5.安全・安心に資する成果創出を目指した新たな研究開発の仕組みの構築について

 第3期基本計画は、「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を基本姿勢としている。安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発の推進は、この基本姿勢を具体的に実現していくに当たって、基本となる視点である。文部科学省は、新たな科学技術シーズを生み出す広範な基礎研究を着実に推進するとともに、社会的価値のイノベーションを実現する新たな研究開発の仕組みを導入し、取り組むことが特に求められる。

 安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発を効果的・効率的に推進するためには、幅広い科学技術シーズの最大限の活用とユーザーニーズに的確に対応していくことが求められる。こうした課題に具体的に対応するためには、研究開発の企画・運営等の制度としてこれらの仕組みが導入されていることが効果的である。そこで、次のような仕組みによる新たな研究開発制度を発足することが求められる。

1 科学技術研究開発成果の最大限の活用

 テロ、犯罪などに使われる科学技術を用いた手段の高度化・巧妙化、益々複雑化が進む社会における災害対応、安全性の一層の向上等の観点から、旧来用いられている技術に加え、多様な科学技術研究開発の知を最大限に活用し、科学に裏打ちされた研究開発を推進する。

2 ユーザーニーズと技術シーズの連携

 危機の回避や対応に真に役立つ技術の確立のため、例えばユーザーの参画の下での技術評価の実施や試作機の導入を念頭に置くなど、研究開発の企画段階から、対応行政機関やユーザーであるこれら技術の運用者の参画を得て、ユーザーニーズを十分に勘案した研究開発を実現する。このような連携の実現にあたり、複数の産官学関係機関を取りまとめることのできるコーディネーターの役割が特に重要である。

3 技術のシステム化、統合化

 コアとなる技術を短期間で実用的な機器・技術へと結びつけるための、技術のシステム化、統合化に向けた研究開発計画が必要である。

4 人文・社会科学との協働の必要性

対応技術のみの開発にとどまるのではなく、それらの技術が社会に実装された場合の規制やプライバシーにかかる問題をはじめとした課題を考慮に入れながらの企画・推進が必須である。

1)社会への導入方法

 開発した成果を実社会へ速やかに導入し、また、導入した技術を安定的に管理運用するためには、国民の合意形成を適切に行うなど、人文・社会科学的観点からの検討が必要である。ユーザーに成果を使ってもらうための仕組み、地域の特性やユーザーの特性(子どもや高齢者等)、個人情報保護法など法的な観点、知的財産や標準の問題等までを考慮した取組みが求められる。

2)新技術の安全性評価

 新技術の研究開発をしている段階から、それが環境や人間、社会に与える影響についての事前評価、また、その技術が悪用された場合の検討・対策が必要である。その際、システム技術と要素技術によって社会全体への影響から特定の利用者のみへの影響の違いなど、評価の観点が異なる点に留意することが必要である。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)