第
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| 技術的な意義に留まらず、高速移動の実現による社会・経済的な効果等も踏まえ、「今、なぜ次世代SSTの研究開発が必要なのか」との観点から研究開発の意義を明らかにする。 |
| 1. | 高速移動に対するニーズ 「目的地に早く着きたい」この思いは、人々に共通する根源的な欲求である。長時間の移動は、概して旅客への精神的・肉体的な負担を伴う場合が多い。陸上・海上も含めた各種交通機関は、この人々の根源的な欲求に対応するために発展してきたと言っても過言ではない。特に航空機は、その登場以来、長距離輸送における移動手段として大きく貢献してきた。その開発の歴史は、安全性・快適性の向上とともに、プロペラ機からジェット機への移行など、まさに高速化への挑戦の歴史であった。 1970年代に就航したコンコルドもその歴史の一端である。残念ながら、後に詳述する環境適合性等の問題を背景として、2003年に退役してしまったが、その登場が社会に与えた衝撃は大きく、夢の超音速時代の到来を予感させるものであった。コンコルドの就航から退役以降も、グローバル化に伴う国際経済の発展、余暇を大切にする個人の意識変化等により、人々の時間に対する価値観(時間価値)はいっそう大きくなってきている。さらに、快適性向上の観点から、旅客の負担を軽減する移動時間の短縮を望む声も強くなってきている。しかしながら、現在、その要求を満足するSSTは存在しない。 このような状況のもと、次世代SSTの実現に対する期待はいっそう大きくなっている。後に詳述するが、次世代SSTに関する各国の研究開発が活性化しているとともに、国際機関での環境基準の検討準備も進められている。将来の運航者となるであろう国内外のエアラインも、次世代SSTがもたらす高速性能について、顧客サービスの向上、保有機材数の削減等の観点から、非常に魅力的と評価しており、その実現を望んでいる。民間の調査によれば、今後の旅客需要、運賃と旅客数の関係等から旅客シェアを求めると、既存旅客機の1.5倍の運賃であったとしても約50パーセントの旅客が次世代SSTを選択し、事業として成立すると言われている(注1)。また、ビジネス旅客をターゲットに絞った小型のSSTにおいても事業として成立するとの試算がある(注2)。 さらに、国内の研究者等の有識者を対象としたアンケート調査においては、次世代SSTの実現について、航空の専門家の86パーセントが我が国にとって「非常に重要」又は「重要」と回答し、また他分野の専門家を含めて66パーセントの有識者が我が国にとって「非常に重要」又は「重要」と回答している(注3)。 このように、高速移動に対する人々の要求は非常に強く、次世代SSTは、その要求に応えるべく早期の実現が望まれている。 |
| 2. | 我が国を世界に開かれた国に 次世代SSTの実現は、我が国においては、アジア圏の日帰り、ニューヨーク、パリ、シドニー等の国際主要都市を6時間圏内とする画期的な高速移動を可能とするものである。 我が国は、世界の二大経済圏である米国・欧州から離れたいわゆる極東に位置しており、アジアの各国とも海で隔てられている。グローバル化の進んだ世界においては、経済・産業等の面において、物理的な距離を感じさせない「人」及び「モノ」の密接な結びつきが求められている。特に近接するアジア地域に対しては、より緊密なシームレスな結びつきが重要となっている。政府の「アジア・ゲートウェイ構想」や国土交通省で検討されている「国土形成計画」においても「航空路線ネットワークの充実」や「日帰りビジネス圏の形成」の重要性が謳われている。アジア諸国の台頭が言われて久しいなか、我が国が、引き続きアジアの中核として発展していくためには、アジアを含めた世界に開かれた高速輸送手段を確保することが不可欠である。 また、次世代SSTの登場により、人々の移動の爆発的な増加(旅客誘発効果)が想定されている。これにより、国際的なビジネスや観光の発展のみならず、海外の文化、学術、技術等との交流の深まりによって、新しい生活スタイル、文化、ビジネスモデル等の誕生が期待される。次世代SSTの実現は、技術的な革新のみならず、世界的な文化・価値観を変革する原動力となり得るものであり、まさに空のイノベーションと言える。政府の長期戦略指針「イノベーション25」の技術革新戦略ロードマップにおいても、次世代SSTに関する研究開発の推進が掲げられているところである。 このように、次世代SSTは、国際社会及び我が国の将来像に大きく関わるものであるとともに、特に、近隣諸国と海で隔てられ、欧米双方からも離れている我が国のような地理条件において最も効果を発揮する輸送システムであることから、我が国が率先して研究開発を行う意義は非常に大きい。 |
| 3. | 科学技術創造立国の実現に貢献 世界の航空輸送は今後も年率5パーセント程度で増加することが予想されており(注4)、航空分野は世界的な成長分野と言われている。我が国においても、国産ジェット旅客機及びエンジンの研究開発が進められるなど、航空機産業を我が国の基幹産業とすべく不断の取組みが続けられている。 航空科学技術は、巨大かつ複雑なシステムである航空機の製造を支え、要素技術を一つの製品へと統合する極めて高度な科学技術である。また、情報通信、環境、材料等の幅広い分野と密接に関連するとともに、高い性能や信頼性が要求される。このため、航空科学技術はその国の総合的な科学技術力を象徴するものの一つと言える。また、安全保障とも密接に関係する分野であることから、航空科学技術の維持・発展は国の存立を左右しかねない重要性を持つ。 さらに、航空分野の研究開発は、工学系等の優秀な人材の受け皿としても機能してきた。この分野が国際的かつ挑戦的な取組みを続け魅力的であり続けることは、我が国の航空機産業の技術集積や裾野の拡大のみならず人材流出の防止にも資するものであり、我が国が世界に誇って来た「ものづくり」の伝統を維持・発展させるのに不可欠である。 特に、次世代SSTの実現には、超音速領域も考慮した空力設計、エンジン、材料・構造技術等の高度な技術が必要とされる。これらは、国際的にも最先端の技術であるとともに、他の亜音速航空機等にも波及する応用範囲の広い技術であり、今後の我が国の航空技術の中核を担うものである。 これらの技術を獲得することによって、将来の成長が見込まれる航空分野において我が国の技術基盤が一層充実することは疑いない。また前述のとおり、航空科学技術は、他の幅広い産業分野とも密接に関連しており技術波及効果が極めて高いため、我が国の全産業的な視点から見ても先進的で付加価値の高い技術開発を牽引するものである。 このように、次世代SSTの研究開発は、航空分野での最先端かつ挑戦的な研究開発であって、我が国の総合的な科学技術力を高め、最高水準の人材を育成することに資するものであり、政府で進めている「科学技術創造立国」の実現に貢献するものである。 |
| 4. | 次世代SST実現による経済効果 次世代SSTの実現は、航空科学技術や航空産業の発展のみならず、観光、物流、文化交流の発展や新しいビジネスモデルを誕生させるなど、巨大な経済効果を生み出すことが予測されている。 民間の調査によると、次世代SSTの就航により国際ビジネスや観光が活性化され、国内で約3.8兆円、世界規模で約36,00億ドルの経済効果が試算されている。また、将来の次世代SSTの需要は2025年において1,000機以上と試算されており、その国際共同開発に我が国が参画(これまでの実績を踏まえ10〜15パーセント参画)した場合には、年間1,600〜2,000億円の売り上げ、1万人の雇用機会の創出が予測されている(注1)。この調査は、2001年度のものであるが、その後の航空輸送の増大や世界経済の拡大等に鑑みれば、現時点においては、さらに巨大な経済効果が得られるものと推測される。 |
| (注1) | 社団法人日本航空宇宙工業会「超音速輸送機開発調査」(2001年度)による。 |
| (注2) | 株式会社三菱総合研究所調べによる。 |
| (注3) | 科学技術政策研究所「科学技術の中長期発展に係る俯瞰的予測調査」(2005年)による。 |
| (注4) | 財団法人日本航空機開発協会による |
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