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1.課題名: 再生医療の実現化プロジェクト

2.課題概要:   世界に先駆けて再生医療の実用化を実現するため、我が国の本分野における基礎的段階の研究を強化すると共に、技術的さらには体制的な基盤の整備を図り、早期の実用化が見込まれる体性幹細胞の利用技術を確立する。特に、再生医療技術によるパーキンソン病や生活習慣病治療技術の実用化を図る。

3. 評価の検討状況
(1)課題設定の妥当性(必要性)
1 国の方針との適合性
  再生医療は世界的にも激しい競争が展開されている分野であり、我が国としても世界に遅れず、先導的研究を推進していく必要がある。特に体性幹細胞の利用については、これまでにも我が国において多くの科学的知見を蓄積しており、そのポテンシャルは十分である。再生医療の実現は、国として取り組むべき重要な課題であり、「ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について」等においても取り上げたところである。
2 リーディング・プロジェクトとしての妥当性
プロジェクトの基本的性格
  実用化にむけてステップ・アップしていくものであり、今後の産業基盤の構築に資するものである。
研究開発成果の持つ経済活性化効果等(実用化された場合の社会・経済へのインパクトを含む)
  パーキンソン病患者約12万人、腎不全による透析患者約20万人(約1兆円/年)、脳梗塞約150万人、脊髄損傷約10万人等が再生医療の実用化によって社会活動に復帰することは、国民生活への大きなインパクトを与える。また、関連する産業も大きく発展することが期待されるとともに、世界に通用する幹細胞に関する知的所有権を確保することで、十分な経済的効果が見込まれる。
研究開発成果の目標とスケジュール
1. 全体(15年間)を3期に分け、5年毎の達成目標を明確にしていることは適切である。但し、本分野の進展は急速であり長期を見通すことは困難であるので、適切に技術進捗を把握し、採用する技術内容等について最先端のものを常に手がけるよう柔軟な計画運営に配慮する必要がある。
大学等と産業界の役割
  大学、公的機関が幹細胞バンクの整備、幹細胞利用技術の確立等を進め、細胞治療の実用化、ハイブリッド型人工臓器の実現化においては、主として産業界が貢献することは適切である。
政府部内における既存制度における研究開発課題及び他経済活性化プロジェクトとの関係
  理化学研究所等において、発生・再生科学研究の基礎的・基盤的研究が実施されているが、本プロジェクトはより実用化を見据えた取り組みを進めるとともに、わが国の本分野の発展に不可欠なヒト幹細胞の供給等を目指しており、重要なプロジェクトである。

(2) 手段の適正性(有効性・効率性等)
1 研究体制の妥当性
研究責任者(プロジェクトリーダー)の適否
  発生・再生研究全般においても広い視野から研究開発を実施しており、プロジェクトリーダーとして適任である。また、他に参加が予定されている研究者も高い能力を有しており、適切である。但し、ハイブリッド型人工臓器については、幹細胞研究とは異なる視点からの取り組みも必要であり、この分野の専門家を加えるなど実施段階においてその点を十分留意するとともに、5年毎の評価で、体制の変更も考慮にいれるべきである。また、プロジェクトの規模が大型であり、リーダーは強い責任感とリーダーシップが必要であることに十分留意し、従事率の面での一層の向上が期待される。
研究体制及び研究運営方法の妥当性
  日本における再生医学の先導的研究を進める研究機関の参画と、幹細胞取扱い経験を持つ機関の協力を得る計画となっており、また、産業界からの積極的な参加も予定されるなど適切である。研究課題の中には、広く公募により優れた提案を採用していくことも盛り込まれており、適切である。なお、ハイブリッド人工臓器の開発については中核となって実施する研究機関の参加が必要である。中期(15年間)のプロジェクトであり世界的な研究動向を踏まえ、適正な評価とフレキシブルなプロジェクト修正可能な体制を整えることで、運営方法としても適切であると考える。
2 研究計画の有効性・効率性
費用対効果
  目標が達成された場合、大きな経済波及効果が期待され投資に見合うとともに、経済活性化の観点から大きな効果が期待される。
知的財産の取得・活用方針
  本プロジェクトで生まれた成果が、わが国産業界によって実用化につなげられることが重要であり、産学官の十分な連携が予定されており適切である。

4. 評価結果
  早急に着手するべきプロジェクトである。計画が長期にわたるため、5年毎に適切に評価をし、常に最新の研究成果が創出されるよう柔軟性も取り入れた計画運営が必要である。

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