6. おわりに

 本第1次答申案(中間とりまとめ)は、平成19年10月18日に行われた文部科学大臣からの諮問に対して、脳科学委員会およびその下部組織である調査検討作業部会における約1年にわたる精力的な審議結果をまとめたものである。この中では、今後の脳科学研究が目指すべき学問的理念やそれを支える推進体制のビジョン、そしてそれを実現するための具体的方策を明示している。

 現在社会における脳科学研究の科学的・社会的意義は高く、本第1次答申案(中間とりまとめ)を通じて、
(1) 社会科学や人文学との連携を通して「新しい総合的人間像」の確立へ向けた広範な基礎的な研究の進展
(2) 医療・福祉・教育の向上や、革新的情報処理・ロボット開発等のイノベーションへ向けた社会的貢献の展開
の双方の観点から、長期的展望に立った脳科学研究の基本的構想と具体的な推進方策を脳科学コミュニティーの内外に向けて広く発信していきたい。

 第2章で述べたように、(1)においては、先端ライフサイエンスとしての脳科学の発展と、異分野融合による総合的人間科学としての脳科学という新しい学問分野の創出が急務であり、長期的展望の鍵となる発展段階の指標を同定するとともに、具体的な研究展開・研究テーマのイメージを提示した。

 一方で(2)においては、豊かな社会の実現に貢献する脳と社会・教育、健やかな人生を支える脳と心身の健康、安全・安心・快適に役立つ脳と情報・産業等について、タイムテーブルに基づいた短期的目標および中長期的目標を提案している。

 また、これらの目標の実現のためには、様々な推進方策の整備が必要であり、第�V章では研究組織に関わる効果的推進体制について、第4章では人材育成のあり方について、第5章では社会との調和について、具体的な提言を行っている。

 同時に、脳科学研究の推進のためには、脳科学関連予算が、米国をはじめとする諸外国に比して予算全体の中での比率が著しく低いとされていることに対しての長期的な政策的支援方策が不可欠であることも示したところであり、適切な財政措置をはじめとする多角的な支援の充実が講じられることを切に期待する。

 本第1次答申案(中間とりまとめ)については、今後も国民からの意見募集や関係各方面からの意見を踏まえ、付託された課題に対して真摯に審議をさらに深め、第1次答申としてまとめていく予定である。

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