ここからサイトの主なメニューです

4.環境科学技術が要請する研究体制
 「持続型社会のための科学技術」の中核として地球環境科学技術を推進するためには、次期科学技術基本計画において以下のような推進体制の構築が考慮されることが重要である。

  (1)我が国としての総合研究戦略の確立とロードマップの提案
 「持続型社会のための科学技術」が目指すところは、持続可能かつ安全・安心な未来社会の実現である。限られた資源(エネルギー資源を含む)と環境容量のもとで、このような未来社会を実現するためには、高度技術社会の中での人間の生き方を考える哲学と倫理の確立が必要であり、目指すべき未来社会の姿(ビジョン)を明示し、そこに至るロードマップの中で当該科学技術がどのような役目を果たしうるのかを明確に意識した戦略が作られねばならない。地球環境科学技術分野は内外にわたる多様な研究分野・関係者から構成されるとともに、国民生活に大きな影響をもたらす分野であるため、我が国における取組を俯瞰し、統合的に研究を進めていく体制が必要である。既に環境イニシャテイブの取組をすすめている総合科学技術会議の戦略のもとに、担当スタッフを充実し、各府省の関係機関が連携をとって戦略づくり進めていくことが肝要である。

(2)内外地域ネットワークによる研究推進体制強化
 「自立・自律型分散ネットワーク巨大科学技術」として、地域の環境特性の解決に向けた「地域科学技術」を育てると同時に、地域や分野に分散した研究主体を国内・国際的に纏め上げるネットワーク機能の強化が必要である。
 安心で安全な持続的社会の実現に向けた市民活動、自治体の挑戦等は、地域に実体を持った活動が中心である。地域の環境科学技術の担い手としての大学、研究機関の役割は重要であり、協力して地域主体の科学技術推進を進めることが重要である。
 地球環境問題の解決には、国際協力が不可欠である。我が国の大学・研究機関は、これまで蓄積のある国際比較研究から得られるそれぞれの地域の文化的背景、伝統や社会体制、ライフスタイルを踏まえた解決策を提示することが可能である。研究を国際的研究計画の中に位置づけ、リーダーシップをとって推進するべく、内外の人材育成、研究・観測ネットワーク形成、共同研究資金の確保などを進める必要がある。この際既存の研究ネットワークを生かし、地球観測や地球変動研究など国際的な研究コミュニティと一体化した研究協力を一層進めるとともに、風土・文化的基盤を共有するアジアで、持続的社会建設の観点からの国際協力を展開することが効果的である。

(3)研究成果等を社会に還元するシステムの構築
 地球環境科学技術は、その研究成果が社会に役立つことにより価値が生きるものである。大学・研究機関から積極的に科学技術の成果を社会に還元させるとともに、大学・研究機関と社会との双方向的な対話を通じて社会のニーズを共有する仕組みを充実するべきである。そのための仕組みとしては、環境教育や自然教育の推進、共生型ライフスタイルの指導者や科学解説についての指導者の役割の認知と養成、研究成果の環境施策や社会的合意形成への反映、非市場価値の計測などが考えられる。環境の市場価値を経済原理で実現する具体的な仕組み作りも肝要である。こうした観点から、大学・研究機関による科学的成果のアウトリーチの機能強化はきわめて重要で、科学と社会をつなぎ、科学技術の成果を正しく社会に伝え、市民の対応を可能にする仲介者・解説者(Interpreter)の役目の重要さを認識し、そのための人材の養成を行うことは急務である。

(4)観測、データ整備、資料保存などを確保するための継続的な基盤整備
 我が国においては研究および観測支援者の育成及びその地位の確立が欧米諸国に比べて遅れており、それを支える体制づくりが必要とされる。多くの国に散らばった地上現場観測装置や衛星や船舶・航空機などのプラットフォームなどの整備とその運営には長期安定した資金の裏づけが必要である。さらには、すぐには成果に結びつかない観測支援に携わる者の役割を正しく評価し、相応しい待遇を与えることで、この分野が環境のことを深く理解した若手人材にとって一つの魅力的な職域になるよう努力すべきである。このための仕組みとしては、地球の広範囲での地上現場定常観測、船舶、航空機等による地域計測、衛星による全球観測、予測のための高速計算、世界規模でのデータ・情報の集約に向けた、設備とそれを動かす人員などしっかりとした研究基盤への資源配分の充実、そうした息の長い研究への適切な評価が不可欠である。

(5)「持続型社会のための科学技術」に対応した評価システムの見直し
 第2期科学技術基本計画における重点4分野のうちのライフ、情報、ナノ材料などの重点分野に比べ、「持続型社会のための科学技術」としての地球環境科学技術は質の異なる目的と重要性を持っており、それは研究資源配分にも研究評価にも異なる視点を必要とする。環境以外の3つの重点分野にあっては、ノーベル賞等の学術賞受賞や特許取得数、経済競争力の技術基盤などの「競争的指標」が明確に考えられる。しかし地球環境科学技術は社会的要請という目標に向けて多くの知恵を総合できるか否かに評価のポイントがある。観測・計測・評価技術、シミュレーションモデル・予測技術、汚染処理・除去技術など多くの研究活動は、最新技術と在来技術を組み合わせ、さらに社会経済法学を含む社会技術の組み合わせによって、「安全、安心、幸せな社会」を実現させることが目標である。社会の持続性の確保に向けて研究がどれだけのインパクトを持つかを念頭に置いた新たな評価システムが必要である。ネットワーク型研究は個別科学技術への「競争的指標」だけでは評価できず、社会貢献や政策支援、組織力、リーダーシップ、継続的支援研究力などへの評価が十分になされねばならない。

(6)大学における環境科学の重要性
 環境科学は、我が国においては比較的新しい学問・研究領域であり、その性格から極めて複合的、学際的である。大学等においては近年、「環境」の名称を付した学科、研究科の新設および再編が多く行われたが、環境科学の概念はまだ流動的であり、学問分野としての共通認識が既成の分野に比べて弱いところがある。今後、社会の多様な要請を受けて環境科学教育の質の向上を図り、この分野での広い見識を有し、主導し運営できる人材を育成することは極めて重要である。自然科学と人文・社会科学の融合を一層進める観点と、相応の研究投資と評価のシステムの観点が重要である。

(7)初等中等教育段階から社会人教育までの環境教育の重要性
 環境の問題は、地球環境の保全、食の安全などすべての生活者の問題である。地球環境科学技術に対する市民の意識と理解の高まりが極めて重要であり、市民を含む社会構成員が環境健全化の価値と理念を認識・共有し、環境を保全と両立する経済社会活動を前向きに評価するようになるには、初等中等教育の早い段階から社会人教育に至るまでの科学技術の観点を十分に踏まえた環境教育が重要である。大学等においても環境問題に関する様々な社会人教育に積極的に取り組むべきである。
 


前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ