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地球環境科学技術に関する研究開発について
―第3期科学技術基本計画の策定に向けて―


科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 地球環境科学技術委員会


1.環境問題が要請する「持続型社会のための科学技術」への変容

地球の限界: 20世紀は科学技術を基盤とした驚異的な経済発展が物質面での幸福をもたらしたが,一方で地球温暖化,オゾン層破壊,環境汚染,森林破壊,種の絶滅など,人間活動が地球生態の恒常性に影響を与えることが明確に示され,地球の限界が明らかになった時代でもあった。また,科学技術の負の側面が,地球環境から個人の精神にまで影響を与え,安全と安心が問われる世紀ともなった。続く21世紀は,人口の増加と経済の拡大による負荷の増加が地球環境容量の限界を超え,危機的な状況をもたらす懸念が強い「環境の世紀」である。そこにはまた,地球環境という限られた生命の場,地球公共財の利用において,現世代内および世代間の公平性・公正性をどのように担保すべきか,という根源的な問題も存在する。

国際的取組と科学技術の貢献: すでに1980年代から,オゾン層保護条約,生物多様性条約,気候変動枠組条約と京都議定書,砂漠化対処条約,残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)など多くの国際的な枠組が作られてきた。そして1992年の環境と開発に関する国際会議(地球サミット)以降,2002年の持続可能な開発に関する首脳会議(ヨハネスブルグサミット)などを経て地球環境問題は,紛争と貧困の撲滅などと相互に関係しより広い観点から全世界が総力を挙げて取り組むべき「社会の持続可能性」の問題として理解されるようになった。
 科学技術は持続可能な社会の形成に向けた政策にこれまでも大きく寄与してきた。1980年代から地球変動を対象にした地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)や地球変動の人間側面研究計画(IHDP),世界気候研究計画(WCRP)等の国際地球変動研究計画がすすめられ,国内でもこれに対応した地球環境研究が推進されてきた。それらから得られた地球変動に関する知見は,環境の危機を警告,世界的行動を促した。そして,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国連のミレニアム・エコシステム・アセスメント(MA)などにより学術的に十分評価されたのち国際環境政策過程に取り入れられるシステムが出来上がってきた。さらに近年は,地球の脆弱性と地球変動の状況を地球規模で統一的に監視観測する必要性が指摘され,地球温暖化や地球環境資源の状況に対する基盤的情報を得るために,2003年のエビアンG8サミットを発端として,地球観測サミットの開催により地球観測の10年の実施計画が検討されている。ここでは先進国間での協力のみならず,途上国における能力開発などを含む国際的な連携・協力が求められており,我が国としてもこれに積極的に参画している。

科学技術の光と陰: 科学技術の力で拡大しつつある人間活動を,地球の能力の限界と整合させながら持続させるには,地球に関する知識を一層深める科学と人間活動からの負荷量を削減させる技術を推進することが必要なことは言うまでもない。しかしながらその一方で,その科学の進歩が人類による制御困難な結果をもたらしたり,技術の負の側面が自己増殖することによって社会システムを非持続的な形に固定させる弊害が,特に環境面で多く生じている。こうした状況下では,技術の膨張に対して,果たしてそれらが当初の意図に反して,地球生態を破壊し,持続可能な社会形成を阻害するものにならないかを,監視し,評価し,警告し,制御することも科学の重要な機能となってきている。
 また,19世紀以来の近代化,経済成長の中で忘れ去られた,自然共生型の生活様式,アジア・アフリカ的風土での精神体系など,持続型社会の基本原理として,また真の幸福の条件として生かせる可能性のある文化を,国際的に見直し,新しい科学の光を与えることも求められている。
 研究の成果が社会の隅々までいきわたり,市民ひとりひとりの選択が持続的社会形成に大きな力を持ってきている状況下では,科学の成果と技術の効用を正しく市民に伝え,市民が持続可能な社会形成に向かうよう働きかけることも今後の科学技術に強く期待されるところである。

科学技術の変容: 21世紀の世界は,人類の幸福とは何かを再度見直しつつ,生存基盤の安全・安心を確保し,社会発展・経済発展とさらなる人間性の発展を目指す「持続可能性の維持と拡大」が人類共通のテーマとなる。この道筋の実現にむけてあらゆる知恵を動員する「持続型社会のための科学技術・学術(Sustainability Science/Science and Technology for Sustainability)」への変容が今,科学技術に求められている。地球環境科学技術はその中核として,望ましい社会のビジョンの形成,研究推進方法の改革,研究対象選択,そしてそれらを実現させるための体制作りにおいて,新しい時代の科学技術をリードするものでなくてはならない。

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