第3章 研究開発を推進するに当たっての重要事項

 諸外国の動向からも明らかなように、ナノテクノロジー・材料分野の発展には、重点領域の設定やシナリオの提示と同様に、大学等を核とした産学官・異分野連携の促進を進めるために、研究開発体制の充実が重要である。ついては、知的財産の保護活用等による技術移転の促進を図るとともに、今後、以下の施策を進めるべきである。

1.研究拠点及びネットワークの形成

 世界トップレベルの研究開発力を達成し、またそれを維持していくためには、最先端の研究環境を戦略的に整備・充実していくことが必要である。
 平成18年度で終了するナノテクノロジー総合支援プロジェクトで蓄積された設備・経験を効果的に活用し、研究分野の融合とイノベーションを推進するために、最先端施設・設備、研究支援領域、多様な利用形態を促進する運営体制等に留意しつつ、新たな研究支援体制の構築を図る必要がある。同時に、研究分野の融合を促進するために、ナノテクノロジーの研究分野を網羅した物質・材料創製機能を有する研究拠点の整備を図ることが重要である。
 また、世界で戦略的な取組が進んでおり、社会的・政策的ニーズが強く求められ、我が国において早急に対応する必要がある、ナノエレクトロニクス、ナノバイオテクノロジー、革新的材料等、今後重点的に進めていくべき研究領域において、国内外から先鋭的な研究者が一堂に会し、研究者間のシナジー効果が発揮される研究体制を構築した世界に開かれた研究拠点を形成することが必要である。
 さらに、研究拠点を核に、国内外の研究者を有機的にネットワークで結ぶことが重要である。

2.ナノテクノロジー・材料分野の人材育成

 ナノテクノロジー・材料分野は、21世紀の科学技術・学術の大きな飛躍が期待される分野であり、産学官のリーダーとなる若手研究者の育成を開始することが求められている。このため、若手研究者の欧米諸国等との国際交流を推進するとともに、当該分野における人材育成に向けて幅広い学問分野を横断・包含する新しい教育システムを早急に構築することが必要である。
 そこで、例えば、いくつかの大学院において、先導的に、幅広い学問分野を横断・包含する新しい教育システム(教育カリキュラムの策定・実施、教育コースの運営体制の構築、産業界へのインターンシップの導入等多様なプログラムの実施等)を構築し、21世紀の産学官のリーダーとなることを期待される大学院博士課程相当の研究者を戦略的・組織的に育成する。

3.産学官の連携及び分野融合の促進

 ナノテクノロジー・材料分野における研究成果は、現時点では萌芽的な技術が多いため、今後、産業化に向けて基礎研究と実用化をつなげていくことが必要である。
 今後は、シーズ技術を有する学と実用化を見据えた明確なビジョンを有する産を組み合わせた産学官連携の研究体制を構築するとともに、医工連携をはじめとした分野融合を促進することにより、研究開発を推進し、世界に先駆けて技術革新を創出することが必要である。

4.責任ある研究開発の考え方

 科学技術の発展と社会の利益が相反しないよう、新たな技術が社会に適用されるに当たっては、あらかじめしっかりした科学的知識基盤に基づく技術的側面とともに社会的側面から利点や課題(科学技術の倫理的・法的・社会的課題)について検討することが重要である。
 例えば、ナノテクノロジーは、新しい学問・新しい産業につながる科学技術領域であり、社会経済の発展、人々の生活水準の向上などへ非常に大きく貢献するものと期待されている。その一方で、工業的利用、医療応用などの面で、人、環境、社会に影響を及ぼす可能性も指摘されるとともに、その産業利用における国際標準化などの動きにつながっていくことも考えられる。
 既に欧米諸国では、ナノテクノロジーの社会的影響に関する検討や研究、国際的な対話が始まっていることを踏まえ、1.社会的事項(ナノ粒子等の安全性に関する研究、リスクアセスメント、倫理面や環境面等の検討)2.国際的枠組みへの参画(ナノテクノロジーの社会的影響に関する多くの情報の共有化、ナノ粒子等のリスクアセスメントの国際標準化などの検討)について、総合的・戦略的に推進していくとともに、ナノ粒子の特性を明らかにするなど科学的知識基盤を構築し、リスクの評価手法や管理手法を確立する。

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