1.背景

 第2期科学技術基本計画(以下「基本計画」と記述)(平成13年度から平成17年度)においては、科学技術政策が目指すべき理念となる、我が国が目指すべき3つの国の姿として、「知の創造と活用により世界に貢献できる国」、「国際競争力があり持続的発展ができる国」とともに、「安心・安全で質の高い生活のできる国」が掲げられた。
 しかしながら、平成13年9月に米国で起きた9.11同時多発テロ以来、同基本計画期間中にも、平成17年7月のロンドン同時爆破テロ、平成17年10月のインドネシア・バリ島同時多発テロをはじめとした国際的なテロの発生、凶悪・巧妙な犯罪といった国民の安全・安心に対する人的脅威が後を絶たない。また、地震・津波、台風・ハリケーンをはじめとした国内外における自然災害により多くの人命が失われるとともに社会インフラへの多大な被害も生じている。さらに、国境を越えた感染症の伝染の危険性や、人獣共通感染症等の新たな感染症の大規模な発生等の懸念もますます高まりを見せている。このように国民の安全・安心に対する脅威が高まる中で、それらに対応する科学技術が果たすべき役割についての国民の期待が高まっている。
 文部科学省では、平成15年4月に「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」を発足させた。同懇談会では、安全・安心な社会の概念自体の整理から議論を開始し、このような社会の構築に向けて取り組むべき科学技術研究開発の重点課題を抽出すると共に、政府がとるべき科学技術政策上の課題とその対策についても検討を行い、結果を平成16年4月に報告書として取りまとめた。
 本年3月に閣議決定された第3期基本計画においては、その基本姿勢のひとつとして、「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を掲げ、「知の創造と活用により世界に貢献できる国の実現」及び「国際競争力があり持続的発展ができる国の実現」とともに、「安心・安全で質の高い生活のできる国の実現」が理念として示されている。これらの理念を実現するため、科学技術が目指すべき6つの具体的な政策目標が掲げられているが、その1つとして、「安全が誇りとなる国-世界一安全な国・日本を実現」が掲げられている。また、基本計画にあわせて同基本計画期間中に予算を重点投資する研究開発課題である62の「戦略重点科学技術」が選定されたが、これらの絞り込みに際しても、“安全・安心面への不安等の社会・国民のニーズに対して科学技術からの解決策を明確に示していく必要性があるもの”という視点が重視されている。
 総合科学技術会議においては、平成16年12月に「安全に資する科学技術推進プロジェクトチーム」が発足し、本政策課題についての議論が開始された。平成17年に取りまとめられた中間報告書の考え方が、上記、第3期基本計画の議論に反映されるとともに、基本計画における分野別推進戦略の策定に際しては、同プロジェクトチームから安全に資する科学技術の基本的な推進方策が8つの各分野別プロジェクトチームに対して提示され、分野別推進戦略全体を貫く横断的な観点として反映された。更に、8つの分野別推進戦略の内容をフィードバックしたものとして、平成18年6月に「安全に資する科学技術推進戦略」が取りまとめられている。
 以上の状況を踏まえつつ、平成18年3月に、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下に安全・安心科学技術委員会を新設し、本政策課題に対して、文部科学省として取り組むべき方策についての検討及び取りまとめを行い、研究計画・評価分科会において推進方策として定めた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)