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1.課題名: 細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト

2.課題概要: 新たな薬剤開発や新規技術実用化までの期間の大幅短縮と効率的開発の実現に資するため、ゲノム解析等によって得られるデータを統合化し、細胞・生体機能をモデル化することによるシミュレーションプログラムを開発する。

3. 評価の検討状況
(1)課題設定の妥当性(必要性)
1   国の方針との適合性
  計算機によって生体機能をシミュレーションするプロジェクトは重要で立ち上げるべきである。この分野の研究は、現在急速に立ち上がりつつある新しい領域であり、異分野の研究者が融合して取り組む必要がある。コンピュータシミュレーション等を利用したシステム・バイオロジーの重要性は、「ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について」においても指摘したところである。
   
2 リーディング・プロジェクトとしての妥当性
  プロジェクトの基本的性格
  細胞・生体シミュレーションと生物学・医学の融合研究は、生命科学や医学・医療の新たな画期的発展をもたらす。これは、次世代の生命科学発展の技術基盤の構築となる。細胞・生体シミュレーションには生物学・医学研究から得られるすぐれた情報や概念が必須である。シミュレーションの内容によっては生物学・医学研究から得られる大規模な細胞・生体機能の生物学的なデータの集積も必要である。また、シミュレーションによって得られた成果や問題点は生物学・医学の分野にフィードバックされ、新たな研究をすすめる。即ち、細胞・生体シミュレーションと生物学・医学研究は相補的かつ相乗的関係にある。したがって、本プロジェクトは異分野の研究者が一同に会して研究を推進することが不可欠である。
  研究開発成果の持つ経済活性化効果等(実用化された場合の社会・経済へのインパクトを含む)
  将来、生物学・医学研究に立脚したシミュレーターが開発される段階になれば、現在の薬剤開発などの技術体系や医療体系が画期的に変化し、経済活性化と医療費の削減に大きく貢献する可能性がある。
  研究開発成果の目標とスケジュール
  将来を見据え、細胞シミュレーションの基本モデルの開発と個別疾患モデルのシミュレーションの開発、生物学的データの集積などシミュレーション開発に必要な共通基盤技術の開発が同時に着手されることは重要である。目標達成の手順についての優先度付けが示される必要がある。
  大学等と産業界の役割
   新しい分野であるこの領域では人材育成を同時に行うことが重要である。従って、種々の分野の大学教官が参加し、多くの大学からの学生、大学院生の参加を可能にすることは必須である。また、人材の提供や計算機の提供などを通し産業界の関心が示されていることは評価される。
  政府部内における既存制度における研究開発課題及び他経済活性化プロジェクトとの関係
   細胞シミュレーションの開発に当たっては、タンパク質発現や相互作用の解明等の観点からの取り組みが必要であり、タンパク3000プロジェクト、テーラーメイド医療実現化プロジェクト等との関連性をよくフォローし、十分な情報交換を行いつつ効率的にプロジェクト運営を行う仕組みが必要である。

(2) 手段の適正性(有効性・効率性等)
1 研究体制の妥当性
  研究責任者(プロジェクトリーダー)の適否現在示されている候補者の中から、進行中の調査を踏まえて具体化されることとなっており、適切な選考が行われることが期待される。
  研究体制及び研究運営方法の妥当性この分野の発展には人材養成が不可欠であり、若手研究者の参画をぜひ具体的計画に盛り込むべきである。
   
2 研究計画の有効性・効率性
  費用対効果プロジェクトの対象の絞込みや実施方法によって、所要経費は大幅に変更しうるものであり、資金の効果的使用に十分留意した計画設計が必要である。
  知的財産の取得・活用方針成果の戦略的な権利化(特許化等)を図るため、知的財産の専門家を含む「特許化支援チーム」(仮称)を設け、特許出願の是非(国際出願の是非)等も含めた対応などを行うこととされている。また、権利化された知的財産権については企業等との共同研究などにより、積極的にこれを活用されることが重要である。基盤となる知的財産については、広く自由に研究者が利用しうる体制も重要であると考える。

4. 評価結果
  細胞・生体機能の計算機によるシミュレーションは、次世代の技術基盤を形成する上で重要であり、人材養成も含めて早急なプロジェクトの着手が適切である。その際、シミュレーションプログラムの開発とその利用を目指した開発が十分整合した内容になるよう、この分野の発展の状況を踏まえながら定期的な見直しを含めて、計画設計及び運営を進めることが重要である。

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