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資料6

平成16年7月30日

最近の学術情報流通の動向について
--とくに英米における国レベルの関与について--


1. わが国における近年の状況
 
14年3月本委員会「学術情報の流通基盤の充実について」(審議のまとめ)
14年度から国立大学図書館へ「電子ジャーナル導入経費」措置
15年度から私学助成として私立大学対象の補助金枠新設
14年度から国立情報学研究所において電子ジャーナルミラーサーバ運用開始
15年度から国立情報学研究所において「国際学術情報流通基盤整備事業」開始
15年度および16年度に科学技術振興機構においてJ-STAGEのバージョンアップ
  これらの結果、
 
1990年代に進行した学術雑誌国内導入タイトル数の急減に対して歯止め
国際的連携(ICOLC、SPARCなど)による商業出版への影響力行使
国立国会図書館なども含む学術情報流通基盤の維持に関する諸施策
日本の学会誌の電子化移行の進捗
  しかし、
 
学術雑誌に価格上昇は継続(年5%ないし10%) → ふたたびタイトル減、大学予算を依然圧迫
英米を中心に科学技術・学術研究の最大の資金提供者としての国の関与を求める動向
2. 英米における最近の動向
 
各種の「オープン・アクセス」論:オープンアクセス出版とオープンアクセス・セルフアーカイブ
 
- 2001年12月「ブタペスト・オープン・アクセス・イニシャティブ」(ジョージ・ソロス財団の関与)
- 2003年6月「オープンな出版に関するベセスダ声明」(北米の学会、大学、図書館関係者)
- 2003年10月「自然科学および人文科学における知識へのオープン・アクセスに関するベルリン宣言」
- 2003年10月 「科学出版: オープン・アクセス出版を支持するウェルカム財団の立場表明」
- 2003年10月 「The Public Library of Science (PLoS) Biology」刊行開始
- 2003年11月 SPARCがPloSを支援することを発表
- 2004年4月 SPARCが事業計画においてオープン・アクセス支援を優先順位トップに位置付け
「オープン・アクセス」の一形態としてのセルフ・アーカイビング
 
- 通常、学術雑誌掲載の論文について著作権は出版者へ譲渡
- したがって、原則的には著者は一切の権利を失う 著者が権利を保持すべき
せめて自分のウェブには掲載可能とすべき
- 出版者へのアプローチによって、(エルゼビア社を含む)かなりの出版者が認める
- 学術機関リポジトリによるセルフアーカイビング
最近の展開
 
- 英国下院科学技術特別委員会報告"Scientific Publications: Free for All?"(内容別添)
- 米国下院歳出委員会の2005年労働・健康・教育関連機関歳出予算案に関する委員会報告でNIHが資金提供した論文への刊行6ヶ月後のオープン・アクセスを要求する但し書を承認(公的資金による研究成果への国民の「オープン・アクセス」)
3. わが国における当面の課題
学術機関リポジトリへの政策的取組み
- 経費的側面
- 制度的整備(権利関係、学内認知、対出版者)
- 筑波大学電子図書館による試みの再評価
「オープン・アクセス」論への国としての考え方の検討
- J-STAGEは、実質的にオープン・アクセス
- 公的資金による学術研究成果情報の権利関係の整理(とくに科学研究費補助金による研究の論文成果)
- 公的資金による学術研究成果情報の公開(「科研費データベース」等)
学術・科学技術振興における研究成果情報の流通に関する政策の必要性
- オープン・アクセス、機関リポジトリなどの影響が出るまでには時間がかかる
- 学術情報の受信、発信のためのコスト負担構造についての方針が必要
- 学術・科学技術振興全体における研究成果情報流通の位置づけが必要



英国下院科学技術特別委員会報告"Scientific Publications: Free for All?"(骨子:Peter Suberによる)

(1) 政府は,英国の全ての大学がオープン・アクセス機関リポジトリを設置するための予算措置を講じるべきである。

(2) 政府資金による研究に基づいた論文の著者は,論文のコピーを自らの大学の機関リポジトリにデポジットすべきである。

(3) 政府は,機関リポジトリの設置,リポジトリ間のネットワーキングの必要性,「機関リポジトリが最大の機能を発揮するために必要とされる技術標準」(おそらくOAIのメタデータ・ハーベスティング・プロトコル)への準拠について監視する「管理機構」を組織すべきである。

(4) 政府は,オープン・アクセス誌が著者に課金する出版処理料の支払いを援助するための財源を創出すべきである。本委員会は,現時点では,著者による前払いによってオープン・アクセス誌を維持するというモデル(「著者による支払い」モデルと呼ばれている)を承認するには至っていないが,このモデルの更なる実証実験を促進するために,そうした財源の創出を望んでいる。

(5) 政府は,オープン・アクセス誌を含む,包括的かつ長期的な戦略を「緊急に」策定すべきである。

(6) 大学は,今後は教員が保有していくと考えられる著作権の「管理能力」を向上させるべきである。

(7) これらの措置は,「厳格で偏りのない査読」を損なうことなく,実行されなければならない。

(8) 政府は,ブリティッシュ・ライブラリに対して予算措置を行い,電子的な研究成果の長期保存に取り組むべきである。

(9) 科学と学術研究の市場は国際的である。それ故,政府は,「国際舞台における変革の推進役として機能し,自ら実例を示し変革運動を先導」すべきである。


米国下院歳出委員会の2005年労働・健康・教育関連機関歳出予算案に関する委員会報告に関する報道
[McCook, Alison, “Open access to US govt work urged”, The Scientist, July 21, 2004.]
http://www.biomedcentral.com/news/20040721/01
 米国下院(US House of Representatives)の[歳出]委員会は,国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)が資金助成した全ての研究に対する自由なアクセスを提供することを勧告し, NIHが2005年会計年度における新方針の実施計画を2004年12月1日までに提出するように要求した。
 委員会の報告書は,NIHが資金助成した研究による最終原稿および附属資料を出版してから6ヵ月後にPubMed Centralへ保管(deposit)することを求めている。そして,出版経費がNIHの助成によって全て賄われた場合,研究は出版後直ちに利用できるようになるだろう。この勧告は、実施に当たって上院で承認されなければならない。
 オープンアクセスの支持者によって称賛された先週の発表は,ちょうど英国における昨日(7月20日)の同様の進展1)の前に提出されたものである。英国の下院科学技術特別委員会(House of Commons Science and Technology Committee)は,政府の資金助成を受けた研究者が,自由にオンラインアクセスできる電子アーカイブに科学論文のコピーを保管(depsit)するように政府が要求することを勧告した。
 インディアナ州リッチモンドのアールハム大学(Earlham College)のPeter Suber2)は,The Scientist誌に対して「これは我々の多くが将来に向けて主張している方針である」と語った。「それは極めて重大な一歩である。」
 しかしながら,出版社からの反応はそれほど肯定的ではない。米国出版社協会(AAP:Association of American Publishers3) の専門・学術出版(Professional and Scholarly Publishing)担当副会長であるBarbara Meredithは,The Scientist誌に対してこれが制定さるとNIHの勧告は,出版産業の持続性を徐々に衰えさせ,著作が受理される雑誌が事実上制限されることでNIHから資金助成を受けている著者に対して「萎縮的効果(chilling effect)」を及ぼすことになるだろうと語った。
 Meredithは,AAPはオープンアクセスに反対していない。しかし,研究成果の出版の在り方を定めることによって政府が自由市場を妨害することに反対しているのだと付け加えた。「議会の活動を正当化する理由は何もない」とMeredithは言った。
 逆に,Meredithは,オープンアクセスを含むビジネスモデルの範囲で「全ての利害関係者(stakeholder)」のインプットについての調査を実施することを勧めている。Meredithは,同僚とともにこの提案が投票される前の今度の休会期間に「上院職員(Senate staffers)に対して訴える」計画を持っていると付け加えた。
 現在,オープンアクセス雑誌をほとんど出版していないBlackwell Publishing4) の会長であるRobert Campbellは,出版産業がこの変革―だが必要ではない―に苦しむかもしれないことを認めている。
 研究者がしばしば伝統的な雑誌に[論文を]出版し,その後論文を自己アーカイブに保管している物理学のように,他の分野では同様のシステムが既に普通となっているとCampbellは述べた。また,研究者は,無料アーカイブに掲載された論文がより一層引用されることに気がついている。それは、雑誌にとってもよいことであるとCampbellは言った。CampbellThe Scientist誌に対して「これは良い結果のように思える」と語った。「それは共存共栄(wiin-win)の状況にあるといってかまわない。」
 オープンアクセスモデルに切り替えていく雑誌を増やすことは,Blackwellにとって特に挑発的である。というのは,Blackwellは,低価格で雑誌にアクセスできることでメンバーを惹きつけ,それゆえに無料アクセスが会員の権利の妨げとなる学会の出版社であるからだとCampbellは付け加えた。
 というものの,学協会は,政府助成研究に対する無料アクセスがどのような経済的な影響を持つかを[じっくり]観察しようと望んでいるように見えるとCampbellは言及している。Campbellは「学協会は慎重に意見を述べるだろうと考えている」と語った。「成功の見通しは,まだはっきりしていない。」
 Suberは,米国政府の勧告が伝統的なビジネスモデルと「完全に互換性がある」と主張している。というのは,勧告では研究が公表される前に6ヶ月の未解禁期間(embargo)があることが規定されているからであり,それは,出版社が購読基盤(subscription base)を保持するのに十分な期間であるように思われる。Suberは,最大規模の科学出版社であるElsevierが,著者はインターネット接続によって誰でもがアクセスできる,個人または機関のウェブサイトに原稿の最終版をポストすることができると先月[6月]発表した5) と付け加えた。
 加えて,Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition6) の理事であるRichard K. Johnsonは,質を無視して資金助成を選択した雑誌には即座に悪評が立つであろうと言った。「これによって雑誌に関する選択方針が変わることはないと予想できる」とJohnsonThe Scientist誌に語った。
 Suberは,NIHは米国政府における最大規模の助成機関であり,それは,機関自身の助成者,すなわち支出した研究に対するアクセスを当然受けるべき納税者に対する基本的な責務を有することに言及している。「NIHは出版社のために活動していない。それは,納税者のために活動している。」とSuberは言った。


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