第
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| 国内外の研究開発の動向等を踏まえ、「現在、次世代SSTが実現できる環境にあるのか?」との観点から、次世代SSTの実現可能性を明らかにする。 |
| 1. | 次世代SSTに関する課題 コンコルドは、世界で唯一実用化されたSSTであったが、商業的な成功を収めるには至らなかった。その原因として、ソニックブームによる陸上超音速飛行の禁止、離着陸騒音による乗り入れ空港の制限、燃料消費量の大きさによる経済性等の問題が挙げられる。 コンコルドの事例に鑑みると、次世代SST実現のためには、環境適合性と経済性の高度な両立が不可欠と考えられる。具体的には、環境適合性の課題として「ソニックブーム低減」「空港騒音低減」「排ガス清浄化」、経済性の課題として「軽量化」「低抵抗化」「エンジン低燃費化」が挙げられる(資料2(PDF:324KB)参照)。また、将来の運航者となるであろう国内外のエアラインも、次世代SSTの課題として、経済性の問題とソニックブーム等の環境問題を指摘している。 こうした課題を、創意と工夫、技術力により克服することが、世界の目標となっており、例えば米国では、緊急時対応を含めた高速移動の実現等の意義が認識された上で、NRC(国家研究会議)及び米国航空宇宙産業委員会による報告書において、次世代SSTは実現可能なものであり、航空における長年の米国の優位性を確保するため、早期の実現に向けた研究開発の推進が提言されている(注5)。 また、国際機関での基準策定の動きも進んでいる。航空に関する国際基準を定める国際民間航空機関(以下、「ICAO」という。)においては、早ければ2010年から次世代SSTの環境基準が検討され、現行の亜音速機の環境基準をベースに2013年の基準策定を目指して検討が進められる見込みである。 このように、次世代SST実現のためには高度な技術的課題を解決する必要があるものの、実現の際のメリット等を踏まえ、国際的にも次世代SSTの実現に向けて意欲的な取組みが進められているところである。 |
| 2. | 諸外国における研究開発 米国航空宇宙局(以下、「NASA(ナサ)」という。)は1989年から高速研究計画(HSRP:High Speed Research Program)に着手し、約2,000億円の資金を投入して、次世代SST(310人乗り)の研究開発を進めた。しかし、国際宇宙ステーションの経費増大による影響とHSRPで重要な役割を担っていたボーイング社もアジア経済危機に伴う財政上の問題等から巨額の研究開発投資を控えざるを得ない状況となったため、1999年会計年度をもって中止された。技術的な面では強化された騒音基準に適合するエンジン開発が課題として残っていたことも要因であった。 また、欧州においても総額約500億円の欧州超音速研究計画(ESRP:European Supersonic Research Programme)を1994年から進めたが大規模予算獲得までは至らず基礎研究にとどまり、HSRP中止とほぼ同時期に終了した。エアバスA380の開発に注力せざるを得ない状況であったこと、米国のHSRPの中止がその背景にある。 しかしながら、2002年頃から、次世代SSTの実現に向けたステップとして、より技術的に現実性のある小型クラスの次世代SST(20席クラス程度)を対象とした研究開発が活性化してきており、その研究開発は競争状態にある。 具体的には、米国では、環境適合性と経済性の両立を目標として、2003年よりNASA(ナサ)において小型クラスの次世代SSTを対象とした、エンジンの環境性能向上、機体静粛化等の技術研究に着手し、2014年を目標としている。また、2005年より米国連邦航空局を中心として、ソニックブームの受容性評価(人体等に与える影響の評価)に着手している。さらに、民間企業が既存技術をベースとした超音速ビジネスジェット(以下、「SSBJ」という。)の開発計画を進めており、2012年頃の市場投入が目標と言われている。 一方、欧州においても欧州共同プロジェクトとして、2005年より同様に小型クラスの次世代SSTを対象とした研究計画を立ち上げている。欧州の13カ国、37の企業・機関が参加して、2009年を目標に環境適合性と経済性の両立を目指した機体の概念研究を開始している。 また、その他の国においても、例えば、カナダ及びブラジルは小型の亜音速旅客機において世界的なシェアを持っており、また、中国等においても国産旅客機の開発を進めている。このような航空機の開発能力を有する国々についても、次世代SST実現の際には、後述する国際共同開発に参画してくることが十分に考えられる。 |
| 3. | 我が国における研究開発 我が国においても、JAXA(ジャクサ)、民間企業、大学等により、次世代SSTの経済性及び環境適合性に関する研究開発が実施されるなど、積極的な取組みがなされており、世界的な評価を受けている。 JAXA(ジャクサ)においては、これまでも次世代SSTに関する研究開発を行っており、例えば、総経費約125億円を投じて2005年に成功させた小型超音速実験機(以下、「無推力実験機」という。)の飛行実証においては、超音速機の低抵抗設計技術の獲得、CFD(数値流体力学)設計技術(逆問題設計技術)の開発等で世界的な成果を上げている。 また、経済産業省の主導のもと社団法人日本航空宇宙工業会、財団法人日本航空機開発協会においても、次世代SSTの実現に向けた市場性や技術的な調査、HYPR/ESPRプロジェクト等の先端技術の研究開発等が実施されている。さらに、2005年から社団法人日本航空宇宙工業会により日仏の航空機産業による共同研究が開始されている。 また、社団法人日本航空宇宙学会においては、次世代SSTの静粛化を目標として、大学、産業界、研究機関等の約50名の研究者・技術者を構成員とする「サイレント超音速旅客機研究会」が発足し、研究開発の連携や情報交換がなされている。 |
| 4. | 次世代SST実現の見通し 次世代SSTの実用化は、開発規模や国際的な基準策定の面から国際共同開発になると見られている。現時点では国際共同開発の具体的な計画は必ずしも明確ではないが、欧米での研究開発の活性化、社団法人日本航空宇宙工業会による日仏共同研究の開始など、着実な進展が見られる。また、次世代SSTの使用開始時期を2020年とする民間の報告もあり(注6)、この場合、開発に要する期間を考慮すると国際共同開発の開始は2010年代の中頃と想定される。さらに、米国の民間企業においてもSSBJの開発が進展しているなど、国際的な動きは非常に活発であり、今後、次世代SSTの具体的な計画が一気に加速する可能性も十分にある。 現在、各国は基礎・要素的な研究開発を行っている競争段階にあるが、我が国は、ソニックブーム低減に必要なCFD技術等において欧米と同等又はそれ以上のレベルを有している状況と考えられる。航空機開発における国際的な地位の向上を目指している我が国の現状において、将来の成長が見込まれる次世代SSTに関する技術的なアドバンテージを有していることは、非常に貴重な財産である。この各国に技術的に先んじている状況(時間的優位性)を確固なものとできれば、将来想定される次世代SSTの国際共同開発において、我が国が主体的に参画する余地は十分に期待できる。 そのためには、欧米でも研究開発が活発化しているところ、我が国としては、過去の研究開発の成果を活用しつつ、より高度な研究開発を早急に実施することが不可欠である。仮に取組みが遅れた場合には、これまで我が国が培ってきた優位性の喪失につながり、国際共同開発への主体的な参画はおろか、次世代SSTの一部製造等の役割も低コスト等を活かした他の国に席巻され、我が国産業界が大きなダメージを被るおそれがある。 |
| (注5) | 国家研究会議「民間超音速機技術に関する報告書」(2001年)及び米国航空宇宙産業委員会報告書(2002年)による。 |
| (注6) | 社団法人日本航空宇宙工業会 革新航空機技術開発センター「革新航空機技術の実用化研究開発に関する長期構想見直し報告書」(2007年)による。 |
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