資料6−2

平成19年度科学技術振興調整費による実施課題の中間・事後評価結果等について

平成19年12月11日
科学技術・学術審議会
研究評価部会

1.はじめに

 平成19年度科学技術振興調整費による実施課題の中間・事後評価については、総合科学技術会議の定める「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「科学技術振興調整費の活用に関する基本方針」、また、文部科学省が定めた「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」等を十分に踏まえた評価を実施するため、平成19年8月7日に開催した本部会において、「平成19年度科学技術振興調整費による実施課題等の評価の実施について」を決定したところである。
 当該事項に基づき、評価対象課題等の専門分野・領域等を勘案して、当該分野・領域の専門家及び有識者から構成される9つの作業部会が設置され、これらの作業部会において「戦略的研究拠点育成」、「新興分野人材養成」、「産学官共同研究の効果的な推進」、「若手任期付研究員支援」、「重要課題解決型研究」及び「中核的研究拠点(COE)育成」の6プログラムにより実施した課題(中間評価20課題、事後評価47課題の計67課題)について、書面審査・ヒアリング審査を行う等、調査・検討を行った。
 このうち、「戦略的研究拠点育成」については、国際的に魅力のある・卓越した研究拠点の創出を目指した取組みを評価するため、昨年度に引き続き、外国人評価者を作業部会に加えた。さらに昨年度と同様、中間評価課題について評価者が事前に研究機関を訪問し、実施研究者等との意見交換を行う等、外国人委員を交えた適切な評価が実施できるよう、現地調査を行った。
 また、本年度よりプログラムオフィサー(PO)が主査補佐として評価作業部会に参画し、評価作業部会運営に際して主査を補佐するとともに、課題管理等で把握した状況等について情報提供を行った。

2.平成19年度中間・事後評価の実施経緯

 各作業部会の開催経緯は以下のとおりである。

評価作業部会 第1回評価作業部会開催 開催日 第2回評価作業部会開催 開催日
細胞・遺伝子研究評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月13日
  • 若手任期付研究員支援 7課題(事後)
  • 重要課題解決型研究 1課題(事後)
10月16日
医療研究評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
10月2日
  • 産学官共同研究の効果的な推進 7課題(事後)
  • 重要課題解決型研究 1課題(中間)
10月17日
情報通信・社会技術研究評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月13日
  • 産学官共同研究の効果的な推進 1課題(事後)
  • 若手任期付研究員支援 1課題(事後)
  • 重要課題解決型研究 5課題(事後)
10月24日
ナノテク・分析研究評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月21日
  • 産学官共同研究の効果的な推進 2課題(事後)
  • 若手任期付研究員支援 4課題(事後)
  • 重要課題解決型研究 2課題(事後)
  • 中核的研究拠点(COE)育成 1課題(事後)
10月19日
環境研究評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月14日
  • 産学官共同研究の効果的な推進 1課題(事後)
  • 若手任期付研究員支援 4課題(事後)
  • 重要課題解決型研究(中間1課題、事後1課題)
10月1日
情報系人材養成評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月12日
  • 新興分野人材養成(中間3課題、事後4課題)
10月15日
ライフサイエンス系人材養成評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月10日
  • 新興分野人材養成(中間7課題、事後2課題)
10月8日
社会基盤系人材養成評価作業部会
  • 評価の進め方等についての確認、評価留意点等についての説明
9月19日
  • 新興分野人材養成(中間5課題、事後2課題)
10月11日

評価作業部会 11月11日 11月12日 11月13日
戦略的研究拠点育成評価作業部会 戦略的研究拠点育成
(中間3課題ヒアリング)
戦略的研究拠点育成
(事後2課題ヒアリング)
中間評価結果議論
事後評価結果議論
九州大フォローアップ

戦略的研究拠点育成評価作業部会については、中間評価3課題について現地調査を実施した。

3.評価結果概要

 プログラムごとの評価結果の概要を以下に述べる。また、下記標記中の評価項目の内容については次のとおり。(プログラムによって標記は若干異なる)
 なお、本年度の評価項目の内容については、A評価=「基準以上」、B評価=「基準レベル」、C評価=「やや基準以下」、D評価=「著しく基準以下」との統一的な考えに基づき設定した。

各プログラム別の評価結果一覧
プログラム名 中間評価 事後評価
総数 A評価 B評価 C評価 D評価 総数 A評価 B評価 C評価 D評価
戦略的研究拠点育成
かっこ今後の進め方)
3
かっこ3)
該当なし
かっこ1)
3
かっこ2)
該当なし 該当なし 2 1 1 該当なし 該当なし
新興分野人材養成
かっこ今後の進め方)
15
かっこ15)
3
かっこ4)
11
かっこ10)
1
かっこ1)
該当なし 8 2 4 2 該当なし
産学官共同研究の効果的な推進 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 11 1 7 2 1
若手任期付研究員支援 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 16 5 10 1 該当なし
重要課題解決型研究
かっこ今後の進め方)
2
かっこ2)
該当なし
かっこ1)
1
該当なし
1
かっこ1)
該当なし 9 2 7 該当なし 該当なし
中核的研究拠点(COE)育成 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 1 該当なし 1 該当なし 該当なし
計(67課題)
かっこ今後の進め方)
20
かっこ20)
4
かっこ6)
14
かっこ12)
2
かっこ2)
該当なし 47 11 30 5 1

(1)戦略的研究拠点育成

 平成19年度に3年目を迎える3課題について中間評価を、平成18年度に研究を終了した2課題について事後評価をそれぞれ実施した。
 中間評価を実施した3課題については、所期の計画と同等の取組が行われているとの評価がなされた。
 事後評価を実施した課題については、1課題については所期の計画と同等の取組が行われている、残りの1課題については、所期の計画以上の取組が行われているとの評価がなされた。
 また、昨年度中間評価を実施した九州大学の課題について、中間評価の反映状況を確認するため、フォローアップを行い、中間評価を踏まえた対応がなされていること等を確認した。

(参考)

  • ◇制度概要
     優れた成果を生み出し、新しい時代を拓く研究開発システムを実現するため、組織の長の優れた構想とリーダーシップにより、研究開発機関の組織改革を進め、国際的に魅力のある卓越した研究拠点の創出を図る。
  • ◇充当額
     1年につき1育成機関当たり10億円以内
  • ◇育成期間
     原則5年間(3年目に中間評価を実施)
総合評価 A B C D 課題数合計
中間評価
かっこ今後の進め方)
0
かっこ1)
3
かっこ2)
0
かっこ0)
0
かっこ0)
3
事後評価 1 1 0 0 2

(2)新興分野人材養成

 平成19年度に3年目を迎える15課題について中間評価を、平成18年度に研究を終了した8課題について事後評価をそれぞれ実施した。
 中間評価を実施した課題のうち、1課題については、育成すべき人材のレベルが当初計画の基準に至っていないことから、総合評価は「C」とされた。その他の11課題については、所期の計画と同等の取組が行われているとの評価がなされた。また、その他の3課題については、所期の計画以上の取組が行われていると評価された。
 事後評価を実施した2課題については、いずれも中間評価の結果が適切に反映されていないこと等から、総合評価は「C」とされた。その他の4課題については、所期の計画と同等の取組が行われているとの評価がなされた。また、その他の2課題については、所期の計画以上の取組が行われているとの評価がなされた。

(参考)

  • ◇制度概要
     科学技術の振興にとって重要領域ではあるが人材が不足しており、戦略的な人材養成により、世界における我が国の地位を確保する必要がある新興の研究分野や、産業競争力の強化の観点から人材の養成・拡充が不可欠な研究分野において、プロフェッショナルを早期に育成するための講座・部門規模のユニットを機動的に設置する。
  • ◇充当額
     1年につき1課題当たり2億円程度
  • ◇実施期間
     原則5年間(3年目に中間評価を実施)
総合評価 A B C D 課題数合計
中間評価
かっこ今後の進め方)
3
かっこ4)
11
かっこ10)
1
かっこ1)
0
かっこ0)
15
かっこ15)
事後評価 2 4 2 0 8

(3)産学官共同研究の効果的な推進

 平成18年度に研究を終了した11課題について事後評価を実施した。このうち1課題については、一部参画機関の連携不足により、最終的な目的である分析手法の国際標準化が十分に行われなかったこと等から、総合評価は「D」とされた。その他の2課題については、所期の計画以下の取組であったことから、総合評価は「C」とされた。また、その他の7課題については、所期の計画と同等の取組が行われており、1課題について所期の計画以上の取組が行われているとの評価がなされた。

(参考)

  • ◇制度概要
     経済社会ニーズに対応した産学官の共同研究を効果的に促進するため、民間企業が自らの研究資金を活用し、大学、独法等の研究開発機関と共同研究を行う場合に、当該研究開発機関に対してその分担に応じた経費を助成する仕組みを導入し、大学、独法等の研究開発機関の研究シーズと民間企業の研究ニーズの積極的なマッチングを推進する。
  • ◇充当額
     1年につき1課題当たり1千万円〜1億円程度
  • ◇実施期間
     3年間を限度
総合評価 A B C D 課題数合計
事後評価 1 7 2 1 11

(4)若手任期付研究員支援

 平成18年度に研究を終了した16課題について事後評価を実施した。このうち1課題については、研究成果や目標の達成が不十分であったことから、総合評価は「C」とされた。その他の10課題については、所期の計画と同等の取組が行われているとの評価がなされた。また、その他の5課題については、所期の計画以上の取組が行われていると評価された。

(参考)

  • ◇制度概要
     研究員の任期制の広範な定着を目指し、若手の任期付研究員が任期中に自立的研究に専念できるよう、特に優秀な任期付研究員に対して任期中における研究を支援する。
  • ◇充当額
     1年につき1課題当たり5百万円〜1千5百万円程度
  • ◇実施期間
     5年間を限度(実施者の任期内。3年目に中間評価を実施)
総合評価 A B C D 課題数合計
事後評価 5 10 1 0 16

(5)重要課題解決型研究

 平成19年度に3年目を迎える2課題について中間評価を、平成18年度に研究を終了した9課題について事後評価をそれぞれ実施した。
 中間評価を実施した課題のうち、1課題については、サブテーマの1つについて今後の進展が図れないと判断されたことから、総合評価は「C」とされた。その他の1課題については、所期の計画と同等の取組が行われていると評価された。
 事後評価を実施した課題のうち、7課題については、所期の計画と同等の取組が行われていると評価された。その他の2課題については、所期の計画以上の取組が行われていると評価された。

(参考)

  • ◇制度概要
     国民のニーズに対応する国家的、社会的に重要な政策課題であって、単独の府省では対処が困難であり、政府として速やかに取り組むべき課題について、産学官の複数の研究機関による総合的な推進体制の下で、具体的な達成目標を設定し、研究開発を推進する。
  • ◇充当額
     1年につき1課題当たり1〜2億円
  • ◇実施期間
     原則3年間(3年目に中間評価を実施)
総合評価 A B C D 課題数合計
中間評価
かっこ今後の進め方)
0
かっこ1)
1
かっこ0)
1
かっこ1)
0
かっこ0)
2
かっこ2)
事後評価 2 7 0 0 9

(6)中核的研究拠点(COE)育成

 平成18年度に研究を終了した1課題について事後評価を実施した。所期の計画と同等の取組が行われているとの評価がなされた。

(参考)

  • ◇制度概要
     COE化を目指す公的研究機関が自助努力により競争的な研究環境を整備しつつ、特定の研究領域の水準を世界最高レベルまでに引き上げるための的確な支援を行い、当該機関のCOE化を促進する。
  • ◇充当額
     1年につき1課題当たり1期:4億円、2期:数千万円程度
  • ◇実施期間
     10年間(1期:5年間、2期:5年間、3年目及び6年目に中間評価を実施)
総合評価 A B C D 課題数合計
事後評価 0 1 0 0 1

4.評価結果一覧

戦略的研究拠点育成(中間評価)
戦略的研究拠点育成(事後評価)
新興分野人材養成(中間評価)
新興分野人材養成(事後評価)
産学官共同研究の効果的な推進(事後評価)
若手任期付研究員支援(事後評価)
重要課題解決型研究(中間評価)
重要課題解決型研究(事後評価)
中核的研究拠点(COE)育成(事後評価)

5.追跡評価

 「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(平成17年9月26日 文部科学大臣決定)の中で、研究開発施策、研究開発課題等においては、終了後、一定の時間を経過してから、副次的効果を含め、研究開発の直接の成果(アウトプット)から生み出された効果・効用(アウトカム)や波及効果(インパクト)を確認することも、評価の在り方や制度運用の見直しに当たって有用であるとの観点から、追跡評価の一層の定着・充実を図ることが求められている。
 これを踏まえ、科学技術振興調整費では、平成17年度より試行的に追跡評価が実施されているが、本年度についても、科学技術振興調整費のプログラム・オフィサーにより実施された。
 本年度は、平成13年度から16年度に終了した「知的基盤整備」プログラムの実施課題のうち、事後評価の総合評価でA評価を受けた8課題について、また、平成14年度から17年度に終了した「流動促進研究」プログラム68課題について実施され、課題から生み出されたアウトカムやインパクトについて、一定の知見が得られている。
 具体的には、

等が追跡評価の結果として整理されている。
 追跡評価の手法についても、これまでの3度に渡る試行的取組により、一定の知見が得られているが、課題実施者等からのアンケート調査や聞き取り調査が主な手法となっているため、客観性の確保の観点から、さらなる検討が必要と考えられる。

6.評価結果の反映

 今回実施した評価の結果については、以下のとおり今後の科学技術振興調整費の運用に反映させていくこととする。

7.評価結果の取扱

 今回実施した評価の結果については、以下のとおり取り扱うこととする。

8.今後に向けて

 科学技術振興調整費に係る評価制度のさらなる向上のため、以下の事項について検討・改善を図るよう努めることとする。

○ 評価制度におけるPOの役割について

 科学技術振興調整費のPOは、平成15年度より配置され、平成16年度より課題管理等の業務を実施していることから、本年度の中間評価対象課題については、POが一貫して課題管理を行っている。
 このため、本年度の評価においては、POが主査補佐として評価作業部会に参画し、評価作業部会の運営に際して主査を補佐するとともに、課題管理等で把握した状況等について情報提供を行った。
 作業部会の終了後において、これらPOからは当該方法について肯定的な意見が寄せられているが、一方では、POとして作業部会に十分な情報を伝達できなかったとの反省も聞かれる。
 平成20年度評価に向けて、科学技術振興調整費のプログラム・ディレクター(PD)、POを中心に、主査補佐としてのPOの関わり方等について十分な検討を行い、さらなる改善を図るべきである。

○ 追跡評価の本格的実施

 科学技術振興調整費の追跡評価については、平成17年度より試行的に実施しているところであるが、本年度も含め、これまでに3回の追跡評価を行ったこと、本年度は対象を大幅に拡大して実施していること等から、追跡評価に関する一定の知見及び経験が蓄積されたところである。
 このため、追跡評価については、平成20年度より本格的に実施することを前提に検討を行うべきである。その際には、3年間の試行の経験を踏まえ、客観的な評価となるよう努力しつつ、対象プログラムや評価方法等について科学技術振興調整費のPD・POを中心に十分な検討を行い、20年夏の研究評価部会に提案することが望ましい。