第8期地球観測推進部会(第3回) 議事録

1.日時

令和元年9月13日(金曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.議題

  1. 我が国の地球観測の取組状況や課題及び取り組むべき方策について
  2. その他

4.出席者

委員

小池部会長,春日部会長代理,赤松委員,岩谷委員,浦嶋委員,河野委員,三枝委員,神成委員,舘委員,堀委員,武藤委員,村岡委員,六川委員,若松委員

文部科学省

千原大臣官房審議官,林開発企画課長,横地環境エネルギー課長,清水課長補佐,石川環境科学技術推進官,葛谷課長補佐,池田地球観測推進専門官

オブザーバー

内閣府 髙澤参事官,総務省 森岡イノベーション推進官,農林水産省 松本技術政策室長,水産庁 鈴木研究管理官,経済産業省 豊川室長補佐,国土地理院 石関研究企画官,気象庁 青柳企画調整官,海上保安庁 氏原主任技術・国際官,環境省 吉川室長,文部科学省 中出課長補佐,鈴木課長補佐,原田企画官,千葉大学 市井教授,北海道大学 柴田教授

5.議事録

【小池部会長】 定刻になりましたので,ただいまから第8期の地球観測推進部会の第3回会合を開催いたします。お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは,まず事務局から委員の出欠と資料の確認をお願いいたします。
【池田地球観測推進専門官】 本日は14名の委員が御出席で,そのうち神成委員と武藤委員,六川委員は遅れて御到着される旨,御連絡をいただいております。御出席の委員が過半数に達しておりますので,部会は成立となります。本部会は部会運営規則によりまして公開とさせていただきます。また,本部会にはオブザーバーとしまして,総合科学技術・イノベーション会議事務局の内閣府から髙澤参事官にお越しいただいております。
 次に,資料の確認ですが,資料はお手元のタブレットに格納されております。議事次第に配付資料一覧を記載しておりますので,御参照ください。
 資料1-1-1として「『今後10年の我が国の地球観測の実施方針』のフォローアップの進め方」。
 資料1-1-1の別添1として,フォローアップ様式。
 資料1-1-2として「我が国の地球観測の取組状況や課題及び取り組むべき方策」。
 資料1-2-1から資料1-2-9は,地球観測の関係省庁の御発表資料となっております。
 また,資料1-3として「国内の大学等における陸域生態系観測ネットワークの現状と課題」をお配りしております。
 あと,端末には関係省庁ごとのフォローアップ様式をPDF化したものを格納しております。
 以上が資料になりますが,不足などがございましたらお知らせください。また,もしタブレットに不具合等がございましたら,議事の途中でも事務局までお申し付けください。
以上です。
【小池部会長】 よろしいでしょうか。今日は皆様に御準備いただいてきておりましたように,我が国の地球観測のフォローアップをさせていただくということで,各府省の皆様それから大学の皆様に,前回の部会で様式をまとめさせていただいて,それに御回答いただいて,さらにその上に御説明をいただくという,非常に貴重な機会をいただいております。
 まず議題の1として,我が国の地球観測の取組状況や課題及び取り組むべき方策について,事務局から説明をお願いいたします。
【池田地球観測推進専門官】 それでは資料1-1-1の「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」のフォローアップの進め方について,御説明させていただきます。なお,こちらは前回の部会で資料としてお配りしたものと同じものですので,経緯の説明は割愛させていただきます。
 実施方針のフォローアップの進め方につきまして,今期部会において,関係府省庁の緊密な連携・調整の下,課題ごと,府省庁ごとに実施されている観測事業の情報を整理いたします。上記整理後,実施方針のフォローアップとしまして,今後5年間で追加すべき取り組むべき課題を取りまとめます。観測事業の情報は,関係府省庁に事前にお送りしたフォローアップ様式に実施内容を御記入いただく形で寄せられております。関係府省庁の皆様,御協力ありがとうございました。フォローアップ様式ですけれども,こちらは前回の部会で委員の皆様から頂いたコメントを基にしまして,添付1のように作成しております。フォローアップ様式で寄せられた情報を表にしたものが,資料1-1-2として配付しております,我が国の地球観測の取組状況や課題及び取り組むべき方策となっております。
 次に,当面のスケジュールですけれども,今回の部会において,関係府省庁から寄せられた情報を基にしまして,委員の皆様に骨子案取りまとめに向けた御議論を行っていただきます。次回の部会開催は,資料には12月頃とありますが,11月29日を予定しておりまして,そこで骨子案を取りまとめ,次の中間取りまとめに向けた御議論を行っていただきます。事務局からの御説明は以上となります。
【小池部会長】 ありがとうございました。今の御説明に何か御質問はありますか。よろしいでしょうか。
 それでは今日はお忙しい中,地球観測の関係省庁の皆様においでいただいております。議事次第のところに資料が付いておりまして,1-2-1から1-2-9が省庁関係の資料で,1-3が大学の陸域生態系観測ネットワークの資料でございます。それで,これを全部やると途中で忘れてしまいますので,大きく3つに分けて,議事次第の資料の2-1の総務省から2-6の気象庁,といいますのも,文科省が幾つか分かれておりますので,まず第1ラウンドは総務省から気象庁まで,ただいまお話がありましたように3分で御紹介いただいて,その御発表の後,10分程度議論をさせていただき,次に海上保安庁,環境省,文科省と御発表いただいて,また10分ほど議論させていただき,最後に陸域生態系観測ネットワークの大学の活動を御紹介いただき,議論させていただくというやり方で進めていきたいと思います。どうぞ御協力をお願いいたします。
 それではまず,総務省国際戦略局技術政策課研究推進室の森岡イノベーション推進官,どうぞよろしくお願いいたします。
【総務省国際戦略局技術政策課研究推進室森岡イノベーション推進官】 ありがとうございます。総務省でございます。資料1-2-1でございます。弊省が所管しております情報通信研究機構におきまして,電磁波を利用した観測(センシング)技術の高度化に向けた研究開発を進めております。
 ページをめくっていただいて,1ページ目です。この場では3分野におけるセンシング技術について御紹介させていただきます。1つ目は地上におけるセンシング技術,2つ目は航空機に搭載するセンシング技術,3つ目は衛星に搭載するセンシング技術になります。
 めくっていただいて2ページ目です。まず初めに,地上設置型センシング技術です。こちらは地上に設置された気象レーダーを用いて,線状降水帯のような大気現象を早期かつ高精度に捕捉することを目的としたセンシング技術の研究開発を進めているところでございます。現在,各地に設置された気象レーダーを利用して大気現象を観測しているところでございます。今後は,観測技術の高精度化に伴い,観測データが大容量になってしまうので,これらデータを如何に公開して,分析していくかが課題となっております。機械学習等を使ってこの分析の高度化/効率化を進めているところでございます。
 続きまして3ページ目,航空機搭載型センシング技術です。こちらは航空機に搭載したレーダーを利用して,地表面の変化を観測しております。情報通信研究機構では,Pi-SAR X3といった世界最高クラスの解像度を有する次世代航空機搭載レーダーを開発中でございます。
 続きまして4ページ目,衛星搭載型センシング技術です。こちらは雲エアロゾル放射ミッションEarthCAREの一部として,本衛星に搭載される雲プロファイリングレーダーの開発を行っているところでございます。
以上になります。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 次に,農林水産省大臣官房政策課,松本技術政策室長,よろしくお願いいたします。
【農林水産省大臣官房政策課松本技術政策室長】 農林水産省でございます。それではます,農業分野について御説明をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきまして,まず現状でございます。農業分野としては,まず農業への影響をしっかりと解明して,安定的な食糧供給のための研究を実施してございます。
 2つ,今の取組の研究の状況を載せてございます。まず左側の方ですが,気候変動の適応策ということで,水田や畑地,草地などで温室効果ガスの発生量や吸収量をモニタリングして,適応策の実施による影響を調査してございます。具体的には,食用米の慣行のコシヒカリがございますけれども,これに比べて多収系統であるオオナリという品種を栽培した場合に二酸化炭素の吸収が約3割大きくなるということを調べてございます。また今後,さらに時間ごととか品種ごと,生育段階ごと,こういったきめ細かくさらに評価を進めていきたいと考えてございます。
 右側ですけれども,気候変動の緩和策ということで,温室効果ガスの排出量の算定を精緻化したりでありますとか,温暖化緩和技術の適用による排出削減量,こういったものを評価してございます。こちらも具体的には,例えば稲わらと牛糞の堆肥を水田に施用した場合のメタンの排出量に及ぼす影響をより正しく予測するというふうなことを研究してございます。また,圃場の排水改善処理などを行うことによって,温室効果ガスの亜酸化窒素などの排出量が削減するというふうなことを調査しているということでございます。今後,有機物の施用の変化が農地土壌の炭素蓄積であるとか,温室効果ガスの排出とかにどのように影響を与えるかということを見える化する仕組みを作っていきたいと考えてございます。
 次のページでございますけれども,今後重視したい取組として挙げさせていただいてございます。今後は,様々なデータを活用して,気候変動適応型の農業を実践する取組を加速していきたいと考えてございます。
 真ん中の下の方にWAGRIと書いていますが,これは農業関係のデータ連携基盤でございます。これが本年4月から運用を開始してございます。具体的には,農業関係のデータを共有したり連携したりと,こういった機能を持ったプラットフォームでございます。今現在,気象データや農地データ,生育予測システム,肥料などいろいろな農業関係のデータをベンダーさんに使いやすい形で提供している状況でございますので,今後様々な観測データをさらにこのWAGRIの中に実装していって,スマート農業の自動化技術やシステムと組み合わせて,農業の生産性向上だけでなく,気候変動や地球環境にも対応した農業を目指していきたいと考えてございます。
 具体的には,例えば病害虫の予測システムを今,開発していますので,これと気象データなどを連動させて,アラートを出すようなシステムを開発しているところです。田んぼの水管理を自動化するシステムも,市販化され始めましたので,生育予測システムや気象データをうまく連動させて,例えば高温障害を自動で回避できるような水管理によって食糧の安定供給にもつなげるなど,データを重視した気象対応型の農業を実践していきたいと考えてございます。
 以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,水産庁増殖推進部研究指導課の鈴木研究管理官,お願いいたします。
【水産庁増殖推進部研究指導課鈴木研究管理官】 こんにちは。水産庁の鈴木と申します。お手元の資料は1-2-3になります。私どもが行っております地球観測に関します取組状況について御紹介させていただきます。
 1枚めくっていただきまして,平成30年度の段階での水産庁の事業の中で,海洋観測,水産庁ですので海洋がメインになってくるわけですけれども,海洋観測を取り入れている事業を4つリストさせていただいております。この時点で,水産庁本庁船,国立研究開発法人水産研究・教育機構の漁業調査船,それから都道府県の調査船,また民間の用船等を使いまして,年間150調査以上の航海を実施しておりまして,各種センサー,それから生物・海水のサンプル収集等を行っております。
 次,3ページ目になります。4つリストさせていただいた中でも,上2つ,我が国周辺水産資源調査・評価推進事業と国際水産資源調査・評価推進事業がかなり大きな比重を占めているのですが,令和元年度,本年度からこの2つの事業が統合されております。
 1枚おめくりいただきまして,こちらが年度初め,平成31年度時点での概算要求の資料になります。沿岸の漁業資源と国際的な漁業資源を同じ事業の中で調査・評価していこうという流れになっております。
 次のページを御覧いただきますと,現在,水産庁の進めております水産政策の改革に関連しましてこの事業の統合が行われておりますので,その経緯を少し示しております。平成30年6月に水産政策の改革が閣議決定,それから12月に漁業法が改正されまして,それに従って私どもの取組を進めております。
 1ページめくっていただきますと,その中で,今後資源評価の対象魚種,現在50種なんですけれども,それを200種程度まで拡大することになっておりまして,ここへどのように対応していくかが現在進行形での課題であり,重視すべき取組となっております。
 それに対応する形で今年度以降,海洋観測の調査を,先ほど平成30年度時点で150と言っておりましたが,少し増やしまして170以上の調査を今年度で計画しており,今後も順次拡大していく予定でおります。
 次に,データの利活用の状況を少しだけ紹介させていただきます。私たちの独自の観測に加えまして,気象庁さん,海上保安庁さん,各大学の皆様,それから国際的なプロジェクトでありますArgoプロジェクト等の海洋観測データを統合しまして,FRA-ROMSと名付けております海洋モデルを水産研究・教育機構のほうで作って運用しております。
 1枚おめくりいただきますと,利活用状況の御紹介ですけれども,例えば今年度サンマが非常に不漁だということがニュースにもなっておりますが,このサンマの漁海況の見通しを海洋観測とこのモデルでの予測を使って公表しております。
 次のスライドですけれども,これは今年度の調査,クロマグロの稚魚の分布調査を毎年行っておりますが,そういう調査にFRA-ROMSの出力結果を即応用しまして,海上で観測しているということです。このようにデータの利活用を積極的に進めさせていただいておりますし,今後も拡充の方向で考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。
 その後に残りの2つの事業を付けておりますが,いずれも海洋観測,クラゲですとか栄養塩に関する観測も並行して行っていることを申し添えます。
以上です。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究室の豊川室長補佐,よろしくお願いいたします。
【経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究室豊川室長補佐】 経済産業省の産総研室,豊川です。よろしくお願いします。資料としましては資料1-2-4,南鳥島における多成分連続観測によるバックグラウンド大気組成変動の高精度モニタリングについて,でございます。
 この研究は,小笠原諸島の南鳥島におきまして,産総研が気象庁や気象研と共同して温室効果ガス等の大気モニタリングを行っているものです。南鳥島は東京から約1,900キロメートル離れた日本最東端の島で,日本で唯一温室効果ガスバックグラウンド全球観測所として,世界気象機関,WMOから選定されております。
 ここで従来実施されてきた気象庁による温室効果ガス等の定常観測に加えまして,産総研,気象研による研究観測を追加して実施しております。それで北半球中緯度を代表するバックグラウンド大気組成の変動を高精度に把握し,その変動要因を解析しております。この研究は昨年,平成30年度で一旦終了しておりますが,今年度から新たな観測項目や観測場所を加えまして,新規の課題として今後5年計画で研究を継続しております。ちなみに予算につきましては,環境省の地球環境保全試験研究費をメインに,それから産総研の運営費交付金により実施しております。
 次に観測項目ですが,産総研と気象研の役割分担として,産総研が酸素濃度,二酸化炭素同位体比の観測,それから気象研が水素,ラドン濃度の観測を行っております。
 次に観測方法ですが,孤島の南鳥島におきまして長期観測が可能なように,連続観測システムを開発しまして,南鳥島に設置し,観測を実施しています。またこれと並行しまして,連続観測システムの精度確認のために,大気試料をフラスコの容器に採取し,定期的につくばの実験室に持ち帰りまして分析を行っています。この現地の観測,試料の採取におきましては,気象庁職員の方々に全面的な協力を得て実施しておりますことを申し添えておきます。
 これらの大気モニタリングのほかには,酸素濃度の高精度観測のために,国際単位系,SIへのトレーサビリティーが確保される酸素濃度標準ガスの開発を行っております。
 この研究の成果ですが,本研究では大気中酸素濃度や二酸化炭素同位体比など,温室効果ガス及びその関連ガスにつきまして季節変動や経年変動の実態を把握,それからこれを解析することにより変動要因を明らかにする,そういったことで成果が得られております。また,これら南鳥島の観測に関するメタ情報は,地球環境情報統融合プログラム,DIASに登録され,公開されております。また,開発しました高精度酸素濃度標準ガスは,国内外の酸素濃度観測スケール比較のための巡回比較実験に活用されております。
 今後とも,本研究により得られました研究成果を公開・提供していくことによりまして,気候変動予測の高精度化に貢献し,また,効果的な温暖化対策に寄与することを期待しております。
以上です。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 次に,国土地理院企画部,石関研究企画官,お願いいたします。
【国土地理院企画部石関研究企画官】 国土地理院でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料は資料1-2-5でございます。国土地理院における地球観測の取組状況というタイトルの資料でございます。
 1ページおめくりいただきまして,2ページですけれども,国土地理院の役割を簡単にまとめたものです。国土を測って,描いて,守って,伝える,という4つのキーワードで今,取り組んでいます。この中で特に地球観測という観点で申し上げますと左半分,国土を測るですとか国土を守るといったところで,国土の状況,位置を測る,どういった現象が起こっているのかを観測することに取り組んでおります。
 次のページでございます。地球観測の実施計画におきましては,8つの施策を登録しております。地球フェーズの取組,国フェーズの取組,もう少しローカルな取組というところで,3つに分けております。
 次のページでございます。その8つの施策を,今度は施策的な取組の内容によって3つに分類しています。この4ページでございますけれども,日本の正確な位置を決める取組でございます。一番下にあるVLBIという測量,アンテナの写真がございますけれども,このアンテナで,国際的な協力で世界同時に電波天体(クエーサー)からの電波を観測しまして,地球の中で日本がどういった位置にあるか,ないしは,他の国との相対位置がどういった関係にあるかといったようなところを,観測しています。
 日本の位置が把握できたら,右上にある電子基準点というものの写真がございますけれども,全国に1,300点ちょっとございます。一言で言うと,GPS等のアンテナが入ってございまして,24時間365日,衛星の信号を観測しまして,日本がどういうふうに動いているかといったことを観測してございます。この電子基準点でそういった測量に使ってもらう,ないしは位置情報サービスですとか,地殻変動の把握をしてございます。
 その電子基準点1,300点のデータを基にしまして,左上にございます三角点ですとか,水準点といった形で測量に使ってもらう,ないしは,最近ですと,今年度から取り組んでございますが,航空機を使って重力を把握します。それによって,高さをリアルタイムで知ることができる,精密な標高を迅速に測れるようにするといった取組を進めておるところでございます。
 次のページを御覧ください。5ページは災害時の地殻変動の観測に関してです。左上にございます地殻変動観測につきましては,南海トラフの強化地域など,防災対策の指定が法律で定められている地域を中心に水準測量等を実施して,関係する会議に資料を提供しているところでございます。
 左下の機動観測につきましては,ここに掲載されている写真に関しましては,例えば火山で火山活動が見られるところに移動式・可搬型のGPSの,先ほどの電子基準点のようなものを設置しまして,火山活動に伴って地殻変動がどのように動いているかを監視するといったことに取り組んでいます。
 右半分でございますが,高精度地盤変動測量,干渉SARと書いていますけれども,JAXAさんが打ち上げられましたALOS-2号機の観測データ,災害前の平時にも観測してございますし,平時と災害が発生した後の緊急観測で,それを比較しまして,地殻がどのように変動したかを面的に把握すると。それを文科省さんの特別な機関である地震調査委員会,地震調査研究推進本部に迅速に提供するとか,関係機関に提供するといったことをしています。
 次のページ,最後でございますが,6ページでございます。そういった災害時の状況把握に関しましては,航空機による観測もしてございます。国土地理院測量用航空機「くにかぜ3号機」がございますけれども,それで空中写真ですとか,航空機SARにより,観測をしまして,被災状況を把握して提供するといったことをしています。
 その下でございます。地球という観点では南極観測に関しましても国土地理院も参加させていただいていまして,南極地域における地形情報,地形図ですとか空中写真等の整備をしまして,国際機関等に提供しておるところでございます。
簡単ですが,以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 第1ラウンドの最後は気象庁にお願いしたいと思います。気象庁地球環境・海洋部地球環境業務課の青柳地球環境観測ネットワーク企画調整官,お願いいたします。
【気象庁地球環境・海洋部地球環境業務課青柳地球環境観測ネットワーク企画調整官】  ありがとうございます。気象庁です。当庁における地球観測の簡単な紹介をさせていただきます。
 1枚めくっていただきまして,2ページ目に,当庁が行っている地球観測のシステム,全部網羅しているわけではありませんが,そのうちの主なものを挙げさせていただいております。地上気象観測,高層気象観測,すなわちバルーンを飛ばしてのin-situの観測,あと気象レーダー,気象衛星といったリモートセンシング観測ということをメインにやっております。
 下段に行きますと,地震・火山の観測,地磁気観測,あと環境気象観測,海洋観測のイメージ図を載せております。これら全て,国民の生命・財産を守るための防災情報を提供するために,常日頃から,気象と水象,地震,火山を監視する業務になります。3ページ目,4ページ目で簡単に,いくつかの業務を紹介させていただきたいと思います。
 3ページ目です。気候変動の観測業務になります。気候変動枠組条約若しくは地球温暖化対策計画,気候変動適応計画といった国内外の枠組がございまして,それに基づいて,温室効果ガスですとか気候変動等の把握のための総合的な観測・監視を推進しています。気候変動枠組条約では第5条で気候変動に関する研究及び組織的観測を行うこととなっており,それに基づいてWMOや海洋の国際機関であるIOC等が観測計画を立て,それに基づいて我々も日夜監視を続けていることになります。
 左側に書いてあるのが,気候変動に関する組織的観測に携わっているものをピックアップしたものです。陸海空,あと宇宙ですね。それらから日々,地球を見つめております。陸の環境気象観測のところに日射・放射計の写真を載せておりますが,CO2観測ですとかメタンの観測も続けているところです。これらを基にして,気候変動の監視情報,データを収集して,それを解析して,情報を提供していくことをやっております。気象庁は二酸化炭素を含む温室効果ガスの世界データセンターを運営しております。それらの観測結果を基に,気象・気候の予測モデル等々による将来気候の予測についても情報提供しているところでございます。
 4ページ目,5ページ目では,気象庁における地球観測の中で予算規模が大きい観測プラットフォームを2つほど紹介させていただきます。
 1つは海洋気象観測船でございます。海洋気象観測船は2隻ございまして,「凌風丸」,「啓風丸」の2隻で,CTD観測ですとか,いろいろな観測,海洋の化学分析等々も行っております。これは国連のIOC,政府間海洋学委員会のプログラムで決められているもので,当庁は北西太平洋域の監視を担っています。特に137度線の定線観測の成果をよく耳にされるかもしれませんが,そこでの海洋観測をこれまでずっと50年以上続けているところが売りになっております。成果としましては,50年にわたる観測,あとは国際連携で共有された観測成果を基に二酸化炭素吸収量や海洋酸性化,そういったところの実態を明らかにしているところになります。
 下のグラフには,長期にわたっての海洋二酸化炭素の変動傾向,左側のピンクの部分については海洋上の大気のCO2の濃度が描かれております。下の青いプロットが海洋中のCO2の濃度になります。大気も海洋もCO2の濃度が上がっているということです。これらをしっかり観測から明らかにしたということになります。こういった長期にわたる環境モニタリングは今後もしっかり続けていくべきであろうと思っております。
 5ページ目に行きますが,静止気象衛星「ひまわり」でございます。皆さま御承知のとおり,現在8号と9号が上がっております。8号につきましては2015年7月7日から運用を開始しております。9号はその2年後,2017年の3月10日から待機運用,バックアップ運用を開始しているところです。8・9号になりまして,空間の解像度が上がりました。あと,波長についてもバンドをたくさん持つようになりましたので,カラーでしっかり見られるようになるといったことがありました。これらのデータについては防災に役立てるということ,あとは地球環境の監視の強化にも役立つようになったということが売りになっております。
 線表がありますけれども,ちょっと薄目に書いておりますが,2023年,令和5年度以降,次期衛星について設計,製作等々始まることになっております。現在,令和元年のところ,空白になっておりますけれども,検討は既に始めておりますので,御安心いただければと思います。
簡単ですけれども,以上,紹介させていただきました。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 これまでのところで6省庁の皆さんに御紹介をいただきました。大体時間を守っていただいておりますので,10分ほど質疑をさせていただきたいと思いますが,委員の皆さんから何かございましたら,どうぞお願いいたします。赤松委員。
【赤松委員】 国際航業の赤松と申します。全体の話なんですけれども,今回御報告いただいている内容ですが,例えば国土地理院様みたいに全体的な活動を御報告いただいているのもありますし,経産省様みたいに大気観測に集中した形で御報告いただいているというのがありますが,これは何かそういう仕立てを御指示いただいたということなのでしょうか。
【小池部会長】 それはそもそも地球観測の実施計画に登録いただいている内容を中心だと思いますが,ちょっと事務局の方。
【池田地球観測推進専門官】 平成30年度の地球観測の実施計画に登録されております事業について御発表いただいております。どういった観測がなされているかであったりとか,課題であったりとか,そういったことを御発表いた
だいている内容になっております。
【赤松委員】 そうしますと,30年度に実施しているものに今回集中して発表いただいていると考えたらよろしいんでしょうか。
【池田地球観測推進専門官】 はい,そうです。
【赤松委員】 分かりました。どうもありがとうございます。
【小池部会長】 2つあると思うのですが,1つは継続的にずっとやっていただいているものと,それから1年,2年ということはないですが,割と集中的に観測していただいているものです。前回の部会でも議論がありましたように,継続的なものに新しいものを加えていくという2本立てで,それぞれの断面で違うものがあると思います。という理解ですがよろしいですかね。他にございますでしょうか。
 よろしいですか。私の方から1つあるのですが。総務省の方で,電波を利用した地上・航空機・衛星の御紹介をいただきました。また文科省の防災科研でXバンドのマルチパラメーターレーダーというのを開発されて,それが国交省の通常XRAINと呼ばれている観測ネットワークとして現業化されています。つまり研究実績を基に現業化されて,今はそのXバンドと従来からのCバンドを合成したものまで作られております。総務省の方では電波の最先端をいろいろ切り開いておられますが,そういう切り開かれたものが現業的な利用に使われているような連携の芽があれば教えていただきたいのですが。如何でしょうか。また先ほどのお話の中では,産総研と気象庁の協力で観測をされているということもありましたが,省庁間のご協力の事例を教えていただけますでしょうか。
【総務省国際戦略局技術政策課研究推進室森岡イノベーション推進官】 総務省でございます。御指摘のとおり,様々な分野で省庁間連携を進めているところでございます。気象レーダーに関しては,MP-PAWRといった最新技術を弊省で研究開発して,その有効性を他省庁の方々にもお示ししているところでございます。また最新航空機搭載レーダーPi-SARに関しても,その高精度化の有効性をお示しして,様々な省庁で活用の御検討をいただいているところでございます。
 それぞれ最先端の技術ですので,社会実装というところはまだ時間が掛かるところではありますけれども,徐々にそういった最新技術へのご理解を頂いているといったところでございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。フェーズドアレイレーダーなんかは,もうかなりそういうところに近いレベルまで行っているのではないかと思いますが。
【総務省国際戦略局技術政策課研究推進室森岡イノベーション推進官】 そうですね。そういった話もさせていただいているところでございます。
【小池部会長】 他にいかがでしょうか。岩谷委員,どうぞ。
【岩谷委員】 気象キャスターネットワークの岩谷と申します。前回2回とも来ていないのですが,いろいろ発表いただき,ありがとうございました。私からは感想と要望みたいなところがあるのですが。各省庁さんがたくさんの観測をされていて,しかもかなり実用化されてきているなというのが率直な感想で,省庁間の連携であるとか,研究機関とか,そういったものが,水産庁であればサンマの予報だとか,かなりデータを一般の国民に対して情報公開というか,活用できている例がすごく多く見られていると感じております。また,国土地理院さんの地理院地図とか,非常に見やすくて,災害があった時には写真もすぐ公開されているとか,そういう点で,私は週の半分は放送局で仕事をしているということもあるのですが,非常に活用できる観測データが整ってきていると実感を持っております。
 その一方で,気象庁さんへのお願いの部分もあるのですが,防災情報ですと,やはり気象庁のページを圧倒的に活用するとか見る機会が多いのですが,どうしても気象庁さんのデータは観測の精度を優先するために,県とか例えば国交省のデータとか観測データを同じページにあまり載せてくれないので,どうしても私どもは使いにくいところがたくさんあります。精度というのも分かるのですが,観測のデータを防災情報に役立てるためには,なるべく1つのページから見られるようなものになっていくと,更によくなるのかなと思っております。
以上です。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。気象庁の方,何かございますか。
【気象庁地球環境・海洋部地球環境業務課青柳地球環境観測ネットワーク企画調整官】  非常に有意義なご意見,ありがとうございます。例えば,地震ですとか,津波の情報とか,そういったものについては,地方自治体さんのデータを収集させていただいておりますし,地理院さんですとか,国交省さんですとか,その他研究機関のデータなども,気象庁が統合して受信して,ワンボイス的にというか,一括して出せるというような協力ができているものと思います。
 他方,気象データについては,確かに御指摘のとおり,全てを網羅して当庁で管理するということには至っていないと思います。ただ,今は精度の話をされたと思いますけれども,そのような観点というよりは,やはりデータの通信をどこまで責任分界するかとか,そういった観点での調整がかなり難しいのが実情ですので,将来的にやっていければいいとは思いますけれども,なかなか難しいのではないかと感じているところです。もちろん検討はしていくものと思いますけれども。
 例えば,ドコモさんですとか,そういったところが気象データを自動取得していたりしますけれども,それについては協定を結んで,災害時にはちゃんと共有させていただくというようなことが以前は実現していたと思います。徐々にそういう方向に向かっていくと思いますけれども,温かく見守っていただければと思います。今後も,こういう機会ですとか,他の機会がありましたら,ご意見をどんどんいただければと思います。どうもありがとうございました。
【小池部会長】 ありがとうございます。データを全体的に俯瞰できることが1つ大きなキーワードとしてこの部会でも議論しておりますので,どうぞよろしくお願いしたいと思います。他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは第2ラウンドに行かせていただきます。最後に総合討論をいたしますので,お忙しい中恐縮ですが,もしも発表された省庁の方もおとどまりいただけましたら幸いでございます。それでは第2ラウンドの最初は,海上保安庁海洋情報部技術・国際課の氏原主任技術・国際官,お願いいたします。
【海上保安庁海洋情報部技術・国際課氏原主任技術・国際官】 海上保安庁海洋情報部でございます。資料の番号ですけれども,1-2-7になります。最初に海洋情報部の業務について簡単に御説明させていただいた後に,地球観測の今回登録させていただいている調査観測について簡単に御説明させていただければと思っております。
 1枚目です。海上保安庁海洋情報部ですけれども,海上保安庁の下にこの海洋情報部という部署がございまして,主に航海安全のための海洋調査を行っている組織になります。古くは明治4年に海軍の下に水路局という形で海図を作る仕事,航行安全のために必要な例えば水深情報ですとかそういったものが書かれている図を作ることを目的に発足した組織でございます。戦後,水路部として海上保安庁の下に参りまして,現在は海洋情報部という名前に改変させていただきまして,様々な調査を行っております。
 我々,測量船という船を持っておりまして,こちらに写真を3つ載せておりますが,これは大型の船を3つ載せさせていただいております。最大の船ですと「昭洋」という3,000トンの測量船,また500トンクラスの船や20トンクラス,かなり小さな船まで含めまして,合計13隻の測量船を東京そして地方組織に配属しておりまして,それを用いて観測を行っております。
 次のページです。我々が行っている観測,こちらが地球観測に登録させていただいているものでございます。まず1つは測量船による地形調査でございます。測量船にマルチビームという音響測深機を付けておりまして,海底面の地形を測量できる調査を行っております。また,右側ですけれども,潮汐観測,我々,験潮所を全国20か所に整備しております。この図の中にはないですけれども,ほかに南極にも昭和基地のすぐそばに験潮所を設けまして,ここで長期にわたって観測を実施しております。また,測量船にはADCPという超音波流速計ですとか水温計等を積んでおりまして,そちらで海潮流の観測を行っております。また,短波レーダー等,陸上におきまして航行安全に必要な区域において海流の観測などを実施しております。
 次のページです。防災・海洋環境保全のための海洋調査といたしまして,まず左上ですけれども,海底地殻変動観測という観測をプレート境界面,巨大地震が逼迫している海底のプレート上で観測しています。主に日本海溝沿いと南海トラフでございます。最近ですと,今年予算がつきまして,この南海トラフに新たに4つの基準点を増設することが決まりまして,こういった観測を継続的に実施することでプレート境界域における地殻変動について観測していくことにしております。
 その他,右側でございますけれども,海上保安庁では海域の火山調査を実施しております。本土にはたくさん火山がありますけれども,その他にも例えば伊豆・小笠原海溝沿いですとか南西諸島方向には様々な火山がございますので,そういった火山について観測を実施しております。その他,主要湾ですとか沖合域等で海洋汚染の調査,それに加えまして放射能調査,放射性成分の状況等について採水や採泥をして観測を行っています。
海上保安庁からは以上になります。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 次に,環境省地球環境局総務課脱炭素化イノベーション研究調査室,吉川室長,お願いいたします。
【環境省地球環境局総務課脱炭素化イノベーション研究調査室吉川室長】 環境省の吉川と申します。ちょっと文字の多い資料で恐縮なんですが,資料1-2-8で環境省の主な取組について御説明させていただきます。
 まず資料1-2-8,スライド1枚目でございます。環境省では,まず環境研究総合推進費という競争的研究資金を用いまして,地球温暖化の防止,それから自然環境との共生,持続可能な社会構築のための観測等の事業を行っております。こちらは今,5課題が実施中です。
 また,環境省設置法に基づきまして,地球環境保全に関する関係行政機関の研究費を環境省が一括して計上する,地球一括計上といわれているスキームがあるのですが,こちらの方で私ども,今,気候変動とその影響を長期的に観測評価するための取組を関係国立研究機関の皆様と一緒にやらせていただいております。現在,こちらは10課題がこのスキームの下で実施中という状況でございます。詳細は割愛いたします。
 その他,温室効果ガス観測技術衛星GOSAT,日本の愛称が「いぶき」と申します。このいぶき,今,1号機,2号機と打ち上がっておりまして,この観測データを活用した二酸化炭素やメタンの全球分布,経年変化の観測を行っております。現在,このミッションを発展的に継承した後継機3号機の開発にも取り組んでいるところでございます。そのほか,地球規模の生物多様性モニタリング推進事業,地球環境モニタリング事業を進めているところです。
 次のスライドに,その全体像のイメージ図,地球環境の戦略的モニタリング,衛星観測に関する研究事業という図と,それからそれをもって今後目指していこうとしている統合的地球観測による温室効果ガスインベントリーの高度化という構想について触れさせていただきます。
 今まで,様々な温室効果ガス,それから排出だけではなくて吸収量も含めて観測モニタリングによって長期的な動向,実情を把握してまいりました。こういう地上観測の取組,衛星観測と各国が今出している温室効果ガスインベントリー,こういったものを組み合わせることで,インベントリーの高度化をより図っていけると考えております。大気観測からの逆推定ですとか,GHG収支の広域推定,こういったものと,各国の行っているインベントリーデータを突き合わせて,吸収量と排出量をより科学的に精度高く評価していく取組に貢献していきたいと。
 これについては,本年5月に京都でIPCCのGHGインベントリー算定方法の改良ガイドラインが採択されているのですが,その中で各国の吸排出量の精度の向上に地上観測のデータと衛星観測のデータを活用することが有効ということがきっちり記載されておりまして,いぶきシリーズの精度向上の面での活用例も多く取り上げられたところでございます。こういう形で地球環境の,これから進んでいくパリ協定に基づくグローバル・ストックテイクといった取組にも貢献していきたいと考えております。
 その辺,3枚目の課題と今後の方向性というスライドにまとめさせていただきました。統合イノベーション戦略,今年の6月に閣議決定されたこの戦略,2019年版の中でも温室効果ガス観測の拡充と維持,それからその観測データの品質管理,高度な分析システムと統合手法の開発によって,温室効果ガス観測データを用いたパリ協定に基づくグローバル・ストックテイク等へ貢献する取組を推進すると明記されたところでございまして,こういう取組を関係省庁と連携して進めていきたいと考えております。
 また,今後解決すべき課題として,地球観測一括計上等で皆様と相談していく中で挙がってきている課題が,1つには国内外の環境政策立案・実施に,より効果的に科学的知見を提供していくための連携というところ。それから長期的な観測をやっていく中で,やはり機器がかなり老朽化してきている問題がございまして,そういう対応をどのように行っていくかという課題。そして,途上国の科学者や研究機関に対する能力開発,こういったものも大きな課題として浮上しております。
 今後重視する課題としては,やはり緩和・適応策を含むパリ協定への貢献,特に途上国のインベントリーの精度の向上,グローバル・ストックテイクへの貢献,温室効果ガスと大気汚染の同時削減を含む気候変動対策,大気・水質汚染対策,生態系保全対策,複数のSDGsへのコベネフィットなどを重視して取り組んでまいりたいと考えております。
環境省からは以上です。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,次に文部科学省研究開発局の4件の御発表をお願いしたいと思います。まず最初に,研究開発局地震・防災研究課の中出課長補佐,お願いいたします。
【文部科学省研究開発局地震・防災研究課中出課長補佐】 ありがとうございます。文部科学省からは4つに分けておりまして,それぞれ担当課から御説明させていただきます。
 地震・防災研究課でございますが,資料1-2-9の(1)ということで枝番になってございますが,こちらで現在やっております取組,成果,そして今後取り組んでいく方向性について御説明いたします。
 海底地震・津波観測網の運用というタイトルでございます。先ほど,海上保安庁の方でも,やはり日本海溝であったり,南海トラフで想定される地震というところが非常に被害が大きく,そこをモニタリングすることが重要というお話がございました。当課が所管しております防災科学技術研究所の方で,日本海溝の辺りであったり,南海トラフの方に地震・津波の観測をする大規模なネットワークシステムを構築しているところでございます。1ページ目の左下のところがDONETと愛称で呼ばせていただいておりますが,こちらが南海トラフの想定震源域に配備させていただいているものでございまして,その右側のS-netが日本海溝,東北沖に置いているものでございます。これらを置くことによりまして,今まで陸上でしか検知ができなかった,例えば,地震動などを少しでも早く検知することによって,右側にこれまでの成果と書かせていただいておりますが,例えば気象庁の緊急地震速報への貢献であったり,津波警報への貢献というところで活用いただいているところでございます。
 これまでの成果の2ポツ目にもありますように,いわゆる現業官庁でやっていただいているだけではなくて,研究機関,大学等においても地震調査研究に活用ということで,これまで地震動の特に海溝型のところがまだまだメカニズムが分かっていないところもございますので,そういったところの研究に活用いただいているところでございます。また,国レベルだけでなくて,地方公共団体や民間企業においても津波即時予測システムの導入ということで,特に左側のDONETなどでは実際にある都道府県においては気象業務法を取得していただき活用いただいているところがございます。
 今後取り組んでいく方向性でございますが,2ページ目をお開きいただけますでしょうか。こちらに南海トラフと書いてございますが,2ページ目の右上の図に観測網の空白域ということで,黄色で網掛けをさせていただいているところがございます。こちら,先ほどDONETという南海トラフのところと申し上げましたが,DONETのところはこの黄色の右側にある水色のところ,少し小さくて恐縮でございますが,そちらに配備されているものでございます。その左側,いわゆる室戸沖から日向灘のところが現在,観測網の空白域となっているところでございまして,こちらに今後新たな観測網,N-netと略させていただいておりますが,それを配備しようということで,平成30年度の二次補正からそちらに進めていく予算を計上していただいて,今後約5年を目途に構築・整備を行っていくところでございます。これらも先ほど申し上げましたとおり,気象庁での活用であったり,大学,研究機関での活用を想定しているところでございます。
以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,研究開発局海洋地球課,鈴木課長補佐,お願いいたします。
【文部科学省研究開発局海洋地球課鈴木課長補佐】 海洋地球課でございます。私からは資料1-2-9(2)について簡単に御説明をさせていただければと思います。
 こちら,海洋研究開発機構,JAMSTECにおける地球観測への取組でございます。こちらに写真で様々な観測の様子を並べてございますけれども,現状理解と将来予測につなげるための基礎となる観測データを全球規模で取得しております。海洋だけではなくて,相互関係の深い大気や陸域の観測も実施しておりますし,またそのデータは国際的な観測ネットワークや国際研究プログラムのデータセンターに提供するとともに,シミュレーションなどにも活用しているところでございます。
 次のページから具体的な取組の例を御紹介させていただきます。
 1ページ目でございます。こちら,JAMSTECとしましては,ここに例としてお示ししておりますけれども,国内外の様々な機関と連携いたしまして,種々の海洋観測プロジェクトに参加してございます。例えばArgo計画におきましては漂流フロート,GO-SHIPにおいては船舶,Ocean Siteなどにおいては係留ブイというように,様々なツールを組み合わせまして観測を実施しているところでございます。こうしたデータは気象庁さんをはじめ,他機関で活用されております。また,中央下にある赤字でございますような地球環境上の様々な研究課題に取り組んでおるところでございます。
 次のページでございます。そうした観測の課題という意味で申し上げますと,先ほど申し上げましたフロート,ブイ,船舶それぞれの長所や短所を踏まえまして,どのように組み合わせるのが最も効果的,効率的なのかを追求する必要があろうかと思っております。また,ここにも高機能なフロートやあるいはセイルドローンという風力で海面を動くドローン,あるいはウェーブグライダーという波の力で動くドローンも載せておりますけれども,こうした新技術を融合して活用していくことで,広大な海洋をより省力化,低コスト,それでいて高密度,高頻度,高精度に観測ができるかという課題もあろうかと考えておりますし,また,観測データをさらに効率的にどのように集積するかという点も課題として認識しているところでございます。
 次のページでございます。ここからはトピック的に3点ほど御紹介させていただきます。まずは北極域における環境変動の把握と海氷下観測技術開発でございます。こちら,御承知のとおり温暖化の影響が顕著な北極域におきまして,その変化を把握して,将来予測の確実性を向上させ,沿岸国をはじめとする国際社会に科学的知見を提供することが求められてございます。御承知のとおり北極海においては海氷が溶けてきていることもあって,航路の活用の可能性など利用の可能性も高まっている中で,どのように保全と利用を調和させていくか,そして国際的なルールメーキングに資する形で,そうしたデータをどのように活用していくかということが課題かと思っております。観測としましては,具体的には,左に写真がございますように,毎年夏季から秋季に北極域研究推進プロジェクト,いわゆるArCSプロジェクトの中におきまして,海洋地球研究船「みらい」において観測を行っておりまして,またそのデータとモデルを融合して,北極海環境の将来予測の確実性向上に向けた取組を行っております。また,JAMSTECにおきましては,こちら右に写真がございますように,海氷下観測用の海中ドローンの開発も進めているところでございます。
 ページをおめくりいただきまして,2点目でございます。地球環境変動と人間活動が生物多様性に与える影響評価ということで,特に最近,海洋プラスチックごみにおける海洋汚染がホットイシューになってございますけれども,こうした汚染の実態を把握するために,プラスチックの分析技術の開発やサンプリング技術開発,またプラスチックの分布の観測のほか,深海生物を含め海洋生物によるプラスチックの取り込みやプラスチックに起因する化学物質の蓄積の影響評価等を実施しているところでございます。
 最後3点目でございますけれども,JAMSTECにおきましては観測だけではなくて,取ってきたデータを,外部との連携を含めまして,効果的に組み合わせ,そして効率的に数値解析を行うことで,地球と人間との相互関係を理解したり,その情報を,付加価値を有する形でユーザーに活用いただく取組に着手しておるところでございます。今年度から第4期中長期計画が始まりましたけれども,その中で,こちらのタイトルにありますように,数理科学的手法による海洋地球情報の高度化及び最適化に係る研究開発という柱を新たに立てまして,機構を挙げて取り組んでいるところでございます。
 こちらに具体例を挙げてございますけれども,SATREPSにおいて気温や降水量の予測からマラリア蚊の発生率を予測するという取組を行ってきたところでありまして,今後はこうした情報を関係機関に展開することも検討しております。また,こうした分野に限らず,ほかの分野においても観測データからどのように効果的,効率的に付加価値情報を生み出せるかというのも今後の展開として考えているところでございます。
 こちら,資料の説明は以上でございますけれども,JAMSTECの中ではこのほかにも海域地震に関する観測を行っていたり,またJAMSTEC以外の当課関係の取組としましては,南極地域観測事業の中で,国立極地研究所や各省庁連携で,南極地域の観測も半世紀以上行ってきたところでございます。
海洋地球課からは以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,文部科学省研究開発局宇宙開発利用課,原田企画官,よろしくお願いいたします。
【文部科学省研究開発局宇宙開発利用課原田企画官】 ありがとうございます。研究開発局宇宙開発利用課でございます。
 資料の2ページを御覧ください。まず,人工衛星の地球観測の意義でございますが,皆様御承知のとおり,人工衛星の地球観測は広域性・同報性・耐災害性がございます。グローバルに周期的に長期間にわたってデータが集約できるといったことから,こういったもので国境を越えた観測データを長期間にわたって継続的に作成し,蓄積することができます。このような人工衛星の特徴を生かしまして,災害に関する観測であるとか,気候変動に関わる各種情報,地球規模課題に貢献するような情報の収得にも寄与しております。ページの最後になりますけれども,これらの活動を通しまして,それらの基盤ともなる地球・環境科学の分野にあるサイエンスコミュニティーの研究活動や,あるいはそれらを生かした新事業・サービスといった付加価値にも貢献していると考えております。
 3ページ目を御覧いただければと思います。2ポツの人工衛星による地球観測の事例でございますが,こちらは概念図でございます。上の図は地球表面の状況を光学又はレーダーによって観測しているのを概念図としてお示ししたものです。下の方は気候変動対策関連の観測項目としまして,先ほど環境省などから御紹介もありましたGOSAT,いぶきによる温室効果ガスの観測であるとか,水蒸気量,大気中のエアロゾルであるとか,あるいは海面温度,地表面温度といったものを電波などで観測している概念図でございます。
 4ページ目を御覧いただければと思います。3ポツの地球観測衛星データの利用促進です。広く地球観測衛星のデータを使っていただくということで,主に図の左ですが,高分解能衛星の関連では,こういった地球観測を通じて光学の画像や地形の図,土地利用の状況,森林の分布,あるいは右側の真ん中,環境観測衛星では海面の水温や,水分量,降水量,あるいはメタンとかCO2の濃度といったものの観測を行い,これらをプラットフォームを通じて広く配分し,利用できるような形で整備させていただいているところでございます。文科省関連で言えば,この後説明があると思いますが,DIASなどのプラットフォームがあり,最近,Tellusといった経産省のデータプラットフォームによる情報の提供もさせていただいているところでございます。
 5ページ目を御覧いただければと思います。これらの地球観測を通じまして,我々,衛星による地球観測の成果といいますか貢献といったもので主に3つ,簡単に整理させていただいています。
 一番上の地球規模課題解決への貢献に関しましては,例えばIPCCにおきまして,GOSATの観測であるとか,あるいはALOSのデータといったものが活用されていますし,農業や森林の伐採等の観測にも用いられております。
 真ん中の新事業の関連では,例えば漁業で海面温度を測定することによって,魚がどこにいるかといったところで漁業に使われている。さらにはインフラモニタということで,土地の変動などを精密に測定できるということで,そういったものに使われておりますし,天候インデックス保険といわれるようなものにも使われるようになっております。
 さらに下の方でございますが,サイエンスの分野におきましては,インパクトのある科学成果,あるいは衛星関連の学術論文数も堅調に増加している状況でございます。
 最後のページ,6ページを御覧いただければと思います。4ポツでございますけれども,これらを通じまして,地球観測の我々の認識する課題としましては,こういった耐災害性であるとか広域性のある地球環境観測衛星のプログラムの継続性がひとつ課題であろうかと思っておりまして,また,様々なニーズに応じたプロジェクトの形成スキームといったこと,さらには地球観測データの継続性,利用可能性に対する世の中の関心あるいは理解の増進,その利用を拡大させていくことがあると考えます。上から4つ目では,衛星自体を利用したサイエンス分野の振興,さらには今,科学技術基本計画であるとか,宇宙政策の世界では宇宙基本計画の改定が進められる予定となっておりますので,こういった政府の計画における地球環境観測衛星の位置付けをより明確にしていく必要があると考えております。
 以下の個別の観測項目に関わる衛星のデータ等,個別プロジェクトに関しましては参考の資料を御覧いただければと思います。
以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは省庁最後になりますが,文部科学省研究開発局環境エネルギー課,葛谷課長補佐,お願いいたします。
【文部科学省研究開発局環境エネルギー課葛谷課長補佐】 環境エネルギー課より御説明いたします。資料1-2-9(4)で御説明させていただきます。
 それではまず1ページ目を御覧いただければと思います。環境エネルギー課に関する地球観測に関わる事業でございます。環境エネルギー課におきましては,気候変動適応戦略イニシアチブというもので,大きく3つの事業で回しております。具体的には,観測データを活用した事業であり,あるいは利活用を促進する事業でございます。
 まず1つ目が,左上にございます地球環境情報プラットフォームの構築推進,DIASというものでございます。こちらは地球環境のデータ連携基盤に位置付けられておりまして,地球観測衛星データなどの地球環境ビッグデータをDIAS上で蓄積あるいは統合,そして解析できるものでございます。
 続きまして右側,統合的気候モデル高度化研究プログラムでございます。こちらにつきましては,全ての気候変動対策の基盤となる気候モデルの開発等をしております。こちらのモデルにつきましては,衛星データなどを用いて開発しているところでございます。
 そして最後,下にございますが,気候変動適応技術社会実装プログラムがございます。こちらにつきましては,自治体と連携いたしまして,適応策の策定を一緒に取り組んでいく事業でございます。
 これらの成果につきましては,下に書いてございますとおり,国内における気候変動対策(緩和策・適応策)への貢献,あるいはIPCC等への貢献をしているところでございます。
 続きまして次のページを御覧いただければと思います。2ページ目につきましては,地球観測実施方針に関する項目の概要でございます。こちらは御覧のとおりになりますので,後ほど御覧いただければと思います。
 続きまして3ページ目をお願いいたします。実施方針取りまとめ後の国内外の動向といたしまして,気候変動をめぐる状況とデータ連携基盤の整備を挙げております。気候変動適応をめぐる状況につきましては,パリ協定の発効以降,気候変動適応法が施行され,適応計画が策定されております。併せてデータ連携基盤でございますけれども,統合イノベーション戦略におきましてSociety5.0の実現に向けた地球環境のデータ連携基盤として、DIASが位置付けられているところでございます。
 続きまして4ページ目を御覧いただければと思います。4ページ目から7ページ目につきましては各事業について成果などを取りまとめておりますので,簡単に御説明いたします。
 まずDIASにつきましては,ユーザー数でございますけれども,ここ4年間で5倍ということでユーザー数も増えているところでございます。
 併せて次のページを御覧いただければと思います。こちらもDIASの成果でございますが,DIASの中でスリランカ洪水管理支援など,衛星データを使って国際貢献などを進めているところでございます。
 続きまして次のページを御覧いただければと思います。こちらは統合プログラムでございますけれども,気候変動のモデル開発をしているものでございます。こちらの成果につきましては,IPCCのレポート等にも活用されているところでございます。
 続きまして最後のページでございます。こちらはSI-CATといわれる社会実装プログラムでございます。こちらにつきましては、気候変動予測データなどが国交省における検討などに使われているなど,実際に社会実装に近い成果が出ているところでございます。
 最後のページでございます。こちらにつきましては今後の課題を示しているところでございます。大きく3つございまして,まずDIASに関するところでございます。まずは,引き続き,地球観測等のビッグデータを蓄積・統合・解析する必要があると考えております。2点目でございますけれども,学術,国際貢献に加えて,産業利用を今後促進していく必要があると考えておりまして,ニーズに応じたアプリケーションの開発や,それに対応するためのシステム処理能力の向上などをしていく必要がある。併せて安定的な運用体制の構築に向けた取組が必要と考えております。3点目でございますけれども,先ほどTellusもございましたが,他分野とのデータ連携基盤等の連携を含めて,観測・予測データの利活用をさらに促進していく必要があると考えております。
 続きまして2つ目,これは統合プログラムについてですが,こちらにつきましては引き続き基盤となる予測情報を創出していくのが1点目でございます。2点目でございますけれども,モデル開発におきましては衛星データが必要になります。そのため,衛星データを引き続き使っていくという意味で継続的な観測の必要性,また過去のデータのデジタル化がまだ進んでいないものがございますので,こちらのデジタル化を進め,さらなるデータの高度化を進めていく必要があると考えております。そして最後の点でございますけれども,こちらにつきましては、雲の高度分布や植生に関するパラメーター,あるいはN2O濃度などの様々なデータが継続的に取られることによって,気候モデルの高度化がさらに可能になるということで,こちらについても課題として記載させていただいております。
 一番下ですが,こちらにつきましては今年度で事業を終了いたしますので,これらで得た成果について,今後引き続き産業利用あるいは自治体などの適応策への活用を進めていくというものでございます。
環境エネルギー課からは以上でございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 海上保安庁さんからここまで,6件御発表いただきましたが,これから質疑に移りたいと思います。御質問等ある方はどうぞお願いいたします。河野委員。
【河野委員】 質問ということではなくて,ちょっと提案というかコメントなんですけれども。最初からお話を全て伺うと,やはり同じキーワード,同じようなことをやっているという印象を持たれかねない状況にあるような気がするんです。各省庁,各機関,それぞれマンデートがあって,もちろん同じことを2つのところでやっていることは当然ないわけですけれども,それが上手く見えるような,小池先生がおっしゃった俯瞰できるような工夫を何かしていかないと,せっかく相補的にやっているところを,ちょっと差し障りがあるかも分かりませんが,財政当局みたいなところが見たら,これは片方は無駄なんじゃないのとか,そういったような指摘を受けかねないですね。できればこういった部会のような,第三者ではないんでしょうが,役所の枠を超えたところから,そういったメッセージが出るような,俯瞰して,相補的にうまくやっているんだ,これでパズルのピースが全部揃っているんだということが見えるような,何か工夫をした方がいいかなと感じました。
【小池部会長】 これが当部会の役割でございまして,今日はその素材をいただいて,俯瞰し,かつ,こんなふうに連携してこんな価値が出ているんだと,だからもっと強化しないといけないんだという話を,この11月29日の次回部会までにまとめていくという,すごく大きな課題をいただいております。ですから各省庁の皆さんと連携してそれを作っていくということで,今日は今まで省庁の方々に御発言いただいて,何となく見えてきた感じです。今の河野委員の御発言も,全体が何となく見えてきたのでそういう御発言になったと思うのですが。私どものこの部会は,推進部会ですから,皆さんがやっていただいているそれぞれ非常に貴重なことが,滞りなく,かつ効果的に,さらに言うともっと政策にどんどん盛り込んでいける,あるいは,今日は割と少なかったですけれども,国際的に日本がそれをリードできているということを見える化する作業が私どもの役割ですので,皆さん,そういうことですので,よろしくお願いいたします。
 俯瞰とか連携というのは非常に重要な視点で,皆さんのお手元には前回議論いただいたことを事務局の方で非常に上手くまとめていただいたものがあると思いますが,これを私もずっとながめていて,俯瞰と連携,あといくつかまだキーワードがありますが,是非進めていきたいと思います。ありがとうございました。他にいかがでしょうか。
【三枝委員】 今のお話に関連するのですが,1つ例を挙げますと,私ども,去年ここの部会で議論していただきましたけれども,気候変動・温室効果ガス分野,炭素循環分野ですと,やはり同じように気象庁,気象研究所さんもやっている,環境省,環境研もやっている,文科省,JAXA,JAMSTECさんもやっているということで,重複するんじゃないかというお話をしばしば伺います。そういったこともありまして,去年,一昨年と2か年度を掛けまして,気候変動の地球観測の連携拠点の場を使わせてもらいまして,日本のグループは,日本の関係府省庁それぞれがこのような観測を行い,ここまでやってきたけれども,それからさらにここから一歩進めて,パリ協定という新しい国際ニーズに応えていくんだという取りまとめをさせていただきまして,大変多くの方に関心を持っていただくことができました。
 それをこれから実現していかなければならないのですけれども,1つの例としまして,今日お示しいただいた地球観測は全て非常に重要なものですけれども,何の目的にというものに対してこのように集約していくのだというような,このようにたくさんの観測がこのように組み合わさって多府省庁連携でこのように日本の地球観測をやっていくという,いくつかの大きな流れを見せることができるようになりますと,その先に行くイメージもつかみやすくなりますし,今,河野委員からいただいたような御指摘にも応えていくことができるのではないかと思います。
 ですので,部会長がおっしゃるように,このままというわけではなくて,何か新しいニーズ,あるいはこれまでもあるけれどもさらに続けていくべきニーズに対してまとめていくようなことができたら,分かりやすいのではないかと思います。
【小池部会長】 ありがとうございます。そういうマインドでいきたいと思います。皆さん,他にいかがでしょうか。
よろしければ,国内の大学等における陸域生態系観測ネットワークの現状と課題で,今日は市井先生と柴田先生においでいただいています。村岡先生は委員でいらっしゃいますので,こちらにおられますが。これにつきまして御発表と質疑をさせていただきたいと思います。お願いいたします。
【千葉大学市井教授】 よろしいでしょうか。本日はこのような機会をいただき,誠にありがとうございました。私ども大学で,今日は陸域ネットワークということで,私と柴田2名で登壇させていただきます。私の方はJapanFluxという,日本で例えばCO2がどれだけ森林に吸われているか,そういった地上観測を取りまとめるところで,JapanFluxでいろいろな研究機関また大学がボトムアップ的に集まっている。柴田さんの方は,生態学的に,例えば植生の重量がどれぐらいであるとか,葉の量がどれぐらいであるとか,そういった観測をボトムアップ的に集めるネットワークを日本の中でJaLTERという立場でリードしている,そういった立場で今日の発表をさせていただきます。
 まず初めに,今日の発表の要点を簡単に言いますと,今回の場合,観測ネットワーク,陸域というネットワークで言いますと,大学でやっているというのは結構個別にやっています。そういったものを全部入れていくと,いろいろと省庁関係のネットワークがあるのですが,それの数に比べて,ざっと言いますと数が倍に増えるというぐらい大学のボトムアップのネットワークでは,いろいろと個々の大学ではやっております。例えばサイトの数が倍に増える。それぐらいの規模です。
 それに対して,ただし大学というのは,どちらかというと科研費であるとか,比較的短期で手弁当的にやっているので,ちょっと脆弱な場面もあるというところです。
 3つ目として,大学としては人材育成を非常にやっておりまして,そういったところが日本の観測を支えているという,そういった3つの話を最初にさせていただければと思います。
 次の2枚目のスライドに移ります。国内外の状況として,特に国内の方で用意させていただきましたが,地球観測の推進戦略であるとか,今後10年の我が国の地球観測の実施方針とか,そういったところで,もともと地表の陸域の生態観測というのは生態系,森林資源,海洋生物,そういったところに主眼が置かれていました。ただし,ここ10年,15年ぐらいでこういった生態的なものから,地球温暖化とか水循環,地球環境といったグローバルな問題に関わってくるようになっております。
 そういったところで,近年でいきますと,IPBESのリージョナルアセスメントであるとか,IPBESのグローバルアセスメント,こちらは生物多様性とか生態系サービスに関する国際報告書で,昔からあるIPCCに対して,IPCCの生物多様性版,生物版というふうに言われています。こういうところで日本の大学であったり,いろいろなコミュニティーの方が貢献しています。例えば私自身もIPBESのグローバルアセスメントで統括責任執筆者という立場でこの執筆に関わっております。IPCCの方でも最近「Climate Change and Land」という特別報告書が出てきまして,こちらの方では陸域の重要性が説かれているということです。
 観測研究ネットワークに関しては,観測研究のネットワークですので,重要なのはいろいろな,例えば我が国の中でも北から南まで,低地から高山まで,いろいろなところの生態系があるのを,1つのサイトではなくて多面的に見ることができます。そのネットワークというのは観測のネットワークだけではなくて,調査,人のネットワークであるとか,研究成果のネットワーク,又は学術分野のネットワークということで,こういったボトムアップのネットワークが非常に重要になっていると,私たちは考えております。日本の中では例えば陸域でいうとJaLTER,JapanFlux,あとはAP-BONというネットワークがありまして,今回はJaLTERとJapanFluxから一人ずつ来ています。
 次に4枚目に移ります。陸域生態系観測ネットワークが目指すものということで,いろいろとあります。まず最初に,陸域生態系の研究の重要性ということで,温暖化予測,気候変動の予測に非常に重要である。陸域というのは,不確実性をつくる大きな1つの要因であるということです。あと,陸域というのは,人々の生活にいろいろな恩恵をもたらすということも言われております。生態系サービスとかです。
 さらに,陸域研究のネットワークで何が重要なのかというところで,陸域というのは人の活動であったり,気候が場所によって違ったりとか,生態系タイプが違ったりということで,場所によってかなり違います。そういったところをいろいろと観測することによって,多面的にというか,統合的に地球規模,大陸規模で,生態系がどういうことに対して弱いのかとか,そういったことが分かってくることになります。
 そういったネットワークがあることによって,例えば人工衛星の場合,JAXAさんの人工衛星のデータ作りにおいても,結局は衛星で物を作る時に現地観測のネットワークがないといいプロダクトができませんということで,現地観測ネットワーク,JaLTER,JapanFluxのネットワークが非常に重要になってきています。
 次のページに移ります。JaLTERとJapanFluxの概要,今回紹介した2つのネットワークの説明を簡単にさせていただきたいと思います。
 真ん中に書いてあるのが植生です。植生があって,それが例えば大気とCO2をガス交換していると。ほかにも植生の中で光合成をして,呼吸をして,蒸発散して,葉があってと,そういったものがあります。
 JaLTERというのは,日本の中で生態系の仕組みを解明する,生態系の例えば葉の量がどれだけであるとか,バイオマスがどれだけあるとか,そういった,中で起こっていることを観測していくことになります。JapanFluxというのは,元々の発展が微気象学から始まっていまして,大気と陸の間のガス交換といったものを中心にして発展してきました。サポートしている学会というか,メジャーな学会もこういうふうに違っております。ただし,JapanFlux,JaLTERともに,日本だけで閉じているわけではなくて,これは大陸,アジアであったり,全球組織であったり,そういったところまでつながっています。JapanFluxも同様に,AsiaFlux,FLUXNETにつながっております。実はJaLTERの方の国際貢献としましては,ここにいる柴田さんがLTERのグローバル組織であるILTERの代表を,今,務めているということになります。こういったような形で,日本のいろいろな大学のネットワーク自体も貢献しているし,人も国際的にも貢献しているということになります。
 次に行きます。JaLTERの紹介です。JaLTERという生態系を測るネットワークです。ここでは日本を示していますが,58サイトありまして,もちろんサイト運営機関として大学と各省庁,いろいろなところが入っています。大学は21大学が入っていて,各省庁・研究機関が5つ入っています。そういう中で,この数字を見て分かるとおり,ネットワークという意味では大学の位置付けは非常に重要になっています。ざっと言いますと,58サイトのうちの半分を超えるサイトが大学所属のサイトになっておりまして,日本の観測を考える上では,大学のネットワークを是非入れていただければと考えています。
 JapanFluxの方,7ページ目に移ります。JapanFluxに関しても同様です。これもボトムアップ的に日本の研究者が運営している。観測ネットワークを束ねるような組織として運営しています。こちらの方は,国内38,海外15のサイトがあって,大学数,省庁数がここにありますけれども,こちらの方も現状では大学の中で手弁当的にやっている,短期の外部資金を取りながらやっているサイトが半分以上存在しておりまして,ただしこういったものを日本の地球観測のネットワークとして取り入れていくことは,重要ではないかと考えております。
 次のページに移ります。研究成果です。こういった長期の観測であるとかネットワーク観測が何で重要なのか,そういったことを端的に研究成果として大学の人間は出していくのですけれども,長期観測というのはなぜ重要かというと,特に最近,気候変動が見えるようになってきた。その時に,例えば陸域の生態系ですとか,そういったものがどういうふうに影響を受けているのか,その辺がどう現れているのか,そういったものを見ることが重要であると。それが気候変動の影響予測につながる。又は長期観測によって,気候変動で起こりつつある生態系の変化を発見することができるようになってくると,そこを方策として守っていくことの立案にも使えると考えています。こういったものが,例えば森林生態系で長期の温暖化によって樹種の構成が変わってくるというのが,ここで言うと40年近くの観測によって分かってきた。こういった感じで長期の観測が重要であったり,こちらの方は霞ヶ浦の湖沼の生態系を見ていくことによって,この20年においてどう変化したか,そういったことが明らかになってくるというような長期観測の重要性があります。
 次のページに行きますと,もう1つは地上観測,衛星観測,そういったものを最近は人工知能などを使ってやることも行っておりまして,リモートセンシングと連携するということになります。
 次のページに行きます。課題解決型として,気候変動の予測研究にも重要ですし,地球環境の保全,生態系のサービス,そういったところに非常に重要になってきているというのが,この辺の分野の特徴になっているかと思います。生態系観測だけではなくて,温暖化予測に関してその予測を上げることも重要になってきているということになります。
 次のページに行きます。大学による陸域生態系観測の特徴としましては,大きく4つあります。1つは科学的なところを追い求めている研究が多いということがあります。ただし,観測の研究者自体は,皆さん,観測を継続することがすごく重要であると思っているということです。次に,人材育成として非常に重要であるということ。3つ目として,規模が比較的小さいところで,あとは大学間の連携によって,人の連携によって支えられているところがあります。こういったところを競争的資金によって,少し脆弱なところもあるのですけれども,そういったところでなるべく長期にモニタリングしたい。あとは,どうこれから人を雇っていくか,後進を育てていくかというのが課題になっているところになります。
 最後に,日本の地球観測・環境課題解決への貢献のためにということで,基本的には,生態系観測のためにはインフラ又は長期重点監視サイト,そこの人の育成が非常に重要であるということです。あとは最後に,衛星観測とか予測モデリングなどと最近は連携しながら,いろいろと地球温暖化の研究などをしているところになります。
以上で終わります。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。非常に膨大な内容をコンパクトに御説明いただきました。柴田先生もいらっしゃっていますので,この生態系,フラックス観測と組み合わせたものですけれども,何か御質問等ございましたらどうぞお願いいたします。
【三枝委員】 ただいま御発表いただいた市井先生,柴田先生への御質問というよりは,このように日本スケールでしっかりとした組織を作り,分野の人たちが連携して,気候変動影響適応といった新しい問題にも取り組むネットワークとして作っている活動ですが,これまでの地球観測の調査ですと,どうしても関係府省庁を通して調査し,フォローアップということをしてきたと思います。このようにまとまっているネットワークの活動,もしからしたら他にもあるのかもしれませんけれど,これをどのようにこの部会が長期的にモニタリングし,フォローアップの対象としまして,そしてまた日本における地球観測として何か提言するような時に,しっかりと入れていくものにするにはどのようにしたらよろしいのでしょうか。と,これは御発表者というよりは,部会に御回答を。
【小池部会長】 部会に対してですが。推進官,何かございますか。
【石川環境科学技術推進官】 今,まさに三枝委員がおっしゃっていただいたように,多分この部会でもこういった大学の、アカデミアの取組を取り上げて共有するというのは,今までなかなかできていなかったところがあると思います。そういう意味では新しいチャレンジのところがありますので,今回ちょうど実施方針のフォローアップのタイミングでこういったアカデミアの取組を我々も共有するということで,これをどういうふうに我々の中で消化しながらうまくやっていくかというのは,まさにこれから我々もしっかり考えていきたいと思っております。今ここで,こうしますというところがしっかりあるわけではないのですけれども,こういったアカデミアでもある程度ネットワークとして確立しているような取組をどのように見ていくかというのは,これからの課題だと我々も認識しております。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。
【三枝委員】 ありがとうございます。
【小池部会長】 私から2つご質問があります。このJaLTERとJapanFlux,6ページと7ページに組織表を同じような丸で書いていただいていますが,この2つの組織の協力の組織図というのは何かあるのですか。あるいは協力関係を,こんなふうに協力していますというのが分かりやすいのですけれども。でも,これは1か所だけではなくて,今,日本全国でやっておられるわけですよね。それが1つ目の質問です。
 もう1つは,AP-BONについては今日お話になかったのですけれども,これとの関係も教えていただけるとありがたい。
【千葉大学市井教授】 まずは,最初のJaLTER,JapanFluxの関係です。そちらの方は例えば補足資料の1番目,14ページ目ですけれども,実はそれぞれの観測項目を並べて一緒に観測して連携する試みをやっております。それはスーパーサイトとかマスターサイトとかと呼んで,集中観測をするサイトが日本の中にも幾つか展開されて。
【小池部会長】 是非それは表に出していただいて。
【千葉大学市井教授】 ありがとうございます。何かありますか。
【北海道大学柴田教授】 北海道大学の柴田です。ありがとうございます。今まさに説明があったように,JaLTERは生態学研究ネットワークといっても,いわゆる動植物の生態学だけを取り扱っているわけではなくて,生態系レベルのエネルギー・物質循環,水文学,あるいは社会生態学を含めた幅広い研究を網羅していて,その中に今説明のあったフラックス観測と連携してスーパーサイトを設置して,そこで研究を展開することも取り組んでおります。
 それとAP-BONに関してですけれども,説明の中にもあったように,日本のJaLTERというのは日本だけではなくて世界のネットワークとつながって,今,活動を続けていて,それは東アジア・太平洋地域それから国際レベル,それぞれのレベルでつながっています。東アジア・太平洋地域に関して言うと,ILTERの東アジア・太平洋地域ネットワークとAP-BONはかなり緊密に共同してこれまでも活動を続けていますし,その上のILTERレベルでいいますと,ILTERはいわゆるGEOの参画機関,participating organizationとして今,議論を続けていて,世界レベルでのin-situの観測ネットワークをいかにGEOにつなげていくのかということを続けています。今,JaLTERはまさにそこで国際的な取組に入って,さらにそれをリードするような位置にあると考えております。
【小池部会長】 ちょっとぜいたくな質問をお願いするのかもしれませんが,AsiaFluxとAP-BONで,先ほどの日本でおっしゃったようなスーパーサイトができるといいですね。
【北海道大学柴田教授】 はい。この資料の15枚目にもありますように,高山サイトであるとか,いくつかのサイトがそういった機能を持っていますので,AsiaFluxやAP-BONとの関係の中でもそういったスーパーサイト,マスターサイトといったものをもっと盛り上げていきたいです。それを全体として,こういった地球観測の中でいかに位置付けていくのかといったことも課題であり,どうしても個別の研究費を使ってつなげているところもありますので,もう少し頑強なメカニズムが必要ではないかと考えています。それも今回,部会に参加させていただいて相談させていただきたい事柄でもございます。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。他にいかがでしょうか。このテーマですから,村岡委員,一言。
【村岡委員】 ありがとうございます。発表者の1人に名前を入れていただきましたけれども,実は実施方針をまとめる時に参加させていただいた時に,実施方針で議論した時に,思い出してみますと,様々な分野あるいはセンサー,プラットフォームによる地球観測を推進していく,それを課題解決につなげるということが本当に力強く書かれていたと同時に,共通基盤,5章あたりだったと思いますけれども,様々な研究ネットワーク,大学等の研究,あるいは人材育成をどういうふうにしていくのか,ということも課題であると書かれていてと記憶しております。
 この部分を今後またさらに進めていくに当たって,これから何十年という単位での地球観測環境課題への対応という時に,観測技術の開発,それを運用していく,情報を公開していく,共有していく,利用していく,ということとともに,それをつないでいく人たち,あるいはそういったコミュニティーをどう育てるか,というところが課題になろうかと思います。そういった意味で,今日,市井先生,柴田先生を御紹介させていただきました。
 先ほど三枝委員もおっしゃっていましたけれども,これをどう俯瞰的に今後考えていくかという時に,GEOのプログラム委員会の議論に参加していますと,様々な観測やプラットフォームの相補性をどういうふうに充実させていくのか,それによって複合的な環境課題に対して対応していく仕組みをどう作るのか,それがチャレンジだという議論があります。それはワークプログラムという形でプログラム化してやっていこうとなっていまして,前回の会議で御報告しましたように,来年からのワークプログラム,まさに先週実はプログラム委員会で最後の詰めをしてまいりましたけれども,やはりそこが課題になっています。さらに一歩先にどうやって行くのかというところだと思います。
 だから,恐らく我が国の地球観測の実施方針のさらに今後を考えていく時に,(衛星や地上での多様な)観測のセンサーの相補性であったり,(衛星や地上でのセンサー,人による現地調査,モデル解析等の)手法の相補性であったり,(気象,温室効果ガス,生態系や生物多様性等の)分野の相補性であったり,あるいは(衛星や船舶,航空機,地上等の観測のための多様な)プラットフォームの相補性をどう高めるか。それによって(地球環境に関する)時間的な観測密度であったり,空間的な観測密度であったり,あるいは課題解決に必要な情報の密度をどう高めていくのか,というような議論が全体としてできるようになっていくといいかなと,今,感じています。ちょっと長くなりました。失礼しました。
【小池部会長】 ありがとうございます。
 実は遅れておりまして,申し訳ありませんけれども10分延長させていただいて,議論を3時5分ぐらいまでさせていただいて,最後,5分ぐらいあれば大丈夫ですね。取りまとめにさせていただきたいと思います。
 これまで省庁それから大学の方からいろいろと御説明いただいたこと全般に関しまして議論させていただきたいと思います。特にフォローアップは,手元にある資料ですと市井先生におまとめいただいた資料の2枚目にちょうど書いてありまして,今後10年の我が国の地球観測の実施方針を対象としており,第4章の課題解決型地球観測をメインテーマとしております。それに対して,今御説明いただいた内容,それから前回議論させていただいたのがお手元の議事録の要点のまとめというところでございますが,これをちょっと見ていただきながら,御質問,御意見を頂きたいと思います。どなたからでも結構です。河野委員どうぞ。
【河野委員】 2つの観点から申し上げたいと思います。
 まずは,今回のフォローアップされた結果の文書の位置付けについての御提案ですが,先ほど全く同じことを小池先生がおっしゃいましたけれども,これは国内向けであると同時に,国外に対して日本がこれから先の地球課題解決に向けてどのような観測にコミットしていくかということを示す文書であるべきだと思います。そのため,できたら速やかに英訳をして配れるようにすると。次回は間に合いませんが,GEOの本会合とかに,あるいは大臣級会合があった時に,日本としてはこういう方針を取りまとめて,こういうコミットメントをしていくんだということを比較的容易に宣言できますし,同時にやっておりますJapanGEOのブースもその宣言に対してどのような進捗があったかというような観点からまとめていくと,毎回毎回それなりのプレゼンスを示していけると思います。
 内容についてですが,その観点で見た時に,現在の在り方というのはちょっとジェネラル寄りかなという感想を持ちます。長く使うものですので,ジェネラルに書いた方がいいという側面ももちろんありますし,一般的に包括的な文書の方が格が高いので,それはそれで結構なことだと思うのですが,もしアピールをということを考えると,もうちょっと個別具体のものに踏み込んだ方がよいのではないかと思います。
 その観点からいくつか思い付いたことがあるのですが,1つはAOGEOです。文書の中には「これまでアジアに力を入れてきたがアフリカも」というように書いてありますが,もう明確にAOGEOのステアリングにコミットするということを決めたわけですから,AOGEOの中のこの課題を解決するためにこういう観測を推進していくというような具体例を書くと,ちょっと日本のリーダーシップが出ていくのではないかと思います。
 もう1つが国連でやっております海洋科学の10年。これも今は国際統括官付のところで頑張っておられますけれども,日本が結構な資金提供もして頑張っているものであります。この中では,先ほど海上保安庁さんの資料にありましたけれども,海底地形などの観測も大きくハイライトされます。このタイミングで,日本の地球観測はそれに沿ったものだという宣言をすることも,向こう10年間,国連における日本のプレゼンスの一部を上げることができるのではないかと思います。
 もう1つが北極です。南極は何度か出てきましたが,数えたら北極はJAXAさんの絵が1枚出ているだけで,ちょっとさみしかったんですけれど,これも今,非常に注目されている話題で,このものすごい風が10年続くかどうか分かりませんが,しばらく続くことは確実です。我が国は北極協議会のオブザーバーステータスを持っておりまして,これを更新していくことが1つの重要な課題になっています。今,北極協議会の議長国はアイスランドですが,来年,こちらと共催して日本で大臣級会合を開催します。こういう時に,我が国は北極も地球観測の重要な一部であるということを,このとおり方針として決めましたというようなことが言えると,やはり北極における日本の活躍のプレゼンスも上がるのではないかと思います。
 もう1つが今回出てこなかったプラスチックです。これは国際的にはものすごく話題になっていますので,日本としても環境省さんが中心となって頑張っておられますので,しかも調和化と称して国際的な観測データの在り方についての提言とかもなさっておいでですので,日本がリーダーシップを取っていける分野の一つです。こういったことを少し入れていくと,やはり日本としてきちんと国際的な流れに協調してコミットしていっているということを強く示せると思います。
以上です。長くなりました。失礼しました。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。包括的な戦略についてお話をいただきました。若松委員。
【若松委員】 RESTECの若松でございます。発表していただいた皆さん,本当にいろいろな取組を御紹介いただき,ありがとうございました。
 私も河野委員と同じように,国内外に向けてすごくアピールできるコンテンツ作りにも寄与するのではないかと思いました。特に先ほどから出ている俯瞰するというのが重要で,ちゃんと俯瞰して,省庁別ではない体系化をして,整理するのはすごく大変かなと思うんですけれども,非常にいいコンテンツが作れる可能性があるなと思いました。
 加えてちょっとお話しすると,よく国民に分かりやすいみたいな議論もされているんですが,もう少し平易なバージョンも作って,いわゆる市民の方々に分かるような話と,プラス民間企業にもアピールするような内容にしていくことも検討してはいかがでしょうか。そうやっていろいろな人たちをこの地球観測に巻き込むようなコンテンツ作りの一歩というか,きっかけになればもっとこの分野に対する理解が深まるのではないかと感じました。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【春日部会長代理】 それぞれの御発表,本当にありがとうございました。大変勉強になります。私からは,今の若松委員の御意見と非常に重なるんですけれども,利活用のための工夫,それからもう1つ,全体を俯瞰してさらにその中で新しい連携による新たな付加価値の強調という,この2点を申し上げたいと思います。
 まず,利活用のために平易なバージョンが必要ということ,本当にそのとおりだと思います。これは観測して,それを使っていただくことによって本当に価値が生まれるものですので,使っていただくためには,どこで得られたどういうデータであるかだけではなくて,データから付加される情報がどのようなものかということを,使う側に分かりやすく伝えることが非常に必要になります。そのためのインターフェースのような役割をする人あるいは機関がやはり必要なのではないかと思います。この部会で前から何度も議論されていたように,特に民間での活用が重要であり,そのためには民間でのニーズを理解して,さらにこの地球観測で提供できるものが何かということを分かりやすく示して,そのマッチングが必要になると思うんです。その点をやはりどこかがやらなくてはいけないと思いますので,そういう点を今後考えるべきだと思います。
 それから2点目は,今の点にも非常に関係するのですけれども,全体を俯瞰した時に,先ほど三枝委員がおっしゃったような,大きな目的別の柱がまず必要となりますが,それは今の今後10年の実施方針の中の4章,課題解決型の地球観測に整理された細項目ですか,これをまず基本にすればいいのかなと思います。その中での書き込み方というか分析の方法なんですけれども,今,例えば災害であれば災害,あるいは海洋観測であれば海洋観測の中で複数の省庁あるいは大学で行われていることがマッピングされていて,今後,どこがどういう強みを持っていて,どういう特徴を持っているか,さらに何が足りないか,ということをマッピングしようとしていますが,それに加え,こことここの強みを連携することによってこういうことが生み出せますという,そこまで踏み込むことが有益ではないかと思います。
 さらに言いますと,地球観測だけではなくて,新しい,その外側にある科学的な知見,研究開発,または産業界,あるいは社会の中にある情報,それとの組み合わせでさらにどういうことができるのか,ということも見据えられるとベターではないかと思います。
 実はこの地球観測推進部会の上にある研究計画・評価分科会で先日,文科省が進めている大きな研究開発の柱の事前評価,中間評価等がありましたけれども,その中で,例えばライフサイエンスの話で,これは地球観測と結び付けたらより新しい面白味が出せるのではないかということを発言させていただきました。そうすると,ライフサイエンス課の方でも既にそういうことをお考えだったというお返事がありました。そのように,地球観測の外で例えば文科省の中でも進められているような知見と結び付けて,新たに生み出せるような付加価値のようなものにも目を向けて,これを盛り込めるとさらに強みのあるフォローアップができるのではないかと思いました。
【小池部会長】 どうもありがとうございました。
 あと2件ほどですが,舘委員とほかにいらっしゃいますか。赤松委員。武藤委員と堀委員,出していただいていたんですね。では舘委員,赤松委員,武藤委員,堀委員でお願いいたします。
【舘委員】 省庁の皆様,いろいろ発言を聞いて大変勉強になりました。一方で,我々,どちらかというと衛星のデータをプロバイドしている方から見ると,もっともっと実は使われているのに,意外と少ないという印象がございまして,本当にたくさん使われている。例えば,小池部会長がやっているICHARMなんかもその1つの例だし,いろいろなところで使っていると。例えば農林水産省も先ほどの10年の実施方針の中には食糧安全という形では我々の衛星データが使われているんですけれども,そういうところが触れられていないし,経産省さんの方もTellusのデータに我々が提供しているんですが,そういうTellusの話も全くないので,もっと使われているはずなのに,何か狭まっている。ここでの議論はやはり違うんだと言われると,そうかなとも思ったりするので,実際にはたくさん使われていて,日本はたくさんやっていると。そういうのではないかと思うのですが,意外と小ぢんまりとしている印象なので,もうちょっとアピールした方がいいんじゃないか。例えば,武藤さんのところのJJ-FASTなんかとも世界的に貢献しているわけであって,それはアピールすべきではないかと思うんですが。そういうところを是非御議論いただければと思います。
【小池部会長】 ありがとうございます。それでは赤松委員。
【赤松委員】 今のお話を引き継ぐような形になるんですが,私が最初に本日の御報告が何か意図を持って発表されているんですかとお伺いしたんですけれども,実はヒアリングシートが今日は全然取り上げられていないんですけれども,そこを見ると,もっとたくさん書かれていることがあって,今日御紹介いただいたのはその一部になっているということを,皆様に御理解いただいた方がよいかと思います。ですから,我々が今回の各省庁様の取組を見る時は,このヒアリングシートをちゃんと見ないといけない。例えば,先ほどのTellusの話も載っていますので,そこをもう一回しっかり見ないといけないということを,改めて皆さんに御共有いただければと思います。
 そしてもう1つ,今回5年間を経て,中間で見直すべきところを見直すという話なんですが,この5年間でこの地球観測を取り巻く特に実利用ですとか,社会実装ですとか,それから産業化という部分で大きな進展があったと思っています。私はやはり民間企業の人間ですし,今回はいい機会ですので,その辺をよく我々としても認識して,この地球観測の戦略の中にどう位置付けていくのかということを,しっかりと見直していく必要があると考えております。民間委員として,省庁の皆様からの報告情報をよく読ませていただいて,できるだけ拾い上げていけるように頑張りたいと思います。以上でございます。
【小池部会長】 先ほどの赤松委員の言う意味,今,分かりました。今日は3分でしたので,多分皆さん,大きいところから,ぐっと絞っていただいたんだと思います。では,武藤委員。
【武藤委員】 JICA,武藤でございます。ユーザーという立場から,春日委員のおっしゃったインターフェースの必要性をより強調させていただきたいと思います。この間ありましたインドネシアのスラウェシ地震の直後にいろいろデータをいただきまして,活用はもちろんさせていただいていますが,やはり地震直後の緊急オペレーションのチームのニーズとしては線形構造物がどうなっているのか,家屋がどうなっているのか,いわゆる衛星で設定しているセンサリングと違う視点でデータがすぐ欲しいわけなんですけれども,それがなかなか,いろいろ加工しないとというところで非常にもどかしいので,対話を進めてよりよい方向にもっていきたいと思います。
 あとは,例えば森林の方でJAXAさんと伐採を見させていただいているんですが,最近は気候変動の関係もございまして,ポイントがバイオマスということに移りつつあり,線のデータではなくて面のデータという風にニーズの方も刻々と変わってきております。
 その辺のインターフェースを通じた対話を是非よろしくお願いいたします。
【小池部会長】 ありがとうございました。堀委員,お願いいたします。
【堀委員】 前回はSIP防災ということで来たつもりだったんですけれども,今,JAMSTECの方では付加価値情報創生部門の部門長で,付加価値の話が出るとやっぱり何か言わなければいけないのかなと。構造化とか俯瞰というのは非常に重要ですけれども,実際に行うことは大変であることも事実で。我々の限られた時間でどこまで構造化してどこまで普遍化して,さらにどのような価値を付けるかということは,よほどうまくやらないと大変です。まず,時間との勝負であることは正しく認識したいと思っています。
 赤松委員が言われたように,フォローアップはものすごく膨大なデータがあります。パワーポイントにまとめてもあの量です。いかにフォローアップを効率的に処理するかは,事務局にかかっています。もし可能であればフォローアップをアクセスにして,最悪エクセルにして,項目ごとに並び替えられるようにしておかないと,じっくり読むことなく,気が利いたところだけ取り出して何か形だけを取り作るようなことを懸念します。フォローアップのデータをうまく扱えるようなデータベース化というのは至急やっていただけると,少しは頭を使えるような気がします。
 普遍化にせよ 構造化にせよ,付加価値情報整理にせよ,どこかで原理的なことでまとめることが必要です。そうでないと,総花的になってしまうのは明らかです。何をやらないかということを決めるべきですね。何をやるかというよりも,何をやらないかということをはっきり決めて,どの軸で整理するかというのは早急に議論しないと,時間との戦いに勝てないのではないかという気がしております。11月の委員会には私は欠席してしまうので申し訳ないですけれども,何かたたき台が必要だとかいうのなら,事前にちょっと考えていくつか出します。俯瞰や構造化は効率的に進めないと大変な気がします。以上です。
【小池部会長】 どうもありがとうございます。他によろしいですか。
 今,堀委員が最後にまとめていうか,注意を喚起いただきましたが,まさにそのとおりで,ただし,これは事務局が大変というのではなくて,我々が大変なんですね。委員の皆さんが大変ですから,覚悟しておいてください。
 それで,何度も出てきましたし,前回も議論させていただきましたように,俯瞰してマッピングしてこことここをつなぐと,こんないいことがあるんじゃないかとか,さらに,春日委員からお話がありましたが,インターフェース的な役割を持ってデータから情報を作り出して価値を生み出すというようなところは描きたいと思ってはいるわけです。その素材を今日いただいたわけです。俯瞰というのは素材をこうやって見ないとなかなか俯瞰できないんですよ。これをどうやるかというのは,堀先生はデータベースだとおっしゃっているので,そのとおりかと思いますが,ちょっと本当に工夫しながら,これだけ膨大な情報を俯瞰してマッピングするという作業をこの2か月でやるというわけですから,かなり大変です。
 それを俯瞰ですから,全部見ないといけないので,いくつかのレイヤーを設定しないといけないと思います。それはちょっと事務局と私の方で相談させていただいて,ある原案を作って,これをレイヤーに分けて分析して,まあ,レイヤーに分けたぐらいのものを見ていただきながら,マッピングに関して皆さんの知見をいただきたいと思います。
 今日2つありましたが,気候変動の連携拠点ができたので,先ほど三枝委員から御発言があったように,省庁連携のいろいろな施策が描けたわけです。それから今日,市井先生,柴田先生からお話があった2つのネットワークが本当にあれだけ物も対象にしながら,場を共有しながら一緒にやっておられる。そこにいわゆる国立研究開発法人もたくさん入っておられて,省庁もリンクしておられますので,そういうものを1つのテキストにしながら,どういうものを描くといいのかというような提言がこのフォローアップの中で出せるとよいのではないかと思います。
 それから河野委員からお話があったように,全体を俯瞰するということと併せて,戦略的にアピールする点というものを,これは皆さん,いろいろなお関わりがありますので,なかなかこれだとすっと合意できないかもしれませんが,できるだけ絞るというマインドで,私どもが共有できる,合意できる戦略のアピールの仕方を是非フォローアップの中に盛り込んでいきたい。
 最後は,ちょっとこれ,メインの議論にはなかったんですが,市井先生,柴田先生,村岡先生からお話がありました人材育成というのが,今日は省庁の方からはなかったんですね。ただし,科学技術・学術審議会の中の非常に大きなテーマの1つがPhDなんですね。博士の皆さんがどう今後活躍する場を得られるかということで,計画・評価分科会の中でいろいろな議論を聞いていますと,こういうプロジェクトと民間企業が協力していい成果ができて,それが博士の方の次の活躍の場になっている事例が結構あります。僕はそういうものをどんどんアピールしてくださいと申し上げているんですが,これは結構使えると思うんですね。先ほどの大学のネットワークといろいろな,そこは主に環境省かもしれませんけれども,環境省的な,あるいは産総研的な炭素循環みたいなこともありますから,そういうところとリンクすることによって,大学の研究者がそれぞれの省庁の政策決定に深くコミットできるというような道もあるんじゃないかと,お聞きしながら思っておりました。そういう意味で,人材育成というものも是非頭に置いたフォローアップにできるとよいなと思っております。
 これを産業化につなげたり,分かりやすい表現にするというのも皆さんに出していただきましたので,課題はたくさんありますので,それを何とかカバーできるように皆さんに御協力いただきながら進めたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 大分超過いたしましたが,きょう予定されている議題は以上でございまして,皆様からの御発言をもう一度聞くようにはなっておりますが,もう時間ですので,これで事務局にお返しします。事務局から連絡事項をお願いいたします。
【石川環境科学技術推進官】 すいません。連絡事項の前に,本日,まさに小池部会長がおっしゃられたように,各委員から様々御示唆に富む重要な御指摘をいただいております。次,回以降は,11月29日が予定では骨子案を議論と。予定でいけば3月末で中間まとめを議論と。最終的には6月を目途でまとめていくというところで,その時間の中でどこまで,まず次の部会までにできるかというところを,小池部会長とも相談しながら,各委員の御協力をいただきながら進めさせていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします。
【池田地球観測推進専門官】 それでは事務連絡をさせていただきます。本日の議事録は,後日,事務局よりメールで委員や御発表者の皆様にお送りいたします。皆様に御確認いただきました後,文部科学省のホームページにて公表させていただきます。
 あと,旅費の書類をお配りしている方は,内容を御確認いただきまして,そのまま机上にお残しください。
 次回,第4回の部会ですけれども,11月29日の14時からを予定しております。開催案内につきましては,改めて御連絡させていただきます。
以上です。
【小池部会長】 それでは,以上でございます。どうもありがとうございました。省庁の皆様,お二人の先生,どうもありがとうございました。


お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)