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3.安全・安心科学技術に関する文部科学省の果たすべき役割

(1)安全・安心な社会の構築のための我が国の取組の現状

 政府は、現時点で我が国が有する資源・ポテンシャルを最大限に活用した危機事態への対策として、法制整備や罰則の強化、治安・保安・防災関係の要員・人材の確保及び国民の安全教育の徹底等の観点から、以下のような対策を講じている。

 大規模自然災害に関しては、内閣総理大臣を会長とし、全閣僚が委員として参画している中央防災会議(昭和38年発足)が、防災基本計画や地域防災計画の作成・実施、非常災害の際の緊急措置に関する計画を作成・実施の役割を担っている。また、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の後には、地震防災対策特別措置法に基づき、科学技術庁長官(現在は文部科学大臣)を本部長とする地震調査研究推進本部が発足し、関係省庁の連携の下で地震調査研究を一元的に推進している。大規模自然災害に関する科学技術研究開発の重要事項については、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下にある防災分野の研究開発に関する委員会において防災分野の重要研究課題を抽出するとともに、同じく測地学分科会において地震、噴火予知のための観測研究計画を策定している。

 重大事故に関しては、上記中央防災会議の防災基本計画において、航空災害対策、鉄道災害対策及び大規模な火事災害対策が示されている。また、内閣総理大臣を会長とする中央交通安全対策会議において陸上、海上及び航空交通の安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱として交通安全基本計画が取りまとめられている他、平成17年のJR西日本福知山線列車脱線事故を踏まえ、国土交通省に公共交通にかかるヒューマンエラー事故防止対策検討委員会が設置されている。

 新興・再興感染症に関しては、平成11年に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が施行され、国・地方自治体が連携し、感染症の発生・蔓延を防止する措置が講じられているほか、近年では、国際的な新型インフルエンザ発生の危険性の高まりから、平成17年5月にWHO世界インフルエンザ事前対策計画が策定されるとともに、これに準じて我が国でも同11月に、新型インフルエンザ対策行動計画として、”計画と連携”、”サーベイランス”、”予防と封じ込め”、”医療”、”情報提供・共有”の5つの観点から講ずべき具体的な対策を策定している。また、技術的な開発、研究人材の育成に関しても、厚生労働省及び文部科学省における取組が行われている。

 食品安全問題に関しては、平成15年に施行された食品安全基本法に基づき、食品を摂取することによる健康への悪影響について、科学的知見に基づき評価を行う機関として食品安全委員会が設置されている他、食品衛生に関するリスク管理を厚生労働省が、農林水産物に関するリスク管理を農林水産省が実施している。

 情報セキュリティに関しては、平成13年に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が設置されたほか、平成17年4月に内閣官房情報セキュリティセンターが設置され、情報セキュリティ問題に関する政府中核機能の強化が図られている。また、同年5月にはIT戦略本部の下に、情報セキュリティ政策会議が設置され、同年12月に第1次情報セキュリティ基本計画が策定されている。

 各種犯罪に関しては、平成13年に国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部が内閣に設置されるとともに、平成15年には内閣総理大臣が主催し全閣僚が構成員となっている犯罪対策閣僚会議が発足して、犯罪に強い社会の実現のための行動計画(平成15年)や安全・安心なまちづくり全国展開プラン(平成17年)を策定し対応の強化を図っている。また、重要インフラのサイバーテロ対策に係る特別行動計画の策定(平成12年)、平成16年の警察法改正等、組織犯罪、爆弾テロ、サイバーテロなどの新たな治安現象への対応に取り組んでいる。加えて、文部科学省においては、学校及び登下校時の子どもの安全を守るための各種取組を実施している。

 テロリズムに関しては、上記犯罪に対する取組に加え、有事法制関連法として、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)及び武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(武力攻撃事態対処法)が平成16年9月に施行され、緊急時の国民の避難、救援、社会基盤の対処、社会復旧をはじめとした対応について規定し、各省庁においても国民保護計画を策定している。

 危機対応を担う関連府省や公的機関においては、現場の予知・検知・事後処理等の実施に際し、多くの課題を抱えている。しかしながら、これらの課題の解決に対して求められる科学技術に関する危機対応府省や機関における知見は十分ではなく、科学技術の知見に裏付けられた効果的・効率的な研究開発への取組や適時適切な情報・助言の入手等が必須である。このことから、現時点で有する資源・ポテンシャルを活用した上で、その各危機事態への取組に加えて、より効果的・効率的な危機管理機能の強化や、国際的にも日々高度化・巧妙化が進む犯罪・テロへの十分な対策の実現、高度で複雑化した社会の中で発生する危機事態の予防や事態の迅速かつ適切な対処を通じた被害の低減化及び、より人に優しい対処方策の実現に対し、我が国が持つ多様な科学技術のポテンシャルを積極的に活用することが期待される。

(2)安全・安心な社会の構築に対し、文部科学省が果たすべき役割について

 文部科学省は、科学技術分野全般についての基盤的・基礎的な研究開発から、成果を活用した実用的なフェーズに向けた研究開発や長期的かつ大規模なプロジェクトに渡り、多岐にわたる研究開発を推進し、多様な科学技術シーズを生み出し続けている。第3期基本計画においては、このような研究開発の成果をイノベーションを通して、安全・安心な社会の構築をはじめとした社会的な価値として活用し、社会・国民に還元する努力を強化することが強調されており、文部科学省が果たすべき役割は、ますます重大になっている。
 更に、危機対応を担う関係府省等が、既存の取組に加えてより効果的・効率的な対処技術を獲得するためには、これらの関係府省等のニーズと大学や産官の研究機関で生み出される科学技術シーズを連携させ、実効的な研究開発を実施することが大きな鍵となる。この点で、文部科学省は、科学技術に関する基礎研究及び共通的な研究開発、関係行政機関に重複して設置することが多額の経費を要するため適当ではないと認められる施設及び設備を必要とするものに関すること、科学技術に関する研究開発で多数部門の協力を要する総合的なものに関することを任務としており、このような総合的・横断的な科学技術の研究開発の効果的・効率的な推進のために果たすべき役割は多大である。
 また、安全・安心な社会の構築に資するために期待の高い技術として、センサー、画像、情報のネットワーク化等の各種の基盤的な技術があげられるが、大学や公的研究機関におけるこれらの基盤的な技術ポテンシャルの観点からも、当省に求められる期待は大きい。
 安全・安心な社会の構築のために、安全・安心を脅かす事象の予測や検知、危機時の対応のための機器や技術開発等の自然科学における取組だけではなく、開発された機器や技術の社会実装や、安全・安心を脅かす事態に対する社会の脆弱性の把握、社会システムが被るダメージの予測、被害の最少化や対策の最適化などに資する人文・社会科学的な知見をも動員した取組が求められる。文部科学省においては、大学や公的研究機関において、人文・社会科学についても多岐にわたる取組が行われ、その蓄積を有しており、それらを最大限活用することも求められる。
 また、安全・安心な社会の構築に向けては、危機対応を担う関連府省や公共交通機関をはじめとした民間等の関係機関が、必要な科学技術情報を適時適切に入手するための仕組みの構築が急務であり、多様な科学技術シーズを扱う文部科学省がこのような支援機能を果たすことが効果的である。
 なお、危機時の対応を直接に担う公的機関など(ユーザー)のニーズに即したものにするべく、科学技術の発展に伴い、安全・安心な社会を脅かす事態が高度化・複雑化する中で、それへ対応する科学技術の研究開発もスピードが求められる。文部科学省は、危機時の対応を直接に担う組織ではないが、こうした現場における真のユーザーのニーズや、対応府省の行政ニーズを把握し、それに応えてゆくような取組に十分に留意する必要がある。
 加えて、関連する研究者の育成や危機対応者をはじめとした人材育成や、マスメディアの能力強化(キャパシティビルディング)を目指した積極的な取り組みについても、教育行政を担う文部科学省に期待される役割は大きい。
 更には我が国が、効率的・効果的かつ国際的なレベルにかなった安全・安心な社会を構築するためには、必要に応じ、戦略的に諸外国との協力を実施することも重要であり、その際に文部科学省が国内外の連携、調整に対して、大きな役割を担う必要がある。
 以上のような点を踏まえ、安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発の推進に当たって、文部科学省に次項以降に示すような具体的取組が期待される。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)

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