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(別添2)各種犯罪への対策に資する重要科学技術について

1.研究開発の背景

 我が国の犯罪対策のためには、事件の早期解決を徹底するとともに、効果的な犯罪抑止の方策を講じることが重要である。表1.1に示す通り、犯罪は大きく凶悪、粗暴、窃盗、知能、風俗犯罪、その他に分類される。

表1.1 各種犯罪の俯瞰
大分類 小分類 犯罪例
凶悪犯罪 殺人、強盗、放火、強姦 通り魔殺人、保険金目的殺人、路上強盗
粗暴犯罪 暴行・傷害、脅迫、恐喝、等 路上恐喝
窃盗犯罪 窃盗 ひったくり、侵入窃盗
知能犯罪 詐欺・横領、等 所謂オレオレ詐欺、架空請求詐欺、不正契約
風俗犯罪 わいせつ、等  
その他 住居侵入、器物損壊、誘拐等  

 近年、各種犯罪の中でも、成人に比べて自己防御意識・自己防御能力が弱い子ども及び高齢者等が犠牲となる痛ましい犯罪が頻発しており、世間の注目を集めている。特に、全人口に占める子どもの割合や出生率は年々減少傾向にあるにも関わらず、暴行や誘拐、性犯罪の被害件数は増加している。また、日本の個人金融資産全体の半分以上を保有し、全人口に占める割合が唯一増加している65歳以上の高齢者層については、核家族化に伴う一人暮らしの高齢者を対象とした詐欺、強盗等の犯罪が増加している。なお、犯行場所についても多様化傾向にあり、路上や私有地等に加え、従来、誰もが安全と考えていた公共の場や学校の敷地内での犯行も増加している。

2.我が国における現状の取組

 子ども・高齢者に共通しているのは、自己を防御する力や意識が弱いという点である。したがって、子ども・高齢者の自己防御を支援する、あるいは自己防御力を高めることを考える必要はあるが、我が国の科学技術による現状の取組としては、保護者からの監視の代行や自己防御支援手段が中心となる。表2.1に、犯罪の類型と現在取り組まれている対策例を示した。

表2.1 犯罪の類型と対策例
種類 事前検知・予防 犯行検知・防御 自己防御
殺人・強盗・暴行・傷害・性犯罪 凶器検知(注1)、犯行可能場所検知、犯罪意図検知、警告 位置監視、画像・音声監視(注2) アラーム(防犯ブザー等)、携帯型防御装置
誘拐 移動手段監視、監禁場所、犯罪意図検知、警告 位置監視、画像・音声監視(注2)、監禁場所検知 アラーム(防犯ブザー等)、携帯型防御装置
窃盗 犯罪意図検知、警告 侵入監視・警報、
画像・音声監視(注2)
 
詐欺 犯罪意図検知、警告 金銭授受監視、インターネット・画像・音声監視(注2)  

(注1)遠隔・非接触検出 (注2)含む赤外、テラヘルツ波、X線他

 犯罪対策に関しては、「社会防犯力増強技術」が、第3期基本計画中に予算を重点配分する研究開発課題である「戦略重点科学技術」として選定されている。さらに、重要な研究開発課題としては、次のものがあげられている。
○社会防犯力増強技術
・行動科学におる犯罪防止・捜査支援技術
・三次元顔画像個人識別技術
・DNAプロファイリング技術
・毒物や微細証拠鑑定のための物質同定技術
・学校及び通学路における子供の安全を守る技術

 また、自治体や学校等で、実際に取組がなされている犯罪対策の事例を以下に挙げる。
・携帯電話やインターネット等による不審者情報の発信
・GIS(地理情報システム)による、犯罪が発生しやすい地域の地理的分析およびリスクマップの作成
・ICタグ情報を読み取るセンサーノード・ネットワーク技術の展開
・ICタグ、携帯電話等の手段による本人の所在確認
・防犯カメラ等の定置型画像監視と画像処理によるデータ抽出(個人識別等)

3.技術的課題

 2であげた現状取り上げられている技術に関しては、以下のような問題点と開発課題がある。

  1. 不審者検知のための有効な技術が無い:
    何度も特定の場所を徘徊する、同じ場所に長時間佇んでいるといった不審者の行動パターンの分析と、それによる不審者の発見、など。
  2. GISで作った犯罪リスクマップ等の活用方法が発展途上:
    GISの単発的な情報のみならず、GPSと連動させた危険地域に接近すると警報を出すシームレスな機能、など。
  3. 現状のICタグは通信距離が短く、センサーノードが置かれた近くでしか使えない:
    通信距離の延長、中継技術高度化、など。
  4. ICタグや防犯ブザー等は剥奪される可能性がある:
    タグの小型化、複数化による剥奪の困難化、着用している個人を認識し、剥奪されたときに警報を発する技術、など。
  5. 公共の場所に設置したカメラのみでは死角が多数ある:
    携帯画像・音声監視装置との併用、など。
  6. 画像監視による個人識別の利用には、既知の犯罪者画像データベースの構築が必要であり、かつ初犯については使えない:
    行動パターン検出、監視技術など。
  7. 画像監視はプライバシー侵害の可能性がある:
    平常時は、その人が誰であるかという個人情報の特定はせず、どのような行動をしているか、武器を持っているかなどの行動パターンのみを抽出する技術、など。
    また、現状の取組には無いが、課題として考えられるものとして次のものがある。
  8. 携帯画像・音声監視装置:
    子どもや高齢者が身に付けた(ウェアラブルな)カメラ、マイクロフォン等からデータを常時伝送、監視する(ドライブレコーダのパーソナル版)技術、など。剥奪、重量、サイズ、電源、通信速度、監視側の処理等の課題がある。
  9. 形状が判別可能な汎用性の高い凶器探知器の開発が発展途上:
    現状の金属探知方式だと、凶器かどうか形状の判別が出来ない。また、検出器が設置されたゲートでしか検出できない。遠隔で形状や物品の種類が判別可能な探知器、システムの開発など。

4.重要な研究課題

 3.であげた問題点および技術課題を考慮しつつ、犯罪の事前検知・予防、および自己防御の観点から、サービスイメージを元に今後取り組むべき重要な研究開発課題例を抽出した。特に、使用する人や社会の負担が小さく実用性があるものにすること、カバー率を上げること、およびプライバシーや人権を侵害することなく犯罪を防止する点に多くの技術課題がある。

  1. 加害側の監視
    ・不審行動の検出:何度も特定の場所を徘徊する、同じ場所に長時間佇んでいるといった不審な行動パターンの研究、および既に開発されつつある顔画像からの認識技術等により学校の周りを通過する人の中で、不審行動パターンをとる人を検知する技術(個人を特定せず、行動のみを検知)
    ・凶器の検出:街角の監視ポスト等に設置でき、遠隔で凶器等を発見できる技術
  2. 被害側の監視
    ・位置情報の高精度化:GPS、ICタグ、およびセンサ情報等の融合による、山林等の人口密度が低い地域や、建物の内部・地下等に移動しても監視が可能となるシームレスな検知システムの構築。
    ・危険状態の検知:声のトーンや姿勢・身振りから、被害者が危険を感じているかどうかを検知する音声処理・画像処理技術など。これらの技術は、脅威時の情報のみを抽出するため、平常時のプライバシーに関する情報は監視からは除外可能。
  3. 加害者・被害者のコンタクト状況の監視
    ・異常検出技術:電話、あるいは子どもや高齢者が身に付けた(ウェアラブルな)超小型カメラ、マイクロフォン等から、異常事態発生時の声のトーン分析、画像処理による姿勢・動作分析などにより、異常事態を検知し、自律的にデータを伝送するシステム技術。文章認識によるインターネットによる不正取引を監視する技術。
    ・監視機器の保護:カメラやセンサ等が剥奪・放棄された場合の検知・対応技術。
  4. 自己防御(警告)
    ・携帯型防御装置:危険時に対応するための、能動的手段(光や音の発生、画像の自動取得と警告等)の具備を実現するための革新的技術。
  5. 共通基盤技術
    ・情報抽出技術:複数のカメラやセンサからの情報を元に、加害者・被害者の行動パターンを認識する技術
    ・リモート検出技術:THz波等を利用し、遠隔地より非侵襲で凶器等を検出する技術、およびICタグ等の通信距離の拡大技術。
    ・超低消費電力技術:マイクロ電源(発電)の開発等。
    ・軽量・小型化技術:利用者に威圧感や負担感を与えない軽量・小型のウェアラブルセンサ・アクチュエータの開発。

 なお、これらの共通基盤技術は、既存の技術の高精度・高感度化、突発的な事象に対応するための自律・迅速稼働化、超寿命化、ダウンサイジング、及び威圧感や負担感が少ない人に優しい方法で安全の確保を実現することのみならず、全く新たな方策の創出も期待される。以上の研究課題の実現のために開発と利用が必要となる技術シーズ例を表2.2にまとめた。

表2.2 カウンタークライムに向けた技術シーズ例
犯罪対応フェーズ(主体) センサー・材料 技術シーズ衛星 ICT
事前検知・予防 レーダー、レーザー、音響、画像処理
サーマル、IR、THz、DNA、アクティブ/パッシブ、ウェアラブル
モーションキャプチャー、マイクロ電源
地球観測、GPS、GIS、トラッキング 暗号化、音声処理、文書処理2Dから3D、ユビキタスカメラ
自己防御 ICタグ、ウェアラブル、バイオミメティクス、マイクロ電源 同上 防犯ブザー、バイオメトリクス

 なお、これらの技術は、別添1に示すテロリズムに対処するための技術に共通するものとして捉えることができるものが多い。

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科学技術・学術政策局計画官付

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