委員】
 先生の今の最後の御発言に関係した質問です。先ほどの先生の説明で、ダブルメジャーぐらいの大変な勉強を、教える方も大変な努力をしないといけないという話をされましたが、一方バイオインフォマティクスというのは、いわゆる分野横断的な学問とドメインサイエンスの接点になっている。そうすると、そもそもそこで一定の型というのが規定されているんじゃないかと思います。分野を超えるようなところをやろうとした場合には、やはりバイオインフォマティクスで規定されるような分野横断だけではなくて、もっと共通のところ、つまりもっとほかの分野にも行けるような教育というのが、必要なんじゃないかなと思います。いろいろ考えてはいらっしゃると思いますけれど、その辺はどのようにお考えでしょうか?

【高木委員】
 おっしゃるとおりだと思います。ただ、現実には今そこまで手が回っていないというだけでして、やはりバイオインフォマティクスのこれが全国の大学に幾つも、例えば教育するような学科とか専攻ができてきて、そうすればもう少し余裕も出てきて、いろいろな、今先生がおっしゃったようにちょっと違うタイプの人を専攻に入れて、また違う方向の展開をするとか、あると思うんです。先ほどの私の資料でいうと、6ページに書いたように非常に様々な、生命科学一つとりましても、情報技術だけじゃなくて計測技術とか法律面の話だとか、様々なものがございますので、本来はそういういろいろなところでうまく連携したり、分野横断できればいいと思うんですが、まだそこまで、ほんの少ない人数で学科を運営したりしているので、そういうちょっと違うタイプの人を受け入れてやっていくというのは、なかなか困難な状況になっていると。でも目指すべきはそういうことだというふうには思います。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 先ほどの16ページの6番とかのところに、情報系とか、その後に数学系の研究者もというふうに書いていただけるといいなと、ちょっと思いました。
 それからちょっとコメントですけれど、先ほどの大企業ですけれども、私、今研究のほかに産学官連携担当というのを九州大学でやっているんですけれども、多くの産業界の人たちから聞いて事実だと思っているのは、昔は日本の大きな企業は中央研究所があって、本当に基礎のところからやってきたけれども、それがなくなってきているというのが事実で、そういう意味ではバイオ系にしてもこれからぐっと、中央研究所みたいなのができてというのは難しいのかなと。そんなふうにも感じました。
 ほかにございませんでしょうか。
 それでは次に大島先生から、異分野との研究交流を通じた新領域の創成と人材育成について、お話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大島委員】
 大島です。私の話は数学・諸科学の諸科学の立場からということで、お話しさせていただきたいと思います。お手持ちの資料に沿ってお話をいたしますが、最初の資料と最後の資料だけ、お手持ちにないです。私の研究というか自己紹介も兼ねまして、話を致します。私自身は機械系の出身でございます。機械系の中でもバイオ系を研究しております。こちらに図がありますように、高木先生がバイオインフォマティクスで、こちらの側(がわ)になると思います。一方、私はどちらかというと器官とか細胞などの、マクロな側での研究を行っています。また、どちらかというと力学という観点から研究をしていて、機械の中でも2000年ぐらいから始まった比較的新しい分野です。
 その中で、ちょうど上段にありますようにバイオメカニクスの中で、シミュレーションを中心にやっております。一方で、検証のための実験もやっています。実験は様々な機関と共同研究を行っています。
 医工連携のため、後述しますが、医学系の先生との共同研究としては比較的多いです。一方で、私自身工学系に所属しているため、工学的な意義を見いだすということも大事であり、図に示されている形で、研究を進めております。その中で人材育成という点について、本日は特に大学院教育を中心にお話しさせていただきたいと思います。
 私は、本務は情報学環でして、生産技術研究所に兼担しているという形です。生産技術研究所は、機械系だけではなくて工学全般の先生がいらっしゃいます。合原先生も所属していらっしゃいます。学生は工学系の機械系の学生が来ます。一方、組織として情報学環は比較的新しいところで、文理融合のなかなかユニークなところです。工学系の機械は非常に伝統的です。そのため、入試も含めて研究指導も違います。どのような大学教育が行われているかということと、工学系にいるということにより、異分野との研究交流と、企業との共同研究等について、そして学生を含めた教育をそのようにしているかについてふれたいと思います。また、国際的な研究交流という点についてもふれます。特に、生産技術研究所及び情報学環は大学院組織なため、学生の数が少ないですが、様々な国から学生が来ます。その観点から話もして、最後にまとめにしたいと思います。
 冒頭申し上げましたように、私は二つのところに所属しています。情報学環という組織は東京大学全学に渡る情報をめぐる領域を流動的に連携させるネットワーク組織で、文理融合のため、例えば法学部とか文学部の方もいらっしゃいます。また、私たちのように工学系であったり、医学系の先生もいらっしゃいます。このように4コースであり、文化系が二つのコースと、理科系の二コースで構成されています。また、国際的なアジアという横断コースがあり、厳密に言うと5コースあります。文系と理系のコースが融合し文科系の先生と理科系の先生が一緒に研究を行うことがあります。
 一方、工学系の機械工学ですが、機械系は産業界の基盤技術であるため、産業界に広く活躍できる人材の育成が念頭に置かれています。四力が確固としたベースになっています。四力は、材料力学、熱力学、流体力学、機械工学で、私はその中の流体力学を専攻しています。また、最近は新しい分野として設計・生産、いわゆるIoTに関連した分野や、私が行っているバイオなどの比較的最近もありますが、四力がベースになった学問体系になっています。
 大学院には、入試がございます。情報学環は文理融合のため、私の所属している理科系では、芸術系の方も入学します。入試としては必ず数学を課しています。工学系の機械工学も、入試に数学を課しています。
 学生は入試を経て、入学するため、情報学環では文理融合もあり、理科系の方が文系の科目を取り、反対に文系の方が理科系の科目を取ることが必修になっています。この部分は文科系、理科系関わらず取らないといけない必修科目になっています。選択科目は、私は先端表現コースに所属していますが、文科系とか芸術系の方がいらっしゃるため、学部で数学系の授業あるいは工学系の授業を取っていない場合があります。そのため、例えば信号処理であったり数値解析、これは私が教えていますが、あとCGであったり、学部レベルの授業を、専門に進む際の基礎として教えているということがあります。
 一方、工学系の機械工学は、大学院でも四力に沿ったような授業があり、プラス、共通基盤という分野があります。これはApplied Mathematics for Mechanical Engineeringということで、選択必修ですが、大半の学生が数学の授業を履修しています。選択必修ですが、Mathematicsをきちんと開講するというのは、機械工学科の中でも比較的珍しいのではないかと思います。また、機械系の数値解析のため、数値解析の復習とともにアドバンスの数値解析ということも教えています。ちなみに、私が今、授業を教えています。
 以上、授業としての特徴です。東大は情報学環の文理融合であっても、機械工学でも、数学には非常に力を入れているのではないかと思います。
 ここから先はちょっと私の研究室に特化します。東大の学環の学生、機械の学生とともに、医学系の学生もいます。医学部では現在のカリキュラムとして、博士課程に進んだ場合には、少なくとも1年は絶対に研究に従事することになっています。そのため、博士課程の学生が、一年だけではなくて二、三年と長い期間にわたり、私の研究室に研究生として来ています。実際にシミュレーションを、医学部の立場でやっていらっしゃいます。東大の医学部の脳外科の先生とか、横浜市立の先生とか、医科歯科の先生がいらっしゃっています。あと他大学として芝浦工業大学や、東京都市大学は生産技術研究所と協定も結んでいるということもあり、学生が来ています。
 一方、学環は副指導員制度というのがあります。例えば文科系の先生が副指導員となり、学科自体で融合領域を育てていこうという事に力を入れており、先生自身が一緒になって学生を指導しています。
 一方機械では、入学のときに指導教員が決まっているということもあり、副指導員制度はないですが、様々な研究室と研究が盛んです。また一方で、生産技術研究所にいるということもあり、様々な分野の先生とも一緒に共同研究や研究をさせていただいています。合原先生とは実際にポスドクの方も含めて、一緒に研究をやっています。
 このように、研究室レベルではございますが、学生を通していろいろな形で交流を深め、活発に活動しています。機械の分野では、画像処理をやっている方は余りいないのですが、学環は情報系の方もいらっしゃるため、画像処理やモデリングとかCG、インターフェースの研究ができ、学生を通して様々な先生と共同で研究をしています。
 一方で機械の先生は、計測であったり、シミュレーションが強いので、分野を横断して、いろいろな研究ができる環境なのではないかと思います。
 必ず学生に携わってもらって研究を進めていますので、学生も非常に融合的な領域にいます。また、研究だけではなくて、企業との共同研究でも、同様に必ず学生を一緒に巻き込んで行っています。重工関係との共同研究が多いですが、バイオに限らず私自身が流体をやっているため、基礎的な流体関連の研究、あるいはアプリケーションが心臓ポンプなどのバイオ関連と、様々な研究、共同研究をやっています。また、機械・装置関連や、医療機器の研究に携わることが多いです。
 ちょっとここで一つ申し上げたいのが、社会人博士の受入れについてです。会社にとっても、研究室にとっても、双方にとってメリットが大きいと思います。社会人のドクターの方が研究室に来ることによって、ある程度専門領域を2年、3年かけてじっくりきちんと修得し、得られた知識・技術を持って会社に帰られるので、その方をコアにしてまた会社で広がるということができます。一方で研究室は、学部から格別の目的意識なく大学院に上がってきた学生が多いです。会社の方は目的意識をはっきり持って来ている様子に接し、交流することにより、学生にとっても刺激となり、目的意識が持てるという点です。
 あともう一つ、会社にとってのメリットは、インターンシップであったり、研究会を通してほかの研究室の学生が会社に就職するという、ネットワークの形成に役立っています。特に博士課程の学生にはメリットがあるのではないかと思っています。

【若山主査】
 ちょっと急いでいただければ。

【大島委員】
 はい、分かりました。済みません。インターナショナル・ジャーナルの設立についてです。新しい分野だということで、シミュレーションに関する数値解析のジャーナルはありましたが、バイオメディカル系のジャーナルはなかったです。バイオ・医療応用をターゲットに分離し、ジャーナルを立ち上げたことにより、新しい分野ができています。また、国際会議も行っていますので、分野の活発化、及びこのような活動を通して、次世代の学生や研究者の育成にも貢献しているのではないかと思います。
 まとめです。学生を含めた教員の交流は非常に大事だと思います。特に、授業のカリキュラムでは、学生に対してどのような授業を行うかを検討する必要があるため、大事だと思います。
 企業との共同研究は、社会人博士の促進を、システムを含めて行うと良いのではないかと思っています。共同研究というものはキャリアパスに結びつくのではないかと思います。
 最後のまとめですが、評価が大事だと思います。分野をまたいだ融合領域では、企業との共同研究、国際共同などが、教員の評価につながるということは非常に大事だと思います。生産技術研究所では評価の指標になっているため、先生にとっても、学生にとっても、一つの目標になっています。
 共同研究をする際に、医学系の場合には御用聞きに陥ることもありますので、お互いにウイン・ウインになるように、目的や目標をきちんと設定すること、また、企業とではスケジュールとアウトカムが異なっているので、学生の教育目的もあるということをあらかじめ理解いただいた上で、行うことが大事なのではないかと思っています。
 知的財産については、今後大事になると思います。特に、外国人学生の場合には、問題となる可能性があり、課題ではないかと思います。
 以上になります。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは委員の先生方から、御質問等、御意見ございましたら、どうぞお願いします。

【本間委員】
 社会人の博士の話が出てきたと思うんですけれども、やはりそれは企業にとっても2年間ぐらい従業員を外に出すというのには、企業側もジャッジが必要だと思うんですけれど、どのような感じでそもそも社会人博士の方たちが先生のところにいらっしゃるのか、またどういう事前活動があったのか。

【大島委員】
 そうですね、比較的共同研究をやっていて、そこから発展して社会人ドクターとして来るというケースが多いです。社会人ドクターも入試を受けないといけないです。また、おっしゃるように企業の方の負担は小さくはないです。入試、及び2年間あるいは3年間の大学に来て研究を行うため、事前に打ち合わせは大事です。そのため、計画は立てた上での社会人ドクターの受入れになるかと思います。

【本間委員】
 ありがとうございます。

【合原委員】
 うちも割と社会人ドクターが多いんですけど、修士を出て企業に就職して、博士課程に戻ってきた場合は割とスムーズなんですよ。基礎ができているので。しかしながら、そうでない学生で入ってきたときは、やはり数理の部分が弱いし、それからそんなに時間もとれないですよね、仕事もちょっとあったりして。

【本間委員】
 授業や何かで。

【合原委員】
 ええ。だからそこは、やはり結構苦労する学生が多いですね。なかなか三年間で学位を取るというのは難しいです、その場合は。

【若山主査】
 そうですね。東京だと比較的それでもうまくいくというところがあると思うんですけれども、私たちのところ、九州大学でも社会人ドクターはおりますけれども、皆さん東京から通われている方の方が多いので、なかなか負担は大きいなという気がいたします。

【大島委員】
 そうですね、やり方も幾つかあって、週に1回なり何回かいらっしゃるという社会人ドクターの方もいらっしゃいますし、東大の方がベースになって、反対に会社に月一回のミーティングで行かれるという方もいらっしゃいます。実験装置や、研究のテーマにもよると思います。お互いに話しながら、柔軟に対応することになるかと思います。

【若山主査】
 それぞれの会社固有の対応が必要なんでしょうね。

【大島委員】
 そうですね、はい。

【若山主査】
 ほかにございませんでしょうか。

【森委員】
 初歩的な質問ですが、社会人は会社がそうやって社員を大学に送る場合、何を期待するのか、つまり学位を単に取らせるというのではなくて、何か会社の業務に役に立つことを想定しているのでしょうか。

【大島委員】
 そうですね。比較的多いのは、修士を既にとっていて博士課程に入る方が多いです。その際に、例えばMEMSを私の研究室でやっているため、従来の機械の分野とは異なる新しい分野を学ばせたいという場合があります。あるいは、化学の分野の仕事に携わっていたが、流体の知識の必要性が増し、流体の勉強をする必要が生じた。やはり、ある程度のベースはありますが、新しい分野を手がける際に、大学院で二、三年かけて修得しようというのが、会社の意向のように思います。

【森委員】
 実際に学んだことをすぐに使えることを期待して、来ているわけですか。

【大島委員】
 そうですね。企業に戻った際に、研究グループのヘッドになって、新しく会社の研究組織を導いていらっしゃるというケースが結構多いです。幹部候補を送られるケースが多く見受けられます。

【若山主査】
 ありがとうございました。
 それでは時間も押していますので、次に分野横断的な副専攻の取組などにおける実情と課題について、必要な方策も含めて、今井委員から御紹介いただきたいと思います。

【今井委員】
 中央大学の今井と申します。よろしくお願いいたします。
 最初に私の自己紹介も兼ねて職歴などをまず、お話します。私は実は数学専攻のドクターコースまで行きましたので、9年間数学ばかりをやっていました。その後、東大の工学部計数工学科に就職いたしました。計数工学科については前々回の委員会で合原先生が詳しく説明してくださったので、学科の説明は省略いたします。就職したのがそこでしたので、就職した瞬間から純粋数学から離れて、研究室の学生がやっていることであるとか、伊理正夫先生の研究室でしたので、先生が解きたいと思っていらした問題が、数学的な証明が必要で、そこの部分を私ならできるかなということで、取り掛かりました。3年間いたのですが、1年間に1本ずつ山口昌哉先生がエディターをされていたJapan Journal Applied mathematicsという雑誌に論文を出させていただきました。
 その後、九州工業大学に情報工学部が日本で初めてできたということで、飯塚キャンパスの情報科学センターという大型計算機センターのようなところに助手で移りました。東大にいたころまでは全く計算機を触ったことがなかったのですが、そこで一気にいろいろな言語と大型計算機の管理をしていました。そこは2年間しかいませんでしたけれども、大型計算機やワークステーションの扱いを一気に覚えました。研究としてはこの間もアルゴリズム、特に計算幾何学を研究したという2年間でした。
 その後、少し出身校の数学科に戻って、アルゴリズムの授業であるとか、演習のお手伝いとかをして、これも任期があったので、中央大学の理学部情報工学科が1992年に立ち上がるということで、そこに助教授で移って、今に至っています。ここからが情報工学の研究分野になります。
 ここまでの経歴で、やはり分野によって生かせる数学が違うということを感じました。この委員会では合原先生がいらっしゃる計数工学科は数学に入っているのですが、それでもやはり純粋数学の方から行くと、ちょっと雰囲気が違いました。で、数学出身だからできた証明というのもあったというのが、一つ励みになったかなと思います。

【合原委員】
 ありがとうございます。

【今井委員】
 究極をいうと、そのときに必要な知識を得られる能力というのを養うのは、とても難しいのですが、その能力が必要だということと、それから誰に聞けば分かるのかということを知っているということが非常に大事で、どちらかというと工学系の学科の方が、いろいろな人脈があって、「これ、あの人に聞けばいいかな」ということが、よく分かっているのではないかなというような気が、個人的にはしています。でもそうは言っても、一度もやったことのないことに取り組むのは大変なので、どこかで一度見たとか、どこかで聞いたということが大事ではないかという気がしています。
 ここから、中央大学の例を少しお話しさせていただこうと思います。中央大学には理工学部の中に、理学部系の学科と工学系の学科が一緒にあります。その上に理工学研究科があります。ほとんどの学科が自分の学科の上に専攻が乗っているという形をしているのですが、情報セキュリティ専攻というのは、博士後期課程しかなくて、これはこの4つの星印が付いている学科の先生が何人かずつ所属して、専攻を構成しています。
 取組としては、いろいろな大学でやっていらっしゃるとは思いますが、他学科・他専攻履修はできますし、オープンドメイン科目という他研究科の科目も取ることが可能です。理工学部から他学部というのは、キャンパスが違うので、多少往復に時間が掛かってしまいますが、取ろうと思えば取れるような仕組みはできています。それから他大学の大学院との単位の互換というのもあるので、中央大学の学生が一駅先にあるお茶の水女子大学に行って単位を取ることもできます。数学専攻はもっと多くの大学と提携をしていて、ほかの大学に行って授業を取ることもできます。私がいたときもそういうシステムができていたので、私も上智大学とか学習院大学に行って単位を取った記憶があります。
 下の二つは先導的ITスペシャリストという文科省の取組のときに始めたもので、先端ITスペシャリストの方は2012年に一応終了していますが、ISSスクエア、情報セキュリティの人材育成プログラムはまだそのまま活動は続けています。情報セキュリティ大学院大学とか、東大との連携で、遠隔授業で授業をしているような取組をやっています。ただ遠隔授業ですと、他大学との学年歴が違うとか、授業の開始時間が違うので、そこはなかなか難しいところがあるなという感じです。
 先端ITスペシャリスト育成プログラムの方は、ここに書きましたけれども、これらの企業に3週間くらいインターンに行かなければいけないという縛りがあったのですが、でも学生にとってはとてもいい経験で、夏休みの間にほぼ1か月インターンに行って、そこの会社に就職した、そこの研究所に就職できた学生も何人かいたりします。こちらは終わってしまいましたが、Mozilla Japanの方は、今でも非常勤講師として授業には来てくださっています。
 ここからは副専攻の話をさせていただこうと思います。 2003年から副専攻の制度を導入しています。今動いているのがこの五つで、多少名前が変わってしまっていたり、途中から始めたものもあります。それから下の二つは、主専攻の方で正式にコースの中に入れたので、副専攻としては終了しています。
 この図は,副専攻の概念図です。データ科学に、アクチュアリが今年から入ったのですが、この図ではデータ科学のままになっています。
 人数の推移ですが、こちら側が研究科全体です。研究科全体としては上がったり下がったり、いろいろな要因があって変わってはいます。どうしてかというのは、はっきり学生に聞いたわけではないんですが、そんな話も後でさせていただこうと思います。
 次は登録者数と修了者数なのですが、修士に入ったときに副専攻を取りますと宣言した人と修了した人の人数は異なります。単位を修得して、リサーチペーパーを書いて認めてもらわないと修了はできません。
 2013年から副専攻を取りますと宣言をしなくても、副専攻の科目を修得することができる制度ができました。10単位までなのですが、そうやって修了書は要らないけれども、いろいろな科目をつまみ食いするという学生が現れたというのが、2013年です。
 防災・危機管理は副専攻とはいっても、都市環境の人たちが防災・危機管理を取っていて、他専攻の人たちは余り取っていません。
 環境・生命は,幾つかの専攻から履修者がいます。
 データ科学においては,最初は数学科の学生が履修していました。副専攻はやはり先生方の人材もあるので、主専攻から何人かずつが出て、副専攻を構成しています。そのときにたまたまその専攻の先生が副専攻をやっていると、そこの学生はその副専攻を取る傾向があって、この頃は数学科の先生がデータ科学の副専攻を担当されていたというのも、一つ要因かなと思います。
 ナノテクノロジーは、圧倒的に応用化学専攻の学生が多いとおもいます。
 電子社会・情報セキュリティ副専攻は、やはり人数的には多いです。情報専攻の学生が多いですね。
 最後が感性ロボティクスで、これはスタートが少し遅く、2006年からスタートです。こちらは逆に経営システム工学科が圧倒的に占めています。
 リサーチペーパーを書かないと本当は修了書がもらえないのですけれども、2013年から10単位まで副専攻の科目を履修できるようになったために、積極的にいろいろなところに出て、いろいろな科目を取っている学生も中にはいます。この3月に修了した情報工学専攻の学生の中には、内視鏡の研究をしている研究室の学生で、生命の先生のところの授業をいっぱい取ったという学生も、中にはいます。
 一方、先ほども申し上げたように、副専攻に本当になっているのかというのが疑問視される。つまり自分の専攻にいる先生の副専攻の科目を取っているという傾向も見られて、これは本当に副専攻といえるのかとも思います。
 最近の学生を見ていて思うことは、東京大学とかだと優秀な学生さんが多いのでしょうけれども、私たちのような私立のところでは、学生に余裕がない気がちょっとしています。M1の後ろからM2の最初に就活があるということを考えると、どうも、余り時間を取られるようなことは避けておこうというような傾向も、少しはあるのかなと思います。そこは確かな情報があってそう言っているわけではないのですが、何となく日頃の様子を見ていると、そういう傾向があるのかなと思っています。ちょっと残念な気もしています。数学専攻の学生が私のところにリサーチペーパーを書きに来ることがありますが、プログラムを一から書くということに慣れていなかったのか、結局リサーチペーパーを最後まで書き上げることができなくて、彼は断念してしまいました。多分時間をとってやればできたはずだろうと思っています。ただそれに割く時間がちょっとなかったのではないかと、いう気はしています。
 先ほど事務局からも進路に関するデータがあったと思いますが、私の方でも書いてみました。数学科から他専攻に行きたいという学生がどのぐらいいるのかなというのが、私の疑問です。他専攻と言っているのは、私のイメージでは情報工学専攻のようなところも他専攻に入れてしまっています。そのような学生がいることも事実です。いなくはない。東京大学情報理工学研究科には数学科卒の学生や経済学部の学生がいるようなので、いることは確かだと思っています。ただどのぐらい行きたいと思っているのだろうか。わざわざそうやって道を変えようと思う人は、どのぐらいいるのかなということが、ちょっと知りたいなと思っているところです。
 それから、数学科の修士はやはり、学部卒も修士も、教員になる人が多いことは分かっています。それから一般企業も、先ほどデータを見せていただきましたけれども、修士からだと一般企業へたくさん行くのだろうと思います。もちろん情報工学科などのところからは、修士を出ても一般企業であったり、企業の研究所にも割と多くの学生が行きます。
 企業の研究所に博士号を取ってから行くという人ももちろんいますし、そこから取りに来るという人もいます。先ほどの大島先生の話にありましたけれども、セキュリティの分野ではかなりの人数の方が博士号を取りに大学に来たりしています。中にはもう既にたくさん論文を書かれていて、博士号を1年で取って企業に帰るという方もいたりします。
 ただ、ここは、数学専攻の博士課程の方たちは、そういう双方向はちょっと難しいのではないかと思います。企業の研究所から数学専攻の博士課程にドクターを取りに来るのは、ちょっと難しいかなという気はしているんですけれど、そこはどうなんでしょうかというのが、私の疑問です。
 それから、博士課程を出て企業に行く人の割合は、先ほどのデータでは少なかったのですが、行きたいと思っている人はどのぐらいいるんでしょうかというのも、一つ疑問に思っていることです。本当に行きたい人がたくさんいて行けないのであれば、その道を何か探さなければいけないという気はします。数学専攻の修士課程から一般企業に就職する場合、どのぐらい数学を生かせる部署につけるのかということも、気になっているところです。逆にSEで就職するのであれば、数学専攻に行ったことがどれだけ役に立っているのだろうか、そこはどうなんでしょうという、疑問ばかりで申し訳ないですけれども。
 逆に企業側では、数学専攻の博士課程の学生に入ってきてほしいと思われるのであれば、どのくらいのレベルの方を求めているのか。つまり数学を極めた専門の人が欲しいと思っているのか、それともそうではないのかというところを切り分けないと、人材育成を考えたときにキャリアを呈示することが難しいのではないかと思います。
 足りないのかなと思っていることはこのあたりで、数学イノベーションとしては、中高の教育の場で数学が使われていることをもう少し見せたいと、私は思っております。私自身はさっき言いましたように数学科にいたので、教員免許も取りました。大学に入った頃は中高の先生になるかなと思っていましたので,教員免許をとりました。そのため,ずっと教員養成のカリキュラムとか、教育実習に行く学生の指導とかもずっとやってきていますが、学生に、先生になるのであれば、中高生に使える数学というものをはっきり見せてあげられるような、題材をたくさん集めて、行ってほしいということを伝えています。
 それから、数学的理論と応用の場での使い方がやはり違うので、そこは両方向の立場でそのことを理解する必要があるのではないかと思っています。
 今回,何回も出てきていますが、業績の評価の仕方は、相互理解と妥当な評価の仕組みがないと、人が流動的には動けないように思います。違う分野で活躍しようと思ったときに、その分野で今までやってきたことを正しく評価してもらえないと、就職もできないかもしれないし、分野を移ることもできないのではないかと思っています。
 応用の立場から知りたいこと、何をどこまで知りたいのかということをきちんと把握した上で、それに見合った人を探すというマッチングの仕組みが必要ではないかと思っています。
 以上です。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは先生方から御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。

【合原委員】
 純粋数学っぽい副専攻というのはないんですか。逆もあっていいんじゃないかという気がするんです。きょうの後の議論とも関係するんですけれど、数学から諸科学、他分野にという方向ばかり議論されているんですけれど、結構僕の周辺には逆の方向を考えている若い人も結構いて、そういう副専攻もあってもいいかなという気もしたんですが。

【今井委員】
 電子社会情報セキュリティ専攻の中には数学科の先生方もいて、情報の学生はその先生の代数幾何の授業であったり、そういう授業を取りに行ったりすることはあります。今ちょっとカリキュラムが全部手元にないので、今も可能かというのはちょっと分からないのですが、そういう科目も中にはあります。

【國府委員】
 関連することですが、副専攻での授業は、主専攻の学生に対する授業とは違う形でやるのですか。それとも一緒になってやるのですか。

【今井委員】
 一緒のものもあります。重ねてあるものもありますし、今は学生の利益のためにかなり重ねたような気がします。全く別枠にしてしまうと、主専攻の修了単位にならなくなってしまうので、倍ぐらい取らないと修了はできないし、副専攻も取れないことになってしまうので、重ね始めたところがあります。

【國府委員】
 先ほど合原さんが言われたような趣旨ですと、副専攻で数学をやりたいという人がいたとして、でも数学的なバックグラウンドが少ないので、主専攻と同じ授業であると理解するのが困難とか、一方でむしろ副専攻としてやる方が、もっと柔軟な授業ができるというメリットがありそうだなと思ったのですが。そういう単位の関係でなかなかできないということなのですね。

【今井委員】
 そうです。他専攻履修もあるのですが、やはり数学専攻の科目を取りにいくと、基礎が違うので、せっかく行こうと思って行ったけれども、分からなかったという学生の声も聞きます。ただ、ほかの専攻が全部同じ基礎かと言われると、そこも違うので、数学専攻以外の専攻の方たち向けの、数学的な副専攻の科目というのを設定するのも、結構難しいかなという気はします。

【森委員】
 これは今井先生への質問というわけではないですが、今、中高の教員になる人というのがありましたね。これに関しては何らかのデータは見つからないんでしょうか。つまりどのぐらい定年退職していくとか、それでこれぐらい必要とか、知りたい気がするんですけれど。少子化で余りそういう人がいないんだったら、どうしても少ないだろうし、辞めていく人はいるからある程度は要るとか、もしできれば知っておきたいんですけれど。

【若山主査】
 これは文部科学省の方で、どうなんでしょう。高等学校なんかですと、県によって随分と違うみたいですね。それはやはり定年とかに関係していると思うんですね。例えば二、三日前に聞いた話ですと、秋田県なんかだと毎年2人ぐらいしか採用がないけれども、神奈川県だと35人ぐらいはあると。ですから、神奈川県の教員採用試験には全国から受けに来るという、そういうふうにおっしゃっているのを聞きました。

【森委員】
 そんなに違うんですか。

【若山主査】
 ええ。これは事実の一端でしかないですけれど。一度そういうのを少し、そんなに精密でなくてよろしいですので。

【合原委員】
 年ごとにフラクチュエーションがありますよね。

【若山主査】
 ありますね。

【今井委員】
 10年ぐらい前でしたでしょうか一気に多くの先生が定年を迎える時期があり,そこまではほとんど教員の採用はないから、教員免許を取っても教員の採用はないという時期があったのですが、一気に定年の方が増えて、それで、一気に採用が増えたという年が確かにありました。

【森委員】
 何か、ある教員系の大学は減らせとか、そういう話がありませんでしたか。

【若山主査】
 そうですね。で、やはり高等学校と小中、中高一貫の学校も私立なんかはありますけれども、やっぱりちょっと様子が違うような気がします。いわゆる高等学校の方は、理学部の数学系の出身の先生が圧倒的に多くて、中小は教育学部の数学専攻の先生が多いと。そんな感じがいたします。
 どうもありがとうございました。
 それでは時間を十分取ることができないんですけれども、冒頭に事務局から説明していただきました論点、紙でいいますと資料1だと思いますが、この後ろにポンチ絵が幾つか付いてございます。育成すべき人材像ということで、数学・数理科学のバックグラウンドを持ち、諸科学・産業と協働できる人材、あるいは諸科学・産業で活躍できる数理的人材、例えば次に3番目で、これらの能力を備えた人材を育成する仕組みですね。数学・数理科学側、あるいは諸科学・産業界における取組も含めて、御意見を頂戴できればと。これは重い課題ですので、次回も引き続き御議論いただくつもりでおりますけれども、御意見、御質問等お願いいたします。どなたからでもどうぞ。
 例えば中川委員から、企業での取組、先ほどもありました修士の人材、数学専攻の人材が使える、数学専攻だからといって採用したいかどうかとか、そのあたりのことも含めて、何か。

【中川委員】
 例えば当社ですと、修士で入る場合は電子・情報の枠の中に数学の人が入ることになると思います。数学科出身の人が数学ができるという保障はありません。SE的な仕事をするケースもあると思います。
 博士になってきますと、専門性が問われますので、数学を活用することを専門分野とする部署がなければ、数学科出身の人材が欲しいということにならないと思います。当社には数理科学という部署はありますが所帯が大きな部署ではありませんので、数年に1人の採用というのが実情です。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。資料1の3番に関して、どれもつながっていると思いますので、御意見頂戴できればと思いますが。

【國府委員】
 ポンチ絵の3ページのところに、さきがけ数学協働領域の第1期の採択者9名のキャリアというのがありまして、9名しかおらず名前や所属も公表されていますので、調べればどの線がどなたかというのは分かるのですが、ここに数学専攻から2名が、諸科学専攻組織というところに行っています。それは5ページの図と対比していただきますと、そこでいうところの数理的人材というのに当たる形に見えるかもしれないですが、実際のところはこの2人の方は数学の研究も続けており、数理的人材というよりは数学研究者というべきだと思います。このように例えば数学、数理科学、諸科学というふうに分類されたとき、どの分野でどういう人が、どういう活躍をするかというのは、とても多様だと思います。もちろん数学の研究者になった人は数学の研究をやるだろうと思うのですが、例えば数理的人材というときに、数学の中でクリエイティブなこともするのか、諸科学の中での連携として数理的な研究を行うのか、それともその人が持っている数学の知識や技術を使って仕事をするのかという方向性が違いますし、それを必ずしも明確に分けられるわけでもないと思います。ですから人材育成といったときに、例えば最初の育成すべき人材像でAとBというのは、こういう形で分けることは必要なところはあるとは思うのですが、それにもいろいろな程度が、スペクトルがあり得るということは考えないといけないことだと思います。

【若山主査】
 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。

【合原委員】
 多様性と関連して、ここはやはりAとBじゃなくて、Cみたいなのがあると思っていて、それでさっき今井先生に、純粋数学の副専攻はないかとお聞きしたんですけれども、例えば今うちの学生なんかを見ていても、工学部を出てちょっと数学的なことをやりたいっていってうちに来るんですけれども、うちのレベルの数学じゃ駄目だと思う学生もいるんですよ。そういう学生は、たまたまうちは駒場にあるので、数理科学の学部の講義を取りにいくんです。だからほとんどの単位はもう数学科の学部の講義で取っているような学生もいて。あとFIRSTのときに参加したポスドクなんですけど、彼は東大の理三に入って、医者になる道を途中まで行っていたんですけど、医者になるのをやめて数学科に入り直して、今、数学者になっているんですよ。
 だからそういう数学から諸科学という方向もありますけど、逆に諸科学から数学という方向も、パスは細いけどあるんですよね。僕自身も大学院のとき、僕は電気工学科だったんですけど、数学を勉強しなきゃ駄目だと思って、当時は数学科が本郷にあったので、勉強できたんですよね。だからそういうパスが必要だというのと。
 それから大島先生の話のところで、医学系学生の話がありました。あの場合は大島先生の研究室とか、我々の研究室が数学科に対応するような役割になるんですけど、医学生から見たとき。そのパスも最近ちょっと難しくなってきていて、結構うちは医学部を出てからくる学生がいて、1人はもう生産技術研究所の准教授にもなっているんですよ。ところが最近もそういうふうに考える医学部の学生はいるんですけれども、昔は医学部6年出て、博士に入ってたんです。ところが最近は6年出た後に、2年間研修をしないとその後医者になれないんですよ。そうするとやっぱりさすがにうちに来るにしても、将来医者として働けるようになってから来てほしいので、それをやってから来たらって、一応最初は言うんですけど、そうすると6年プラス2年で8年たたないと、数学の勉強をしに来られないということがあって。そこはかなりネックになっているんです。
 そういう意味では大島先生がおっしゃっていたみたいな、研究生でしたっけ、ああいうのは結構いいやり方かなと思います。数学から諸科学・産業への方向はもちろんメーンだと思うんですけれども、逆のパスもあると、より重層的に数学と諸科学との交流みたいなのができるような気がするので、そこを少し考えるべきかなという気がしています。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 舟木先生、いかがですか。

【舟木委員】
 今おっしゃった計数出身で数学者として活躍されている方は、何人か実際におられます。そういうパスがあることは確かだと思います。
 それで先ほどの御発表に関連して、東大数理といいますか、数学科でも何もしていないわけではなく、いろいろな取組をしていますので、思いついたことを申し上げます。例えば先ほど高木先生がおっしゃっていた教育特別プログラム、これは数学科も実はやっていまして、アクチュアリー統計プログラムというものを理学部の共通科目ということで、同じ位置付けで行っていました。今はもう担当されていた教員の方が退職されたので終わっているんですけれども。ただ、先ほど生物情報は70名とおっしゃいましたが、アクチュアリー統計は、本当に修了した人は二、三名しかいないというか。数学の場合、やはりどうしても数学科の単位を取るのは非常に厳しいですので、ダブルメジャーという形でそちらまで手を出すのは、非常に厳しいというのが、私の実感です。ただ、そういうプログラムを走らせて、もちろん一部の科目をとった人は何人かいると思うんですけれど、最後までちゃんと修了した人はもう本当に数えるほどということになります。数学の学問の本質というか、広くということではなく、数学でいい成果を上げようとすると、どうしても狭く深くやらなきゃいけないという学問の特質があると思うんですね。ですからいろいろなことを勉強してというのはなかなか難しくて、どうしても深く、深くというふうに、普通の数学の学生はそういうふうに思ってしまいます。それがあるので、広く目を向けさせるというのは、なかなかうまく成功していないというか、そういう印象はあります。
 大学院の方でも、中川先生にも来ていただいていると思いますが、社会数理ということで、たしかグローバルCOEに採択されたときからだったと思いますけれど、オムニバス形式で講義をしていただいています。企業の方に来ていただいて、それは今も継続してやっています。ただ、それがなかなか、実際には結びついていないという状況のようです。非常に優秀な学生は多数いるんですけれども、ドクターを取った時点で急に企業に目を向けさせるというのはなかなか、うまくいっていないというか、難しいんだと思うんですね。リーディング大学院の話も先ほどありましたが、数理でもそれはやっていまして、それも非常に成功していると私は思っています。学生たちは外国に、例えば3か月ぐらい行けるということで研究成果に結びついています。ただ、これは企業の方に目を向けてもいいんですけれど、なかなか学生としては研究の方に、どうしても目が向いていて、インターンの方に使うことも可能なんですけど、なかなかそういう学生は少ないんじゃないかと思います。結局は外国で自分の研究を、近い先生のところに行ってやると。これは非常に成功していると思いますけれども、企業の方にはなかなか目が向いていないというのが、私の印象です。
 最初に主査の若山先生がおっしゃった、御用聞きで終わらないとか、あるいは数学独自の発展も非常に大事だということは、非常に心強く思うところでありますが、ここで議論しているような方向でどうしたらいいのかというのは、私もちょっと、いい案を持ち合わせていなくて、よく分かりません。現状としては今申し上げたような状況かと思います。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 やはりポイントは、博士号を取る方たちが活躍する場所というのが、数学から言ってもそこは絶対必要で、それは社会にとってもプラスになると、そういう立場でこの委員会はあるんだと思います。その意味で、さっき國府先生から御指摘があった、いろいろな多様性があればいいんだという立場は皆さんで協力を、こっちに行ったらこうでなきゃいけない、そういう話はここでは多分ないんだと。ただ就職した先で求められれば、やっぱりそれに応じて働いていかないといけないということは、当然あると思いますけれども。

【國府委員】
 先ほどの舟木先生の言われたことに関連するのですが、3ページのポンチ絵のさきがけの研究者の、数学専攻から2名、諸科学に行っているというのは、2人とも東大数理科学研究科の出身で、そういう意味でさっきおっしゃったうまくいっているということの一つの表れといえると思っています。この2人の方も、1人は産総研にインターンシップで行って、そこで自分の分野とうまくマッチする課題を見付けて採用されたということで、もう1人の方も国立の研究機関です。そういうキャリアパスが例えば私の京都大学の数学関係では余りないんですね。それはなぜかというのを、この2人を見ていて思っているところで、一つは多分東京という地の利があるのだろうとも思うのですが、いずれにしても、数学の学位を取った学生に、そういう機会があるというのは、結構重要だろうと思います。つまり博士の学位を取って、これからどうするかを一か八かで決断しないといけなくなる前に、自分の学んだこととか身に付けたことが活(い)かせる場がいろいろあるということを知ることがとても大事だと思います。自分の志望と現実の可能性をマッチさせるのはなかなか難しいし、これはかなりうまく行った成功例だとは思うのですが。

【若山主査】
 そういう意味では、インターンシップなどが国際的にも重視されているというところはあると思いますけれども。
 常行先生、少し違う観点から。

【常行委員】
 ちょうど今インターンシップの話が出たのですが、なかなか学生がインターンシップに出たがらないという状況があるように思うんですけど。今、東大の工学系と理学系と新領域でリーディング大学院をやっていて、材料系のリーディング大学院なんですけど、そこでインターンシップもかなり推奨はしているんですが、なかなか学生が行きたがらない。数学よりも我々の方がむしろ企業に近いと思うんですけど、それですら行きたがらないのはどうしてかなというのは、ちょっと今、私も分からなくて。難しいなと思っているところです。
 それからきょうお話を伺っていてちょっと思ったのは、今の今井先生のような例が非常にいいロールモデルになっていて、そのロールモデルが数学の若い方にうまく伝わる仕組みがあるといいなというふうに思って、拝聴していました。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。

【森委員】
 人材を育成する仕組みの3のその他のところで、高校の教員あるいは生徒向けとありますけれど、自分の経験から思うと、今は役に立たないかもしれないけれど、受験時期に純粋数学はいいんだというすり込みが、どうしてもあるように思います。だから例えば私も高校時代に「大学への数学」という受験雑誌のコンテストに参加していましたが、それに類したものとしては今だと数学オリンピックですよね、そういうところに何かアピールする方法はないんでしょうか。つまり、実際に受験数学の頃やる問題って、有限数学だったりして、いわゆる本当に、今、私がやっているようなことは出てこないし、すごく応用に近い話をやるから、結構アピールする方法はあるんじゃないかという気はするんですけど。

【合原委員】
 数学オリンピックのメダリストで、数学者として成功しているような人っていうのは出てきているんですか。

【森委員】
 外国ではあります。日本ではそんなになっていないと思いますが。少し増えてきたかもしれないけど、初期の場合は特にそうはなってないし、国によって違います。更に言うと、国際数学連合としては国際数学オリンピアードとは、組織としては提携していません。つまり個人的には協力はするけれども、国際数学オリンピアードは数学者の育成組織ではないし、そうしていいものかどうかという意識があるので。ちょっと微妙ですね。

【合原委員】
 脳科学の方で、脳科学オリンピックみたいなのが最近できたんですよ。それで将来の脳科学者を育てようとして、ちょっと今、そこ重視しているんですけど、余りうまくいかないかもしれませんね。

【森委員】
 そういう意識でやるとうまくいかないように思います。だから私個人としては、数学オリンピックの優秀者は、広い意味の数理科学者になってもらえば十分という意識で見ています。

【國府委員】
 医学部に行く人が多いですよね。

【森委員】
 ええ。だからそういう意味では、ここではそういうところにアピールするというのが、ごく自然なことではないかなと思います。

【合原委員】
 さっきの例は間違って医学部に行っちゃったわけね。通るから。でもやっぱり数学者になりたいって思って、途中でやめた。だから数年無駄にしている。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。きょうは時間がないんですけれども、何か、是非きょう発言をしておきたいことはございませんでしょうか。

【高木委員】
 では、一言。資料1の最後の5ページのポンチ絵を見ますと、やはり数学を専攻した方がほかの分野に出ていくというモデルになっているんですね。確かに合原先生がおっしゃるように、逆に数学に入ってくるというようなパスがあってもいいように思います。ただ、先ほど舟木先生がおっしゃったように、数学の本質的な問題として、そこで修士を取ったり、博士を取るというのは難しいかもしれないので、現実問題なかなか難しいと。
 何が言いたいかといいますと、バイオインフォマティクスも昔は、生物系からバイオインフォマティクスをやるのがいいのか、情報系からやるのかという議論がさんざんありました。結局日本の場合は情報系からしかほとんど入っていません。だけど欧米を見ると逆のケースも結構あるんですね。ですから申し上げたいことは、今ここに書いてある数学から外に出ていくモデルというのが、数学の学問としての本質的な話なのか、日本の特有の話が少しあるのか、それによって欧米では違う、逆に数学に入ってくる人がいるとすれば、それをどういうふうに日本で反映すれば、あるいは実現するようにすればいいかと考えればいいのかなと、少し思いました。

【森委員】
 それに関してちょっと。日本で言う数学者と欧米で言う数学者はちょっと違うと思います。日本で言う数学者って、純粋数学者ですね。純粋数学だとアブストラクトなことを修得しようと思うと、やっぱり若いうちがいいかなという意識があります。だから私としては、他分野を習得して、外から純粋数学に入ってくるのはなかなか難しいと思います。そういう例は確かにあるとおっしゃいましたけれど、全体として見ると、少ないだろうと思います。

【若山主査】
 ありがとうございます。ヨーロッパなんかだと、国によって数学者の定義が違うんだって、みんなそれぞれが言っていますから。ですからそんなところなんだと思います。
 さて引き続き来月、10月末にもこの委員会で議論を深めてまいりたいと思いますけれど、きょう最後に少しお時間を頂きまして、行松課長から数学イノベーション推進に必要な機能に関して、事務局から御報告がございますので、よろしくお願いいたします。

【行松基礎研究振興課長】
 現在、私どもで、財務省に対して予算要求させていただいている内容を報告させていただきたいと思います。参考資料の2‐1、2‐2、2‐3でございます。
 2‐1は前回までに御議論いただいて、おまとめいただいた数学イノベーション推進拠点に必要な機能ということであります。私どもとしてはこちらを参考にしながら、どういうことであれば具体性を持たせて予算として要求できるだろうかということを、議論してまいりました。その中で理化学研究所の構想と相乗する形で、数学と諸科学との連携を実現できないかということで今、構想しているものでございます。それが参考資料2‐2でございまして、このベースとなっているグループは理研の理論科学連携推進研究グループ、iTHESと言いまして、iTHESについては資料2‐3にございます。2‐3の目的にありますけれども、数理科学における分野横断研究の推進と、分野の枠を越えて活躍できる若手人材の育成、更に国内外の研究機関との連携による頭脳環流、産学をまたぐ人材育成を目的に、今後の理研の新しい柱を作っていけるような新領域開拓課題として、所内公募を経て2013年にできた研究グループの第1号でありまして、物理、化学、生物分野の9理論研究室を中核に11名の若手研究員と50名強の理論家が参画しています。
 代表責任者であり自らもコア研究室を率いているのが、基礎物理学の初田先生でありまして、物質科学、理論生物学、更に数理・計算連携グループと、iTHESのコア研究室がいわば所内横断的な活動をしていまして、次のページを見ていただきますと、iTHESの縦糸と横糸とありますけれど、基礎物理、物質科学、生物化学という縦糸と、数理科学、計算化学という横糸のグループが、互いに連携をしながら新しいサイエンスを作っていっているということであります。そこに書いてありますような分野横断でセミナーですとか、あるいは外部機関との合同シンポジウムとかいった活動に取り組んでいます。
 最後のページの上に、iTHES若手研究者の分野横断型数理研究例とありますけれども、ここに4人の若手の活動が挙がっています。元々の専門分野と現在の研究を比較するとお分かりいただけると思いますが、極めて新しい融合した研究スタイルの中で、本来の専門を離れていろいろな取組が行われて、良い成果を上げているということでございます。
 更に産学連携の人材育成プロジェクトということで、産業界ともいろいろなセミナーも、自動車メーカー、金融企業、ベンチャー企業、IT、いろいろなところからのセミナー等、非常に活発にやっているような状況がございます。
 このグループを核として、数理科学と諸科学との連携のプラットフォーム、理化学研究所は多様なサイエンスに取り組んでいるという意味では、まさに数理科学者の方々に御活躍いただける場というのが非常にあるということで、ここに数理科学の研究者を迎え入れて、いろいろな諸科学との連携で仕事をしていただくという場を、数理科学の連携プラットフォームという形で実現してはどうかということで、今、財務省に予算を打ち出しているということでありまして、この委員会での議論を、この予算が獲得できれば、理化学研究所の御協力を頂いて、反映できないかということを、私どもで考えているところでございます。
 そういう形でやっておりますということを、報告させていただきました。よろしくお願いいたします。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。
 この件に関して何か御質問がございましたら。

【合原委員】
 非常にいいと思うんですね。ただ純粋数学者とかがまだ入れていないので、そこが入れるといいかなと思います。

【國府委員】
 予算要求の予算の中身というのは、この中でどういう形になるのですか。

【行松基礎研究振興課長】
 若手の数理科学者の方に理研で仕事をしていただく人件費がメインになります。あと、シニアの研究者の方をお迎えして、理研で仕事をしていただくことも合わせてできないかというようなことも考えています。恐らく若手の方の活動を中心にということになると思いますけれども。

【若山主査】
 予算規模というのはどのぐらい。

【行松基礎研究振興課長】
 独法の全体の内訳ということなので、これに対して幾らということは大々的には申し上げられないんですが、我々の目標としては、何とか億円オーダーの事業が行えるような予算が獲得できればいいなと思っているところであります。

【若山主査】
 それではちょっと時間を二、三分オーバーしてしまいましたが、どうもありがとうございました。
 では今後の予定について、あと1分ほど頂きまして、事務局の方から御説明を。

【粟辻融合領域研究推進官】
 資料5のとおり、次回は10月30日金曜日の15時30分から、文科省の17階の研究振興局の会議室で予定をしております。
 それから本日の資料につきましては、そのまま机上に置いていただければ、事務局より郵送させていただきます。

【若山主査】
 どうもありがとうございました。それではこれにて、数学イノベーション委員会を閉会したいと思います。ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課/数学イノベーションユニット

電話番号:03‐5253‐4111(代表)

-- 登録:平成27年11月 --