ここからサイトの主なメニューです

「平成19年度の我が国における地球観測のあり方」 別表

4.生態系分野における観測事業の分析結果

1.各論(分野内各課題もしくは事項の分析)

1アジア・オセアニア地域における複合的な観測拠点の整備
(1)観測の現状 (2)観測の空白 (3)今後3〜5年で実施すべき観測等 (4)平成19年度に実施すべき観測等
<陸域地上の観測>
・それぞれの観測で求めようとするデータが、地表面の分光スペクトル、温室効果ガス濃度やフラックス、植生の被覆度や樹高、LAI、フェノロジー、昆虫野鳥類の種類、遺伝子情報など、事業ごとに様々。
<陸域地上の観測>
・平成18年度実施方針に生態系分野としてリストアップされている事業は中国4点、インドネシア1点のみ。温暖化、森林資源分野の観測を加えても極めて不十分である。生態系観測としてはアジア・オセアニア地域全体が空白域ともいえる。
<陸域地上の観測>
・地球観測として重要な観測項目を包括するスーパーサイトの設置、その周辺地域のサテライトサイトの設置、およびそれらの地点での生態系観測が望まれる。特に、生態系を機能と構造の両面から観測するスーパーサイトの設置が必要。

(理由)
・スーパーサイトの設置、データ統合システムの構築等は、京都議定書の第一約束期間が始まるまでにその設計を行う必要がある。

・陸域においても海域においてもスーパーサイトの設置は平成19年度から準備を開始する必要がある。
・生態系の機能の観測(フラックス観測など)と構造の観測(プロットでの毎木調査など)が独立で融合されていない。 ・ただし、平成18年度実施方針の一覧にはない観測地点(個別の競争的資金で維持されている観測地点)が多数ある。実際にそれらの地点の観測は重要であるので、今後地球観測システムの中に組み込まれるべき。しかしながら、これらを加えたとしても陸上生態系分野の陸域地上の観測地点数は明らかに不足している。 ・生態系の気候変動に対する長期応答を観測するサイトの設置が必要である。これは、気候変動による生物多様性の変化を知るためには不可欠と考えられる。
・生態系観測衛星システムの設計
・衛星観測、地上・海上観測を統合するための観測システム、データシステム構築は平成19年度から開始する必要がある。
・いずれの観測においても、必ずしも代表的なバイオームタイプ、気候帯を代表した系統的なものとなっていない。   ・陸域地上の観測では、ロジスティクスやアクセス可能かどうか、そして現地の協力者との関係が観測地点の設置の際に重要な因子となる。現実的には観測すべき地点というより、観測可能な地点で観測が実施されている。観測のあり方を考える場合には、まず観測すべき地点を念頭におき、日本における省庁間の連携に加え、GEOSSという国際的な枠組みの中で、現地のホスト間の調整も極めて重要である。これを怠ると、現地での観測の統合は難しい。  
・現状では、各省庁が独自の観測を行っており統合化されていない。   ・衛星等を利用した観測と、地上観測の統合(スケールアップ観測)を念頭に置いた観測システムの設計が必要。  
<海洋の観測>
・海洋における生態系の観測を我が国で業務としている研究機関はなく、わずかに環境省がサンゴ礁、海岸における生物調査などを行い、水産庁が海域で水産資源の調査に一部海洋生態系の項目が含まれている。
<海洋の観測>
・左記の現状認識に立つと海洋の生態系変動を知るための観測点とすると全てが空白域となってしまう。現実的には従来の主目的が別にある観測点、観測ラインを利用して生態系観測点を立ち上げるのが現実的と思われる。その候補としては定常性のある水産庁あるいは気象庁の調査・観測に地球観測としての生態系の観測を追加するのが一案であろう。
<海洋の観測>
・地球温暖化における海洋観測では炭素循環の観測として定点における時系列観測が提案されている。この生態系の観測はこれらと密接な関連があるので共同して定点での時系列観測が行われることが望ましい。最も重要性のある候補測点は西部亜寒帯域であるが、生態系観測という意味からは西岸亜熱帯域、東シナ海、日本海での時系列観測も必要であろう。

(理由)
・この観測は、それそれの領域でかけている海域における温暖化、それによる生態系への影響を把握するために必須の観測であり、1〜2年の準備期間をおいて是非、各府省が連携して立ち上げるべき観測項目である。
 
・気象庁は定常的な海洋観測の一環として生物調査を実施しているが内容は極めて限定的である。 ・水産庁では日本近海であるがすでに親潮域でのA-lineおよび御前崎から黒潮沖までの測線観測を20年、7年とぞれぞれ継続している。総合的な観測点としては、温暖化等、水産資源の観測と連携して太平洋西岸における代表的な海域(太平洋亜寒帯域、西岸亜熱帯域、東シナ海、日本海)などが必要である。 ・以上の生態系観測を行うためには調査船の整備も重要である。水産庁の調査船は水産の資源調査を主体に設計されているため、早急に生態系観測に適した調査船の整備を行うべきである。  
・沿岸、内湾においても多くの水産関係あるいは環境関係の地方自治体による調査が行われているが、これらにおいても本来の目的が異なるため、データとしての統一性は意図されていない。 ・水産庁では日本近海であるがすでに親潮域でのA-lineおよび御前崎から黒潮沖までの測線観測を20年、7年とぞれぞれ継続している。総合的な観測点としては、温暖化等、水産資源の観測と連携して太平洋西岸における代表的な海域(太平洋亜寒帯域、西岸亜熱帯域、東シナ海、日本海)などが必要である。 ・衛星観測、船舶観測、ブイ観測等の統合を考慮した観測システムの構築が必要。  
・従って現状では、海洋の生態系分野としての独自の観測は存在しない。      

2観測拠点のネットワーク化
(1)観測の現状 (2)観測の空白 (3)今後3〜5年で実施すべき観測等 (4)平成19年度に実施すべき観測等
<共通> <共通> <共通>
・生態系観測衛星システムの設計

(理由)
・衛星観測システムの構築には時間がかかるため、実現の有無は別にして、設計は早く開始する必要がある。特に、京都議定書第二約束期間には温暖化ガスの収支評価に衛星観測が導入される可能性があり、できるだけ早めの検討が必要。
<共通>
・生態観測衛星システムの設計のための、植生観測データに基づく植生分類アルゴリズムの評価を目的とした陸域観測技術衛星(ALOS)の光学センサや能動型センサによる観測
<陸域地上の観測>
・AsiaFluxなどフラックス観測のネットワーク化、生態系の長期観測サイトのネットワーク化が試みられている。しかしながら、これらのサイトには個別の競争的資金で維持されているものと多く、観測項目・手法など必ずしも統一されているわけではない。
<陸域地上の観測>
・国外での観測では、現地の協力が不可欠。一部の国(ロシア、中国)では、気象・河川流出等の基礎的なデータを高額な金額で購入しなければ入手できない場合がある。日本が関わる観測事業で得られたデータを先進国間で流通させるだけでなく、現地でも充分に活用・流通させ、その代償として現地の基礎データの流通を容易にする、というような個別の国際協力の方策も必要である。
<陸域地上の観測>
・地球観測として重要な観測項目を包括するスーパーサイトの設置、その周辺地域のサテライトサイトの設置、およびそれらの地点での生態系観測。生態系の観測は、生物の観測だけでは成り立たないはずなので、大気、水文(水循環)、森林資源、大規模火災などとあわせた包括的なスーパーサイトと、その周辺でそれぞれの分野で特に重要な地点にサテライトサイトを置くなど、観測すべき地点への統合を検討する必要がある。

(理由)
・スーパーサイトの設置、データ統合システムの構築等は、京都議定書の第一約束期間が始まるまでにその設計を行う必要がある。
<陸域地上の観測>
・スーパーサイトの設置、観測ネットワークの構築はすぐにその準備を開始すべきである。

(理由)
京都議定書第一約束期間への対応が必要
・観測すべき地点というより、個別のプロジェクトで観測可能な地点で観測が実施されている。 ・日本と研究交流の少ない国々での観測はほとんど行われていない。
・一部の国(ロシア)では、法律が頻繁にかわることにより、測器の持ち込みやサンプルの持ち出しが極めて困難になっている。これが観測の空白域を作る主な要因の一つとなっている。GEOSSの枠組みの中で、観測の空白域を埋めるための取り組みとして、これを解決する国際協力を進める必要がある。
   
・観測データの共有、データベース化などデータ統合は不十分。   ・データ統合システムの構築

(理由)
・スーパーサイトの設置、データ統合システムの構築等は、京都議定書の第一約束期間が始まるまでにその設計を行う必要がある。
 
<海洋の観測>
・海洋の生態系に対するデータは多様であり、栄養塩やクロロフィルなどを除くと、その取り纏めは難しい。現在、国際的にはセンサスオブマリンライフのプロジェクトが進行中であるが,、これは生物多様性に重きをおいており、生態系とは少し、概念が異なる。
・いずれにしても、環境調査など民間でのもの含めて、これまでの生態系のデータ発掘が必要であり、これまでのデータも含めて海洋生態系のデータベースをどこかの省庁が責任を持って行う必要がある。
    <海洋の観測>
・海洋の生態系に関して沿岸・内湾も含めたデータ発掘を行い、それを今後の調査・観測に広く活用すべきである。

3観測標準手法の確立
(1)観測の現状 (2)観測の空白 (3)今後3〜5年で実施すべき観測等 (4)平成19年度に実施すべき観測等
<陸域地上の観測>
・それぞれの観測事業で、地表面の分光スペクトル、温室効果ガス濃度やフラックス、植生の被覆度や樹高、LAI、フェノロジー、生産量、昆虫野鳥類の種類、遺伝子情報など、観測項目・手法は様々。生態系機能は多岐にわたるので、それぞれの観測サイトで重要な観測項目が違っていた(標準化されていない)のは止むを得ない。
<陸域地上の観測>
・生態系の観測では、それぞれの観測サイトで観測項目や手法が異なるので、データ流通に向けて、データベースの構築が極めて重要。メタデータの構築が主要な課題。個別の競争的資金で維持されている観測では、そのようなデータベースの構築までボランティアベースでは不可能である。これらを統一的にデータベース化する仕組みを作る必要がある。
<陸域地上の観測>
・重点5ニーズに応えるために必要な生態系観測が必要。それぞれの観測サイトにおいて重要な生態系機能を測る観測は必要であるが、加えて、重点5ニーズに応えるための観測もスーパーサイトなどで行っていく必要がある。
<陸域地上の観測>
・Ameri-Flux、Carbo-Europe、Asia-Fluxなど現存のシステム間でのデータ標準化はすぐに開始すべき。
<海洋の観測>
・生態系の観測には様々な手法が用いられるがこれらの手法、測器は研究段階であるものが多いため、現状では標準化は難しい。しかし、90年代に進められた炭素循環・低次生態系の国際プログラムであるJGOFSは観測に際して共通の手法を定め、そのプロトコールにもとづいて世界各国で観測を進め、相互比較できるデータを作り上げた。このような先人の知恵はぜひ必要である。
    <海洋の観測>
・現在、化学センサーについては開発が進められているが、生態系の機能的側面を解析する意味での生物活性を測定するセンサーあるいは自動装置の開発は急務である。

4アジア・オセアニア地域の観測技術者の養成
(1)観測の現状 (2)観測の空白 (3)今後3〜5年で実施すべき観測等 (4)平成19年度に実施すべき観測等
<陸域地上の観測>
・フラックス観測では、現地で観測トレーニングコースなどの試みが始まっている。また、平成18年度実施方針のリストにはないが、日本の大学での留学生の教育は、現地の観測技術者の養成という意味では、極めて大きな貢献をしている。大学に所属する個々の研究者がボランティアで行っているのが現状。

・陸域、海域ともに、研究交流の少ない国々では、研究も含め観測技術の養成等は極めて不十分。

・日本への留学は、現地の研究者・観測技術者の養成に、極めて大きな貢献をしているが、たとえJSPSの留学では資格の制限が大きい。大学での学位の取得を必ずしも目標としない、柔軟な留学制度があっても良いのではないだろうか。そのような制度を使って、研究者・技術者のレベル向上を行いつつ、現地でのトレーニングコースを充実させていく必要がある。

・JICA(ジャイカ)等の国際機関とのプロジェクト技術協力など枠組みの検討を開始すべきだる。
<海洋の観測>
・我が国においては海洋の場合研究者や大学院生が観測の実務を行っていることが多いが、海洋観測においても観測技術者の育成は急務である。これはデータの質の向上にもつながるし、さらに観測技術者という専門性の高い職種を日本で広げて一般化していくことにつながる。さらに、このようにして確立された観測技術者は東南アジア等での観測技術の育成にあたることも出来るので、まず国内の体制を整えることが必要である。
     

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ