資料5-3 ライフサイエンス委員会における研究開発推進方策に関する検討項目について

平成24年7月11日

<目次>

ローマ数字1.はじめに

ローマ数字2.ライフイノベーション実現のための課題解決・関係施策の推進

  1. 革新的な予防法の開発
  2. 革新的な診断法の開発
  3. 安全で有効性の革新的高い治療の実現
  4. 高齢者、障害者、患者の生活の質(QOL)の向上

ローマ数字3.ライフイノベーションを実現するための体制・環境整備

  1. 基礎的な研究の推進
  2. 橋渡し・創薬研究支援基盤の整備
  3. ライフイノベーションを支えるリソース・データベース
  4. ライフイノベーションを支える人材育成・バイオインフォマティクスの推進
  5. その他

ローマ数字1.はじめに

 我が国では世界で最も急速に高齢化が進行しており、今後医療、介護の問題はその解決方策を見出すことが喫緊の課題となっている。

 文部科学省として「生命現象の理解」という生命科学における基礎研究を推進していくこと、及び、国民が心身ともに健康で、豊かさや、生きていることの充実感を享受できる社会の実現に向けて、ライフイノベーションを強力に推進することの両方が求められる。

 このため、文部科学省としても、基礎研究を推進しつつ関係省と密接な連携の下、国民の心身健康社会を実現するとともに、ライフイノベーションにより我が国の持続的な成長と社会の発展を実現していくことを期待する。

ローマ数字2.ライフイノベーション実現のための課題解決・関係施策の推進

1.革新的な予防法の開発

 今後、「個人」の状態や疾患状態に着目し最適の医療を行うとともに、予防医療にも繋げていく個別化医療が次世代医療の潮流なることが想定される。

 このためには、国民の健康状態を長期に追跡調査し、生活習慣、生活環境等の影響、個人の遺伝的要因等の総合的な疫学調査にゲノム、メタボローム、バイオマーカー等の生体情報を加えたコホート研究を行う。このことにより、生体現象と疾患のメカニズム解析だけでなく、疾患の罹患や医薬品の副作用に関するリスク等の解明も目指す。

 また、バイオマーカーの発見及び個体の恒常性維持機構の解明等を通じ、疾患の予兆を発見し、疾患になる前に将来に渡る罹患リスクを減少させる先制介入治療(先制医療)による予防法の解明を目指す。

 社会的影響の大きい感染症や事前災害時に急速に被害が生じる感染症等を対象とした研究開発、国内外への普及・展開を促進する。

 さらに、うつ病・認知症等の精神・神経疾患による社会的、経済的な損失や負担の大きさ等を踏まえ、早診診断や早期治療に繋がる研究開発を推進する。

2.革新的な診断法の開発

 近年、先端光化学や生体関連の計測・分析技術の進展が目覚ましい。具体的には、NMR、放射光施設(Spring-8、X-FEL)、MRI・PET装置などに加え、次世代シーケンサーや先端的なイメージング機器、生命の動態を定量化してとらえる技術が進展している。

 これらの先端計測分析・計測機器等を備える中核的機関をライフサイエンス研究の横断的拠点として整備するとともに、これらを我が国全体で最大限有効に活用できる体制を整備し、革新的な診断法の開発に繋げていく。

3.安全で有効性の革新的高い治療の実現

(再生医療等)

 機能不全になった組織、臓器の補助・再生に繋がる再生医療については、iPS細胞を含む幹細胞を用いた研究開発を基礎研究から臨床応用まで一貫して推進していく。

 特に、我が国発の画期的な研究成果であるiPS細胞研究については、世界最高水準の基礎研究を引き続き重点的に推進するとともに、それと連携して疾患別・組織別の臨床応用を目指す機関の整備とそのネットワーク構築を推進し、関係省とも密接な連携の下、オールジャパンで再生医療の早期実現化を目指す。また、次世代の再生医療を実現するための革新的な新規技術の創出を目指す。

(がん研究)

 がん研究については、がんに関する基礎研究から得られた我が国発の革新的なシーズについて、共有の研究支援基盤による効率的・効果的な育成を図り、臨床応用を目指した研究を加速する。

(放射線治療等、診断技術等)

 治療効果が高く、正常組織への影響が少ない、理想的な放射線治療として世界から注目される重粒子線がん治療について、国際競争力強化や海外展開等を視野に入れた研究開発及び人材育成を推進する。

 また、分子イメージング技術を医療へ応用すべく、試験研究機関・大学・病院・企業等の連携により構成される研究体制を構築し、技術の実証に向けた共同研究開発を引き続き推進する。

(創薬研究)

 創薬プロセスへの貢献という一貫から、今まで整備してきた化合物ライブラリ、ビームライン等のライフサイエンス研究基盤を広くアカデミアや産業界で共用、促進を図る。

 また、疾患特異的iPS細胞を樹立し、創薬研究や難病研究等を厚生労働省や産業界と連携しつつ実施する。

 更に、メタボロミクスとケミカルバイオロジー、ナノテク等の技術を融合させ、メタボロームによる疾患制御機構の解明や、新しい創薬探索技術の開発を行うことにより、創薬基盤の高度化をさらに加速させていく。

4.高齢者、障害者、患者の生活の質(QOL)の向上

高齢者や障害者のQOLの向上や介護者の負担軽減、うつ病や認知症等の精神神経疾患の克服を目指すため、ブレインマシンインターフェース(BMI技術)、生活支援ロボット、加齢に伴って生命維持機構に以上をきたす免疫疾患や代謝疾患への対応を行う。

ローマ数字3.ライフイノベーションを実現するための体制・環境整備

1.基礎的な研究の推進

 研究者の自由な発想に基づいて行われる基礎研究は、近年、イノベーションの源泉たるシーズを生み出すもの(多様性の苗床)として、直接的あるいは間接的に社会の発展に寄与するものとして、ますますその意義や重要性が高まっている。このことから、生命現象の統合的・包括的な理解も含め、研究現場における独創的で多様なライフサイエンスに関する基礎研究を一層強力に推進していくことが重要である。

2.橋渡し・創薬研究支援

 大学等の研究現場は革新的な医薬品・医療機器に繋がるシーズが数生多く存在している。このことから、大学等の研究機関など、ライフサイエンスに関する基礎研究を行う機関も、医療ニーズを勘案しつつ、かかる多様なシーズを一層育成していくとともに、産業界とも連携のうえ、新たな創薬や医薬品・医療機器開発に貢献していくことが期待される。

 併せて、大学等における「橋渡し」研究拠点の充実、強化を図るとともに、拠点が判断し自立的にシーズ育成するとともに、拠点間のネットワークを有機的に連携させていく。

 また、今までタンパク質構造解析等のライフサイエンス研究のために整備してきた化合物ライブラリ、ビームライン等の研究基盤を創薬プロセスとして進展させる基盤として、アカデミアだけでなく産業界等に広く共用、促進を図っていく。

3.ライフイノベーションを支えるリソース、データベース

 ライフサイエンス研究の礎であるバイオリソース、精神・神経疾患の病態を再現するモデル動物、ヒト臓器等の収集・管理、利用促進を図る。

 また、ライフサイエンスは研究の進展に伴い情報が爆発的に増大しており、ライフサイエンス研究に関するデータの共有化・統合化と積極的な利活用を行っていく。

4.ライフイノベーションを支える人材育成・バイオインフォマティクスの推進

 ライフイノベーションを実現するには、その担い手となる人材の育成が大変重要である。

 特に、バイオインフォマティクスの分野は、データ処理・解析等の情報科学研究とシーケンシング等の実験・計測による生命科学研究が一体的・融合的に行わることが重要である。このことから、情報科学研究と実験・計測による生命科学研究の双方を扱える人材の育成が急務である。これらを可能とするためには、そのような人材の流動化を加速させるネットワーク機能、教育ツールの提供といった役割を担う中核的な機関が必要である。

 また、国や大学、研究機関は、バイオインフォマティクスを担う人材がキャリアパスを見通せるような取組を行うことが求められる。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)

-- 登録:平成24年08月 --