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資料2-1

京速計算機システムの開発主体に関する提言書(案)

平成17年10月24日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
情報科学技術委員会

1. 本提言書の目的
   平成18年度から開始すべく文部科学省が準備を進めている「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」は、京速計算機システムの平成22年度における運用開始を目指しているプロジェクトである。平成22年度における運用開始のためには、我が国の過去のナショナル・リーダーシップ・スーパーコンピュータ開発(数値風洞、CP−PACS、地球シミュレータ)において、運用開始まで概ね5カ年を要していることから、平成18年度からのプロジェクト開始が必要である。本プロジェクトを平成18年度から円滑に立ち上げるためには、文部科学省内に本プロジェクトを強力に推進するための体制を整えるとともに、京速計算機システムの実際の開発・整備を行う開発主体を決定する必要がある。
 開発主体の選定にあたっては、事務局や技術的サポートが可能な新規の開発主体を立ち上げることによる人材・時間・予算面の問題、更に行政改革などの観点から、既存の機関のポテンシャルを利活用することが望ましい。
 科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会計算科学技術推進ワーキンググループでは、京速計算機システムの開発主体についての議論を行い、これらを集約し、適切な開発主体の選定及び開発の実施に向けての提言書を作成することとした。

2. 開発主体に関する検討
   開発主体として最も適当な機関を検討するため、下記(1)の判断基準について検討し、事務局から提示された開発主体候補について評価を行った。
 
(1) 判断基準
 次の6項目の評価基準に基づいて検討を行うこととした。
 
1  機関の意思
   国の京速計算機システム開発プロジェクトを受託し、国が決定したプロジェクトリーダーを受け入れ、そのリーダーの方針に沿って、組織や人員体制を整えて円滑に運用する、という意思決定が機関によってなされる見込みであること。

2  スーパーコンピュータの開発実績
   新しい概念にもとづくシステム開発や利用技術の開発など、先駆的なコンピュータシステムの開発を行った実績があること。

3  多様な研究者への研究環境提供能力
   産学官の多様な研究者に、適切な共用による研究開発の場を提供できることと、その支援が可能であること。

4  大型プロジェクトの実行実績及び実施体制
   事業規模三百億円以上の大型プロジェクトの実績があり、また実施するのに十分な体制があること。

5  スーパーコンピュータユーザーとしての実績、ベンダーとの良好な関係
   多様なスーパーコンピュータを使用したことがあり、複数のベンダーと良好な協調関係が構築できていること。

6  広範なアプリケーションに対する知見・利用実績
   計算科学技術推進ワーキンググループ第2次中間報告(平成17年8月)において示されたグランドチャレンジにおいて、先端的な研究を実施していること。さらに、各分野に収まらない新興・融合領域においても総合的に研究を推進し、またそれらの分野の中でシミュレーションを活用した最先端の成果を挙げていること。

(2) 開発主体候補
 事務局から三百億円以上の大型プロジェクトを行った実績のある機関に当WGでの検討のための紹介資料の提出を依頼したところ、資料の提出の了解を得られた以下の5つの機関を開発主体候補として、検討を行った。

 
宇宙航空研究開発機構
海洋研究開発機構
日本原子力研究開発機構
物質・材料研究機構
理化学研究所

(3) 計算科学技術推進ワーキンググループ委員による評価
   (1)の評価基準により、(2)の開発主体候補に対して、当WG委員による評価を行った。評価は各評価基準について3段階(3:十分に評価できる 2:評価できる 1:あまり評価できない)で採点を行った。

3. 検討結果
   2.で示した検討内容に従って評価を実施し、開発主体候補機関に所属する委員の点数を除外して平均点を計算し、その結果から順位をつけたところ、各項目の採点結果は次の通りとなった。


 また、各項目の得点を合計した総合評価結果としては、1位:理化学研究所、2位:海洋研究開発機構、3位:日本原子力研究開発機構の順となった。

 当WGとしては、独立行政法人理化学研究所(以下、理研)が、評価項目のすべての項目において高い評価を得たことと、次に示す理由から、開発主体たるに最もふさわしいと考えられる。
 なお独立行政法人海洋研究開発機構については、6項目中4項目で次点であることから、理研が開発主体を辞退した場合における開発主体候補と考えられる。

1 機関の意思
   理研は、複合型計算機の構築を成功させた唯一の機関であり、京速計算機の開発において、メインプレーヤーとして中心的な役割を果たす用意があるとしている。また、京速計算機の開発は利用を想定して行うべきであり、理研は物理からバイオまで多様な研究を推進する総合的な研究機関であることから、利用の面でも高いポテンシャルを有している。
 さらに、国において、京速計算機開発の意義・必要性を明確化し、他省庁との連携スキームの構築、人材や資金の確保を前提として、国の正式な要請があれば、積極的に応ずる用意があるとしている。
 以上より、理研にはプロジェクト受託の意思があると考えられる。

2 スーパーコンピュータの開発実績
   理研は2004年3月より、スカラー、ベクトル、専用機からなる複合システム(RIKEN Super Combined Cluster [RSCC] System)を開発し、運用開始した。2005年3月にはRSCCの開発により、富士通株式会社と共同で、「日本産業技術大賞・文部科学大臣賞」を受賞している。
 また、理研では分子動力学シミュレーション専用計算機(MDM等)を開発している。
 以上より、理研には十分なスーパーコンピュータの開発実績があると認められる。

3 多様な研究者への研究環境提供能力
   理研は、個々の研究者間の研究協力を基盤として、日本各地・世界各地の機関との活発な機関間協力を行っている。例えば、連携大学院では、従来から大学との間で研究協力を行うとともに、大学から研修生を受入れることにより密接な関係を築いている。また、115の海外研究機関との様々な研究交流も行っている。
 バイオリソースセンターでは、我が国のライフサイエンス研究と産業を推進するための知的基盤である生物遺伝資源を整備し、国内外の研究者に提供する事業、リソースの高度な発展と利用を図るための研修事業、国内外の関連機関との連携協力事業を推進している。播磨研究所では、大型放射光施設SPring-8(注1)の共用に供するビームラインや大型放射光関連諸施設の整備を実施し、大学等との有機的な連携を図り、新しい科学技術領域を切り開く放射光利用連携研究を推進している。
 以上より、理研には多様な研究者への研究環境提供の十分な実績と能力があると認められる。

4 大型プロジェクトの実行実績及び実施体制
   理研は、これまでに数百億円規模の大型プロジェクト(SPring-8、RIビームファクトリー(注2)、タンパク3000プロジェクトなど)の実績がある。
 また、理研は日本で唯一の自然科学の総合研究所として、広い分野で研究を実施しており、平成17年度では、常勤職員数2,853名、客員1,790名、研究生等1,053名を擁し、多くの研究活動を行っている。
 以上より、理研は大型プロジェクトの実績とその運営を行うのに十分な組織であると認められる。

5 スーパーコンピュータユーザーとしての実績、ベンダーとの良好な関係
   理研では、今までに数々のスーパーコンピュータ等を導入し、特定のベンダーに偏ることなく、長期にわたり複数のベンダーからのマシン調達を行うことで、ベンダーとの良好な関係を築いている。
 また、RSCCでは、複数ベンダーのシステムの融合に成功している。
 以上より、理研には十分なスーパーコンピュータユーザーとしての実績と、ベンダーとの良好な関係があるものと認められる。

6 広範なアプリケーションに対する知見・利用実績
   理研には、ライフサイエンス(ゲノム創薬、MDたんぱく質構造解析、大量のシーケンスデータ解析、生体シミュレーション等)、物理学(加速器実験の大量データ処理、レプトン異常磁気能率(注3)の精密理論計算等)、知的ものつくり(製品機能・加工成形シミュレーション、ボリュームCAD・VCAT開発等)、物質科学(第一原理計算による地球マントル最深部での鉱物弾性、メタンハイドレード(注4)の構造計算等)、天文学(銀河形成・ブラックホール・重力波)など幅広い分野でのスーパーコンピュータの利用に関する知見と実績が十分にあることから、理研には広範なアプリケーションに対する知見・利用実績があるものと認められる。

4. 開発にあたっての提言
   開発主体の検討にあわせ、今後開発主体が京速計算機システムの開発を進めるにあたって次の事項を提言する。
(1) 主体的な開発推進
   プロジェクトリーダーを中心として、主体的にプロジェクトを運営し、責任をもって京速計算機システム開発プロジェクトを完遂させること。

(2) 開発体制の構築
   平成18年度から京速計算機システムの開発を開始できるように、プロジェクトリーダーが策定した開発体制にのっとり、開発に携わる研究者・技術者の雇用、開発を行うための設備の確保、及び開発チームをサポートする技術スタッフと事務処理の体制を整備すること。

(3) 研究振興官(注5)の受け入れ
   平成18年1月に発令予定の文部科学省研究振興局の研究振興官は文部科学省内でプロジェクトを総括する。また、研究振興官は開発主体とともにグランドチャレンジのターゲットアプリケーションを検討し、それに適合した計算機アーキテクチャを立案するための概念設計活動を行う。開発主体においては、概念設計活動の後、プロジェクトリーダーが開発主体において、円滑な開発活動を遂行するために十分な受け入れ体制を整えること。

(4) 立地場所の選定
   地盤、気候、電力、研究交流等の設置に伴う諸条件を勘案し、適切と思われる京速計算機システムの立地場所の候補を調査し、選定すること。

以上

(注1)  大型放射光施設。「特定放射光施設の共用の促進に関する法律(共用法)」による施設の共用が行われている。
(注2)  水素からウランまでの全元素のRI(Radioactive Isotope:放射性同位元素)ビームを発生させる重イオン加速器施設。
(注3)  磁場中のレプトン粒子(素粒子の区分のひとつ)の磁場との結合の強さが理論値と計測値とでずれが生じる現象。粒子の生成消滅過程で説明される。
(注4)  メタンと水分子の水和物として深海底に存在する氷状固形物。豊富な埋蔵量から天然ガス資源として期待されるが、海底での爆噴の恐れもあり、形成・崩壊のメカニズム解明が待たれている。
(注5)  京速計算機システム開発利用プロジェクトのプロジェクトリーダーのこと。


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