第1章 2.基本的な考え方

 地球環境に関する観測、予測、情報発信は十年、百年規模の長期にわたる責任ある取組が求められ、国が果たすべき役割は多大である。また、データ取得や予測に際しては、ニーズを第一に考えた取組が必要であり、期待される情報に関する慎重な検討の上に立った計画を立てなければならず、気候変動とその影響を監視・予測するための観測については、以下の視点から方策を講じることが求められる。

(1)気候変動に対する観測ニーズ

 気候変動の影響は、我が国においても既に顕在化しており、今後、社会経済に甚大な影響を及ぼす可能性が高い。各府省は、気候変動の影響が顕在化する以前から自然災害等に対応するために様々な施策を講じてきたが、気候変動の影響が不可避である状況の下で、これらの施策の見直しが求められる。そのためには、将来の気候変動の具体的な影響を評価することが必要であり、様々な観測ニーズに基づき、世界全体で気候変動に関し必要となる全球観測データを取得し、必要な基礎的情報を提供していくことが喫緊の課題である。
 これまでにも、「第三次生物多様性国家戦略」(平成19年11月27日閣議決定)において、地球温暖化の生物多様性への影響監視のための観測ニーズが指摘されている。国土交通省や環境省の審議会等においても、気候変動による影響監視の観点から観測ニーズが指摘されているところである。さらに、平成18年に設置された地球温暖化分野に関する連携拠点(地球温暖化観測推進事務局(注6))において、具体的な観測ニーズの把握が行われている。今後、こうした観測ニーズに応えるデータを提供していくためには、一層の観測体制の整備と、既存の様々な観測データの統合が不可欠であり、そのための具体的方策が求められる。
 また、IPCC第4次評価報告書において示されている気候変動予測の不確実性を低減し、緩和策立案に当たって基礎となる気候変動予測の精度を上げるという観点からも、一層の観測体制の整備が求められている。

(2)開発途上国の能力開発

 開発途上国においては、経済発展の加速による開発に伴って生じる環境問題が増加し、気候変動に対する脆弱性が以前にも増して高まっているという課題を抱えている。これら脆弱性の中には、食料輸入や海外渡航などを通じて我が国に間接的に影響を及ぼすものがあり、我が国が開発途上国に対する観測技術等の研究協力や能力開発を行い、適応策や緩和策検討のための基礎を整備することにより、これらの国における気候変動に対する脆弱性を低減させることは、我が国自身の脆弱性の低減にも資するものである。また、平成20年5月に総合科学技術会議にて決定された、「科学技術外交の強化に向けて」においても、科学技術と外交の相乗効果等の観点から、開発途上国との科学技術協力の強化が言及されているところである。これを踏まえて、開発途上国の観測ニーズを把握するとともに、観測技術等に関し、開発途上国の能力開発を含めた国際共同研究等の具体的方策が求められる。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室

(研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室)