(参考)用語集

●FIREX計画:

 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターで進められているプロジェクトの名称。レーザー核融合における高速点火方式の原理を実証し、効率的な核融合点火と自己燃焼へのシナリオを明らかにすることを目的とするもの。

●HTTR(High Temperature Engineering Test Reactor:高温工学試験研究炉):

 高温ガス炉の技術基盤の確立と高度化に関する試験、さらに高温炉心を用いた照射試験を行うことを目的として、旧日本原子力研究所に建設された試験研究炉。平成2年11月に設置許可が下り、平成10年11月10日初臨界を達成後、平成13年12月7日に定格熱出力30メガワット及び原子炉出口冷却材温度850度を達成した。高温環境下で大型試料の照射が可能であるという機能を活かした高温ガス炉技術の高度化及び先端基礎研究としての燃料・材料の照射試験を進めるとともに、核熱利用技術の開発研究及び高温ガス炉の固有の安全性に関する実証試験を行っている。

●JT-60:

 臨界プラズマ試験装置JAERI Tokamak-60の略称であり、日本原子力研究所那珂研究所で稼働している世界最大級のトカマク装置(主半径R=3.4メートル、小半径a=1メートル、トロイダル磁場Bt=4T、プラズマ電流Ip=3MA)である。米国のTFTR(運転終了)、欧州のJET装置と併せて3大トカマクといわれた。JT-60で達成された5.2億度を越える世界最高温度は、ギネスブックにも登録されている。

●MOX燃料(酸化物燃料):

 ウラン酸化物とプルトニウム酸化物を混合して作った燃料。我が国では新型転換炉「ふげん」、高速実験炉「常陽」、高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用されている。軽水炉で用いるMOX燃料は「プルサーマル燃料」と呼ばれて、仏国、独国などで2,000体を超える使用実績がある。

●RI:

 放射性同位元素(Radio Isotope)の略称。同一原子番号をもつ原子の間で原子量が異なる原子を同位元素とよび、このうち放射能をもつ同位元素を放射性同位元素とよぶ。放射性核種は放射性同位元素と同義語である。

●RI・研究所等廃棄物:

 RI廃棄物及び研究所等廃棄物をRI・研究所等廃棄物と総称している。RI廃棄物とは、放射性同位元素(Radioisotope)を使用した施設、医療機関や医療検査機関などから発生する、放射性同位元素を含む廃棄物。研究所等廃棄物とは、原子炉等規制法による規制の下で、試験研究炉などを設置した事業所並びに核燃料物質などの使用施設などを設置した事業所から発生する放射性廃棄物。試験研究炉の運転に伴い発生する放射性廃棄物は、原子力発電所から発生する液体や固体の廃棄物と同様なものである。その他は、核燃料物質などを用いた研究活動に伴って発生する雑固体廃棄物が主なものである。また、試験研究炉の運転、核燃料物質などの使用などを行っている研究所などにおいては、併せてRIが使用されることも多く、原子炉等規制法及び放射線障害防止法の双方の規制を受ける廃棄物も発生している。

●SPring-8:

 大型放射光施設(Super Photon ring 8 GeV)の略称。平成3年から日本原子力研究所(当時)と理化学研究所が共同で建設を開始し、平成9年10月から供用を開始した。管理運営は財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。

●エネルギー増倍率:

 核融合反応による出力と、そのプラズマ状態を維持するためにプラズマに直接供給される外部からの入力の比。この値が1のときを臨界プラズマ条件、無限大のときを自己点火条件と呼ぶ。

●大型ヘリカル装置(LHD):

 自然科学研究機構核融合科学研究所で稼動中の世界最大規模のヘリカル型磁場閉じ込め実験装置。LHDとはLarge Helical Deviceの略。LHDは、プラズマの閉じ込めに、ねじれた磁場コイル(ヘリカルコイル)を用いた我が国独自の創案による磁場配位(ヘリオトロン配位)を採用している。平成10年3月から実験が開始された。ヘリカル方式は本質的に制御性が優れるため、将来の発電炉に必要不可欠な定常高効率運転に適しており、LHDではすでに1時間以上の放電実験を行っている。また、トカマク方式と磁場構造が基本的に異なっていることなどから、トカマク方式と相補的な研究を行うことなどにより、ITER(イーター)計画推進のための支援装置としての役割が期待されている。

●核物質防護:

 核物質の盗取など不法な転用や原子力施設などへの妨害破壊行為を防止すること。核物質防護は盗んだ核物質を原料にして核兵器が作られるのではないかというシナリオを想定するため、核不拡散を確保するための手段の一つと言われている。我が国の原子力開発利用の進展に伴い、原子力施設における核物質の取扱量や核物質の輸送機会が増大してきており、核物質防護の重要性は国際的にも国内的にも、極めて大きくなってきている。

●核兵器不拡散条約(NPT):

 核兵器保有国(昭和42年1月1日の時点で核兵器保有の米、旧ソ、英、仏、中の5ヶ国)の増加を防止し、保有国が非保有国に核爆発装置や核分裂物質を提供しないことを目的とする条約で昭和45年3月に発効。平成7年に無期限延長が決定された。

●核融合エネルギー:

 核融合反応によって発生するエネルギー。1グラムの重水素(D)とトリチウム(T)燃料の核融合反応から発生するエネルギーは、タンクローリー1台分の石油(約8トン)を燃やしたときの熱量に相当する。

●核融合点火温度:

 核融合反応をおこすためには、2つの正電荷をもつ原子核を電気的反発力に打ち勝って近接させなければならない。このためには、原子核を約1,000キロメートル毎秒以上の速度、温度に換算して1億度程度の超高温状態にする必要がある。核融合点火を実現する点火温度は、閉じ込め方式によって異なり、高密度プラズマの生成が容易な慣性閉じ込め方式では、磁場閉じ込めプラズマに比べ低めとなる傾向がある。

●核融合燃焼:

 燃料である2つの原子核の核融合反応が生じている状態を示す。核融合反応を熱源と考えて、化学反応による燃焼に例えている。

●核融合炉心プラズマ:

 核融合炉を目指した研究において作られるプラズマの総称。

●ガラス固化:

 再処理工程において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃液を、ガラスを形成する成分と一緒に過熱することにより水分を蒸発させて非結晶に固結(ガラス化)させ、物理的・化学的に安定な形態にするプロセス。ガラス固化体は、廃液をステンレス製の堅牢な容器(キャニスター)にガラス固化したものであり、放射性物質が安定な形態に保持され地下水に対する耐浸出性に優れていることから、人工バリアの構成要素の一つとなる。

●ガラス固化体:

 高レベル放射性廃棄物の処分のために、液体状の高レベル放射性廃棄物をガラス原料とともに高温(約1,200度)で溶かし合わせたものを、ステンレス製の容器(キャニスタ)内に入れて冷やし固めたもの。

●簡素化ペレット法:

 PUREX法から得られる高除染の燃料原料粉をベースとした酸化物ペレット燃料製造法について、経済性向上に向けた工程簡素化を図った燃料製造法。具体的には、硝酸溶液混合時に燃料仕様に合わせたプルトニウム富化度調整を行い、マイクロ波加熱脱硝時にペレット成型・焼結のための粉末特性調整を行うことで、混合から造粒までの酸化物燃料粉末を取扱うプロセスを撤廃し合理化を図った。

●管理処分:

 長寿命放射性核種を有意に含まない低レベル放射性廃棄物は、時間の経過とともに放射性核種が減衰する。放射線防護上の管理も放射性核種の減衰に伴って軽減化することができ、有意な期間内例えば300年~400年程度に放射線防護上の管理を必要としない段階に至るこのように段階的に管理を軽減し、最終的には管理を必要としない段階まで管理する処分の方法を管理処分という。管理処分の方式には、浅地中トレンチ処分、浅地中ピット処分、余裕深度処分がある。

●クリアランスレベル:

 当該物質に起因する放射線の線量が自然界の放射線レベルと比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視でき「放射性物質として扱う必要がないもの」を区分する値のこと。

●軽水炉:

 減速材及び冷却材に水(軽水)を使用している原子炉。沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)がある発電用原子炉として米国、仏国、日本を始め世界で最も多く使われている。

●研究所等廃棄物:

 原子炉等規制法による規制の下で、試験研究炉などを設置した事業所並びに核燃料物質などの使用施設などを設置した事業所から発生する放射性廃棄物。試験研究炉の運転に伴い発生する放射性廃棄物は、原子力発電所から発生する液体や固体の廃棄物と同様なものである。その他は、核燃料物質などを用いた研究活動に伴って発生する雑固体廃棄物が主なものである。

●原型炉:

 ある形式の動力炉を開発する場合、原子炉及びそのプラントについて、技術的性能の見通しを得ること、その原子炉の大型化についての技術的問題点ならびに経済性に関する目安を得ること等を目的として作られた原子炉を原型炉という。核融合の場合、プラント規模での発電及び燃料増殖の実証と、一定の経済性を見通せる目安を得る事を目的に建設される。

●原子核:

 核子すなわち陽子と中性子からなる複合粒子で、通常は原子の中央にあり、周囲の電子とともに原子を構成する。半径は10~14メートル以下で原子半径の1万分の1にも達しないが、比重は大きく、原子質量の99.9パーセント以上を占める。

●高温ガス炉(HTGR):

 黒鉛減速ヘリウム冷却型炉を高温ガス炉(HTGR)という。一般に原子炉冷却材ヘリウムガス温度が700度~950度を達成するこのHTGRシステムは、炉心構成(炉心)出力、密度、原子炉圧力容器及び一次系主要機器に特徴があり、将来多様な工業的利用の可能性を有している。炉心は耐熱性に優れる被覆燃料粒子と黒鉛材料で構成され、ヘリウムガスで冷却され、炉心の熱容量が大きいこと等と相まって高度の固有安全性を達成できる。燃料として主にウランが用いられ、燃焼度約10万メガワットディパートンが得られる。原子炉冷却材温度を700度以上とすることにより、ガスタービン高効率発電のみならず、水素製造、合成燃料製造プロセス等の様々な核熱利用を可能にする。我が国では日本原子力研究所の高温工学試験研究炉(HTTR:初臨界平成10年11月)が、平成16年4月に世界初の取り出しガス温度950度を達成している。

●高速増殖炉(FBR:Fast Breeder Reactor):

 使用した燃料よりもさらに多くの燃料を生み出す(増殖)原子炉。我が国には、実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」がある。ウラン238が中性子を吸収すると核分裂性のプルトニウムに転換されることを利用した原子炉で、高速中性子でその転換率が高いため、水のような中性子の減速効果のあるものを原子炉冷却材として用いずに、ナトリウムなどを原子炉冷却材として用いる。燃料としてはプルトニウムとウランの混合体(MOX燃料)を用いる。プルトニウムへの転換率を高めるため、炉心からもれて出る中性子をウラン238に吸収させるブランケット(外套部)を設けている。軽水炉では天然ウランの1パーセント程度を有効に利用できるに過ぎないが、核燃料サイクルの中で高速増殖炉を有効に用いることにより、この利用できる割合は80パーセント以上に高まりウラン資源を十分に利用することができる。

●高速点火方式:

 レーザー核融合における点火方式の一つ。ピストンの役割をするレーザーで圧縮した核融合燃料に、点火プラグの役割をするレーザーを照射し、点火燃焼させる方式。従来方式である中心点火方式(核融合燃料をレーザーで圧縮することにより、中心にできた高温領域が点火する方式)よりもはるかに低出力のレーザーで、高い核融合利得を実現することができる。

●高ベータ定常運転:

 磁場閉じ込め方式では、プラズマを閉じ込める磁場の圧力に対するプラズマ圧力の比を「ベータ(β)値」という。一定の磁場では、ベータ値が高いほど、高い圧力(圧力=温度・密度)のプラズマを閉じ込めることができる。一方、現在のプラズマ実験では、維持時間が高々数時間であるが、将来の核融合炉では1年間にわたり定常に運転されることが望まれる。このような高ベータプラズマを定常に保持した運転の実現が、トカマク型核融合炉の経済性向上のために大変重要である。

●高レベル放射性廃棄物(HLW:high-level radioactive wastes):

 使用済燃料の再処理工程において排出される放射能レベルの高い廃液、またはこれの固化体をいう。現状の軽水炉再処理(PUREX)で発生する高レベル放射性廃棄物中には、核分裂生成物とマイナーアクチニド元素(Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム))、回収から漏れたU(ウラン)、Pu(プルトニウム)が含まれており、崩壊熱レベルも高い。

●国際核融合エネルギー研究センター:

 幅広いアプローチのプロジェクトの一つ。原型炉設計・R&D調整センター、ITER(イーター)遠隔実験研究センター、核融合計算機シミュレーションセンターから構成され、これらが連携しつつ核融合エネルギーの実現に向けた研究開発を効果的・効率的に実施するもので、青森県六ヶ所村に設置される予定。

●国際核融合材料照射施設(IFMIF)の工学実証・工学設計:

 OECD/IEAの下で日欧露米の協力により実施した国際核融合材料照射施設の概念検討、要素技術開発の延長上に位置づけられる活動で、核融合中性子の材料への重照射に関するデータ取得するための施設について、その建設判断に必要な統合された工学設計と裏付けとなる技術データの取得を目的とする。幅広いアプローチのプロジェクトの一つとして青森県六ヶ所村で実施される予定。

●国際原子力機関(IAEA):

 世界の平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献の促進増大と軍事転用されないための保障措置(保障措置」の項を参照)の実施を目的として昭和32年に設立された国連と連携協定を有する技術的国際機関。平成17年2月における加盟国は138ヶ国。

●国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))計画:

 制御された核燃焼プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的・技術的実現性を実証することを目指したトカマク型の核融合実験炉計画。1992年から日本・米国・欧州・ロシアの国際協力として推進され、9年間の工学設計及び、主要機器の技術開発を行った。

 平成13年11月からは、政府間協議を開始し、平成17年6月にモスクワで開催された第2回6極閣僚級会合においてITER(イーター)の建設地がフランス・カダラッシュに決定するとともに、平成18年5月の閣僚級会合(ブラッセル)において、ITER(イーター)機構設立のための協定案への仮署名を行った。現在の参加極は日本、EU、米国、韓国、中国、ロシア、インドの7極である。

●再処理:

 原子炉で使用した燃料(使用済燃料)の中には、燃え残りのウランや新しくできたプルトニウムなど、燃料として再び利用できるものと、ウランなどが分裂してできた核分裂生成物が含まれている。使用済燃料を化学的プロセスにより、再び燃料として利用できるウラン、プルトニウムなどとそれ以外の物質(高レベル放射性廃棄物)に分離するプロセスのこと。

●サテライト・トカマク:

 幅広いアプローチのプロジェクトの一つ。日本原子力研究開発機構の臨界プラズマ試験装置JT-60を活用し、プラズマの長時間維持やITER(イーター)を模擬したプラズマ配位が可能なように、JT-60のコイルを超伝導化する等の改修を行い、ITER(イーター)の運転シナリオの最適化等のITER(イーター)支援研究や、原型炉に向けてITER(イーター)を補完する研究を実施する。

●3次元スキャニング照射法:

 粒子線治療における照射形成法の一種。ブラッグピークを3次元的に走査(scanning)することにより、任意の形状の標的を照射することが可能。従来の照射法では、標的及び照射方向ごとにボーラスやコリメータといったビーム形成のためのブロックが必要であるが、本照射法ではこれらは不要となる。

●磁場閉じ込め方式:

 核融合反応が生じる超高温プラズマを、磁場で閉じ込める方式をいう。円環状磁場中のプラズマ内部に電流を流して捩じれた磁場構造を作るトカマク方式や、外部コイルにより捩じれた磁場構造をつくるヘリカル方式、直線上の両端磁場を強くした磁場構造と端部の電位によるプラズマ遮蔽を組み合わせたミラー方式等がある。

●重粒子線がん治療:

 高速の重荷電粒子(重粒子線)を用いる、がんの放射線治療の一種。重粒子線はがん病巣への線量集中性が高く、がん細胞への生物学的な効果が高いという特徴を持つ。我が国では、平成6年より放射線医学総合研究所において世界初の医療用重粒子線加速器(HIMAC)を用いて重粒子線がん治療研究が行われており、平成15年にはその有効性が評価され厚生労働省より高度先進医療の承認を受けた。

●処分:

 放射性廃棄物を人間の生活環境への影響が有意なものとならないように安全・確実に隔離すること。

●処理:

 処分の前段階で、焼却、圧縮等により減容したり、物理的、化学的に安定化したりするなどのプロセスをいう。

●先進湿式法(NEXT:New EXtraction System for TRU Recovery):

 軽水炉燃料の再処理法として実績のあるPUREX法をベースに、経済性向上、廃棄物発生量低減、核拡散抵抗性向上の観点から、これを大幅に見直した「簡素化溶媒抽出法」(抽出溶媒にTBPを用いるが、プルトニウムをウラン及びネプツニウムと分離せず、低除染で共回収する)と、あらかじめウランを粗取りする「晶析法」を組み合わせ、さらにMA回収機能を付加した先進的な湿式再処理方法。

●浅地中処分:

 低レベル放射性廃棄物を地表付近の地下に埋設する処分方法。処分方法としては、トレンチ処分とコンクリートピット処分がある。

 (コンクリートピット処分:

 コンクリートピットを設けた浅地中(地下数メートル)へ埋設処分する方法)

 (トレンチ処分:

 人工構築物を設けない浅地中(地下数メートル)へ埋設処分する方法)

●浅地中トレンチ処分:

 人工構築物を設けない浅地中地下数メートルへ埋設処分する方法対象廃棄物としては原子炉施設のコンクリート廃材等。日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した放射能レベルの極めて低いコンクリート廃棄物を対象に、同研究所敷地内において処分における安全性を実証する目的で実施されている例がある。

●浅地中ピット処分:

 コンクリートピットを設けた浅地中(地下数メートル)へ埋設処分する方法。対象廃棄物の一部については、原子炉施設の廃液固化体等。原子力発電所の運転に伴って発生する低レベル放射性廃棄物は、平成4年より、青森県六ヶ所村にある日本原燃株式会社六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで埋設処分されている。

●増殖比(Breeding Ratio):

 原子炉の運転に伴いウラン235やプルトニウム239などの核分裂性物質が核分裂などで減少する割合に対して、ウラン238、プルトニウム240などから新たに中性子を吸収して核分裂性物質(プルトニウム239、プルトニウム241など)を生成する割合の比率をいう。特にその比が1をこえる場合を「増殖比」、1以下の場合を「転換比」と呼ぶ。

●大強度陽子加速器(J-PARC:Japan Proton Accelerator Research Complex):

 日本原子力研究所(平成17年10月以降は日本原子力研究開発機構)と高エネルギー加速器研究機構とが共同で建設している加速器施設。世界最大級の強度を有する陽子ビームを標的に照射することにより、中性子を始めとする多くの二次粒子を取り出し、生命科学、物質科学、材料科学、原子核・素粒子物理、未来型原子力システム等の分野での研究が行われる。

●第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF:Generation 4 International Forum):

 GIF(第4世代原子力システム国際フォーラム)プロジェクト:第4世代(Generation 4 , GEN-4)原子炉とは、DOEが2030年頃の実用化を目指して提唱した次世代の原子炉の一般的な概念である。第4世代原子炉は、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保などエネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の3項目の目標を満足する必要がある。このプログラムを国際的な枠組みで推進するため、米国、日本、英国、韓国、南アフリカ、仏国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、スイスの10カ国と1機関(EU)が平成13年7月に第4世代国際フォーラム(Generation4 International Forum:GIF)を結成し、6つの原子炉概念に絞って研究開発を進めていくこととしている。

●地層処分:

 人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリアを構築することにより処分の長期的な安全性を確保する処分方法。「地層処分」という用語の「地層」には、地質学上の堆積岩を指す「地層」と、地質学上は「地層」とみなされない「岩体」が含まれている。

●中間貯蔵:

 原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)を、再処理するまでの間、当該発電所以外の使用済燃料貯蔵施設において貯蔵すること。平成11年6月原子炉等規制法の改正により中間貯蔵に関する事業、規制等が定められた。

●中性子:

 陽子とともに原子核を構成する電気的に中性の粒子。水素の原子核である陽子とほぼ同じ質量をもち、中性子ビームを物質で散乱させた場合には、物質内の水素などの軽い原子に対し敏感である。また、磁性を持つことから、物性研究、磁性研究等に用いられる。

●超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物):

 再処理施設及びMOX燃料加工施設から発生する低レベル放射性廃棄物で、ウランより原子番号が大きい人工放射性核種(TRU核種)を含む廃棄物。TRU核種には、ネプツニウム237(半減期:214万年、プルトニウム239(半減期:2万4千年)、アメリシウム241(半減期:432年)のように半減期が長く、アルファ線を放出する放射性核種が多い。

●定常・無電流環状プラズマ:

 環状磁場閉じ込め方式では、環状磁場とプラズマ小半径周りの磁場との重畳によるねじれた磁力線構造である必要がある。トカマクでは環状方向にプラズマ電流を流し、プラズマ小半径周りの磁場を発生させるのに対して、ヘリカルでは、コイル自身をプラズマ小半径周りにねじることにより磁場を発生させている。プラズマ電流を必要としないことから、これを無電流環状プラズマと称する。プラズマ電流が原因となる不安定性がないことから、定常運転に優れている。

●トカマク:

 トロイダルな形状の閉じ込め方式でプラズマは磁場により閉じ込められる。主たる磁場はトロイダル方向のトロイダル磁場であるが、これだけではプラズマを閉じ込めることができない。プラズマの圧力と磁力がバランスして平衡を保つためにはポロイダル磁場も必要である。ポロイダル磁場は、プラズマ中にトロイダル方向の電流を流すことにより作られる。プラズマ電流はオーム加熱の原理により、プラズマ加熱としての役割も果たしている。旧ソビエトのクルチャトフ研究所で考案され、その優れた閉じ込め性能のために世界各国の研究所で、この形式のプラズマ実験装置が建設され研究されてきた。「トカマク」(Tokamak)の語はこの方式の構造を示すロシア語"тороидальная камера в магнитных катушках"(toroidal chamber in magnetic coils)の頭字語である。

●二次粒子:

 高エネルギーに加速した大強度陽子ビーム(一次粒子)を標的となる物質の原子核に衝突させると、中性子、π中間子、ミュオン、K中間子、反陽子、ニュートリノ等が大量生成される。

●ニュートリノ:

 中性微子ともいう電気的に中性で微小な素粒子。電子、ミュー粒子(ミュオン)、タウ粒子に対応する3種類が存在する。素粒子の標準理論では質量はゼロとされてきたが、神岡に設置されたスーパーカミオカンデによる観測でニュートリノに質量があるために起こる現象が1998年に初めて確認され、詳しい研究が続けられている。J-PARCで発生できる大量のニュートリノを使えば研究が飛躍的に進むと期待される。

●燃焼度:

 燃料が単位量当たりどれくらい燃焼したかを表す値。核燃料の場合、例えばウラン1トン当たりに発生した熱エネルギー量をMWd/tU(メガワットディパートンウラン)で表現している。

●幅広いアプローチ:

 ITER(イーター)計画と並行して補完的に実施する研究開発プロジェクトで、2005年6月にモスクワで開催された第2回6極閣僚級会合において、日欧協力の下、我が国で実施することが決定された。実施プロジェクトは、文部科学省に設置されたITER(イーター)計画推進検討会における検討を経て、1国際核融合エネルギー研究センター、2サテライトトカマク装置及び3国際核融合材料照射施設工学実証・工学設計活動、の3プロジェクトが選定された。

● パルス中性子源:

 原子炉等の定常的に中性子を発生する中性子源と異なり、加速器による核破砕等によりパルス状に中性子を発生し、それ以外の時間は一切中性子を出さない線源を示す。

●ビーム強度:

 個々の粒子のもつエネルギーに関係なく単位面積を単位時間に通過する粒子の数をビーム強度(インテンシティ)という。陽子・電子等単位電荷をもつ粒子の場合はアンペア(A)、ミリアンペア(mA)、マイクロアンペア(μA)等を用いる。

●ビームライン:

 量子ビーム施設では、大型加速器や原子炉等で発生した量子ビームを、その線源から測定装置まで高品位のビームに加工しながら導く。このビーム輸送系と測定装置をまとめてビームラインと呼ぶ。

●物質・生命科学実験施設(MLF:Materials and Life Science Facility):

 3GeV(ギガ電子ボルト)シンクロトロンから送られてきた陽子ビームを利用して二次粒子(中性子、ミュオン)を発生させ、物質・材料科学、生命科学等の研究を行うための実験施設。

●プラズマ:

 温度の上昇とともに物質の状態は一般に固体から、液体、気体へと変化してゆく。さらに高温になると、原子核のまわりを廻っている電子がはぎとられて原子は正の電荷を持つイオンと負の電荷を持つ電子に分かれて(イオン化)、両者が高速で不規則に運動している状態になる。この状態をプラズマという。核融合では、温度が数億度に及ぶ超高温プラズマが対象となる。プラズマは雷やオーロラなど自然界に広く存在するが、身近な例としては蛍光灯などの希薄な気体中の放電によって作られるプラズマがある。

●分離変換技術:

 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種をその半減期や利用目的に応じて分離する(分離技術)とともに、長寿命核種を短寿命核種あるいは非放射性核種に変換する(変換技術)ための技術。分離変換技術により、廃棄物の放射性毒性の総量を大幅に低減させたり、高レベル放射性廃棄物の最終処分に当たり、発熱量の大きい核種を除去することで処分場容積を減少させたり、放射性廃棄物の一部資源化が可能となる。

●ヘリカル:

 トカマクと並んで、磁場によるトロイダルな形状(環状)の閉じ込め方式概念の一つ。しかし、トカマクと異なり、プラズマ閉じ込めに必要なポロイダル磁場をプラズマ電流ではなく外部コイルにより形成する。外部コイルとしては、螺旋状のねじれたコイル(ヘリカルコイル)あるいはヘリカルコイルを分割したモジュラーコイルが用いられている。

●包括的核実験禁止条約(CTBT):

 核兵器の全ての実験的爆発、及び他の核爆発を禁止した条約であり、仮にこれらの実験的爆発及び他の核爆発が行われた場合には、国際監視制度による監視活動と現地査察により、核爆発の事実を確認する仕組みを規定している。平成8年9月の国連総会で圧倒的多数の賛成で採択された。本条約が発効するためには、特定の44カ国(発効要件国)全ての批准が必要だが、一部の発効要件国の批准の見通しはたっておらず、条約は未発効。

●放射線:

 法令上、放射線とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつものであると定義されており、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線、重荷電粒子線、エックス線などが含まれる。

●放射線医学総合研究所:

 放射線に関する人体への影響、障害の予防、治療・診断並びに医学利用に関する研究開発を総合的に実施する我が国唯一の中核的研究機関。昭和32年7月に科学技術庁の附属機関として設立され、平成13年4月に独立行政法人化した。千葉市に本所、茨城県ひたちなか市に那珂湊支所を置く。重粒子線がん治療研究、放射線生体影響研究、分子イメージング研究、放射線安全研究及び緊急被ばく医療研究等の推進、並びにこれらに係る人材育成及び成果普及に務めている。

●保障措置、包括的保障措置協定:

 原子力の平和利用を確保するため、核物質(IAEA憲章第20条で定義された原料物質、特殊核分裂性物質)が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを検認すること。なお「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)を締結している非核兵器国は、同条約に基づき、」IAEAとの間で保障措置協定を締結し、全ての平和的な原子力活動に係る全ての核物質について保障措置を適用することが義務づけられており、このような保障措置を包括的保障措置という。

●マイナーアクチニド(Minor Actinide):

 周期律表において原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムに至る15の元素を総称してアクチノイド元素といい、このうちアクチニウムを除いたものをアクチニド元素という。原子番号90、91、92のトリウム、プロトアクチニウム、ウランは天然に存在するアクチニドである。93のネプツニウム以降は人工元素であり、例えば原子炉内で核燃料物質が中性子捕獲反応とベータ壊変を繰り返すことによって生成する。したがって原子炉の使用済燃料の中には、原子番号94のプルトニウムとともに微量の他のアクチニドが含まれている。一般に長寿命の半減期を持ち、アルファ壊変を行うが、重い元素では自発核分裂も行う。使用済燃料中でウラン、プルトニウムに比べ存在量の少ないネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)をマイナーアクチニドと称する。

●陽子:

 核子の一種で、プロトンともいい、普通PまたはH+で表す。電荷は正で電気素量に等しい。反粒子は反陽子である。水素の原子核あるいは水素陽イオンをなし、原子番号1、質量数1である。

●余裕深度処分:

 一般的な地下利用に対して十分余裕を持った深度(例:50~100メートル)への処分。対象廃棄物としては、原子炉施設の炉内構造物、使用済樹脂など。

●リニアック:

 高周波加速電極をビームの進行方向に対し直線上に繰り返し並べた構造をもつ線形加速器。J-PARCでは、陽子を発生させ、徐々に加速して3GeV(ギガ電子ボルト)シンクロトロンにビームとして送る全長330メートルの加速器を整備する。

●量子ビーム:

 加速器や高出力レーザー装置、原子炉等の施設から供給される、光子、イオン、電子、中性子、ミュオン、ニュートリノ、中間子等の種々のビームが、広範な先端科学技術分野に利用されるに至ったことに伴い、これらのビームの総称として使われる概念。

●レーザー:

 高強度レーザーを直径数ミリの燃料小球に照射し爆縮(断熱圧縮)させ、瞬時に超高密度・高温プラズマを生成して、核融合反応を起こさせる方法。

●炉工学(核融合炉工学):

 核融合炉は、核融合反応が起こる炉心プラズマと、プラズマを生成・保持させるための真空容器・ブランケット・超伝導コイル・追加熱装置等から構成される。後者のような核融合炉を構成する機器類の研究・開発を炉工学と総称する。

●炉心プラズマ:

 核融合炉を目指した研究において作られるプラズマの総称。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)