原子力に関する研究開発の推進方策について はじめに

 我が国における原子力の研究、開発及び利用は、原子力基本法に基づき、厳に平和の目的に限り、安全の確保を前提に、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上に寄与することを目的として、原子力委員会が策定する「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(昭和31年以来、計9回にわたり策定)に則り進められてきた。即ち、原子力委員会は、概ね5年ごとに長期計画を策定し、かつ、毎年、この「長期計画」に基づいて原子力基本法に謳われた目的を達成するために必要な施策の基本的考え方を定め、文部科学省はそれを踏まえて、高速増殖炉サイクル技術、核融合エネルギー技術、量子ビームテクノロジー等、原子力の各研究開発分野において必要な施策を企画・実施・評価してきたところである。

 原子力委員会は、平成12年11月策定の「長期計画」の見直しに当たり、今後数十年にわたる我が国における原子力の研究、開発及び利用に関係する国内外の情勢を展望し、情勢変化が激しい時代を迎えている我が国の社会においては、短期、中期、長期の取組みを合理的に組み合わせて推進することが重要との認識に基づき、今後10年程度の期間を一つの目安として施策の基本的考えを明らかにした新たな計画を「原子力政策大綱」として策定し、平成17年10月11日に決定した。その後、「原子力政策大綱」を原子力政策の基本方針として尊重する旨の閣議決定が行われている。
 全世界的にエネルギー需要の増大が見込まれる中で、安全で安定的なエネルギーの確保や地球温暖化の防止等国家的・社会的な課題に適切に対応するとともに、新しい科学技術上の知識の獲得・創出、継続的な技術革新を可能とするため、今後とも原子力が有する特性を最大限に活用した研究開発を推進していくことが必要である。文部科学省においては、今後、この「原子力政策大綱」を踏まえ、我が国の知識・技術基盤の維持・発展、産業競争力の強化、原子力を巡る国際動向等を含む幅広い視点から、原子力の研究開発の推進に係る総合的な政策を提示し、我が国の原子力研究開発利用を再構築することが期待されている。
 なお、原子力の研究、開発及び利用のあり方に関しては、「原子力政策大綱」だけでなく、「第3期科学技術基本計画」の下に取りまとめられた「エネルギー分野の分野別推進戦略」やエネルギー政策基本法に基づく「エネルギー基本計画」においても記述されている。原子力研究開発に係る総合的な政策の策定に当たっては、このようなエネルギー分野等に関連する国の計画等との整合性に留意しつつ全体としての政策効果を上げていかなくてはならない。

 このような事情を踏まえ、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下に設置された「原子力分野の研究開発に関する委員会」において、高速増殖炉サイクル技術、核融合エネルギー技術、量子ビームテクノロジー、RI・研究所等廃棄物処理処分、原子力分野の国際協力、人材養成等の各事項について検討を重ね、ここに今後5年間程度の期間を見据えた原子力の研究開発の推進方策をまとめた。今後は、この内容に則した原子力研究開発施策を展開していく必要がある。

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科学技術・学術政策局計画官付

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