航空科学技術委員会 研究開発ビジョン検討作業部会(第2回) 議事録

1.日時

令和元年9月6日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 18階 研究開発局会議室1

3.議題

  1. 航空分野の関係団体に対するヒアリング【非公開】
  2. 研究開発ビジョンの検討について
  3. その他

4.出席者

委員

科学技術・学術審議会臨時委員  李家 賢一【主査】
科学技術・学術審議会専門委員  武市 昇
科学技術・学術審議会専門委員  戸井 康弘
科学技術・学術審議会専門委員  和田 雅子

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長  藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長  平田 容章
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐  宮川 毅也

(説明者)
一般社団法人日本航空宇宙学会 会長  渡辺 重哉
定期航空協会(ANAホールディングス株式会社)  津田 佳明
一般社団法人全日本航空事業連合会(朝日航洋株式会社)  長尾 牧

オブザーバー

経済産業省
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)

5.議事録

1.開会

【宮川課長補佐】  定刻より5分ほど早いですけれども、委員の皆様お揃いですので、ただいまから科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会航空科学技術委員会研究開発ビジョン検討作業部会第2回を開会いたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。私は、事務局を務めさせていただく宇宙開発利用課の宮川と申します。
 今回も前半部分の議題の性質の関係上、非公開で開始させていただきます。
 委員会開始に当たり、本日は、研究開発ビジョン検討作業部会の5名中4名に御出席いただいており、定足数である過半数を満たしていることを御報告いたします。
 続いて、本日の出席者でございますが、個別の御紹介はお手元の座席表をもって代えさせていただきます。
 続いて、資料の確認でございますが、今回もペーパーレスで行わせていただきます。
 配付資料については、紙でもお配りしている議事次第に記載の配付資料一覧のとおりでございますが、全ての資料はタブレットPCで御覧いただけます。タブレットPCに不具合が生じた場合や操作方法が不明な場合は、事務局に適宜お申し付けいただければと思います。
 ただし、議事次第、資料2-2-4及び2-2-5については、紙でもお配りしております。また、机上配付資料として、座席表と紙ファイルの参考資料集を配付しております。資料の不足等がございましたら事務局までお知らせください。
 それでは、以後の議事に関しましては李家主査にお願いいたします。

2.議事

(1)航空分野の関係団体に対するヒアリング
・日本航空宇宙学会 科学技術基本計画への提言について日本航空宇宙学会殿から発表された。
・ANAデジタル・デザイン・ラボが描く「未来のエアライン」について定期航空協会殿から発表された。
・全日本航空事業連合会について全日本航空事業連合会殿から発表された。

(2)研究開発ビジョンの検討について
【李家主査】  続いて、議題2の「研究開発ビジョンの検討について」に移りたいと思います。
 今日は、事務局にこれまでの航空委やこの作業部会での議論を踏まえて、研究開発ビジョン中間とりまとめの概要を素案として、それから本文の検討案も準備いたただいておりますので、まずは事務局から資料の御説明をいただいて、その後に、先ほどまでのヒアリングの内容も踏まえて、今回は、検討案の最後のほうにある4章のシステム改革も含めて全体的に議論したいと思います。
 では、事務局から御説明をお願いします。

【宮川課長補佐】  資料の2の2番台を使って説明させて頂きたいと思います。
 まず、資料2-2-1の当面の検討スケジュールについてです。これにつきましては、前回までの作業部会、あるいは7月31日の航空委の資料に第2回から第4回の作業部会の日付を追記したものとなっております。
 7月31日の第62回の航空委において、中間とりまとめの骨子をご議論いただきまして、主査の御一任ということでその場は終わりました。後ほどご説明しますが、資料2-2-3が修正後の骨子となっております。
 本日が9月6日の第2回作業部会でございますが、その間の8月22日の木曜日に、総合政策特別委員会が開かれております。そちらにおきましても、参考資料の1と2に付けさせていただいたとおり、文部科学省としての科学技術基本計画に関する検討の中間とりまとめの案を議論しているところでございます。
 今後は本日9月6日に続き、第3回の9月18日、第4回の10月1日という形で、研究開発ビジョンの中間とりまとめの検討を進めていただいて、最後、10月24日、第63回の航空委で中間とりまとめをし、その結果を総合政策特別委員会に提出するという段取りで進めさせて頂きたいと思っております。
 続いて、資料2-2-2でございます。
 先ほど少し申し上げたとおり、7月31日の第62回の委員会の御議論も踏まえ、これまで各委員から頂いた御意見の整理を更新しております。第62回の航空科学技術委員会での資料をベースに資料の一番上に書かせて頂いているとおり、赤字で第62回委員会での御意見を追記しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、2ページになりますが、研究環境の改革について、特にインセンティブがなければ効率的な研究も進まないので、研究者が意欲的に研究開発を行えるような環境が必要ではないかという御意見を頂きました。
 また、これまでの議論の中心となっていた、2ポツの未来社会デザインとシナリオへの取組関連につきましては、主に未来社会デザインとして二つのストーリーを考えていましたが、その二つのストーリーである従来の航空の延長と、あとは新しい次世代のモビリティの出現が組み合わさって利活用されるのではないかという御意見を頂きました。
 そして、主に既存の航空だと思いますけれども、根本的なユーザーニーズ、速く、安く、快適にというところは変わらないので、市場原理は変わらないのではないかという御意見を頂きました。
 あとは、先ほどのヒアリングの中でも出ましたけれども、航空機の運航、機体とオペレーションそのものではなく、ルートや空港との関係といったところも含めて変わっていくのではないかという御意見も頂いたところでございます。
 続いて、その未来社会デザインとシナリオへの取組の中でも、旅客輸送に特化したものとしては、空港での離着陸等や、必ずしも飛行中ではない技術も必要ではないかという御意見も頂いたところでございます。
 続いて、3ページに移って頂きまして、空の移動革命は、委員の御意見も含め、社会の変化を加えさせて頂いたのと、あとは、先ほどのヒアリングの全日空さんのほうからも少しお話があったかと思うのですが、社会受容性という観点も新しい技術には必要ではないか。あとは、製造業としてのシェアといったところも考える必要があるのではないか。あとは、未来のデザインを考えるに当たっては、誰を顧客として、どのようなサービスを提供するのかという、顧客目線みたいなものも必要ではないかという御意見も頂きました。
 最後、丸6の「デザインを実現する先端・基盤研究、技術開発」関連でございますけれども、先ほどの既存の航空と新しい次世代のモビリティの二つのシナリオを支える基盤技術については共通化するものがあるのではないかというところをつけ加えさせていただいたことと、一方で、その実現するような技術としては、旅客機や小型の航空機、これには次世代モビリティも含まれるかと思いますが、それらの間の技術のレベルの開き、すなわち、小さい航空機で実用化された技術が大型の航空機でも実用化されていくという点も考慮すべきではないかという御意見をいただいております。
 また、最後になりますけれども、他分野との連携という点を強調すべきという御意見もありましたので、追記させていただいています。
 それで、そういった御意見も踏まえまして、2-2-3に、中間とりまとめの骨子を、案トレの形で書かせて頂いております。追加したところとしましては、3ポツの1のところに、一つ目の丸で、「社会変化を起こす」というところと、二つ目の丸の「安全性・環境性」の後に、「信頼性等」ですね、「等」も入れるべきという御意見もありましたので、「信頼性等」という文字を入れさせていただいています。
 また、めくっていただいて、4ポツの2については、一つ目の丸で、「研究開発課題の取捨選択、民間企業との協働等の」という文言を追記させて頂いております。
 また、最後ですけれども、4ポツの3の二つ目の丸の「効率的」の後に、「かつ意欲的に」という文言を入れるべきであるという御意見を入れさせて頂いております。
 以上のとおり、骨子の案トレ版を作成させて頂きました。これを踏まえ、7月31日からこれまでの期間で事務局にて研究開発ビジョン中間とりまとめの検討案としてワードベースの資料2-2-5を作成してございます。また、議論を総括するという意味も含めまして、資料2-2-4として航空科学技術分野に関する研究開発ビジョン中間とりまとめの概要を作成しています。一部、下のほうのイタリックで書いてある部分は、先ほど李家主査からもございましたとおり、今日またいろいろ御意見を頂ければと思っております。この部分は、骨子の内容をほぼそのまま書かせて頂きました。現状、未来社会デザイン・シナリオとデザイン・シナリオを実現する研究開発基盤技術の整備の方向性については、2-2-5の内容を追記させていただきました。
 かいつまんでご説明申し上げますと、現状として、資本集約型社会から知識集約型社会への大転換の加速、またSociety5.0に向けたイノベーション創出のプロセスの変化に対応した科学技術行政のさらなる取り組みが必要ということで、これは以前に、この作業部会を設置させていただいたときの設置紙の内容とほぼ等しい内容でございます。後ほどご説明しますが、資料2-2-5の「はじめに」の内容とリンクするものでございます。
 そして、次の二つの丸が先ほどの骨子でも書かせていただいた航空分野の動向や、航空分野における科学技術行政への社会要請となります。二つ目の丸に主に強みを書かせていただき、三つ目としては、ここでは二つ、リスクの高い研究開発や企業単独での保有の難しい大型試験設備の整備等といったところを、主なものとして挙げています。
 それで、その下、ピラミッド構造のような模式図ですが、一番上位に未来社会デザイン・シナリオがあって、それを実現するための技術整備の方向性と、あとは、さらにそれを下支えするようなシステムというイメージのもと、書かせていただいます。
 未来社会デザイン・シナリオにつきましては、一つ目の柱は「既存形態の航空機による航空輸送・航空機利用の発展」で、その下にあるような、社会課題や、安全性、信頼性、環境適合性、経済性といった社会の要求、あるいは、それに加えて「より早く」「より快適に」「より安く」といったユーザーのニーズに対応するようなサービスといったところが、今後の既存形態の航空機の発展につながっていくのではないかというところでございます。
 また、もう一つの柱としましては、「次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用」ということで、先ほどのヒアリングでも少し出てきましたが、これらがより身近で手軽な移動手段になってきたり、これまで航空に対して向けられていなかったようなユーザーニーズに対応した性能が確立されたりするようなものであるとか、あとは、単なる移動手段にとどまらないようなインフラの変革といったところも挙げられるのではないかということです。
 また、それを下支えする研究開発基盤技術の整備の方向性としては、優位技術を考慮した研究開発戦略、革新技術創出に向けた異分野連携、出口を見据えた産業界の連携ということで、箇条書きは省略します。
 システム開発については、人材、環境、資金と、あとはそれに連携する形で大学改革というものがあるのではないかということで書かせていただいております。
 資料2-2-5の中間とりまとめに向けた検討案ですが、1ページ目はタイトルと目次になっておりまして、2ページ目以降が本文でございます。骨子の章立てごとに書かせていただいていますが、点線の囲みが骨子の内容になっておりまして、1ポツにつきましては、先ほども申し上げたとおり、作業部会の設置紙の内容を書かせていただいています。
 2ページの下からでございますが、2ポツが我が国の航空分野の現状ということで、動向として航空機は経済社会の発展及び国民生活の向上のために必要不可欠な社会インフラとなっていて航空需要のますますの増加が見込まれている点などを踏まえると、次世代の航空技術の研究開発においては、航空科学技術行政、文部科学省、あるいはJAXAによるより一層の取り組みが必要なのではないかということと、あと、その下、3ページの2パラ目ですけれども、我が国の強みと、あと、それに伴う社会情勢について書かせていただいています。
 そこでは、我が国の航空機産業は、他の産業分野も含めて、蓄積してきた高い技術力を集約することで、世界に対してさらに貢献していくことが可能な分野ではないかということと、その具体例として、既に航空機産業の中で、国際的な優位技術を有しているCFRPをはじめとする先進材料分野であるとか、我が国の研究機関であるJAXAが持っているソニックブーム低減技術、コアエンジン技術や、あと機体の低騒音化技術や、数値解析技術に代表されるような技術を生かしていくべきではないのかということ。
 これらは、社会要請を満足させつつ進めていく必要があると考えております。航空科学技術行政には、産業界・学術界からこれまでのヒアリング等も踏まえて、ここで書かせていただく四つ、リスクの高い研究開発への取り組み、企業単独での保有が難しい大型試験設備の整備・拡充および効率的な運用、産学連携や国際連携におけるリーダーシップ、そして最後、基礎力や応用力を身につけた人材の育成ということが、社会にから要請されているのではないかということを書かせていただいております。
 続いて、3ポツの、航空科学技術分野における未来社会デザイン・シナリオの実現方策で、3ポツ1の未来社会デザイン・シナリオ、先ほどの2-2-4の資料でいうところの赤い頂点になるところでございます。繰り返しになりますが、我が国における未来像も踏まえて、既存形態の航空輸送・航空技術の発展という点と、次世代モビリティによるさらなる空の利用という大きな視点から書かせていただきたいと思います。
 既存形態での航空輸送、航空機の利用については、先ほどの繰り返しになりますけれども、航空需要が2倍になるということ、あるいは大規模災害の増加や医療高度化といった社会要請も増大することも見込まれます。また、運送以外の場でも、モビリティの重要性が増すのではないかというところが挙げられるのではないかと考えられます。
 そういった中では、安全性・信頼性・環境適合性・経済性等の共通の社会要求に加えて、より速く、より快適に、より安くといったユーザーのニーズに応じたサービスというのが重要になってくるのではないかということが挙げられるのではないかと考えております。
 そのためにということで、その下の段落ですけれども、安全性や信頼性、環境性、経済性については、それより少し、このような技術が必要なのではないかということを書かせていただいています。
 また、その大規模災害や救急医療等における航空の活躍の場の拡大、あるいは、AIやIoTを活用した自動化・省人化による社会問題への対応も進んでいると考えられることを書かせていただいております。
 丸2番の次世代モビリティ・システムによるさらなる空の活用ということでございますが、成長戦略等でも挙げられているとおり、小型無人機や空飛ぶクルマがより活躍するような社会になっていることが想定されます。こういったシステムというのは、これまで航空に対して向けられていなかったようなユーザーのニーズを満たすような所要の性能を持っていて、安全に運航することができるような技術というのが確立されていて、それに当たっては、航空以外の分野であるデジタル技術といったデータ活用みたいなものが技術分野で融合するのではないかということを書かせていただいております。あわせて、それを支えるようなインフラやまちづくりみたいなことも進んでいるのではないかと考えられます。
 6ページの一番下になりますが、これら二つの視点による社会の変化というのは独立して起こるものではなく、例えば既存形態の航空による大都市間輸送と次世代モビリティ・システムによるローカル輸送の組み合わせといったような、融合した空の利用が、将来的に広がっていくのではないかと考えられるということでございます。
 説明が長くなっていますので、省略しながらとさせていただきますが、7ページ以降が、デザイン・シナリオを実現する研究開発基盤整備の方向性というところで、まず一つ目としては、我が国の優位技術を考慮した研究開発ということで、段落ごとに、JAXA、産業、あと社会要請に対応した技術というのを列挙させているところでございます。
 続いて8ページが、革新技術の創出に向けた異分野連携ということで、ここは例を出しながらですけれども、電動化の技術に関する電機産業等との連携であったり、あとは、具体というよりは全体にかかろうかとは思いますが、IoT、ロボット、人工知能、ビッグデータ等のデジタル技術の融合といったところの活用というのを図っていくべきではないかということを書かせていただいております。
 また、8ページ下のほう、丸3出口を見据えた産業界との連携というところでございますけれども、大きく分けて2点でございます。一つ目が、実用化・製品化への開発のリスクをしっかりと踏まえて、国あるいはJAXAが研究開発を進めていくということで、出口戦略のような形で、研究開発の初期段階から技術移転先となるような民間企業とのコミュニケーションの話を書かせていただいております。
 また、そういったターゲットとなる製品としては、大型の旅客機だけではなく、無人航空機あるいはデュアルユースといったようなところも視野に入れるという観点について書かせていただいております。
 また、二つ目の話としては、安全認証技術を含むシステムインテグレーションということで、先ほども認証の話とかも出たかと思いますが、それも含めてやっていくということを書かせていただいております。
 最後、4ポツ、9ページ以降での、実現方策を支えるシステム改革でございますけれども、人材や、4ポツ2、研究資金、4ポツ3、研究環境、4ポツ4、大学改革ということで、内容としましては、先ほどお話ししました、骨子の内容をほぼ並べたというところでございますので、この説明は省略させていただきたいと思いますけれども、各項目で、山括弧、今後の論点ということで書かせていただいていることがありますが、これまで議論いただいた総論的なところから、一歩、具体的に取り組むべき事項があれば、そういったところも含めて突っ込んだ議論をお願いしたいと考えておるところでございます。
 最後、12ページ、何も書いていない「おわりに」というのがありますけれども、これは次回に向けてさせていただこうと思いますけれども、最終とりまとめに向けての展望について書かせていただくことを予定しております。
 以上で説明を終わらせていただきます。

【李家主査】  ありがとうございました。
 そういたしますと、ただいまの事務局からの説明を踏まえていただいて、現時点の検討案で、全般、それから最後の4ポツのところですと、今後の論点と記載にある点も踏まえて、そのあたりのところで御意見をいただこうと思います。
 今日はこの議論だけになりますので、しばらく時間をとって、各委員の皆様から御意見いただければと思いますので、よろしくお願いします。

【武市委員】  山括弧のところは項目が多少増えても大丈夫という認識でいいですか。

【宮川課長補佐】  山括弧の部分は、6月の委員会の際に提出させて頂いた資料である参考資料3の議論の視点例から、抜き出したものでございますので、それにとらわれず、必要なものがあれば、御意見を頂戴できればと思います。

【武市委員】  9ページの若手研究者の記述のところですが、この資料の一番最後に評価の記述があるんですけれども、それを、若手の、特に博士を出てすぐに任期付きとかで雇用されている人のことを特に意識した言い方になるんですが、若手こそ正当な評価をしていただきたいと考えています。
 何故かというと、若手の研究者の評価というのは、若手個人そのものの評価というよりも、その人の所属したグループとか組織の評価がそのまま反映されてしまうんです。そうすると、例えば普通の若手の人が、ものすごく優秀なグループに入ったら、その人は普通でも傍から見るとすごい優秀と評価されることになります。その逆こそが一番救済されるべきで、ものすごく優秀な人がそうでもないところに入ってしまうと、その人はその任期の間、その優秀さを発揮できないまま終わってしまうのです。傍から見ると、その人は優秀ではないという評価をされてしまうことになる。なので、このようなことの無いような評価方法が必要と考えます。また、運悪くよろしくないところに入ってしまった人に対する救済策も必要だと思います。
 これは、ついこの間まで若手だった人間だから思うことなんですけれども、やっぱり個人の能力よりも、結局、自分が所属したところで業績が決まってしまい、それが個人の能力として評価されてしまうわけです。したがって、特に若手の間は実はあまり競争原理が作用していないのではないかと思っていますし、それを何とか解消していただきたい訳です。また、本来はその人の研究の能力で評価されるべきなんだけれども、実質的には運の良し悪しが結構なウエートを占めているんです。なので、その運が悪かった人に対する救済策も考えていただきたいと思っています。
 今日の参考資料で、若手研究者はある程度競争的な環境にしばらく置いて切磋琢磨しましょうということが書いてあるのですが、正当な競争をさせるのであれば、正当な評価方法と、運の良し悪しが反映されないような環境づくりをしないといけないはずです。たしか参考資料1ですね。
 若手の研究者は、別に何も好きこのんで運試しをさせられたくはないはずなのに、今の制度だと、どうしても博士を取った後に、必ず一回運試しをする羽目になります。私はあえて「運試し」と言ってしまいますけれども、運試しをさせられるのではなく、正当な力試しになるような制度をつくっていく必要があるとは思います。
 これは参考資料の1の9ページの丸4に書いてあるところです。真ん中あたりに、優秀な若手研究者が競争的環境を勝ち抜いて、安定的ポストに採用されると書いてあるんですけれども、今のこの優秀なという評価が、本来は研究者個人を評価するべきところなんだけれども、今のところ実質的には、その研究者が所属したグループとか組織の優秀さがそのまま反映されるだけの評価になってしまっているので、そこを何とか、いいシステムをつくっていただきたいと思います。
 という意見を、できれば参考資料1のほうにも、ぜひ反映していただけるならしていただきたいと思って、今、お伝えしておきます。
 運試しの要素が、やっぱりかなり大きなウエートを占めているなというのが、これはこの間まで若手だった人間の実感です。

【李家主査】  ほかはいかがですか。

【戸井委員】  2-2-5の中ではいろいろ書いてあるんですが、まとめの2-2-4の1枚でも取り上げた方が良いのではないかと感じるものがあります。まずは、次世代モビリティ・システム云々という中で、災害対応とか、医療については未来社会として意識すべきキーワードであり、加えた方が良いと思います。
 先日、実はアジアの方の会議に出てきたんですけれど、インドネシアの方も、航空をやっていく上でのキーポイントは災害対応だとおっしゃっていました。日本もいろいろな災害がある中で、航空技術を利用して、社会をより良くしていくというポイントとしてまとめでも取り上げた方が良いと思います。
 それから、下のほうのデザイン・シナリオの実現方策を支えるシステム改革の中で、右の部分で、インフラという形を取り上げてあるのですが、こと航空に関してはここでも飛行実証を強調しておくべきかと思います。
 それに関連しまして、資料の2-2-5の7ページの我が国の優位技術を考慮した研究開発戦略というところで、こだわるべきことがあります。航空機というものが、インテグレーションして、パッケージをして初めて世の中の価値に繋がるということから、インテグレーション技術、設計力ということをおろそかにしてはいけない点です。今、装備技術を伸ばそう、装備技術を盛んに外国のOEMからの要望に応じて伸ばそうという動きはありますけれども、それらは機体のインテグレーションという目から見て伸ばしてこそ、我が国の優位技術になると思っております。
 もう少しイメージが湧くような例で言いますと、装備品はクリティカルなものが10のマイナス9乗で安全保証しろという厳しい要求がありますが、それはどういうことかというと、壊れると致命的なものは10の9乗時間故障しないというものを初めて採用してよいと言うことでして、すなわちこれを単品で求める場合は10万個を1年間ぶん回して初めて一つ壊れるぐらいの完成度でないと採用できないということなんです。全て単品でこのような構成とする保証は極めて難しく、実際はこれをシステムとして、どう冗長性を持たせて致命的に至らせない保証を加えて実装させています。安全保証が航空機実装への絶対条件なので、装備品単体の技術を生かすためにも、システムのインテグレーション技術と一体で扱うことがポイントになります。
 なので、我が国のこれからのことを考えると、特に安全の設計力というキーワードでいいと思うんですけれども、インテグレーションが技術開発ではセットで取り上げられるべきであることを強調したいです。

【宮川課長補佐】  そういう点では、8ページの一番下に、「実用化・製品化という点では、安全認証技術を含むシステムインテグレーションに関し我が国は経験の蓄積が十分でないことから、仮にすぐれた要素技術を開発しても実用化・製品化の段階で再び大きなハードルにぶつかる結果となってしまう」ということを書かせて頂いています。場所が違うという御指摘でしょうか。

【戸井委員】  ここを強調することが、すなわちそういう人材育成が必要だ、そういうための設備が必要だ、保証のための飛行実証が必要だという施策展開に繋がる流れで説明するのが良いと思います。

【宮川課長補佐】  分かりました。

【和田委員】  1点確認させていただきたい点があったのですが、3ページですが、航空機の運航機数も1.7倍になるということで、あと、現在の航空機産業の市場規模が1.8兆円前後で推移していると書いてありまして、それを今の計画だと10年ということで、2030年に売上高3兆円を政府としては目指していると書かれていますよね。この3兆円というのは、既存の今の航空機の輸送とか、そういうものに対しての部分の3兆円として捉えてるのか、それとも、この次世代モビリティ・システムとか、そういう新たな部分も含めた上での3兆円という形になっているのかが、この辺が全体的にこれをまとめている上でどうなのかなと思ったんですけれども。

【宮川課長補佐】  この数字につきましては、平成27年に政府全体で、内閣官房がとりまとめた航空産業ビジョンで出されている数字となっております。そこでは、機体とエンジン、装備品という括りで書かれております。この産業ビジョンを見渡す限りは、ここ二、三年で出てきているような新しいものの全部が網羅されているとは限らないと思われます。先ほど出たアバターとか、そういったところまでを含むかというと、必ずしもそうではないとは思いますが、一つの政府の目指すべき数字として掲げられているということで、ここに記載させていただいています。

【和田委員】  指針として、例として挙げたということですか。

【宮川課長補佐】  はい。これが研究開発ビジョンの中間とりまとめの中で記載させていただいている技術によって生み出される産業価値の総和として達成するものというものとは、必ずしも言えはしないという認識をしています。

【和田委員】  わかりました。ありがとうございます。

【西澤事業推進部長】  多少、新しい技術でつくったものも、含まれるかもしれませんけれども、全体からいうと非常に小さくて、1.8兆円といっているこの数字は、いわゆる生産ですね。製造している製品の生産高が1.8兆円ということですので、いわゆる輸送業とかではなくて。ですから、それが倍近いところまで。

【和田委員】  倍近くなる。それを目標として掲げている。

【西澤事業推進部長】  ええ、そういった中に、もしかしたらドローンとかの製造も多少は含まれるかもしれませんけれども、既存の製品の延長線として3兆円と、この数字では捉えているのではないかと思います。

【和田委員】  もっとこちらのモビリティとかというのは入っていない形の。

【西澤事業推進部長】  製造品としては入るかもしれませんけれども、そういう輸送サービスで売り上げるとか、そういう金額はまた別のものではないかなと思います。

【和田委員】  わかりました。ありがとうございます。

【李家主査】  では、私からもよろしいですか。何点かあるのですけれども、一つ目が、この資料でいうと2-2-5の検討案ですが、それの6ページ目の上から12行目、これらと前提としつつ、富裕層やビジネスパーソンなどの「より速く」というニーズに対する超音速旅客機というところですが、そうすると、これを読むと、超音速旅客機というのは、富裕層やビジネスパーソンしか求めていないようにも読めるのですが、そこはここに限定していいのですか。

【宮川課長補佐】  一例として、忙しいビジネスパーソンが、今まで日帰りで行けなかったところ日帰りで出張できることを挙げたということであって、超音速旅客機は富裕層でない人には提供しない意図で書いたところではないです。

【李家主査】  はい。それから、その前の4ページの丸3の産学官連携や国際連携におけるリーダーシップの5行目ですが、これも最初に読んだとき、中心的な役割を文部科学行政に求められていると書かれている理由がはっきりしませんでした。ここに何かもう一言説明を入れていただけると、何で文部科学行政なんだという疑問を持たれないかなと思いました。

【宮川課長補佐】  検討いたします。

【李家主査】  産学官連携というと、いろいろな省庁もやられていますので、それとの関連で疑問に思いました。ちなみに、この今の丸3の下から2行目の底上げや標準・規格策定などのところで、文字が化けているのか、おかしくなっている点があります。
 それと、あと2点ですが、1点は、先ほどの戸井委員の御指摘のところですけれども、11ページの研究環境の改革の中で、上のほうで4行目ぐらいのところに、実験用航空機の老朽化対策というので、下のほうの下から4行目のところに実証機という言葉が、とりあえずこれはメモ書きで書かれていますけれども、多分、ここでほんとうに必要なのは、先ほど戸井さんもおっしゃられたように、普通に飛行実験するための飛行機ということよりも、装備品を実際に積んで、どう動作するかとか、そういった面でいろいろと試験していくような機体のことだと思います。今日の最初のほうのヒアリングの、日本航空宇宙学会の資料に、何かもう少しわかりやすい言葉があったかと思うので、見ていただければと思います。
 あともう1点は、細かいことです。3ページの上から7行目に、リージョナルジェットにボンバルディア等の企業が参入しているとなっていますが、ボンバルディアがこの先、どのようになるか不確かな点があるので、エンブラエルに変えるとかにしておけば間違いないかなと思いました。
 私が気づいたのは以上です。
 ほか、いかがでしょうか。

【長尾氏】  私がしゃべってもいいですか。

【李家主査】  どうぞ。

【長尾氏】  10ページの研究資金の改革のところですけれども、当然、議論された結果だと思うのですけれども、予算が限られているので、少ない予算・期間で成果を出すものを取捨選択しましょうと書いてあるのですけれども、航空で高い技術のレベルで研究に長期、お金がかかるのはやめて、短期、安いものをやりましょうというふうに読めてしまうのですけれども、それは国がするのですから、民間ではできないことを、重点的なものにやるというのならわかるんですけれども、そういう意図なんですか。

【李家主査】  違いますね。

【宮川課長補佐】  長尾さんがおっしゃったように、お金がかかるから安上がりで済ませようというつもりではなく、しっかりとどこに重点を置くかということも踏まえましょうという意図で書いています。この背景としては、国家予算で研究開発を行う以上、少子高齢化も含め、国家予算のバランスもあるので、研究開発の予算が大幅に増えるということはないという認識のもと、資金の獲得を目指すのだけれども、その一方で、取捨選択も必要に応じて進めていく必要がありますという流れで書いたものでございます。誤解を招かないような書きぶりを検討させていただきたいと思います。

【長尾氏】  ありがとうございます。

【李家主査】  どうも御指摘ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、ありがとうございました。それでは、この議題、本日はここまでとして、中間とりまとめの概要の素案と、それから中間とりまとめに向けた検討案については、今日、いただいた御意見も踏まえて、事務局のほうで修正していただいて、次回の作業部会にて報告していただくようにしたいと思いますが、そういったことでよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。

(3)その他
【李家主査】  最後に、議題の3、その他ですが、これまでの議題も含めて、何かお気づきの点がありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、そういたしますと、以上で本日の議事は全て終了いたしました。今日も活発な御意見をありがとうございました。では、進行を事務局のほうにお返しさせていただきます。

3.閉会

【宮川課長補佐】  最後に事務連絡をさせていただきます。次回の研究開発ビジョン検討作業部会は、9月18日水曜日の10時から、また同じ時間を予定しています。
 また、本日の作業部会の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様に御確認いただいた上で文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
 それでは、これで科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会航空科学技術委員会・研究開発ビジョン検討作業部会第2回を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課