総合政策特別委員会(第26回) 議事録

1.日時

令和元年5月23日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 科学技術・学術政策研究所からの報告(「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)」及び「科学技術予測調査」について) 
  2. 今後の論点について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、新井委員、大橋委員、越智委員、郡委員、五神委員、角南委員、塚本委員、土井委員、十倉委員、冨山委員、

文部科学省

山脇文部科学審議官、菱山サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、渡辺科学技術・学術政策局審議官、増子研究振興局審議官、角田科学技術・学術政策局総括官、井上科学技術・学術政策局企画評価課長、大洞文部科学戦略官、中澤企画評価課企画官、坪井科学技術・学術政策研究所長、赤池科学技術・学術政策研究所上席フェロー、伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第26回)


令和元年5月23日


【濵口主査】
  それでは、ただいまより科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を開催させていただきます。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りまして、ありがとうございます。
それでは、会議開催に当たりまして、事務局から、資料の説明をお願いいたします。

【中澤企画官】
  資料については、こちら、議事次第と書いてあるA4の1枚紙の裏のところに資料の一覧がございます。基本的には資料はお手元のタブレットの中に入ってございます。ただ、机上配付資料といたしまして、紙の方が見やすい資料については一部、紙の方で用意してございますが、資料、A3のカラフルな資料の1-1-2という少しビジーな資料でございますが、こちらと、資料2、それから、直前、各委員の先生方からいただきました、各委員からの御提出資料についても机上配付させていただいてございます。
欠落等の不備がありましたら、事務方の方にお伝えいただきたいと思います。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
改めて、資料2、今日はとても大事な資料でございます。見ていただくと、文部科学省側として、今後、本委員会において、抜本的かつ具体的な対策を検討というのが右肩に書いてあります。皆さんに積極的な意見を言っていただく段階になりましたので、これ、よく見ていただいて、抜本的な対策を提案していただきたいと思います。よろしくお願いします。
本日は、議題(1)の「(1)科学技術・学術政策研究所からの報告(「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)」及び「科学技術予測調査」について)」として、科学技術・学術政策研究所より説明をまずいただきます。続いて、議題(2)で、今後の論点について事務局より説明をいただきます。
それでは、議題(1)に移ります。
本日は、坪井科学技術・学術政策研究所長に来ていただいておりますので、資料1-1-1と資料1-2-1について御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  科学技術・学術政策研究所の坪井です。本日、当研究所から2点、御説明させていただきたいと思います。
まず、1点目が、科学技術の状況に関する総合的意識調査、NISTEP定点調査2018です。資料は1-1-1です。
2ページをお開きいただきますと、昨年の8月に、総合政策特別委員会で取りまとめられた参考資料4がございますが、これは基本計画の進捗状況の把握と分析結果です。その中に様々な数値データがあるわけで、この中には当研究所の報告書等が出典となったものも多々あると認識しておりますが、定量的データに関してはタイムラグがあるものも多くあります。一方、この定点調査は、産学官の第一線級の研究者や有識者への継続的な意識調査を通じて、科学技術の関係の状況変化を定性的に把握するという調査であるわけですけれども、よりタイムリーな調査結果が得られるという特徴がございます。毎年1回、同じ方々に同じ質問のアンケート調査を継続的に実施することで、定性的という制約はあるものの、最新の状況変化を把握することが可能と考えています。特に今回は、第5期科学技術基本計画中に実施するものとした3回目の、いわば基本計画5年間の中間地点の調査に当たるものです。質問は、この中ほどにありますが、六つの質問パートで、全体、63問あります。
3ページには、回答者グループの詳細を載せております。質問の相手先は、大学・公的機関グループ約2,100名と、産業界を中心としたイノベーション俯瞰グループ約700名の計2,800名で、この回答者グループに対してそれぞれの関連する質問をしております。また、回答は、グループごとに分析するようにもしております。
4ページです。毎年変えない質問のほかに、毎年変更する深掘調査も行っており、今年度は研究室・研究グループにおける教育研究活動の状況等についての深掘調査をしました。調査実施時期は、昨年の9月から12月で、回答率は91.1%でした。また、個別の質問の回答には自由記述や評価の変更理由の自由な記述をいただいておりまして、約9,400件、文字数は59万字あります。
5ページには、今回の結果概要をまとめておりますが、それぞれの内容に関しては、次のページから個々に御説明します。
 6ページです。ここは全回答者の2018年調査時点の評価の指数の絶対値の上位と下位、それぞれ15位までの一覧表を掲げております。これは御覧いただければと思います。
7ページは、大学や公的研究機関の研究環境の状況です。基盤的経費・研究時間・研究支援人材に対する危機感が継続している状況が見てとれます。白抜きの逆三角形が2016年、青色の逆三角形が今回の2018年を示しておりまして、いずれも評価の低下が見てとれます。また、いわゆる評価の質に関しては、回答者の属性によりばらつきはあるものの、全体としては最も低い、著しく不十分ということになっております。
8ページは評価を下げた理由をピックアップしているページでございます。
9ページは、第5期基本計画の開始時点である2016年の調査結果と比べて、状況が悪化しているという回答者の割合が大きいもの、すなわち、評価を下げた回答者割合から評価を上げた回答者割合を差し引いた差の大きいものを10項目、載せております。基礎研究や研究費マネジメントの状況が悪化したという認識の関係の質問が多いということです。
同じように、10ページには、評価を下げた理由をピックアップしております。
11ページは、逆に、顕著に評価が上昇しているわけではないものの、一部の属性、回答者の属性で好転の兆しが見られるものを含めた8項目を載せております。ベンチャー企業の設立、大学の学部教育、女性研究者や外国人研究者に関する事項が上がってきております。特に右側に回答者グループの属性を示しておりますが、特にこういったグループ回答者で2016年度と比べて評価の上昇が見られているというところが見てとれます。
12ページには、やはり評価を上げた理由の方だけをピックアップさせていただいております。
13ページ、ここでは評価を下げた回答者と上げた回答者の絶対値の和が大きいもの、すなわち、意識の変化割合が大きいもの10項目を載せております。第5期基本計画中に取組が進められていると考えられているのは、「若手研究者に自立と活躍の機会を与える環境整備」とか、「大学改革と機能強化」、「産学官の組織的連携を行うための取組」といった事項が上がっております。
14ページには、こちらも評価を下げた理由と上げた理由の両方をここではピックアップをしております。
15ページは、深掘調査です。過去のNISTEP定点調査において、基盤的経費の減少が学生の教育にも影響を及ぼすといった指摘も見られましたので、研究を通じた教育・指導の状況について質問を行いました。大学等の研究室・研究グループの研究活動の低下は学生の教育・指導にも影響を与えるという認識が示されておりまして、その度合いは、国立大学等において顕著という結果が出ております。
16ページの方も深掘調査ですが、ここでは学生の就職活動が研究活動に与える影響に注目しております。修士課程の学生の就職活動が研究室・研究グループの研究活動に影響を与えるという認識が大きいという傾向が見てとれるかと思います。
17ページは、今までのことに関連しまして、第5期基本計画開始時点からの状況変化の類型ごとに、今後の対策ということで、まとめてみているものです。
18ページは、今後に向けてということになりますが、実際の状況判断というのはこの意識調査だけではなくて、定量的データも含めた総合的な分析や、それを踏まえた議論が必要であると思っております。ただ、定点調査の自由記述の中には、科学技術イノベーションの現状に対する切実な意見や、次々と繰り出される施策や事務に振り回されているという様子が見てとれます。研究や、研究を通じた教育に携わっているのが現場の方々ですので、第5期基本計画中の各種取組の成果を、現場の方々が感じ取り、教育や研究に集中できる環境の構築が急務というふうに考えました。
19ページ以降は参考資料ということになります。特に21ページのところには、この63問の問いと第5期基本計画の章立ての対応関係なども示しております。
続きまして、資料1-1-2という、これは机上にも配付されているこの表の資料でございます。これは63問の問いについて、回答したグループをより詳細に分類して指数をまとめたものでございます。一番上に回答者グループのいろいろな属性を載せております。
1ページ目は、2018年の方の指数の絶対値、裏側の2ページの方は、2016年から2018年にかけての指数の変化を載せているものですが、回答者の属性による違いが結構あることが見てとれるんではないかと思います。
例えば、1ページ目の方ですが、1というところで上に書いてございますが、ここでは大学機関長の方と現場研究者の評価に違いが見られるものがあるということで、特に点線で囲んだような問い、人材関係、研究関係、産学連携、大学改革に関する質問などでは、大学機関長の評価は高いものの、現場研究者の評価が低いような傾向が見てとれるかと思います。
大学機関長の方で評価を上げた理由には、それぞれ取り組んでいる組織改革などに関連する記述が多いのと、現場研究者の意見としては、やはり改革に伴う作業の負担感とか、成果を実感できないといった指摘が自由記述の中にありますので、そういった状況の違いを反映しているのではないかとも思われます。
また、2のところは性別による違いです。全体、総じて、男性と比較して、女性は実際の評価が厳しいです。特に点線で囲んだ女性研究者に関する評価では、女性の評価が低くなっております。女性回答者が評価を下げた理由を見ますと、育休が取りづらいことや、育休も連続でなく、断続的に取得できる制度を考えてほしいなどの意見があり、制度の創設ではなくて、制度の運用自体の問題点を踏まえて評価を下げた可能性がある一方、男性は、制度の創設でよしとしているような傾向もあるんではないかと思われます。
また、3のところは年代別の違いということで、例えば、点線で囲んだ産学官連携に関する質問では、39歳未満の若い年齢層では評価が高い一方、50歳代の方の評価が低いということで、産学官については、世代によって考え方が異なっている可能性もあるのではないかというふうにも思われます。
あと、自由記述についてはキーワード検索ができますが、この手元の資料の中に、机上資料として二つほどお配りさせていただいています。

【大洞文部科学戦略官】
  タブレット上のみに机上資料、資料番号でいくと、14番と15番というファイルが、タブレット上の机上資料ということで配らせていただいております。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  失礼いたしました。ここでは二つ、挑戦的とか長期的と融合という言葉を含む自由記述と、若手研究者の自立促進とかキャリアパスに関する自由記述を取り上げております。これは本当に御参考までということで、この自由記述はデータベース化し公表しており、ウエブサイト上からキーワード検索で、このように個別の政策立案の検討が必要な特定の自由記述を抽出することができるようにしているということです。
この定点調査につきましては、今年は第5期基本計画の4年目の調査ということで、また、秋以降、実施を予定しております。
定点調査に関しては以上です。今回の調査結果が、次期基本計画を検討するに当たっての現行の基本計画の進捗状況を把握し、理解する際の一つのタイムリーな素材になれば幸いだと思っておりますが、一方、当研究所は、今後とも、いわゆるEBPMに基づく政策の形成のためのエビデンス整備に貢献していきたいと考えておりますので、新しい定量的なデータがまとまりましたら、今後とも引き続き、随時、公表をしていきたいと思っているところです。
続きまして、二つ目の方の御説明に移りたいと思います。資料は1-2-1です。科学技術予測調査です。
当研究所では、3年計画で科学技術予測調査を進めてきております。昨年の12月21日のこの総合政策特別委員会において、一度、進捗状況を御説明させていただく機会がありましたが、今回、おおむね取りまとまりました現時点の成果を御説明します。
ただ、厳密には、今後、報告書という形での公表を予定しておりますので、本日の御説明内容が一部変わる可能性もあることは御了解いただければと思います。
それでは、2ページをごらんください。本調査は、NISTEPに蓄積されてきたこれまでの経験も踏まえつつ、多数かつ多様な専門家の関係者の知見を集約することに特徴がございます。単に将来を予想するのではなく、将来何が起こり得るのか、また、将来に向けて何を目指すかを洞察するという姿勢で検討を進めてきております。
ただ、こういった予測には、経済、産業とか社会要素など様々な視点があるわけですが、本調査は、やはり国際的な環境などの前提条件は所与としつつ、科学技術をベースとする未来像という形で検討を行っております。
3ページが、この調査の構成ということになっています。「社会の未来像」と「科学技術の未来像」を検討し、最後に、二つを統合してシナリオを作成するという構造です。本日は、まず、「社会の未来像」と「科学技術の未来像」に関するこれまでの検討結果を御説明するとともに、それを基に取りまとめ、また、基本シナリオと未来につなぐクローズアップ領域についての御説明をさせていただきたいと思います。
4ページですが、この調査は、望ましい未来、社会の未来像からのバックキャストと、科学技術の未来像からのフォーキャスト、この二つの方向性から検討しながら、結合させるというアプローチを取ってきておりまして、時間軸としては、2050年までを対象としつつ、2040年頃をターゲットとしております。
5ページですが、スケジュールです。現在は、科学技術の未来像に関するデルファイ調査の2回目のアンケートを実施中という段階です。
6ページからが社会の未来像ということで、ここは、7ページですけれども、昨年の1月のビジョンワークショップの結果で、昨年12月にも御報告した内容ですけれども、8ページにありますように、50の社会像が提案され、共通する価値観として、Humanity、Inclusive、Sustainability、Curiosityという4項目が抽出されたところです。
続きまして、10ページですが、科学技術の未来像に関する検討では、七つの分野、合計で702件の科学技術トピックというものを分科会で設定いただいて、これらのトピックの重要度、競争力、実施見通しなどについて、いわゆるデルファイ調査と呼ばれる専門家アンケートを行って、結果を分析するものです。
実際には、11ページにありますように、分野、七つの分野と細目という構造を取っております。このようなことで、全体像をつかんでいけるかと思います。
もう一つの参考資料1-2-2の方には、702件の科学技術トピックの全リストも載せております。
済みません、1ページ戻っていただきまして、10ページのところですが、今回は、6,698名の方から回答が得られました。デルファイ調査としては、過去最も多い回答数ということになります。回答者の内訳等もここに載せているとおりです。
得られた結果ということで、12ページの方では、1回目の暫定値ということですけれども、重要度が高いと評価されたトピックの高い順にリストアップしていますが、IoT・ロボット、高度化対応、インフラ検査、災害関連などが上位にあります。
13ページは、日本の国際競争力が高いトピックで、災害関連、省エネ、宇宙科学関連などが上位に上がりました。
あと、14ページ、15ページは、技術的実現に向けた政策手段と、いわゆる法規制整備やELSIの課題の対応が多く選択されたトピックなどを掲げております。やはり法規制整備ではICT・アナリティクス・サービス分野、ELSI課題対応では健康・医療分野の生命科学のトピックなどが目立っております。
現在、デルファイ調査ということで、2回目のアンケート調査を5月31日の締切りで実施中です。
続きまして17ページですが、基本シナリオということで、今年の2月に開催したワークショップにおいて、まとめております。基本シナリオというのは、科学技術発展により目指す社会の未来像を描いたものという位置付けのものでございまして、右下にありますが、個人か社会か、有形か無形かという四つの視点を設定して、前のビジョンで出た50の社会像を整理し直して、それを出発点として、議論を深めました。
18ページにありますように、目指す社会の姿を四つといたしまして、四つのシナリオと整理ができまして、人間らしさを再考し、多様性を認め共生する社会、リアルとバーチャルの調和が進んだ柔軟な社会、人間機能の維持回復とデジタルアシスタントの融合による「個性」が拡張した社会、カスタマイズと全体最適化が共存し自分らしく生き続けられる社会として取りまとめられました。
19ページから22ページには、この四つのシナリオの内容を載せておりまして、右側に社会像の具体例、左側に関係する科学技術トピックの例示ということで、また、第1回アンケートの結果ですが、それぞれの科学技術トピックの実現時期も載せています。また、それぞれ望ましい社会の実現に当たる留意点というのを一番下に記載をしております。このように現時点では取りまとめている段階です。
また、23ページですが、このそれぞれの四つの留意点を、もう一回、留意点全体を改めて整理したのが23ページの表になります。科学技術予測といいますと、全体、肯定的な面ばかりに目を向けがちになるというような御指摘もありますので、あえてこうした留意点も整理するようにしておりますが、個人情報、データ管理など、いろいろ相反する事柄のバランスを取りながら進めるということなどについての社会的合意が論点になるんではないかという感じがしております。
あと、次が未来につなぐクローズアップ戦略についての御説明です。これは科学技術の視点から今後推進すべきと考える研究開発領域で、この702の科学技術トピックを材料として、この中から、機械的処理やエキスパートジャッジを組み合わせた検討で取りまとめたということで、今回は未来につなぐクローズアップ領域という新たな名称で呼ぶこととしてまとめたものです。
26ページにありますように、科学技術トピックを、自然言語処理によるトピック間の類似度分析、階層クラスタリングによるトピックのグループ化というような手法をやりながら、最終的には、科学技術予測調査検討会の先生方の御議論をいただきまして、領域を決定しております。
27ページには、分野横断性の高い領域として選定された約8領域を示しております。この分析の過程で、計測・観測、シミュレーション、インフォマティクス・AI、量子技術がキーテクノロジーとしても上がってきております。
28ページ、29ページに、それぞれの概要を示しておりますが、28ページは、まず、1、社会・経済の成長と変化に適応する社会技術、2、プレシジョン医療の実現に向けた次世代バイオモデリング、アンド、バイオエンジニアリング、3、先端計測技術と情報科学ツールを活用した原子・分子レベルの解析技術、4、新規構造・機能の材料及び製造システムの創成、29ページが、5、ICTを革新する電子・量子デバイス、6、宇宙利用による地球環境と資源のモデリング・評価・予測技術、7、サーキュラーエコノミー推進に向けた科学技術、8、自然災害に関する先進的観測・予測技術という8領域です。
あと、参考資料の方には、特定分野に軸足を置く7領域というのもピックアップされたものを載せております。
以上、全体をまとめますと、社会の未来像の検討では、Humanity、Inclusive、Sustainability、Curiosityの四つの価値が重要とされました。また、科学技術未来像の検討に基づいたクローズアップ領域の検討では、基礎科学から社会技術まで適用されるデータサイエンスも注目されております。基本シナリオの検討が、先ほどの四つのシナリオが描かれたということです。
32ページですが、そして、これまでの調査結果から、2040年の目指すべき姿は、「人間性の再興・再考による、やわらかな社会」として、この調査ではまとめたところです。
あと、最後、33ページには今後の予定を載せておりますが、6月に予定される科学技術予測調査検討会での議論も踏まえて、速報としての概要の公表を予定しております。また、正式な調査結果については随時取りまとめて公表してまいりたいと思っています。あわせて、深掘りなどの発展シナリオの検討も行い、科学技術イノベーション政策、戦略に実際に役立つアウトプットをまとめていきたいと思っております。
かなり早口になってしまいましたが、以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
それでは、ただいまの報告に、御意見、御質問ございます方、お願いします。いかがでしょうか。全く異論なしでしょうか。どうぞ。

【大橋委員】
  御丁寧な説明、ありがとうございました。
それぞれの資料について、御質問させていただこうと思うんですけど、まず、1番目の資料で、産業の人と、あと有識者と、2,100人と700人でそれぞれ回答を依頼しているわけですけど、この回答の違いが大きくあったものというのがあるのかどうかという、御説明があったかどうか分からなかったんですけど、そういうふうな観点からのもしコメントがあれば、一ついただきたかったというのが1点と。
あと、2点目は、従来、デルファイで科学技術の未来像ってやられていて、今回は社会の未来像って、私、知らなかったので、やられているのはすばらしいことだと思うんですけど、これにもデルファイ法って使えるんだと思うんですけど、使われてないような記載かなと思ったんですけど、どうなんでしょうかというのが1点と。
あと、前回のデルファイ調査を振り返ってみるとどうだったのかというのも一つ面白いのかなと思うんですけれども、そこの辺り、知見があればという。
大きく2点です。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  最初の点につきましては、実はこのA3の表の中でそれぞれの質問の中で、2と書いてあるところの右側辺りに、いわゆる学長クラスとか研究者クラスの方とか、職階別に4段階に分けて出しておりまして、この中で、どこの差が大きいかどうかは個別の中で分かりますが、特にどこに違いがあるかということですかね。

【伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長】
  大学と産業側の方でどう差があるかということでよろしいでしょうか。そうしますと、特に質問表でいいますと、Q401とか402、この辺りが産学官連携の質問になるんですが、この辺りが、大学・公的研究機関と産業界を中心とするイノベーション機関でかなり認識のギャップが出ています。この辺りが一番差が出ているポイントになっております。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  あと、社会の方のビジョンについては、いわゆるデルファイではなくて、やや従来的なワークショップ形式で、それぞれ出席者の方が出していただいたものを、幾つかのグループごとに分かれながら、いろいろアイデアを出し合って集約していくというアプローチしかまだ取ってないというのが現状でございます。
あと、前回との調査のような関係では、資料1-2-2という予測調査の参考資料の30ページ辺りをごらんいただきますと、これは、一度、過去の科学技術予測でやったものがどのぐらい実現しているかという調査を、2009年の12月に実施したことがございます。
あと、31ページからは、特にやはり注目される技術が過去の予測調査でどうだったか。ここではゲノム編集と、32ページが量子、33ページが人工知能、こういったところについて、相当前の調査でいつ頃実現すると予測されたけど、というような例は掲げさせていただいております。これは、一度、過去の科学技術予測でやったものがどのぐらい実現しているかという調査を、2009年の12月に実施したことがございます。
あと、31ページからは、特にやはり注目される技術が過去の予測調査でどうだったか。ここではゲノム編集と、32ページが量子、33ページが人工知能、こういったところについて、相当前の調査でいつ頃実現すると予測されたけど、というような例は掲げさせていただいております。

【濵口主査】
  よろしいでしょうか。
ほか、いかがでしょうか。新井さん。

【新井委員】
  この会議でも何回か、修士の学生が、基礎研究、あるいは、先端研究を行う上で、戦力になっているか、それとも、むしろ教育に手間が掛かっていって、どちらかというと負荷になっているかということの過去との比較という話が幾つか出ていたと思うんですけれども、今回のデルファイ調査、私もたしかやったと思うんですけれども、その質問項目がなかったような気がするんですけど、修士の学生の教育というのが戦力になっているのかというのと、教育が負担になっているかというのが過去10年、10年前と比べてどう変化したかというのは聞かれましたか。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  科学技術予測の方では、科学技術トピックなので、それはございません。
今回、定点調査の方の深掘調査は、過去との比較ということではなくて、この研究室や研究グループの中で、学部の方、修士の方、博士の方が何人いるかというところまでの調査になっています。
修士が教育としての負担なのか、戦力なのかということに関する明確な質問は行ってないんですけれども、今後、違う調査では、研究室を数年単位で追っていくような新たな調査は予定しております。そういった中で、そういった質問なり、問題点が見えるような工夫はまだできるかもしれないと思っております。

【濵口主査】
  どうぞ。

【五神委員】
  今の点に関して、私も非常に緊急の課題があると思っています。定点調査の中では、16ページのところに、学部、修士や博士課程の就職活動が研究活動に与える影響という形で出ていますが、このデータから見て明らかなように、修士課程が一番影響を受けているんですね。しかも、修士課程は就職活動長期化が進むと直撃を受けます。
例えば、国立大学では、大きく影響する、やや影響するというのが80%に近いです。これは研究活動に影響を与えているということだから、研究活動にとってプラスになっているという可能性もありますが、自由記述の内容からも明らかなとおり、マイナスの影響になっているわけです。しかも、それが急激にダメージを受けているのです。
この点が非常に重要だと思っているのは、就職協定についての議論の中で、企業の採用活動がかなり自由化される方向に既に進んでいて、就職活動の長期化は、多分、この一、二年で相当加速するだろうと予測しています。
博士にたくさん進学する学生を抱えているのは、東京大学などはそうですけれども、それはむしろ全体から見れば、国立大学でも少数です。今のような状態で結論がなかなか決まらない中で、自由な採用活動が加速すると、大学の研究成果に極めて大きな影響があるはずです。具体的に言えば、修士の学生という、各研究室で実験データを出す人が長期間不在になるということですから、論文数は確実に大幅減になります。
多分、一、二年の間に目に見えた形でそういう結果が出るはずで、その結果に対しては、大学改革が進んでいないというフィードバックが掛かるはずです。これは正にデフレスパイラルで、これは、いろんな戦略を今考える中で一番緊急性を要するものだと思って、先日の未来投資会議でも、採用活動の移行の在り方によっては、大学院教育が急速に劣化することにつながりかねないという発言をしました。
このデータでは、辛うじて、16ページのところにそういう痕跡があったので、これは使えるなと思ったのですが、もしほかの項目でも似たようなデータを読み取れるものがあれば、それをそういう視点で集約しておいていただけると、緊急提案をする上では重要なエビデンスになるだろうと思います。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  たしか数値的なデータはこれですけれども、また、これに関する自由記述の中から、補足か補強できるようなものがあるかどうかは確認してみたいと思います。

【濵口主査】
  これ、何か深掘りする調査の方法、ないでしょうかね。かなり大きな問題だと思うんですけど。

【伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長】  
  どういう視点かにもよりますが、今回の調査でやったのは、まず、回答者の方が属する研究室で、構成員を調べて、その中で、修士の方がどれぐらいいるかというのは調べております。
それの結果として、先ほど御指摘がありましたように、やっぱり大きな大学は博士がある程度いるんですけれども、地方の大学になると、より修士の方が割合が増えてくる。私学になると、今度は学部生が増えてくるという、そういう構造が見えてございます。そういうこともあるので、今日、中頃の資料でお示ししたように、やっぱり修士の学生の就職活動というのは非常に研究に影響してくると考えます。
当研究所の別の調査ですが、論文の著者における修士学生、博士学生の割合を調べたような調査もございます。これに関しては、例えば化学なんかは非常に修士の割合が高いとか、その分野によって違いも見えていますので、その辺りも踏まえて、データをまとめることはできるかなと感じております。

【濵口主査】
  どうぞ、新井さん。

【新井委員】
  各研究室に関して、その先生がお持ちの基盤公費、割る、研究室の学生数というのを出していますか。というか、各大学の基盤公費の額を把握していますか。

【伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長】
  各大学というのはしてないんですが、この調査で、回答者の方が組織からどれぐらいの資金を得ているかというのはあります。
今日の資料1-1-1の109ページが、この回答者の方が所属機関から配分を受けた個人研究費の額ということで書いてございます。一番上が全体で、下の方に国立大学等というのがございますが、紫のバーがちょうど30万円から50万円未満ですので、約半分の方は50万円未満となっているということが分かります。
加えて、職階にもよって違って、例えば助教クラスの方だと、一番左、1万円未満という方も24%、この方々は恐らく何かしらの研究プロジェクトで雇用されているのでこういう形になるかもしれませんが、全体としては、こういうような形になっています。

【新井委員】
  こういうデータって、実は経団連とか経済界の方って把握していらっしゃらなくて、まさか国立大学の旧帝大系で100万ももらってない先生がいらっしゃるなんて思ってないって、いや、実は昨日も住友グループの社長会に行ったら、信じられないみたいなお話だったんですよ。それで基礎研究をやれるのかって。学生数というんですか、研究室が抱えている修士の学生数で割ったら、それ、3万円にもならないじゃないですかと。それ、どうやって教育するんですかみたいな話が出ました。
ですから、本当はこういう話って、上手にまとめれば、幾らでも、日経とかの何面か何かに載るような話なのに、出し方が下手なんじゃないかと思います。

【濵口主査】
  どうしましょう。

【伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長】
  今回、一応この調査、いろいろプレス関係にも宣伝しまして、一部は取り上げてくださってはいるんですけれども、なかなか目立つような形では取り上げていただいてないところはあるかもしれません。
ただ、我々としては、そういう議論する上での土台を提供すると。こういうデータに関する見方も多様なものがあるので、我々として、どこまでメッセージを出すかというのは考えてしまうところもあります。まずこういうデータを出して、こういうものを皆さん、どう考えるかというところで、こういう場で御議論いただきたいですし、今みたいなフィードバックをいただけると、我々も新しい分析の視点が生まれますので、そういうものを参考にしていきたいと考えています。
個人的にはいろいろ思うところはあるんですけれども。ということです。

【濵口主査】
  新井先生、発表していただいたら。

【新井委員】
  そうね。朝日のメディア批評に書くという手がありますね。

【濵口主査】
  文部科学省を後援するという形で、いかがでしょうか。
どうぞ。

【越智委員】
  私もその視点なんですが、やはり各大学の、文系、理系というのがきっちりしてないところもあるかも分かりませんけど、どの程度大学から基盤研究費が出ているのかと。その教室なら教室に、その個人でもいいと思うんですけれども、例えば教授であれば、どの程度の基盤研究費が配分になっているのかというところはおさえておくべきだろうと思うんですよ。
それプラス、競争的資金をどの程度取っているかとかいうこと、また、そこの教室に何人ぐらいの修士の学生がいる、博士の学生がいるという数をおさえておく。基盤研究費がほとんどないような大学もあるわけです。1人の教授に10万円以下の大学もあります。そういうところはきっちりおさえておくべきだろうと思います。

【濵口主査】
  よろしいでしょうか。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
  この実は定点調査は、やや選ばれた特定の研究者だけのデータですので、実は、97ページの研究室の人数のデータは多分平均よりも多いだろうという御指摘もあるということで、いずれにしても、そういう本当の全数的な調査という辺りをどのようにやるか、この辺は、多分、高等局とかもいろいろ関係してくるところもあるかと思いますが、ただいまいただいた御意見などを踏まえて、我々の研究所として、何ができるか、検討してまいりたいと思います。

【濵口主査】
  どうぞ。

【郡委員】
  議論が今出ていた新井先生、委員が言われたことに付随することなんですが、今日、ここへ来るに当たって、何か勉強してこないといけないということで、いわゆる修士で企業に勤めてしまった人たち、その人たちと懇談する、実費ですが、やりました。
そして、その方々が集まったのは、性格上、私の医薬業界や、その方々が多かったんですが、その方々の声というのは、こういう大きなマスの調査の中では出てこないこと、それは言われていることですが、やはり就職ということに、五神先生も言われた、そのところにすごくディスターブされてしまうと。
それは、就職活動であり、そして、つい、企業の方もおられるんで、是非お願いしたいんですが、そこへ行って、キャリアパスにならないと。その3年や4年間というものがカウントされてくれないと。そうすると、やはり2年のところですぐに就職したい。あとは、もうよく言われていることですが、任期制等々です。
もう一つ言われたのが、先ほど、いわゆるプロパガンダ、宣伝が下手だというお話がありましたが、学生さんの方に対しても、今、政府が、文部科学省が一生懸命やっておられるサポートする制度、それを十分に私たちに知らせてないんじゃないかと。いわゆる奨学金の制度もたくさんあることはよくよく知っている人は知っているけれども、それを大学、あるいは、個人を通じて教えていただくようなことを、マスコミと応じてやるんじゃないかと。
というのは、学部生に対する無償化に関してはいつも新聞をにぎわせていますが、そういうところの一番重要な研究力を高める大学院、あるいは、ポスドクに対するサポート制度というものを作って、それを宣伝するようなことをしていただければということを言っていました。
少し今の新井先生のことで補足すると、そういうところだと思います。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
全体として、先生方の御意見、かなり共通したものがあると思いますが、修士の就職の問題と、それから、基盤公費の問題、これは文部科学省と大学側の意見交換だけではなかなか解決できない大きな課題だと思います。それで、議論は続けることとともに、やっぱりこれ、発信していかないと、外部へ発信しないといけないかなということをすごく実感しております。特に幅広く社会に、日本が今こういう、日本のアカデミアがこういう状況にあるということを。
是非、先生方の御協力をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
まだ御発言いただきたい方もございますけど、時間もございますというので、次の議題(2)に移らせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、議題(2)を事務局から、資料2について、説明をお願いします。

【大洞文部科学戦略官】
  では、議題(2)について説明させていただきます。
まず、今の点については、今後、論点に盛り込んで、委員会としても取りまとめて、発信していくような形をしっかり考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
議題(2)の資料2に移る前に、参考資料で周辺状況を御説明させていただきます。こちらはタブレットのみの資料となります。
参考資料1を開けていただけますでしょうか。
こちらは、1枚目右下にありますように、CSTI、総合科学技術・イノベーション会議で5月13日に、文部科学大臣から「研究力向上改革2019」として説明した資料です。今回の論点にかなり関係する内容でございますので、簡単に説明させていただきます。
2ページ目を開けていただきますと、骨子が書いてあります。研究力の低下等に対して、「人材」、「資金」、「環境」、三つの面でしっかりと手当をしていって、大学改革と一体的に推進することによって、V字回復を目指すというシナリオになっております。
2ページ以降、具体的なことが書いてあります。まず、人材の面につきましては、今回、我々の論点にも当然取り入れて書いてございますけれども、ここに上げられておりますのは、プロジェクト雇用における若手研究者の任期を長期化することとか、専従義務が掛かっているところを勘案する話ですとか、あとは、若手ポスト自体を重点化する話、今も出ていました博士課程の経済的支援を様々な財源を活用していく話。
また、バイアウトと申しまして、競争的資金の直接経費から、研究以外の時間に充てる代行経費を支出できる道を開くという制度の導入ですとか、もしくは、国際化における日本人、海外経験を有する日本人教員の登用の拡大等を上げております。
ここに、2020年度よりとか、19年度よりと書いてありますように、基本的にここ一、二年で本当にすぐに手当をすべきものを中心にまとめたプランです。
4ページ目は資金の話と環境の話が書いてありまして、資金としてはやはり若手への重点化ということ、また、オープンイノベーション機構等を活用して外部資金の呼び込みを強化、多様化する。そして、直接経費からのPIの人件費を出すということを可能にしていくという方向性が示されております。
また、研究環境としては、全く我々の論点と同じでございますが、研究設備のコアファシリティ化ですとか、また、技術職員やURA職員の活躍促進ということが書かれております。
5ページ目は、地方大学における取組の好事例というのを併せて大臣の方から御説明いただきました。詳しくは触れませんけど、一番左に、弘前大学、COIで、こちらは健康増進サービスについて、データを集めた成果からいいものが出てきている話ですとか、真ん中の信州大学であれば、生活支援ロボットというものを中心に、いろいろ産学連携、地域課題の解決につなげている話、右側の滋賀大学は、データサイエンス学部を作って、人材を養成している好事例があるということを紹介させていただいております。
こちらにつきまして、この回のCSTIの最後に、総理の方からも具体的な指示がございました。まず、平井科学技術担当大臣と柴山文科大臣を中心に、年内、12月までをめどに、我が国の研究力を抜本的に強化するための「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」を策定するようにという指示がございました。今後、関係省庁と一緒に、検討していきたいと思っています。
また、このCSTIで、一つ、平井大臣の方から、大学とか研発法人の共同研究機能を外部化すると。出島という言葉が使われておりましたが、そういった御提案もございました。それにつきましても、総理の方から、民間資金の積極的な活用というのを目的として、多様な形態の産学連携が可能となるような、そういった共同研究機能を外部化するような仕組みというのを検討するようにと指示がございました。 こちらがCSTIに関する状況です。
参考資料2が、今の柴山大臣の発表の元となったもので、4月23日に発表した資料です。少し詳細なものになっております。
また、参考資料3についても言及させていただきます。こちらは、去年8月にこの委員会で取りまとめていただいた基本計画の進捗状況の把握と分析結果というものを、改めて1枚紙にまとめた資料でございます。基本的なデータですとか、現状認識、そして、方向性と、人材と知の基盤、研究資金という形でまとめておりまして、今回の論点も、基本的にこれに立脚して作らせていただいているということですので、今回、詳細な説明はしませんが、言及させていただいております。
では、資料の方に移らせていただきたいと思います。資料は2になります。こちらはA3で机上にも配らせていただいている資料です。
1枚目は前回の資料でございます。前回は、基本理念として、基礎研究力の戦略的な維持強化が必要ということで、五つの検討すべき方向性を黄色いところで示しております。また、右側に、社会のパラダイムシフトに柔軟に対応するような科学技術イノベーションシステムという、青いところの軸を書いておりまして、そこでも五つ方向性を示させていただきました。
今回は更に具体的な対策、先ほど冒頭に、濵口主査の方から、抜本的にというお話をいただきましたが、どういった対策が可能かというのを是非、委員の先生のお知恵をいただきたいというふうに考えております。
2ページ目を開けてください。具体的対策(1)と書いてあるものでございます。こちら、左側の黄色いところの1から4に当たるところについて、具体的に対策、方向性を書いております。
時間もないので、簡単に御説明させていただきます。まず、一つの方向性としては、挑戦的・長期的・分野融合的な研究が奨励されるということでして、ポイントとしては、先ほどもありましたように、長期的で多様な学術研究のためには、基盤的経費ですとか、科研費の充実は当然必要であると。この軸はまずぶれないということだと思います。
2番目に、やはり振興・融合分野を促進するファンディングということで、科研費の新学術ですとか挑戦的研究、JSTの研究の充実を図る。
3番目は、若手向けファンディングにおいて、もう少し挑戦ですとかアイデアを重視していくということが方向性としてあるのではないかということで、評価基準ですとか、若手研究者自体が審査に参加していただくような仕組みも検討するべきではないか。
また、論文数や引用度だけでない基礎研究の業績の評価手法についてです。短期的なしてんで論文数などの評価にとらわれて、今、若手がなかなかチャレンジできないという状況もありますので、そういったものも検討すべき。
また、すぐれた研究が継続的に支援されるというのが長期的な取組になりますので、その辺りもファンディングの在り方をしっかり考えていく必要があると。
また、融合的という意味で、人文社会科学と自然科学との融合というのは非常に重要ですので、社会ビジョンですとか社会課題解決、ELSIの課題をなどに取り組む際に知の融合というのを図っていくような仕組み、これはファンディング中でも考えていくべきではないか。
2でございます。若手研究者の自立促進、こちらのポイントは、やはり1番目に上げていますのが博士課程の生活費相当の経済的支援です。特にトップレベルの研究大学においては、抜本的に充実すべきというメッセージを出しております。欧米では100%もらえるのが当たり前ですので、そこと比べて、やはり抜本的という必要があると思っています。そのための財源ですが、まずは競争的資金ですとか、企業との共同研究によるRA雇用ですとか、また、RAの受給上限が掛かっているような場合には、それを撤回すると。また、奨学金、企業からの奨学金、TA等様々な財源を活用し、全てフルメニューで支援していく必要があると考えています。
2番目は大学院教育の実質化、キャリアパスの多様化ということで、こちらは産業界に求められるような高度な知識を備えた人材の育成とインターンシップですとか、また、URA等も含め様々なキャリアパスを開いていくということだと考えています。
3番目は、プロジェクト雇用における専従義務の緩和ということで、2割程度は、そのプロジェクトで雇用される人も少し自由な研究ですとか挑戦ができるような環境を作っていくということを考えたいと思っています。
4番目には、やはり若手研究者のテニュアポストの比率というのが少なくなってきているということで、こちらはもちろんテニュアトラック的な競争の上に、任期のない職を得られるというものが前提なんですけれども、そちらを確保して、逆ピラミッド型の年代分布というのをしっかりと是正していくということが必要と考えております。
こちらは、具体的財源がやはり必要になってくるということで、例えば、先ほど、競争的資金のPI人件費の質などが解禁や企業からの直接経費の人件費計上などによって、そこで大学側に一定の人件費の余裕が生まれれば、それを若手雇用、テニュア雇用の制度に充当していただくような、方向性を出していきたいなと考えています。
また、若手向けのファンディングですとか、スタートアップ経費と、こちらをしっかりと確保すると。特に若手向けファンディングは、科研費とJSTにありますけれども、もう少しその前段階のアイデアですね。先ほどの基盤経費の話と関わってくると思うのですが、その部局長とか所長レベルでシードグラント的なものがしっかり充実されていくと。そういった形も重要かというふうに考えております。
また、若手の活躍が当然重要なのですけれども、やっぱり我が国の研究活動の中核となる研究者、今、実際に非常に能力の高い研究者のところの活躍促進というのも、若手と併せて検討していく必要があるということも述べております。
3番目が、最高水準の研究環境の実現ということで、最先端の研究施設・設備などを備えた研究拠点を戦略的に作っていくと。例えばWPIという拠点もございますし、共同研究共同利用拠点なども含め、そういったものをオールジャパンで戦略的にどう配置していくかというのを考えていきたいと。
2番目ですが、大学ですとか研究所の中のコアファシリティを促進するということで、こちらにつきましても、競争的資金の際に、そういったことを条件にしていただいて機器を買っていただくとか、また、それを支援するようなファンディングというのも考えたいと記載しています。
 また、研究時間確保という意味では、書類面ですとか申請面ですとか、そういった手間を省くという意味で、researchmapとかJREC-INなどの活用とか、あとは、先ほどのバイアウトの話、また、学内事務の削減ですとか、URA等の事務局機能の強化ということを検討したいと思っています。
また、技術職員の育成、キャリアパスが、非常に重要でございます。日本はどうしてもここが軽視されておりますので、ここについてはしっかりと、どういったキャリアパスを構築していただくことで、誇りを持って仕事できるかとか、好事例をしっかり展開するということをしたいと思います。
また、スマートラボ等も重要と思います。
国際連携といたしましては、国際共同研究を、政府間ですとか、ファンディングエージェンシー間でしっかり強化していく話ですとか、国内研究費においてもそれを意識していただくような話も書いてございます。
また、大学の事務局機能の強化、専門人材の育成ということがあると思います。
また、国際研究経験が採用の際などに考慮されるような、そういった枠組みというのも検討すべきではないか。求人を、主に面接ですけれども、オンライン化できないか。あとは、若手研究者の派遣制度を充実すると。
こういったところを、議論いただいて、それを元にしっかり対策を考えていきたいと考えています。
また、具体的対策(2)について、御説明いたします。

【中澤企画評価課企画官】
  対策(2)の方でございます。最後のページになります。こちらの方も説明させていただきます。
改めてでございますが、こちらは1枚目の資料の右側のところでございます。青いところの中で、特に点線で囲った部分を少し書き下したという状況でございます。
全体の趣旨といたしましては、やはり社会でパラダイムシフトが起きていると。デジタル革命が起きて、データ、情報というのが価値が持っている時代でありますし、「もの」から「コト」へと価値がシフトしているという状況の中で、やはり日本の中では、イノベーションを出していく、そんなルールが変わっているにもかかわらず、日本がまだそこまで社会が追い付いていないという中で、大学や研発法人の中核に何ができるかということであります。
時間がございません。ボックスが三つありますが、真ん中と下だけ御説明させていただきます。
まず、(1)は、一言で言うと、もうこういうことであろうと。すなわち、卓越した知の集積をベースにして、知的資産を価値創造につなげる仕組み、この中核と機能していくということではないか。
二つ目は、知を人材と捉えたときに、その人材の流動性の話が前半にありますし、後半の方は、大学、研発法人といったその場に集う人々、この相互作用を戦略的に起こさせていくということだと思っております。従前の産学連携の主体である企業や研究者と、そういったところに加えて、正に学生だとか社会人学生、彼らも当然、イノベーションの主体であるというようなことで意識しているところでございます。
三つ目、(3)のところは、1行目の中段にあります知の適切な「値付け」、これが一つ重要なフレーズではないかと思っております。もともとといいましょうか、日本であると、無形資産、これをなかなか価値判断していくというか、価値を評価するというのがなかなか難しいところがあったように感じてございますが、今、正にそこのターニングポイントが来ているのではないかと思っておりまして、知的生産活動、これを正しく評価して、経済システムの中で流通できる形にしていくというようなところが、これ、当然、産業界と一緒にやっていく必要があるのではないかと。
4番目は、その知の最大価値化、これに向けて、組織が、そのトップが経営資源をどのぐらい有効活用していけるか、あるいは、有効活用していけない阻害の部分を取り除いていく必要があるのではないかということでございます。当然、経営資源といったときには、ハードインフラ以外のソフトインフラというものも当然に入ってくるものだと思っておりますが。
(5)は最後でございます。やはり最後、一番重要になるのは、マインド、現場の意識・慣行・文化といったようなところであると思っております。当然、この現場といった中には、研究者、教育の方ももちろんながら、URAだとか事務職員の方、今現に、非常に優秀な方はたくさんいらっしゃいます。そういうたくさんいらっしゃる方が、もっともっとその仲間を作っていける、そんなエンカレッジしていけるというような取組だと思ってございますが。
下の具体的な取組の部分でございます。これはまだまだ書き切れておりませんが、絞って御説明しますが、上から、まず、二つ目の黒の丸でございます。大企業の中では顕在化しにくいアイデア・人材・取組、これをいかに外出しして、外出しというか、外に引っ張り出していけるかということでございます。イントレプレナーというような方かもしれません。リカレント教育のような場合でもあるかもしれませんし、PBL、Project Based Learningのような形かもしれませんが、そういった大企業の中にいる方を、大学の中の資源とインタラクションさせていく。そんな仕組みが必要なのではないか。
それから、上から四つ目の黒ポツでございますが、真ん中のところの黒ポツですね。副業・兼業、複線化、こういったところも大事ではないかというようなことでございます。当然、これまでもイノベーション、複数の異なる主体の交わりとかいうところもありますが、一人の個人、これが二つの側面を持つといったようなところでないかと思っております。
当然、これまでも、クロスアポイントメント等でいろいろこういった取組をやってきているわけですけど、なかなかこれ、普及していかないというようなところもあるのは、やっぱりそこに乗ってくる、そこに参画してくる研究者、教育担当の方々のインセンティブがないんではないかということで、当然、そういった個人の給与上のインセンティブ、こういったところも必要ではないかと思ってございます。
それから、黒ポツの一番下から2個目でございますけれども、こちら、経営資源ということで、トップが経営をする際の規制緩和をしていくというようなところが必要ではないかと。当然、大学の中でも、国立大学は国立大学法人法に縛られてございますし、研発法人も同じように法律の範囲でということがございますが、では、一方で、イノベーション創出といったところを最大の目標としたときに、その経営資源を使っていく中で、規制緩和があるのではないかと。保有資産をもっともっと有効活用していける話だとか、それとか、附属病院といったようなところの位置付けという部分、あるいは、寄附金の拡充に向けた規制緩和と、そういったところを考えていけるのではないかということでございます。
まだまだ、全体を通して検討が未熟な部分がございますので、御意見いただければと思います。

【大洞文部科学戦略官】
  事務局の説明は以上になります。
1点、白石委員の方から御意見いただいておりまして、簡単に御紹介させていただきます。机上にも配付してございます。
三つ御意見をいただいておりまして、まず、「基本理念」のところは「基礎研究力」だけじゃなくて、「先端基盤技術」、安全保障ですとか国家の基盤につながるようなところもちゃんと意識して検討すべきであるというような意見を、いただいております。
2点目は、若手のところで、やはり日本の大学の多様性というのが大事で、学部や博士課程を出たところでない大学で活躍する方、研究者を優先的に支援するとか、もしくは、「研究大学」は将来的には大学院大学化をすべきじゃないかという御意見をいただいております。
また、3番目といたしまして、本委員会では後半の議論になりますが、研究戦略をしっかり考えていく際には、きめの細かい、すなわち、単なる分野ではなくて、もう少しきめの細かいところに着目して分析をしっかりしていただきたいというような御意見をいただいております。
以上、紹介させていただきました。ありがとうございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
詳細にいろんな課題、それから、改革点をお話しいただきましたが、更に具体的な案について議論を深められればと思います。どうぞ御意見をいただければと思います。
資料2の1枚目、大きく分けますと、基本理念の目指すべき方向性、1、2、3、4、5とございます。それから、イノベーションシステムの構築の話で1、2、3、4、5とあります。特に事務局としては、具体的対策の赤の(1)、(2)というところをかなり意見をいただきたいということがありますが、それにかかわらず、まずはその5項目それぞれございますが、これ以外に項目はあるかどうかということ、対策として、その意見。あるいは、このそれぞれの項目、左側、右側に関して、御意見いただければと思います。
それから、五神先生、情報の関係で御意見いただいていますので、まず、そうしたら、五神先生、少しお話しいただけますか。

【五神委員】
  先ほども説明の中で、「もの」から「コト」へと価値が変わるというお話がありましたが、ここで間違えてはいけないのは、産業資源が「もの」的なものから「コト」的なものに変わるわけではなくて、価値創造の主体が「もの」から「コト」へと主客が反転するということで、「もの」がなければ「コト」の価値を創造することもできず、両方大事なのです。
それはなぜかというと、10年以内に、決定的に日本がより繁栄するか、貧乏になるかという岐路に今、立っているとしたときに、日本の産業資源のほとんどは「もの」中心に分布していて、10年ぐらいでは今いる人材を総取っ替えするというわけにはいかないので、その「もの」的な産業資源の中で、世界的な優位性がどうあって、新たなSociety5.0としての「コト」の価値に当てはめてみて、どのようにその優位性を活用するかということが大事になっているのです。
それがリニアモデルではなくて、不連続な形で起こるので、その従来のリニアのモデルの中で考えていたような思考法から、いかに意志を持って決別するかということを考えないと、議論に非常にロスが出てしまいます。
そういう意味で、ここ半年ぐらいの国際情勢の変化を見ると、日本に千載一遇のチャンスが来ていることはまず間違いありません。諸外国が様々な要因で不安定になっている中で、やはり日本で研究開発もしたい、イノベーションを起こしたいという需要は着実に存在し、今、日本は非常に優位な環境になっているのですけれども、それに対応できない可能性があると思っています。
その中で、基本的には、その価値が、ここでは「コト」と表現されていますが、知識、情報、デジタルイノベーション・レボリューションあるいはトランスフォーメーションが駆動力であることは間違いありません。そのデータをどう活用するか、あるいは、日本の強い部分についてデータをどういうふうに効果的に収集するかということが非常に重要になっていて、戦略的なデータベース構築ということが極めて喫緊の課題となっています。これは今年、来年ぐらいでやらないと、間に合わなくなってしまいます。
そういう意味で、配付資料はそれに関するものをまとめたものですが、例えば、日本は国民皆保険であるが故に、レセプトデータはこれまでに約2000億レコードが利用可能な状況になっています。皆保険でこのようなデータが取れる国はほかにないのかと調べてみると、韓国があります。日本は月次更新になっているのですが、韓国は後発であり、しかも、国が日本よりは小さいということもあり、日々更新です。日本は月次更新で既に価値のあるデータが取れてはいるわけですが、これを日々更新できれば、その価値は更に増すはずです。
これは医療の中身そのものに限った話ではなく、人のモビリティデータとしても十分、産業価値のあるものになっています。レセプトには患者の住所と通っている病院のデータがあるわけですから、人がどういうふうに動いているかということが把握できるデータになっています。これを例えばオンデマンドバスの運行計画に活用することができるでしょうし、これが日々更新になれば、更に価値が出てきます。こうしたデータセットの整備が非常に重要です。
それから、2番目は、日本が産業・研究的に強い分野の中に材料関係があります。金属材料の合金のデータとか、化学分子データとか、医薬品のデータとか、いろんなデータがありますが、それがインフォマティクスになると、バイオインフォマティクスと同じように、マテリアルインフォマティクスということになります。
そうすると、これまで材料開発というのはノウハウの塊によって成立していたといっても過言ではないのですが、それがデータを機軸として誰でもできるようになります。ですから、今、世界中がデータをかき集めようとしています。NIMSでは学術論文からマテリアル、高分子のデータを抽出するという作業をこの20年ほど継続して行ってきており、現状では最大規模のデータベースが整備されています。様々な人がこれを買いたいとやってくるという話を橋本理事長から聞いています。
このマテリアルインフォマティクスに対する取組は、いま同時多発的に取組が進んでいて、例えば米国化学会は、3,000人規模の体制で一気に追い上げようとしていますし、エルセビアは論文データをデジタルで持っていますから、AI解析などでマテリアルインフォマティクスに使いやすいように加工して、それを高額で日本の企業に売るというビジネスを仕掛けてきています。
このデータを集める作業というのは知的な作業です。なぜ知的かというと、データの中身について、学問的なある程度の知識がないときちんと整理できないからです。しかしながら、データの整理それ自体はものすごく労働集約的な作業で、たくさんの頭脳のある人をいかに連携させて束ねるかが勝負になっています。
そういう意味で見たときに、今、東大もバックアップしながら、NII、NIMSで連携しようということで、マテリアルインフォマティクスについては具体的な取組を進めようとしていますが、これは今こそ全国のSINETでつながっている大学を活用して、日本にとって大事なデータを、全部はできないので、幾つかリストアップしてでもやるべきです。
そのときに、この作業をする重要なマンパワーは明らかに修士課程の学生になるわけですが、修士課程の学生は就職活動でほとんど大学に来なくなる状況になって、これはまずいと気が付いたわけです。
そして、もう一つは、タイムリーな話でありますが、昨年11月に「柴山・学びの革新プラン」というのが出て、3月の中間まとめで、このSINETを小中高につなぐという話が出てきました。小中高校は全国の人の住むところに合計3万校ほど設置されています。SINETをつなぐと言っても、教育コンテンツをデリバーする放送のような話ではなくて、データをアクティブに収集するデータ収集ポイントだと考えれば、全国に2万5000局ほど存在する郵便局を超える網羅的なデータ収集体制を整えることができます。しかも、教育のサポートのために、例えばリタイアした団塊の世代の人たちが、いろんな形で学校に出入りすることになれば、その人の動態も含めたデータが取れるものになるわけです。ですから、この柴山プランを、是非そういう形で見直して、データを取る体制を世界に先駆けて作るという形で利用すべきだと思っています。
4ページのところは、そういう社会になって、日本の国土に世界有数の高速のネットワーク網が既に整備されているという状況を優位性として使ったときに、日本列島はイノベーションの最適地となり得ます。そうすれば、世界中の人とお金が入ってくる環境を作れるはずです。ここで今問題なのは、知識集約型社会になるとデータの価値が格段に増すわけですが、データを取得するときに絶対必要になるのは半導体です。日本はかつて半導体産業で世界のトップを走っていたわけですが、情勢が変化するうちに、半導体、特にロジックICのファウンドリーはなくなったわけです。しかし、半導体周辺産業はまだたくさんあって、現在、日本はそこで稼いでいるのです。
ですから、半導体であればメガファウンドリーに、あるいは、データについてはメガプラットフォーマーに、吸い取られてしまうことなく、きちんと主導権を握るような戦略的連携が必要で、それはオールジャパンで進めていかなければいけません。
現在、国家戦略の一領域として量子技術が挙げられていますが、量子技術を実現するのにも半導体は不可欠です。これが世の中で広く必要とされるまでにはまだ数年かかりますが、それまでの間をうまく乗り切らないと、量子技術を活用しようというときには、既に日本の半導体産業がすかすかで、国内では何もできないということになってしまいかねません。そうならないよう、量子技術戦略を考えるのと同時に、それを実現する手段をきちんと確保するという意味で日本の半導体産業をきちんと支えていくということを、ここ一、二年できちんと進めていく必要があります。やることはかなり明確になりつつあり、部分的には先手を打ったところもあるので、これを総合的につないでいくことが必要です。こうした視点、特に、高度な知識を持った人の人数という全体のベースになる部分は、文部科学省が一番得意な分野でありますので、そこから主導的に戦略を打ち出していただくよう、是非お願いします。
もう一点だけ申しますと、若手研究者の「若手」という用語に私は非常に罪悪感を持っています。私が総長になったとき、東京大学では、40歳以下のパーマネント雇用が、2006年に903人いたところ、2016年に383人と、520人も減少しました。その話が非常にインパクトがあったので、「若手イコール40歳以下」という認識が広まっているように思うのですが、そのとき心配していた人はもう45歳になっています。
人口分布を頭に思い浮かべていただければと思うのですが、第2次ベビーブームの人たちはもう40代半ばになっていますし、ポスドク1万人計画の影響を受けた人は四十七、八歳です。「40歳」というところに着目してしまうと、その人たちを国家として見捨てたことになり、それでは若手は付いてこなくなります。だから、その表現ぶりを注意深くすることが必要です。
10年前は「40歳以下」でもよかったのでしょうが、この世代に手当が必要な状況は続いていますので、丁寧に対応していく必要があります。この世代は、第2次ベビーブーム時代の団塊ジュニア世代の人たちということになりますが、ここ10年ぐらいの勝負を考えれば、一番大事な世代なのです。この世代をいい形で好転させることによって、同時に、若手もエンカレッジしていくということをやらないと、全体として元気が出ないわけです。
第6期になれば、もうその人たちは50代に入るくらいになり、「若手」ではなくなるので、支援対象については注意深く定義して、その世代を日本がまとめて切り捨てるというようなメッセージを出してしまうことは絶対避けるべきだと思います。
以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございました。いろいろ御意見いただきました。
特に今、日本は優位に立っている一方で、極めてオープンな社会なので、情報がほとんどただ取りにされているような状況もあるし、それから、非常に長い間、狭い国土でしっかり集約した組織を作ってきているので、データの質が非常にいいんですね。これ、各国、狙っているんですけど、これが主体的に我々が活用できていないという問題はすごくありますね。これ、本当、どうしたらいいんだろうと思うんですけど、先ほどのレセプトの話とか、いっぱいありますよね。

【五神委員】
  一点言い忘れたことがありました。先ほどのNISTEPのところで言うべきだったのですが、技術予測をする場合に、ヒアリングをしている方々、例えば産業界の方を見たときに、グローバルな視点がどこまで入っているかを確認する必要があるように思います。日本の産業環境は、資本の仕組みなどについてやや特殊なところがあるものの、それは急速にグローバルフラットに近づいています。つまり、日本が持っている資源の中でどこに高い価値があるかという認識は、日本の外側から見ている外国人、あるいは、海外で主に仕事をしている日本人と、日本の中にいる人では違うはずなので、両方をきちんと捉える必要があると思います。未来については、どのぐらいの割合が変化していくかというのを捉えないといけないので、その情報が少し足りていないような気がいたしました。

【濵口主査】
  御指摘のとおりです。
新井先生。

【新井委員】
  若手研究者の自立支援、キャリアパスの安定に関しては、本日、五神先生の御指摘のとおりなんですけれども、今回拝見して、少し気になったことがありました。
博士課程学生への支援については非常に書き込みが多いんですけれども、その後のポスドクについてはあまりはっきりしたことが書いてないということが気になりました。若手研究者が自立促進、キャリアパスの安定ということを2番で掲げるのであれば、キャリアパスに関しては、連続的、かつ、連携をした支援、落とさないということですね。どこのところでも落とさないということが必要なんですけれども、実際、JSPSでは、DCを充実した結果、PDの採択割合が低くなっているというような現状があるように聞いております。
PD、採択されると、月34万円ぐらい支給されると思うんですけど、そんなに34万も支給する必要があるのかという話もあって、量よりも、何ていうんですかね、一人一人の資金の配分額よりも、量を確保した方がいいんじゃないか。足りない分は、申し訳ないんですけど、非常勤講師とか、クロアポとかいろいろやって稼いでくださいということで、量は絶対に確保しなければいけないのに、今、十何%しか採択率が、10%ぐらいしか採択率がないというのは非常に大きな問題点だというふうに考えております。
特任研究員制度が広まったせいで、若手の研究者のキャリアが二極化しています。一つは、30代後半に至るまで、特任研究員で一度も教壇に立ったことがないという人が増えています。そういう方をテニュアで取ると、突然教育しなきゃいけないというんで、非常に困るというようなことがあります。
一方で、そういう特任研究員に就けなかった方は、非常勤講師を複数掛け持ちして渡り歩いていると。研究をするというキャリアが積めてないというふうに二極化している。
どちらにしても、大学でテニュアで修士、博士の学生を指導しながら、研究室を回していくという人材としてはどこか欠けているので、そういうのが両方をきちんとキャリアとして持っていけるような制度改革をしなければいけないというふうに思っています。
もう一つは、実は、地方の大学でなかなか、では、人材を確保できるかというと、募集しても、応募人数が少ないというような現象があるように聞いています。その理由が、やはり夫婦で動けないという話なんですよね。結局は、カップルがあったときに、一人が例えば北海道のどこかに行くとすると、結局はもうこの後で一緒に住めないかもしれないという状態になってしまうということがあって、やはり首都圏、関西圏が非常に倍率が高くて、そうでないところはなかなかいい人が採れないということが起こっています。
例えば、これに関しては、例えばアメリカ型のように、片方をどうしても雇いたいというインセンティブがある場合、パートナーの方を、例えば、半額で雇用できますと。半額は大学が、国が支援しますみたいな制度を全体として作ると、回りやすいんじゃないかという。大学にとって、パートナーも含めて雇用するということのインセンティブをうまく埋めるということが、その地方の大学の人材確保につながるんではないかと。そういうことはアメリカも考えている、やっていることなので、お考えいただきたいということと。
各大学、特に地方大学の血中、その大学出身者濃度が高過ぎる。ここに、国際連携というか、こんな、国際頭脳循環の強化というのがあるんですけど、国内で頭脳循環が強化されてないという問題がある。私は、基本的に白石先生に賛成で、博士号を取得した大学とは違う大学でポスドクとして研究活動を行う研究者を優先的に支援、あるいは、採用するというようなインセンティブを付けないと、国内での頭脳循環が行われないので、そこのところを考える。
もう一つ、雇用費は、どのみち、捻出しなきゃならないんですけど、どんどん減っていると。雇用費を捻出するにはどうしたらいいか。唯一あるのは兼業です。兼業から、今は兼業すると、そのまままるっと大学の雇用費は払って、プラス、企業からきお金がその先生のポケットに入るというふうになっていますけど、兼業から、企業とのクロアポをスイッチすると。
それで、そのときに、五神先生がおっしゃっているように、適切な値付けですね。大学の人材を例えば企業の外部取締役に出すとか、CTOに出すみたいな話になったら、適切な値付けをして、そして、クロアポで出すと。それを若手研究者の雇用に充てると。そういうようなことをしなかったら、とてもじゃないけれども、雇用費が回らないというふうに思っております。
ということで、あともう一つ、researchmapは商標登録してありますけど、rが小文字で、researchとmapの間はスペースなしですので、よろしくお願いします。
以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
1番目の問題は、これ、もう少し事務局で検討していただきます。ポスドクに関する記述ですね。少し検討が要るかなと。

【大洞文部科学戦略官】
  世代ごとに十分な手当がされているか、施策や支援が足らない谷ができてないかとか、そういう観点で少し考えていきたいと思っています。

【新井委員】
  そうですね。はい。

【濵口主査】
  2番目、3番目、地方大学の問題、あるいは、各大学が純血過ぎるというお話、現状の学長が何人かおられますので、御意見いただけますか。

【越智委員】
  モビライゼーションが起こっている研究者にしても、ただ、一方的な、広島カープから阪神に抜かれたり、巨人に抜かれたりするのと同じで、モビライゼーション、いい人が今度出ていって、なかなか帰ってこないと。1人だけ例外がいて、東大の数学の教授になった先生が、やっぱり東京よりは広島の方が良かったということで帰ってこられた人もおられますが、その新井みたいな人は例外的で、モビライゼーションは起こっているんです。それが十分かどうかということになると、やはりその前段階で、先ほど白石先生の御意見にあったように、頭脳循環が起こる形を何か取る必要が私はあるんじゃないのかというふうに思っています。
もちろん、地方で考えると、地方大学・地域産業創生交付金での支援を受けていますので、それと、先ほどの参考資料の中に地方大学の好事例があったんですけれども、やはり地方でも強いところは生かしておくと。ここの部分はもう少し詳細に調べて、この部分のところは強いんだから、ここだけは、地方のある大学にも残しましょうという部分がないと、地方は崩壊してしまうと思うんですね。
ですから、そういう分野を決めて、もちろんオンリーワンだけじゃなくても、コンペティティブであってもいいんですけれども、例えば鳥取はここ、愛媛はここの分野は必ず残していこうというような強い分野を残していかないと、私は地方の大学はこの先難しいことになるんじゃないかなというふうに思っておりますので、是非そういう視点も持っていただければと思っています。

【郡委員】
  いいですか。新井委員がいっぱい言われたので、消化し切れないところもありましたけど、言われた大半、賛成でして、私たち、名古屋の大学で公立ですと、本当に地方ではないんですが、今言われているようなことを是正しないと、研究者はじっくりと育っていかないというふうに思って、新井委員のおっしゃっていたことを拝聴しましたが。
例えば、最近では、御夫婦が分かれてやる、そして、採った後、必ず採った後、採るというか、採用した後、必ずそのどちらかに寄っていくというのが自然ですし、加えて言いますと、親の介護のためにうんぬんと、聞くわけではありませんが、どうしてということです。
それと、もう一つ、隣に五神先生がおられるので言いにくいですが、ようやく育った人たちを、2人、東大に取られました。この制度というのは、人材のトップランナーとそこに付いている若い人たちを、巨額のお金をもって持っていかれるということですね。
いや、これは外部資金がどれだけ増えたか否かという評価をよくされますが、その方々というのはやっぱり億単位を取る。そうしたら、次に、東大のために採ったのかなというようなところというのは、さっきで言うと、中日から巨人に行ったような感じかなとすごく思います。
そこで、白石先生のおっしゃっている、あるいは、新井先生がおっしゃった、これは地方とはいいませんが、活性化させるためのものというのは、これも後で五神先生に怒られそうですが、卒業したところとそこで働くところ、これはやっぱりある程度の期限を切って、1回はプールする、人生の間に、そういったことのルールというのを作らない限りはということは思います。
私ごとですが、私、イギリスにずっとおったときに、医学の者が、次、プロモーションするときは、必ずよその大学にしか行けないと。そういうことで、自分のそこだけにという感覚を持たないようにということを教わってきたつもりなんですが、後で先生、言わないでください。
ということで、トップランナーを、今の教員選考制度がそうなっているから、いい人を採るということになるんですが、その辺のところをやらないと、地方、あるいは、国立大学の研究者はじっくりと育っていかないだろうというように思います。
本論じゃないんですが、そういう制度というものも考えていただきたいなと思います。
以上です。

【濵口主査】
  五神先生、何か意見はありますか。言いにくいでしょうか。

【五神委員】
  東京大学は、皆さんが思っているよりも他大学出身の人が多いということを良いこととして言おうと思ったのですが、そうではないという流れですね。その点についてはいろいろな考え方があると思いますが、例えば海外に出ている方を東大で是非必要だといって呼ぶときに、配偶者の方のポストも一緒に考えながら人事をするということは、東大でも検討を始めています。そうでないと、国際競争では勝てないのです。
今、中国では高等教育に対してものすごく大きな投資を集中的にやっています。海亀政策の次のステップとして、そこに投資をするのが賢いというのはわかります。ただ、問題は、中国の資本主義は普通の資本主義とは違い、国家主導なので、そことまともに競争してしまうのは、良い構図ではありません。ここは、知恵が必要になるところです。
 私たちが言っているのは、データ駆動型社会はインクルーシブな社会になるということです。だから、地方と都市の格差はむしろ減る、地方というハンデも減るのです。それを実現するためには、小中高のときに、どこで生まれてもハイレベルの教育を受けられるようにしなければいけなくて、柴山プランの活用の重要なポイントはそこにももちろんあります。
ただ、問題は、資金循環という観点です。前回の総合政策特別委員会で、共同研究といっても、町工場の人たちからは100万円を出してもらうのも大変だという御指摘がありました。東大は年間1,400件の産学連携で共同研究をやるときに、1件あたりの規模はほとんど100万円以下だと言ったら、そういう御指摘があったわけです。
 つまり、リスク投資のような形でないと、大学にはお金がなかなか流れないのですが、それが地方でもきちんと起こるようにしないといけないということです。これは文部科学省というよりは、経済産業省の施策ということになるのでしょうが。
昨日、イギリスでの取組を聞く機会があったのですが、イギリスでは、中小企業が大学と連携して新しいイノベーションを起こすことを活性化するために、国がバウチャーを発行したそうです。中小企業がバウチャーを持って大学に相談に行くと、大学は、コンサルタント料としてお金を得るという仕組みです。50万とか、それぐらいのお金を持って相談に行けるというのは非常にいい仕組みだと思います。
ただし、今日本で同じことをやろうとしても、ワークしません。なぜかというと、相談に対してきちんと値付けができていないからです。今の状況は、例えば東大の場合、大きな企業の方と共同研究前の相談というのはたくさん起こっていますが、それに対してお金をいただいているわけではありません。
知恵に対する値付けができていない、つまり、無形なものにお金の回る仕組みはできていないのです。その仕組みをうまく構築すれば、良い形で産業と大学をつなぐことができるはずで、それを国家規模でやれば、地方にとっては重要なお金を回す仕組みになり得るはずです。それを実現するために何が必要かということはみんなで議論すればいいことだと思います。

【新井委員】
  今日のこの会議に2時間出たということで、NIIと東大に、それなりのお金がコンサル費として入ったらいいんですよね。

【濵口主査】
  文部科学省から。

【新井委員】
  そう、文部科学省から。

【濵口主査】
  今、三人の話、四人、お伺いしていて、一つは、突破口になるとしたら、地方大学というのはやっぱり個性を持つということかな。広島はマツダと非常によくやっておられる。こういう典型例をどう作っていくかが一つあると思います。
それから、二つ目は、頭脳循環をより活性化するということ。地方に東大卒の人がいっぱい欲しいですよね、逆に本当に。そういう活性化するには、例えば、自大学の人を採用しないとか、博士号を取った人は違うところへ行けとか、ドイツでは、5年以上企業で経験しないと、工学部で採用しないとか、そういうことがありますけど、そういうドラスティックなことはできるかどうかというのは、文部科学省は何かお考えかどうかは本当は少し聞きたいところですね、これ。聞きにくいと思いますけど。
それから、もう一つは、企業との頭脳循環がまだまだ足りないんですね。人材の交流は全然進んでいないので、企業側の方々にどうやったらいいか、これはもう永遠に解決不能な問題なのか、どこに問題があるかというのをお聞きしたいんですけれども。
最初の方はどうでしょうね。山脇さん、何か御意見がありますか。例えば、自大学の人は採用するな、なんていうのは。

【山脇文部科学審議官】
  個人的な見解になりますけど、この議論は10年ぐらい前からあって、大学の方に採用の自由があるんじゃないかという議論の方が強かったんですね、私の印象で。
私は、どちらかというと、自大学じゃなくて、やっぱり外から入れて流動化していって循環をするというのが一番、人材の育成とか流動性も、研究者も含めて、いいんではないかなという考えは持っています。その具体策になると、どうするのかというのはよく考えなければいけないと思っています。

【濵口主査】
  今の点で、例えば、いっぱい大学は評価、抱えていますけど、本当は評価は一本化してほしいなと私なんかは個人的に思うんですけど、その評価の軸に、その頭脳循環の要素を入れるかどうかとか。

【新井委員】
  血中何とか度という。

【濵口主査】
  純血度。

【山脇文部科学審議官】
  インブリーディングとかはどうやって入れるかというような議論をずっとやってきているので、それはもう一回改めて整理した方がいいかもしれません。

【濵口主査】
  是非御検討いただければと思いますけど。
それでは、いかがでしょうか、冨山さん。

【冨山委員】
  さっきの民間というか企業との循環の話なんですが、一つ明確にある現象として、というか実態として、従来、日本の会社、特に大手グローバル製造業の競争モデルというのは、要はひたすら改良、改良型イノベーション一本勝負なんですよ。要は、ずっとやってきたことを、インクリメンタルにこつこつと改善、改良して、要は、今日は昨日の延長線上で、今日は明日の、明日は今日の延長線上ですね。それで30年間、高度成長はうまくいきました、ちゃんちゃんなんです。
その背景は、当時は、エレクトロニクスにしたって、あるいは、マシナリーにしたって、自動車にしたって、基本的には破壊的イノベーションってあまり起きてなくて、自動車ははっきり言って、ヘンリー・フォードのフォード生産システムが最後の破壊的イノベーションですから、その後、ずっとひたすら改良型イノベーションでやってきました。その枠組みにおいては、基本的に組織は同質的で連続的なものがいいんです。多様性はくそ食らえです。非連続性はくそ食らえです、はっきり言って。
だとしますと、結局、採用において何を期待するかというと、日本における学歴というのは、学習歴ではなくて、合格歴なんですよ。要は、東京大学の文1に受かりました、理1に受かりましたという合格歴さえあれば、あとはどうでもいいです、はっきり言って。
そこで、一定の最低限の基礎学力があるということが担保されていれば、あとは誰でもいいんですよね、極端なことを言っちゃったら。あとは、面接してみて、性格が良さそうで協調性があってバランスが取れているやつを採っておけばいいと。なので、最強なのはあれですよね、それこそ、体育会のキャプテンなんて、もう東大なんか運動会の出身者、ほいほい、どこでも就職できちゃいます。メーカーだろうが、銀行だろうが、役所だろうが。そういうことですね。役所もそうです。要は公務員試験なんて似たようなものですから。
それをやってきて、どうなっちゃったかといったら、正にここに書いているとおりで、デジタル革命とグローバル化でこれはどうなるかと、要するに、不連続で、多様性が求められた瞬間に、みんなアウトです。もう住友が付こうが、三菱が付こうが、全滅です、はっきり言って。パナソニックや、日立でもそうです。今、いよいよ自動車もやばいんじゃないかということになってきているというのが今日の状態ですね。
そうすると、当たり前なんだけれども、多様性と非連続性というものにどう対応するかということを企業は求められているんだけれども、要はこれ、ゲームのルールが同質性と連続性というものに忠実だった人を偉くしてきたというルールが、もう入社時点から社長になるまで、これ、一貫して出来上がっちゃっているんで、これは要するに、会社の中にいっぱい既得権者がいるんですよ。
だから、よく日本の企業の人が、Ph.D.は使い物にならないというんですよ。それはならないですよ。だって、やっていることが、昨日、今日、明日の連続性の仕事をやらせているわけだから、それは2年間、3年間、4年間Ph.D.やっている暇があったら、自分の会社に入ってもらって、自分の会社でやっていることをやってもらった方が、そんなもの3年、4年後に役に立つに決まっているでしょう、こんなの。これが実態です。
ということは、問題は、要はこれで会社、産業がうまくいっているなら、何も僕は文句は言いません。だけど、この30年間、もう惨憺(さんたん)たる敗北の歴史を日本の産業、もう科学技術どころじゃないですよ。科学技術、落ち込んだというけど、産業界のもう凋落(ちょうらく)ぶりというのは、もうミゼラブルですからね。
だって、平成の初めの段階で、世界の時価総額のトップ10のうち、7社は日本ですよ。今、トップ40、ゼロです。あるいは、世界の売り上げランキング、トップ500の150社は日本でした。今、40社しかないですよ、日本。もう、これ、ミゼラブルですよ、はっきり言って。時価総額ももう言うまでもない。
要するに、こういうことなんです。だから、結局どうあるべきかと。これは答えは明確で、これは前から五神さんなんかとも議論しているんですけれども、例えばの話、日本の企業の例えば経営者層、経営レベル、Ph.D.、あるいは、ダブルマスター以上、ほとんどゼロです。今、新興国でさえ、そんなやつばっかりです。だから、とにかくかなわないのは、国際会議、経営者国際会議に僕が経営者を連れていくでしょう。向こう側に並ぶのは中国人だろうが、インド人だろうが、アメリカ人だろうが、ヨーロッパ人だろうが、もう要はPh.D.かダブルマスター以上しか並ばないわけですよ。こっちは、何か知らないけど、典型的に言っちゃうと、私大文系、体育系がそのまま並んじゃうわけですよ。そうすると、まず議論にならない。
要するに、彼らは、ファクトとロジックで議論をするという基本的お作法を身に付けている人たちです。こっちは、要するに、新橋の飲み屋と同じ調子でしゃべっちゃうんですよ。そうすると要するに議論にならないんで、今度、モデレーター、大変ですよ。毎回、彼の言いたいことはと、こっちが一生懸命、ファクトとロジックを補完してあげないと、議論が進まない。こういう状況が起きているんです。これが実は完全に産業競争力の既に反映しちゃっているわけですね。ということです。
そういう意味合いの上で申し上げたいのは、結局、ここでの議論というのは、アカデミアの危機であると同時に、実は産業の危機もここでは語っているんです。要は、せめてダブルマスター、Ph.D.ぐらいの知的な基本的な訓練、特に科学的な、要するに科学的な思考法、ファクトとロジックでものを考えるという思考法を身に付けた人間を日本の産業界にもっとたくさん送り込まなきゃいけないということも同時に意味しているんです。
だから、ポスドクで、要するに、民間で受入れ手がないというのは、実は両方に問題が、やっぱり極めて根本的な問題があって、裏返して言っちゃうと、例えば今、コンサルティングなんか、うちもそうですけど、うちに入ってきて活躍する確率は明らかにさっきとは逆で、やっぱり理数系の最低マスター、できればPh.D.まで行っている子はやっぱり立ち上がりが圧倒的に早いです。
これは理由は簡単で、僕らの商売はファクトとロジックしかないからです。ファクトとロジックで、要するに、新しい思考を要するに構築するということにおいて、一番困るのが私大文系の子なんです。私大文系、体育会、これ、もう全然駄目です、はっきり言って。もう4年間、致命的に差が付いちゃっているんで、もう一回、高校3年のときに戻って、もう一回考え、頭を鍛えてもらわないと、どうしようもないんです、これ。こういうことは実際起きています。
ということは、要するに、結局今、知識集約社会に行くということは、全ての社会のリーダー層というのは、こういった基本訓練を受けている人以外はもう役に立たないです、これ、世界的に。それは文系、理系、関係ないです、これ。
そうすると、ここでのこの若手のうんぬんですね。若手のうんぬんの問題が根本的に解消するためには、要は社会全体として、ここで議論している若手研究者みたいな人が、これは別にアカデミアに限らず、産業界だろうが、ベンチャーだろうが、何だろうが、あるいは、きっと政治家もそうでしょう。そういった領域でこの社会のリーダー層を構成するというふうに社会全体のキャリアパスをもう変えなきゃ駄目で、変な話、就職で滑った、転んだで何か取り合いやっているような次元の問題じゃないですよ、これ。
もっと言っちゃえば、正直、採る側からすると、就職活動にかまけられちゃって、要するにかこつけて、修士の勉強をされないで入ってこられちゃ、困るんですよ、こっちは。せめて修士論文ぐらいはちゃんと書くような訓練を受けてからうちの会社に入ってきてもらわないと、もう二、三年で死にます、そういう子たちは。どんどん辞めていきます、実際。
実はそうなって、恐らくそれは日立だって、トヨタだって、今の時代に本当に欲しい人材はそっちなんですよ。そっちなんです。性格が良くて、何かカラオケうまくて、座持ちがいいなんていうのはどうでもいいんだから、はっきり言って、こんなことは。
ここはとにかく、ものすごく大きなパラダイムシフトが起きているので、要はこの議論を、私は変な話、アカデミアのところに閉じた議論はできるだけしないようにしてもらって、もう社会に開かれた議論をしてもらいたいと思っています。
それから、もう一点、先ほどの五神先生の話に付け加えると、今、これからのデジタル革命の勝負はリアルです。リアルの世界の「コト」というのは「もの」をつなぐことが「コト」なんです。「もの」をつなぐことが「コト」なんです。ということは、いい「もの」があって、それをソフトでつなぐ力があると、このセットです。これが一つ。
それから、もう一つ、データの議論。デジタルプラットフォーマーに自然にたまってくる訳の分からないトランザクションデータ、はっきり言って、これ、ほとんどごみです。皆さん、Facebookとかを見たり、レコメンドの情報ってみんな見ているでしょう。かなり駄目でしょう、あれ。この5年間、全然進化してないでしょう、Amazonだって。ばかみたいなレコメンドばっかり出ているんですよ。
要するに、なぜそうなっちゃうかというと、これもさっき五神さんが言われましたけどね。データはマイニングしなきゃいけないんです。そうすると、要するに、ほんの少し重要な資源があっても、含有率が低いものは、はっきり言って、取り出すコストの方が高くなっちゃって、経済的にメーク・ノーセンスなんです。
リアルデータというのはますますそういう意味で純度が問われるので、データセットをどう取るか、どう作るか、それから、どういう取り方をするか、どう加工するか、どう整理するか。この全体、純度の勝負になるので、別にGAFAなんか全然怖くありません。やつらが持っているデータのほとんど駄目です、はっきり言って。
僕らも実際、企業が自然にたまってくるデータをいっぱい扱っていますけど、ほとんど金になんかならないです、経済価値を生まないです。ということは、裏返して言っちゃったら、今、日本、これからチャンスなんです。ここのこれをどう純度の高いデータセットを集めて、それをどう上手に加工するかというのはこれからのゲームなので、ここは実は日本のような社会構造が絶対アドバンテージがあるので、これは遅れていると思わないでください、是非是非。
遅れているとか、みんな言うんだけど、これ、大体こんなことを言うのは、実際GAFAが持っているようなデータのマイニングをやったことがない連中です。もうやってみたら、ミゼラブルですよ、本当に。本当にしょうもないものしか出てこないから。
ここは是非とも認識を新たにしていただいて、むしろチャンスだという認識で僕はやってもらった方がいいなと。少しいろいろ言いました。
あともう一点、最後にもう一点だけ。今、世の中の全てはスパイラルです。研究開発もスパイラル化しているし、さっき言った企業と会社、大学のアカデミアと、それから、産業の状況もスパイラルです。さっき新井先生の方から、産業界の人うんぬんとありましたが、産業界の人たちそのものが、程度が今、低いので、はっきり言って、要するに、科学技術アカデミアの実態を知らないというのは、僕に言わせれば、彼らが不勉強です。
さっき新井先生が言われたことは、僕は産業界の人は当然知ってなきゃいけないし、そんなの勉強して、僕は当たり前だと思いますよ。だって、要するに不連続、要するに研究開発プロセスがスパイラル化しているんだから、オープンイノベーションで、だから、どこにあるかということを必死になって探すべきで、そこにどういうお金が流れて、どういう人がいるべきかということは、これはもう全社を挙げて資源を使って、どういうビジネスをやるかというのを探してなきゃいけないわけで、もしそのことを住友何がしが知らなかったら、そいつは、悪いけど、社長をやっている場合じゃないです、はっきり言って。もっと勉強しろです、僕に言わせれば。

【新井委員】
  言ってもしようがないから、そういうことなんで。

【冨山委員】
  そうですね、そうなんだけど、でもそういうことだ。だから、そこはすごくこの議論の、何ですかね、スコープはすごく大きいと思うので、ここは是非是非頑張ってやりましょう。
以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
企業側の連続で、十倉さんに経営者として、連続でお伺いしまして。

【十倉委員】
  もう自分が責められているような気持ちで、Ph.D.でもありませんし、当社も、アメフト部やボート部や相撲部などからも、いっぱい採用しております。
ただ、冨山先生が言われたことは非常に当たっていて、これはアカデミアの問題ではなくて、昨年、経団連でSociety5.0の提言を出しておりまして、私も提言の議論に参加していたんですが、やっぱりそのときに議論になったのは、おっしゃるように、今までのものづくりは、日本のホモジニアスというか、同質性、均質性、これを強みでやってきたわけです。それが、大学生の採用に表れると、やはり一括採用して、チームワークをまとめるのにたけた運動部の主将を採るとか、採ってから会社側で鍛えるとか、そういうことをやってきました。それが日本の強みで、ジャパン・アズ・ナンバーワンにもなったわけですが、これからは恐らく違ってくると思います。
Society5.0の提言をまとめたときに、我々は、多様性というのを一つのキーワードにしました。これからの時代は、イノベーションはやっぱり多様性がないと出てこないということで、どうしたらよいかということだと思います。
ただ、日本の企業もだんだん変わってきておりまして、例えば、当社のような会社でも、デジタル革新をやるということを言いますと、卓越研究員のような方が、住友化学のデジタル革新に貢献できるなら、そこで仕事をしたいと言ってきてくださったり、大学でデジタルサイエンスを学んだ人が、入ってみようと。ただ、そういう人は、きっと、ずっと住友化学にいるわけではないと思います。そういうところで、労働の流動性というのも出てくると思います。だから、そういう自然な流れの加速も利用して、日本の企業は変わっていくべきだというのは、先生のおっしゃるとおりだと思います。

【濵口主査】
  済みません、そう企業のトップの方はみんな言われるんですけど、デジタル革命だとか、優秀なのを採る。ところが、現場の人事部長の採用される方は相変わらず同じことをやっているようなんですけど。少し言い過ぎでしょうか。

【十倉委員】
  なかなか言ったからといって、すぐに現状が変わるわけではないのは、アカデミアも産業も、私は一緒だと思います。経団連の方でも、例えば、新卒採用の在り方の見直しも、移行期間を置いて、すぐじゃなくて、21年からということになったりしています。
ですから、確実に変わっていくと思いますし、こういうのは、世の中全体が変わっていけば、産業界も変わっていくと思いますので、少し温かい目で見ていただければ、待っていただければと思います。
それと、私も二つほど、皆さんのお話を聞いていて思いましたのは、一つは、白石先生の話で、基礎研究のうんぬんのところの話で、白石先生の書かれておるペーパーの1番目のところで、これは機微技術のことをおっしゃっていると思うんですが、これはなかなか慎重な言い回しで議論しないと、誤解も受けるところなんですが、ここに書かれていますように、機微技術についての管理をどうしていくかという議論は、これはアカデミアも産業界も国も含めてやっていかなきゃいけないと思います。
皆さん、御存じのように、国防権限法で、ECRAとかFIRRMAが出て、今やセキュリティの問題と経済の問題が同列に論じられて、それが米中戦争になっています。イアン・ブレマーさんがTOPリスクで、去年はCold Tech Warということを言いましたし、今年はInnovation Winterと言っています。
逆に言えば、WPIのような取り組みを行う日本のステータスが世界的に上がってくるので、一つのチャンスでもあるんですが、そういう取り組みで、日本の科学技術のステータスを上げていくためにも、技術には色が付いていないわけですから、白石先生の言われておる機微技術の管理について、どうしていくのかという真剣な議論をしておかなければ、我々の科学技術の発展も、うまくいかなくなる可能性があるかと思います。
それから、2点目は、これも五神先生から御紹介いただいて、非常に有り難かったんですが、2ページ目で、橋本先生のところのNIMSの取り組みが書いてあります。マテリアルインフォマティクスの取り組みで、これは化学4社も入りまして、橋本先生のところと一緒にやっています。
我々、こういうパブリックデータもそうですが、国内の自分たちの持っているデータも、できるだけマシンリーダブルにして、デジタル化しようということで一生懸命やっています。パブリックデータというのは非常に大事でありまして、パブリックデータがなかなか手に入らないと。五神先生が言われましたように、エルゼビアのような会社がビジネスにして囲い込みをしておりますし、この辺のところを、むしろ協調領域として、先生が書かれているようなことで、広げていく必要があるかと思います。
五神先生も冨山先生もおっしゃいましたけど、日本の強みはリアルデータにあると思います。リアルデータと、我々のドメイン技術、これを掛け合わせますと、大きなイノベーションが起こると思います。GAFAは恐れるに足らずというのは冨山先生のおっしゃるとおりだと思います。
ただ、そのリアルデータを、我々、持っていることは持っているんですが、それをちゃんとデータ基盤にして使えるようにするという取組を、急いでやる必要があると思います。それは我々の素材メーカーも同様です。
その2点、付け加えさせていただきます。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
お二人の意見、特に大学院の学生が力量の高いものとして育てられるかというところ、かなり大きな課題だろうと思うんですね。ダブルディグリー、ジョイントディグリーをきちんと取らせて、インフォマティクスもできるような人材をどうするかと。そこら辺の基本的な視点を盛り込めないかなというふうに思いますので、事務局と相談させていただきたいなと思います。
それから、パブリックデータのこと、これ、医療系、特に先生が言われるように、物すごい情報あるんですけど、厚労省とどうするかということはありますけど、メッセージは送らなきゃいかんだろうと思いますね。この辺、検討させていただきたいと思います。
それでは、続きで、土井委員、お願いいたします。

【土井委員】
  今までの続きになりますけれども、一つ、先ほど冨山委員の方から、大学だけではなく、企業も含めてという話もありましたけれども、そういう観点で見たときに、具体的対策(2)のところに書いていただいている大学・研究開発法人システムの骨格というところで、評価に関して、基礎研究の評価を考え直すということがありましたけれども、この大きな骨格の中で、やはり全体として、例えば社会実装とか、新しい価値社会を生み出したとか、そういうことで大学人、あるいは、研究開発法人の人間が評価されるということも非常に重要になってきます。
そういう評価体制ができることによって、一企業だけではなし得ないことが、大学とか研究開発法人でなし得るということになると、そこにクロスアポイントメントとして、企業と大学、あるいは、研究開発法人を兼ねるということのすごくインセンティブが出てくると思うんですね。
また、そういうクロスアポイントメントでやろうとすると、各大学、各研究開発法人、各企業に全部そういう手続をしなきゃいけなくて、その辺りがうまくノウハウがないので、是非そういうところは国がきちんと整備していただいて、もう少しだけウエブで何かやれば、もうすぐそういう処理ができるような、そういう仕組みを作っていただきたいと存じます。もうその仕組みをアドミンはもうやるの、嫌がるんですよね。自分たちには何のメリットもないんで。
なので、是非そういうところを考えていただくということも、非常に評価を含め、国と産官学がうまく人材交流ができるような事務的な仕組みというのも考えていただきたいと思います。というのが1点目です。
もう一点目は、やはりこれからは、もう「コト」で「もの」をつないでいくという、先ほど冨山委員がおっしゃいましたけど、それ、すごく重要で、そういう考えに立つと、知識集約型価値創造システムというのでいいのかなというのが疑問になってきまして、知識というと、データを集めるだけ、「コト」のことしか言ってないんですね。
「コト」をきちんとリアルの社会に結び付けるというのは、もう一つ、一歩踏み込んでいるわけですね。なので、今日の言い方を見ると、知識集約ではなく、知の集積とか、知的資産とかいう言い方をされていますけど、でも、それでもまだインテリジェンスだけだから、まだ知識ってそっちに、サイバーに偏っていますよね。「コト」に偏っているので、やっぱりリアルとどう結び付いているか、そこを目指すんだというところが、この知識集約型価値創造システムというのに代わる言葉がやっぱり必要かなと。
だから、例えば、社会人活性化システムみたいな、何かそういうもの、社会の仕組みを変えていきたいんですよね。それがやっぱり一つの大学、企業だけではできないので、地方自治体とか、みんな巻き込んでやっていかなければいけないわけで、それが何なのかというところをもう少し、済みません、私も名前が出てこないんですが、というのを思いましたということです。
やはりそういう意味で、1ページ目のところで、左と右で書いていただいている、そのところが、スパイラルになるということで、ここに大学改革と書いていただいているんですけど、このスパイラルは大学改革だけではなく、多分、そういう意味では社会が変わるんですよね。
基礎研究もやり、その基礎研究が社会に生かされ、その社会からまたフィードバックして、今、ちょうどCOIでうまくいっているところは、これがディープにうまく回ってきているんですけれども、それが大学も企業も地方自治体も含めて、どうできるかというところがこの1ページ目のスパイラルだと思うので、大学改革、地方改革的な言葉を入れていただくというのは大事なのかなというふうに、本日の議論を聞いて、思いました。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
  ありがとうございます。今、本当に重要な指摘をいただきました。
それから、クロアポの件、事務局とよく話したんですけど、クロアポをやりますと、二つのところ、研究をするんですけど、本人の給料は変わらん場合が多いんですね。生涯賃金で考えると、いろいろ退職金とか目減りするような、変なクロアポが多い。これ、全然流行しないです、これを改革する。
文部科学省、しっかりそこをやっぱり方針を決めていただかないかんなと。給与が上乗せするように、クロアポが起こらないといけないなというふうに。そこの設計、これから難しいかなとは思うんですけど、議論させていただきたいと思います。
もう本当、お時間がなくなってきましたけど。

【冨山委員】
  民間企業側は、割り切りの問題なんで、大学の給料が半分になっても、その人に2,000万の価値があった、払える、これはやっちゃいけないんですか、今。いいんですよね。できますね。

【山脇文部科学審議官】
  いや、できます。それは今日、見ていて、ガイドラインを示して、人件費システムの改革というのが大学に今、促そうとしているので。そこの部分を上乗せして、給料上がって、その分、若手に回すというのをやっていこうかと。

【冨山委員】
  だから、しかるべき大学で、Ph.D.クラスの人に、会社の側が雇って、何を期待するかって、別に時間で働いてもらおうとはこれっぽっちも思ってなくて、完全にアウトプットで期待しているので、だから、別に1億払っても、2億払ってきても、いい人いいはずだと思うので、そこはそういうふうに割り切った方がいいと思います。

【濵口主査】
  そこ、強力に推進していただけると。多分、大学が……。

【山脇文部科学審議官】
  ルール化をしっかりと広めなきゃいけない。

【濵口主査】
  大学本部が中間搾取したがるんですよ、私の経験から言っても。

【山脇文部科学審議官】
  全体、プラスになって。

【濵口主査】
  五神先生、では。

【五神委員】
  さっきの知識集約型という言葉についてですが、実はいま使われているような文脈で最初に使い始めたのは私だと思います。最初に、ナレッジベースドという言い方をしようとしたら、それは90年代に既に使われていて、それとは違う概念だという話をしていて、レーバーインテンシブ(労働集約)とキャピタルインテンシブ(資本集約)の次のものをどう書くかという中で出てきた、ナレッジインテンシブだから知識集約だという言葉です。その中身については、やや曖昧な部分のあったSociety5.0が、デジタルレボリューションをうまく使って、インクルーシブな社会を作るということを、経団連なども中心になって議論したわけです。ワーディングに関しては、まだ固まっていない部分もあると思いますが、そこの言葉探しをするよりは、とにかくナレッジインテンシブになれば、データが価値の基本になるので、良質なデータをすぐに揃えないといけないという動きに近付ける方向に議論すべきです。そうした過程で、時々、思い出して、よりよい言葉を思い付けば、それに置き換えるというぐらいの感じでいいのかなと思っています。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
あと三人ほど御発言いただいてないんですけど、一言でも。はい。

【角南委員】
  具体的な施策のところで、国際連携と国際頭脳循環のところは、実は国際戦略委員会の方でもこれから多分議論が進んでくると思うんですけれども、今、この時点ですと、少し途上国に対してのエンゲージメントが抜けていますよね。
本当は国際連携とインクルーシブイノベーションのところを掛け合わせてみると、地方大学なんて意外と途上国の中でも非常にニッチなところと、すごく密接な連携をしているので、そこに対するやっぱり提案点を置くというのは非常に、先ほどおっしゃったように、地方大学の特色を浮き出す、浮き彫りにする一つの施策としてあります。
ですから、そういった意味では、僕はこの第6期においては、もう少しJICAとか、日本のODAの中で、もっと人を育てるとか、今は何となくインフラうんぬんばっかりが先行していて、実は質の高いインフラの質の高いのは人材なんで、あと、知的、先ほどのその知の部分ですね。あと、データとかという話になってくると、そこをうまく訴えていって、これはもうODAの中の大学なり、そういうところにきちっと支援が行くような議論をしておかないと、第6期では多分そこが落ちてしまうんじゃないかと思う。

【濵口主査】
  ありがとうございます。

【塚本委員】
  ありがとうございます。具体的対策の(2)にある知の適切な「値付け」というのは非常に重要だと思います。人月単価ですとか、時間給ですとか、製造業に根付いた“時間あたり”という考えが今まで日本では主流の値付けであったと考えています。こういう場で、時間では測れない「知」の適正な根付けを議論することは、成果に対する報酬という発想転換を牽引することにも貢献し、大切なことだと考えます。
知が循環し、流通しやすいようにするためには、一方的に出すだけではなく、コラボレーションをする相手とのWin Winとなることを考え、双方にとっての価値を高めるという意識が重要だと思います。最近、散見されるオポジーボの話等など、問題の本質は部会者にはわかりませんが、もしも、共有特許ですとか、不実施補償ですとか、なども含めて、再検討が必要であれば、諸処のルールをSociety5.0にあった形にアップデート版を考えてみるのも検討するべき内容かもしれません。
以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。

【橋本委員】
  これから、新しい不連続な変化を起こしていかなきゃいけない。そういうところを担うものが一つ、ベンチャーに期待されているかと思うんですが、実際にベンチャーで経営をやっている経験から言いますと、やはり私たちとしては、今までない技術で、今までない治療法を開発しようとしたときに、まず、人材としては本当にとんがった、まずは基礎の知識を持った上で、とがった考え方ができる人、今の規制に対していろいろ、これは必要ないんじゃないかとか、おかしいんじゃないかという声を出すような人が欲しいんです。実際今、うちの会社もまだ小さいんですけど、社員の3割がPh.D.なんですね。
ところが、ところがこのPh.D.の質が低いんです、はっきり申し上げて。自分で採用しておいて何ですけれども、例えば、基本的な研究者としてのトレーニングが十分できてないということを感じます。いろいろ新しい何か局面ですね、問題に、課題にぶつかったときのそれぞれの人の対応を見ていると、研究者としての基礎訓練が十分できてないというのをすごく感じるんですね。
例えばこの分野だと、結局、大きなプロジェクトの中で、修士、博士号を取ってきた人たちがやっていることというのは、そのプロジェクトの中のあの特定の部分を分担してやるわけですね。ですから、極端な言い方をすると、私はPCRの専門家ですみたいなのが来るわけですよ。
だけど、測定技術ができるかどうかじゃなくて、ある何か仮説を作って、どうそれを証明するかと、そういう考え方ができる人じゃないと、応用が利かないんですね。今、私が非常に感じているのは、やっぱり今、日本の大学院を出た人たちのいわゆる研究者としての質が非常に低い。これは今度、大学での、先ほど新井先生もおっしゃいましたけど、教育なのか、研究なのか、どっちかしかしてない人たちが出てきているというのと同じような問題だと思うんですね。
今になって、例えば人文科学と一緒にやった方がいいですと言うんですけれども、その基礎のところのものの考え方ができてないと、急に人文科学の人と一緒にやっても、まずコミュニケーションが起こらないという問題があって、やはり大学レベルでのいわゆるリベラルアーツの全人格的な教育というのをやった上での専門分野の教育が必要かなというふうに思います。
それと、もう一つ、1個だけ、本当に不連続な変化を起こさなきゃいけないんですけど、そうしたときに、必ず足を引っ張るのが既存のルール、法律とかなんですね。だから、先ほどもどなたかおっしゃっていましたけど、変えるんだったら、そこも全部変えないと、結局日々、例えば私たちが苦労しているのは、既存のルールとどう折り合いを付けるかという、そこでエネルギーをかなり使わされているというのが事実です。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
司会の不手際で、大分時間が超過してしまいまして、まだ言い足りないこと、いっぱいありますが、今日、たくさん御意見いただきましたので、もう一回事務局で検討していただいて、大変難しい問題もありますが、次回、また議論をさせていただければと思います。
それでは、事務局に戻します。

【大洞文部科学戦略官】
  次回は6月27日の14時から開催させていただきます。また、今日の御意見を取りまとめ、まだ議論してない点も議論させていただいて、骨子的なものをどう作っていくか、主査と相談しながら進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
  今日は、どうも長時間、ありがとうございました。それでは会議を終了させていただきます。

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(科学技術・学術政策局 企画評価課)